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  • 特開-パンツ 図1
  • 特開-パンツ 図2
  • 特開-パンツ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087937
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】パンツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/06 20060101AFI20240625BHJP
   A41D 1/085 20180101ALI20240625BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A41D1/06 L
A41D1/085
A41D1/06 502A
A41D1/06 501D
A41D27/00 Z
A41D1/06 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202852
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 彰大
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA02
3B035AA03
3B035AA07
3B035AB05
3B035AC15
(57)【要約】
【課題】フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れたパンツを提供する。
【解決手段】前身頃と後身頃とを繋ぐ縫製線を有するパンツであって、腰部付近の縫製線が大転子より前方を通り、大転子より下方の縫製線が外側広筋前方側に配置されており、身体内側方向に向かって蛇行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と後身頃とを繋ぐ縫製線を有するパンツであって、腰部付近の縫製線が大転子より前方を通り、大転子より下方の縫製線が外側広筋前方側に配置されており、身体内側方向に向かって蛇行することを特徴とするパンツ。
【請求項2】
大腿部の近位1/3から膝蓋骨中央の間で、前記縫製線の蛇行した部分の曲率が最大となる、請求項1に記載のパンツ。
【請求項3】
右半身と左半身の各前身頃と後身頃が連続した1枚の生地で構成され、前記縫製線および股ぐり部から腹部まで縦方向に伸びる体幹部縫製線を含む、請求項1に記載のパンツ。
【請求項4】
身幅方向より身丈方向の伸長率が大きくなるように生地が配されてなる、請求項1に記載のパンツ。
【請求項5】
野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、および登山からなる群より選択されるいずれかの用途に用いられる、請求項1~4のいずれかに記載のパンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、登山等の用途に好適に着用され、フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れたパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、登山等のパンツは、動作快適性と審美的な側面からゆとりの少ない身体にフィットするシルエットタイプのものが求められており、種々の衣服が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2では、縫製線を背面に配置すること、および縫製線をできるだけ少なくすることで、動作時の衣服圧を低減する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの衣服では縫製線の配置場所が最適化されておらず、膝および股関節を屈曲させた姿勢時の膝部前面、大腿部内側および大腿部外側の突っ張り感を低減させる点でまだ満足とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-14067号公報
【特許文献2】特開2019-119944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れたパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。かくして、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0007】
1.前身頃と後身頃とを繋ぐ縫製線を有するパンツであって、腰部付近の縫製線が大転子より前方を通り、大転子より下方の縫製線が外側広筋前方側に配置されており、身体内側方向に向かって蛇行することを特徴とするパンツ。
2.大腿部の近位1/3から膝蓋骨中央の間で、前記縫製線の蛇行した部分の曲率が最大となる、上記1に記載のパンツ。
3.右半身と左半身の各前身頃と後身頃が連続した1枚の生地で構成され、前記縫製線および股ぐり部から腹部まで縦方向に伸びる体幹部縫製線を含む、上記1または2に記載のパンツ。
4.身幅方向より身丈方向の伸長率が大きくなるように生地が配されてなる、上記1~3のいずれかに記載のパンツ。
5.野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、および登山からなる群より選択されるいずれかの用途に用いられる、上記1~4のいずれかに記載のパンツ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、登山等の用途に好適に着用され、フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れたパンツが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態におけるパンツの生地裁断図(左足用)である。
図2図2Aは本発明の一実施形態におけるパンツの正面図、図2Bは側面図、図2Cは背面図である。
図3図3は立位姿勢から膝および股関節を屈曲させた姿勢時の生地の伸長率を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明のパンツは前身頃と後身頃とを繋ぐ縫製線を有するパンツ(下衣)であり、前身頃と後身頃を繋ぐ腰部付近の縫製線が大転子より前方を通り、大転子より下方の縫製線が外側広筋前方に配置されており、大腿直筋方向に向かって蛇行することが肝要である。縫製線が大転子より後方を通り、膝および股関節を屈曲させた姿勢時の皮膚変形が大きい臀部や大腿部後面を通る場合、縫製箇所が生地の伸長率を低下させるため、生地が皮膚の変形に追従できないおそれがある。
【0011】
また、大腿部の近位1/3から膝蓋骨中央の間で、前記縫製線の蛇行した部分の曲率が最大となることが好ましい。大腿部の近位1/3から膝蓋骨中央の間で蛇行した部分の曲率が最大でない場合、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に縫製線が皮膚変形の小さい大腿直筋の下方付近を通ることができず、膝、大腿部内側および大腿部外側部分の突っ張り感が増加してしまうおそれがある。なお、本明細書において、大腿部の近位1/3とは、大腿部の大転子側近位端から遠位端までの身長方向の長さを1とした場合、近位端からの距離が1/3である部位をいう。
【0012】
また、右半身と左半身のそれぞれ、前身頃と後身頃が連続した1枚の生地で構成され、前記縫製線および股ぐり部から腹部まで縦方向に伸びる体幹部縫製線を含むことが好ましい。これにより、縫製箇所を減らすことができ、縫製箇所により生地の伸張性が阻害され、生地の突っ張り感を低減できる。
【0013】
通常、膝および股関節を屈曲させた姿勢時の臀部および大腿部の皮膚変形が身幅方向より身丈方向に大きい。このため、同じ負荷で身幅方向より身丈方向(身長方向)の伸長率が大きく(伸長しやすく)なるように生地が配されていることが好ましい。これにより、皮膚変形に対して生地が追従しやすくなり、突っ張り感が軽減される。
【0014】
本発明のパンツにおいて、生地を構成する繊維としては特に限定されず、木綿、ウール等の天然繊維、セルロース系繊維、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系の合成繊維等が例示される。ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸やこれらの共重合体からなるものが例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。繊維中には、本考案の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0015】
前記繊維の形態は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし、短繊維でもよい。その際、総繊度10~200dtex、フィラメント数10~300本(より好ましくは30~200本)の長繊維が好ましい。特に、優れた伸縮性を得る上で仮撚捲縮加工糸が好ましい。また、前記繊維を単独で用いてもよいし、複数の繊維を用いて、混繊、混綿してもよい。
【0016】
また、前記生地の布帛組織は特に限定されず、編物(ニット)、織物、不織布などいずれでもよい。なかでも、優れた通気性を得る上で編物または織物が好ましい。特に、優れた伸縮性を得る上で編物(ニット生地)が好ましい。例えば、よこ編組織(丸編組織)としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等などが例示され、織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示されるがこれらに限定されない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。なお、これらの織物や編物は常法により製造することができる。
【0017】
前記の生地の目付けとしては、軽量性と強度を両立させる上で100~500g/m(より好ましく200~400g/m)の範囲内であることが好ましい。
また、前記生地には、通常の染色加工、減量加工、起毛加工、撥水加工、カレンダー加工、エンボス加工、蓄熱加工、吸汗加工、マイナスイオン加工などの後加工剤を、本考案の目的が損なわれない範囲内で適宜施してもよい。
【0018】
本発明のパンツは前記の構成を有するので、フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れる。本発明のパンツは、野球、ソフトボール、ゴルフ、クライミング、登山など各種スポーツ用途のユニフォームなどとして好適に用いられるが、これらに限定されない。
【実施例0019】
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)生地の伸長率
島精機社製のデザインシステム/ソフトウェアSDS-ONEを使用し、膝および股関節を屈曲させた姿勢時における生地の伸長率を測定した。膝部前面、大腿部内側および大腿部外側の生地の伸長率が低ければ(生地があまり伸びなければ)、突っ張り感が低くなる。
(2)生地の目付け
JIS L1096-2010 8.3により測定した。
【0020】
[実施例1]
ポリエステル仮撚捲縮加工糸56dtex/36フィラメントを35重量%、ポリブチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸を65重量%用いて、目付け300g/mのニット生地を身幅方向より身丈方向に伸長率が大きくなるよう(伸長しやすい)に、かつ、図1に示すように左足用を裁断し、また、同様に右足用を裁断した。次いで、縫製部2、3を縫製することで、図2に示す野球用パンツ(ユニフォーム)を得た。
【0021】
かくして得られたパンツを着用し、図3に示すように、膝および股関節を屈曲させた姿勢時における生地の伸長率をシミュレーションした結果、膝部前面、大腿部内側および大腿部外側において局所的に高くなる部分が確認されず、生地の突っ張りを低減できていることが確認された。
【0022】
[実施例2]
ニット生地を身丈方向より身幅方向に伸長率が大きくなるよう(伸長しやすい)に配した点以外は、実施例1と同様に行った。
かくして得られたパンツを着用し、膝および股関節を屈曲させた姿勢時における生地の伸長率をシミュレーションした結果、膝部前面、大腿部内側および大腿部外側において、実施例1より局所的に高くなる部分が確認された。
【0023】
[比較例1]
実施例1と同一の生地を使用し、また、実施例1とウエスト、ヒップ、ワタリ巾、膝巾、裾巾、総丈、股上、股下、前股ぐり、後股ぐりを同一の寸法に合わせ、前身頃と後身頃を接合する縫製線が両足の両側面の4か所および体幹部縫製線の計5か所あるパンツを縫製した。また、大腿部外側の縫製線は、腰部付近において大転子より後方を通り、膝下にかけて直線的になるように縫製した。
【0024】
かくして得られたパンツを着用し、膝および股関節を屈曲させた姿勢時における生地の伸長率をシミュレーションした結果、膝部前面、大腿部内側および大腿部外側において、実施例1および実施例2より局所的に高くなる部分が確認された。特に、膝部から股下にかけて伸長率の高い連なった部分が確認された。以上の結果を図3にまとめて示す。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、フィットしたシルエットにおいても、膝および股関節を屈曲させた姿勢時に突っ張り感がなく、動作快適性に優れたパンツが提供され、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0026】
1 パンツ
2 体幹部縫製線
3 生地縫製線
4 ベルト通し
図1
図2
図3