(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087964
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】磁極片パネルユニット、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 7/10 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02K7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202887
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渕 直樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 丈夫
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA04
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607DD16
5H607EE26
5H607FF01
5H607GG01
5H607JJ02
5H607JJ05
5H607JJ08
(57)【要約】
【課題】防振機能を向上させた磁極片パネルユニット、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供する。
【解決手段】磁極片パネルユニットは、周方向の一方側の端部である第1周端部を含む第1磁極片パネルと、第1磁極片パネルと周方向に隣接する第2磁極片パネルであって、周方向の他方側の端部である第2周端部を含む第2磁極片パネルとを備える。第1周端部は、軸方向に延在する第1本体部と、第1本体部よりも周方向の一方側に突出する第1突出部と、を有する。第2周端部は、軸方向に延在する第2本体部と、第2本体部よりも周方向の他方側に突出すると共に、第1突出部と径方向に並ぶ第2突出部と、を有する。磁極片パネルユニットは、第1突出部に形成される第1挿通穴と第2突出部に形成される第2挿通穴とに挿通される軸部を含み、第1突出部および第2突出部に固定される固定部材をさらに備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を基準とした周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片および複数の非磁性体を含む磁極片パネルを複数備える磁極片パネルユニットであって、
前記周方向の一方側の端部である第1周端部を含む第1磁極片パネルと、
前記第1磁極片パネルと前記周方向に隣接する第2磁極片パネルであって、前記周方向の他方側の端部である第2周端部を含む第2磁極片パネルと、
を備え、
前記第1周端部は、
軸方向に延在する第1本体部と、
前記第1本体部よりも前記周方向の前記一方側に突出する第1突出部と、を有し、
前記第2周端部は、
前記軸方向に延在する第2本体部と、
前記第2本体部よりも前記周方向の前記他方側に突出すると共に、前記第1突出部と径方向に並ぶ第2突出部と、を有し、
前記第1突出部に形成される第1挿通穴と前記第2突出部に形成される第2挿通穴とに挿通される軸部を含み、前記第1突出部および前記第2突出部に固定される固定部材をさらに備える
磁極片パネルユニット。
【請求項2】
前記固定部材は、前記軸部よりも大きな外径を有する頭部であって、前記第1突出部を前記第2突出部に押し当てる頭部をさらに含む締結部材である
請求項1に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項3】
前記頭部の少なくとも一部は、前記第1挿通穴に配置される
請求項2に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項4】
前記頭部とは反対側の前記軸部の端部は、前記第2挿通穴に配置される
請求項2または3に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項5】
前記締結部材は、前記軸部が前記第2挿通穴において締結されるネジである
請求項2または3に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項6】
前記ネジは、前記頭部の外径が、前記第2突出部に近づくほど短くなるテーパネジであり、
前記第1突出部は、前記第1挿通穴を規定する第1開口部を有し、
前記第1開口部は、前記第2突出部に近づくほど内径が小さくなるテーパ内周面であって、前記頭部が押し当たるテーパ内周面を有する
請求項5に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項7】
前記第2突出部は、前記第1突出部とは反対側から前記第2挿通穴を閉塞する閉塞壁部を有する
請求項5に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項8】
前記軸方向において、各々の前記非磁性体は各々の前記磁極片よりも長く、
前記第1磁極片パネルは、前記第1周端部の少なくとも一部を構成する第1非磁性体であって、特定の前記非磁性体の一部を構成する第1非磁性体を含み、
前記第2磁極片パネルは、前記第2周端部の少なくとも一部を構成する第2非磁性体であって、前記特定の非磁性体の他部を構成する第2非磁性体を含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項9】
前記軸部は、
前記第1挿通穴に挿通される円筒状の第1軸部と、
前記第1軸部に一部が収容されると共に、前記第2挿通穴を貫通するように設けられる第2軸部と
を有し、
前記固定部材は、
前記第1軸部の外周部に螺合する一対の第1ナットであって、前記第1突出部を前記径方向において挟み込む一対の第1ナットと、
前記第2軸部の外周部に螺合する一対の第2ナットであって、前記第2突出部を前記径方向において挟み込む一対の第2ナットと、
と、をさらに含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項10】
前記固定部材は、
前記第1軸部に収容されるスプリングであって、前記第1軸部が前記第2軸部から突出する方向へ前記第1軸部を付勢するスプリングと、
前記第1軸部に充填されると共に、前記第2軸部の直線移動に制動力を付与するための制動油と、をさらに含む
請求項9に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項11】
前記一対の第1ナットのうちで、前記第2突出部から離れた前記第1ナットの少なくとも一部は、前記第1挿通穴に配置される
請求項9に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項12】
前記第1周端部と前記第2周端部とによって挟み込まれており、少なくとも弾性を有するシート材をさらに備える
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項13】
前記シート材は、前記弾性および粘性を有する粘弾性ゴムシートである
請求項12に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項14】
前記シート材は、前記第1突出部と前記第2本体部との間、または、前記第2突出部と前記第1本体部との間の少なくとも一方に配置され、前記径方向に延在する径方向延在部を含む
請求項12に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項15】
前記シート材は、前記第1突出部と前記第2突出部の間に配置され、前記周方向に延在する周方向延在部を含む
請求項12に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項16】
前記周方向延在部には、前記固定部材の前記軸部が挿通される孔が形成される
請求項15に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項17】
前記第1磁極片パネルを挟んで前記第2磁極片パネルとは反対側に配置される第3磁極片パネルであって、前記周方向の一方側の端部である第3周端部を含む第3磁極片パネルをさらに備え、
前記第3周端部は、
前記軸方向に延在する第3本体部と、
前記第3本体部よりも前記周方向の前記一方側に突出する第3突出部と、を有し、
前記第1磁極片パネルは、前記第1周端部とは反対側の第1規定周端部をさらに含み、
前記第1規定周端部は、
前記軸方向に延在する第1規定本体部と、
前記第1規定本体部よりも前記周方向の前記他方側に突出すると共に、前記第3突出部と前記径方向に並ぶ第1規定突出部と、を有し、
前記第1突出部は、前記第2突出部よりも前記径方向の外側に位置し、
前記第1規定突出部は、前記第3突出部よりも前記径方向の外側に位置する
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片パネルユニット。
【請求項18】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片パネルユニットと、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における一端部と、磁気ギヤ電気機械の回転軸とに連結される第1連結部と、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における他端部と、前記回転軸とに連結される第2連結部と、
を備える磁極片回転子。
【請求項19】
請求項18に記載の磁極片回転子と、
前記磁極片パネルユニットに対して前記径方向の内側または外側で前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石を含む回転子と、
前記磁極片パネルユニットを挟んで前記複数のロータ磁石とは反対側において前記周方向に並ぶ複数のステータ磁石を含む固定子と、
を備える磁気ギヤ電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁極片パネルユニット、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ギヤ電気機械の磁極片回転子に組み込まれる磁極片パネルユニットが知られている。磁極片パネルユニットは周方向に並ぶ複数の磁極片パネルによって構成されており、各磁極片パネルは、周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片と複数の非磁性体とを含む(例えば、特許文献1の
図19を参照)。各々の磁極片は、磁束を変調する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/149772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁束の変調時に発生する電磁気的な力、または、磁極片回転子の回転時に発生する遠心力といった径方向を向く種々の力が磁極片パネルに作用する。これらの力の少なくとも1つが磁極片パネルの励振力となり、磁極片パネルの振動が誘発されて、磁極片パネルユニットが破損するおそれがある。一例を挙げると、磁気ギヤの駆動時に磁極片パネルユニットが共振し、互いに隣り合う磁極片パネルの間で破損が生じる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、防振機能を向上させた磁極片パネルユニット、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片パネルユニットは、
軸線を基準とした周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片および複数の非磁性体を含む磁極片パネルを複数備える磁極片パネルユニットであって、
前記周方向の一方側の端部である第1周端部を含む第1磁極片パネルと、
前記第1磁極片パネルと前記周方向に隣接する第2磁極片パネルであって、前記周方向の他方側の端部である第2周端部を含む第2磁極片パネルと、
を備え、
前記第1周端部は、
軸方向に延在する第1本体部と、
前記第1本体部よりも前記周方向の前記一方側に突出する第1突出部と、を有し、
前記第2周端部は、
前記軸方向に延在する第2本体部と、
前記第2本体部よりも前記周方向の前記他方側に突出すると共に、前記第1突出部と径方向に並ぶ第2突出部と、を有し、
前記第1突出部に形成される第1挿通穴と前記第2突出部に形成される第2挿通穴とに挿通される軸部を含み、前記第1突出部および前記第2突出部に固定される固定部材をさらに備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片パネルユニットは、
上記磁極片パネルユニットと、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における一端部と、磁気ギヤ電気機械の回転軸とに連結される第1連結部と、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における他端部と、前記回転軸とに連結される第2連結部と
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械は、
上記磁極片回転子と、
前記磁極片パネルユニットに対して前記径方向の内側または外側で前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石を含む回転子と、
前記磁極片パネルユニットを挟んで前記複数のロータ磁石とは反対側において前記周方向に並ぶ複数のステータ磁石を含む固定子と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、防振機能を向上させた磁極片パネルユニット、磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械の概略図である。
【
図2】一実施形態に係る磁極片回転子の概略図である。
【
図3】一実施形態に係る磁極片パネルユニットを示す概略図である。
【
図4】一実施形態に係る磁極片パネルユニットの断面を示す概略図である。
【
図5】幾つかの実施形態に係る磁極片パネルユニットの概略図である。
【
図6A】第1の実施形態に係る固定部材の概略図である(第1の例示)。
【
図6B】第1の実施形態に係る固定部材の概略図である(第2の例示)。
【
図7】第2の実施形態に係る固定部材の概略図である。
【
図8】一実施形態に係る磁極片パネルユニットの組立方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<1.磁気ギヤ電気機械1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1の概略図である。磁気ギヤ電気機械1は外部回転機器7に連結される回転軸5を備えている。以下の説明において、「周方向」は回転軸5の軸線Sを基準とした周方向であり、「軸方向」は軸線Sの軸方向であり、「径方向」は軸線Sを基準とした径方向である。「径方向の内側」は軸線S側に近づく方向側を示し、「径方向の外側」は軸線Sから遠ざかる方向側を示す。なお、軸線Sは、後述する磁極片パネルユニット50の軸線でもある。
【0013】
磁気ギヤ電気機械1は、回転軸5を回転可能に支持するハウジング9と、ハウジング9の内側で回転軸5に連結される磁極片回転子30とを備える。磁極片回転子30は、軸線Sに沿って延在する円筒の磁極片パネルユニット50と、軸方向における磁極片パネルユニット50の一端部51と回転軸5とに連結される第1連結部31と、軸方向における磁極片パネルユニット50の他端部52と回転軸5とに連結される第2連結部32とを含む。磁極片パネルユニット50は、周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片55と複数の非磁性体53(
図2参照)を有する。
図1の例では、第1連結部31と第2連結部32はいずれも回転軸5に固定されており、磁極片回転子30は回転軸5と一体的に回転するように構成される(他の構成例については後述する)。
【0014】
磁気ギヤ電気機械1は、回転子15をさらに備える。回転子15は、磁極片パネルユニット50よりも径方向の内側で周方向に並ぶ複数のロータ磁石19と、ロータ磁石19を支持するロータコア16とを有する。
図1の例では、ロータコア16は回転軸5に対してベアリングを介して連結されており、回転子15は、回転軸5に対して相対的に回転するようになっている。回転子15は、エアギャップG1を間にして磁極片パネルユニット50と径方向に対向する。
図1の例では、複数のロータ磁石19がロータコア16の表面に設けられる表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構成が採用されるが、複数のロータ磁石19がロータコア16の内側に配置される埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構成が採用されてもよい。
【0015】
磁気ギヤ電気機械1は、ハウジング9によって支持される固定子20を備える。固定子20は、磁極片パネルユニット50を挟んで複数のロータ磁石19とは反対側で周方向に並ぶ複数のステータ磁石29と、ステータ磁石29を支持するステータコア25と、ステータコア25に巻かれたステータコイル27とを含む。ステータコイル27は、電力系統6に電気的に接続される。固定子20は、エアギャップG2を間にして磁極片パネルユニット50と径方向に対向する。
図1の例では、複数のステータ磁石29がステータコア25の表面に設けられるSPM型の構成が採用されるが、ステータ磁石29がステータコア25の内部に配置されるIPM型の構成が採用されてもよい。
【0016】
本開示の必須の構成要素ではないが、磁気ギヤ電気機械1は、冷却風を送るためのファン3を備える。一例として、ファン3はハウジング9の内部で回転軸5に固定されており、ファン3の回転によって冷却空気がハウジング9の内部で循環するようになっている。冷却空気の流路には、軸方向に延在するエアギャップG1,G2が含まれる。なお、ステータコア25を軸方向に貫通する孔(図示外)、または、ロータコア16を軸方向に貫通する孔(図示外)などが追加的に設けられてもよく、これらの孔が冷却空気の流路として利用されてもよい。さらに、ステータコア25よりも径方向の外側において、軸方向に延在する冷却空気の流路がハウジング9の構成要素として追加的に設けられてもよい。
【0017】
一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1は、電力系統6から電力の供給を受けて外部回転機器7を駆動する磁気ギヤモータである。動作原理は以下の通りである。ステータコイル27の通電によって発生する回転磁界によって、回転子15が回転する。複数のロータ磁石19および複数のステータ磁石29に対する磁極片パネルユニット50の相対的な位置関係が変化し、回転子15と固定子20の間の磁束が複数の磁極片55によって変調されて、磁極片回転子30が回転する。磁極片回転子30と共に回転する回転軸5から外部回転機器7にトルクが伝達されて、外部回転機器7は駆動される。
【0018】
他の実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1は、磁気ギヤ発電機である。この場合、外部回転機器7が回転軸5を駆動することで、磁極片回転子30が回転軸5と共に回転する。複数のロータ磁石19および複数のステータ磁石29に対する相対的な位置関係が変化し、回転子15が回転する。磁極片回転子30と回転子15の回転に伴って起こる電磁誘導によってステータコイル27に電流が発生し、電力系統6に電力が供給される。
【0019】
なお、磁極片55の磁極数をNL、ロータ磁石19における磁極の対の数(極対数)をNH、ステータ磁石29における磁極の対の数(極対数)をNSとした場合、NL=NH+NSが成立する。この関係式が成立する場合、磁極片回転子30に対する回転子15の回転数の比は、NL/NHで表される。本例では、NL/NHが1よりも大きく、回転子15は高速ロータとして機能し、磁極片回転子30は低速ロータとして機能する。なお、磁極片55の磁極数NLは、ステータ磁石29の極対数NSよりも少ない。
【0020】
磁気ギヤ電気機械1が駆動するとき、ファン3が回転軸5と共に回転することで、冷却風がエアギャップG1,G2を流れる。冷却風が流れることで、磁極片パネルユニット50、回転子15、固定子20、または、ハウジング9の内部に設けられる各種のベアリングが冷却される。
図1の拡大図で示す矢印A1,A2は、エアギャップG1,G2での冷却風の流れ方向を例示している。
【0021】
本開示の磁気ギヤ電気機械1は上記実施形態に限定されない。磁極片回転子30の第1連結部31および第2連結部32は、それぞれ、回転軸5に対して一対のベアリングを介して連結されてもよい。この場合、ロータコア16が回転軸5に固定され、回転子15が回転軸5と一体的に回転するように構成される。さらに、第1連結部31または第2連結部32のいずれか一方のみが回転軸5に連結され、いずれか他方の連結部は外部回転機器7を構成する図示外の動力伝達軸に連結されてもよい(動力伝達軸は回転軸5とトルク伝達をするように構成される)。また、ファン3が回転軸5に固定されることに本開示は限定されない。詳細な図示は省略するが、例えば、出力軸にファン3が固定されるモータがハウジング9の外周面に固定されてもよい。この場合、ハウジング9の内部と外部とを連通する連通口を経由して、ファン3から送られる冷却風がハウジング9の内部に進入してもよい。
【0022】
さらに、磁極片回転子30は、磁極片パネルユニット50に対して径方向の外側に配置されてもよく、この場合、固定子20は磁極片パネルユニット50に対して径方向の内側に配置される。但し、以下の説明では、回転子15が磁極片パネルユニット50の径方向の内側に配置され、固定子20が磁極片パネルユニット50の径方向の外側に配置される実施形態を説明する。
【0023】
<2.磁極片回転子30の構成の詳細>
図2は、本開示の一実施形態に係る磁極片回転子30の概略図である。
図3は、本開示の一実施形態に係る磁極片パネルユニット50の概略図である。磁極片回転子30は、軸線Sを中心として回転するように構成される。
【0024】
図2に示すように、第1連結部31は、周方向に延在するリング部37と、回転軸5(
図1参照)に連結される軸連結部38と、リング部37から軸連結部38に向かって径方向の内側に延在する延在部39とを有する。第2連結部32は第1連結部31と軸方向に対称な形状を呈する。即ち、第2連結部32も、リング部37、軸連結部38、および、延在部39を有する。
【0025】
上述したように、磁極片パネルユニット50は、周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片55と複数の非磁性体53とを含む。各磁極片55と各非磁性体53はいずれも軸方向に延在している。各非磁性体53は各磁極片55よりも軸方向において長い。非磁性体53は、繊維強化複合材料(FRP;Fiber Reinforced Plastics)によって形成される。FRPは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastics)、または、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)などであってもよい。各磁極片55は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板によって形成されてもよいし、軸方向に延在する複数の圧粉磁心によって形成されてもよいし、または、電磁鋼板と圧粉磁心の組み合わせによって形成されてもよい。
【0026】
本開示の必須の構成要素ではないが、磁極片パネルユニット50は、複数の絶縁体54をさらに有する。各絶縁体54は、各磁極片55の軸方向における端部に連結されている。磁極片55と、当該磁極片55の軸方向の両側に配置される一対の絶縁体54とは、磁極片長尺ユニットを形成する。磁極片長尺ユニットは、非磁性体53と略同じ軸方向長さを有する。そして、交互に配置される複数の磁極片長尺ユニットと複数の非磁性体53とによって、周方向に延在するリングユニットが形成される。リングユニットは磁極片パネルユニット50の本体部に相当する。そして、このリングユニットの軸方向の両端部に、一対のエンドリング56がそれぞれ連結している。
図2の例では、一対のエンドリング56がそれぞれ、磁極片パネルユニット50の軸方向における一端部51及び他端部52を構成する。一対のエンドリング56はそれぞれ、一対のリング部37に連結される。
なお、一対のエンドリング56は、本開示の必須の構成要素ではない。例えば、上述のリングユニットの軸方向の両端部がそれぞれ、一対のリング部37に連結されていてもよい。
【0027】
図3は、本開示の一実施形態に係る磁極片パネルユニット50の一部を示す概略図である。上記構成を有する磁極片パネルユニット50は、周方向に並ぶ複数の磁極片パネル60を備える(
図8も併せて参照)。各磁極片パネル60は周方向に延在する湾曲パネルである。周方向に隣り合う2つの磁極片パネル60が後述の固定部材120により接合されることで、リング状の磁極片パネルユニット50は形成される。上述した複数の磁極片55、複数の非磁性体53、および、複数の絶縁体54は、各々の磁極片パネル60に組み込まれている。さらに、上述した一対のエンドリング56の各々は、周方向に並ぶ複数のエンドプレート59によって構成されている。そして、一対のエンドプレート59が各々の磁極片パネル60の軸方向における両端部を構成している。なお、エンドプレート59は、周方向に延在すると共に軸方向に厚さを有するプレートである。
【0028】
図3では、周方向に隣接する2つの磁極片パネル60をそれぞれ、第1磁極片パネル61および第2磁極片パネル62として図示している。第1磁極片パネル61は、周方向の一方側の端部である第1周端部71を含み、第2磁極片パネル62は、周方向の他方側の端部である第2周端部72を含む。一例として、第1周端部71は、1つの非磁性体53と一対のエンドプレート59とによって構成され、第2周端部72は、1つの非磁性体53と一対のエンドプレート59とによって構成される。
【0029】
本実施形態では、複数の非磁性体53のいずれか1つが、第1非磁性体53Aと第2非磁性体53Bとによって構成され、第1非磁性体53Aおよび第2非磁性体53Bがそれぞれ、第1周端部71および第2周端部72に組み込まれている。換言すると、特定の非磁性体53が第1非磁性体53Aと第2非磁性体53Bによって構成されており、第1非磁性体53Aは第1周端部71の少なくとも一部を構成し、第2非磁性体53Bは第2周端部72の少なくとも一部を構成する。さらに本実施形態では、第1周端部71および第2周端部72は各々、エンドプレート59の周方向における端部も組み込まれている。
【0030】
<3.第1磁極片パネル61と第2磁極片パネル62の接合構造の概要>
図4は、本開示の一実施形態に係る磁極片パネルユニット50の断面を示す概略図である。第1磁極片パネル61の第1周端部71は、軸方向に延在する第1本体部81と、第1本体部81よりも軸方向の一方側に突出する第1突出部91とを有する。第1突出部91は、周方向の一方側における第1本体部81の端面である第1端面85から突出する。径方向において第1本体部81は第1突出部91よりも短い。第1突出部91は、周方向における一方側の端面である先端面96を有する。
【0031】
第2磁極片パネル62の第2周端部72は、軸方向に延在する第2本体部82と、第2本体部82よりも周方向の他方側に突出する第2突出部92とを有する。第2突出部92は、周方向の他方側における第2本体部82の端面である第2端面84から突出する。第2突出部92は、周方向における他方側の端面である先端面94を有する。第2本体部82の第2端面84は、第1突出部91の先端面96と径方向において重複しており、第2突出部92の先端面94は第1本体部81の第1端面85と径方向において重複している。
【0032】
第2突出部92は第1突出部91と径方向に並ぶ。換言すると、第1突出部91と第2突出部92は周方向において互いに重複している。そして、第1突出部91には第1挿通穴101が形成され、第2突出部92には第2挿通穴102が形成される。第1挿通穴101は第1突出部91を径方向に貫通する貫通穴である。第2挿通穴102は、第2突出部92を貫通する貫通穴であってもよいし、径方向における一方側が閉塞された穴であってもよい(
図4の例では、第2挿通穴102は貫通穴である。)。第1挿通穴101と第2挿通穴102は周方向において重なるように配置される。また、第1挿通穴101の個数と第2挿通穴102の個数は同じである。
【0033】
図3の例では、第1挿通穴101が非磁性体53(第1非磁性体53A)のみに形成されているが、第1非磁性体53Aとエンドプレート59の双方に形成されていてもよい。同様に、第2挿通穴102は非磁性体53(第2非磁性体53B)のみに形成されていてもよいし、第2非磁性体53Bとエンドプレート59との双方に形成されていてもよい。また、
図3の例では、複数の第1挿通穴101は直線状に配置されているが、軸方向に沿ってジグザグ状に配置されてもよい(第2挿通穴102の配置も同様である)。
【0034】
図4に戻り、磁極片パネルユニット50は、第1突出部91を第2突出部92に固定する固定部材120をさらに備える。固定部材120は、軸方向に延在する軸部125を含み、この軸部125が第1挿通穴101と第2挿通穴102とに挿通されている。固定部材120は、締結部材であってもよいし(
図6A、
図6B参照)、ダッシュポット(
図7参照)であってもよいし、カシメピンであってもよい。固定部材120の具体的な構造は後述する。
【0035】
磁極片55において発生する径方向を向く電磁力は、磁極片パネルユニット50において径方向を向く励振力となる。また、磁極片回転子30の回転に伴い発生する遠心力も、上記の励振力となる。この点、上記構成によれば、第1挿通穴101と第2挿通穴102に挿通される軸部125を含む固定部材120が第1突出部91および第2突出部92に固定される。これにより、磁極片パネルユニット50に励振力が作用する場合であっても、磁極片パネルユニット50の撓みを抑制できる。よって、防振機能を向上させた磁極片パネルユニット50、磁極片回転子30、および、磁気ギヤ電気機械1が実現される。また、上記の電磁力に起因する励振力が有する周波数成分と、磁極片パネルユニット50の固有振動数とを異ならせることができ、磁気ギヤ電気機械1は磁極片パネルユニット50の共振を回避することができる。
【0036】
なお、本開示は、
図4で示す実施形態に限定されない。
図4では、第1突出部91が第2突出部92に対して径方向の外側に配置されるが、これに代えて、第1突出部91が第2突出部92に対して径方向の内側に配置されてもよい。また、非磁性体53に代えて磁極片55が第1周端部71および第2周端部72を構成してもよい。いずれの実施形態においても、防振機能を向上させた磁極片パネルユニット50、磁極片回転子30、および、磁気ギヤ電気機械1が実現される。
【0037】
また、軸方向において非磁性体53が各々の磁極片55よりも長い実施形態においては、非磁性体53は径方向において磁極片55よりも撓みやすい。この点、第1非磁性体53Aが第1周端部71の一部を構成し、第2非磁性体53Bが第2周端部72の一部を構成する実施形態によれば、第1非磁性体53Aが第2非磁性体53Bに固定部材120によって接合されるので、非磁性体53の径方向における剛性を高めることができ、磁極片パネルユニット50の防振機能を向上させることができる。
なお、磁極片パネルユニット50は、一対のエンドリング56を含まなくてもよい。この場合、第1非磁性体53Aが第1周端部71の全部を構成し、第2非磁性体53Bが第2周端部72の全部を構成してもよい。この場合であっても、上記利点は得られる。
【0038】
<4.磁極片パネルユニット50の追加的な構成要素>
図5は、幾つかの実施形態に係る磁極片パネルユニット150(50)の概略図である。磁極片パネルユニット150(50)は、少なくとも弾性を有するシート材170をさらに備える。本例のシート材170は、弾性に加えて粘性を有する粘弾性ゴムシートである。
【0039】
シート材170は、第1周端部71と第2周端部72とによって挟み込まれている。具体的な一例として、シート材170は、径方向に延在する径方向延在部172と、周方向に延在する周方向延在部175を含む。本実施形態では、径方向延在部172と周方向延在部175が一体的に構成されている。
【0040】
径方向延在部172は、第1突出部91と第2本体部82との間に配置される第1径方向延在部172Aと、第2突出部92と第1本体部81との間に配置される第2径方向延在部172Bを有する。第1径方向延在部172Aは、第1突出部91の先端面96と第2本体部82の第2端面84とによって挟み込まれている。また、第2径方向延在部172Bは、第2突出部92の先端面94と第1本体部81の第1端面85とによって挟み込まれている。
【0041】
周方向延在部175は、第1突出部91と第2突出部92の間に配置される。より詳細には、周方向延在部175は、第1突出部91の内側端面99と、第2突出部92の外側端面98とによって挟み込まれている。同図の例では、周方向延在部175には、固定部材120の軸部125が挿通される孔179が形成されている。孔179は、第1挿通穴101および第2挿通穴102に径方向に並ぶように配置される。換言すると、孔179、第1挿通穴101、および、第2挿通穴102は周方向において互いに重複するように配置される。
【0042】
磁極片パネルユニット150(50)がシート材170を備える実施形態によれば、第1周端部71または第2周端部72の少なくとも一方において径方向を向く力が励振力として発生した場合、弾性を有するシート材170が変形する。より詳細には、励振力がせん断力として作用する第1径方向延在部172Aと第2径方向延在部172Bは径方向に変形する。また、励振力が圧縮力として作用する周方向延在部175は径方向に圧縮される。そして、励振力は、変形したシート材170において発生する復元力によって低減(相殺)されるので、磁極片パネルユニット50の防振機能をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、他の実施形態では、シート材170は、径方向延在部172を含み、かつ、周方向延在部175を含まなくてもよい。この場合、第1径方向延在部172Aと第2径方向延在部172Bは互いに別体に構成されてもよい。また、径方向延在部172は、第1径方向延在部172Aまたは第2径方向延在部172Bのいずれか一方のみしか有さなくてもよい。あるいは、シート材170は、径方向延在部172を含まず、周方向延在部175のみを含んでもよい。いずれの実施形態においても、変形するシート材170において発生する復元力によって、径方向を向く上述の力は低減されるので、磁極片パネルユニット50の防振機能を向上させる利点は得られる。
【0044】
また、シート材170が粘弾性ゴムシートである実施形態によれば、第1周端部71または第2周端部72の少なくとも一方において径方向を向く力が励振力として突発的に発生した場合でも、粘弾性ゴムであるシート材170の変形によって、径方向を向く力を瞬時に低減させることができる。
【0045】
なお、シート材170は、径方向延在部172を含み、かつ、周方向延在部175を含まなくてもよい。この場合、第1径方向延在部172Aと第2径方向延在部172Bは互いに別体に構成されてもよい。また、径方向延在部172は、第1径方向延在部172Aまたは第2径方向延在部172Bのいずれか一方のみしか有さなくてもよい。いずれの実施形態においても、突発的に発生する励振力を瞬時に低減させることができる。
【0046】
また、シート材170が径方向延在部172を含む実施形態によれば、第1突出部91と第2本体部82の間、または、第2突出部92と第1本体部81の間において径方向を向く力が励振力として発生する場合でも、第1径方向延在部172Aと第2径方向延在部172Bが変形することで、当該力を吸収することができる。なお、径方向延在部172が第1径方向延在部172Aまたは第2径方向延在部172Bのいずれか一方のみを有していれば、上述の利点は得られる。
【0047】
また、シート材170が周方向延在部175を含む実施形態によれば、第1突出部91と第2突出部92の間において励振力が発生する場合でも、周方向延在部175が径方向に変形することで、当該力を吸収できる。
【0048】
また、周方向延在部175に、固定部材120の軸部125が挿通される孔179が形成される実施形態によれば、周方向延在部175を軸部125の周囲にも配置することが可能になり、周方向延在部175が配置される領域を拡大できる。よって、磁極片パネルユニット150(50)の防振機能を向上させることができる。
【0049】
<5.第1の実施形態に係る固定部材120>
図6A,
図6Bは、第1の実施形態に係る固定部材120A,120B(120)の概略図である。固定部材120Aは、磁極片パネルユニット50A(50)の構成要素であり、固定部材120Bは、磁極片パネルユニット50B(50)の構成要素である。磁極片パネルユニット50A,50Bには、第1突出部91A,91B(91)と、第2突出部92A,92B(92)が設けられている。第1突出部91A,91Bには、第1挿通穴101A,101B(101)が形成されており、第2突出部92A,92Bには、第2挿通穴102A,102B(102)が形成されている。図示される磁極片パネルユニット50A,50Bは上述のシート材170を備えるが、シート材170は磁極片パネルユニット50A,50Bの必須の構成要素ではない。
【0050】
固定部材120A,120Bは、軸部125A,125B(125)と、軸部125A,125Bの一端部に連結する頭部128A,128B(128)を有する締結部材である。頭部128の外径は軸部125の外径よりも大きい。頭部128A,128B(128)は第1突出部91A,91B(91)を第2突出部92A,92B(92)に押し当てている。上記構成によれば、頭部128の押し当てによって、第1突出部91を第2突出部92に強固に固定できる。磁極片パネルユニット50の剛性を向上させることができるので、磁極片パネルユニット50の防振機能は向上する。
【0051】
幾つかの実施形態では、頭部128A,128B(128)の少なくとも一部は、第1挿通穴101A,101B(101)に配置される。
図6Aの例では、頭部128Aの全部位が第1挿通穴101Aに配置されている。換言すると、頭部128Aは、径方向の外側へ第1突出部91Aから突出してはない。他方で
図6Bの例では、頭部128Bの一部のみが第2挿通穴102Bに配置されており、頭部128Bの他の部位は、径方向の外側へ第1突出部91Bから突出している。
【0052】
上記構成によれば、磁極片パネルユニット50A,50Bの回転時に頭部128A,128Bが回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械1の稼働時において、磁極片パネルユニット50A,50Bの周囲における冷却風の流れを頭部128A,128Bが遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニット50A,50Bの温度上昇を抑制できる。また一般に、磁気ギヤ電気機械1におけるエアギャップG1,G2(
図1参照)の径方向長さは、例えば数mm以下あるいは1mm以下といった非常に短い長さである。この点、頭部128A,128Bの少なくとも一部が第1挿通穴101A,101Bに配置されることで、頭部128A,128BがエアギャップG2に突き出ることが抑制される。結果、頭部128A,128Bが、固定子20といった磁気ギヤ電気機械1の他の構成要素に接触することを回避することができる。
【0053】
図6Aで示されるように、幾つかの実施形態では、頭部128Aとは反対側の軸部125Aの端部126は、第2挿通穴102Aに配置されている。換言すると、軸部125Aは、第1突出部91Aとは反対側に向かって第2突出部92Aから突出してはいない。端部126の全部位は第2挿通穴102Aに配置されている。さらに、
図6Aで例示される第2突出部92Aは、第1突出部91Aとは反対側から第2挿通穴102Aを閉塞する閉塞壁部95を有する。閉塞壁部95は第2挿通穴102Aを完全に閉塞しており、第2挿通穴102Aは第1突出部91A側のみに向けて開口している。同図で例示される閉塞壁部95は、軸部125Aの端部126よりも径方向の内側に位置し、端部126と径方向に対向する。
【0054】
上記構成によれば、磁極片パネルユニット50Aの回転時に軸部125Aが回転抵抗となるのを抑制できる。また、閉塞壁部95が設けられることで、第2挿通穴102Aに空気が入り込むことが抑制されるので、回転抵抗の抑制効果を高めることができる。さらに、磁気ギヤ電気機械1の稼働時において、磁極片パネルユニット50Aの周囲における冷却風の流れを軸部125Aが遮るのを抑制できる。そして、閉塞壁部95が設けられることで冷却風が第2挿通穴102Aに進入することが抑制されるので、冷却風の流れをよりスムーズにできる。以上より、磁極片パネルユニット50Aの回転抵抗を抑制できると共に、磁極片パネルユニット50Aの温度上昇を抑制できる。なお、本稿の「空気」は「冷却風」を含む概念である。
また、軸部125AがエアギャップG1(
図1参照)に突出しないので、軸部125Aが、回転子15といった磁気ギヤ電気機械1の他の構成要素に接触することを回避することも可能になる。
【0055】
図6Aで示される締結部材としての固定部材120Aは、軸部125Aが第2挿通穴102Aに締結されるネジである。即ち、軸部125Aは第1挿通穴101Aにすきまバメ状態で嵌ると共に、第2挿通穴102Aを規定する内周面に形成されたメネジに軸部125Aに形成されるオネジが螺合している。他方で、
図6Bで示される締結部材としての固定部材120Bでは、軸部125Bに螺合するナット129を有するボルト締結構造が採用される。即ち、固定部材120Bは、軸部125Bおよび頭部128Bからなるボルトと、軸部125Bに螺合するナット129とを有する。
【0056】
固定部材120Aが螺子である実施形態によれば、締結部材がボルトおよびナットである場合に比べて、締結部材としての固定部材120Aの部品点数を低減でき、磁極片パネルユニット50の構成を簡素化できる。
【0057】
図6Aで示されるネジとしての固定部材120Aはテーパネジである。より詳細には、頭部128Aは、外径が第2突出部92に近づくほど短くなる締結テーパ面127を有する。そして、第1突出部91Aは第1挿通穴101Aを規定する第1開口部65を有し、第1開口部65は、テーパ内周面66とストレート内周面67を有する。テーパ内周面66は、第2突出部92Aに近づくほど内径が小さくなるように構成されており、ストレート内周面67は、テーパ内周面66の一端から径方向の内側へ直線状に延在する。頭部128Aのテーパ内周面66は締結テーパ面127に押し当たっており、軸部125Aの一部はストレート内周面67の内側に配置されている。
【0058】
上記構成によれば、頭部128Aの締結テーパ面127がテーパ内周面66に押し当たることによって生じる力の一部は、第1突出部91Aを第2本体部82に押し当てる力として機能する(矢印T,R参照)。これにより、第1周端部71と第2周端部72はより強固に固定され、磁極片パネルユニット50の剛性をさらに向上させることができる。
さらに、第1突出部91Aと第2本体部82との間にシート材170が介在する実施形態においては、第1突出部91Aがシート材170の径方向延在部172に押し当てられ、径方向延在部172が第1突出部91Aと第2本体部82に密着することができ、シート材170の防振機能を十分に発揮させることができる。
【0059】
<6.第2の実施形態に係る固定部材120>
図7は、第2の実施形態に係る固定部材120C(120)の概略図である。固定部材120Cは、磁極片パネルユニット50C(50)の構成要素である。磁極片パネルユニット50Cには、第1突出部91C(91)と第2突出部92C(92)とが設けられている。第1突出部91Cには第1挿通穴101C(101)が形成されており、第2突出部92Cには第2挿通穴102C(102)が形成されている。図示される磁極片パネルユニット50Cは上述のシート材170を備えるが、シート材170は磁極片パネルユニット50Cの必須の構成要素ではない。
【0060】
固定部材120Cは軸部125C(125)を含み、軸部125Cは複数の部品によって構成される。より具体的には、軸部125Cは、第1挿通穴101Cに挿通される円筒状の第1軸部251と、第2挿通穴102Cに挿通される第2軸部252とを有する。第2軸部252の一部は第1軸部251に収容されており、第2軸部252の他部は第1軸部251から径方向の内側へ突出している。また、第2軸部252は、第1軸部251に対して相対的に直線移動可能な状態で第1軸部251によって支持されている。
【0061】
固定部材120Cは、第1軸部251の外周部251Aに螺合する一対の第1ナット211と、第2軸部252の外周部252Aに螺合する第2ナット222とをさらに含む。一対の第1ナット211は第1突出部91Cを径方向において挟み込み、第2ナット222は第2突出部92Cを径方向において挟み込む。これにより、固定部材120は、第1突出部91Cと第2突出部92Cとに固定される。第1軸部251は第1突出部91Cと共に径方向に変位可能であり、第2軸部252は第2突出部92Cと共に径方向に変位可能である。
【0062】
幾つかの実施形態では、固定部材120Cはダッシュポットである。より具体的には、固定部材120Cは、円筒状の第1軸部251に収容されるスプリング203と、第1軸部251に充填される制動油205をさらに含む。
【0063】
スプリング203は、第2軸部252が第1軸部251から突出する方向へ第2軸部252を付勢する。
図7の例では、第2軸部252はスプリング203によって径方向の内側へ付勢される。制動油205は、第2軸部252の直線移動に制動力を付与するようになっている。即ち、第2軸部252が直線移動する場合において、第2軸部252の移動する方向とは反対を向く制動力を制動油205は第2軸部252に付与するようになっている。
【0064】
径方向を向く力が励振力として発生することによって第1周端部71と第2周端部72とが径方向において互いに相対的に移動する場合、第2軸部252が第1軸部251に対して相対的に直線移動する。これにより、第1周端部71または第2周端部72の少なくとも一方における励振力を固定部材120Cは吸収することができる。
【0065】
上記構成によれば、第1周端部71または第2周端部72の少なくとも一方に励振力が作用する場合でも、当該力は、第2軸部252が第1軸部251に対して相対的に直線移動することで固定部材120Cに吸収される。これにより、磁極片パネルユニット50の防振機能をさらに向上させることができる。
なお、固定部材120Cは、ダッシュポットであることに限定されない。固定部材120Cは、スプリング203および制動油205を含まなくてもよく、代わりに、第1軸部251の内部には空気などの気体が密閉されていてもよい。この場合でも、第1突出部91Cと第2突出部92Cが互いに近づく方向に変位する場合に、第2軸部252は第1軸部251に進入する方向へ直線移動し、固定部材120Cは第2軸部252の直線移動を抑える。従って、第1突出部91Cまたは第2突出部92Cの少なくとも一方において発生する励振力を吸収することができる。
【0066】
また、スプリング203と制動油205が第1軸部251に収容される実施形態によれば、第2軸部252が第1軸部251に対して相対的に直線移動する場合、スプリング203は弾性変形し、制動油205は第2軸部252に制動力を付与する。これにより、第2軸部252の直線移動を抑えることができ、磁極片パネルユニット50の防振機能を向上させることができる。
【0067】
第1突出部91Cは径方向における両端面である外側端面911と内側端面912を有する。外側端面911と内側端面912にはそれぞれ、窪み915が形成されている。一対の窪み915にはそれぞれ、一対の第1ナット211が配置されている。各々の窪み915の内側に形成される空間は、第1挿通穴101Cの一部を構成する。図示される実施形態では、径方向の外側にある第1ナット211は、外側端面911に形成された窪み915に配置されている。つまり、当該第1ナット211の少なくとも一部は、第1挿通穴101Cに配置される。なお、第1ナット211の全部位が第1挿通穴101Cに配置されることが好ましい。
【0068】
上記構成によれば、径方向の外側にある第1ナット211が磁極片パネルユニット50Cの回転時に回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械1の稼働時において、磁極片パネルユニット50Cの周囲における冷却風の流れを当該第1ナット211が遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニット50Cの温度上昇を抑制できる。また、第1ナット211が磁極片パネル60から径方向の外側に突出するのを抑制できるので、第1ナット211が固定子20といった磁気ギヤ電気機械1の他の構成要素に接触することを回避することができる。
【0069】
第2突出部92Cの径方向における両端面である外側端面921および内側端面922にはそれぞれ、窪み925が形成されている。一対の窪み925にはそれぞれ、一対の第2ナット222が配置されている。各々の窪み925の内側に形成される空間は、第2挿通穴102Cの一部を構成する。図示される実施形態では、一対の第2ナット222のうちで径方向の内側にある第2ナット222は、内側端面922に形成された窪み925に配置されている。つまり、当該第2ナット222の少なくとも一部は、第2挿通穴102Cに配置される。なお、第2ナット222の全部位が第2挿通穴102Cに配置されることが好ましい。
【0070】
上記構成によれば、第1突出部91Cから離れた第2ナット222が磁極片パネルユニット50Cの回転時に回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械1の稼働時において、磁極片パネルユニット50Cの周囲における冷却風の流れを当該第2ナット222が遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニット50Cの温度上昇を抑制できる。また、第2ナット222が磁極片パネル60から径方向の内側に突出するのを抑制できるので、第2ナット222が回転子15といった磁気ギヤ電気機械1の他の構成要素に接触することを回避することができる。
【0071】
第1突出部91Cの内側端面912と、第2突出部92Cの外側端面921は、シート材170を挟み込んでもよい。この場合、内側端面912に形成される窪み915に第1ナット211の少なくとも一部が配置され、かつ、外側端面921に形成される窪み925に第2ナット222の少なくとも一部が配置されることで、第1ナット211と第2ナット222がシート材170の配置を妨げになるのを抑制することができる。なお、第1ナット211の全部位が内側端面912の窪み915に配置され、かつ、第2ナット222の全部位が外側端面921の窪み925に配置されることで、シート材170はさらに配置され易い。
【0072】
<7.磁極片パネルユニット50の組立の例示>
図8は、本開示の一実施形態に係る磁極片パネルユニット50の組立方法を示す概略図である。
図8の例では、周方向に並ぶ4枚の磁極片パネル60によって磁極片パネルユニット50は形成される。より具体的には、磁極片パネル60は、第1磁極片パネル61、2枚の第2磁極片パネル62、および、第3磁極片パネル63を含む。第1磁極片パネル61は、周方向において、第2磁極片パネル62と第3磁極片パネル63とに隣接する。換言すると、第3磁極片パネル63は、第1磁極片パネル61を挟んで第2磁極片パネル62とは反対側に配置される。
【0073】
第1磁極片パネル61は、上述した構成要素に加えて、第1周端部71とは反対側の端部である第1規定周端部77をさらに含む。第1規定周端部77は、軸方向に延在する第1規定本体部87と、第1規定本体部87よりも周方向の他方側に突出する第1規定突出部97とを有する。なお、第2磁極片パネル62の構成は上述した通りであるので、詳説を割愛する。
【0074】
第3磁極片パネル63は、周方向の一方側の端部である第3周端部73を含む。第3周端部73は、軸方向に延在する第3本体部83と、第3本体部83よりも周方向の一方側に突出する第3突出部93とを有する。第3突出部93は、第1規定突出部97と径方向に並ぶ。換言すると、第3突出部93と第1規定突出部97は周方向において互いに重複する。
【0075】
図示される実施形態では、第1磁極片パネル61の第1突出部91は、第2磁極片パネル62の第2突出部92よりも径方向の外側に位置し、第1磁極片パネル61の第1規定突出部97は、第3磁極片パネル63の第3突出部93よりも径方向の外側に位置する。上記構成によれば、磁極片パネルユニット50の組立工程において、第1磁極片パネル61を径方向の外側から第2磁極片パネル62および第3磁極片パネル63に向けて近づけることができるので、磁極片パネルユニット50の組立工程を向上させることができる。
【0076】
<8.まとめ>
上述した幾つかの実施形態は、例えば以下のように把握される。
【0077】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片パネルユニット(50)は、
軸線(S)を基準とした周方向に沿って交互に配置される複数の磁極片(55)および複数の非磁性体(53)を含む磁極片パネル(60)を複数備える磁極片パネルユニットであって、
前記周方向の一方側の端部である第1周端部(71)を含む第1磁極片パネル(61)と、
前記第1磁極片パネルと前記周方向に隣接する第2磁極片パネルであって、前記周方向の他方側の端部である第2周端部(72)を含む第2磁極片パネル(62)と、
を備え、
前記第1周端部は、
軸方向に延在する第1本体部(81)と、
前記第1本体部よりも前記周方向の前記一方側に突出する第1突出部(91)と、を有し、
前記第2周端部は、
前記軸方向に延在する第2本体部(82)と、
前記第2本体部よりも前記周方向の前記他方側に突出すると共に、前記第1突出部と径方向に並ぶ第2突出部(92)と、を有し、
前記第1突出部に形成される第1挿通穴(101)と前記第2突出部に形成される第2挿通穴(102)とに挿通される軸部(125)を含み、前記第1突出部および前記第2突出部に固定される固定部材(120)をさらに備える。
【0078】
上記1)の構成によれば、第1挿通穴と第2挿通穴に挿通される軸部を含む固定部材が第1突出部および第2突出部に固定される、磁極片パネルユニットの剛性が向上する。これにより、磁極片パネルユニットに励振力が作用する場合であっても、磁極片パネルユニットの撓みを抑制できる。よって、防振機能を向上させた磁極片パネルユニットが実現される。
【0079】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記固定部材は、前記軸部よりも大きな外径を有する頭部であって、前記第1突出部を前記第2突出部に押し当てる頭部(128)をさらに含む締結部材である。
【0080】
上記2)の構成によれば、頭部が第1突出部を第2突出部に押し当てることで、第1突出部を第2突出部に強固に固定できる。よって、磁極片パネルユニットの剛性を向上させることができ、磁極片パネルユニットの防振機能は向上する。
【0081】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記頭部の少なくとも一部は、前記第1挿通穴に配置される。
【0082】
上記3)の構成によれば、磁極片パネルユニットの回転時に頭部が回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械の稼働時において、磁極片パネルユニットの周囲における冷却風の流れを頭部が遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニットの温度上昇を抑制できる。
【0083】
4)幾つかの実施形態では、上記2)または3)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記頭部とは反対側の前記軸部の端部(126)は、前記第2挿通穴に配置される。
【0084】
上記4)の構成によれば、磁極片パネルユニットの回転時に軸部が回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械の稼働時において、磁極片パネルユニットの周囲における冷却風の流れを軸部が遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニットの温度上昇を抑制できる。
【0085】
5)幾つかの実施形態では、上記2)から4)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記締結部材は、前記軸部が前記第2挿通穴において締結されるネジである。
【0086】
上記5)の構成によれば、締結部材がボルトおよびナットである場合に比べて、締結部材の部品点数を低減でき、磁極片パネルユニットの構成を簡素化できる。
【0087】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記ネジは、前記頭部の外径が、前記第2突出部に近づくほど短くなるテーパネジであり、
前記第1突出部は、前記第1挿通穴を規定する第1開口部(65)を有し、
前記第1開口部は、前記第2突出部に近づくほど内径が小さくなるテーパ内周面であって、前記頭部が押し当たるテーパ内周面(66)を有する。
【0088】
上記6)の構成によれば、テーパネジの頭部がテーパ内周面に押し当たることによって生じる力の一部は、第1突出部を第2本体部に向けて押し当てる力として機能する。これにより、第1周端部と第2周端部はより強固に固定され、磁極片パネルユニットの剛性をさらに向上させることができる。
【0089】
7)幾つかの実施形態では、上記5)または6)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記第2突出部は、前記第1突出部とは反対側から前記第2挿通穴を閉塞する閉塞壁部(95)を有する。
【0090】
上記7)の構成によれば、第2挿通穴に空気が進入することが閉塞壁部によって抑制されるので、磁極片パネルユニットの回転抵抗を抑制できると共に、磁極片パネルユニットの温度上昇を抑制できる。
【0091】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記軸方向において、各々の前記非磁性体は各々の前記磁極片よりも長く、
前記第1磁極片パネルは、前記第1周端部の少なくとも一部を構成する第1非磁性体であって、特定の前記非磁性体の一部を構成する第1非磁性体(53A)を含み、
前記第2磁極片パネルは、前記第2周端部の少なくとも一部を構成する第2非磁性体であって、前記特定の非磁性体の他部を構成する第2非磁性体(53B)を含む。
【0092】
軸方向において磁極片よりも長い非磁性体は径方向に撓み易い。この点、上記8)の構成によれば、第1非磁性体が第2非磁性体に固定部材によって接合されるので、非磁性体の径方向における剛性を高めることができ、磁極片パネルユニットの防振機能を向上させることができる。
【0093】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記軸部は、
前記第1挿通穴に挿通される円筒状の第1軸部(251)と、
前記第1軸部に一部が収容されると共に、前記第2挿通穴を貫通するように設けられる第2軸部(252)と
を有し、
前記固定部材は、
前記第1軸部の外周部(251A)に螺合する一対の第1ナットであって、前記第1突出部を前記径方向において挟み込む一対の第1ナット(211)と、
前記第2軸部の外周部(252A)に螺合する一対の第2ナットであって、前記第2突出部を前記径方向において挟み込む一対の第2ナット(222)と、
と、をさらに含む。
【0094】
上記9)の構成によれば、第1周端部または第2周端部の少なくとも一方に径方向を向く力が作用する場合であっても、当該力は、第2軸部が第1軸部に対して相対的に直線移動することで固定部材に吸収される。これにより、磁極片パネルユニットの防振機能をさらに向上させることができる。
【0095】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記固定部材は、
前記第1軸部に収容されるスプリングであって、前記第1軸部が前記第2軸部から突出する方向へ前記第1軸部を付勢するスプリング(203)と、
前記第1軸部に充填されると共に、前記第2軸部の直線移動に制動力を付与するための制動油(205)と、をさらに含む。
【0096】
上記10)の構成によれば、スプリングの弾性変形と、制動油による制動力の付与によって、第2軸部の直線移動を抑えることができ、磁極片パネルユニットの防振機能を向上させることができる。
【0097】
11)幾つかの実施形態では、上記9)または10)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記一対の第1ナットのうちで、前記第2突出部から離れた前記第1ナットの少なくとも一部は、前記第1挿通穴に配置される。
【0098】
上記11)の構成によれば、第2突出部から離れた第1ナットが磁極片パネルユニットの回転時に回転抵抗となるのを抑制できる。また、磁気ギヤ電気機械の稼働時において、磁極片パネルユニットの周囲における冷却風の流れを当該第1ナットが遮るのを抑制でき、磁極片パネルユニットの温度上昇を抑制できる。
【0099】
12)幾つかの実施形態では、上記1)から11)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記第1周端部と前記第2周端部とによって挟み込まれており、少なくとも弾性を有するシート材(170)をさらに備える。
【0100】
上記12)の構成によれば、第1周端部または第2周端部の少なくとも一方において径方向を向く力が励振力として発生した場合でも、当該力は、変形するシート材において発生する復元力によって低減される。よって、磁極片パネルユニットの防振機能をさらに向上させることができる。
【0101】
13)幾つかの実施形態では、上記12)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記シート材は、前記弾性および粘性を有する粘弾性ゴムシートである。
【0102】
上記13)の構成によれば、第1周端部または第2周端部の少なくとも一方において径方向を向く力が突発的に発生した場合でも、粘弾性ゴムシートであるシート材の変形によって当該力を瞬時に低減させることができる。
【0103】
14)幾つかの実施形態では、上記12)または13)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記シート材は、前記第1突出部と前記第2本体部との間、または、前記第2突出部と前記第1本体部との間の少なくとも一方に配置され、前記径方向に延在する径方向延在部(172)を含む。
【0104】
上記14)の構成によれば、第1突出部と第2本体部との間、または、第2突出部と第1本体部との間において径方向を向く力が発生する場合でも、径方向延在部が径方向に変形することで、当該力を吸収することができる。
【0105】
15)幾つかの実施形態では、上記12)から14)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記シート材は、前記第1突出部と前記第2突出部の間に配置され、前記周方向に延在する周方向延在部(175)を含む。
【0106】
上記15)の構成によれば、第1突出部と第2突出部の間において径方向を向く力が励振力として発生する場合でも、周方向延在部が径方向に変形することで、当該力を吸収することができる。
【0107】
16)幾つかの実施形態では、上記15)に記載の磁極片パネルユニットであって、
前記周方向延在部には、前記固定部材の前記軸部が挿通される孔(179)が形成される。
【0108】
上記16)の構成によれば、周方向延在部を軸部の周囲にも配置することが可能になり、周方向延在部が配置される領域を拡大できる。よって、磁極片パネルユニットの防振機能を向上させることができる。
【0109】
17)幾つかの実施形態では、上記1)から16)のいずれかに記載の磁極片パネルユニットであって、
前記第1磁極片パネルを挟んで前記第2磁極片パネルとは反対側に配置される第3磁極片パネルであって、前記周方向の一方側の端部である第3周端部(73)を含む第3磁極片パネル(63)をさらに備え、
前記第3周端部は、
前記軸方向に延在する第3本体部(83)と、
前記第3本体部よりも前記周方向の前記一方側に突出する第3突出部(93)と、を有し、
前記第1磁極片パネルは、前記第1周端部とは反対側の第1規定周端部(97)をさらに含み、
前記第1規定周端部は、
前記軸方向に延在する第1規定本体部(87)と、
前記第1規定本体部よりも前記周方向の前記他方側に突出すると共に、前記第3突出部と前記径方向に並ぶ第1規定突出部(97)と、を有し、
前記第1突出部は、前記第2突出部よりも前記径方向の外側に位置し、
前記第1規定突出部は、前記第3突出部よりも前記径方向の外側に位置する。
【0110】
上記17)の構成によれば、磁極片パネルユニットの組立工程において、第1磁極片パネルを径方向の外側から第2磁極片パネルおよび第3磁極片パネルに向けて近づけることができるので、磁極片パネルユニットの組立性を向上させることができる。
【0111】
18)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子(30)は、
上記1)乃至17)の何れかに記載の磁極片パネルユニット(50)と、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における一端部(51)と、磁気ギヤ電気機械(1)の回転軸(5)とに連結される第1連結部(31)と、
前記磁極片パネルユニットの前記軸方向における他端部(52)と、前記回転軸とに連結される第2連結部(32)と、
を備える。
【0112】
上記18)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、磁極片パネルユニットの剛性が向上する。これにより、遠心力などの励振力が磁極片パネルユニットに作用する場合でも、磁極片パネルユニットの撓みを抑制できる。よって、防振機能を向上させた磁極片回転子が実現される。
【0113】
19)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械(1)は、
上記18)に記載の磁極片回転子(30)と、
前記磁極片パネルユニットに対して前記径方向の内側または外側で前記周方向に並ぶ複数のロータ磁石(19)を含む回転子(15)と、
前記磁極片パネルユニットを挟んで前記複数のロータ磁石とは反対側において前記周方向に並ぶ複数のステータ磁石(29)を含む固定子(20)と、
を備える。
【0114】
上記19)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、磁極片パネルユニットの剛性が向上する。これにより、遠心力または電磁気的な力などの励振力が磁極片パネルユニットに作用する場合でも、磁極片パネルユニットの撓みを抑制できる。また、磁極片パネルユニットの固有振動数と、電磁気的な力に起因する励振力が有する周波数成分とを異ならせることができ、磁極片パネルユニットの共振を回避することが可能になる。
【符号の説明】
【0115】
1 :磁気ギヤ電気機械
5 :回転軸
15 :回転子
19 :ロータ磁石
20 :固定子
25 :ステータコア
27 :ステータコイル
29 :ステータ磁石
30 :磁極片回転子
31 :第1連結部
32 :第2連結部
37 :リング部
38 :軸連結部
39 :延在部
50 :磁極片パネルユニット
51 :一端部
52 :他端部
53 :非磁性体
53A :第1非磁性体
53B :第2非磁性体
55 :磁極片
56 :エンドリング
59 :エンドプレート
60 :磁極片パネル
61 :第1磁極片パネル
62 :第2磁極片パネル
63 :第3磁極片パネル
65 :第1開口部
66 :テーパ内周面
67 :ストレート内周面
71 :第1周端部
72 :第2周端部
73 :第3周端部
77 :第1規定周端部
81 :第1本体部
82 :第2本体部
83 :第3本体部
84 :第2端面
85 :第1端面
87 :第1規定本体部
91 :第1突出部
92 :第2突出部
93 :第3突出部
94 :先端面
95 :閉塞壁部
96 :先端面
97 :第1規定突出部
98 :外側端面
99 :内側端面
101 :第1挿通穴
102 :第2挿通穴
120 :固定部材
125 :軸部
126 :端部
127 :締結テーパ面
128 :頭部
129 :ナット
150 :磁極片パネルユニット
170 :シート材
172 :径方向延在部
172A :第1径方向延在部
172B :第2径方向延在部
175 :周方向延在部
179 :孔
203 :スプリング
205 :制動油
211 :第1ナット
222 :第2ナット
251 :第1軸部
251A,252A :外周部
252 :第2軸部
911,921 :外側端面
912,922 :内側端面
915,925 :窪み