(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087950
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電動車両の冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240625BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240625BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240625BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240625BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240625BHJP
【FI】
B60K11/04 G
B60L50/60
B60L58/26
B60L3/00 H
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202867
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ブディー ソエサント
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC15
3D235HH02
3D235HH12
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC19
5H125EE05
5H125EE25
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】電気自動車のキーオフ時において、駆動用バッテリ又は駆動用モータを冷却することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】この冷却装置1の制御部2000は、始動停止決定部1000が停止状態であり且つモータ温度測定部107cまたはバッテリ温度測定部206bでそれぞれにおける第1所定値以上の第1温度状態が検出された場合は、第1温度状態が検出された側において、第1通路103のみに第1冷却媒体を流入させる、または、第3通路203のみに第2冷却媒体を流入させ、第1温度状態が検出された側において、第1所定値よりも高い第2所定値以上の第2温度状態が検出された場合は、モータ側冷却回路100またはバッテリ側冷却回路200の一方から第2温度状態が検出された他方へ第1冷却媒体または第2冷却媒体を流入させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載機器を冷却する電動車両の冷却装置であって、
前記電動車両の始動及び停止を決定する始動停止決定部と、
前記電動車両の車輪に回転力を与える駆動用モータと、
前記駆動用モータへ電力を供給する駆動用バッテリと、
前記駆動用モータの温度を測定するモータ温度測定部と、
前記駆動用バッテリの温度を測定するバッテリ温度測定部と、
前記駆動用モータが配置され第1冷却媒体により冷却されるモータ側冷却回路と、
前記駆動用バッテリが配置され第2冷却媒体により冷却されるバッテリ側冷却回路と、
前記モータ側冷却回路において、前記駆動用モータが配置される第1通路と前記駆動用モータが配置されない第2通路と、
前記バッテリ側冷却回路において、前記駆動用バッテリが配置される第3通路と前記駆動用バッテリが配置されない第4通路と、
前記第2通路と前記第4通路を繋ぐ第5通路と、
前記第1通路と前記第2通路の分岐部に設けられる第1制御弁と、
前記第3通路と前記第4通路の分岐部に設けられる第2制御弁と、
前記第2通路と前記第5通路または前記第4通路と前記第5通路の分岐部に設けられる第3制御弁と、
前記第1制御弁と前記第2制御弁と前記第3制御弁とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記始動停止決定部が停止状態であり且つ前記モータ温度測定部または前記バッテリ温度測定部でそれぞれにおける第1所定値以上の第1温度状態が検出された場合は、前記第1温度状態が検出された側において、前記第1通路のみに前記第1冷却媒体を流入させる、または、前記第3通路のみに前記第2冷却媒体を流入させるように前記第1制御弁または前記第2制御弁を制御し、さらに、
前記第1温度状態が検出された側において、前記第1所定値よりも高い第2所定値以上の第2温度状態が検出された場合は、前記第3制御弁を制御し、前記モータ側冷却回路または前記バッテリ側冷却回路の一方から前記第2温度状態が検出された他方へ前記第1冷却媒体または前記第2冷却媒体を流入させることを特徴とする電動車両の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、駆動用バッテリから供給される電力で駆動用モータを駆動させることで各車輪に回転力を与え走行を行っている。駆動用バッテリや駆動用モータは高温になるため冷却媒体を用いて冷却される。例えば、特許文献1には、電動機を冷却媒体で冷却する冷却回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車が走行を停止しキーオフした際に、駆動用バッテリや駆動用モータなどが異常な高温状態となっていても、キーオフにより冷却装置が作動停止または作動停止に向け準備中であると、駆動用バッテリや駆動用モータなどが十分に冷却されないことが懸念される。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電気自動車のキーオフ時において、駆動用バッテリ又は駆動用モータを冷却することができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る電動車両の冷却装置は、搭載機器を冷却する電動車両の冷却装置であって、前記電動車両の始動及び停止を決定する始動停止決定部と、前記電動車両の車輪に回転力を与える駆動用モータと、前記駆動用モータへ電力を供給する駆動用バッテリと、前記駆動用モータの温度を測定するモータ温度測定部と、前記駆動用バッテリの温度を測定するバッテリ温度測定部と、前記駆動用モータが配置され第1冷却媒体により冷却されるモータ側冷却回路と、前記駆動用バッテリが配置され第2冷却媒体により冷却されるバッテリ側冷却回路と、前記モータ側冷却回路において、前記駆動用モータが配置される第1通路と前記駆動用モータが配置されない第2通路と、前記バッテリ側冷却回路において、前記駆動用バッテリが配置される第3通路と前記駆動用バッテリが配置されない第4通路と、前記第2通路と前記第4通路を繋ぐ第5通路と、前記第1通路と前記第2通路の分岐部に設けられる第1制御弁と、前記第3通路と前記第4通路の分岐部に設けられる第2制御弁と、前記第2通路と前記第5通路または前記第4通路と前記第5通路の分岐部に設けられる第3制御弁と、前記第1制御弁と前記第2制御弁と前記第3制御弁とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記始動停止決定部が停止状態であり且つ前記モータ温度測定部または前記バッテリ温度測定部でそれぞれにおける第1所定値以上の第1温度状態が検出された場合は、前記第1温度状態が検出された側において、前記第1通路のみに前記第1冷却媒体を流入させる、または、前記第3通路のみに前記第2冷却媒体を流入させるように前記第1制御弁または前記第2制御弁を制御し、さらに、前記第1温度状態が検出された側において、前記第1所定値よりも高い第2所定値以上の第2温度状態が検出された場合は、前記第3制御弁を制御し、前記モータ側冷却回路または前記バッテリ側冷却回路の一方から前記第2温度状態が検出された他方へ前記第1冷却媒体または前記第2冷却媒体を流入させることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、駆動用モータが高温となった場合(つまり、モータ温度測定部において第1所定値以上の第1温度状態が検出された場合)には、通常運転時においては第1通路及び第2通路の両方に流れている第1冷却媒体を第1通路のみに集中的に供給することができるため、高温となった駆動用モータを十分に冷却することができる。同様に、駆動用バッテリが高温となった場合(つまり、バッテリ温度測定部において第1所定値以上の第1温度状態が検出された場合)には、通常運転時においては第3通路及び第4通路の両方に流れている第2冷却媒体を第3通路のみに集中的に供給することができるため、高温となった駆動用バッテリを集中的に冷却することができる。
【0009】
また、本適用例によれば、駆動用モータ及び駆動用バッテリのいずれかがさらに高温となった場合(つまり、第1温度状態が検出された側において第1所定値よりも高い第2所定値以上の第2温度状態が検出された場合)には、モータ側冷却回路及びバッテリ側冷却回路のうち第2温度状態が検出されていない側から検出された側に冷却媒体を供給することができるため、さらに高温となった駆動用モータ及び駆動用バッテリのいずれかをより集中的に冷却することができる。
【0010】
よって、本発明によれば、電気自動車のキーオフ時において、駆動用バッテリ又は駆動用モータを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電動車両の冷却装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す冷却部における通常運転時の動作を示す概略図である。
【
図3】
図2に示す冷却部における第1温度検出時(駆動用モータ側)の動作を示す概略図である。
【
図4】
図2に示す冷却部における第2温度検出時(駆動用モータ側)の動作を示す概略図である。
【
図5】
図2に示す冷却部における第1温度検出時(駆動用バッテリ側)の動作を示す概略図である。
【
図6】
図2に示す冷却部における第2温度検出時(駆動用バッテリ側)の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、
図1~
図6を適宜参照しつつ、本発明に係る電動車両の冷却装置の一実施形態について説明する。
【0013】
1.電動車両の冷却装置の構成
(1)全体構成
図1に示すように、電動車両の冷却装置1は、電動車両のキーオン(始動状態)及びキーオフ(停止状態)を切換可能であって電動車両の始動及び停止を決定する始動停止決定部1000と、始動停止決定部1000がキーオフにされていることを検出した場合に稼働する制御部2000と、制御部2000の制御によって電動車両の搭載機器を冷却する冷却部3000とを備える。
【0014】
図2に示すように、冷却部3000は、モータ側冷却回路100と、バッテリ側冷却回路200と、空調冷媒供給回路300と、PTCヒータ側熱交換回路400とを備えている。
【0015】
(2)モータ側冷却回路100の構成
モータ側冷却回路100は、第1冷却媒体(例えば水)を貯留するリザーバ101と、第1冷却媒体をリザーバ101から吸い出すためのポンプ102と、第1冷却媒体が供給される第1通路103、第2通路A104及び第2通路B105と、第1通路103、第2通路A104及び第2通路B105から流出した第1冷却媒体を冷却してリザーバ101に戻すためのラジエータ113とを備えている。
【0016】
第1通路103は、第1冷却媒体の温度を測定するための温度センサ106と、電動車両の動力源となるモータユニット(以下、eDM107)とを備えている。eDM107は、インバータ107aと、インバータ107aから供給される電力により駆動して電動車両の車輪に回転力を与える駆動用モータ107bと、駆動用モータ107bの温度を測定するモータ温度測定部107cとを備えている。
【0017】
第2通路A104は、第2通路A104における第1冷却媒体の流量を制御可能なオリフィス部108を備えている。第2通路A104は、駆動用モータ及び駆動用バッテリ等の熱源が配置されていない、いわゆるバイパス通路である。
【0018】
第2通路B105は、第2通路B105における第1冷却媒体の流量を制御可能なオリフィス部109と、電動PTO(電動パワーテイクオフ)に電力を供給するためのePTOインバータ110とを備えている。第2通路B105は、駆動用モータ及び駆動用バッテリ等の熱源が配置されていない、いわゆるバイパス通路である。
【0019】
第1制御弁111は、第1通路103と第2通路A104及び第2通路B105との分岐部に設けられており、第1冷却媒体を第1通路103に供給するか否かと、第1冷却媒体を第2通路A104に供給するか否かと、第1冷却媒体を第2通路B105に供給するか否かとを制御可能に構成されている。
【0020】
第3制御弁A112は、第2通路A104と第5通路B502との分岐部に設けられており、第1冷却媒体を第1通路104の下流側(第1冷却媒体の流れにおける下流側)まで供給するか否かと、第1冷却媒体を第5通路B502に供給するか否かと、第2冷却媒体を第5通路B502から上記第1通路104の下流側に向けて流入させるか否かとを制御可能に構成されている。第5通路B502は、第2通路A104と第4通路204とを繋ぐ通路である。第2冷却媒体は、バッテリ側冷却回路200を循環する冷却媒体である。
【0021】
(3)バッテリ側冷却回路200の構成
バッテリ側冷却回路200は、第2冷却媒体を貯留するリザーバ201と、第2冷却媒体をリザーバ201から吸い出すためのポンプ202と、第2冷却媒体が供給される第3通路203及び第4通路204と、第3通路203及び第4通路204から流出した第2冷却媒体をチラー213及びラジエータ214の一方のみ又は両方に供給可能な三方切換弁212と、第2冷却媒体を冷却してポンプ202に戻すためのチラー213(熱交換器)及びラジエータ214(熱交換器)とを備えている。
【0022】
第3通路203は、低温の水によって第2冷却媒体を冷却するための水ヒータ205と、eDM107の電力源であるバッテリユニット206とを備えている。バッテリユニット206は、インバータ107aを介して駆動用モータ107bへ電力を供給する駆動用バッテリ206aと、駆動用バッテリ206aの温度を測定するバッテリ温度測定部206bとを備えている。駆動用バッテリ206aは、単数又は複数のバッテリから構成されている。
【0023】
第4通路204は、第4通路204に供給される第2冷却媒体の流量を制限するオリフィス部215と、オリフィス部215から供給される第2冷却媒体により冷却されるDC-DCコンバータ208と、DC-DCコンバータ208から供給される第2冷却媒体により冷却される車載充電器209とを備えている。第4通路204は、駆動用モータ及び駆動用バッテリ等の熱源が配置されていない、いわゆるバイパス通路である。
【0024】
第2制御弁210は、第3通路203と第4通路204との分岐部に設けられており、第2冷却媒体を第3通路203に供給するか否かと、第2冷却媒体を第4通路204に供給するか否かとを制御可能に構成されている。
【0025】
第3制御弁B211は、第4通路204と第5通路A501との分岐部に設けられており、第2冷却媒体を第4通路204の下流側(第2冷却媒体の流れにおける下流側)まで供給するか否かと、第2冷却媒体を第5通路501に供給するか否かと、第1冷却媒体を第5通路501から上記第4通路204の下流側に向けて流入させるか否かとを制御可能に構成されている。第5通路A501は、第2通路B105と第4通路204とを繋ぐ通路である。
【0026】
(空調冷媒供給回路300の構成)
空調冷媒供給回路300は、空調冷媒(冷媒ガス)を凝縮する第1凝縮器301と、第1凝縮器301から供給される空調冷媒をさらに凝縮する第2凝縮器302と、第2凝縮器302から蒸発器305に空調冷媒を供給するか否かを制御するバルブ303と、第2凝縮器302からチラー213へ空調冷媒を供給するか否かを制御するバルブ304と、電動車両の空調設備(冷房及び暖房機能を有する設備)であるHVACユニットの一部であって空調冷媒を蒸発させる蒸発器305と、蒸発器305から供給される空調冷媒を圧縮して第1凝縮器301に戻す圧縮機306とを備える。
【0027】
チラー213は空調冷媒供給回路300上では蒸発器として機能し、バッテリ側冷却回路200の第2冷却媒体を冷却可能である。
【0028】
また、モータ側冷却回路100のラジエータ113、バッテリ側冷却回路200のラジエータ214、空調冷媒供給回路300の第2凝縮器302は、同一のファンによる送風により空冷される構成をなしている。
【0029】
(PTCヒータ側熱交換回路400の構成)
PTCヒータ側熱交換回路400は、電動車両の空調設備(冷房及び暖房機能を有する設備)であるHVACユニットの一部であって空気(熱媒体)を加熱するヒータコア401と、ヒータコア401から熱媒体を吸い出すポンプ402と、ポンプ402から供給される熱媒体を水の加熱に利用してからヒータコア401に戻すPTCヒータ403とを備えている。
【0030】
(制御部2000による制御範囲)
図1に示す制御部2000は、
図2に示す第1制御弁111,第2制御弁210、第3制御弁A112、第3制御弁B211、三方切換弁212、バルブ303及びバルブ304を制御可能である。ここでの制御は、少なくとも、冷却媒体の供給方向と冷却媒体の流量との両方の制御を含んでいる。
【0031】
2.電動車両の冷却装置の動作
図2に示すように、通常運転時、すなわち、
図1に示す始動停止決定部1000がキーオンである場合、第1通路103、第2通路A104、第2通路B105、第3通路203及び第4通路204において冷却媒体が流れており、第5通路A501及び第5通路B502においては冷却媒体が流れていない。これに対し、
図3~
図6に示す高温検出時の動作は、
図1に示す始動停止決定部1000がキーオフ(停止状態)にある場合におけるものである。
【0032】
図3に示すように、制御部2000は、駆動用モータ107b側での第1温度検出時、すなわち、モータ温度測定部107cが第1モータ温度所定値以上(例えば80℃以上)のモータ温度を検出した時には、第2通路A104及び第2通路B105には第1冷却媒体を流入させずに第1通路103のみに第1冷却媒体を集中的に流入させる。
【0033】
図4に示すように、制御部2000は、駆動用モータ107b側での第2温度検出時、すなわち、モータ温度測定部107cが第2モータ温度所定値以上(例えば95℃以上)のモータ温度を検出した時には、第4通路204から第3制御弁B211及び第5通路A501を介して第2通路A105に第2冷却媒体を流入させ、かつ、第4通路204から第5通路B502及び第3制御弁A112を介して第2通路A104に第2冷却媒体を流入させる。第2モータ温度所定値は、第1モータ温度所定値よりも高い温度である。
【0034】
また、
図4に示すように、制御部2000は、第2制御弁210により第3通路203への第2冷却媒体の流入を停止する。さらに、制御部2000は、空調冷媒供給回路300のバルブ303を閉じ、バルブ304を開けることで空調冷媒をチラー213に送る。また、制御部2000は、モータ側冷却回路100のラジエータ113と、バッテリ側冷却回路200のラジエータ214と、空調冷媒供給回路300の第2凝縮器302とに送風するファンの出力を最大にする。これにより、第2冷却媒体は、ラジエータ214だけでなくチラー213によっても冷却される。
【0035】
図5に示すように、制御部2000は、駆動用バッテリ206a側での第1温度検出時、すなわち、バッテリ温度測定部206bが第1バッテリ温度所定値以上(例えば60℃以上)のバッテリ温度を検出した時には、第4通路204には第2冷却媒体を流入させずに第3通路203のみに第2冷却媒体を集中的に流入させる。
【0036】
図6に示すように、制御部2000は、駆動用バッテリ206a側での第2温度検出時、すなわち、バッテリ温度測定部206bが第2バッテリ温度所定値以上(例えば75℃以上)のバッテリ温度を検出した時には、第2通路A104から第3制御弁A112及び第5通路B502を介して第4通路204に第1冷却媒体を流入させ、かつ、第2通路B105から第5通路A501及び第3制御弁B211を介して第4通路204に第1冷却媒体を流入させる。第2バッテリ温度所定値は、第1バッテリ温度所定値よりも高い温度である。
【0037】
また、
図6に示すように、制御部2000は、第2制御弁210により第4通路204への第2冷却媒体の流入を停止する。さらに、制御部2000は、空調冷媒供給回路300のバルブ303を閉じ、バルブ304を開けることで空調冷媒をチラー213に送る。また、制御部2000は、モータ側冷却回路100のラジエータ113と、バッテリ側冷却回路200のラジエータ214と、空調冷媒供給回路300の第2凝縮器302とに送風するファンの出力を最大にする。これにより、第2冷却媒体は、ラジエータ214だけでなくチラー213によっても冷却される。
【0038】
3.電動車両の冷却装置の効果
電動車両の冷却装置1によれば、駆動用モータ107bが高温となった場合(つまり、モータ温度測定部107cにおいて第1モータ温度所定値以上のモータ温度が検出された場合)には、通常運転時においては第1通路103、第2通路A104及び第2通路B105に流れている第1冷却媒体を第1通路103のみに集中的に供給することで、高温となった駆動用モータ107bを十分に冷却することができる。同様に、駆動用バッテリ206aが高温となった場合(つまり、バッテリ温度測定部206bにおいて第1バッテリ温度所定値以上のバッテリ温度が検出された場合)には、通常運転時においては第3通路203及び第4通路204の両方に流れている第2冷却媒体を第3通路203のみに集中的に供給することで、高温となった駆動用バッテリ206aを集中的に冷却することができる。
【0039】
また、駆動用モータ107b及び駆動用バッテリ206aのいずれかがさらに高温となった場合(つまり、第1温度が検出された側において第1所定値よりも高い第2所定値以上の第2温度が検出された場合)には、モータ側冷却回路100及びバッテリ側冷却回路200のうち第2温度が検出されていない側から検出された側に冷却媒体を供給することで、さらに高温となった駆動用モータ107b及び駆動用バッテリ206aのいずれかをより集中的に冷却することができる。また、この時、空調冷媒供給回路300においてチラー213に空調冷媒を供給することで、さらに高温となった駆動用モータ107b及び駆動用バッテリ206aに対する冷却性能をより一層向上させることができる。
【0040】
よって、電気自動車のキーオフ時において、駆動用バッテリ206a又は駆動用モータ107bを冷却することができる。
【0041】
4.その他
上記一実施形態において、第2通路A104と第2通路B105とをまとめて1つの第2通路にしてもよく、または、別の第2通路をさらに形成してもよい。第4通路204についても複数形成してもよい。第5通路A501と第5通路B502とをまとめて1つの第5通路にしてもよく、または、別の第5通路をさらに形成してもよい。
【0042】
上記一実施形態において、第1制御弁111を、第2通路A104と第1通路103との分岐部に設けるのであれば、第2通路A104と第2通路B105とにまたがって設ける必要はない。
【0043】
上記一実施形態において、第3制御弁A112を第4通路204と第5通路B502との分岐部に設けてもよく、第3制御弁B211を第2通路B105と第5通路A501との分岐部に設けてもよい。
【0044】
上記一実施形態において、
図3に示す第1温度検出時(駆動用モータ側)においては第3通路203及び第4通路204のいずれか一方のみに第2冷却媒体を供給してもよく、
図4に示す第2温度検出時(駆動用モータ側)においては第4通路204のみに第2冷却媒体を供給してもよく、
図5に示す第1温度検出時(駆動用バッテリ側)においては第1通路103、第2通路A104及び第2通路B105のいずれか1つ又は2つのみに第1冷却媒体を供給してもよく、
図6に示す第2温度検出時(駆動用バッテリ側)においては第1冷却媒体を第1通路103には供給せずに第2通路A104及び第2通路B105のいずれか1つのみ又は2つのみに供給してもよい。
【0045】
上記一実施形態において、
図3~
図6に示す状態(第1温度状態や第2温度状態)になったことを自車両内または/及び自車両外に警告する警告装置をさらに設けてもよい。この場合、自車両内への警告は警告音や警告表示などを用いてもよく、また自車両外への警告は無線通信で車両所有者などの関係者の携帯端末などに知らせるようにしてもよい。このようにすれば、警告を把握した人物は、自車両に対し適切な処置を施すことが可能となる。
【0046】
尚、本明細書でのキーオン及びキーオフは、キーを鍵穴に差し込みオン、オフを行う構成でもよいし、例えば、始動・停止ボタンでオン、オフを行うような構成でもよく、始動停止決定部1000の始動(キーオン)、停止(キーオフ)を決定するものであればよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電動車両の冷却装置
100 モータ側冷却回路
101 リザーバ
102 ポンプ
103 第1通路
104 第2通路
105 第3通路
106 温度センサ
107 eDM
107a インバータ
107b 駆動用モータ
107c モータ温度測定部
108、109 オリフィス部
110 ePTOインバータ
111 第1制御弁
112 第3制御弁A
113 ラジエータ
200 バッテリ側冷却回路
201 リザーバ
202 ポンプ
203 第3通路
204 第4通路
205 水ヒータ
206 バッテリユニット
206a 駆動用バッテリ
206b バッテリ温度測定部
208 DC-DCコンバータ
209 車載充電器
210 第2制御弁
211 第3制御弁B
212 三方切換弁
213 チラー
214 ラジエータ
215 オリフィス部
300 空調冷媒供給回路
301 第1凝縮器
302 第2凝縮器
303、304 バルブ
305 蒸発器
306 圧縮機
400 PTCヒータ側熱交換回路
401 ヒータコア
402 ポンプ
403 PTCヒータ
1000 始動停止決定部
2000 制御部
3000 冷却部