(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087974
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電子時計、表示制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20240625BHJP
G04G 9/00 20060101ALI20240625BHJP
G04G 9/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G04C3/00 A
G04G9/00 301C
G04G9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202902
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 毅
【テーマコード(参考)】
2F002
2F101
【Fターム(参考)】
2F002AA06
2F002AB06
2F002EA01
2F002EA04
2F002EB01
2F002ED01
2F002ED02
2F002EF01
2F002EH01
2F101AA06
2F101AC01
2F101AC03
2F101AC10
2F101AD02
2F101AE03
2F101AF03
(57)【要約】
【課題】視認性の低下を抑制しつつ、複数の表示面の表示内容を見やすく表示することのできる電子時計、表示制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】指針(51a、51b)を有する第1の表示部と、第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性の第2の表示部と、制御部と、を備える。制御部は、第2の表示部により表示を行わせる場合に、第1の表示部における指針(51a、51b)による表示部分と重ならない範囲を選択し、第2の表示部により、選択された範囲に対応するデジタル表示範囲(R1)に表示を行わせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を有する第1の表示部と、
前記第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性を有する第2の表示部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第2の表示部により表示を行わせる場合に、
前記第1の表示部における前記指針による表示領域と重ならない範囲を選択し、
前記第2の表示部により、前記範囲に対応する領域に前記表示を行わせる
電子時計。
【請求項2】
前記第1の表示部と前記第2の表示部との間に位置し、透過状態と非透過状態とを少なくとも一部の領域で切り替え可能な表示遮断部を備え、
前記制御部は、前記表示遮断部により、前記範囲に対応する領域を非透過状態とさせ、前記範囲以外の領域を透過状態とさせる
請求項1記載の電子時計。
【請求項3】
前記第1の表示部は、前記指針を複数有し、
前記制御部は、前記範囲の選択時に、前記指針のうち設定された指針による表示領域と重ならない前記範囲を選択する
請求項1記載の電子時計。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の表示部により前記表示に加えて追加の表示を行わせる場合に、前記指針による前記表示領域及び前記範囲と重ならない追加範囲を選択して、
前記第2の表示部により前記追加範囲に対応する領域に前記追加の表示を行わせ、
前記表示遮断部により、前記追加範囲を非透過状態とさせる
請求項2記載の電子時計。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の表示部により前記表示に加えて追加の表示を行わせる場合に、前記範囲に対応する領域内に元の表示と前記追加の表示とが含まれるように前記第2の表示部による表示を更新させる請求項1又は2記載の電子時計。
【請求項6】
前記更新では、前記第2の表示部により表示させる内容のサイズが変更される請求項5記載の電子時計。
【請求項7】
前記表示遮断部は、非透過状態とする部分をそれぞれ規定する複数のブロックを有し、
前記制御部は、前記複数のブロックから前記範囲を選択する
請求項2記載の電子時計。
【請求項8】
通信部を備え、
前記制御部は、前記通信部により受信された内容に応じて前記第2の表示部により表示させる内容を定める
請求項1記載の電子時計。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2の表示部による表示が継続されると見込まれる時間にわたり前記指針による表示と重ならない前記範囲を選択する請求項1記載の電子時計。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2の表示部による表示の継続中に前記指針が前記範囲と重なった場合には、前記範囲を移動させ、前記第2の表示部により、移動後の前記範囲に対応する領域に前記表示を行わせる
請求項1記載の電子時計。
【請求項11】
前記表示遮断部は、偏光特性に応じて前記透過状態と前記非透過状態とを切り替える請求項2記載の電子時計。
【請求項12】
前記第2の表示部は、有機ELディスプレイを有する請求項1記載の電子時計。
【請求項13】
指針を有する第1の表示部と、前記第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性を有する第2の表示部と、を備える電子時計の表示制御方法であって、
前記第2の表示部により表示を行わせる場合に、
前記第1の表示部における前記指針による表示領域と重ならない範囲を選択し、
前記第2の表示部により、前記範囲に対応する領域に前記表示を行わせる
表示制御方法。
【請求項14】
指針を有する第1の表示部と、前記第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性を有する第2の表示部と、を備える電子時計のコンピュータを、
前記第2の表示部により表示を行わせる場合に、
前記第1の表示部における前記指針による表示領域と重ならない範囲を選択し、
前記第2の表示部により、前記範囲に対応する領域に前記表示を行わせる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子時計、表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計などの電子時計の表示画面において、指針によるアナログ表示とデジタル表示とを併用する技術がある。このとき、両者の表示が同時に重なって行われると、下方の表示が隠されて見づらくなる。特許文献1では、アナログ表示面上を覆うデジタル表示面で表示を行う場合には、当該デジタル表示画面を非透過としてアナログ表示を隠している。デジタル表示を行わない場合には、デジタル表示画面が透過状態とされて、アナログ表示が視認可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アナログ表示の内容が全て見えなくなるのは好ましくない場合があるという課題がある。一方で、単純に重なって表示されると、下方の表示の視認性が低下する。
【0005】
この発明の目的は、視認性の低下を抑制しつつ、複数の表示面の表示内容を見やすく表示することのできる電子時計、表示制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
指針を有する第1の表示部と、
前記第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性を有する第2の表示部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第2の表示部により表示を行わせる場合に、
前記第1の表示部における前記指針による表示領域と重ならない範囲を選択し、
前記第2の表示部により、前記範囲に対応する領域に前記表示を行わせる
電子時計である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従うと、視認性の低下を抑制しつつ、複数の表示面の表示内容を見やすく表示することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の電子時計の構成を説明する図である。
【
図2】電子時計の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】デジタル表示部による表示の他の例を示す図である。
【
図5】デジタル表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図6】複数の表示内容が生じた場合の表示例を示す図である。
【
図7】複数の表示内容が生じた場合の表示例を示す図である。
【
図8】変形例1のデジタル表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】複数の表示内容の他の表示例を示す図である。
【
図10】変形例2のデジタル表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】デジタル表示範囲の設定の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子時計1の構成を説明する図である。
図1(a)は、電子時計1を表示面の上方から見た平面図である。
図1(b)は、電子時計1に表示に係る構成の断面構造の一部を示す模式図である。
図1(b)では、表示動作に関係のない構成は一部省略されている。
【0010】
図1(a)に示すように、電子時計1は、筐体2と、文字盤5と、指針51と、ベゼル7と、押しボタンスイッチB1、B2と、りゅうずC1などを備える。
筐体2は、少なくとも上方が開放された中空の筒状形状を有し、内部空間に各種構成を収容して保護する。筐体2は、例えば、金属、樹脂、セラミック材などであり、用途やデザインなどに応じて適宜選択され得る。筐体2の両端には、リストバンドが着脱される装着部2aが位置している。
【0011】
文字盤5は、筐体2の開放された上方に向けて位置している。文字盤5上には、時刻を示すための標識(時字)などが位置している。また、文字盤5には、指針51のうち小針が回転する範囲に応じた標識や境界などを表す小窓が位置している。
【0012】
指針51は、文字盤5の上方で当該文字盤5に沿った面内を回転動作が可能であり、その向きにより情報を示す。指針51は、少なくとも時刻の表示が可能であり、複数本、例えば、時針、分針及び秒針を含む。また、指針51には、文字盤5の一部の範囲で回転動作する小針を含み得る。ここでは、4つの小窓に合計5本の小針が位置している。また、指針51には、文字盤5の下で回転動作し、開口から一部が選択的に露出されることで情報(例えば日付)を示す回転板を含んでいてもよい。
指針51及び文字盤5により本実施形態の第1の表示部が構成される。
これらにより、筐体2の上記開放された上方側(文字盤5に対して回転板以外の指針51が位置する側)が表示面となる。
【0013】
筐体2上(文字盤5の周縁を含んでもよい)には、ベゼル7が位置している。ベゼル7は、装飾用途のほか、衝撃に対する緩衝機能や、外部機器との通信(受信専用などを含む)に係るアンテナとしての機能などが併用されるものであってもよい。
【0014】
筐体2の側面には、その開口を貫通して押しボタンスイッチB1、B2及びりゅうずC1が位置している。押しボタンスイッチB1、B2及びりゅうずC1は、外部からの入力操作を受け付ける部材である。押しボタンスイッチB1、B2が押下されることで、操作信号が内部の動作制御に係る構成へ送信される。また、りゅうずC1の引き出し、回転及び押し戻しの各動作に応じた制御信号が制御構成へ出力される。
【0015】
図1(b)に示すように、文字盤5及び指針51の上方には、更に表示遮断部61、デジタル表示部62(第2の表示部)及び風防ガラス71が順番に位置している。
表示遮断部61は、例えば、液晶板であり、電圧を印加されることにより偏光状態が変化して、光の透過状態と非透過状態とを切り替えが可能である。表示遮断部61が文字盤5及び指針51と、デジタル表示部62との間に位置することで、非透過状態では、下方の文字盤5及び指針51が遮蔽されて見えなくなる。また、非透過状態での色合いが、デジタル表示部62の表示の背景色となる。非透過時の色合いは、例えば、灰色や黒色などであり、濃度階調などは適宜定められてもよい。また、透過非透過の切り替えは、適宜な解像度や範囲で一部ごとに行われる。文字盤5の色合いと、非透過状態での色合いとが近い場合には、これらの境界が分かりにくくなる。したがって、ユーザが非透過状態の領域について違和感を感じにくくすることができる。一方で、文字盤5の色合いと、非透過状態での色合いとが異なる場合には、これらの境界及び非透過状態の範囲が分かりやすくなる。したがって、ユーザがデジタル表示が行われていることやその表示範囲を、容易に知得することができる。
【0016】
デジタル表示部62は、デジタル表示画面を有し、当該デジタル表示画面に文字、標識、図、画像など(まとめて文字などとも記す)をその解像度の範囲で表示可能である。デジタル表示部62は、表示がなされない非表示状態では光透過性を有する。このようなデジタル表示部62としては、例えば、有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイが挙げられる。有機ELディスプレイは、透明な有機発光層が一対の透明電極により挟まれており、透明電極間の印加電圧に応じて有機発光層が発光する自発光型のディスプレイである。このディスプレイは、文字などを適宜な解像度で表示可能なドットマトリクス方式のものである。なお、有機ELディスプレイは、発光状態でも他の光が透過可能ではあるが、発光強度に比して文字盤5や指針51からの反射光の強度が小さいので、表示部分の下方に位置するこれらアナログ表示を視認するのは難しい。
【0017】
風防ガラス71は、筐体2の上端(開放端)を封止する光透過性部材である。風防ガラス71は、筐体2の内部への塵、埃、水分、油分や不要な気体の進入を防止する。風防ガラス71は、ガラス(二酸化ケイ素)の他、透明樹脂などであってもよい。
なお、デジタル表示部62の上面に保護膜を有し、当該保護膜により筐体2の上端を封止可能な場合には、電子時計1は、風防ガラス71を有さなくてもよい。また、風防ガラス71は、直接筐体2と接触していなくてもよい。風防ガラス71と筐体2は、間にパッキンなどを介して封止されていてもよい。
【0018】
このような構成により、表示遮断部61が透過状態かつデジタル表示部62が表示を行っていない場合には、文字盤5及び指針51が視認可能である。一方で、表示遮断部61が非透過状態となった部分やデジタル表示部62が発光表示を行っている部分については、文字盤5及び指針51が視認できなくなる。表示遮断部61が非透過状態となった部分は、上記色合いの一様な背景色となって、デジタル表示部62によるデジタル表示がより見やすくなる。
【0019】
図2は、電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
電子時計1は、上記の指針51、表示遮断部61及びデジタル表示部62に加えて、CPU11(Central Processing Unit)(制御部)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、計時部14と、通信部21と、計測部31と、操作受付部41と、ステッピングモータ52と、駆動回路53などを備える。
【0020】
CPU11は、演算処理を行い、電子時計1の動作を統括制御するプロセッサである。CPU11は、単一のプロセッサを有していてもよいし、複数のプロセッサを有し、これらが並列に、又は用途などに応じて独立して動作してもよい。また、CPU11は、汎用のプロセッサではなくてもよい。CPU11は、電子時計1の動作制御に特化したマイコン、IC、LSIなどであってもよい。
【0021】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAM12は、例えば、DRAMであるが、これに限られない。
【0022】
記憶部13は、プログラム131、設定データや電子時計1に保持される記録データなどを記憶する不揮発性メモリである。不揮発性メモリは、例えばフラッシュメモリであるが、これに限られない。プログラム131は、後述のデジタル表示制御処理に係るプログラムを含む。
【0023】
計時部14は、RTC(Real Time Clock)などを有し、RTCは、CPU11とは独立に現在日時を計数する。また、ここでいう計時部14は、図示略の発振回路のクロック信号を適切に分周した信号をCPU11が計数することで現在日時を得るシステムクロックを含む。CPU11は、起動時にRTCから日時を取得し、RTCの日時は、システムクロックの日時により適宜修正される。
【0024】
通信部21は、外部機器との間で行われる無線通信を制御する。通信部21は、例えば、ブルートゥース(登録商標)や無線LAN(WiFi)などにより外部機器とのデータ送受信が可能である。通信部21は、これらの通信の規格に従ったデータ送受信を制御する。
【0025】
計測部31は、物理センサを有し、例えば、電子時計1のユーザの運動状態(加速度、方位)などを計測(加速度センサ、地磁気センサ)したり、当該ユーザの生体データ(脈拍、酸素飽和度、皮膚温度)などを計測したりすることが可能である。これらに加えて又は代えて、計測部31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に係る複数の測位衛星からの電波を受信して、受信電波に含まれる信号(航法メッセージ)に基づく演算処理によって現在位置の特定を行ってもよい。
【0026】
操作受付部41は、上記の押しボタンスイッチB1、B2及びりゅうずC1への入力操作に応じた操作信号をCPU11へ出力する。操作受付部41は、その他の種類のスイッチを有していてもよいし、タッチパネルなどを有していてもよい。
【0027】
駆動回路53は、指針51を回転動作させるための駆動信号をCPU11からの制御信号に基づいて生成して、適切なタイミングでステッピングモータ52へ出力する。
ステッピングモータ52は、駆動信号に応じて規定された角度(例えば、90度)の回転を生じる。この回転により、図示略の歯車列を介して各指針を所望の角度(例えば、1度や6度など)回転させる。ステッピングモータ52は、指針51の各々に対してそれぞれあってもよいし、複数の指針51があるステッピングモータ52の回転出力に対して異なる回転角度で連動して回転してもよい。
【0028】
表示遮断部61は、上記のように偏光状態の切り替えにより(偏光特性に応じて)部分ごとに透過状態と非透過状態が切り替えられる液晶板(液晶画面)である。液晶板は、通常のドットマトリクス方式の液晶画面であってもよく、この場合の解像度は、デジタル表示部62の表示解像度よりも低くてもよい。あるいは、予め遮蔽可能な範囲が物理的に大きく規定されていてもよい。例えば、中心位置Oに対して90度単位で分けられた4ブロック(複数のブロック)ごとに、それぞれ透過状態と非透過状態とを切り替え可能であってもよい。
【0029】
デジタル表示部62は、上記のように有機ELディスプレイを有し、CPU11の制御により各種表示を行うことができる。
【0030】
次に、電子時計1の表示動作について説明する。
電子時計1では、通常の状態では、デジタル表示部62が表示を行わず、かつ表示遮断部61が全面透過状態であって、指針51及び文字盤5によるアナログ表示が行われる。アナログ表示では、少なくとも現在時刻が表示され、これに加えて小針や回転板などにより、日付、曜日、世界のある地方時(ワールドタイム)、タイマ計数機能やストップウォッチ機能などに係る計数時間に応じた値などが表示され得る。また、計測部31の計測結果に応じた表示が指針51によってなされてもよい。CPU11は、各指針51の位置をデータをRAM12上に記憶保持させていてもよい。CPU11は、指針51の位置を移動させる(早送り)場合や、デジタル表示部62による表示の範囲を設定する場合に当該位置のデータを読み出して利用できる。あるいは、時刻表示を行っている指針51などについては、現在時刻から間接的に当該指針51の位置が特定されるのであってもよい。
【0031】
これに対し、特定の付加情報を表示させる場合には、当該付加情報の表示をデジタル表示部62により行わせることができる。このとき、デジタル表示部62の表示は、アナログ表示における重要な表示、例えば、指針51による現在時刻(時分)の表示領域を隠さない(重ならない)位置範囲で部分的に行われる。また、デジタル表示部62が表示を行う範囲(平面視で重なる範囲)に合わせて、表示遮断部61が部分的に非透過状態に切り替えられる。デジタル表示部62が表示を行う範囲の外側は、表示遮断部61により透過状態が維持される。
【0032】
図3は、デジタル表示部62による表示例を示す図である。なお、以降では、表示制御の説明に必要のない小窓内の表示などは、省略されている。
【0033】
図3(a)に示すように、現在時刻が10時10分48秒の場合に、時針51a及び分針51b(設定された指針)の位置が視認可能に(時針51a及び分針51bによる表示領域と重ならない範囲と対応する領域に)デジタル表示の範囲(デジタル表示範囲R1)が定められる。このとき、指針51自身の幅があるので、指針51の回転の中心位置Oに対して指針51の前後にある程度の幅(例えば、±6度)の範囲(表示領域)とも重ならない範囲に対応してデジタル表示の範囲(領域)が定められてもよい。すなわち、ここでいう表示領域とは、設定された指針51が指し示している方向を特定するのに必要な限定的な範囲(部分)を示す。また、デジタル表示が継続されると見込まれる時間内で、指針51による表示と重なる範囲内もデジタル表示の範囲に含めない(上記時間にわたり指針51による表示と重ならない範囲を選択する)ようにされてもよい。例えば、最大5分間の継続表示を見込む場合、文字盤5上の時針51aについて+2~3度、分針51bについて+30度の範囲に対応するデジタル表示画面の範囲をデジタル表示の範囲に含めないように(デジタル表示禁止範囲に)定めてもよい。ここでは、破線で示すように、時針51aに対して-6度~+8度の範囲と、分針51bに対して-6度~+36度の範囲とが、デジタル表示禁止範囲とされる。なお、指針51の指示方向とは反対側に飛び出ている部分は、指針51による表示領域には含まれない。
【0034】
このような条件で、例えば、中心位置Oに対して扇形に文字盤5の4時半方向から7時半方向までの範囲に対応する領域がデジタル表示範囲R1と定められて、表示がなされている。特定の付加情報に該当する表示の内容は、特には限られない。例えば、ブルートゥースにより通信接続されているスマートフォンから、当該スマートフォンで起動しているSNS(Social Network Service)においてユーザ宛のメッセージが届いている旨の通知を受けたこと(通信部21により受信された内容)を示す表示がなされてもよい。上記のように、表示の内容は文字などに限られず、標識や画像などが含まれていてもよい。この表示と平面視同一の範囲で表示遮断部61が非透過状態となっており、その下の表示は隠されている。
【0035】
図3(b)に示すように、デジタル表示範囲R1は、時針51aと分針51bのなす角が狭い側の範囲に位置していてもよい。時針51aと分針51bとの間隔が広く、デジタル表示に必要なスペースが確保できるのであれば、デジタル表示範囲の設定位置は任意であってもよい。なお、デジタル表示範囲は、可能な限り特定の方向、例えば6時側に設定されるように定められていてもよい。また、6時方向に設定できない場合には、なるべく6時方向に近いように定められてもよいし、あるいは、90度単位で3、9、12時方向のいずれかになるべく近く定められてもよい。上記のようにデジタル表示の可能な角度範囲が規定された後、当該角度範囲の情報に基づいて、デジタル表示を行い得るデジタル表示部62の画素範囲が特定(換算)されてもよい。例えば、各角度方向に延在する画素位置の座標情報が予め記憶部13に保持されていてもよい。規定された2つの角度方向にそれぞれ対応する画素位置を両端としてその間の画素が表示可能画素とされ得る。
なお、上記に代えて、各時刻(時分)に対して設定され得るデジタル表示範囲(画素範囲)の情報が予めテーブルデータとして記憶部13に保持されていてもよい。CPU11は、現在時刻に基づいて当該テーブルデータから直接デジタル表示範囲の画素位置情報を取得するのであってもよい。
【0036】
また、デジタル表示範囲や表示される内容の量(文字数や標識の有無など)は、適宜に変更されてもよい。
図4は、デジタル表示部62による表示の他の例を示す図である。
【0037】
例えば、
図4(a)に示すように、文字数が少ない場合には、デジタル表示範囲R1が小さく定められてもよい。これにより、文字盤5及び指針51を可能な範囲で広く可視状態に保ってもよい。
あるいは、
図4(b)に示すように、可能な最大のデジタル表示範囲R1を設定して、当該範囲でデジタル表示を行ってもよい。デジタル表示部62は、設定されたデジタル表示範囲R1に表示可能な量の表示を行うように制御してもよい。すなわち、デジタル表示範囲R1に対して表示可能な範囲の文字数に応じて詳細な表示内容の表示量が変更されてもよい。例えば、文字数に余裕がある場合には、通知の種別だけではなく、具体的な通知の内容(受信時刻、メールの件名、送信者など)が表示内容に含められてもよい。
【0038】
あるいは、デジタル表示範囲R1は、デジタル表示させる内容の量によらず、指針51の位置関係に応じて確保可能な範囲で可変に設定されてもよい。この場合、
図4(c)に示すように、可能な範囲で文字や標識のサイズが拡大されてもよい。ここでは、設定されたデジタル表示範囲R1に比して表示内容が少ないので、その分標識及び文字のサイズが拡大されている。
【0039】
デジタル表示は、ある定められた時間の経過後に自動的に消去されてもよいし、操作受付部41への入力操作に応じて消去動作がなされてもよい。また、外部機器から表示内容が解消された(メッセージやメールなどが既読となった)旨の情報の受信を受けて対応するデジタル表示の消去動作が行われてもよい。あるいは、表示可能に予め定められた上限数が表示された場合に新たな表示内容が取得された場合には、最も古い表示と入れ替えで新たな表示内容が表示されてもよい。
【0040】
図5は、電子時計1で実行されるデジタル表示制御処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。本実施形態の表示制御方法を含むこの処理は、デジタル表示部62による表示が必要となった場合に実行される。
【0041】
CPU11は、デジタル表示部62による表示内容を取得する(ステップS101)。CPU11は、表示に必要なエリアのサイズ(角度範囲など)を特定する(ステップS102)。
【0042】
CPU11は、デジタル表示部62による表示よりも優先される指針51の位置を特定する(ステップS103)。CPU11は、表示の継続が想定される間の指針51の移動範囲を特定する(ステップS104)。CPU11は、指針51の移動範囲と重複しない範囲に対応するデジタル表示範囲R1を設定する(ステップS105)。
【0043】
CPU11は、設定されたデジタル表示範囲R1と平面視同範囲を表示遮断部61により光非透過とさせる(ステップS106)。CPU11は、デジタル表示部62により取得した表示内容をデジタル表示範囲R1に表示させる(ステップS107)。そして、CPU11は、デジタル表示制御処理を終了する。
【0044】
図6及び
図7は、複数の表示内容が生じた場合の表示例を示す図である。
図6(a)には、単一のデジタル表示範囲R1に表示がなされている状況を示している。これに加えて新たに追加の表示内容が生じた場合には、
図6(b)に示すように、新たなデジタル表示範囲R2(追加範囲)が追加されて追加の表示が行われ得る。表示遮断部61の切替範囲が、12、3、6、9時方向を中心とした90度幅の4方向で区切られる場合には、時針51a及び分針51bと重複しない残りの範囲は、12時方向である。したがって、デジタル表示範囲R2は、12時方向に追加設定される。表示遮断部61は、追加設定されたデジタル表示範囲R2(12時方向の90度の範囲;追加範囲)に対応する領域を非透過状態とする。
【0045】
あるいは、任意の領域(ドットマトリクス方式の解像度で可能な領域)にデジタル表示範囲R1、R2を設定可能な場合には、
図6(c)に示すように、元のデジタル表示範囲R1が移動されてもよい。この場合、元のデジタル表示範囲R1の位置にかかわらず、改めてデジタル表示範囲R1、R2が設定されてもよい。あるいは、デジタル表示範囲R1を維持したままデジタル表示範囲R2を新たに設定できない場合にのみ、デジタル表示範囲R1が移動されてもよい。元のデジタル表示範囲R1と追加されたデジタル表示範囲R2とが、いずれも時針51a及び分針51bの表示領域に入らないように適宜設定される。
【0046】
デジタル表示範囲R1、R2は、上記とは異なり、表示継続時間において見込まれる指針51の移動範囲を除外して定められなくてもよい。この場合、表示の継続中に指針51がデジタル表示範囲R1、R2に入り込んだ(重なった)場合には、デジタル表示範囲R1、R2を途中で移動させてもよい。移動は、デジタル表示範囲R1、R2のうち一方だけでよい場合には、一方だけ行われてもよいし、要否に関わらず両方行われてもよい。
【0047】
例えば、
図7(a)に示すように、
図6(c)の状況から約3分が経過して分針51bがデジタル表示範囲R2に入り込んできた場合に、デジタル表示範囲R1、R2をそれぞれ適宜な角度(例えば、10度)回転させて、分針51bとデジタル表示範囲R2との重なりを回避してもよい。
【0048】
また、
図7(b)に示すように、複数のデジタル表示範囲R1、R2は、連続した角度範囲でなくてもよい。例えば、デジタル表示範囲R1が8時方向を中心に約90度の範囲に設定され、デジタル表示範囲R2が1時方向を中心に約90度の範囲に設定されている。デジタル表示範囲R1、R2の2つの間には、それぞれ時針51aと分針51bが位置している。
【0049】
図8は、変形例1のデジタル表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
この変形例1のデジタル表示制御処理は、上記のデジタル表示制御処理からステップS104の処理が省略され、ステップS105の処理がステップS105aの処理に変更されている。一方で、変形例1のデジタル表示制御処理には、ステップS111~S117の処理が追加されている。その他の処理は同一であり、同一の処理内容には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
ステップS103の処理の後、CPU11は、現在デジタル表示がなされているか否かを判別する(ステップS111)。デジタル表示がなされていると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、CPU11は、現在のデジタル表示範囲を取得する(ステップS112)。それから、CPU11の処理は、ステップS105aに移行する。デジタル表示がなされていないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS105aに移行する。
【0051】
ステップS105aの処理に移行すると、CPU11は、現在の表示(指針51及びデジタル表示範囲R1)と重複しない範囲に対応する領域に新たなデジタル表示範囲R2を設定する(ステップS105a)。上記のように、元のデジタル表示範囲R1を移動させずに新たなデジタル表示範囲R2を設定するのが困難な場合には、デジタル表示範囲R1を移動させてもよい。あるいは、CPU11は、現在のデジタル表示範囲R1の位置を考慮せずに、デジタル表示範囲R1、R2を新たに設定しなおしてもよい。
【0052】
CPU11は、設定されたデジタル表示範囲に合わせて(平面視同一位置を)表示遮断部61により非透過状態に変更させる(ステップS106)。CPU11は、デジタル表示部62により、各デジタル表示範囲R1、R2に表示内容を表示させる(ステップS107)。
【0053】
CPU11は、デジタル表示内容の消去指示が取得されたか否かを判別する(ステップS113)。上記のように、消去指示には、タイマ計数などにより規定された表示時間が経過した場合に自動で発生するもの、ユーザによる操作受付部41へのある入力操作に応じたもの、通信部21により外部機器から表示内容が解消された旨の通知を受けたものなどが含まれ得る。
【0054】
デジタル表示内容の消去指示が取得されたと判別された場合には(ステップS113で“YES”)、CPU11は、消去指示のあったデジタル表示を消去する(ステップS115)。CPU11は、全てのデジタル表示が消去されたか否かを判別する(ステップS116)。全てのデジタル表示が消去されたと判別された場合には(ステップS116で“YES”)、CPU11は、デジタル表示制御処理を終了する。全てのデジタル表示が消去されてはいない(消去されていない表示が残っている)と判別された場合には(ステップS116で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS117へ移行する。
【0055】
ステップS113の判別処理で、デジタル表示の消去指示が取得されていないと判別された場合には(ステップS113で“NO”)、CPU11は、追加のデジタル表示指示が取得されたか否かを判別する(ステップS114)。追加のデジタル表示指示が取得されたと判別された場合には(ステップS114で“YES”)、CPU11の処理は、ステップS101へ戻る。
【0056】
追加のデジタル表示が取得されていないと判別された場合には(ステップS114で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS117へ移行する。ステップS117の処理へ移行すると、CPU11は、デジタル表示範囲内に指針51が移動して入っているか否かを判別する(ステップS117)。指針51がデジタル表示範囲内に入っていると判別された場合には(ステップS117で“YES”)、CPU11の処理は、ステップS105aに戻る。指針51がデジタル表示範囲内に入っていないと判別された場合には(ステップS117で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS113に戻る。
【0057】
デジタル表示の内容が増えた場合に、上記のようにデジタル表示範囲を増やす代わりに/加えて、現在設定されているデジタル表示範囲内へ追加記載させてもよい。この場合、変化しないデジタル表示範囲のサイズに合わせて各表示のサイズが小さく変更されたり、表示内容が簡略化されたりしてもよい。
【0058】
図9は、複数の表示内容を表示する他の表示例を示す図である。
図9(a)に示すように、この表示例では、元々設定されていたデジタル表示範囲R1内に元の表示に加えて新たな表示が含まれている。この場合、新たな表示がデジタル表示画面の上側(12時側)に来るようにしてユーザが気づきやすくしてもよいし、情報の取得順に表示が並べられてもよい。また、新しく表示する文字や標識などは、他のデジタル表示とは異なる色で表示されてもよい。
【0059】
あるいは、
図9(b)に示すように、新たに追加された表示の文字サイズを元からある表示よりも大きくしてもよい。これにより、ユーザが新たな表示内容に気付きやすくすることができる。
【0060】
図10は、変形例2のデジタル表示制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
この変形例2のデジタル表示制御処理は、上記実施の形態のデジタル表示制御処理からステップS104が削除され、また、上記変形例1のステップS111、S113~S116が追加されている。一方で、変形例2のデジタル表示制御処理には、ステップS121、S122の処理が更に追加されている。既出の処理内容と同一の符号の処理内容は互いに同一であり、詳しい説明を省略する。
【0061】
ステップS111の判別処理で、現在、デジタル表示がなされていると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、CPU11は、表示されている内容と新たに取得された表示内容とを統合して表示データを生成する(ステップS121)。CPU11は、生成された表示データによりデジタル表示範囲の表示内容を更新する(ステップS122)。それから、CPU11の処理は、ステップS113へ移行する。
【0062】
ステップS111の判別処理で、現在、デジタル表示がなされていないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS105へ移行する。
【0063】
ステップS114の判別処理で“NO”に分岐した場合、及びステップS116の判別処理で“NO”に分岐した場合には、いずれもステップS113の処理へ戻る。
【0064】
図11は、デジタル表示範囲の設定の他の例を示す図である。
図11(a)に示すように、デジタル表示範囲R1は、中心位置Oに対して扇状に定められなくてもよい。例えば、シンプルに表示範囲に合わされた矩形のデジタル表示範囲R1が設定されてもよい。
【0065】
この場合も、
図11(b)に示すように、表示内容が追加された場合には、当該追加された表示内容の量に応じて、デジタル表示範囲R1aにサイズを拡大することができてもよい。
【0066】
また、上記では、通信部21が外部から取得した情報をデジタル表示させたが、デジタル表示の内容はこれに限られない。例えば、計測部31の計測結果などがデジタル表示されてもよい。
【0067】
図12は、デジタル表示の他の例を示す図である。
この例では、文字盤5の6時側半分に対応する範囲(180度幅)がデジタル表示範囲R3として設定されている。デジタル表示範囲R3には、衛星測位などにより特定された現在位置情報(緯度、経度、高度及び対応する地区名)などが表示されている。
【0068】
また、1時半から3時の方向にかけて設定されているデジタル表示範囲R4では、計測部31により計測されている方位、ここでは、12時方向の方位がデジタル表示されている。方位の計測結果は、小針51cによっても表示されている。すなわち、小針51cにより、磁北は略2時方向であることが示されている。12時方向は、デジタル表示範囲R4に示されている通り、297度方向であり、概ね北西方向に当たる。
【0069】
ここでは、デジタル表示とともに視認可能な状態である必要のある指針51は、小針51cであり、この小針51cの範囲に対応する領域からデジタル表示範囲R3、R4が外されている。なお、時針51a及び分針51bも視認可能とされているが、必ずしも時針51a及び分針51bは視認可能な状態とされなくてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態の電子時計1は、指針51を有する第1の表示部と、第1の表示部の上方に位置するデジタル表示部であって少なくとも非表示状態では光透過性のデジタル表示部62と、CPU11と、を備える。CPU11は、デジタル表示部62により表示を行わせる場合に、第1の表示部における指針51による表示領域と重ならない範囲を選択し、デジタル表示部62により、上記範囲に対応するデジタル表示範囲R1に表示を行わせる。
これにより、電子時計1は、指針51による重要な表示を視認可能に保ちつつ、当該重要な表示の範囲外で効果的にデジタル表示を行うことができる。よって、電子時計1は、視認性の低下を抑制しつつ、指針51とデジタル表示部62の複数の表示内容を見やすく表示することができる。
【0071】
また、電子時計1は、第1の表示部とデジタル表示部62との間に位置し、透過状態と非透過状態とを少なくとも一部の領域で切り替え可能な表示遮断部61を備える。CPU11は、表示遮断部61により、上記範囲に対応する領域を非透過状態とさせ、範囲以外に対応する領域を透過状態とさせる。このように、デジタル表示の範囲に合わせて光非透過状態として一様な背景とすることで、電子時計1は、デジタル表示自体をより見やすくすることができる。特に、可視状態とさせる指針51の表示領域外にも小窓、他の小針や各種装飾などが存在する場合には、デジタル表示の内容が見にくくなりやすい。したがって、背景が非透過状態とされることで、デジタル表示の視認性が向上する。
【0072】
また、第1の表示部は、指針51を複数有する。CPU11は、上記範囲の選択時に、指針51のうち設定された指針51による表示領域と重ならない範囲に対応するデジタル表示範囲R1を選択する。すなわち、多くの指針51を有する電子時計1において、全ての指針51による表示が常に重要なわけではない。また、全ての指針51を可視状態としようとすると、デジタル表示範囲R1の設定が困難となる場合もある。したがって、一部の重要な指針51による表示領域のみを可視状態(光透過状態)とすることで、電子時計1は、適切に指針51の重要な表示とデジタル表示とを併存させることができる。
【0073】
また、CPU11は、デジタル表示部62により追加の表示を行わせる場合に、指針51による表示領域及び設定済のデジタル表示範囲R1と重ならない追加の範囲を選択する。CPU11は、デジタル表示部62により、追加の範囲に対応するデジタル表示範囲R2に追加の表示を行わせ、表示遮断部61により、デジタル表示範囲R2を非透過状態とさせる。
すなわち、電子時計1は、必要なデジタル表示内容が増えた場合には、増えた内容に応じてさらにデジタル表示範囲R2を追加することができる。これにより、電子時計1は、デジタル表示に必要な範囲だけを柔軟にデジタル表示範囲R1、R2などとして、指針51の表示と両立させることができる。
【0074】
また、CPU11は、デジタル表示部62により表示中の内容に加えて追加の表示を行わせる場合に、デジタル表示範囲R1内に元の表示と追加の表示とが含まれるようにデジタル表示部62による表示を更新させてもよい。あまり動的にデジタル表示範囲を広げないことで、指針51による表示に対する視認性の低下をより抑えることができる。
【0075】
また、上記表示の更新では、デジタル表示部62により表示させる内容のサイズが変更される。同一面積のデジタル表示範囲R1内により多くの内容を表示させるので、内容量に応じてフォントサイズなどを縮小してもよい。これにより、表示自体は省略されないで容易に内容をユーザが知得可能とすることができる。
【0076】
また、表示遮断部61は、非透過状態とする部分をそれぞれ規定する複数のブロックを有していてもよい。この場合、CPU11は、複数のブロックから指針51の表示と重ならない範囲を選択する。すなわち、電子時計1では、予めデジタル表示範囲とされる範囲に合わせてブロックが定められ、当該ブロックごとに透過状態と非透過状態とを切り替え可能とされる。これにより、電子時計1は、信号線を低減し、制御を容易化することができる。
【0077】
また、電子時計1は、通信部21を備える。CPU11は、通信部21により受信された内容に応じてデジタル表示部62により表示させる内容を定めてもよい。すなわち、電子時計1は、外部からの取得情報に対応する表示の柔軟性や拡張性を大きく改善することができる。
【0078】
また、CPU11は、デジタル表示部62による表示が継続されると見込まれる時間にわたり指針51による表示と重ならない範囲を選択してもよい。例えば、デジタル表示の継続最大時間が定められている場合、当該継続最大時間の間における時針51a及び分針51bの移動範囲は容易に定まる。したがって、電子時計1は、この移動範囲に対応する領域を予めデジタル表示範囲R1に対応する選択の範囲から除外しておくことができる。これにより、電子時計1では、デジタル表示が想定の範囲で長引いても、その間に重要な表示が見えなくなる状況を避けることができる。
【0079】
また、CPU11は、デジタル表示部62による表示の継続中に指針51が、当該指針51による表示領域外として選択されていた範囲と重なった場合には、当該範囲を移動させて、デジタル表示部62により、移動後の範囲に対応するデジタル表示範囲R1に表示を行わせてもよい。これにより、電子時計1は、デジタル表示の継続時間が不確定な場合などにデジタル表示が長引いても、柔軟にデジタル表示と指針51による表示とを両立させることができる。
【0080】
また、表示遮断部61は、偏光特性に応じて透過状態と非透過状態とを切り替えるものであってもよい。すなわち、液晶表示画面のように偏光状態を切り替えることで、容易な切り替えが可能となる。また、この程度の切り替えに対しては、液晶により光透過性を有する表示画面を得ることが可能である。
【0081】
また、デジタル表示部62は、有機ELディスプレイを有していてもよい。有機ELディスプレイは、非表示時に容易に光透過状態とすることができる。また、自発光でありバックライトが不要であるので、非透過状態の表示遮断部61と重ねても適切に表示を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態の表示制御方法は、デジタル表示部62により表示を行わせる場合に、指針51を含む第1の表示部における指針51による表示領域と重ならない範囲を選択し、デジタル表示部62により、選択された範囲に対応するデジタル表示範囲R1に表示を行わせる。
このような表示制御方法によれば、指針51の重要な表示を可視状態に保ったままデジタル表示を上記指針51による表示から外して適切な位置に行うことができる。よって、この表示制御方法は、視認性の低下を抑制しつつ、指針とデジタル表示とによる複数の表示内容を見やすく表示することができる。
【0083】
また、上記表示制御方法に係るプログラム131を電子時計1のコンピュータにインストールして第1の表示部及びデジタル表示部62の動作を制御することで、ソフトウェア的に容易に視認性の低下を抑制しつつ、指針とデジタル表示とによる複数の表示内容を見やすく表示させることができる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、複数の表示内容が取得された場合には、これらを全て並列に表示するものとして説明したが、これに限られない。複数の表示内容を周期的に一つずつ又は表示可能な数ずつ交代で表示させてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、複数の表示内容のうち一部が消去された場合について具体的な説明を省略したが、新たな内容が追加表示される場合と反対の処理がなされてもよい。例えば、一部のデジタル表示範囲が消去された後、残ったデジタル表示範囲の位置が変更されてもよい。また、あるデジタル表示範囲内の一部の表示が消去された後、残りの表示内容のサイズ(フォントサイズなど)が拡大されてもよい。
【0086】
また、複数のデジタル表示範囲は、互いに異なる形状であってもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、表示対象の指針51の過半がデジタル表示範囲に含まれないようにデジタル表示範囲が定められたが、これに限られない。例えば、指針51の先端付近のみが視認可能とされて、中心位置Oを含むデジタル表示画面の中心付近全体がデジタル表示範囲とされてもよい。この場合、例えば、指針51の先端付近、すなわち、中心位置Oから分針51bの長さよりも離れた環状の範囲(文字盤5とデジタル表示部62の間の少なくとも一部の領域以外)は、表示遮断部61が非透過状態とすることができない領域であってもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、通信部21が受信した内容に係るデジタル表示を行う例と、計測部31による計測結果に係るデジタル表示を行う例を示したが、これらに限られない。例えば、ユーザの操作などに応じて現在時刻、日付やアラーム報知動作の設定時刻などがデジタル表示されるのであってもよい。
【0089】
また、操作受付部41がタッチパネルを有する場合、CPU11は、例えば、デジタル表示部62により当初報知内容ごとにアイコンなど小さいデジタル表示のみを行わせてもよい。CPU11は、ユーザが当該アイコンなどに対して行った選択操作(タッチパネルの表示位置に対応する位置に対するタップなどの操作)を検出して、選択されたアイコンに対応する報知内容をデジタル表示部62により表示させるのであってもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、液晶による表示遮断部61と、有機ELによるデジタル表示部62との組み合わせを例に挙げて説明したが、これに限られない。光の透過状態と非透過状態とを切り替え可能な表示方式であれば、他の表示方式の組み合わせであってもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、電子腕時計を例に挙げて説明したが、これに限られない。他の携帯型の時計や置時計などであってもよい。また、ここでいう電子時計には、スマートウォッチなどの時刻表示機能を有する多機能な電子機器が含まれる。
【0092】
また、上記実施の形態の各例で具体的に示した内容は、互いに相反しない範囲において任意に組み合わされてもよい。
【0093】
また、以上の説明では、本発明の表示動作制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0094】
1 電子時計
2 筐体
2a 装着部
5 文字盤
7 ベゼル
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
14 計時部
21 通信部
31 計測部
41 操作受付部
51 指針
51a 時針
51b 分針
51c 小針
52 ステッピングモータ
53 駆動回路
61 表示遮断部
62 デジタル表示部
71 風防ガラス
B1、B2 押しボタンスイッチ
R1、R1a、R2、R3、R4 デジタル表示範囲