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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008799
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20240112BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20240112BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B29C65/02
B32B37/12
B32B15/08 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002655
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2022110084
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514173744
【氏名又は名称】輝創株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100165331
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 知宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AB01A
4F100AB09
4F100AB10
4F100AB31
4F100AJ06
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK26
4F100AK46
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01C
4F100EH36C
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ17B
4F100EJ17C
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100EJ52
4F100EJ52A
4F100EJ64A
4F100EJ85
4F100EJ85A
4F100JK06
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA13
4F211AA15
4F211AA24
4F211AA25
4F211AA29
4F211AA34
4F211AD03
4F211AG03
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA01
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TH21
4F211TH22
4F211TH24
4F211TN07
4F211TQ04
(57)【要約】
【課題】金属と樹脂とを簡易に接合できる技術を提供する。
【解決手段】金属基材と樹脂基材とを接合する接合方法であって、前記金属基材の表面に、官能基を有する水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液を塗布し、前記水溶性ポリマーと前記金属基材の表面に存在する基との共有結合により前記金属基材の表面に固着する化学結合層を形成する工程と、前記樹脂基材を溶融させて前記金属基材に固着している前記化学結合層に融着させる工程と、を備える、接合方法。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属素材の接合面に脱脂洗浄およびプラズマ処理による表面改質の少なくとも一方を行う第1の工程と、
加熱により、前記第1の工程を経た前記金属素材の接合面と化学結合を生じる樹脂成分を含有するポリマー溶液を準備し、当該接合面の上に塗布して化学結合層を形成する第2の工程と、
加熱により、前記化学結合層と溶融混合して結合する樹脂成分を含有する樹脂素材を準備する第3の工程と、
前記第2の工程で塗布した前記ポリマー溶液の上に、前記第3の工程で準備した前記樹脂素材を積層して加熱押圧することにより、或いは、前記樹脂素材を射出成形することにより、前記金属素材と前記樹脂素材とを接合させる、接合方法。
【請求項2】
請求項1記載の接合方法であって、
前記ポリマー溶液は、接合時の温度で溶融する無機粉体を含有することを特徴とする、接合方法。
【請求項3】
金属基材と樹脂基材とを接合する接合方法であって、
前記金属基材の表面に、官能基を有する水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液を塗布し、前記水溶性ポリマーと前記金属基材の表面に存在する基との共有結合により前記金属基材の表面に固着する化学結合層を形成する工程と、
前記樹脂基材を溶融させて前記金属基材に固着している前記化学結合層に融着させる工程と、
を備える、接合方法。
【請求項4】
請求項3記載の接合方法であって、さらに、
前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記金属基材の表面における前記ポリマー溶液の塗布領域を脱脂洗浄する工程を備える、接合方法。
【請求項5】
請求項3記載の接合方法であって、
前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記塗布領域に対してプラズマ処理を実施する工程と、
を備える、接合方法。
【請求項6】
請求項3記載の接合方法であって、さらに、
前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記金属基材の表面における前記ポリマー溶液の塗布領域の酸化膜を除去する工程を備える、接合方法。
【請求項7】
請求項3記載の接合方法であって、
前記ポリマー溶液は、前記樹脂基材を前記化学結合層に融着する際の加熱温度で溶融する無機粉体を含む、接合方法。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の接合方法であって、
前記接合層を介して前記樹脂基材が接合された前記金属基材を第1金属基材として準備する工程と、
第2金属基材に前記ポリマー溶液を塗布して形成した前記第2金属基材の前記化学結合層に、前記樹脂基材を溶融させて融着させる工程と、
を備える、接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属と樹脂とを接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金属と樹脂とを接合する接合方法について様々な技術が提案されている。例えば、下記の特許文献1には、いわゆるレーザークラッディングによって金属基材の表面に微細な突起部を形成し、その突起部の上に配置した樹脂基材をレーザー照射により溶融させて、アンカー効果によって樹脂基材を接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2019/198591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1の技術では、レーザークラッディングのための大掛かりな準備や設備が必要になる場合があり、決して容易とは言えなかった。また、上記の特許文献1の技術では、成形済みのプラスチック基材を接合する場合、アンカー効果を発揮させるための押圧力を当該プラスチック基材に付与することができず、プラスチック基材と金属基材との間に空隙が生じ、接合強度が低下する可能性もあった。
【0005】
本願は、従来のアンカー効果を利用した接合や有機溶剤を使用した接着剤とは異なる方法により、金属と樹脂とをより簡易な方法で接合できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
[第1形態]第1形態の接合方法は、金属素材の接合面に脱脂洗浄およびプラズマ処理による表面改質の少なくとも一方を行う第1の工程と、加熱により、前記第1の工程を経た前記金属素材の接合面と化学結合を生じる樹脂成分を含有するポリマー溶液を準備し、当該接合面の上に塗布して化学結合層を形成する第2の工程と、加熱により、前記化学結合層と溶融混合して結合する樹脂成分を含有する樹脂素材を準備する第3の工程と、前記第2の工程で塗布した前記ポリマー溶液の上に、前記第3の工程で準備した前記樹脂素材を積層して加熱押圧することにより、或いは、前記樹脂素材を射出成形することにより、前記金属素材と前記樹脂素材とを接合させることを特徴とする。
第1形態の接合方法によると、レーザー等の大掛かりな設備を用いることなく、簡易に低コストで接合することが可能となる。
【0008】
[第2形態]上記第1形態の接合方法で用いる前記ポリマー溶液は、接合時の温度で溶融
する無機粉体を含有する構成としてもよい。
ポリマー溶液に無機粉体を含有させることで、接合強度を高めることが可能となる。
【0009】
[第3形態]第3形態は、金属基材と樹脂基材とを接合する接合方法として提供される。第3形態の接合方法は、前記金属基材の表面に、官能基を有する水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液を塗布し、前記水溶性ポリマーと前記金属基材の表面に存在する基との共有結合により前記金属基材の表面に固着する化学結合層を形成する工程と、前記樹脂基材を溶融させて前記金属基材に固着している前記化学結合層に融着させる工程と、を備える。
第3形態の接合方法によれば、ポリマー溶液の塗布によって金属基材に化学結合によって固着する化学結合層を簡易に形成することができる。また、金属基材に固着している化学結合層に溶融した樹脂基材が進入して混合されることによって、樹脂基材と金属基材との間の高い接合強度を得ることができる。よって、金属基材と樹脂基材との接合を容易化できる。
【0010】
[第4形態]上記第4形態の接合方法は、さらに、前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記金属基材の表面における前記ポリマー溶液の塗布領域を脱脂洗浄する工程を備えてよい。
第4形態の接合方法によれば、金属基材と樹脂基材との接合強度をより高めることができる。
【0011】
[第5形態]上記第3形態、または、第4形態の接合方法は、前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記塗布領域に対してプラズマ処理を実施する工程を備えてよい。
第5形態の接合方法によれば、金属基材と樹脂基材との接合強度をさらに高めることができる。
【0012】
[第6形態]上記第3形態、第4形態、および、第5形態のいずれかに記載の接合方法は、さらに、前記金属基材に前記ポリマー溶液を塗布する前に、前記金属基材の表面における前記ポリマー溶液の塗布領域の酸化膜を除去する工程を備えてよい。
第6形態の接合方法によれば、金属基材と樹脂基材との接合強度をさらに高めることができる。
【0013】
[第7形態]上記第3形態、第4形態、第5形態、および、第6形態のいずれか一つの接合方法において、前記ポリマー溶液は、前記化学結合層を前記樹脂基材に融着する際の温度で溶融する無機粉体を含んでよい。
第7形態の接合方法によれば、無機粉体の融着により、金属基材と樹脂基材との接合強度を、さらに高めることができる。
【0014】
[第8形態]上記第3形態、第4形態、第5形態、第6形態、および、第7形態のいずれか一つの接合方法は、前記接合層を介して前記樹脂基材が接合された前記金属基材を第1金属基材として準備する工程と、第2金属基材に前記ポリマー溶液を塗布して形成した前記第2金属基材の前記化学結合層に、前記樹脂基材を溶融させて融着させる工程と、を備えてよい。
第8形態の接合方法によれば、2つの金属基材を、樹脂基材を介して簡易に接着することができる。
【0015】
本発明は、接合方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、その接合方法に用いられるポリマー溶液や、そのポリマー溶液によって形成された化学結合層を有する金属基材、その金属基材と樹脂基材の接合体、その接合体を用いた様々な製品、それらの接合体や製品の製造方法、前記の接合方法や製造方法を実施する装置、その装置の制御ユニットや制御プログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】接合方法の工程を示す説明図。
図2】接合方法の各工程の内容を示す模式図。
図3】ポリマー溶液の製造例をまとめた説明図。
図4】接合強度を測定する引張試験を説明するための説明図。
図5】第1実験例の参照図。
図6】第2実験例の第1の参照図。
図7】第2実験例の第2の参照図。
図8】第2実験例の第3の参照図。
図9】第2実験例の第4の参照図。
図10】第3実験例の結果をまとめた第1の説明図。
図11】第3実験例の結果をまとめた第2の説明図。
図12】第2実施形態の接合方法の各工程の内容を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態および実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
1.第1実施形態:
図1には、第1実施形態の接合方法の工程を示すフローチャートが図示されている。図2(a)~(e)には、第1実施形態の接合方法における各工程S10~S40の内容を示す模式図が工程順に図示されている。図2(a)は、工程S10の参照図であり、図2(b)は、工程S20の参照図であり、図2(c)は、工程S30の参照図であり、図2(d),(e)は、工程S40の参照図である。
【0019】
第1実施形態の接合方法では、金属基材10と樹脂基材20とが接合される。本明細書においては、「基材」は、加工対象となる部材や製品を構成する部材等を広く意味する用語として用いており、「素材」と呼ぶこともできる。金属基材10や樹脂基材20の種類は、特に限定されないが、好適なものとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0020】
<金属基材の好適例>
アルミニウム(Al)、Al合金、銅(Cu)、Cu合金、ニッケル(Ni)、Ni合金、鉄(Fe)、冷間圧延鋼板(SPCC)、亜鉛めっき鋼板(SECC、SGCC、SEHC等)、炭素工具鋼(SK材)、機械構造用炭素鋼(SC材)、ステンレス鋼、一般軟鋼材、超高張力鋼、その他の種々の金属、合金、鋼材等
【0021】
<樹脂基材の好適例>
PA6やPA66等のポリアミド(PA)系樹脂、ポリブチレンテフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテフタレート(PET)、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)、ABS樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、塩化ビニール(PVC)、その他のプラスチックやゴム、熱可塑性樹脂等、加熱によって軟化する合成樹脂
【0022】
工程S10では、接合のための下準備として、金属基材10の接合面を表面処理する。この表面処理は、少なくとも、接合面のうちの後述するポリマー溶液が塗布される塗布領域CAに対して実施される。図2(a)では、便宜上、塗布領域CAを破線で示してある。
【0023】
表面処理としては、例えば、脱脂洗浄や、プラズマ処理による表面改質等を採用できる。この表面処理により、金属基材10に対する図2(d)に示す後述の化学結合層32の固着性を高めることができ、金属基材10と樹脂基材20との接合強度を高めることができる。
【0024】
金属基材10と樹脂基材20との接合強度を高める観点からは、工程S10の表面処理として、脱脂洗浄とプラズマ処理の少なくとも一方が行われることが好ましい。また、工程S10では、脱脂洗浄を実行した後に、プラズマ処理を実行することが、より好ましい。プラズマ処理が好適である理由については後述する。
【0025】
工程S10では、表面処理として、脱脂洗浄やプラズマ処理に加えて、あるいは、それらの代わりに、塗布領域の酸化膜を除去する酸化膜除去処理が実行されてもよい。表面処理としての酸化膜除去処理は、脱脂洗浄やプラズマ処理と組み合わされることが好ましい。酸化膜除去処理は、例えば、金属基材10の塗布領域CAに、硫酸や塩酸等の酸化被膜除去剤を塗布することにより行われる。酸化膜除去処理を行うことにより、金属基材10に対する化学結合層32の固着性をさらに高めることができる。
【0026】
工程S10の表面処理としては、上述したもの以外に、例えば、ブラシ等によって金属基材10の接合面の異物を除去する処理が実行されてもよい。なお、金属基材10の種類や、接合面の表面性状や状態等によっては、工程S10の表面処理は省略されていてもよい。
【0027】
工程S20では、金属基材10の接合面の塗布領域CAにポリマー溶液30を塗布する。ポリマー溶液30は、金属基材10の接合面と化学結合を生じる樹脂成分を含有する液体によって構成される。ポリマー溶液30は、前記の樹脂成分に相当する、官能基を有する水溶性ポリマーを含有する。本明細書において、「液体」には、粘度が高いペースト状のものも含まれる。
【0028】
水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸アミドや、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等を用いることができる。水溶性ポリマーとしては、前記のポリマーに限定されず、工程S30において化学結合層32を形成可能なポリマーであればよい。
【0029】
ポリマー溶液30は、無機溶媒を含有することが好ましい。無機溶媒は、例えば、精製水等の水でよい。ポリマー溶液30に無機溶媒を用いないことも可能であるが、この場合には、ポリマー溶液30の塗布性が低下する可能性がある。水溶性ポリマーと無機溶媒の質量パーセント濃度の比は、例えば、1:0.01~99の範囲内で、適宜に設定することができる。水溶性ポリマーと無機溶媒の質量パーセント濃度の比は、例えば、1:0.02としてもよいし、1:0.5としてもよいし、1:1としてもよい。水溶性ポリマーと無機溶媒の質量パーセント濃度の比は、例えば、1:10としてもよいし、1:20としてもよいし、1:50としてもよいし、1:70としてもよいし、1:90としてもよい。なお、前記の比の数値は、±20%の範囲の誤差を許容する。
【0030】
ポリマー溶液30には、水溶性ポリマーに加えて、適宜、流動パラフィンや、界面活性剤、アルコール等を添加剤として添加してもよい。流動パラフィンを添加すれば、ポリマー溶液30を白濁化させて、その視認性を向上させることができ、ポリマー溶液30の塗布性を向上させることができる。界面活性剤は、その添加量によってポリマー溶液30の粘度を調整することができる。アルコールを添加することにより、ポリマー溶液30の酸化を防止できる。アルコールとしては、例えば、エタノールやポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。なお、ポリマー溶液30には、有機溶剤が使用されないことが好ましい。
【0031】
ポリマー溶液30には、後述する工程S40での樹脂基材20の融着工程において樹脂成分とともに溶融する無機粉末が添加されていてもよい。例えば、工程S40での樹脂基材20の加熱温度で溶融する無機粉末が添加されていてもよい。この場合、無機粉末は、樹脂基材20の融点以下の融点を有していることが好ましい。ポリマー溶液30にそのような無機粉末を添加しておけば、無機粉末の融着の効果が加わり、金属基材10と樹脂基材20との接合強度の向上が可能である。無機粉末としては、例えば、スズ(Sn)の粉末を用いることができる。
【0032】
本実施形態の工程S20では、図2(b)に示すように、ペースト状にしたポリマー溶液30を、例えば、ダイコータ等の塗工装置によって金属基材10の接合面に塗布する。他の実施形態では、ポリマー溶液30は、金属基材10の接合面に滴下して押し広げることによって塗布されてもよい。ポリマー溶液30は、金属基材10の接合面をポリマー溶液30中に浸漬させるディッピングによって塗布されてもよい。また、ポリマー溶液30は、粘度を低くして、スプレー等によって噴霧することにより金属基材10の接合面に塗布されてもよい。
【0033】
ポリマー溶液30の塗布層の厚みは、例えば、10μm以上150μm以下であることが好ましい。ポリマー溶液30の塗布層の厚みは、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましい。ポリマー溶液30の塗布層の厚みは、130μm以下であることがより好ましく、110μm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
工程S30では、金属基材10に塗布されたポリマー溶液30を乾燥させる。これにより、金属基材10の表面に化学結合により固着する化学結合層32が形成される。本発明の発明者の知見によれば、ポリマー溶液30を乾燥させる際に、脱水縮合反応が起こり、水溶性ポリマーの官能基が、金属基材10の表面の全体に存在している基と共有結合して水溶性ポリマーの化学結合層32が形成されていることが推察される。また、水溶性ポリマーの官能基は、金属基材10の表面に定着している水酸基(OH基)に対しては、エステル結合によって結合すると考えられる。
【0035】
なお、上述した工程S10の表面処理において、プラズマ処理を実行すれば、金属基材10の接合面のOH基を増加させることができる。そのため、金属基材10に対する化学結合層32の固着性を効果的に高めることが可能である。
【0036】
工程S40では、樹脂基材20を溶融させて化学結合層32に融着させる。本実施形態の工程S40では、図2(d)に示すように、樹脂基材20を、その融点以上の温度で加熱して溶融させ、化学結合層32に押圧することによって融着する。この工程は、例えば、ホットプレスによって実行可能である。これにより、図2(e)に示すように、樹脂基材20の樹脂成分が溶融して化学結合層32に進入して混合され、接合部位を構成する接合層35が形成され、金属基材10と樹脂基材20の接合体が完成する。
【0037】
工程S40での加熱温度は、例えば、200℃以上350℃以下であることが好ましい。加熱温度を200℃以上とすれば、様々な樹脂材料を溶融することが可能である。様々な種類の樹脂基材20をより溶融させやすくするためには、加熱温度は、250℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましい。加熱温度は、330℃以上であることがさらに好ましい。加熱温度を330℃以下とすれば、加熱のためのエネルギー消費量の増加を抑制しながら効率的に樹脂基材20を溶融させることができる。
【0038】
なお、上記の工程S30と工程S40とは以下に説明するように並行して実行されてもよい。工程S20で金属基材10にポリマー溶液30を塗布した後、ポリマー溶液30が完全に乾燥する前に、ポリマー溶液30の上に樹脂基材20を配置する。この状態で、ポリマー溶液30と樹脂基材20とをともに加熱すれば、ポリマー溶液30が乾燥して化学結合層32が形成され、並行して、樹脂基材20が溶融して化学結合層32に樹脂成分が混合される。この方法であれば、金属基材10と樹脂基材20を接合する接合工程の時間の短縮が可能である。
【0039】
また、上記の工程S40では、樹脂基材20を化学結合層32の上に配置した後に加熱により溶融させる代わりに、加熱によって溶融した後の樹脂基材20を化学結合層32の上に配置して硬化させて融着させてもよい。この方法であれば、化学結合層32の上に射出成形によって樹脂基材20の成形品を形成することが可能である。よって、成形済みの樹脂基材20を金属基材10に接合する場合に比較して、接合工程を考慮した設計の必要性が低減され、樹脂基材20の設計の自由度を高めることができる。また、接合工程における樹脂基材20の変形の発生を回避することができる。
【0040】
工程S40では、ヒーター等の加熱手段による昇温以外の方法で樹脂基材20を溶融させてもよい。樹脂基材20は、例えば、レーザー照射や、超音波の照射、摩擦等によって溶融されてもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の接合方法によれば、金属基材10に対するポリマー溶液30の塗布および乾燥と、樹脂基材20の溶融・硬化によって、金属基材10と樹脂基材20とを簡易に接合することが可能である。また、金属基材10に対する水溶性ポリマーの化学結合と化学結合層32に対する樹脂基材20の融着とによって、金属基材10と樹脂基材20との間の高い接合強度が実現される。さらに、本実施形態の接合方法によれば、ポリマー溶液30の塗布前の金属基材10の接合面に対する表面処理という簡便な準備工程によって、金属基材10と樹脂基材20との接合強度を効果的に高めることができる。
【0042】
加えて、本実施形態の接合方法によって形成された接合体では、接合層35がシール性を発揮するため、浸水や外気の進入による接合界面の劣化が抑制され、接合強度の経年劣化を抑制することが可能である。また、本実施形態の接合方法に用いられるポリマー溶液30であれば、有機溶剤を用いなくても作製できるため、取り扱いが容易であり、廃棄された場合であっても地球環境への影響が小さい。
【実施例0043】
以下、図3図11を参照して、第1実施形態の接合方法の実施例を詳細に説明する。本実施例では、上記の第1実施形態で説明した接合方法により、金属基材と樹脂基材とを接合し、後述する引張試験によって、金属基材と樹脂基材との接合強度を測定した。
【0044】
<ポリマー溶液の製造例>
図3の表には、本実施例で用いた4種類のポリマー溶液の製造例をまとめてある。なお、以下の説明および参照図では、ポリマー溶液の種類を、図3の表に示された符号PAA、PAAs、PAN、CMCで表示する。
【0045】
ポリマー溶液PAAは、水溶性ポリマーとしてのポリアクリル酸アミドと、無機溶媒としての精製水と、を混合して作製した。ポリマー溶液PAAsは、水溶性ポリマーとしてのポリアクリル酸アミドと、無機溶媒としての精製水と、を混合し、さらに、無機粉末としてSn粉末を添加することにより作製した。ポリマー溶液PANは、水溶性ポリマーとしてのポリアクリル酸ナトリウムと、無機溶媒としての精製水と、を混合して作製した。ポリマー溶液CMCは、水溶性ポリマーとしてのカルボキシルメチルセルロースナトリウムと、無機溶媒としての精製水と、を混合して作製した。
【0046】
各ポリマー溶液PAA,PAAs,PAN,CMCでは、その取扱い性を向上させるために、流動パラフィン、界面活性剤、アルコール等の添加剤を、適宜、添加した。ただし、それらの添加剤の接合強度への影響は小さいため、具体的な種類や添加量等の詳細については省略する。
【0047】
<引張試験>
図4を参照して、本実施例で行った引張試験を説明する。図4では、便宜上、試験対象の金属基材MMと樹脂基材RMとをそれぞれ実線と一点鎖線とで区別して図示してあり、金属基材MM上のポリマー溶液の塗布領域CAにハッチングを付してある。また、図4では、塗布領域CAの横幅がxで示され、縦幅がyで示されている。塗布領域CAは、金属基材MMと樹脂基材RMの間の接合領域に相当する。
【0048】
長方形形状の板面を有する板状の金属基材MMの一端の塗布領域CAにポリマー溶液を塗布して、化学結合層を形成した。長方形形状の板面を有する板状の樹脂基材RMを、その長手方向が金属基材MMの長手方向と一致し、その一端が化学結合層の上に配置され、その他端側が金属基材MMの上から延び出る状態で積層し、ホットプレスによって融着させた。得られた金属基材と樹脂基材の接合体に対して長手方向の引張力を、金属基材と樹脂基材の接合部位接合層が破断するまで付与することにより、接合強度(MPa)、および、接合力(N)を計測した。
【0049】
<第1実験例>
図5(a)には、実施例E1,E2と比較例C1,C2の構成をまとめた表が示されている。図5(b)には、実施例E1,E2と比較例C1,C2の接合強度の測定結果を示す棒グラフが示されている。
【0050】
図5(a)に示すように、実施例E1,E2および比較例C1,C2では、金属基材MMとして、Alとマグネシウム(Mg)の合金であるA5052を用い、樹脂基材RMとして、ポリアミド系樹脂であるPA6を用いた。また、実施例E1,E2および比較例C1,C2での接合領域の横幅xは20mmとし、縦幅yは3mmとした。
【0051】
実施例E1では、ポリマー溶液PAAsによって金属基材MMに化学結合層を形成し、ホットプレスにより化学結合層に対して樹脂基材RMを融着した。実施例E2では、ポリマー溶液PAAによって金属基材MMに化学結合層を形成し、ホットプレスにより化学結合層に対して樹脂基材RMを融着した。実施例E1,E2ではいずれも、ポリマー溶液を塗布する前の金属基材MMの塗布領域CAに対して、脱脂洗浄とプラズマ処理とを実施した。また、実施例E1,E2ではいずれも、ポリマー溶液は、膜厚が約50μmとなるように塗布した。
【0052】
比較例C1では、金属基材MMの接合領域に対するプラズマ処理のみを実施し、ポリマー溶液を用いて化学結合層を形成することなく、ホットプレスにより金属基材MMに樹脂基材RMを融着した。比較例C2では、金属基材MMの接合領域に対する脱脂洗浄のみを実施し、ポリマー溶液を用いて化学結合層を形成することなく、ホットプレスにより金属基材MMに樹脂基材RMを融着した。脱脂洗浄にはエタノールを用いた。
【0053】
実施例E1,E2,C1,C2でのホットプレスの条件は同じである。ホットプレスでの加熱温度は、PA6およびSnの融点よりも高い温度であった。
【0054】
図5(b)に示すように、2つの実施例E1,E2はいずれも、2つの比較例C1,C2よりも高い接合強度を得ることができた。この結果から、実施例E1,E2での接合強度の向上は、ポリマー溶液によって形成された化学結合層によって得られたものであることがわかる。また、従来の接着剤での接合強度が数MPa程度であることを考慮すると、実施例E1,E2で得られた接合強度は12.0MPaを超えており、接合性が著しく向上していることがわかる。
【0055】
特に、実施例E1は、実施例E2よりも高い接合強度を得ることができた。実施例E1の接合強度が向上したのは、ホットプレスの際の加熱によって、ポリマー溶液中に添加されていたSn粉末が溶融して金属基材MMと樹脂基材RMとに融着したためであると考えられる。
【0056】
<第2実験例>
図6には、実施例E3,E4,E5,E6,E6a,E7,E7a,E8,E9の接合強度の測定結果をまとめた表を示してある。実施例E3,E4,E5,E6,E6a,E7,E7a,E8,E9ではいずれも、ポリマー溶液を塗布する前の金属基材MMの塗布領域CAに対して、脱脂洗浄とプラズマ処理とを実施した。ホットプレスは、いずれも同じ加圧力で、樹脂基材RMの融点より高い加熱温度で行った。
【0057】
実施例E3,E4,E5ではそれぞれ、ポリマー溶液PAA,PAN,CMCを用いた点以外は同じ条件で行った。実施例E3,E4,E5では、金属基材MMにA5052を用い、樹脂基材RMにPA6を用いた。また、接合領域の横幅xを20mmとし、縦幅yを5mmとした。実施例E3,E4,E5ではいずれも1000Nを超える接合力が得られた。特に、実施例E4では、2000Nを超える接合強度が得られた。
【0058】
実施例E6では、ポリマー溶液PAAを用い、金属基材MMとしてCuを用い、樹脂基材RMとしてPA6を用いた。実施例E7では、ポリマー溶液PANを用い、金属基材MMとしてSPCCを用い、樹脂基材RMとしてPA6を用いた。実施例E6,E7では、接合領域の横幅xを20mmとし、縦幅yを10mmとした。実施例E6,E7ではいずれも1000Nを超える接合力が得られた。特に、実施例E6では、2000Nを超える接合力が得られた。
【0059】
実施例E6a,E7aはそれぞれ、ポリマー溶液を塗布する前に塗布領域CAの酸化膜を除去する処理を実施した点以外は、実施例E6,E7とほぼ同じ条件で行った。この結果、実施例E6aでは、実施例E6より接合力が900N以上向上し、実施例E7aでは、実施例E7より接合力が1800N以上向上した。この結果から、本発明の接合方法によれば、ポリマー溶液の塗布前に塗布領域CAの酸化膜を除去する処理を実行するだけで、金属基材と樹脂基材の接合強度を簡易に向上させることができることがわかる。
【0060】
実施例E8,E9はそれぞれ、金属基材MMとしてSUSとSGCCとを用いた点以外は、同じ条件で行った。実施例E8,E9では、ポリマー溶液PANを用い、樹脂基材RMとしてPA6を用いた。実施例E6,E7では、接合領域の横幅xを20mmとし、縦幅yを10mmとした。実施例E8,E9でもいずれも、1000N以上の接合力が得られた。特に、実施例E8では1800N以上の接合力が得られた。
【0061】
以上、実施例E3,E4,E5,E6,E6a,E7,E7a,E8,E9によれば、ポリアミド系樹脂と、Al合金や、Cu、鋼材等の金属とを、接合力が1000Nを超える接合強度で接合することができた。また、ポリマー溶液PAA,PAN,CMCのいずれを用いた場合でも、高い接合強度を得ることができた。
【0062】
図7には、実施例E10で用いた基材やポリマー溶液の種類と引張試験後の金属基材MMと樹脂基材RMの状態を示す撮影画像とをまとめた表を示してある。実施例E10では、金属基材MMとしてA5052を用い、樹脂基材RMとして、PBTを用いた。実施例E10では、金属基材MMにポリマー溶液PAAを塗布して化学結合層を形成した。化学結合層への樹脂基材RMの融着は、PBTの融点より高い加熱温度でのホットプレスによって行った。実施例E10では、ポリマー溶液を塗布する前の金属基材MMの塗布領域CAに対して、脱脂洗浄とプラズマ処理とを実施した。
【0063】
実施例E10の撮影画像に示されているように、金属基材MMの破断した接合部位には、樹脂基材RMの一部が残留していた。この撮影画像から、実施例E10では、実用に耐え得る十分な接合強度が得られていたことがわかる。
【0064】
図8には、実施例E11で用いた基材やポリマー溶液の種類と引張試験後の金属基材MMと樹脂基材RMの状態を示す撮影画像とをまとめた表を示してある。実施例E11では、金属基材MMとして980MPa級の高張力鋼板(ハイテン鋼板)を用い、樹脂基材RMとして、PA66を用いた。実施例E11では、金属基材MMにポリマー溶液PAAを塗布して化学結合層を形成した。化学結合層への樹脂基材RMの融着は、PA66の融点より高い加熱温度でのホットプレスによって行った。実施例E11では、ポリマー溶液を塗布する前の金属基材MMの塗布領域CAに対して、脱脂洗浄とプラズマ処理とを実施した。
【0065】
実施例E11の撮影画像に示されているように、金属基材MMの破断した接合部位には、樹脂基材RMの一部が残留していた。この撮影画像から、実施例E11でも、実用に耐え得る十分な接合強度が得られていたことがわかる。
【0066】
図9には、上記の実施例についての接合対象とした基材の組み合わせと接合結果とをまとめた表を示してある。また、図9には、比較例の接合結果についての表を右側に追加してある。比較例は、ポリマー溶液を用いて金属基材同士を接合できるか否かを検証したものである。図9の表において、「〇」は基準値以上の接合強度が得られた良好な結果を意味している。「×」は基準値以上の接合強度が得られなかった良好ではない結果を意味している。「-」は、未実施の組み合わせを意味している。
【0067】
図9に示されているように、本発明の接合方法によれば、様々な合金や鋼を含む金属と樹脂とを接合することが可能であった。また、比較例の結果が示しているように、金属同士では接合強度を得ることができなかった。この結果は、本発明におけるポリマー溶液は、乾燥させて硬化させることにより接着対象に固着する従来の一般的な接着剤とは異なるものであることを示している。本発明において接合強度が得られる理由は、金属基材に対する化学結合層の固着と、化学結合層に樹脂成分が混合されることによる樹脂の融着との組み合わせが重要であると言える。
【0068】
<第3実験例>
図10には、工程S40での加熱温度である接合温度ごとの接合強度を検証した実験によって得られた棒グラフを示してある。
【0069】
この実験例では、金属基材MMとしてA5052を用い、樹脂基材RMとしてPA6を用いた。また、ポリマー溶液PAAを、横幅20mm、縦幅3mmの塗布領域CAに塗布して化学結合層を形成し、ホットプレスにより、樹脂基材RMを化学結合層に融着させた。なお、ポリマー溶液PAAの塗布前に、塗布領域CAには、接合面の表面処理として、エタノール洗浄とプラズマ処理とを実施した。
【0070】
ここで、樹脂基材RMであるPA6の融点は225℃である。図10のグラフから、ホットプレスでの接合温度を、その融点より高い温度とすることにより、高い接合強度が得られていることがわかる。また、接合温度を、融点より50℃以上高くすることにより、接合強度が段違いに向上することがわかる。
【0071】
図11には、樹脂基材RMの種類ごとの接合温度を検証した実験結果をまとめた表を示してある。この実験例では、A5052によって構成した金属基材MMにポリマー溶液PAAを塗布して化学結合層を形成し、ホットプレスにより、表中に示す樹脂基材RMを融着した。図11の表において、「〇」は基準値以上の接合強度が得られた良好な結果を意味している。「×」は基準値以上の接合強度が得られなかった良好ではない結果を意味している。「-」は、未実施の組み合わせを意味している。
【0072】
この実験例では、樹脂基材RMとして、PA6、PA66、PBT、PPSを用いた。PA6の融点は上述したように、225℃であり、PA66の融点は265℃であり、PBTの融点は、232℃以上267℃以下の範囲内であり、PPSの融点は275℃である。図11の表に示す結果から、樹脂基材RMの融点よりも20~30℃程度高い接合温度でホットプレスを実行することが好ましいことがわかる。
【0073】
<まとめ>
以上のように、上記の各実験例によって、本発明の接合方法によれば、ポリパー溶液の塗布による金属基材に対する化学結合層の形成および化学結合層に対する樹脂基材の融着によって、金属基材と樹脂基材とを高い接合強度で接合できることが示された。
【0074】
2.第2実施形態:
図12(a)~(c)は、第2実施形態の接合方法の各工程を工程順に示す模式図である。第2実施形態の接合方法では、第1実施形態で説明した金属と樹脂との接合方法を利用して、2つの金属基材10a,10bを接合する。
【0075】
図12(a)を参照する。第2実施形態の接合方法では、まず、接合対象となる第1金属基材10aと第2金属基材10bとを準備する。
【0076】
第1金属基材10aには、第1実施形態で説明した接合方法によって、樹脂基材20が接合されている。第1金属基材10aと樹脂基材20との間には、化学結合層32に溶融した樹脂基材20の一部が混合された接合層35が形成されている。第2金属基材10bには、ポリマー溶液を塗布して化学結合層32を形成する。
【0077】
図12(b)を参照する。次に、第2金属基材10bに形成した化学結合層32を第1金属基材10aに接合された樹脂基材20に接触させ、樹脂基材20を溶融させることにより、第2金属基材10bの化学結合層32に第1金属基材10aに接合された樹脂基材20を融着させる。この融着工程は、第1金属基材10aの樹脂基材20の上に第2金属基材10bの化学結合層32を積層した状態でホットプレスすることにより可能である。
【0078】
以上の工程により、図2(c)に示すように、両側に接合層35が形成された樹脂基材20の層を挟んで第1金属基材10aと第2金属基材10bとが接合された接合体が形成される。
【0079】
第2実施形態の接合方法によれば、2つの金属基材10a,10bを簡易に接合することができる。また、2つの金属基材10a,10bを、樹脂基材20によって電気的に絶縁した状態で接合することができる。その他に、第2実施形態の接合方法によれば、第1実施形態やその実施例で説明した種々の効果を奏することができる。
【0080】
3.他の実施形態:
本発明は、上記の各実施形態や実施例で説明した構成に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜、改変可能である。上記の各実施形態において他の実施形態として説明した構成や、以下に説明する構成はいずれも、上記の各実施形態および実施例と同様に、本発明を実施するための一形態として位置づけられる。
【0081】
上記の各実施形態や実施例で説明した接合方法は、他の接合方法と組み合わされてもよい。例えば、鋼材の表面に微細な凹凸構造を形成し、その凹凸構造に軟化させた樹脂基材を入り込ませることによって接合する方法と組み合わされてもよい。なお、前記の鋼材の微細な凹凸構造は、鋼材の表面に、少なくとも、チタンと、炭素と、ニッケルと、スズと、を含む金属粉末を配置し、その金属粉末をレーザーの照射によって溶融させることにより形成してもよい。その詳細については、例えば、特開2022-187439号公報に開示されている。
【符号の説明】
【0082】
10,10a,10b,MM…金属基材、20,RM…樹脂基材、30…ポリマー溶液、32…化学結合層、35…接合層、CA…塗布領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12