(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087973
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】外壁施工システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240625BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240625BHJP
E04B 1/35 20060101ALI20240625BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240625BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240625BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240625BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240625BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240625BHJP
E04F 21/08 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G21/02 103Z
E04B1/35 L
B29C64/209
B33Y10/00
B29C64/106
B33Y30/00
B28B1/30
E04F21/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202900
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】福島 健一
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】保科 篤宏
(72)【発明者】
【氏名】西松 英明
(72)【発明者】
【氏名】森田 真由
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆弘
【テーマコード(参考)】
2E172
2E174
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
2E172AA06
2E172DB05
2E172DC01
2E174CA02
2E174CA06
2E174CA30
2E174DA14
2E174DA43
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL32
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】伝統的な建築物の構造を維持しながら3Dプリンタを用いて外壁を施工可能で、かつ、建築物の周囲に余裕のない狭小地でも使用可能な外壁施工システムを提供する。
【解決手段】建築物の骨格40を構成する柱に装着され、少なくとも水平レール14を有するプリンタヘッド走行手段11と、前記水平レールに沿って移動可能で、コンクリート、モルタルまたはジオポリマーからなる外壁材料を吐出するノズルを少なくとも有するプリンタヘッド35とを備える外壁施工システム10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の骨格を構成する柱に装着され、少なくとも水平レールを有するプリンタヘッド走行手段と、
前記水平レールに沿って移動可能で、コンクリート、モルタルまたはジオポリマーからなる外壁材料を吐出するノズルを少なくとも有するプリンタヘッドと、
を備えた外壁施工システム。
【請求項2】
前記プリンタヘッド走行手段は、2本の前記柱に溝が形成され、前記溝に嵌合して上下に移動可能な水平レール取付部を有し、
前記水平レールが2つの前記水平レール取付部に固定されている、
請求項1に記載の外壁施工システム。
【請求項3】
前記プリンタヘッド走行手段は、2本の前記柱に穴が形成され、前記穴に固定された垂直レール取付部と、前記垂直レール取付部に固定された垂直レールと、前記垂直レール上を上下に移動可能な水平レール取付部を有し、
前記水平レールが2つの前記水平レール取付部に固定されている、
請求項1に記載の外壁施工システム。
【請求項4】
前記プリンタヘッドに内蔵または連結されて、前記プリンタヘッドとともに前記水平レールに沿って移動可能で、前記ノズルから吐出された前記外壁材料が硬化する前に前記外壁材料に釘を打ち込む釘打ち機をさらに有する、
請求項1に記載の外壁施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁、より詳細には木造軸組構造、2×4工法などによる木造枠組壁構造、軽量鉄骨構造などの伝統的な構造を有する建築物の外壁を3Dプリンタを用いて施工するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造軸組構造、木造枠組壁構造、軽量鉄骨構造を有する住宅の建設時には、住宅の骨格が完成した後、周囲に足場を組んで外壁のサイディング材等が施工される。このとき、サイディング材を加工する際の採寸、サイディング材を現場で所要の大きさに切断する際に発生する端材の廃棄や近隣への粉塵の問題があった。また、敷地が狭小で足場用に十分な広さの敷地が取れない場合には単管足場を用いることとなり、作業に危険が伴うという問題があった。
【0003】
一方、近年、コンクリートの3Dプリンタを用いて建築物を造形する技術が開発されている。特許文献1には、3Dプリンタを用いた複合構造物の構築装置であって、コンクリート系材料、ジオポリマーなどを施工可能なロボットアームを、複数の支柱に支持されて、構造物を囲うように配設された環状の走行用レールに沿って移動させる構築装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された3Dプリンタを用いる構築装置では、走行用レールを支持する支柱を設置する必要があり、さらに、構築物の周囲に広い敷地が必要であった。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、伝統的な建築物の構造を維持しながら3Dプリンタを用いて外壁を施工可能で、かつ、外壁施工に足場を配置する必要がなく、さらに建築物の周囲の敷地に余裕のない狭小地でも使用可能な外壁施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明の外壁施工システムは、3Dプリンタのヘッド部分の走行手段を、建築物の骨格を構成する柱に装着することを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明の外壁施工システムは、建築物の骨格を構成する柱に装着され、少なくとも水平レールを有するプリンタヘッド走行手段と、前記水平レールに沿って移動可能で、コンクリート、モルタルまたはジオポリマーからなる外壁材料を吐出するノズルを少なくとも有するプリンタヘッドとを備える。
【0009】
前記プリンタヘッド走行手段は、2本の前記柱に溝が形成され、前記溝に嵌合して上下に移動可能な水平レール取付部を有し、前記水平レールが2つの前記水平レール取付部に固定された構造とすることができる。
【0010】
あるいは、前記プリンタヘッド走行手段は、2本の前記柱に穴が形成され、前記穴に固定された垂直レール取付部と、前記垂直レール取付部に固定された垂直レールと、前記垂直レール上を上下に移動可能な水平レール取付部を有し、前記水平レールが2つの前記水平レール取付部に固定された構造とすることができる。
【0011】
好ましくは、上記外壁施工システムは、前記プリンタヘッドに内蔵または連結されて、前記プリンタヘッドとともに前記水平レールに沿って移動可能で、前記ノズルから吐出された前記外壁材料が硬化する前に前記外壁材料に釘を打ち込む釘打ち機をさらに有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外壁施工システムによれば、伝統的な木造軸組構造、木造枠組壁構造、軽量鉄骨構造などを維持しつつ、3Dプリンタによって外壁を施工することができるので、住宅用途などでも受け入れられやすい建築物を構築できる。また、足場を組むことなく外壁を施工できるので、サイディング材を現場で切断する必要がない。また、プリンタヘッドの走行手段を、建築物の骨格を構成する柱に固定するので、走行手段を支持するための専用の支柱が不要で、狭小な敷地でも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】建築物の骨格と第1実施形態の外壁施工システムを示す図である。
【
図2】第1実施形態の走行手段を説明するための図である。
【
図3】プリンタヘッドを、A:建築物側、B:屋外側から見た図である。
【
図4】第2実施形態の走行手段を説明するための図である。A:屋外側から見た立面図、B:柱の中心を通る垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の外壁施工システムの第1実施形態を
図1~3に基づいて説明する。
【0015】
図1を参照して、本実施形態の外壁施工システム10は、3Dプリンタシステム30と、3Dプリンタシステムのプリンタヘッド35を走行させるための走行手段11を備える。走行手段11は、建築物の軸組み(骨格)40を構成する柱に固定される。走行手段は水平レール14を有し、プリンタヘッド35が水平レール14に沿って移動可能に取り付けられている。
【0016】
軸組み40は、木造の骨組みであって、土台、柱、胴差し、桁、筋交いなどで構成される。土台41は、コンクリート製の基礎の上に固定されて、柱の下部を連絡する。胴差し44は、下階の壁を構成する柱を連絡して、上階の壁や床を受ける。桁45は軸組みの上端を繋ぐ。柱には、通し柱、管柱、間柱等がある。通し柱42は、土台から軒まで上下階を通して用いられる。管柱43は、土台から軒までの途中で胴差し、桁などで中断され、上方の荷重を支える。間柱(図示せず)は、通し柱と管柱の中間に立てて、壁材の取り付けに用いられる小柱である。
【0017】
図2を参照して、走行手段11は、第1の柱50と第2の柱52に装着される。第1の柱と第2の柱は、同じ壁に属する2本の柱であって、好ましくは、強度の高い通し柱または管柱である。第1の柱50には、屋外側に向いた面に、上下に延びる第1の溝51が形成されている。第2の柱52には、第1の柱に第1の溝が形成された面と同じ方向を向いた面に、上下に延びる第2の溝53が形成されている。第1の溝51には、第1の水平レール取付部12が溝51に沿って移動可能に嵌合している。第2の溝53には、第2の水平レール取付部13が溝53に沿って移動可能に嵌合している。第1の水平レール取付部12と第2の水平レール取付部13には、水平レール14が固定されている。この構造により、第1の水平レール取付部12、第2の水平レール取付部13および水平レール14が一体となって、走行手段11を構成し、上下方向に移動可能となる。
【0018】
図1および
図2を参照して、3Dプリンタシステム30は、プリンタヘッド35と、外壁材料をプリンタヘッドへ供給する手段と、制御装置34からなる。外壁材料は、コンクリート、モルタルまたはジオポリマーからなる。一般に、3Dプリンタで用いられるコンクリートやモルタルには、急結剤や硬化促進剤が混合される。外壁材料は、ホッパー31から押出機32によって圧送され、ホース33を通って、プリンタヘッド35が備えるノズル(
図3の36)から吐出される。押出機等の重量の大きい装置は、建築物から離れた地面や運搬車両上に設置され、水平レール14には軽量のプリンタヘッドだけが取り付けられる。
【0019】
そして、水平レール14が上下に移動し、プリンタヘッド35が水平レール14に沿って水平に移動することによって、施工する外壁の所望の位置に外壁材料を吐出することができる。水平レールおよびプリンタヘッドの移動、外壁材料の吐出の開始と停止は、制御装置34によって制御される。
【0020】
図3AおよびBを参照して、プリンタヘッド35は外壁材料を吐出するノズル36、釘打ち機37およびセンサ39を有する。
【0021】
釘打ち機37は、ノズル36から吐出された外壁材料に向かって、釘射出孔38から釘を打ち込む。釘の種類は特に限定されず、釘には、一般的な丸釘の他、ねじ釘やU字状のステープルを含む。釘は、外壁材料が硬化する前に打ち込まれ、外壁材料を貫通して、管柱や間柱に突き刺さる。釘打ち機37としては、エア式の釘打ち機やタッカーなどの公知のものを用いることができる。
【0022】
センサ39は、釘打ち機37が釘を打ち込むタイミングを検知することができれば特に種類は限定されない。例えば、光電センサやレーザセンサ、画像センサなどを用いることができる。また、レールや柱側にマーキングや検出物体などを設置しておき、これらをセンサで検知することで釘打ちのタイミングを制御してもよい。
【0023】
本実施形態の外壁施工システム10の使用方法を以下に説明する。
【0024】
走行手段11を固定する第1の柱50および第2の柱52には、予めそれぞれ第1の溝51および第2の溝53を形成しておく。建築現場で軸組み40が完成した後、第1の水平レール取付部12、第2の水平レール取付部13および水平レール14を、第1の柱および第2の柱に装着する。プリンタヘッド35を水平レールに装着する。
【0025】
プリンタヘッド35を施工する外壁の下端、左または右端に移動させる。プリンタヘッドを水平レール14に沿って移動させながら、外壁材料をノズル36から吐出する。以後、水平レールを少しずつ上げながら外壁材料を順次積層して、外壁を造形する。このとき、プリンタヘッドの移動速度を変化させることによって外壁の厚さを変化させることができ、意匠性に富んだ外壁を造形することもできる。上下に適当な間隔を取りながら、施工済みの外壁材料に釘を打ち込む。
【0026】
次に、本発明の外壁施工システムの第2実施形態を説明する。本実施形態の外壁施工システムは、走行手段の柱への装着方法が第1実施形態と異なる。以下に、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0027】
図4を参照して、本実施形態の外壁施工システム20の走行手段21は、第1の柱55と第2の柱57に装着される。第1の柱と第2の柱は、同じ壁に属する2本の柱であって、好ましくは、強度の高い通し柱または管柱である。第1の柱55には、屋外側に向いた面に第1の穴56が形成されており、第1の穴56には、第1の垂直レール取付部22が固定される。第1の穴および第1の垂直レール取付部は、第1の柱55の1箇所に設けられていてもよいし、高さ方向に間隔を空けて、複数の箇所に設けられていてもよい。第1の垂直レール取付部22には、第1の垂直レール23が固定される。第1の垂直レールには、第1の水平レール取付部24が第1の垂直レールに沿って移動可能に装着される。同様に、第2の柱57には、屋外側に向いた面に第2の穴58が形成されており、第2の穴58には、第2の垂直レール取付部25が固定される。第2の穴および第2の垂直レール取付部は、第2の柱57の1箇所に設けられていてもよいし、高さ方向に間隔を空けて、複数の箇所に設けられていてもよい。第2の垂直レール取付部25には、第2の垂直レール26が固定される。第2の垂直レールには、第2の水平レール取付部27が第2の垂直レールに沿って移動可能に装着される。第1の水平レール取付部24と第2の水平レール取付部27には、水平レール28が固定されている。この構造により、第1の水平レール取付部24、第2の水平レール取付部27および水平レール28が一体となって、上下方向に移動可能となる。
【0028】
そして、水平レール28が上下に移動し、プリンタヘッド35が水平レール28に沿って水平に移動することによって、施工する外壁の所望の位置に外壁材料を吐出することができる。
【0029】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 外壁施工システム
11 走行手段(プリンタヘッド走行手段)
12 第1の水平レール取付部
13 第2の水平レール取付部
14 水平レール
20 外壁施工システム
21 走行手段(プリンタヘッド走行手段)
22 第1の垂直レール取付部
23 第1の垂直レール
24 第1の水平レール取付部
25 第2の垂直レール取付部
26 第2の垂直レール
27 第2の水平レール取付部
28 水平レール
30 3Dプリンタシステム
31 ホッパー
32 押出機
33 ホース
34 制御装置
35 プリンタヘッド
36 ノズル
37 釘打ち機
38 釘射出孔
39 センサ
40 軸組み(骨格)
41 土台
42 通し柱
43 管柱
44 胴差し
45 桁
50 第1の柱
51 第1の溝
52 第2の柱
53 第2の溝
55 第1の柱
56 第1の穴
57 第2の柱
58 第2の穴