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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087942
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F16L15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202858
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 和輝
【テーマコード(参考)】
3H013
【Fターム(参考)】
3H013JC05
(57)【要約】
【課題】ガスボンベへの装着を容易に行うことができる継手を提供する。
【解決手段】継手1は、両端に開口する筒状のリテーナ2と、周方向に回転可能にリテーナ2の一端に設けられたナット3と、軸方向に移動可能にリテーナ2の他端に設けられた直線移動子4と、外周面に螺旋溝51が形成されるようにリテーナ2内に設けられた軸部材5と、内周面にドラム内歯611が形成されたドラム6と、螺旋溝51及びドラム内歯611の両方と歯合するように軸部材5とドラム6との間に設けられ、直線移動子4の直線運動を回転運動に変換してドラム6に伝達するガイドリング7と、ガイドリング7によりドラム6に伝達された回転運動をナット3に伝達する遊星歯車機構8と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボンベに装着するための継手であって、
両端に開口する筒状のリテーナと、
前記リテーナの周方向に回転可能に前記リテーナの一端に設けられたナットと、
前記リテーナの軸方向に沿って移動可能に前記リテーナの他端に設けられた筒状の直線移動子と、
前記直線移動子の内周側に位置するとともに外周面に螺旋ガイドが形成されるように前記リテーナ内に設けられた筒状の軸部材と、
内周面にドラム内歯が形成され、前記周方向に回転可能に前記リテーナと前記軸部材との間に設けられたドラムと、
前記螺旋ガイド及び前記ドラム内歯の両方と歯合するように前記軸部材と前記ドラムとの間に設けられ、前記直線移動子の直線運動を回転運動に変換して前記ドラムに伝達する直線回転運動変換部材と、
前記直線回転運動変換部材により前記ドラムに伝達された回転運動を前記ナットに伝達する遊星歯車機構と、を備える、
継手。
【請求項2】
請求項1に記載の継手であって、
前記螺旋ガイドは、螺旋溝から構成され、
前記直線回転運動変換部材は、内周面及び外周面にそれぞれ前記螺旋溝と係合する突起及び前記ドラム内歯と歯合するガイドリング外歯が形成されたガイドリングから構成され、
前記ガイドリングは、前記直線移動子の前記直線運動による押圧にて、前記軸方向に沿って前記ナット側に向かって移動しながら前記周方向に回転する、
継手。
【請求項3】
請求項2に記載の継手であって、
前記直線移動子の先端には、環状のフランジ部が設けられ、
前記ガイドリングは、環状のベアリング保持部を有し、
外輪が前記フランジ部の内周側に圧入されるように固定され、内輪が前記ベアリング保持部の外周側に嵌合されるベアリングをさらに備える、
継手。
【請求項4】
請求項1に記載の継手であって、
前記ドラムの先端には、ドラム歯車が設けられ、
前記遊星歯車機構は、
前記ドラム歯車と歯合する第1伝達歯車と、
前記第1伝達歯車の回転軸と共通する回転軸を有する第2伝達歯車と、
前記第2伝達歯車と歯合する太陽歯車と、
前記リテーナの内周面に形成された内歯車と、
前記太陽歯車及び前記内歯車の両方と歯合するように前記ナットと連結された遊星歯車と、を有する、
継手。
【請求項5】
請求項4に記載の継手であって、
前記遊星歯車機構は、前記第1伝達歯車及び前記第2伝達歯車の回転軸を支持するように前記ドラムと前記ナットとの間に設けられた板材をさらに有し、
前記軸部材は、前記板材を介して前記リテーナに連結されている、
継手。
【請求項6】
請求項1に記載の継手であって、
前記ドラムの先端には、ドラム歯車が設けられ、
前記遊星歯車機構は、
前記リテーナの内周面に形成された内歯車と、
太陽歯車としての前記ドラム歯車及び前記内歯車の両方と歯合するように前記ナットと連結された複数の遊星歯車と、を有する、
継手。
【請求項7】
請求項6に記載の継手であって、
前記リテーナの一端には、板部が設けられ、
前記板部には、前記ナットと複数の前記遊星歯車とを連結する複数の連結部がそれぞれ貫通されるとともに前記周方向に沿って延在する複数の長孔が形成され、
前記板部は、複数の前記長孔よりも内周側に位置する連結領域を有し、
前記軸部材と前記板部とは、前記連結領域において連結されている、
継手。
【請求項8】
請求項1に記載の継手であって、
前記螺旋ガイドは、雄ねじから構成され、
前記直線回転運動変換部材は、前記雄ねじ及び前記ドラム内歯の両方と歯合するように回転可能に前記直線移動子に支持されたねじ歯車から構成されている、
継手。
【請求項9】
請求項1に記載の継手であって、
前記ドラムの先端には、ドラム歯車が設けられ、
前記遊星歯車機構は、
前記リテーナの内周面に形成された内歯車と、
前記ドラム歯車及び前記内歯車の両方と歯合する第1遊星歯車と、
前記第1遊星歯車が前記ドラム歯車を中心として回転可能にガイドされ、前記周方向に回転可能に前記軸部材の外周側に設けられた遊星ガイドと、
前記遊星ガイドの先端に設けられた太陽歯車と、
前記太陽歯車及び前記内歯車の両方と歯合するように前記ナットと連結された第2遊星歯車と、を有する、
継手。
【請求項10】
請求項1に記載の継手であって、
前記ナットが前記ガスボンベに締め付けられた状態において、前記直線移動子の移動を規制するロック機構をさらに備える、
継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスボンベに継手を螺合により装着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-179797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の継手では、ガスボンベに継手を手締めにより装着した後に、ガスボンベに継手をレンチ等の工具により締め付ける必要があった。このため、ガスボンベへの継手の装着を容易に行えないという不具合があった。
【0005】
本発明は、この問題点に着目してなされたものであり、ガスボンベへの装着を容易に行うことができる継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、ガスボンベに装着するための継手であって、両端に開口する筒状のリテーナと、前記リテーナの周方向に回転可能に前記リテーナの一端に設けられたナットと、前記リテーナの軸方向に沿って移動可能に前記リテーナの他端に設けられた筒状の直線移動子と、前記直線移動子の内周側に位置するとともに外周面に螺旋ガイドが形成されるように前記リテーナ内に設けられた軸部材と、内周面及び先端の外周面にそれぞれドラム内歯及びドラム歯車が形成され、前記周方向に回転可能に前記リテーナと前記軸部材との間に設けられたドラムと、前記螺旋ガイド及び前記ドラム内歯の両方と歯合するように前記軸部材と前記ドラムとの間に設けられ、前記直線移動子の直線運動を回転運動に変換して前記ドラムに伝達する直線回転運動変換部材と、前記直線回転運動変換部材により前記ドラムに伝達された回転運動を前記ナットに伝達する遊星歯車機構と、を備える、継手が提供される。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、ガスボンベへの継手の装着を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る継手を示す側面図である。
図2図2は、図1におけるII-II線に沿う断面図である。
図3A図3Aは、図2におけるIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
図3B図3Bは、図2におけるIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
図3C図3Cは、図2におけるIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
図3D図3Dは、図2におけるIIID-IIID線に沿う断面図である。
図3E図3Eは、図2におけるIIIE-IIIE線に沿う断面図である。
図3F図3Fは、図2におけるIIIF-IIIF線に沿う断面図である。
図4A図4Aは、第1変形例に係る継手の直線移動子のアンロック状態を示す部分縦断面図である。
図4B図4Bは、第1変形例に係る継手の直線移動子のロック状態を示す部分縦断面図である。
図5図5は、第2変形例に係る継手を示す縦断面図である。
図6A図6Aは、図5におけるVIA-VIA線に沿う断面図である。
図6B図6Bは、図5におけるVIB-VIB線に沿う断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る継手を示す側面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9A図9Aは、図8におけるIXA-IXA線に沿う断面図である。
図9B図9Bは、図8におけるIXB-IXB線に沿う断面図である。
図9C図9Cは、図8におけるIXC-IXC線に沿う断面図である。
図9D図9Dは、図8におけるIXD-IXD線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、本実施形態と称する)について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一の要素には同一の符号を付する。
【0010】
(第1実施形態)
[継手の構成]
まず、図1から図3Fを参照しながら第1実施形態に係る継手1の構成について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る継手1を示す側面図である。図2は、図1におけるII-II線に沿う断面図である。図3Aは、図2におけるIIIA-IIIA線に沿う断面図である。図3Bは、図2におけるIIIB-IIIB線に沿う断面図である。図3Cは、図2におけるIIIC-IIIC線に沿う断面図である。図3Dは、図2におけるIIID-IIID線に沿う断面図である。図3Eは、図2におけるIIIE-IIIE線に沿う断面図である。図3Fは、図2におけるIIIF-IIIF線に沿う断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すような第1実施形態に係る継手1は、図示しないガスボンベ(具体的には、ガスボンベのガス供給口)に装着されることにより、ガスボンベと配管P(具体的には、配管Pの端部P1)とを繋ぎ合わせる継手である。ガスボンベのガス供給口の外周面には、雄ねじが形成されている。配管Pの端部P1には、フランジP2が設けられ、フランジP2の先端部には、ガスケット(図示しない)が設けられている。なお、ガス供給口の雄ねじは、後述するナット3の雌ねじ311と螺合可能に形成されている。
【0013】
そして、継手1を挿通した配管PのフランジP2にガスケットが設けられた状態において、ガスボンベのガス供給口の雄ねじとナット3の雌ねじ311とが螺合し、ガスケットを押し潰すことにより、配管Pとガスボンベのガス供給口との隙間をガスケットでシールし、ガスボンベと配管Pとを繋ぎ合わせることができる。
【0014】
図1から図3Fに示すように、継手1は、リテーナ2、ナット3、直線移動子4、筒状(具体的には、円筒状)の軸部材5、ドラム6、直線回転運動変換部材としてのガイドリング7、環状(具体的には、円環状)のベアリングO及び遊星歯車機構8を備える。なお、リテーナ2、ナット3、直線移動子4、軸部材5、ドラム6、ガイドリング7、ベアリングO及び遊星歯車機構8の一部は、同軸に設けられている。また、リテーナ2、ナット3、直線移動子4、軸部材5、ドラム6、ガイドリング7、遊星歯車機構8及びベアリングOは、金属から構成されている。
【0015】
図2に示すように、リテーナ2は、ナット3の一部、直線移動子4の一部、軸部材5、ドラム6、ガイドリング7、ベアリングO及び遊星歯車機構8を収容するハウジングである。具体的には、図2に示すように、リテーナ2は、上下方向(すなわち、リテーナ2の軸方向)に沿って延在する筒部21と、筒部21の一端としての上端の内周側に位置するように筒部21と一体形成されたリング部22と、リング部22と隣接して筒部21の内周面に形成された内歯車23(遊星歯車機構8を構成するもの)と、着脱可能に筒部21の他端としての下端に設けられた環状(具体的には、円環状)の蓋部24と、を有する。
【0016】
リング部22の内周側には、第1開口221が形成されるとともに環状の蓋部24の内周側には、第2開口241が形成されている。すなわち、リテーナ2は、両端に開口する筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。また、図1に示すように、蓋部24の内周面には、直線移動子4の後述する直進突起42を上下方向に沿って移動可能にガイドするガイド溝(図示しない)が形成されている。
【0017】
図2に示すように、ナット3は、前述したように、ガスボンベのガス供給口と螺合するナットである。ナット3は、リテーナ2の周方向(以下、単に周方向ともいう)に回転可能にリテーナ2の上端に設けられている。
【0018】
具体的には、ナット3は、リング部22の第1開口221から突出する円筒状のナット本体31と、遊星歯車機構8の後述する複数(ここでは、四つ)の遊星歯車85を収容して遊星歯車機構8の後述する太陽歯車84を中心として公転可能にガイドする遊星ガイドとしての遊星歯車収容部32(遊星歯車機構8を構成するもの)と、を有する。なお、ナット本体31と遊星歯車収容部32とは、一体形成されている。
【0019】
図2に示すように、リング部22の下端は、遊星歯車収容部32の上端と当接することにより、ナット3の上方への移動を規制することができる。すなわち、リング部22は、ナット3の上方への移動を規制する機能を果たしている。これにより、ナット3がリテーナ2の上端から脱落することを確実に防止することができる。
【0020】
図2に示すように、ナット本体31の内周面には、ガス供給口の雄ねじと螺合する雌ねじ311が形成されている。遊星歯車収容部32の中央には、軸部材5が挿通された軸部材挿通孔321が形成されている。また、軸部材挿通孔321よりも外周側に位置する遊星歯車収容部32の部分には、複数の遊星歯車85をそれぞれ収容する複数(ここでは、四つ)の収容室322が形成されている。
【0021】
図2に示すように、直線移動子4は、上下方向に沿って移動可能にリテーナ2の下端に設けられた筒状の直線移動子である。直線移動子4は、蓋部24の第2開口241を挿通する挿通部41と、蓋部24のガイド溝と係合するとともに上下方向に沿って延在するように挿通部41の外周面に設けられた直進突起42(図1参照)と、挿通部41の先端としての上端に設けられた環状(具体的には、円環状)のフランジ部43と、を有する。なお、挿通部41、直進突起42及びフランジ部43は、一体形成されている。
【0022】
挿通部41は、上下方向に沿って移動する際に、内周面が軸部材5の外周面を摺接可能に設けられている。直進突起42は、ガイド溝と係合しているため、直線移動子4は、リテーナ2(又は軸部材5)に対し回転せずに、リテーナ2(又は軸部材5)に対し上下方向に沿って直線移動することができる。フランジ部43は、リテーナ2の径方向に突出するフランジ本体431と、フランジ本体431の外周縁において上方(ナット3側)に向かって延在する被圧入部432と、を有する。
【0023】
図2に示すように、軸部材5は、直線移動子4(具体的には、挿通部41及びフランジ部43)の内周側に位置するように遊星歯車機構8の後述する円板81を介してリテーナ2内に設けられている(固定されている)。軸部材5は、円板81の下方に位置する下段部5Aと、円板81の上方に位置する上段部5Bと、を有する。下段部5Aの外周面には、螺旋ガイドとしての螺旋溝51が形成されている。上段部5Bは、配管PのフランジP2の下端に当接するように形成されている。筒状の軸部材5の内周側には、配管Pが挿通されている。軸部材5と円板81とは、一体形成されている。
【0024】
図2に示すように、ドラム6は、周方向に回転可能にリテーナ2と軸部材5との間に設けられた有蓋筒部材である。ドラム6は、上下方向に沿って延在するドラム本体61と、ドラム本体61の一端としての上端に設けられた円環状のドラム蓋62(すなわち、ドラム6の先端)と、ドラム蓋62の内周縁において上方に向かって延在するドラム歯車63と、を有する。なお、ドラム本体61、ドラム蓋62及びドラム歯車63は、一体形成されている。
【0025】
ドラム本体61の内周面には、ドラム内歯611が形成されている。ドラム本体61は、下端がリテーナ2の蓋部24の上端と当接することにより、ドラム6の下方への移動を規制することができる。すなわち、蓋部24は、ドラム6の下方への移動を規制する機能を果たしている。これにより、ドラム6がリテーナ2の下端から脱落することを確実に防止することができる。ドラム歯車63は、軸部材5(具体的には、下段部5A)を中心として回転可能に設けられている。
【0026】
図2に示すように、ガイドリング7は、直線移動子4の直線運動を回転運動に変換してドラム6に伝達するガイドリングである。ガイドリング7は、ドラム6の内周側に収容されている。また、ガイドリング7は、円環状のガイドリング本体71と、外径がガイドリング本体71の外径よりも小さくなるようにガイドリング本体71の下端から延在する円環状のベアリング保持部72と、を有する。ガイドリング本体71とベアリング保持部72とは、一体形成されている。
【0027】
図3Aに示すように、ガイドリング本体71の内周面には、螺旋溝51と係合する複数(ここでは、三つ)の突起711が周方向に所定間隔を空けて設けられている。これにより、ガイドリング7は、螺旋溝51にガイドされて周方向に回転しながら上下方向に沿って移動することができる。
【0028】
第1実施形態では、突起711は、ガイドリング本体71の内周面に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、ベアリング保持部72の内周面に設けられてもよいし、ガイドリング本体71及びベアリング保持部72の両方に設けられてもよい。
【0029】
ガイドリング本体71の外周面には、ドラム内歯611と歯合するガイドリング外歯712が形成されている。これにより、ガイドリング7の回転(回転運動)をドラム6に伝達することができる。
【0030】
ベアリングOは、ラジアルベアリングであって、外輪がフランジ部43(具体的には、被圧入部432)の内周側に圧入されるように固定され、内輪がガイドリング7のベアリング保持部72の外周側に嵌合されている。これにより、ベアリングOの内輪は、ガイドリング7と一体になって周方向に回転するが、フランジ部43は、ベアリングOの外輪と一体となって上下方向にのみ移動することができる。また、軸部材5に対し直線移動子4を下方に直線移動させる(すなわち、直線移動子4をリテーナ2から引く)際に、ベアリングOの外輪は、直線移動子4のフランジ部43の内周側に圧入されているため、ガイドリング7は、直線移動子4に対し周方向に回転しながら下方に移動することができる。
【0031】
具体的には、ベアリングOは、内輪(内周面)及び外輪(外周面)がそれぞれベアリング保持部72の外周面及び被圧入部432の内周面と当接するようにフランジ部43の内周側とベアリング保持部72の外周側との間に圧入されている。これにより、直線移動子4は、リテーナ2(又は軸部材5)に対し回転せずに、リテーナ2(又は軸部材5)に対し上下方向に沿って直線移動するが、ガイドリング7は、円滑に回転・移動することができる。
【0032】
なお、ガイドリング本体71の下端面とフランジ部43の上端面とは、当接しない方が好ましい。これらの面が当接していないことにより、ガイドリング7は、円滑に回転・移動することができる。
【0033】
遊星歯車機構8は、ガイドリング7によりドラム6に伝達された回転運動をナット3に伝達する遊星歯車機構である。また、遊星歯車機構8は、板材としての円板81、複数(ここでは、四つ)の第1伝達歯車82、複数(ここでは、四つ)の第2伝達歯車83、太陽歯車84、内歯車23、複数(ここでは、四つ)の遊星歯車85及び遊星歯車収容部32を有して構成されている。なお、内歯車23及び遊星歯車収容部32の構成については説明したため、これらの説明を省略する。
【0034】
図2及び図3Cに示すように、円板81は、ドラム6とナット3との間に設けられている。また、円板81は、外周縁が例えば、ねじ締によりリテーナ2の筒部21と連結(固定)されるように設けられている。円板81の中央には、配管Pが挿通された挿通孔811が形成されている。また、挿通孔811よりも外周側に位置する円板81の部分には、第1伝達歯車82及び第2伝達歯車83の複数(ここでは、四つ)の回転軸としての共通回転軸86をそれぞれ支持する複数(ここでは、四つ)の貫通孔812が周方向に所定間隔を空けて形成されている。
【0035】
そして、軸部材5とリテーナ2とを連結する部材と、複数の第1伝達歯車82及び複数の第2伝達歯車83の複数の共通回転軸86を支持する部材とを、円板81に統合するため、継手1の簡易化を図ることができる。
【0036】
複数の第1伝達歯車82は、いずれも、これらの中央に位置するドラム歯車63と歯合している。これにより、ドラム6の回転(回転運動)を複数の第1伝達歯車82に伝達することができる。また、複数の第1伝達歯車82は、ドラム6(具体的には、ドラム本体61)と円板81との間に位置している。
【0037】
複数の第2伝達歯車83は、いずれも、これらの中央に位置する太陽歯車84と歯合している。また、複数の第2伝達歯車83は、円板81とナット3との間に位置している。
【0038】
なお、第1伝達歯車82と第2伝達歯車83とは、共通する共通回転軸86を有する。すなわち、共通回転軸86は、円板81の両端から突出している。第1伝達歯車82と第2伝達歯車83とは、共通回転軸86を介して、それぞれ周方向に回転可能に円板81の上端及び円板81の下端に支持されている。これにより、第1伝達歯車82と第2伝達歯車83とは、同一角速度にて回転することができる。この結果、複数の第1伝達歯車82の回転(回転運動)をそれぞれ複数の共通回転軸86を介して複数の第2伝達歯車83に伝達することができる。
【0039】
太陽歯車84は、軸部材5(具体的には、上段部5B)の軸線を中心として回転可能に軸部材5の上段部5Bの外周側に設けられている。これに対し、ドラム歯車63は、円板81の下方に位置するように設けられている。このように、太陽歯車84及びドラム歯車63をそれぞれ円板81の上方及び円板81の下方に設ける(すなわち、太陽歯車84とドラム歯車63とを離間させて設ける)ことにより、太陽歯車84及びドラム歯車63の回転干渉を確実に防止することができる。なお、太陽歯車84とナット3とは、同軸に設けられている。そして、ドラム6の回転(回転運動)は、複数の第1伝達歯車82及び複数の第2伝達歯車83を介して、太陽歯車84に伝達されている。
【0040】
図3E及び図3Fに示すように、複数の遊星歯車85は、太陽歯車84及び内歯車23の両方と歯合するようにそれぞれ複数の遊星歯車回転軸851を介してナット3と連結されている。これにより、太陽歯車84の回転(回転運動)を複数の遊星歯車85に伝達することができる。この結果、複数の遊星歯車85は、それぞれ複数の遊星歯車回転軸851を中心として自転しながら太陽歯車84を中心として公転することができる。
【0041】
また、複数の遊星歯車85は、それぞれ遊星歯車収容部32の複数の収容室322に収容されるように、それぞれ複数の遊星歯車回転軸851を介してナット3(具体的には、遊星歯車収容部32)と連結されている。そして、複数の遊星歯車回転軸851は、遊星歯車収容部32に支持されている。これにより、複数の遊星歯車85の公転(回転運動)は、それぞれ複数の遊星歯車回転軸851を介してナット3に伝達される。
【0042】
上述したような遊星歯車機構8によれば、直線移動子4からガイドリング7によりドラム6に伝達された回転(回転運動)を複数の第1伝達歯車82、複数の第2伝達歯車83、太陽歯車84及び複数の遊星歯車85を介してナット3に伝達することで、ドラム6の回転力を増幅してナット3に伝達することができる。
【0043】
また、遊星歯車機構8は、ドラム歯車63を太陽歯車とせずに、複数の遊星歯車85と歯合する太陽歯車84を別途設けるに加え、ドラム歯車63と太陽歯車84とを接続する複数の第1伝達歯車82及び複数の第2伝達歯車83を設けるため、単にドラム歯車63を太陽歯車とする構成(すなわち、複数の第1伝達歯車82、複数の第2伝達歯車83及び太陽歯車84を設けない構成)に比べ、ドラム6の回転力をさらに増幅してナット3に伝達することができる。
【0044】
また、遊星歯車機構8は、ナット3の回転を規制する規制部を有さないため、遊星歯車機構8によれば、ナット3を制限なく回転させることができる。
【0045】
[ガスボンベに対する継手の着脱動作]
次に、図2から図3Fを参照しながら第1実施形態におけるガスボンベに対する継手1の着脱動作について説明する。
【0046】
まず、ガスボンベに対する継手1の装着動作について説明する。
【0047】
図2に示すように、軸部材5に対し直線移動子4を上方に直線移動させる(すなわち、直線移動子4をガイドリング7に押圧させる)際に、図3Aの矢印で示すように、ガイドリング7が螺旋溝51にガイドされて反時計回りに回転しながら上方に移動する。
【0048】
そして、ガイドリング7の反時計回りの回転(回転運動)は、ガイドリング外歯712とドラム内歯611との歯合により、ドラム6に伝達される。すなわち、直線移動子4の直線運動は、ガイドリング7により回転運動に変換されてドラム6に伝達される。そして、図3Bの矢印で示すように、ガイドリング7によりドラム6に伝達された時計回りの回転(回転運動)は、ドラム歯車63と複数の第1伝達歯車82との歯合により、複数の第1伝達歯車82に伝達される。
【0049】
そして、図3Cの矢印で示すように、複数の第1伝達歯車82の時計回りの回転(回転運動)は、それぞれ複数の共通回転軸86を介して複数の第2伝達歯車83に伝達される。そして、図3Dの矢印で示すように、複数の第2伝達歯車83の時計回りの回転(回転運動)は、複数の第2伝達歯車83と太陽歯車84との歯合により、太陽歯車84に伝達される。
【0050】
そして、図3Eの矢印で示すように、太陽歯車84の反時計回りの回転(回転運動)は、太陽歯車84と複数の遊星歯車85との歯合により、複数の遊星歯車85に伝達される。この場合に、複数の遊星歯車85は、それぞれ複数の遊星歯車回転軸851を中心として時計回りに自転しながら太陽歯車84を中心として反時計回りに公転する。そして、図3Fの矢印で示すように、複数の遊星歯車85の反時計回りの公転(回転運動)は、それぞれ複数の遊星歯車回転軸851を介してナット3に伝達される。このため、ナット3の反時計回りの回転により、ガスボンベのガス供給口の雄ねじに対しナット3の雌ねじ311を締め付けることができる。
【0051】
上述のように、軸部材5に対し直線移動子4を上方に移動させるだけで、直線移動子4の直線運動がガイドリング7により反時計回りの回転運動に変換されてドラム6に伝達され、ドラム6に伝達された反時計回りの回転力が遊星歯車機構8により増幅されてナット3に伝達されるため、レンチ等の工具を用いることなく、ガスボンベに対する継手1の装着を容易に行うことができる。すなわち、ワンタッチでガスボンベに対する継手1の装着を行うことができる。
【0052】
次に、ガスボンベに対する継手1の離脱動作について説明する。なお、ガスボンベに対する継手1の離脱動作は、ガスボンベに対する継手1の装着動作とは真逆であるため、その詳細を省略する。
【0053】
軸部材5に対し直線移動子4を下方に直線移動させる(すなわち、直線移動子4をリテーナ2から引く)だけで、直線移動子4の直線運動がガイドリング7により時計回りの回転運動に変換されてドラム6に伝達され、ドラム6に伝達された時計回りの回転力が遊星歯車機構8により増幅されてナット3に伝達されるため、レンチ等の工具を用いることなく、ガスボンベに対する継手1の離脱を容易に行うことができる。すなわち、ワンタッチでガスボンベに対する継手1の離脱を行うことができる。
【0054】
[作用効果]
次に、第1実施形態による作用効果について説明する。
【0055】
第1実施形態に係る継手1は、ガスボンベに装着するための継手1であって、両端に開口する筒状のリテーナ2と、リテーナ2の周方向に回転可能にリテーナ2の上端に設けられたナット3と、リテーナ2の軸方向に沿って移動可能にリテーナ2の下端に設けられた筒状の直線移動子4と、直線移動子4の内周側に位置するとともに外周面に螺旋溝51が形成されるようにリテーナ2内に設けられた筒状の軸部材5と、内周面にドラム内歯611が形成され、周方向に回転可能にリテーナ2と軸部材5との間に設けられたドラム6と、螺旋溝51及びドラム内歯611の両方と歯合するように軸部材5とドラム6との間に設けられ、直線移動子4の直線運動を回転運動に変換してドラム6に伝達するガイドリング7と、ガイドリング7によりドラム6に伝達された回転運動をナット3に伝達する遊星歯車機構8と、を備える。
【0056】
この構成によれば、軸部材5に対し直線移動子4を上方に移動させるだけで、直線移動子4の直線運動がガイドリング7により反時計回りの回転運動に変換されてドラム6に伝達され、ドラム6に伝達された反時計回りの回転力が遊星歯車機構8により増幅されてナット3に伝達されるため、レンチ等の工具を用いることなく、ガスボンベに対する継手1の装着を容易に行うことができる。すなわち、ワンタッチでガスボンベに対する継手1の装着を行うことができる。
【0057】
また、第1実施形態では、ガイドリング7の内周面及び外周面には、それぞれ螺旋溝511と係合する突起711及びドラム内歯611と歯合するガイドリング外歯712が形成され、ガイドリング7は、直線移動子4の直線運動による押圧にて、上方に移動しながら周方向に回転する。
【0058】
この構成によれば、直線移動子4の単一方向の直線運動を容易に回転運動に変換してドラム6に伝達することができるため、ガスボンベに対する継手1の装着を容易に行うことができる。
【0059】
また、第1実施形態では、直線移動子4の先端には、環状のフランジ部43が設けられ、継手1は、外輪がフランジ部43の内周側に圧入されるように固定され、内輪がベアリング保持部72の外周側に嵌合されるベアリングOをさらに備える。
【0060】
この構成によれば、ベアリングOの内輪は、ガイドリング7と一体になって周方向に回転するが、フランジ部43は、ベアリングOの外輪と一体となって上下方向にのみ移動することができる。また、軸部材5に対し直線移動子4を下方に直線移動させる(すなわち、直線移動子4をリテーナ2から引く)際に、ベアリングOの外輪は、直線移動子4のフランジ部43の内周側に圧入されているため、ガイドリング7は、直線移動子4に対し周方向に回転しながら下方に移動することができる。
【0061】
このため、軸部材5に対し直線移動子4を下方に直線移動させる(すなわち、直線移動子4をリテーナ2から引く)だけで、直線移動子4の直線運動がガイドリング7により時計回りの回転運動に変換されてドラム6に伝達され、ドラム6に伝達された時計回りの回転力が遊星歯車機構8により増幅されてナット3に伝達されるため、レンチ等の工具を用いることなく、ガスボンベに対する継手1の離脱を容易に行うことができる。すなわち、ワンタッチでガスボンベに対する継手1の離脱を行うことができる。
【0062】
また、第1実施形態では、ドラム6の先端には、ドラム歯車63が設けられ、遊星歯車機構8は、ドラム歯車63と歯合する第1伝達歯車82と、第1伝達歯車82の共通回転軸86と共通する共通回転軸86を有する第2伝達歯車83と、第2伝達歯車83と歯合する太陽歯車84と、リテーナ2の内周面に形成された内歯車23と、太陽歯車84及び内歯車23の両方と歯合するようにナット3と連結された遊星歯車85と、を有する。
【0063】
この構成によれば、遊星歯車機構8は、ドラム歯車63を太陽歯車とせずに、遊星歯車85と歯合する太陽歯車84を別途設けるに加え、ドラム歯車63と太陽歯車84とを接続する第1伝達歯車82及び第2伝達歯車83を設けるため、単にドラム歯車63を太陽歯車とする構成(すなわち、第1伝達歯車82、第2伝達歯車83及び太陽歯車84を設けない構成)に比べ、ドラム6の回転力をさらに増幅してナット3に伝達することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、遊星歯車機構8は、第1伝達歯車82及び第2伝達歯車83の共通回転軸86を支持するようにドラム6とナット3との間に設けられた円板81をさらに有し、軸部材5は、円板81を介してリテーナ2に連結されている。
【0065】
この構成によれば、軸部材5とリテーナ2とを連結する部材と、第1伝達歯車82及び第2伝達歯車83の共通回転軸86を支持する部材とを、円板81に統合するため、継手1の簡易化を図ることができる。
【0066】
(第1変形例)
次に、図4A及び図4Bを参照しながら第1変形例に係る継手1について説明する。なお、第1変形例では、上述した第1実施形態と同様の点については省略し、主に上述した第1実施形態と相違する点について説明する。
【0067】
図4Aは、第1変形例に係る継手1の直線移動子4のアンロック状態を示す部分縦断面図である。図4Bは、第1変形例に係る継手1の直線移動子4のロック状態を示す部分縦断面図である。
【0068】
上述した第1実施形態では、継手1は、リテーナ2、ナット3、直線移動子4、軸部材5、ドラム6、ガイドリング7、ベアリングO及び遊星歯車機構8を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、リテーナ2、ナット3、直線移動子4、軸部材5、ドラム6、ガイドリング7、ベアリングO及び遊星歯車機構8に加え、第1変形例のようなロック機構9(図4A及び図4B参照)をさらに備えてもよい。
【0069】
図4A及び図4Bに示すように、第1変形例では、ロック機構9は、ナット3がガスボンベに締め付けられた状態において、直線移動子4の移動を規制するロック機構である。ロック機構9は、被ロック部としての爪44、爪収容凹部243、ロック部91、付勢部としてのコイルばね92及び支持部93を有する。
【0070】
爪44は、リテーナ2から露出する挿通部41の外周面に設けられている。また、爪44には、下方から上方に向かって縮径するテーパ441が形成されている。
【0071】
爪収容凹部243は、第2開口241の外周側に位置するとともに下方から上方に向かって凹むように蓋部24に形成されている。
【0072】
ロック部91は、リテーナ2の径方向に沿って移動可能にコイルばね92を介して支持部93に支持されている。また、ロック部91には、直線移動子4の移動時に爪44のテーパ441と摺動可能な摺動部911が設けられている。コイルばね92は、支持部93に収容されている。また、コイルばね92は、摺動部911を挿通部41側に移動するように付勢している。
【0073】
図4Aの矢印で示すように、軸部材5に対し直線移動子4を上方に直線移動させる際に、テーパ441は、コイルばね92の付勢力に抗して、摺動部911を挿通部41から離間する側に移動するように押圧する。
【0074】
そして、図4Bに示すように、直線移動子4の直線移動に伴い、爪44が爪収容凹部243に入り込んだ状態(すなわち、ナット3がガスボンベに締め付けられた状態)において、テーパ441による摺動部911への押圧が解除されているため、摺動部911は、コイルばね92の付勢により挿通部41側に移動する(図4Bの矢印参照)。そして、直線移動子4の下方への移動は、摺動部911により規制され、直線移動子4がロックされる。この結果、ガスボンベに対するナット3の締付の緩みを抑制することができる。
【0075】
第1変形例では、継手1は、ナット3がガスボンベに締め付けられた状態において、直線移動子4の移動を規制するロック機構9をさらに備える。
【0076】
この構成によれば、ガスボンベに対するナット3の締付の緩みを抑制することができる。
【0077】
(第2変形例)
次に、図5から図6Bを参照しながら第2変形例に係る継手1について説明する。なお、第2変形例では、上述した第1実施形態と同様の点については省略し、主に上述した第1実施形態と相違する点について説明する。
【0078】
図5は、第2変形例に係る継手1を示す縦断面図である。図6Aは、図5におけるVIA-VIA線に沿う断面図である。図6Bは、図5におけるVIB-VIB線に沿う断面図である。
【0079】
上述した第1実施形態では、遊星歯車機構8は、円板81、複数の第1伝達歯車82、複数の第2伝達歯車83、太陽歯車84、内歯車23、複数の遊星歯車85及び遊星歯車収容部32を有して構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2変形例のように、内歯車23、複数(ここでは、三つ)の遊星歯車85及び遊星ガイド87(図5から図6B参照)を有して構成されてもよい。
【0080】
第2変形例では、図5に示すように、ナット3は、ナット本体31と、ナット本体31の下端における外周側に設けられたナットフランジ33と、ナットフランジ33の下端から突出する複数(ここでは、三つ)の連結部としての突出ポール34と、を有する。なお、ナット本体31、ナットフランジ33及び複数の突出ポール34は、一体形成されている。
【0081】
図5及び図6Bに示すように、複数の突出ポール34は、周方向に所定間隔を空けるようにナットフランジ33に設けられている。複数の突出ポール34は、ナット3(具体的には、ナットフランジ33)と複数の遊星歯車85とを連結している。また、複数の突出ポール34は、それぞれ複数の遊星歯車85の回転軸でもある。
【0082】
図5及び図6Bに示すように、リテーナ2(具体的には、筒部21)の上端には、上述した第1実施形態のリング部22の代わりに、板部としての円板部25が設けられている。円板部25の中央には、配管Pが挿通された中央孔251が形成されている。また、円板部25には、複数の突出ポール34がそれぞれ貫通された複数(ここでは、三つ)の長孔252が形成されている。複数の長孔252は、周方向に所定間隔を空けるとともに周方向に沿って延在するように形成されている。なお、複数の長孔252は、ナット3の回転範囲を規制している。
【0083】
図5及び図6Bに示すように、円板部25は、複数の長孔252よりも内周側に位置する連結領域253と、複数の長孔252よりも外周側に位置する外周領域254と、隣接する長孔252の間に形成され連結領域253と外周領域254とを連結する複数(ここでは、三つ)の連通領域255と、を有する。
【0084】
連結領域253は、複数の連通領域255により外周領域254に保持されている。そして、軸部材5と円板部25とは、保持された連結領域253において、中央孔251と軸部材5の内周側とが連通するように連結されている。なお、軸部材5、円板部25及び筒部21とは、一体形成されている。
【0085】
このように、軸部材5は、リテーナ2の上端に設けられた円板部25を介して筒部21と連結されているため、他の部材(例えば、遊星歯車機構8等)を設けるリテーナ2内のレイアウトの自由度が向上するとともに他の部材(例えば、遊星歯車機構8等)の組み付けを行いやすくなる。
【0086】
また、連結領域253において軸部材5と円板部25とが連結されているため、外周領域254において軸部材5と円板部25とが連結された構成に比べ、軸部材5における連結箇所の径方向の小型化を図ることができる。この結果、軸部材5の径方向の小型化に伴い、遊星歯車機構8を設けるレイアウトの自由度が向上する。
【0087】
図5及び図6Aに示すように、複数の遊星歯車85は、太陽歯車としてのドラム歯車63及び内歯車23の両方と歯合するようにそれぞれ複数の長孔252が貫通された複数の突出ポール34を介してナット3と連結されている。これにより、複数の遊星歯車85の公転(回転運動)は、それぞれ複数の突出ポール34を介してナット3に伝達される。
【0088】
図5及び図6Aに示すように、遊星ガイド87は、複数の遊星歯車85を収容してドラム歯車63を中心として公転可能にガイドする。遊星ガイド87は、ドラム6のドラム蓋62と円板部25との間に設けられている。また、遊星ガイド87は、周方向に回転可能に軸部材5の外周側に設けられている。遊星ガイド87の中央には、軸部材5が挿通された軸部材挿通孔871が形成されている。また、軸部材挿通孔821よりも外周側に位置する遊星ガイド87の部分には、複数の遊星歯車85をそれぞれ収容する複数(ここでは、三つ)の遊星歯車収容室872が形成されている。そして、複数の突出ポール34は、遊星ガイド87に支持されている。これにより、遊星ガイド87は、複数の遊星歯車85の公転に伴って、ナット3と一体になって周方向に回転することができる。
【0089】
そして、ガイドリング7によりドラム6に伝達された回転(回転運動)は、ドラム歯車63と複数の遊星歯車85との歯合により、複数の遊星歯車85に伝達される。この場合に、複数の遊星歯車85は、それぞれ複数の突出ポール34を中心として自転しながらドラム歯車63を中心として公転する。そして、複数の遊星歯車85の公転(回転運動)は、それぞれ複数の突出ポール34を介してナット3及び遊星ガイド87に伝達される。
【0090】
第2変形例では、ドラム6の先端には、ドラム歯車63が設けられ、遊星歯車機構8は、リテーナ2の内周面に形成された内歯車23と、ドラム歯車63及び内歯車23の両方と歯合するようにナット3と連結された遊星歯車85と、を有する。
【0091】
この構成によれば、遊星歯車機構8は、内歯車23及び遊星歯車85を有して構成されているため、上述した第1実施形態の遊星歯車機構8に比べ、遊星歯車機構8を構成する部品の点数を削減することができる。この結果、継手1の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0092】
また、第2変形例では、リテーナ2の上端には、円板部25が設けられ、円板部25には、ナット3と複数の遊星歯車85とを連結する複数の突出ポール34がそれぞれ貫通されるとともに周方向に沿って延在する複数の長孔252が形成され、円板部25は、複数の長孔252よりも内周側に位置する連結領域253を有し、軸部材5と円板部25とは、連結領域253において連結されている。
【0093】
この構成によれば、軸部材5は、リテーナ2の上端に設けられた円板部25を介して筒部21と連結されているため、他の部材(例えば、遊星歯車機構8等)を設けるリテーナ2内のレイアウトの自由度が向上するとともに他の部材(例えば、遊星歯車機構8等)の組み付けを行いやすくなる。
【0094】
また、連結領域253において軸部材5と円板部25とが連結されているため、外周領域254において軸部材5と円板部25とが連結された構成に比べ、軸部材5における連結箇所の径方向の小型化を図ることができる。この結果、軸部材5の径方向の小型化に伴い、遊星歯車機構8を設けるレイアウトの自由度が向上する。
【0095】
(第2実施形態)
次に、図7から図9Dを参照しながら第2実施形態に係る継手1について説明する。なお、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同様の点については省略し、主に上述した第1実施形態と相違する点について説明する。
【0096】
図7は、第2実施形態に係る継手1を示す側面図である。図8は、図7におけるVIII-VIII線に沿う断面図である。図9Aは、図8におけるIXA-IXA線に沿う断面図である。図9Bは、図8におけるIXB-IXB線に沿う断面図である。図9Cは、図8におけるIXC-IXC線に沿う断面図である。図9Dは、図8におけるIXD-IXD線に沿う断面図である。
【0097】
上述した第1実施形態では、螺旋ガイド及び直線回転運動変換部材は、それぞれ螺旋溝51及びガイドリング7から構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2実施形態のように、雄ねじ52及び複数(ここでは、三つ)のねじ歯車7A(図7から図9A参照)から構成されてもよい。
【0098】
この場合に、図7から図9Aに示すように、直線移動子4は、上述した第1実施形態の直線移動子4ではなく、軸部材5の外周側に設けられた筒状の直線移動子本体41Aと、上下方向に沿って延在するように直線移動子本体41Aの周壁に周方向に所定間隔を空けて形成された複数(ここでは、三つ)の直進孔42Aと、直線移動子本体41Aの先端としての上端に周方向に所定間隔を空けて形成された複数(ここでは、三つ)の切り欠き43Aと、を有する。
【0099】
第2実施形態では、リテーナ2の筒部21の下端には、蓋部24(図2参照)が設けられていない。その代わりに、図8に示すように、筒部21の下端における内周面には、複数の直進孔42Aとそれぞれ係合する複数(ここでは、三つ)の係合ピン26が周方向に所定間隔を空けて装着されている。このように、複数の係合ピン26は、複数の直進孔42Aとそれぞれ係合しているため、直線移動子4は、リテーナ2(又は軸部材5)に対し回転せずに、リテーナ2(又は軸部材5)に対し上下方向に沿って直線移動することができる。
【0100】
また、ドラム本体61は、下端が係合ピン26と当接することにより、ドラム6の下方への移動を規制することができる。すなわち、係合ピン26は、ドラム6の下方への移動を規制する機能を果たしている。これにより、蓋部24を設ける必要がなく、ドラム6がリテーナ2の下端から脱落することを確実に防止することができる。
【0101】
図8に示すように、複数の切り欠き43Aには、それぞれ複数のねじ歯車7Aが回転可能に回転軸71Aを介して支持されて収容されている。これにより、直線移動子4は、それぞれ複数の切り欠き43Aに支持された複数のねじ歯車7Aとともに上下方向に沿って直線移動することができる。
【0102】
雄ねじ52は、軸部材5の外周面に形成されている。
【0103】
複数のねじ歯車7Aは、いずれも、雄ねじ52及びドラム内歯611の両方と歯合している。これにより、直線移動子4の直線移動に伴い、複数のねじ歯車7Aは、雄ねじ52との歯合により回転しながら上下方向に沿って移動することができる。この際に、回転する複数のねじ歯車7Aとドラム内歯611との歯合により、ドラム6を回転させる。
【0104】
このように、上述した第1実施形態と同様に、複数のねじ歯車7Aは、直線移動子4の二方向の直線運動を容易に回転運動に変換してドラム6に伝達することができるため、ガスボンベに対する継手1の着脱を容易に行うことができる。
【0105】
また、第2実施形態のリテーナ2、ナット3及び軸部材5(雄ねじ52を除く)は、上述した第2変形例のリテーナ2及びナット3と同様であるため、リテーナ2、ナット3及び軸部材5(螺旋溝51を除く)の詳細説明については省略する。
【0106】
また、上述した第1実施形態では、遊星歯車機構8は、円板81、複数の第1伝達歯車82、複数の第2伝達歯車83、太陽歯車84、内歯車23、複数の遊星歯車85及び遊星歯車収容部32を有して構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2実施形態のように、内歯車23、複数(ここでは、三つ)の第1遊星歯車81A、遊星ガイドとしての第1遊星ガイド82A、太陽歯車83A、複数(ここでは、三つ)の第2遊星歯車84A及び第2遊星ガイド85A(図7及び図9Bから図9D参照)を有して構成されてもよい。
【0107】
図8及び図9Bに示すように、複数の第1遊星歯車81Aは、ドラム歯車63及び内歯車23の両方と歯合している。
【0108】
第1遊星ガイド82Aは、複数の第1遊星歯車81Aを収容してドラム歯車63を中心として公転可能にガイドする。第1遊星ガイド82Aは、ドラム6のドラム蓋62と第2遊星ガイド85Aとの間に設けられている。また、第1遊星ガイド82Aは、周方向に回転可能に軸部材5の外周側に設けられている。
【0109】
第1遊星ガイド82Aの中央には、軸部材5が挿通された第1挿通孔821Aが形成されている。また、第1挿通孔821Aよりも外周側に位置する第1遊星ガイド82Aの部分には、複数の第1遊星歯車81Aをそれぞれ収容する複数(ここでは、三つ)の第1遊星歯車収容室822Aが形成されている。そして、複数の第1遊星歯車81Aの第1回転軸811Aは、第1遊星ガイド82Aに支持されている。これにより、第1遊星ガイド82Aは、複数の第1遊星歯車81Aの公転に伴って周方向に回転することができる。
【0110】
図8に示すように、太陽歯車83Aは、第1遊星ガイド82Aの先端に設けられている。
【0111】
図8図9C及び図9Dに示すように、複数の第2遊星歯車84Aは、太陽歯車83A及び内歯車23の両方と歯合するように複数の突出ポール34を介してナット3と連結されている。これにより、複数の第2遊星歯車84Aの公転(回転運動)は、それぞれ複数の突出ポール34を介してナット3に伝達される。
【0112】
第2遊星ガイド85Aは、複数の第2遊星歯車84Aを収容して太陽歯車83Aを中心として公転可能にガイドする。第2遊星ガイド85Aは、第1遊星ガイド82Aと円板部25との間に設けられている。また、第2遊星ガイド85Aは、周方向に回転可能に軸部材5の外周側に設けられている。
【0113】
第2遊星ガイド85Aの中央には、軸部材5が挿通された第2挿通孔851Aが形成されている。また、第2挿通孔851Aよりも外周側に位置する第2遊星ガイド85Aの部分には、複数の第2遊星歯車84Aをそれぞれ収容する複数(ここでは、三つ)の第2遊星歯車収容室852Aが形成されている。そして、複数の第2遊星歯車84Aの第2回転軸としての突出ポール34は、第2遊星ガイド85Aに支持されている。これにより、第2遊星ガイド85Aは、複数の第2遊星歯車84Aの公転に伴って、ナット3と一体になって周方向に回転することができる。
【0114】
そして、ねじ歯車7Aによりドラム6に伝達された回転(回転運動)は、ドラム歯車63と複数の第1遊星歯車81Aとの歯合により、複数の第1遊星歯車81A及び第1遊星ガイド82Aに伝達される。この場合に、複数の第1遊星歯車81Aは、それぞれ複数の第1回転軸811Aを中心として自転しながらドラム歯車63を中心として公転する。そして、第1遊星ガイド82Aは、複数の第1遊星歯車81Aの公転に伴って周方向に回転する。
【0115】
そして、第1遊星ガイド82Aの回転(回転運動)は、太陽歯車83Aと複数の第2遊星歯車84Aとの歯合により、複数の第2遊星歯車84Aに伝達される。この場合に、複数の第2遊星歯車84Aは、それぞれ複数の突出ポール34を中心として自転しながら太陽歯車83Aを中心として公転する。そして、複数の第2遊星歯車84Aの公転(回転運動)は、それぞれ複数の突出ポール34を介してナット3及び第2遊星ガイド85Aに伝達される。
【0116】
このように、遊星歯車機構8は、複数の第1遊星歯車81A及び複数の第2遊星歯車84Aを有する二段式遊星歯車構造を用いるため、ドラム6の回転力をさらに増幅してナット3に伝達することができる。
【0117】
第2実施形態では、螺旋ガイドは、雄ねじ52から構成され、直線回転運動変換部材は、雄ねじ52及びドラム内歯611の両方と歯合するように回転可能に直線移動子4に支持されたねじ歯車7Aから構成されている。
【0118】
この構成によれば、ねじ歯車7Aは、直線移動子4の二方向の直線運動を容易に回転運動に変換してドラム6に伝達することができるため、ガスボンベに対する継手1の着脱を容易に行うことができる。
【0119】
また、第2実施形態では、ドラム6の先端には、ドラム歯車63が設けられ、遊星歯車機構8は、リテーナ2の内周面に形成された内歯車23と、ドラム歯車63及び内歯車23の両方と歯合する第1遊星歯車81Aと、第1遊星歯車81Aがドラム歯車63を中心として回転可能にガイドされ、周方向に回転可能に軸部材5の外周側に設けられた第1遊星ガイド82Aと、第1遊星ガイド82Aの先端に設けられた太陽歯車83Aと、太陽歯車83A及び内歯車23の両方と歯合するようにナット3と連結された第2遊星歯車84Aと、を有する。
【0120】
この構成によれば、遊星歯車機構8は、複数の第1遊星歯車81A及び複数の第2遊星歯車84Aを有する二段式遊星歯車構造を用いるため、ドラム6の回転力をさらに増幅してナット3に伝達することができる。
【0121】
また、第2実施形態では、遊星歯車機構8は、内歯車23、複数の第1遊星歯車81A、第1遊星ガイド82A、太陽歯車83A、複数の第2遊星歯車84A及び第2遊星ガイド85Aを有して構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2変形例の遊星歯車機構8と同様に構成されてもよい。
【0122】
以上、本実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述した実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0123】
1 継手
2 リテーナ
3 ナット
4 直線移動子
5 軸部材
6 ドラム
7 ガイドリング(直線回転運動変換部材)
8 遊星歯車機構
9 ロック機構
O ベアリング
23 内歯車
43 フランジ部
52 螺旋溝(螺旋ガイド)
64 ドラム歯車
82 第1伝達歯車
83 第2伝達歯車
84 太陽歯車
85 遊星歯車
86 共通回転軸
611 ドラム内歯
711 突起
712 ガイドリング外歯
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D