(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087953
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】構造体ブロックおよび構造体ブロックを用いた構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202873
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】592136635
【氏名又は名称】株式会社オーイケ
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀実
(72)【発明者】
【氏名】大池 悦二
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA05
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋梁をさらに効率的に施工あるいは製造できる橋台ブロックを提供する。
【解決手段】上下方向に延びた第1の構造体14と、第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部13aと、第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部13bとを有する構造体ブロック10であって、第1の基礎部および第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔70であって、第1の基礎部および第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、第1の基礎部および第2の基礎部の上側から調整できるように高さ調整用のボルト75をねじ込むことができる貫通孔を有する構造体ブロック10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びた第1の構造体と、
前記第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、
前記第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有する構造体ブロックであって、
前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔であって、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の上側から調整できるように高さ調整用のボルトをねじ込むことができる貫通孔を有する、構造体ブロック。
【請求項2】
請求項1において、
前記貫通孔の前記底面の近傍に、前記高さ調整用のボルトを取り付けるためのナット部を含む、構造体ブロック。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の構造体は、橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部の後方に立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部とを含む、構造体ブロック。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
当該構造体ブロックはプレキャストする際に前記第1の構造体が下となる型枠が用いられ、前記底面がコンクリートを打設する面である、構造体ブロック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の構造体ブロックを有する構造物。
【請求項6】
上下方向に延びた第1の構造体を有する構造物の施工方法であって、
前記第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、前記第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有する構造体ブロックを設置することを有し、
前記設置することは、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔のそれぞれに高さ調整用ボルトをねじ込み、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の上側から調整することを含む、施工方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の構造体は、橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部の後方に立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部とを含み、当該施工方法は、さらに、
前記第1の構造体の前記支承部に前記床板を乗せて前記橋梁を施工することを含む、施工方法。
【請求項8】
構造体ブロックの製造方法であって、
前記構造体ブロックは、上下方向に延びた第1の構造体と、
前記第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、
前記第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有し、
当該製造方法は、
前記第1の構造体が下となる型枠を用いて成型することを有し、
前記成型することは、コンクリートを打設する面となる前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の底面に、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つの貫通孔であって、前記第1の構造体を立てた状態で前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、前記第1の基礎部および前記第2の基礎部の上側から調整できるように高さ調整用のボルトをねじ込むことができる貫通孔を成型するための補助型枠またはスリーブを配置することを含む、構造体ブロックの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記成型することは、前記貫通孔の前記底面の近傍に、前記高さ調整用のボルトを取り付けるためのナット部を埋設することを含む、構造体ブロックの製造方法。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記成型することは、前記第1の構造体として、橋梁の床板を支持する支承部および前記支承部の後方に立ち上がったパラペット部を含む上部と、前記上部を支持する竪壁部とを成型することを含む、構造体ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体ブロックおよび構造体ブロックを用いた構造物の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、場所打ちホロースラブ橋やプレストレストコンクリートホロー桁橋などの版構造のコンクリートスラブ橋において、橋脚などの下部工が変位し支承座からスラブ端が外れても橋体が落下しないようにし、落橋による二次災害の発生を防止することが記載されている。そのため、コンクリートスラブ橋の橋軸方向に橋体を貫通して両橋台間にPCケーブルを張設し、このPCケーブルの張力はたるみを除去する程度とし、PCケーブルの端部をそれぞれ両橋台のパラペットに定着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁などの構造物において、その基礎となる橋台などを短期間で施工することが求められている。例えば、橋台においては、床板と接する支承部と支承部から立ち上がったパラペット部とを有する上部(上部構造)は精度とともに十分な強度が要求される。しかしながら、パラペット部を含む上部は、橋台の最も上に位置する構造部分であり、強度を確保することが難しい。例えば、現場で橋台を施工する場合は、底板を打設し(工程1)、その上に竪壁を打設し(工程2)、さらに、竪壁の上にパラペット部を打設する(工程3)という、少なくとも3段階の工程が必要になる。パラペット部を打設する際は、竪壁の上にパラペット用の鉄筋を延ばして、パラペット用のコンクリートを打ち継ぐことになるが、その境界がコールドジョイントとなるリスクがあり、接合部の強度を確保することが難しい。
【0005】
次に、コンクリートにより型枠を用いて橋台を施工する際に、上部の面は、気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しやすく、施工時の乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けやすい。このため、支承部となる竪壁の上面については、精度および強度ともに確保することは容易ではなく、橋台の上部の施工は、熟練の作業者が十分な時間をかけて行う必要がある。橋台を搬送可能な複数のブロックに分割して工場においてプレハブ(プレキャスト)して提供することが検討されている。この場合、プレキャストされた複数の橋台ブロックを施工現場において、短時間で精度よく組み合わせることが要求される。大型の構造物あるいはその一部を複数のブロックに分けてプレキャストして提供される場合も同様に、施工現場において、短時間で精度よく組み合わせできることが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上下方向に延びた第1の構造体と、第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有する構造体ブロックである。この構造体ブロックは、第1の基礎部および第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔を有し、それぞれの貫通孔は、第1の基礎部および第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、第1の基礎部および第2の基礎部の上側から調整できるように高さ調整用のボルトをねじ込むことができるようになっている。この構造体ブロックは、設置現場において、第1および第2の基礎部の上側から高さ調整用のボルトを操作することにより、設置現場の地盤あるいは基礎コンクリートに対する高さおよび傾きを調整できる。したがって、施工現場において複数の構造体ブロックを精度よく組み立てて構造物を施工できる。
【0007】
貫通孔の底面の近傍に、高さ調整用のボルトを取り付けるためのナット部を含んでもよい。第1の構造体は、橋梁の床板を支持する支承部および支承部の後方から立ち上がったパラペット部を含む上部と、上部を支持する竪壁部とを含んでもよい。橋台を精度よく施工できる橋台ブロックを提供できる。
【0008】
構造体ブロックはプレキャストする際に第1の構造体が下となる型枠が用いられ、底面がコンクリートを打設(注入)する面であってもよい。第1の構造体が型枠の下側に位置することにより気泡などの影響が少ない、形状の精度が高く、強度も高い第1の構造体を備えた構造体ブロックを提供できる。さらに、コンクリートを打設する面は型枠の内面に面していないために、凹凸があったり、上昇した気泡の後があったりして水平な面に合わせにくい。これに対して本例の構造体ブロックは、基礎の底面の下側に高さ調整用ボルトを突き出すことができるので、底面に歪みなどがあってもそれに影響されることなく、構造体ブロックを施工できる。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、上下方向に延びた第1の構造体を有する構造物の施工方法である。この施工方法は、第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有する構造体ブロックを設置することを有し、その際に、第1の基礎部および第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔のそれぞれに高さ調整用ボルトをねじ込み、第1の基礎部および第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、第1の基礎部および第2の基礎部の上側から調整することを含む。
【0010】
第1の構造体は、橋梁の床板を支持する支承部および支承部の後方に立ち上がったパラペット部を含む上部と、上部を支持する竪壁部とを含んでもよく、施工方法は、第1の構造体の支承部に床板を乗せて橋梁を施工することを含んでもよい。
【0011】
本発明の他の態様の1つは、構造体ブロックの製造方法である。構造体ブロックは、上下方向に延びた第1の構造体と、第1の構造体の前方に延びた第1の基礎部と、第1の構造体の後方に延びた第2の基礎部とを有する。製造方法は、第1の構造体が下となる型枠を用いて成型することを有し、成型することは、コンクリートを打設する面となる第1の基礎部および第2の基礎部の底面に、第1の構造体を立てた状態で第1の基礎部および第2の基礎部の一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つの貫通孔であって、第1の基礎部および第2の基礎部の底面から下側に突き出る量を、第1の基礎部および第2の基礎部の上側から調整できるように高さ調整用のボルトをねじ込むことができる貫通孔を成型するための補助型枠またはスリーブを配置することを含む。成型することは、貫通孔の底面の近傍に、高さ調整用のボルトを取り付けるためのナット部を埋設することを含んでもよい。成型することは、第1の構造体として、橋梁の床板を支持する支承部および支承部の後方に立ち上がったパラペット部を含む上部と、上部を支持する竪壁部とを成型することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】橋台ブロックの高さ調整を行う様子を示す図。
【
図4】橋台ブロックの高さ調整用の貫通孔を示す図。
【
図5】橋台ブロックの高さ調整を行った後に固定する様子を示す図。
【
図6】橋台ブロックからなる橋台を上方から見た図。
【
図7】橋台ブロックの一例(
図7(a))およびそれをプレキャスト(プレハブ)する型枠(
図7(b))を示す図。
【
図8】橋台ブロックの異なる例により組み立てられた橋台を上方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一例の構造物として、橋梁(橋、橋構造体)の概要を示す。
図2に、橋梁1を製造(施工)する様子を示す。橋梁1は、河川2などの障害となるものの上を横断する構造体であり、河川2の護岸5の両側3に配置された橋台100と、両側の橋台100に支持され、河川2を跨ぐように配置された床板ブロック30と、床板ブロック30に設けられた地覆(地覆部)20に設置された防護柵(欄干)40とを含む。橋台100は、一体型で工場プレハブ(プレキャスト)され、強度の高い上部(上部構造)11を備えた複数の橋台ブロック10を設置することにより施工される。また、床板(床版、スラブ板)30も、工場プレハブ(プレキャスト)されており、両側の床板31は地覆20も含めてプレキャストされている。したがって、橋梁1は、これらのプレキャストされたコンクリート製のブロック(物品)10、30および31を現場において組み立てることにより、短期間で施工することができ、施工に要する労力も軽減できる。
【0014】
橋梁1の一例は、スパン(橋台ブロック間の距離)が3mを超え、概ね10m程度以下、さらに好適には、スパンが8m以下の現場で、輪荷重が、例えば、8トン以上の道路4を設置するなどの目的で施工される橋梁1に適している。さらに、河川2などに既存の護岸構造物5がある場所において、護岸構造物5を概ね保存した状態で、河川2を堰き止めたり、流れを変えることなく、最短のスパンで橋梁1を施工する場合に適している。なお、上記の数値は例示であり、これに限定されるものではない。
【0015】
図2に示すように、橋台100を組み立てる橋台ブロック10は、前側(内側)19aに設けられた床板(床版)30および31を支持する支承部15と、支承部15から立ち上がった、後方19bのパラペット部16とを含む上部(上部構造、床板支持部、床板支持構造)11を有する。橋台ブロック10は、さらに、この上部11と、上部11を支持する竪壁部12と、竪壁部12を支持するように前方19aおよび後方19bに延びたフーチング部13とを有し、これらが一体でプレキャストされた逆T字型の橋台ブロックである。本護岸の擁壁5の背面を、橋台ブロック10が搬入および設置できる程度に掘削し、橋台ブロック10を設置(施工)する。その後、橋台ブロック10の上に、床板30および/または地覆20がプレハブされた地覆付きの床板31を乗せる(搭載する)ことで、橋梁1を施工できる。橋台100を現場打ちで施工する場合、型枠を組み外すためのスペースがさらに要求されるが、プレキャストされた本例の橋台ブロック10にはそのようなスペースは不要であり、橋台100を施工するために掘削する領域9を最小限に止めることができる。
【0016】
例えば、掘削した領域9に、基礎砕石およびベースコンクリートを含む基礎コンクリート層7を施工し、その上に、高さ調整用のグラウトを介して橋台ブロック10を設置してもよい。この方法により、擁壁5を崩さずに橋台ブロック10を施工でき、橋台ブロック10はプレキャストされているので養生期間も基本的に不要であり、短期間で橋梁1を施工できる。
【0017】
本例の橋台ブロック10は、橋梁の床板(床版)20および30を支持する支承部15と、支承部15から立ち上がったパラペット部16とを含む上部(上部構造、床板支持部、床板支持構造)11を有する。橋台ブロック10は、さらに、この上部11と、上部11を支持する竪壁部12を含み、これらの上部11および竪壁部12からなる構造体(第1の構造体)14と、構造体14を支持する基礎部(フーチング部)13とを有し、これらが一体でプレキャストされた逆T字型の橋台ブロックである。例えば、スパンが3m以上で輪荷重8トン以上の橋梁用の橋台になると、支持力を高める必要があり、フーチング部13の底面積を増やさなくてはならない。
【0018】
プレキャストタイプの橋台ブロックとして、本願の発明者らは、重力式橋台ブロックを提案している。重力式の橋台ブロックは、一定勾配で下側に拡がっている、断面が片台形あるいは両台形である。このため、重力式橋台ブロックは、底部が広くなると深くなり、下側の面積が大きくなる。重力式橋台ブロックは、スパンが4m以下と短くまた、輪荷重が8トン程度以下の橋梁の施工には適しているが、それ以上になると、ブロックの重量が大幅に増え製品化が難しく、さらに、現場においても、大きなクレーンを用いて敷設しなければならない。このため、一定以上の輪荷重に対して、重力式の橋台ブロックでは、現場打ちとのコスト比較での優位性が減少する。したがって、底板の底面積の大きさは土質、死荷重(自重)および輪荷重を考慮して算出され、底板の面積が大きくなると、従来の工法では、底板は現場打設となる。
【0019】
したがって、フーチング部13の面積が大きくなる橋台ブロックとして、半重力式または逆T字型の橋台ブロックを本願においては提案する。しかしながら、従来のこのタイプの橋台は、現場で施工されており、上述したように、3回に分けて現場で型枠を用いて施工されることが多く、工期が長くなることに加えて、フーチング部、竪壁部、パラペット部との接合部分の強度が不足し、支承面の強度も不足しやすいことは上述した通りである。スパンが短い橋梁を施工する方法としては、門型カルバートなどの他の形態を用いることが可能であるが、いずれにしても底板の強度が一定以上になるまで数日の養生期間が必要となる。
【0020】
現場において橋台を施工する場合の課題としては、型枠を組んで、その上面から生コンを打設する。この場合、バイブレーターを使用することにより、砂利が沈下して、橋台の最も上面となるパラペット部の支承部には骨材、例えば、砂分と生コンの中に含まれる空気が気泡となって浮いてくる。また、骨材の分布密度も低下しがちとなる。したがって、この部分の強度が不足しやすい。支承部は、床板を支持する部分であり、橋台の中で最も強度が必要とされ、さらに、振動の影響を受けやすい。このため、橋台の中で支承部が最も破壊されやすい部分の1つである。地震の際に、支承部が破壊されたとの報告も多い。
【0021】
一例として、スパンが8m以下の橋梁では、輪荷重が8トンを超えず、最大荷重が25トン以下であることが多い。すなわち、大型車両の長さを考慮すると同時に、スパンが8m以下であれば、大型車両が2台以上乗ることがない。したがって、プレキャストされた橋台ブロック10を用いた橋梁1のターゲットの1つは、スパンが8m以下の橋梁であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
また、半重力式橋台であって、現場打ちでも地耐力を大きくする必要がある場合、フーチング部(底板)を大きく拡げる必要がある。しかしながら、フーチング部を前後に伸ばすと、既存の護岸構造(擁壁)5と干渉することが多い。したがって、半重力式橋台を現場で施工する場合は、護岸の擁壁を壊さなくてはならないことが多い。一方、擁壁5を崩さない場合は、擁壁5から大きく後退した位置で橋台ブロックを施工する必要があり、橋梁のスパンが大きくなる。したがって、耐荷重が増加し、橋梁のコストも増加する。また、護岸の擁壁5から大きく後退すると、既存の道路を逆に大きく掘削する必要があるなどの問題も発生することがある。
【0023】
本発明においては、橋台100を複数の逆T字型の橋台ブロック10により構成する。
図2に示すように、橋台ブロック10が一体でプレキャストされているため、護岸の擁壁5の背面を、橋台ブロック10が搬入および設置できる程度に掘削するだけで橋台ブロック10を設置(施工)できる。その後、橋台ブロック10の上に、床板30および/または地覆20がプレハブされた地覆付きの床板31を搭載することで、橋梁1を施工できる。橋台ブロックを現場打ちで施工する場合、型枠を組み外すためのスペースがさらに要求されるが、プレキャストされた本例の橋台ブロック10にはそのようなスペースは要さない。
【0024】
橋台ブロック10はプレキャストされているので、搬入して設置するスペースさえ確保できれば、護岸5の極めて近傍に配置できる。したがって、擁壁5を崩さずに、河川2を堰き止めたり、迂回させたりせずに、河川2の幅に対してスパンが短く、耐久性の高い橋梁1を簡単に、短期間で施工できる。また、背面の道路側を掘削することを抑止できるか、掘削が必要となってもその領域を大幅に狭くできる。さらに、この橋台ブロック10は、逆T字型で、フーチング部13の前側(河川側)に延びた第1の基礎部13aと後側(後方、背面側、岸側)に延びた第2の基礎部13bとを有し、前後にバランスよく広がった底面積の広い基礎部13を備えている。したがって、上部の構造体14を、より擁壁5に近い位置に配置できる。
【0025】
この橋台ブロック10は、掘削した領域9に、基礎砕石およびベースコンクリートを含む基礎コンクリート層7を施工し、その上に、高さ調整用のグラウト8を介して橋台ブロック10を設置してもよい。この方法により、擁壁5を崩さずに橋台ブロック10を施工でき、橋台ブロック10はプレキャストされているので養生期間も基本的に不要であり、短期間で橋梁1を施工できる。さらに、橋台ブロック10は、第1の基礎部13aおよび第2の基礎部13bの一方に少なくとも1つ、他方に少なくとも2つが配置された複数の貫通孔70を含み、これらの貫通孔70に、高さ調整用のボルト75をねじ込むことにより橋台ブロック10の設置する高さおよび姿勢を簡単に制御できるようになっている。すなわち、貫通孔70のそれぞれに挿入された高さ調整用ボルト75の第1の基礎部13aおよび第2の基礎部13bの底面から下側に突き出る量を、第1の基礎部13aおよび第2の基礎部13bの上側から調整でき、橋台ブロック10の姿勢を、構造体14を含めて容易に制御できる。
【0026】
図3ないし
図5に、橋台ブロック10を現場に設置する際に高さ調整を行う様子を示している。橋台ブロック10のフーチング部13は前後に延びた第1の基礎部13aおよび第2の基礎部13bのそれぞれに高さ調整用のボルト75を貫通して取り付ける貫通孔70が設けられている。
図4に拡大して示すように貫通孔70は、底面13cの近傍に埋設されたナット(例えば、ワッシャータイプのナット部)73と、そのナット73にねじ込まれたボルト75を操作するための上部の広い孔71と、その下とナット73との間でボルト75をナット73へガイドする孔72とを含む。したがって、高さ調整用のボルト75をフーチング部13の貫通孔70に差し込んで、ボルト75の上端75aを上側から回すことにより、ボルト75の下端75bがフーチング部13の底面13cから下側に飛び出す長さを自由に調整でき、底面13cと基礎7との間80の高さをボルト75の単位で調整できる。
【0027】
例えば、砕石7bの上に基礎コンクリート7aを打設し、その上に橋台ブロック10を配置し、フーチング部13の前後に延びた基礎部13aおよび13bにそれぞれ設けられた貫通孔70にボルト75を装着することによりフーチング部13の底面13cと基礎コンクリート7aとの間の間隔80を調整できる。貫通孔70は、フーチング部13の前後の少なくとも3か所に設けられており、基礎コンクリート7aに対して橋台ブロック10の高さおよび傾きを調整できる。
【0028】
図5に示すように、施工現場においては、橋台ブロック10の高さおよび傾きを調整した後に、フーチング部13の前後に型枠79を配置し、型枠79にモルタル8または充填材を注入して隙間80を埋める。これにより、高さ調整ボルト75により調整された基礎コンクリート7aに対する橋台ブロック10の高さおよび姿勢を固定できる。
【0029】
本例の橋台ブロック10のようにフーチング部(基礎部)13の上に、所定の形状の構造体14が設けられたコンクリート製のブロックは、構造体14の強度および精度を確保するために工場プレハブ(プレキャスト)する際に逆転した状態で型枠を用いて製造される。したがって、製造時にはフーチング部13が最も上になり、その底面13cがコンクリートの打設面(注入面)となる。このため、基礎部13の底面13cは、精度の高い平面で仕上げられていない。しかしながら、本例の橋台ブロック10のように、底面13cと基礎コンクリート7aとの間隔を、基礎部13を貫通する複数のボルト75で調整することにより、底面13cの精度が低くても、現場において、簡単に、高い精度で橋台ブロック10を設置できる。
【0030】
さらに、本例の橋台ブロック10においては、構造体14を支持するように前後に延びた基礎部13aおよび13bに貫通孔70を設け、基礎部13aおよび13bの上から高さ調整用のボルト75を操作できるようにしている。したがって、橋台100を施工する現場において、それぞれの橋台ブロック10の高さおよび姿勢を、基礎部(フーチング部)13の上から制御することができ、橋台100を構成する複数の橋台ブロック10同士の姿勢を極めて容易に調整できる。
【0031】
図6に橋台ブロック10を組み合わせて橋台100を構成した一例を上方から示している。それぞれの橋台ブロック10は、型枠を用いてプレキャストする際に、複数の目的に応じた複数種類の埋設金物を埋設しておくことが可能である。本例の橋台ブロック10は、上部11の支承部15の上方を向いた支承面15aに、橋台ブロック10を工場から搬送したり、現場に搬入する際に吊り下げるための吊り下げ金具を取り付ける埋設金物63と、複数の橋台ブロック10を左右に並べて橋梁1を施工する際に複数の橋台ブロック10を接続するための埋設金物65と、橋梁1を施工する際に橋台ブロック10と床板30または31とを接続するアンカーを設置するための埋設金物(インサート)61とがあらかじめ埋設されている。接続用の埋設金物65は竪壁部12の前面12a、後面12bおよび側面12cに設けられており、これらを接続することにより複数の橋台ブロック10を強固に接続できる。
【0032】
また、橋台ブロック10のフーチング部13の前側に延びた第1の基礎部(前側基礎部)13aと後側に延びた第2の基礎部(後側基礎部)13bのそれぞれに、高さ調整用のボルト75を貫通して取り付けるためのナット部を含む貫通孔70が設けられている。本例においては、前側19aの基礎部13aの中央に1つの貫通孔70とボルト75とのセットが設けられており、後側19bの基礎部13bの左右に2つの貫通孔70とボルト75とのセットが設けられている。したがって、3点でボルト75が基礎の裏面13cから突き出る量を調整することができ、個々の橋台ブロック10の姿勢を制御できる。その後、隣接する橋台ブロック10を接続用の埋設金物65を用いて連結することができる。
【0033】
図7に橋台ブロック10を工場においてプレハブ(プレキャスト)する一例を示している。
図7(a)に示した逆T字型の本例の橋台ブロック10は、
図7(b)に示すように、構造体14が下側となるように、特に、構造体14の上部11が下側(最下部)となるT字型のコンクリート注入領域51を有する型枠50を用いて製造できる。この型枠50を用いて橋台ブロック10を製造することにより、上部11の支承部15の支承面15a、パラペット部16の各面が、型枠50のそれぞれの面を規定する面に面し、さらに、上部11が型枠50の最下部となるように、型枠50の上部の開口58から打設(注入)されるコンクリート59により製造される。したがって、フーチング部13の裏面(底面)13cがコンクリート59の打設面となり、型枠50の下部で形成される上部11の各面および部分は気泡や空洞などによる内部欠陥が発生しにくく、乾燥収縮やブリージングによる沈下などの影響を受けにくい。このため、強度および精度の高い上部11を備え、プレキャスト(工場プレハブ)されたコンクリート製の一体型の橋台ブロック10を提供できる。
【0034】
橋台ブロック10をプレハブする際に、型枠50の前後に延びた基礎部13を形成する箇所に、貫通孔70を形成するための円柱状、円錐状、角錐状などのスリーブまたは補助型枠57を配置することができる。また、補助型枠57に支持された状態で、フーチング部13の底面13cの近傍に位置するようにナット(ナット部)73を橋台ブロック10に埋設することができる。
【0035】
この型枠50は、上部11の上面である支承部15の支承面15a、およびパラペット部16の上面および前面を規定する補助型枠(第1の補助型枠)52を含んでいてもよい。この補助型枠52をT字型のコンクリート注入領域(打設領域)51で上下に移動させることにより、高さの異なる、すなわち、竪壁部12の長さの異なる橋台ブロック10をプレキャストして提供することができる。
【0036】
図8に、プレキャストされた橋台ブロック10の他の例により組み立てられた橋台100を上方から見た様子を示している。この橋台ブロック10は、接続用の埋設金物65の代わりに、接続プレートを配置するための凹部66と、凹部66に現れるように配置されたインサート67とを含む。隣接する橋台ブロック10を接続する際は、凹部66に隣接する橋台ブロック10にわたるように接続プレートを配置してインサート67を用いてボルトにより固定することができる。
【0037】
さらに、橋台ブロック10のフーチング部13の前側に延びた第1の基礎部(前側基礎部)13aと後側に延びた第2の基礎部(後側基礎部)13bのそれぞれに、高さ調整用のボルト75を貫通して取り付けるためのナット部を含む貫通孔70が設けられている。本例においては、前側19aの基礎部13aの左右に2つの貫通孔70とボルト75とのセットが設けられており、後側19bの基礎部13bの左右に2つの貫通孔70とボルト75とのセットが設けられている。したがって、4点でボルト75が基礎の裏面13cから突き出る量を調整することができ、個々の橋台ブロック10の姿勢を制御できる。その後、隣接する橋台ブロック10を接続用の埋設金物65を用いて連結することができる。高さ調整用の貫通孔70は、フーチング部(基礎部)13の前後左右の少なくとも3か所に設けられていてもよく、4か所以上に設けられていてもよい。
【0038】
以上に説明したように、本発明のプレキャストされた橋台ブロック10を採用することにより、短期間で、耐久性の高い橋梁1を低コストで施工し、提供することが可能となる。上記においては、上下方向に延びた第1の構造体として橋梁1を構造物として、その橋台100を構成する支承部15、パラペット部16および竪壁部12を有する橋台ブロック10を構造体ブロックの一例として説明している。第1の構造体は、橋梁の橋台を構成するものに限定されず、多種多様な構造物の一部、例えば、建物の壁体や、防護壁、地下壁、護岸構造、擁壁、またはそれらの基礎部分を構成する構造体などであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 橋梁、 10 橋台ブロック、 20 地覆、 30、31 床板(床板ブロック)