(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087978
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240625BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240625BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240625BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240625BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240625BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240625BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J3/38 130
H02J7/10 B
H02J7/00 B
H02M7/48 F
H02M3/155 G
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202907
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA13
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066JB04
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503BB03
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503GB03
5G503GB06
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD02
5H730FD11
5H730FD21
5H730FF09
5H730FG05
5H770AA15
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA02
5H770DA10
5H770DA44
5H770JA11W
5H770JA17Y
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】中性線の電圧を調整することができ、かつ従来のものよりも高効率な蓄電システムを提供する。
【解決手段】蓄電システム10は、単相3線式の電力系統に接続されるインバータ40と、双方向DC/DCコンバータ20と、制御部50とを備える。制御部50は、(1)第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きい場合に、スイッチ素子SW1,SW3,SW5をオン/オフさせることにより第1コンデンサC1の放電および第2コンデンサC2の充電を交互に行わせ、(2)第1電圧V1が第2電圧V2よりも小さい場合に、スイッチ素子SW2,SW4,SW5をオン/オフさせることにより第1コンデンサC1の充電および第2コンデンサC2の放電を交互に行わせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC側入出力端が単相3線式の電力系統に接続されるインバータと、第1入出力端が蓄電池に接続されるとともに第2入出力端が前記インバータのDC側入出力端に接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部とを備えた蓄電システムであって、
前記双方向DC/DCコンバータは、
前記第1入出力端および前記第2入出力端に接続された第1電力線および該第1電力線よりも電位が低い第2電力線と、
前記インバータの前記AC側入出力端を構成する中性端に接続された第3電力線と、
前記第1電力線および前記第3電力線に接続された第1コンデンサと、
前記第2電力線および前記第3電力線に接続された第2コンデンサと、
前記第1コンデンサの両端電圧である第1電圧を計測する第1電圧計と、
前記第2コンデンサの両端電圧である第2電圧を計測する第2電圧計と、
複数のスイッチ素子と、
を含み、
前記制御部は、(1)前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合に、前記スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記第1コンデンサの放電および前記第2コンデンサの充電を交互に行わせ、(2)前記第1電圧が前記第2電圧よりも小さい場合に、前記スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記第1コンデンサの充電および前記第2コンデンサの放電を交互に行わせる
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
AC側入出力端が単相3線式の電力系統に接続されるインバータと、第1入出力端が蓄電池に接続されるとともに第2入出力端が前記インバータのDC側入出力端に接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを制御する制御部とを備えた蓄電システムであって、
前記双方向DC/DCコンバータは、
前記第1入出力端および前記第2入出力端に接続された第1電力線および該第1電力線よりも電位が低い第2電力線と、
前記インバータの前記AC側入出力端を構成する中性端に接続された第3電力線と、
前記第1電力線に介装された第1スイッチ素子と、
前記第2電力線に介装された第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子および前記第2入出力端の間において前記第1電力線に接続されるとともに前記第3電力線に接続された第1コンデンサと、
前記第2スイッチ素子および前記第2入出力端の間において前記第2電力線に接続されるとともに前記第3電力線に接続された第2コンデンサと、
前記第1スイッチ素子および前記第1入出力端の間において前記第1電力線に接続されるとともに前記第3電力線に接続された第3スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子および前記第1入出力端の間において前記第2電力線に接続されるとともに前記第3電力線に接続された第4スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子および前記第1入出力端の間において前記第1電力線に接続されるとともに前記第2スイッチ素子および前記第1入出力端の間において前記第2電力線に接続された第5スイッチ素子および第3コンデンサと、
前記第1、第2、第3、第4および第5スイッチ素子のそれぞれに並列接続された還流ダイオードと
を含むことを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
入力端が太陽電池に接続されるとともに出力端が前記インバータの前記DC側入出力端に接続されたDC/DCコンバータをさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記双方向DC/DCコンバータは、
前記第1コンデンサの両端電圧である第1電圧を計測する第1電圧計と、
前記第2コンデンサの両端電圧である第2電圧を計測する第2電圧計と、
前記第3コンデンサの両端電圧である第3電圧を計測する第3電圧計と、
をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3電圧が目標電圧となるように、前記第3、第4および第5スイッチ素子をオフさせたまま前記第1および第2スイッチ素子をオン/オフさせることにより、前記第1コンデンサの放電および第2コンデンサの放電を交互に行わせる制御が可能となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1および第2電圧が一致するように、前記第1および第2スイッチ素子をオフさせたまま前記第3、第4および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、前記第1コンデンサの充電および第2コンデンサの充電を交互に行わせる制御が可能となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1および第2電圧が一致するように、前記第2および第4スイッチ素子をオフさせたまま前記第1、第3および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、前記第1コンデンサの放電および前記第2コンデンサの充電を交互に行わせる制御が可能となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1および第2電圧が一致するように、前記第1および第3スイッチ素子をオフさせたまま前記第2、第4および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、前記第1コンデンサの充電および前記第2コンデンサの放電を交互に行わせる制御が可能となっている
ことを特徴とする請求項4に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池および単相3線式の商用電力系統に接続して使用される蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
単相3線式の商用電力系統に接続して使用される電力変換装置として、
図6に示す太陽光発電用電力変換装置100が知られている(特許文献1参照)。この電力変換装置100は、太陽電池101から出力された電圧をインバータ103が必要とする電圧まで昇圧する、コンデンサCa,Cbを含む昇圧チョッパ回路(DC/DCコンバータ)102を備えている。この電力変換装置100によれば、同容量のコンデンサCa,Cbを使用することにより、昇圧後の電圧を等分に分圧することができる。
【0003】
しかしながら、この電力変換装置100は、インバータ103のAC出力端側に接続されたU相-O相(中性相)負荷およびW相-O相負荷がアンバランスとなった場合に、昇圧後の電圧を等分に分圧することができなかった。例えば、電力変換装置100は、U相-O相負荷がW相-O相負荷よりも大きい場合に、通常よりも低い電圧をU相-O相負荷に出力するとともに通常よりも高い電圧をW相-O相負荷に出力してしまっていた。
【0004】
特許文献2には、上記アンバランスの抑制を企図した電力変換装置(蓄電システム)が記載されている。
図7に示すように、この蓄電システム200は、発電ユニット201(蓄電池等)の出力電圧を昇圧するDC/DCコンバータ202と、昇圧後の電圧を交流電圧に変換し、これをフィルタ205を介して出力するインバータ204とに加え、これらの間に接続された中性線電圧調整回路203を備えている。
【0005】
中性線電圧調整回路203は、直列に接続された調整用スイッチ素子SWa,SWbと、直列に接続されたコンデンサCa,Cbとを含んでいる。この中性線電圧調整回路203によれば、調整用スイッチ素子SWa,SWbをオン/オフさせてコンデンサCa,Cbを充電または放電させることにより、コンデンサCaの両端電圧とコンデンサCbの両端電圧を互いに一致させることができる。すなわち、この中性線電圧調整回路203によれば、U相-O相間の電圧とW相-O相間の電圧を互いに一致させることができる。
【0006】
しかしながら、この蓄電システム200は、発電ユニット201(蓄電池)の出力電圧が比較的低い場合に、DC/DCコンバータ202における昇圧比が大きくなり、DC/DCコンバータ202の効率が低下することが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-65657号公報
【特許文献2】特開2021-93861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、中性線の電圧を調整することができ、かつ従来のものよりも高効率な蓄電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る蓄電システムは、AC側入出力端が単相3線式の電力系統に接続されるインバータと、第1入出力端が蓄電池に接続されるとともに第2入出力端がインバータのDC側入出力端に接続された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータを制御する制御部とを備えたものであって、双方向DC/DCコンバータは、第1入出力端および第2入出力端に接続された第1電力線および該第1電力線よりも電位が低い第2電力線と、インバータのAC側入出力端を構成する中性端に接続された第3電力線と、第1電力線および第3電力線に接続された第1コンデンサと、第2電力線および第3電力線に接続された第2コンデンサと、第1コンデンサの両端電圧である第1電圧を計測する第1電圧計と、第2コンデンサの両端電圧である第2電圧を計測する第2電圧計と、複数のスイッチ素子とを含み、制御部は、(1)第1電圧が第2電圧よりも大きい場合に、スイッチ素子をオン/オフさせることにより第1コンデンサの放電および第2コンデンサの充電を交互に行わせ、(2)第1電圧が第2電圧よりも小さい場合に、スイッチ素子をオン/オフさせることにより第1コンデンサの充電および第2コンデンサの放電を交互に行わせる、との構成を有している。
【0010】
この構成によれば、第1電力線-第3電力線間に接続された第1コンデンサの両端電圧である第1電圧と第2電力線-第3電力線間に接続された第2コンデンサの両端電圧である第2電圧とにズレが生じた場合に、第1コンデンサおよび第2コンデンサのうちの一方を放電させながら他方を充電することで、ズレを解消することができる。すなわち、この構成によれば、第3電力線の電位を第1電力線の電位および第2電力線の電位のちょうど中間の値とすることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の一側面に係る蓄電システムは、AC側入出力端が単相3線式の電力系統に接続されるインバータと、第1入出力端が蓄電池に接続されるとともに第2入出力端がインバータのDC側入出力端に接続された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータを制御する制御部とを備えたものであって、双方向DC/DCコンバータは、第1入出力端および第2入出力端に接続された第1電力線および該第1電力線よりも電位が低い第2電力線と、インバータのAC側入出力端を構成する中性端に接続された第3電力線と、第1電力線に介装された第1スイッチ素子と、第2電力線に介装された第2スイッチ素子と、第1スイッチ素子および第2入出力端の間において第1電力線に接続されるとともに第3電力線に接続された第1コンデンサと、第2スイッチ素子および第2入出力端の間において第2電力線に接続されるとともに第3電力線に接続された第2コンデンサと、第1スイッチ素子および第1入出力端の間において第1電力線に接続されるとともに第3電力線に接続された第3スイッチ素子と、第2スイッチ素子および第1入出力端の間において第2電力線に接続されるとともに第3電力線に接続された第4スイッチ素子と、第1スイッチ素子および第1入出力端の間において第1電力線に接続されるとともに第2スイッチ素子および第1入出力端の間において第2電力線に接続された第5スイッチ素子および第3コンデンサと、第1、第2、第3、第4および第5スイッチ素子のそれぞれに並列接続された還流ダイオードとを含む、との構成を有している。
【0012】
この構成によれば、第1電力線-第3電力線間に接続された第1コンデンサの両端電圧である第1電圧と第2電力線-第3電力線間に接続された第2コンデンサの両端電圧である第2電圧とにズレが生じた場合に、第1コンデンサおよび第2コンデンサのうちの一方を放電させながら他方を充電することで、ズレを解消することができる。すなわち、この構成によれば、第3電力線の電位を第1電力線の電位および第2電力線の電位のちょうど中間の値とすることができる。
【0013】
また、この構成によれば、第1電力線-第2電力線間の電圧を蓄電池が必要とする電圧まで降圧する場合に比べて、蓄電池を充電する際の双方向DC/DCコンバータにおける降圧比を下げることができる。したがって、この構成によれば、蓄電池を高効率に充電することができる。
【0014】
また、この構成によれば、蓄電池が出力する電圧をインバータが必要とする電圧まで昇圧する場合に比べて、蓄電池を放電させる際の双方向DC/DCコンバータにおける昇圧比を下げることができる。したがって、この構成によれば、蓄電池を高効率に放電させることができる。
【0015】
上記一側面に係る蓄電システムおよび別の一側面に係る蓄電システムは、入力端が太陽電池に接続されるとともに出力端がインバータのDC側入出力端に接続されたDC/DCコンバータをさらに備えていてもよい。
【0016】
上記別の一側面に係る蓄電システムの双方向DC/DCコンバータは、第1コンデンサの両端電圧である第1電圧を計測する第1電圧計と、第2コンデンサの両端電圧である第2電圧を計測する第2電圧計と、第3コンデンサの両端電圧である第3電圧を計測する第3電圧計とをさらに含んでいてもよい。
【0017】
上記別の一側面に係る蓄電システムの制御部は、例えば、(1)第3電圧が目標電圧となるように、第3、第4および第5スイッチ素子をオフさせたまま第1および第2スイッチ素子をオン/オフさせることにより、第1コンデンサの放電および第2コンデンサの放電を交互に行わせる制御、(2)第1および第2電圧が一致するように、第1および第2スイッチ素子をオフさせたまま第3、第4および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、第1コンデンサの充電および第2コンデンサの充電を交互に行わせる制御、(3)第1および第2電圧が一致するように、第2および第4スイッチ素子をオフさせたまま第1、第3および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、第1コンデンサの放電および第2コンデンサの充電を交互に行わせる制御、(4)第1および第2電圧が一致するように、第1および第3スイッチ素子をオフさせたまま第2、第4および第5スイッチ素子をオン/オフさせることにより、第1コンデンサの充電および第2コンデンサの放電を交互に行わせる制御、が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中性線の電圧を調整することができ、かつ従来のものよりも高効率な蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る蓄電システムおよびその周辺を示す回路図である。
【
図2】本発明に係る蓄電システムの制御部が行う蓄電池充電制御を示す図である。
【
図3】本発明に係る蓄電システムの制御部が行う蓄電池放電制御を示す図である。
【
図4】本発明に係る蓄電システムの制御部が行う第1バランス調整制御を示す図である。
【
図5】本発明に係る蓄電システムの制御部が行う第2バランス調整制御を示す図である。
【
図6】従来の太陽光発電用電力変換装置を示す回路図である。
【
図7】中性線電圧調整回路を備えた従来の蓄電システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る蓄電システムの実施例について説明する。
【0021】
図1に、本発明の実施例に係る蓄電システム10を示す。同図に示すように、蓄電システム10は、AC側入出力端41a,41b,41cがフィルタ62およびリレー群(系統リレー65、バイパスリレー66および自立リレー67)を介して単相3線式の系統端子63および自立出力端子64に接続されるインバータ40と、第1入出力端24a,24bが蓄電池60に接続されるとともに第2入出力端25a,25bがインバータ40のDC側入出力端42a,42bに接続された双方向DC/DCコンバータ20と、入力端31a,31bが太陽電池61に接続されるとともに出力端32a,32bがインバータ40のDC側入出力端42a,42bに接続されたDC/DCコンバータ30と、インバータ40のDC側入出力端42a,42bに接続されたコンデンサC4と、少なくとも双方向DC/DCコンバータ20を制御する制御部50とを備えている。
【0022】
系統端子63に接続された商用電力系統に停電等の異常が生じていないときは、系統リレー65およびバイパスリレー66が閉状態(オン状態)とされ、自立リレー67が開状態(オフ状態)とされる。これにより、系統電力、太陽電池61の発電電力および蓄電池60の放電電力の少なくとも1つを自立出力端子64に接続された重要負荷に供給することができる。また、これにより、系統電力および太陽電池61の発電電力の少なくとも1つで蓄電池60を充電することもできる。
【0023】
系統端子63に接続された商用電力系統に異常が生じているときは、系統リレー65およびバイパスリレー66が開状態(オフ)とされ、自立リレー67が閉状態(オン)とされる。これにより、太陽電池61の発電電力および蓄電池60の放電電力の少なくとも1つを自立出力端子64に接続された重要負荷に供給することができる。
【0024】
DC/DCコンバータ30は、入力端31a,31bに入力された電圧をインバータ40が必要とする電圧まで昇圧し、昇圧後の電圧を出力端32a,32bから出力するよう構成されている。
【0025】
インバータ40は、DC側入出力端42a,42bに入力された電圧(直流電圧)を交流化し、交流化後の電圧をAC側入出力端41a,41cから出力するよう構成されている。また、インバータ40は、AC側入出力端41a,41cに入力された電圧(交流電圧)を直流化し、直流化後の電圧をDC側入出力端42a,42bから出力するよう構成されている。なお、インバータ40のAC側入出力端(中性端)41bは、後述する双方向DC/DCコンバータ20の第3電力線28に接続されている。
【0026】
双方向DC/DCコンバータ20は、第1入出力端24a,24bに入力された電圧を昇圧し、昇圧後の電圧を第2入出力端25a,25bから出力するよう構成されている。また、双方向DC/DCコンバータ20は、第2入出力端25a,25bに入力された電圧を降圧し、降圧後の電圧を第1入出力端24a,24bから出力するよう構成されている。
【0027】
具体的には、双方向DC/DCコンバータ20は、第1入出力端24aおよび第2入出力端25aに接続された第1電力線26と、第1入出力端24bおよび第2入出力端25bに接続された、第1電力線26よりも低電位な第2電力線27と、インバータ40のAC側入出力端41bに接続された第3電力線28と、第1電力線26に介装された第1スイッチ素子SW1と、第2電力線27に介装された第2スイッチ素子SW2と、第1スイッチ素子SW1および第2入出力端25aの間において第1電力線26に接続されるとともに第3電力線28に接続された第1コンデンサC1と、第2スイッチ素子SW2および第2入出力端25bの間において第2電力線27に接続されるとともに第3電力線28に接続された第2コンデンサC2と、第1スイッチ素子SW1および第1入出力端24aの間において第1電力線26に接続されるとともに第3電力線28に接続された第3スイッチ素子SW3と、第2スイッチ素子SW2および第1入出力端24bの間において第2電力線27に接続されるとともに第3電力線28に接続された第4スイッチ素子SW4と、第1スイッチ素子SW1および第1入出力端24aの間において第1電力線26に接続されるとともに第2スイッチ素子SW2および第1入出力端24bの間において第2電力線27に接続された第5スイッチ素子SW5および第3コンデンサC3と、第5スイッチ素子SW5および第3コンデンサC3の間において第1電力線26に介装されたコイルLと、スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5のそれぞれに並列接続された還流ダイオードD1,D2,D3,D4,D5とを備えている。還流ダイオードD1,D2,D3,D4,D5は、スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5の寄生ダイオード(内部ダイオード)でもよいし、スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5とは別に構成した外部ダイオードであってもよい。
【0028】
また、双方向DC/DCコンバータ20は、第1コンデンサC1の両端電圧である第1電圧V1を計測する第1電圧計21と、第2コンデンサC2の両端電圧である第2電圧V2を計測する第2電圧計22と、第3コンデンサC3の両端電圧である第3電圧V3を計測する第3電圧計23とを備えている。
【0029】
第1コンデンサC1および第2コンデンサC2は、容量が同一である。このため、理想的には、第3電力線28の電位は第1電力線26の電位および第2電力線27の電位のちょうど中間の値となる。
【0030】
第1電圧計21は、計測した第1電圧V1に対応した信号を制御部50に出力する。同様に、第2電圧計22は、計測した第2電圧V2に対応した信号を制御部50に出力し、第3電圧計23は、計測した第3電圧V3に対応した信号を制御部50に出力する。
【0031】
スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなり、制御部50が出力する駆動信号S1,S2,S3,S4,S5によってオン状態からオフ状態へと、またはオフ状態からオン状態へと切り替えられる。つまり、スイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5は、制御部50によってオン/オフ制御される。
【0032】
制御部50は、マイクロプロセッサ(MPU,Micro Processor Unit)からなり、電圧V1,V2,V3に基づいて駆動信号S1,S2,S3,S4,S5を生成・出力するよう構成されている。
【0033】
制御部50は、駆動信号S1,S2,S3,S4,S5を生成するにあたり、商用電力系統の状況(停電等の異常が生じているか否か)および太陽電池61の発電状況を参照してもよい。また、制御部50は、DC/DCコンバータ30およびインバータ40を構成するスイッチ素子のオン/オフ、およびリレー65,66,67のオン/オフを制御するよう構成されていてもよい。
【0034】
制御部50によるスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5のオン/オフ制御について、さらに詳しく説明する。
【0035】
(蓄電池充電制御)
制御部50は、商用電力系統に異常が生じていないときに、系統電力または太陽電池61の発電電力で蓄電池60を充電する蓄電池充電制御を行うことができる。この制御では、制御部50は、第3電圧計23で計測される第3電圧V3が目標電圧(蓄電池60が必要とする電圧)となるように、第3、第4および第5スイッチ素子SW3,SW4,SW5をオフさせたまま第1および第2スイッチ素子SW1,SW2をオン/オフさせる。
【0036】
より詳しくは、制御部50は、
図2(A)に示す第1スイッチ素子SW1がオンし、他のスイッチ素子SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(B)に示す全てのスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(C)に示す第2スイッチ素子SW2がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(D)に示す全てのスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態をこの順に繰り返し作り出す。これにより、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2が交互に放電し、第1電圧V1を降圧したもの、および第2電圧V2を降圧したもので蓄電池60が充電される。
【0037】
なお、
図2(A)に示した状態から同図(B)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第1スイッチ素子SW1のオンデューティは、例えばPWM制御により決定することができる。同様に、
図2(C)に示した状態から同図(D)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第2スイッチ素子SW2のオンデューティも、例えばPWM制御により決定することができる。
【0038】
この蓄電池充電制御における双方向DC/DCコンバータ20の降圧比、すなわち、第1電圧V1および第2電圧V2を目標電圧まで降圧するときの降圧比は、第4コンデンサC4の両端電圧を目標電圧まで降圧する場合の1/2である。したがって、この制御によれば、蓄電池60を効率よく充電することができる。
【0039】
なお、
図2中の矢印は電流の流れを示している。
図3、
図4および
図5中の矢印も電流の流れを示している。
【0040】
(蓄電池放電制御)
制御部50は、重要負荷等に必要な電力を供給するために蓄電池60を放電させる蓄電池放電制御を行うことができる。制御部50は、商用電力系統に異常が生じているか否かにかかわらず、この制御を行うことができる。この制御では、制御部50は、第1電圧計21で計測される第1電圧V1および第2電圧計22で計測される第2電圧V2のそれぞれが目標電圧(インバータ40が必要とする電圧の1/2)となるように、第1および第2スイッチ素子SW1,SW2をオフさせたまま第3、第4および第5スイッチ素子SW3,SW4,SW5をオン/オフさせる。
【0041】
より詳しくは、制御部50は、
図3(A)に示す第5スイッチ素子SW5がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4がオフした状態、同図(B)に示す第4スイッチ素子SW4がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW5がオフした状態、同図(C)に示す第5スイッチ素子SW5がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4がオフした状態、同図(D)に示す第3スイッチ素子SW3がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW4,SW5がオフした状態をこの順に繰り返し作り出す。これにより、蓄電池60の出力電圧(第3電圧V3)を昇圧したもので、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2が交互に充電される。
【0042】
なお、
図3(A)に示した状態から同図(B)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第5スイッチ素子SW5のオンデューティ(第4スイッチ素子SW4のオフデューティ)は、例えばPWM制御により決定することができる。同様に、
図3(C)に示した状態から同図(D)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第5スイッチ素子SW5のオンデューティ(第3スイッチ素子SW3のオフデューティ)も、例えばPWM制御により決定することができる。
【0043】
この蓄電池放電制御における双方向DC/DCコンバータ20の昇圧比、すなわち、第3電圧を目標電圧まで昇圧するときの昇圧比は、第3電圧を第4コンデンサC4の両端電圧まで昇圧する場合の1/2である。したがって、この制御によれば、蓄電池60を効率よく放電させることができる。
【0044】
(第1バランス調整制御)
制御部50は、商用電力系統に異常が生じために太陽電池61の発電電力によって重要負荷が駆動されており、かつ重要負荷のうちU相-O相間に接続されたものとW相-O相間に接続されたものとのバランスが崩れているために第1電圧V1が第2電圧V2よりも大きくなっているときに第1バランス調整制御を行うことができる。この制御では、制御部50は、第1電圧計21で計測される第1電圧V1および第2電圧計22で計測される第2電圧V2が目標電圧(インバータ40が必要とする電圧の1/2)となるように、第2および第4スイッチ素子SW2,SW4をオフさせたまま第1、第3および第5スイッチ素子SW1,SW3,SW5をオン/オフさせる。
【0045】
より詳しくは、制御部50は、
図4(A)に示す第1スイッチ素子SW1がオンし、他のスイッチ素子SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(B)に示す全てのスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(C)に示す第5スイッチ素子SW5がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4がオフした状態、同図(D)に示す第3スイッチ素子SW3がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW4,SW5がオフした状態をこの順に繰り返し作り出す。これにより、第1コンデンサC1の放電および第2コンデンサC2の充電が交互に行われ、第1電圧V1および第2電圧V2が目標電圧に一致する。
【0046】
第1スイッチ素子SW1がオンすると、
図4(A)に示すように、第1コンデンサC1から蓄電池60または第3コンデンサC3に電力が移動する。その後、第3スイッチ素子SW3がオンすると、
図4(D)に示すように、蓄電池60または第3コンデンサC3から第2コンデンサC2に電力が移動する。つまり、この制御では、蓄電池60または第3コンデンサC3を介して第1コンデンサC1から第2コンデンサC2に電力が移動する。
【0047】
なお、
図4(A)に示した状態から同図(B)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第1スイッチ素子SW1のオンデューティは、例えばPWM制御により決定することができる。同様に、
図4(C)に示した状態から同図(D)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第5スイッチ素子SW5のオンデューティ(第3スイッチ素子SW3のオフデューティ)も、例えばPWM制御により決定することができる。
【0048】
この第1バランス調整制御によれば、第1コンデンサC1から第2コンデンサC2への電力の移動により、第1電圧V1および第2電圧V2を素早く一致させることができる。言い換えると、この制御によれば、中性線となる第3電力線28の電位を素早く理想的な電位とすることができる。
【0049】
(第2バランス調整制御)
制御部50は、商用電力系統に異常が生じために太陽電池61の発電電力によって重要負荷が駆動されており、かつ重要負荷のうちU相-O相間に接続されたものとW相-O相間に接続されたものとのバランスが崩れているために第2電圧V2が第1電圧V1よりも大きくなっているときに第2バランス調整制御を行うことができる。この制御では、制御部50は、第1電圧計21で計測される第1電圧V1および第2電圧計22で計測される第2電圧V2が目標電圧(インバータ40が必要とする電圧の1/2)となるように、第1および第3スイッチ素子SW1,SW3をオフさせたまま第2、第4および第5スイッチ素子SW2,SW4,SW5をオン/オフさせる。
【0050】
より詳しくは、制御部50は、
図5(A)に示す第2スイッチ素子SW2がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(B)に示す全てのスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4,SW5がオフした状態、同図(C)に示す第5スイッチ素子SW5がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW4がオフした状態、同図(D)に示す第4スイッチ素子SW4がオンし、他のスイッチ素子SW1,SW2,SW3,SW5がオフした状態をこの順に繰り返し作り出す。これにより、第2コンデンサC2の放電および第1コンデンサC1の充電が交互に行われ、第1電圧V1および第2電圧V2が目標電圧に一致する。
【0051】
第2スイッチ素子SW2がオンすると、
図5(A)に示すように、第2コンデンサC2から蓄電池60または第3コンデンサC3に電力が移動する。その後、第4スイッチ素子SW4がオンすると、
図5(D)に示すように、蓄電池60または第3コンデンサC3から第1コンデンサC1に電力が移動する。つまり、この制御では、蓄電池60または第3コンデンサC3を介して第2コンデンサC2から第1コンデンサC1に電力が移動する。
【0052】
なお、
図5(A)に示した状態から同図(B)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第2スイッチ素子SW2のオンデューティは、例えばPWM制御により決定することができる。同様に、
図5(C)に示した状態から同図(D)に示した状態への切り替わりのタイミング、すなわち、第5スイッチ素子SW5のオンデューティ(第4スイッチ素子SW4のオフデューティ)も、例えばPWM制御により決定することができる。
【0053】
この第2バランス調整制御によれば、第2コンデンサC2から第1コンデンサC1への電力の移動により、第1電圧V1および第2電圧V2を素早く一致させることができる。言い換えると、この制御によれば、中性線となる第3電力線28の電位を素早く理想的な電位とすることができる。
【0054】
このように、本発明の実施例に係る蓄電システム10では、中性線となる第3電力28の電位が常に理想的な電位(第1電力線26の電位および第2電力線27の電位のちょうど中間の値)に維持される。また、蓄電システム10は、双方向DC/DCコンバータ20における昇圧比および降圧比が小さいので、従来よりも高効率に蓄電池60を充放電させることができる。
【0055】
また、本発明の実施例に係る蓄電システム10は、第3および第4スイッチ素子SW3,SW4を直列接続したものに並列に接続された第5スイッチ素子SW5を備え、この第5スイッチ素子SW5をオンさせるだけで
図3(A)に示したような電流経路を形成することができるようになっている。すなわち、蓄電システム10によれば、2つのスイッチ素子(第3および第4スイッチ素子SW3,SW4)をオンさせなければ同等の電流経路を形成することができない場合に比べて、スイッチング損失を低減することができる。
【0056】
以上、本発明に係る蓄電システムの実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。例えば、DC/DCコンバータ30およびインバータ40は、
図1に示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0057】
10 蓄電システム
20 双方向DC/DCコンバータ
21 第1電圧計
22 第2電圧計
23 第3電圧計
24a,24b 第1入出力端
25a,25b 第2入出力端
26 第1電力線
27 第2電力線
28 第3電力線
30 DC/DCコンバータ
31a,31b 入力端
32a,32b 出力端
40 インバータ
41a,41b,41c AC側入出力端
42a,42b DC側入出力端
50 制御部
60 蓄電池
61 太陽電池
62 フィルタ
63 系統端子
64 自立出力端子
65 系統リレー
66 バイパスリレー
67 自立リレー
C1,C2,C3,C4 コンデンサ
D1,D2,D3,D4,D5 還流ダイオード
L コイル
SW1,SW2,SW3,SW4,SW5 スイッチ素子