(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000088
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】単板の脱水装置および単板の脱水方法
(51)【国際特許分類】
B27D 1/00 20060101AFI20231225BHJP
B27L 5/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B27D1/00 N
B27L5/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098636
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000155182
【氏名又は名称】株式会社名南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
【テーマコード(参考)】
2B200
【Fターム(参考)】
2B200AA03
2B200CA12
2B200DA15
2B200EC16
2B200FA38
2B200FA41
2B200GB12
2B200GB14
(57)【要約】
【課題】単板の脱水装置において、第1ロールや第2ロールの耐久性を向上すること。
【解決手段】上側ロール4および下側ロール6と回転軸20との動力伝達経路上にクラッチ30を配置する。そして、単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分が上側ロール4および下側ロール6間を通過するときや、上側ロール4および下側ロール6と単板との間にゴミなどの夾雑物が介在していない状態で上側ロール4および下側ロール6間を単板が通過するときは、クラッチ30によって上側ロール4および下側ロール6を回転軸20に接続する。一方、節や夾雑部が介在している状態で、上側ロール4および下側ロール6間を単板が通過するときは、クラッチ30による上側ロール4および下側ロール6と回転軸20との接続を解除する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単板の含有水分を脱水する単板の脱水装置であって、
フレームと、
該フレームに回転可能に支持された第1ロールと、
該第1ロールに対して前記単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置において、前記第1ロールに平行に配置されると共に前記フレームに回転可能に支持された第2ロールと、
前記第1および第2ロールの少なくとも一方を回転駆動可能な回転駆動部と、
を備え、
少なくとも前記回転駆動部によって駆動される前記第1および第2ロールは、前記フレームに回転可能に支持された軸と、前記軸の外周に該軸の軸線と同軸に配置された円筒体と、弾性を有すると共に前記円筒体の外周に一体かつ前記軸の軸線と同軸に配置された弾性円筒体と、前記軸および前記円筒体間の動力伝達経路に配置された接続部と、を有しており、
前記接続部は、前記弾性円筒体と前記単板との接触状態が第1状態のときには、前記軸および前記円筒体が一体回転可能なよう前記軸および前記円筒体を接続し、前記弾性円筒体と前記単板との接触状態が第2状態のときには、前記軸および前記円筒体が相対回転可能なよう前記軸および前記円筒体の接続を解除する
単板の脱水装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記軸と一体回転可能に該軸に支持された円板と、該円板に対向するよう配置されると共に前記円筒体と一体回転可能なよう少なくとも一部が前記円筒体内に配置された摩擦板と、該摩擦板を前記円板に押し付け可能な押付部と、を有している
請求項1に記載の単板の脱水装置。
【請求項3】
前記摩擦板は、前記円板に関して前記軸の軸線方向の両側に配置された第1および第2摩擦板を有しており、
前記押付部は、前記第1および第2摩擦板の少なくとも一方を直接的に前記円板に押し付け可能である
請求項2に記載の単板の脱水装置。
【請求項4】
前記円筒体は、前記軸の軸線方向への移動が規制された状態で該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有しており、
前記弾性円筒体は、前記第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有しており、
前記第1摩擦板は、前記第1円筒体内に配置されており、
前記第2摩擦板は、前記第2円筒体内に配置されている
請求項3に記載の単板の脱水装置。
【請求項5】
前記円筒体は、前記軸の軸線方向への移動が規制された状態で該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有しており、
前記弾性円筒体は、前記第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有しており、
前記円板は、第1円板および第2円板を有しており、
前記摩擦板は、前記第1円板に関して前記軸の軸線方向の両側に配置された第3および第4摩擦板と、前記第2円板に関して前記軸の軸線方向の両側に配置された第5および第6摩擦板と、を有しており、
前記第3および第4摩擦板は、前記第1円筒体内に配置されており、
前記第5および第6摩擦板は、前記第2円筒体内に配置されており、
前記押付部は、前記第3および第4摩擦板の少なくとも一方を直接的に前記第1円板に押し付け可能であると共に、前記第5および第6摩擦板の少なくとも一方を直接的に前記第2円板に押し付け可能である
請求項2に記載の単板の脱水装置。
【請求項6】
前記接続部は、円弧状の摩擦材を有すると共に該摩擦材が前記円筒体の内周面に対向するよう前記軸と前記円筒体との間に配置された少なくとも一つの摩擦体と、該摩擦体と前記軸との間に配置され前記軸と一体回転可能なよう前記軸に支持されると共に前記摩擦体を一体回転可能なよう前記摩擦体に接続された円筒ハブと、前記摩擦材が前記円筒体の内周面に当接するよう前記摩擦体を径方向外方に付勢可能に少なくとも一部が前記円筒ハブに配置された付勢部と、を有している
請求項1に記載の単板の脱水装置。
【請求項7】
前記付勢部は、前記円筒ハブの外周に配置された弾性体である
請求項6に記載の単板の脱水装置。
【請求項8】
前記付勢部は、前記軸の軸線方向に延在するよう該軸の内部に配置された流体路と、前記摩擦体の内周面に対向して開口すると共に前記軸を前記流体路まで貫通する少なくとも一つの第1径方向貫通孔と、前記円筒ハブを径方向に貫通すると共に前記第1径方向貫通孔に連通する少なくとも一つの第2径方向貫通孔と、前記流体路に流体を送給可能なよう前記流体路に接続された流体送給源と、を有している
請求項6に記載の単板の脱水装置。
【請求項9】
前記円筒体は、前記軸の軸線方向への移動が規制された状態で該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有しており、
前記弾性円筒体は、前記第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有しており、
前記摩擦体は、前記軸と前記第1円筒体との間に配置された第1摩擦体と、前記軸と前記第2円筒体との間に配置された第2摩擦体と、を有しており、
前記円筒ハブは、前記軸と前記第1摩擦体との間に配置された第1円筒ハブと、前記軸と前記第2摩擦体との間に配置された第2円筒ハブと、を有しており、
前記付勢部は、前記第1摩擦体を径方向外方に付勢可能に少なくとも一部が前記第1円筒ハブに配置された第1付勢部と、前記第2摩擦体を径方向外方に付勢可能に少なくとも一部が前記第2円筒ハブに配置された第2付勢部と、を有している
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の単板の脱水装置。
【請求項10】
前記円筒体は、前記軸の軸線方向を向く面に配置された円弧溝を有しており、
前記接続部は、前記円弧溝に係合可能なよう前記軸の軸線方向に延出する突起を有すると共に前記軸と一体回転可能に該軸に支持された円板と、前記突起を介して前記円板を前記軸の回転方向に付勢可能に前記円弧溝内に配置された付勢部と、を有している
請求項1に記載の単板の脱水装置。
【請求項11】
前記円筒体は、前記軸の軸線方向への移動が規制された状態で該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有しており、
前記弾性円筒体は、前記第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有しており、
前記円弧溝は、前記第1円筒体に配置された第1円弧溝と、該第1円弧溝と対向するよう前記第2円筒体に配置された第2円弧溝と、を有しており、
前記突起は、前記第1円弧溝に係合可能なよう前記軸の軸線方向に延出する第1突起と、前記第2円弧溝に係合可能なよう前記軸の軸線方向であって前記第1突起とは反対方向に延出する第2突起と、を有しており、
前記付勢部は、前記第1突起を介して前記円板を前記軸の回転方向に付勢可能に前記第1円弧溝内に配置された第1付勢部と、前記第2突起を介して前記円板を前記軸の回転方向に付勢可能に前記第2円弧溝内に配置された第2付勢部と、を有している
請求項10に記載の単板の脱水装置。
【請求項12】
前記第1および第2ロールのそれぞれは、少なくとも前記第1および第2円筒体と、該第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体と、を有しており、
前記第1および第2ロールそれぞれの前記第1および第2弾性円筒体は、該第1および第2弾性円筒体の軸線を通る仮想平面で切った断面であって前記第1および第2弾性円筒体の軸線に関して一方の側に配置された片側断面が略Z字状を有しており、
前記第1および第2ロールは、前記第1ロールの前記第1および第2弾性円筒体の前記仮想平面上における第1投影と、前記第2ロールの前記第1および第2弾性円筒体の前記仮想平面上における第2投影と、が前記仮想平面上における所定点に関して点対称の関係となるよう配置されている
請求項4、請求項5、請求項6に従属する請求項9、または、請求項11に記載の単板の脱水装置。
【請求項13】
単板の含有水分を脱水する単板の脱水方法であって、
フレームと、
該フレームに回転可能に支持された第1ロールと、
該第1ロールに対して前記単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置において、前記第1ロールに平行に配置されると共に前記フレームに回転可能に支持された第2ロールと、
前記第1および第2ロールの少なくとも一方を回転駆動可能な回転駆動部と、
を備え、
少なくとも前記回転駆動部によって駆動される前記第1および第2ロールが、前記フレームに回転可能に支持された軸と、前記軸の外周に該軸の軸線と同軸に配置された円筒体と、弾性を有すると共に前記円筒体の外周に一体かつ前記軸の軸線と同軸に配置された弾性円筒体と、を有している単板の脱水装置において、
前記弾性円筒体と前記単板との接触状態が第1状態のときには、前記軸および前記円筒体が一体回転可能なよう前記軸および前記円筒体を接続し、前記弾性円筒体と前記単板との接触状態が第2状態のときには、前記軸および前記円筒体が相対回転可能なよう前記軸および前記円筒体の接続を解除することによって、単板の含有水分を脱水する
単板の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単板の含有水分を脱水する単板の脱水装置および単板の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-240899号公報(特許文献1)には、機枠と、当該機枠に回転可能に支持された上ロールと、当該上ロールに対して単板の厚さよりも狭い間隔を隔てて当該上ロールに平行に配置された下ロールと、互いに逆方向に回転するように上ロールおよび下ロールを回転駆動可能な駆動源と、を備え、上ロールおよび下ロール間に単板を通すことによって、単板を圧縮して脱水する脱水装置が記載されている。
【0003】
当該脱水装置では、上ロールが弾性円筒体を備えている。当該円筒状の弾性円筒体は、金属製の軸部の外周面に被覆され、かつ、外周面に複数条の溝を有している。当該溝は、弾性円筒体の軸線を通る仮想平面で当該円筒状の弾性円筒体を切った断面において、その深さ方向への延在方向が、弾性円筒体の軸線に直交する直線に対して所定角度傾斜している。これにより、上ロールおよび下ロール間を単板が通過する際に、弾性円筒体が溝の傾斜方向に倒れ込むように弾性変形するため、単板は、当該弾性円筒体の弾性変形方向、即ち、溝の傾斜方向に向かう斜め方向に圧縮される。この結果、単板が上ロールおよび下ロールの軸線方向に直交する方向(単板の表裏面に垂直方向)に圧縮される場合に比べて、単板の放射組織に座屈や亀裂が発生し難くなり、単板の厚み減りの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上ロールおよび下ロール間を単板が通過する際に、弾性円筒体は単板との接触部において圧縮変形する。これにより、弾性円筒体の円周方向において、当該弾性円筒体の外周面における周速に差が生じる。一方で、上ロールおよび下ロールによって単板を送り出すために、弾性円筒体と単板との間の摩擦力は、比較的高い値に設定されている。これにより、弾性円筒体の周方向において発生する当該弾性円筒体の外周面における周速差を、弾性円筒体と単板との滑りで解消することができず、当該周速差は、弾性円筒体の変形、具体的には、単板の通過方向(搬送方向)に発生する当該単板が弾性円筒体を引っ張る力(以下、単に「単板の引張力」という。)に起因する弾性円筒体の変形によって吸収されることになる。ここで、単板の節などの比較的硬度が高い部分が上ロールおよび下ロール間を通過する際や、異物が付着した状態で単板が上ロールおよび下ロール間を通過する際には、弾性円筒体の圧縮変形が過大となって、弾性円筒体の外周面における周速差が過大となる。これにより、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超える場合が生じる。この結果、弾性円筒体の破損や、疲労による弾性円筒体の耐久性の低下を招いてしまう。
【0006】
上述した公報に記載の単板の脱水装置では、単板の厚み減りの発生を抑制することができるものの、弾性円筒体の耐久性の低下については言及されておらず、弾性円筒体の耐久性という点において、なお改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、単板の脱水装置において、第1ロールや第2ロールが有する弾性円筒体の耐久性向上に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の単板の脱水装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係る単板の脱水装置の好ましい形態によれば、単板の含有水分を脱水する単板の脱水装置が構成される。当該単板の脱水装置は、フレームと、当該フレームに回転可能に支持された第1ロールと、フレームに回転可能に支持された第2ロールと、第1および第2ロールの少なくとも一方を回転駆動可能な回転駆動部と、を備えている。第2ロールは、第1ロールに対して単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置において、第1ロールに平行に配置されている。また、少なくとも回転駆動部によって駆動される第1および第2ロールは、フレームに回転可能に支持された軸と、軸の外周に当該軸の軸線と同軸に配置された円筒体と、弾性を有すると共に円筒体の外周に一体かつ軸の軸線と同軸に配置された弾性円筒体と、軸および円筒体間の動力伝達経路に配置された接続部と、を有している。そして、接続部は、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、軸および円筒体が一体回転可能なように軸および円筒体を接続し、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、軸および円筒体が相対回転可能なように軸および円筒体の接続を解除する。ここで、第2ロールが第1ロールに対して単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置に配置されるとは、典型的には、第1ロールの外周面と第2ロールの外周面とが最も接近した部分の外周面間の距離が単板の板厚よりも小さい距離となるように第2ロールを配置する態様がこれに該当する。また、第1状態とは、典型的には、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態がこれに該当する。第1状態では、弾性円筒体の圧縮変形が比較的小さく、弾性円筒体の外周面における周速差が比較的小さいため、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的小さく抑えられる。また、第2状態とは、典型的には、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態がこれに該当する。第2状態では、弾性円筒体の圧縮変形が第1状態に比べて大きくなり、弾性円筒体の外周面における周速差が第1状態よりも大きくなるため、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が第1状態よりも大きくなる。
【0010】
本発明によれば、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態のように、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的小さい状態のときには、軸および円筒体を一体回転させることで、第1および第2ロールによって単板を良好に搬送することができると共に、第1および第2ロールによって単板を良好に圧縮することができる。これにより、単板の良好な脱水を実現することができる。一方、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態のように、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的大きい状態のとき、具体的には、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超えるようなときには、軸および円筒体を相対回転させることで、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形を抑制することができる。これにより、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超えることを良好に抑制することができる。この結果、弾性円筒体の破損や弾性円筒体の耐久性の低下を良好に抑制できる。
【0011】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、接続部は、軸と一体回転可能に当該軸に支持された円板と、当該円板に対向するように配置されると共に円筒体と一体回転可能なように少なくとも一部が当該円筒体内に配置された摩擦板と、当該摩擦板を円板に押し付け可能な押付部と、を有している。
【0012】
本形態によれば、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、円板と摩擦板との間に生じる摩擦力によって、軸および円筒体を一体回転させると共に、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、円板と摩擦板との間ですべりを生じさせることによって、軸および円筒体を相対回転させることができるため、軸と円筒体との接続および接続の解除を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、摩擦板は、円板に関して軸の軸線方向の両側に配置された第1および第2摩擦板を有している。そして、押付部は、第1および第2摩擦板の少なくとも一方を直接的に円板に押し付け可能である。
【0014】
本形態によれば、1枚の摩擦板が円板に当接する構成に比べて、摩擦板と円板との間の摩擦力を増加させることができる。
【0015】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、円筒体は、軸の軸線方向への移動が規制された状態で当該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有している。また、弾性円筒体は、第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有している。そして、第1摩擦板は、第1円筒体内に配置されており、第2摩擦板は、第2円筒体内に配置されている。
【0016】
本形態によれば、弾性円筒体を含む円筒体が、軸の軸線方向に複数直列に配置されるため、単板のうち節などを有する部分と接触する弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)、あるいは、夾雑部を噛み込んだ弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)を軸に対して相対回転させ、それ以外の弾性円筒体を有する円筒体(第1円筒体および第2円筒体の他方)を軸と一体回転させることが可能となるため、弾性円筒体の耐久性の低下を抑制しながらも単板の脱水を行うことができる。また、二つの円筒体(第1円筒体および第2円筒)に対して円板が1枚で良いため、二つの円筒体(第1円筒体および第2円筒)に対して円板を2枚用いる構成に比べて部品点数の低減を図ることができる。
【0017】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、円筒体は、軸の軸線方向への移動が規制された状態で当該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有している。弾性円筒体は、第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有している。円板は、第1円板および第2円板を有している。摩擦板は、第1円板に関して軸の軸線方向の両側に配置された第3および第4摩擦板と、第2円板に関して軸の軸線方向の両側に配置された第5および第6摩擦板と、を有している。第3および第4摩擦板は、第1円筒体内に配置されており、第5および第6摩擦板は、第2円筒体内に配置されている。そして、押付部は、第3および第4摩擦板の少なくとも一方を直接的に第1円板に押し付け可能であると共に、第5および第6摩擦板の少なくとも一方を直接的に第2円板に押し付け可能である。
【0018】
本形態によれば、弾性円筒体を含む円筒体が、軸の軸線方向に複数直列に配置されるため、単板のうち節などを有する部分と接触する弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)、あるいは、夾雑部を噛み込んだ弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)を軸に対して相対回転させ、それ以外の弾性円筒体を有する円筒体(第1円筒体および第2円筒体の他方)を軸と一体回転させることが可能となるため、弾性円筒体の耐久性の低下を抑制しながらも単板の脱水を行うことができる。また、二つの円筒体(第1円筒体および第2円筒)に対して各々円板を1枚配置すると共に、当該各円板に対して2枚の摩擦板を当接させる構成であるため、1枚の円板に1枚の摩擦板を当接させる構成に比べて、摩擦板と円板との間の摩擦力を増加させることができる。
【0019】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、接続部は、円弧状の摩擦材を有する少なくとも一つの摩擦体と、当該摩擦体と軸との間に配置された円筒ハブと、少なくとも一部が当該ハブに配置された付勢部と、を有している。摩擦体は、摩擦材が円筒体の内周面に対向するように軸と円筒体との間に配置されている。円筒ハブは、軸と一体回転可能なように当該軸に支持されていると共に摩擦体を一体回転可能なように当該摩擦体に接続されている。付勢部は、摩擦材が円筒体の内周面に当接するように摩擦体を径方向外方に付勢可能である。
【0020】
本形態によれば、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、摩擦体の摩擦材と円筒体の内周面との間に生じる摩擦力によって、軸および円筒体を一体回転させると共に、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、摩擦体の摩擦材と円筒体の内周面との間ですべりを生じさせることによって、軸および円筒体を相対回転させることができるため、軸と円筒体との接続および接続の解除を簡易な構成で実現することができる。
【0021】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、付勢部は、円筒ハブの外周に配置された弾性体である。
【0022】
本形態によれば、付勢部を簡易な構成で実現することができる。
【0023】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、付勢部は、流体路と、少なくとも一つの第1径方向貫通孔と、少なくとも一つの第2径方向貫通孔と、流体送給源と、を有している。流体路は、軸の軸線方向に延在するように当該軸の内部に配置されている。第1径方向貫通孔は、摩擦体の内周面に対向して開口すると共に軸を流体路まで貫通している。第2径方向貫通孔は、円筒ハブを径方向に貫通すると共に第1径方向貫通孔に連通している。流体送給源は、流体路に流体を送給可能なように流体路に接続されている。
【0024】
本形態によれば、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、摩擦体の内周面に流体圧を作用させることによって、軸および円筒体を一体回転させると共に、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、摩擦体の内周面に流体圧を作用させないことによって、軸および円筒体を相対回転させることができる。このように、第2状態のときには、軸と円筒体との接続を完全に解除することができるため、弾性円筒体の周方向における周速差をより良好に吸収することができる。これにより、単板による引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超えることをより一層良好に抑制することができる。この結果、弾性円筒体の耐久性の低下をより一層抑制することができる。
【0025】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、円筒体は、軸の軸線方向への移動が規制された状態で当該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有している。弾性円筒体は、第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有している。摩擦体は、軸と第1円筒体との間に配置された第1摩擦体と、軸と第2円筒体との間に配置された第2摩擦体と、を有している。円筒ハブは、軸と第1摩擦体との間に配置された第1円筒ハブと、軸と前記第2摩擦体との間に配置された第2円筒ハブと、を有している。付勢部は、第1摩擦体を径方向外方に付勢可能に少なくとも一部が第1円筒ハブに配置された第1付勢部と、第2摩擦体を径方向外方に付勢可能に少なくとも一部が第2円筒ハブに配置された第2付勢部と、を有している。
【0026】
本形態によれば、弾性円筒体を含む円筒体が、軸の軸線方向に複数直列に配置されるため、単板のうち節などを有する部分と接触する弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)、あるいは、夾雑部を噛み込んだ弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)を軸に対して相対回転させ、それ以外の弾性円筒体を有する円筒体(第1円筒体および第2円筒体の他方)を軸と一体回転させることが可能となるため、弾性円筒体の耐久性の低下を抑制しながらも単板の脱水を行うことができる。
【0027】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、円筒体は、軸の軸線方向を向く面に配置された円弧溝を有している。そして、接続部は、軸と一体回転可能に当該軸に支持された円板と、円弧溝内に配置された付勢部と、を有している。円板は、円弧溝に係合可能なように軸の軸線方向に延出する突起を有している。付勢部は、突起を介して円板を軸の回転方向に付勢可能である。
【0028】
本形態によれば、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、付勢部による突起を介した軸の回転方向への円板の付勢によって、軸および円筒体を一体回転させると共に、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、円弧溝の周方向長さの範囲で円板および円筒体、即ち軸および円筒体を相対回転させることができるため、軸と円筒体との接続および接続の解除を簡易な構成で実現することができる。
【0029】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、円筒体は、軸の軸線方向への移動が規制された状態で該軸の軸線方向に直列に配置された少なくとも第1および第2円筒体を有している。弾性円筒体は、第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体を有している。円弧溝は、第1円筒体に配置された第1円弧溝と、当該第1円弧溝と対向するように第2円筒体に配置された第2円弧溝と、を有している。突起は、第1円弧溝に係合可能なように軸の軸線方向に延出する第1突起と、第2円弧溝に係合可能なように軸の軸線方向であって第1突起とは反対方向に延出する第2突起と、を有している。そして、付勢部は、第1突起を介して円板を軸の回転方向に付勢可能に第1円弧溝内に配置された第1付勢部と、第2突起を介して円板を軸の回転方向に付勢可能に第2円弧溝内に配置された第2付勢部と、を有している。
【0030】
本形態によれば、弾性円筒体を含む円筒体が、軸の軸線方向に複数直列に配置されるため、単板のうち節などを有する部分と接触する弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)、あるいは、夾雑部を噛み込んだ弾性円筒体を含む円筒体のみ(第1円筒体および第2円筒体の一方のみ)を軸に対して相対回転させ、それ以外の弾性円筒体を有する円筒体(第1円筒体および第2円筒体の他方)を軸と一体回転させることが可能となるため、弾性円筒体の耐久性の低下を抑制しながらも単板の脱水を行うことができる。また、二つの円筒体(第1円筒体および第2円筒体)に対して円板が1枚で良いため、二つの円筒体(第1円筒体および第2円筒体)に対して円板を2枚用いる構成に比べて部品点数の低減を図ることができると共に、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
本発明に係る単板の脱水装置の更なる形態によれば、第1および第2ロールのそれぞれは、少なくとも第1および第2円筒体と、当該第1および第2円筒体それぞれの外周に一体に配置された第1および第2弾性円筒体と、を有している。第1および第2ロールそれぞれの第1および第2弾性円筒体は、当該第1および第2弾性円筒体の軸線を通る仮想平面で切った断面であって第1および第2弾性円筒体の軸線に関して一方の側に配置された片側断面が略Z字状を有している。そして、第1および第2ロールは、第1ロールの第1および第2弾性円筒体の仮想平面上における第1投影と、第2ロールの第1および第2弾性円筒体の仮想平面上における第2投影と、が当該仮想平面上における所定点に関して点対称の関係となるように配置されている。
【0032】
本形態によれば、単板が第1および第2ロール間を通過する際に、第1および第2ロールそれぞれの第1および第2弾性円筒体が、軸の軸線方向に直交する方向に対して傾斜した方向へ変形する(撓む)ため、第1および第2弾性円筒体の変形方向と同方向に単板を圧縮することができる。これにより、単板を当該単板の表裏面に直交する方向に圧縮する構成に比べて、単板の放射組織の塑性変形を伴う座屈や亀裂の発生を抑制することができる。なお、第1ロールの第1および第2弾性円筒体と、第2ロールの第1および第2弾性円筒体と、は、軸の軸線方向において互いに反対方向に向かって変形する(撓む)ため、単板の放射組織を略菱形筒状となるように変形させることができる。これにより、単板の放射組織の塑性変形を伴う座屈や亀裂の発生をより一層抑制することができる。
【0033】
また、従来は、軸の軸線方向に直交する方向に対して傾斜する複数条の溝を弾性円筒体に設けることで、単板を当該弾性円筒体の変形方向と同方向に変形させる構成であったが、当該複数条の溝の溝幅が大きいと、単板が第1および第2ロール間を通過する際に、単板の溝への食い込み、所謂むしれが発生する場合があったが、本形態によれば、第1および第2ロールそれぞれの第1および第2弾性円筒体の片側断面を略Z字状としたため、第1および第2弾性円筒体間の軸線方向の隙間を、弾性円筒体に複数条の溝を設ける従来の構成に比べて小さくすることができる。これにより、第1および第2弾性円筒体の変形のし易さ(撓み易さ)を犠牲にすることなく、第1および第2弾性円筒体間の軸線方向の隙間に単板が食い込む、所謂むしれの発生を良好に防止することができる。
【0034】
本発明に係る単板の脱水方法の好ましい形態によれば、単板の含有水分を脱水する単板の脱水方法が構成される。当該単板の脱水方法は、フレームと、当該フレームに回転可能に支持された第1ロールと、フレームに回転可能に支持された第2ロールと、第1および第2ロールの少なくとも一方を回転駆動可能な回転駆動部と、を備える脱水装置を用いて単板を脱水する。ここで、第2ロールは、第1ロールに対して単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置において、第1ロールに平行に配置されている。また、少なくとも回転駆動部によって駆動される第1および第2ロールは、フレームに回転可能に支持された軸と、軸の外周に該軸の軸線と同軸に配置された円筒体と、弾性を有すると共に円筒体の外周に一体かつ軸の軸線と同軸に配置された弾性円筒体と、を有している。そして、当該単板の脱水方法は、弾性円筒体と単板との接触状態が第1状態のときには、軸および円筒体が一体回転可能なように軸および円筒体を接続し、弾性円筒体と単板との接触状態が第2状態のときには、軸および円筒体が相対回転可能なように軸および円筒体の接続を解除することによって、単板の含有水分を脱水する。ここで、第2ロールが第1ロールに対して単板の板厚よりも小さい距離を隔てた位置に配置されるとは、典型的には、第1ロールの外周面と第2ロールの外周面とが最も接近した部分の外周面間の距離が単板の板厚よりも小さい距離となるように第2ロールを配置する態様がこれに該当する。また、第1状態とは、典型的には、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態がこれに該当する。第1状態では、弾性円筒体の圧縮変形が比較的小さく、弾性円筒体の外周面における周速差が比較的小さいため、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的小さく抑えられる。また、第2状態とは、典型的には、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態がこれに該当する。第2状態では、弾性円筒体の圧縮変形が第1状態に比べて大きくなり、弾性円筒体の外周面における周速差が第1状態よりも大きくなるため、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が第1状態よりも大きくなる。
【0035】
本発明によれば、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態のように、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的小さい状態のときには、軸および円筒体を一体回転させることで、第1および第2ロールによって単板を良好に搬送することができると共に、第1および第2ロールによって単板を良好に圧縮することができる。これにより、単板の良好な脱水を実現することができる。一方、弾性円筒体が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する状態や、弾性円筒体と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態のように、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が比較的大きい状態のとき、具体的には、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超えるようなきには、軸および円筒体を相対回転させることで、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形を抑制することができる。これにより、単板の引張力に起因する弾性円筒体の変形が弾性領域を超えることを良好に抑制することができる。この結果、弾性円筒体の破損や弾性円筒体の耐久性の低下を良好に抑制できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、単板の脱水装置において、第1ロールや第2ロールが有する弾性円筒体の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施の形態に係る単板の脱水装置1の構成の概略を示す斜視図である。
【
図3】上側ロール4(下側ロール6)のうちの一部を示す斜視図である。
【
図4】上側ロール4(下側ロール6)を回転軸20の軸線を通る仮想平面で切った断面を示す断面図である。
【
図5】回転軸20を当該回転軸20の軸線に直交する仮想平面で切った断面を示す断面図である。
【
図6】小幅ロール22(小幅ロール24)の平面図である。
【
図8】
図7の矢印W部分を拡大して示す要部拡大図である。
【
図9】上側ロール4および下側ロール6の配置関係を示す説明図である。
【
図13】小幅ロール22,24とクラッチ30の配置関係を示す説明図である。
【
図14】弾性円筒体46の変形の様子を示す説明図である。
【
図15】脱水前と脱水中における単板の小口面の様子(放射組織の変形の様子)を示す説明図である。
【
図16】変形例の単板の脱水装置100の構成を示す説明図である。
【
図19】小幅ロール122の外観を示す斜視図である。
【
図20】変形例の単板の脱水装置200の構成を示す説明図である。
【
図21】小幅ロール222にクラッチ230を配置した様子を示す説明図である。
【
図25】小幅ロール222にクラッチ230を組み付ける様子を示す説明図である。
【
図26】変形例の単板の脱水装置300の構成を示す説明図である。
【
図27】小幅ロール322にクラッチ330を配置した様子を示す説明図である。
【
図28】クラッチ330が配置された小幅ロール322を示す平面図である。
【
図29】軸内流路320b、径方向流路320cおよび段付き孔333の接続関係を示す説明図である。
【
図30】ブレーキシュー334をハブ332に組み付ける様子を示す説明図である。
【
図31】変形例の単板の脱水装置400の構成を示す説明図である。
【
図38】小幅ロール422,424とクラッチ430の配置関係を示す説明図である。
【
図39】小幅ロール422,424と回転軸20,20とが相対回転した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0039】
本発明の実施の形態に係る単板の脱水装置1は、
図1および
図2に示すように、フレーム2と、当該フレームに回転可能に支持された上側ロール4および下側ロール6と、上側ロール4を回転駆動可能なモータM1と、下側ロールを回転駆動可能なモータM2と、を備えている。単板の脱水装置1は、上側ロール4および下側ロール6間に単板を通過させることで、当該単板の含有水分を機械的に脱水する。モータM1,M2は、本発明における「回転駆動部」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
フレーム2は、
図2示すように、基台2aと、当該基台2aに立設された一対の支持壁2b,2cと、を有している。フレーム2は、正面視略U字状を有している。支持壁2b,2cは、軸受(図示せず)を介して上側ロール4および下側ロール6それぞれの後述する回転軸20,20を回転可能に支持する。
【0041】
上側ロール4および下側ロール6は、
図1および
図2に示すように、軸線(後述する回転軸20,20)が互いに平行となるように一対の支持壁2b,2cに支持されている。また、上側ロール4および下側ロール6は、
図2に示すように、外周面同士が最も接近した箇所における当該外周面間の距離Dminが単板の板厚tよりも小さくなるように(Dmin<t)配置されている。
【0042】
上側ロール4および下側ロール6は、基本的に同一の構成を有しているため、以下、上側ロール4を中心に説明する。上側ロール4は、
図2ないし
図4に示すように、回転軸20と、当該回転軸20に支持された複数の小幅ロール22,24,・・・,22,24と、複数のクラッチ30,30,・・・,30(
図4参照)と、回転軸20の軸線方向の両端に配置された一対のストッパー26,26と、から構成されている。上側ロール4および下側ロール6は、それぞれ本発明における「第1ロール」および「第2ロール」に対応し、クラッチ30は、本発明における「接続部」に対応する実施構成の一例である。また、ストッパー26は、本発明における「接続部」および「押付部」に対応する実施構成の一例である。
【0043】
回転軸20は、
図2に示すように、軸線方向の一端においてモータM1(下側ロール6の回転軸20ではモータM2)の図示しない回転軸に接続されている。回転軸20は、
図5に示すように、外周面に二条の溝20a,20aを有している。当該溝20a,20aは、回転軸20の周方向に均等に配置されている。また、溝20a,20aは、回転軸20の軸線方向に延在している。なお、モータM1,M2は、上側ロール4の回転軸20の回転方向と下側ロール6の回転軸20の回転方向とが逆方向となるように駆動制御される。回転軸20は、本発明における「軸」に対応する実施構成の一例である。
【0044】
小幅ロール22,24は、
図2ないし
図4に示すように、回転軸20の軸線方向(
図2ないし
図4の左右方向)に直列に配置されている。小幅ロール22,24は、
図4に示すように、後述する凹部41a,41b(
図7も併せて参照)の開口方向が異なる点を除いて、基本的に同一の構成を有している。したがって、以下、小幅ロール22を中心に説明する。なお、凹部41aは、
図4において、右方向に開口しているのに対して、凹部41bは、
図4において、左方向に開口している。小幅ロール22,24は、
図4および
図13に示すように、クラッチ30を介して凹部41a,41bが対向するように配置される。
【0045】
小幅ロール22は、
図4、
図6および
図7に示すように、回転軸20の軸線と同軸に当該回転軸20の外周面に配置された金属製の円筒体40と、回転軸20の軸線と同軸となるように円筒体40の外周面に一体にされた弾性円筒体46と、を有している。
【0046】
円筒体40は、
図6および
図7に示すように、軸挿通孔40aと、凹部41a(小幅ロール24では凹部41b)と、を有している。軸挿通孔40aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい内径を有している。凹部41a(凹部41b)は、正面視(
図6)において軸挿通孔40aと同心円状である。また、凹部41a(凹部41b)は、クラッチ30の後述する摩擦板34,34の板厚よりも若干大きい深さを有している。凹部41aは、軸線方向(
図4、
図7および
図10の左右方向)の一方の方向(
図4、
図7および
図10の右方向)に開口している。一方、凹部41bは、凹部41aとは反対方向、即ち、軸線方向(
図4、
図7および
図10の左右方向)の他方の方向(
図4、
図7および
図10の左方向)に開口している。ここで、小幅ロール22の円筒体40および小幅ロール24の円筒体40は、それぞれ本発明における「第1円筒体」および「第2円筒体」に対応する実施構成の一例である。
【0047】
弾性円筒体46は、ウレタンなどの弾性を有する素材により構成されている。弾性円筒体46は、
図7および
図8に示すように、弾性円筒体46の軸線CL(
図6参照)を通る仮想平面VP(
図6参照)で切った断面(
図7参照)であって、弾性円筒体46の軸線CLに関して一方の側(
図7では下側)に配置された片側断面が略Z字状を有している。ここで、
図9に示すように、上側ロール4では、弾性円筒体46は、軸線CLに関して下側に配置された片側断面が略Z字状となるように、円筒体40に一体にされる。一方、下側ロール6では、弾性円筒体46は、軸線CLに関して上側に配置された片側断面が略Z字状となるように、円筒体40に一体にされる。換言すれば、上側ロール4および下側ロール6は、仮想平面VP上における上側ロール4の投影と、仮想平面VP上における下側ロール6の投影と、が当該仮想平面VP上における所定点Cpに関して点対称の関係となるよう配置されていると言うことができる。なお、所定点Cpは、
図9に示すように、仮想平面VP上における上側ロール4の投影と下側ロール6の投影との間に配置され、かつ、上側ロール4の投影および下側ロール6の投影それぞれから等距離にある点であって、軸線CLの延在方向において中央に配置される点として規定される。小幅ロール22の円筒体40に一体にされた弾性円筒体46および小幅ロール24の円筒体40に一体にされた弾性円筒体46は、それぞれ本発明における「第1弾性円筒体」および「第2弾性円筒体」に対応する実施構成の一例である。
【0048】
クラッチ30は、
図10に示すように、一枚のディスク32と、当該ディスク32を挟むように配置される二枚の摩擦板34,34と、を有している。ディスク32は、
図11に示すように、中央に軸挿通孔32aを有する金属製の円板である。軸挿通孔32aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい直径を有している。また、ディスク32は、一対の突出片32b,32bを有している。突出片32b,32bは、ディスク32の内周面(軸挿通孔32a)から軸挿通孔32aの中心に向かって突出している。突出片32b,32bは、軸挿通孔32aの周方向に均等に配置されている。摩擦板34は、
図12に示すように、凹部41aの内径と同じか若干小さい外径を有すると共に中央に孔34aを有する円板である。孔34aは、軸挿通孔32aの直径よりも大きい直径を有している。また、摩擦板34,34は、
図13に示すように、それぞれディスク32の軸線方向の両側に配置される。本実施の形態では、摩擦板34,34は、予めディスク32に貼り付ける構成とした。このように、ディスク32と摩擦板34,34とを一体にすることで、組み付け性の向上を図ることができる。ディスク32は、本発明における「円板」、「第1円板」および「第2円板」に対応する実施構成の一例である。また、摩擦板34は、本発明における「第1摩擦板」および「第2摩擦板」に対応する実施構成の一例である。
【0049】
こうして構成されたクラッチ30は、
図13に示すように、小幅ロール22の円筒体40の凹部41aと、小幅ロール24の円筒体40の凹部41bと、の間に配置される。即ち、二枚の摩擦板34,34のうち一方の摩擦板34が凹部41a側に配置され、ディスク32を介して他方の摩擦板34が凹部41bに配置される。ここで、摩擦板34,34は、凹部41aおよび凹部41bと摩擦接触するため、小幅ロール22,24と一体回転可能である。換言すれば、小幅ロール22,24は、クラッチ30を介して回転軸20と一体回転可能であると言うことができる。このように、本実施の形態では、一組の小幅ロール22,24に対してクラッチ30が一つで良いため、小幅ロール22,24それぞれに対してクラッチ30を用いる構成に比べて部品点数の低減を図ることができる。なお、クラッチ30の厚み方向寸法tc(ディスク32の厚みと二枚の摩擦板34,34の厚みとを足した寸法)は、凹部41a,41bそれぞれの深さdprの二倍よりも若干大きくなるように設定されている(tc>2・dpr)。
【0050】
次に、こうして構成された単板の脱水装置1の組み付け方について説明する。まず、上側ロール4および下側ロール6を組み付ける。上側ロール4および下側ロール6の組み付けは、まず、凹部41a,41b間にクラッチ30を配置した小幅ロール22,24を一組とする(
図13参照)複数の小幅ロール22,24,・・・,22,24を、回転軸20,20に配置する(
図2参照)。このとき、ディスク32,32の突出片32b,32bが、回転軸20,20の各溝20a,20aに係合される。これにより、ディスク32,32が回転軸20,20と一体回転可能となる。続いて、各クラッチ30に所定の軸線方向押圧力が作用するように、回転軸20,20それぞれの軸線方向の両側から小幅ロール22,24,・・・,22,24を挟み込むようにしてストッパー26,26を回転軸20,20に固定する(
図2参照)。これにより、上側ロール4および下側ロール6の組み付けが完了する。そして、こうして組み付けられた上側ロール4および下側ロール6を、回転軸20,20を介してフレーム2に回転可能に支持すると共に、各回転軸20,20にモータM1,M2を接続することにより、単板の脱水装置1の組み付けが完了する。
【0051】
なお、上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する際や、上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態で,上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46が単板と接触する際(以下、「第1状態」という。)における単板の引張力(単板と上側ロール4および下側ロール6(各弾性円筒体46)との間の摩擦力)よりも、各円筒体40,40と各摩擦板34,34との間に生じる摩擦力が大きくなるよう、かつ、上側ロール4および下側ロール6(各弾性円筒体46)が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する際や、上側ロール4および下側ロール6(各弾性円筒体46)と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態で,上側ロール4および下側ロール6が単板と接触する際(以下、「第2状態」という。)における単板の引張力(単板と上側ロール4および下側ロール6(各弾性円筒体46)との間の摩擦力)よりも、各円筒体40,40と各摩擦板34,34との間に生じる摩擦力が小さくなるように、各円筒体40,40および各摩擦板34,34の当接面の表面粗さや、厚み方向寸法tcと深さdprとの関係、ストッパー26,26による上述した軸線方向押圧力の値が適宜設定(調整)されている。上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する状態、あるいは、上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46と単板との間にゴミなどの夾雑物が介在していない状態は、本発明における「第1状態」に対応する実施構成の一例である。また、上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46が,単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する状態、あるいは、上側ロール4および下側ロール6の各弾性円筒体46と単板との間にゴミなどの夾雑物が介在している状態は、本発明における「第2状態」に対応する実施構成の一例である。
【0052】
次に、上述した構成の単板の脱水装置1の動作について説明する。まず、モータM1およびモータM2を駆動させて、上側ロール4および下側ロール6を互いに反対方向に回転させる。続いて、互いに反対方向に回転している上側ロール4および下側ロール6間に単板を通す。これにより、単板は、上側ロール4および下側ロール6によって圧縮されながら、上側ロール4および下側ロール6の回転方向に搬送される。
【0053】
ここで、上側ロール4および下側ロール6それぞれの小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24のうち第1状態にある各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24は、各クラッチ30によって各回転軸20,20に接続されている。これにより、第1状態にある各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24は、各回転軸20,20と一体回転される。この結果、第1状態にある各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24によって、単板がほぼ均等に圧縮されるため、単板の含有水分を良好に除去することができる。
【0054】
一方、上側ロール4および下側ロール6それぞれの小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24のうち第2状態にある各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24は、各クラッチ30,30,・・・,30による各回転軸20,20との接続が解除されて、各回転軸20,20と相対回転される。これにより、第2状態にある各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24の各弾性円筒体46,46の単板の引張力に起因する変形が、弾性領域を超えるような大きさになることが良好に抑制され得る。この結果、各弾性円筒体46,46の破損や各弾性円筒体46,46の耐久性の低下を良好に抑制できる。なお、単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が通過した後や、ゴミなどの夾雑物が通過した後は、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24が、クラッチ30,30,・・・,30によって各回転軸20,20と再び接続されて一体回転するため、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24における単板の搬送機能は復活する。
【0055】
ここで、本実施の形態では、各弾性円筒体46,46が片側断面において略Z字状を有する構成であるため、単板が上側ロール4および下側ロール6それぞれの弾性円筒体46,46間を通過する際に、
図14に示すように、各弾性円筒体46,46が軸線CL(
図6参照)に直交する方向に対して傾斜した方向へ変形し易い(撓み易い)。これにより、単板は、弾性円筒体46,46の変形方向と同方向に圧縮される。この結果、単板を当該単板の表裏面に直交する方向に圧縮する構成に比べて、単板の放射組織Rtや細胞壁Cwの塑性変形を伴う座屈や亀裂の発生を抑制することができる。なお、上側ロール4の弾性円筒体46と、下側ロールの弾性円筒体46と、は、軸線CL方向において互いに反対方向に向かって変形する(撓む)ため、
図15に示すように、単板の放射組織Rtや細胞壁Cwを略菱形筒状となるように変形させることができる。これにより、単板の放射組織Rtを傾斜(曲げを含むが弾性領域内の曲率)させるように変形させると共に細胞壁Cwの塑性変形を伴う座屈や亀裂の発生をより一層抑制することができる。
【0056】
また、各弾性円筒体46,46の片側断面が略Z字状であるため、各小幅ロール22,24,22,24,・・・,22,24それぞれの弾性円筒体46,46間の軸線CL(
図6参照)方向の隙間を、弾性円筒体に複数条の溝を設ける従来の構成に比べて小さくすることができる。これにより、各弾性円筒体46,46の変形のし易さ(撓み易さ)を犠牲にすることなく、各弾性円筒体46,46間の軸線方向の隙間に単板が食い込む、所謂むしれの発生を良好に防止することができる。
【0057】
本実施の形態では、小幅ロール22の凹部41aと小幅ロール24の凹部41bとの間にクラッチ30を配置する構成、即ち、一組の小幅ロール22,24に対してクラッチ30を一つ配置する構成としたが、これに限らない。例えば、
図16に例示する変形例の単板の脱水装置100に示すように、各小幅ロール122にクラッチ30を一つずつ配置する構成としても良い。
【0058】
変形例の単板の脱水装置100は、上側ロール4および下側ロール6を上側ロール104および下側ロール106に替えた点を除いて、本実施の形態の単板の脱水装置1と同一の構成を有している。したがって、本実施の形態の単板の脱水装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は重複するため省略する。
【0059】
上側ロール104および下側ロール106は、
図16に示すように、それぞれ回転軸20と、当該回転軸20に支持された複数の小幅ロール122,122,・・・,122と、複数のクラッチ30,30,・・・,30と、を備えている。上側ロール104および下側ロール106は、それぞれ本発明における「第1ロール」および「第2ロール」に対応する実施構成の一例である。
【0060】
小幅ロール122は、
図16および
図17に示すように、回転軸20の軸線と同軸に当該回転軸20の外周面に配置された金属製の円筒体140と、当該円筒体140に取り付けられるカバー142と、回転軸20の軸線と同軸となるように円筒体140の外周面に一体にされた弾性円筒体46と、を有している。
【0061】
円筒体140は、
図17および
図18に示すように、軸挿通孔40aと、凹部141aと、当該凹部141aに連続する凹部141bと、を有している。凹部141a,141bは、正面視(
図17)において軸挿通孔40aと同心円状である。また、凹部141aは、摩擦板34の外径と同じか若干小さい内径を有すると共に、クラッチ30の厚み方向寸法tc(ディスク32の厚みと二枚の摩擦板34,34の厚みとを足した寸法)よりも若干小さい深さdprを有している。凹部141bは、後述するカバー142の外径および板厚とほぼ同じ大きさの内径および深さを有している。回転軸20の軸線方向に直列に複数配置された複数の小幅ロール122,122,・・・,122の各円筒体140,140,・・・,140は、本発明における「第1円筒体」および「第2円筒体」に対応する実施構成の一例である。
【0062】
カバー142は、
図19に示すように、凹部141bの内径とほぼ同じ大きさの外径を有すると共にディスク32の軸挿通孔32aとほぼ同じ大きさの内径を有する金属製の円板である。軸挿通孔32aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい直径を有している。凹部141b内にクラッチ30が配置された状態で、カバー142を凹部141bに取り付けることにより、摩擦板34,34が圧縮されながら円筒体141およびカバー142に押し付けられる。これにより、クラッチ30に所定の軸線方向押圧力が作用する。なお、凹部141b内にクラッチ30が配置された際に、摩擦板34,34は、凹部141aおよびカバー142と摩擦接触するため、摩擦板34,34と小幅ロール122とが一体回転可能となる。カバー142は、本発明における「押付部」に対応する実施構成の一例である。また、各小幅ロール122,122,・・・,122に配置される各ディスク32,32,・・・,32の軸線方向の一方側(例えば、
図16における左側)に配置される摩擦板34,34,・・・,34は、本発明における「第3摩擦板」および「第5摩擦板」に対応し、各小幅ロール122,122,・・・,122に配置される各ディスク32,32,・・・,32の軸線方向の他方側(例えば、
図16における右側)に配置される摩擦板34,34,・・・,34は、本発明における「第4摩擦板」および「第6摩擦板」に対応する実施構成の一例である。
【0063】
こうして構成された複数の小幅ロール122を回転軸20,20に配置することで、
図16に示すように、上側ロール104および下側ロール106が構成される。なお、複数の小幅ロール122が回転軸20,20に配置される際に、ディスク32,32の突出片32b,32bが、回転軸20,20の各溝20a,20aに係合されるため、ディスク32,32と回転軸20,20とが一体回転可能となる。
【0064】
こうして構成された変形例の上側ロール104および下側ロール106を備える単板の脱水装置においても、上述した本実施の形態の単板の脱水装置1と同様の作用効果を奏する。具体的には、上側ロール104および下側ロール106それぞれの小幅ロール122,122,・・・,122のうち第1状態にある各小幅ロール122,122,・・・,122は、各クラッチ30,30,・・・,30によって各回転軸20,20に接続されて、各小幅ロール122,122,・・・,122が各回転軸20,20と一体回転されるため、これら各小幅ロール122,122,・・・,122によって、単板をほぼ均等に圧縮することができる。これにより、単板の含有水分を良好に除去することができる。
【0065】
一方、上側ロール104および下側ロール106それぞれの小幅ロール122,122,・・・,122のうち第2状態にある各小幅ロール122,122,・・・,122は、各クラッチ30,30,・・・,30による各回転軸20,20との接続が解除されて、各回転軸20,20と相対回転される。これにより、第2状態にある小幅ロール122,122,・・・,122の各弾性円筒体46,46の変形が、弾性領域を超えるような大きさになることが良好に抑制され得る。この結果、各弾性円筒体46,46の破損や各弾性円筒体46,46の耐久性の低下を良好に抑制できる。なお、単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が通過した後や、ゴミなどの夾雑物が通過した後は、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール122,122,・・・,122が、クラッチ30,30,・・・,30によって各回転軸20,20と再び接続されて一体回転するため、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール122,122,・・・,122における単板の搬送機能および脱水機能は復活する。
【0066】
本実施の形態および上述した変形例では、クラッチ30の厚み方向寸法tcを、凹部41a,41bそれぞれの深さdprの二倍よりも若干大きくなるように設定すると共に、回転軸20,20それぞれの軸線方向の両側から小幅ロール22,24,・・・,22,24を挟み込むようにストッパー26,26を回転軸20,20に固定すること、あるいは、クラッチ30の厚み方向寸法tcを、凹部141aの深さdprよりも若干大きくなるように設定すると共に、凹部141bにカバー142を取り付けることによって、各クラッチ30,30,・・・,30に所定の軸線方向押圧力を作用させる構成としたが、これに限らない。例えば、皿バネなどの弾性部材によって、各クラッチ30,30,・・・,30に所定の軸線方向押圧力を作用させる構成としても良い。この場合、クラッチ30の厚み方向寸法tcを、凹部41a,41bそれぞれの深さdprの二倍よりも小さくなるように設定すると共に、摩擦板34と凹部41aとの間および摩擦板34と凹部41bとの間の少なくとも一方に皿バネなどの弾性部材を配置する構成、あるいは、クラッチ30の厚み方向寸法tcを、凹部141aの深さdprよりも小さくなるように設定すると共に、摩擦板34と凹部141aとの間および摩擦板34とカバー142との間の少なくとも一方に皿バネなどの弾性部材を配置する構成とすることができる。ここで、皿バネは、本発明における「接続部」および「押付部」に対応する実施構成の一例である。
【0067】
本実施の形態および上述した変形例では、摩擦板34,34をディスク32に貼り付ける構成としたが、摩擦板34,34をディスク32に貼り付けない構成としても良い。
【0068】
本実施の形態および上述した変形例では、摩擦板34,34を円筒体40,140(凹部41a,41b,141a)に直接当接させる構成としたが、これに限らない。例えば、当接プレート介して摩擦板34,34を円筒体40,140(凹部41a,41b,141a)に当接させる構成としても良い。当該構成によれば、摩擦板34,34との摩擦接触によって、円筒体40,140(凹部41a,41b,141a)が摩耗することを防止できる。これにより、円筒体40,140(凹部41a,41b,141a)自体を交換する必要がなくなり、当接プレートのみを交換すれば良いため、経済的である。
【0069】
本実施の形態および上述した変形例では、ディスク32および一対の摩擦板34,34を有するクラッチ30によって、小幅ロール22,24,122と各回転軸20,20とを接続および小幅ロール22,24,122と各回転軸20,20との接続の解除を行う構成としたが、これに限らない。例えば、
図20に例示する変形例の単板の脱水装置200に示すように、クラッチ230によって、小幅ロール222と各回転軸20,20とを接続および接続の解除を行う構成としても良い。
【0070】
変形例の単板の脱水装置200は、上側ロール104および下側ロール106を上側ロール204および下側ロール206に替えた点を除いて、上述した変形例の単板の脱水装置100と同一の構成を有している。したがって、変形例の単板の脱水装置100と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は重複するため省略する。
【0071】
上側ロール204および下側ロール206は、
図20に示すように、それぞれ回転軸20と、当該回転軸20に支持された複数の小幅ロール222,222,・・・,222と、複数のクラッチ230,230,・・・,230と、を備えている。上側ロール204および下側ロール206は、それぞれ本発明における「第1ロール」および「第2ロール」に対応する実施構成の一例である。
【0072】
小幅ロール222は、
図20および
図21に示すように、回転軸20の軸線と同軸に当該回転軸20の外周面に配置された金属製の円筒体240と、当該円筒体240に取り付けられるカバー242(
図21参照)と、回転軸20の軸線と同軸となるように円筒体240の外周面に一体にされた弾性円筒体46と、を有している。
【0073】
円筒体240は、
図22および
図23に示すように、軸挿通孔40aと、凹部241aと、当該凹部241aに連続する凹部241bと、を有している。凹部241a,241bは、正面視(
図22)において軸挿通孔40aと同心円状である。また、凹部241aは、
図25に示すように、クラッチ230の厚み方向寸法tcと同じか若干大きい深さdprを有している。凹部241bは、後述するカバー242の外径および板厚とほぼ同じ大きさの内径および深さを有している。回転軸20の軸線方向に直列に複数配置された複数の小幅ロール222,222,・・・,222の各円筒体240,240,・・・,240は、本発明における「第1円筒体」および「第2円筒体」に対応する実施構成の一例である。
【0074】
カバー242は、
図21に示すように、凹部241bの内径および深さとほぼ同じ大きさの外径および板厚を有すると共に、クラッチ230の後述する軸挿通孔232a(
図24参照)とほぼ同じ大きさの内径を有する金属製の円板である。
【0075】
クラッチ230は、
図24に示すように、円筒状のハブ232と、三つのコイルスプリングSPR1,SPR1,SPR1を介して当該ハブ232に接続された二つのブレーキシュー234,234と、を備えている。ハブ232は、回転軸20を挿通可能な軸挿通孔232aを有している。軸挿通孔232aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい直径を有している。また、軸挿通孔232aは、一対の溝232b,232bを有している。当該六つのコイルスプリングSPR1,SPR1,SPR1は、ハブ232と一体回転可能なように当該ハブ232に接続されている。ブレーキシュー234は、凹部241aの内径とほぼ同じか若干小さい外径を有しており、外周面に摩擦材234aが一体に貼り付けられている。ブレーキシュー234の内周面には、三つのコイルスプリングSPR1,SPR1,SPR1が接続されている。これにより、ブレーキシュー234,234は、それぞれ三つのコイルスプリングSPR1,SPR1,SPR1を介してハブ232と一体回転可能となっている。なお、コイルスプリングSPR1は、ハブ232の外周面に周方向に均等に六つ配置されている。ここで、コイルスプリングSPR1の数は三つに限らず、二つ以下でも良く、また、四つ以上でも良いのは言うまでもない。また、コイルスプリングSPR1は、ハブ232の外周面に周方向に均等に配置されていなくても良い。クラッチ230は、本発明における「接続部」に対応し、コイルスプリングSPR1は、本発明における「接続部」、「付勢部」、「第1付勢部」、「第2付勢部」および「弾性体」に対応する実施構成の一例である。また、ハブ232は、本発明における「円筒ハブ」、「第1円筒ハブ」および「第2円筒ハブ」に対応する実施構成の一例である。
【0076】
また、コイルスプリングSPR1は、クラッチ230が円筒体240の凹部241a内に配置された際に、ブレーキシュー234,234を所定の押圧力での凹部241aの周面に押し付け可能な諸元(コイルスプリングSPR1の線径や、自由長さ、有効巻き数、ピッチ、バネ定数など)を有している。具体的には、上側ロール204および下側ロール206が単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が存在しない部分と接触する際に生じる変形抵抗や、上側ロール204および下側ロール206と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んでいない状態で,上側ロール204および下側ロール206が単板と接触する際に生じる変形抵抗よりも、所定の押圧力によってブレーキシュー234,234と円筒体240との間に生じる摩擦力が大きくなるよう、かつ、上側ロール204および下側ロール206が単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分と接触する際に生じる変形抵抗や、上側ロール204および下側ロール206と単板との間にゴミなどの夾雑物を噛み込んだ状態で,上側ロール204および下側ロール206が単板と接触する際に生じる変形抵抗よりも、所定の押圧力によってブレーキシュー234,234と円筒体240との間に生じる摩擦力が小さくなるように、コイルスプリングSPR1の諸元が適宜設定(調整)されている。なお、円筒体240の凹部241a内にクラッチ230が配置された状態の小幅ロール322を回転軸20に配置する際に、
図24に示すように、回転軸20の溝20a,20aと,ハブ232の溝232b,232bと,を周方向に整合させると共に、整合した溝20a,20aおよび溝232b,232bに図示しないキーなどを嵌合する。これにより、各回転軸20,20とクラッチ230,230,・・・,230とが一体回転可能となる。
【0077】
こうして構成された変形例の単板の脱水装置200においても、上述した本実施の形態の単板の脱水装置1と同様の作用効果を奏することができる。具体的には、上側ロール204および下側ロール206それぞれの小幅ロール222,222,・・・,222のうち第1状態にある小幅ロール222,222,・・・,222は、各クラッチ230,230,・・・,230によって各回転軸20,20に接続されて、各小幅ロール222,222,・・・,222が各回転軸20,20と一体回転されるため、これら各小幅ロール222,222,・・・,222によって、単板をほぼ均等に圧縮することができる。これにより、単板の含有水分を良好に除去することができる。
【0078】
一方、上側ロール204および下側ロール206それぞれの小幅ロール222,222,・・・,222のうち第2状態にある各小幅ロール222,222,・・・,222は、各クラッチ230,230,・・・,230による各回転軸20,20との接続が解除されて、単各回転軸20,20と相対回転される。これにより、第2状態にある各小幅ロール222,222,・・・,222の各弾性円筒体46,46の変形が、弾性領域を超えるような大きさになることが良好に抑制され得る。この結果、各弾性円筒体46,46の破損や各弾性円筒体46,46の耐久性の低下を良好に抑制できる。なお、単板のうち節などのように他の部分に比べて圧縮強度が極めて高い部分が通過した後や、ゴミなどの夾雑物が通過した後は、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール222,122,・・・,222が、クラッチ230,230,・・・,230によって各回転軸20,20と再び接続されて一体回転するため、各回転軸20,20と相対回転していた小幅ロール222,222,・・・,222における単板の搬送機能および脱水機能は復活する。
【0079】
上述した変形例の単板の脱水装置200では、コイルスプリングSPR1によってブレーキシュー234を円筒体240凹部241aの周面に押圧する構成としたが、これに限らない。例えば、
図26に例示する変形例の単板の脱水装置300に示すように、流体圧を用いてブレーキシュー334を円筒体240の凹部241aの周面に押圧する構成としても良い。
【0080】
変形例の単板の脱水装置300は、上側ロール204および下側ロール206を上側ロール304および下側ロール306に替えた点およびポンプPを追加した点を除いて、上述した変形例の単板の脱水装置200と同一の構成を有している。したがって、変形例の単板の脱水装置200と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は重複するため省略する。
【0081】
上側ロール304および下側ロール306は、
図26に示すように、それぞれ回転軸320と、当該回転軸320に支持された複数の小幅ロール322,322,・・・,322と、複数のクラッチ330,330,・・・,330と、を備えている。上側ロール304および下側ロール306は、それぞれ本発明における「第1ロール」および「第2ロール」に対応する実施構成の一例である。また、回転軸320は、本発明における「軸」に対応する実施構成の一例である。
【0082】
上側ロール304の回転軸320および下側ロール306の回転軸320は、それぞれモータM1,M2(
図1および
図2参照)に接続されている。また、各回転軸320,320は、
図28に示すように、外周面に配置された二条の溝20a,20aと、軸線方向に延在する軸内流路320bと、当該軸内流路320bを径方向に貫通する径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cと、を有している。溝20a,20aは、回転軸320,320の周方向に均等に配置されていると共に、回転軸320の軸線方向に延在している。軸内流路320bは、
図26に示すように、流体圧を供給可能なポンプPの図示しない吐出口に配管90を介して接続されている。径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cは、
図26に示すように、回転軸320,320の周方向に均等に六つ配置されていると共に、回転軸320の軸線方向に所定の間隔をもって複数配置されている。なお、所定の間隔は、小幅ロール322,322,・・・,322の配置間隔、より具体的には、クラッチ330,330,・・・,330の後述する各段付き孔333,333,・・・,333間の距離と等しい値に設定されている。
【0083】
小幅ロール322は、
図26および
図27に示すように、回転軸320の軸線と同軸に当該回転軸320の外周面に配置された金属製の円筒体240と、当該円筒体240に取り付けられるカバー242(
図27参照)と、回転軸320の軸線と同軸となるように円筒体240の外周面に一体にされた弾性円筒体46と、を有している。
【0084】
クラッチ330は、
図28に示すように、円筒状のハブ332と、当該ハブ332の外周に配置された六つのブレーキシュー334,334,334,334,334,334と、を備えている。なお、ブレーキシュー334の数は六つに限らず、五つ以下でも良く、あるいは、七つ以上でも良いのは言うまでもない。
【0085】
ハブ332は、
図29に示すように、回転軸320を挿通可能な軸挿通孔332aと、径方向に貫通する六つの段付き孔333,333,333,333,333,333と、を有している。軸挿通孔332aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい直径を有している。また、軸挿通孔332aは、一対の溝332b,332bを有している。各段付き孔333,333,333,333,333,333は、径方向外方に向かって開口された大径孔333a,333a,333a,333a,333a,333aと、径方向内方に向かって開口された小径孔333b,333b,333b,333b,333b,333bと、を有している。小径孔333b,333b,333b,333b,333b,333bは、回転軸320の径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cの直径とほぼ同じ大きさの直径を有している。段付き孔333,333,333,333,333,333は、ハブ332の周方向に均等に配置されている。ハブ332は、本発明における「円筒ハブ」、「第1円筒ハブ」および「第2円筒ハブ」に対応する実施構成の一例である。また、段付き孔333は、本発明における「付勢部」、「第1付勢部」、「第2付勢部」および「第2径方向貫通孔」に対応する実施構成の一例である。
【0086】
ブレーキシュー334は、
図30に示すように、外周面に摩擦材334aが貼り付けられると共に、内周面に円柱状の突起334bを有している。突起334bは、段付き孔333の大径孔333aの内径とほぼ同じ大きさの外径を有している。ブレーキシュー334は、本発明における「摩擦体」、「第1摩擦体」および「第2摩擦体」に対応する実施構成の一例である。
【0087】
こうして構成されたクラッチ330は、
図30に示すように、突起334b,334b,334b,334b,334b,334bそれぞれが各大径孔333a,333a,333a,333a,333a,333aに挿入された状態で、円筒体240の凹部241a内に配置される。そして、凹部241a内にクラッチ330が配置された状態の小幅ロール322を回転軸320に配置する際に、
図28に示すように、回転軸20の溝20a,20aと,ハブ332の溝332b,332bと,を周方向に整合させると共に、整合した溝20a,20aおよび溝332b,332bに図示しないキーなどを嵌合する。これにより、各回転軸20,20とクラッチ330,330,・・・,330とが一体回転可能となる。
【0088】
なお、複数の小幅ロール322,322,・・・,322は、
図26に示すように、各クラッチ330,330,・・・,330の段付き孔333,333,・・・,333が、各回転軸320,320の径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cと軸線方向において整合するように、各回転軸320,320に配置される。また、回転軸320の溝20a,20aと,ハブ232の溝232b,232bと,を周方向に整合させた際に、
図29および
図30に示すように、回転軸320の径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cと,ハブ332の小径孔333b,333b,333b,333b,333b,333bと,が周方向に整合される。即ち、径方向流路320c,320c,320c,320c,320c,320cと,小径孔333b,333b,333b,333b,333b,333bと,が連通接続される。クラッチ330、軸内流路320bおよび径方向流路320cは、本発明における「接続部」に対応する実施構成の一例である。また、軸内流路320bは、本発明における「付勢部」および「流体路」に対応し、径方向流路320cは、本発明における「付勢部」、「第1付勢部」、「第2付勢部」および「第1径方向貫通孔」に対応する実施構成の一例である。
【0089】
こうして組付けられた変形例の単板の脱水装置300では、運転が開始されるとポンプPが駆動され、配管90,軸内流路320b,径方向流路320c,320c,・・・,320cおよび段付き孔333,333,・・・,333を介して各小幅ロール322,322,・・・,322のブレーキシュー334,334,・・・,334に流体圧が作用する。これにより、各ブレーキシュー334,334,・・・,334(摩擦材334a,334a,・・・,334a)が各小幅ロール322,322,・・・,322の凹部241a,241a,・・・,241aの周面に所定の押圧力で押圧される。ここで、第1状態における単板の引張力(単板と上側ロール304および下側ロール306(各弾性円筒体46)との間の摩擦力)よりも、所定の押圧力によってブレーキシュー334と円筒体240との間に生じる摩擦力が大きくなるよう、かつ、上第2状態における単板の引張力(単板と上側ロール304および下側ロール306(各弾性円筒体46)との間の摩擦力)よりも、所定の押圧力によってブレーキシュー334と円筒体240との間に生じる摩擦力が小さくなるように、ポンプPの吐出圧が制御される。
【0090】
こうして構成された変形例の単板の脱水装置300においても、上述した本実施の形態に係る単板の脱水装置1や変形例の単板の脱水装置100,200と同様の作用効果を奏することができる。なお、小幅ロール322,322,・・・,322それぞれの段付き孔333,333,・・・,333への流体の供給および供給の停止を各別に実施可能な弁を備える構成とすることもできる。当該構成によれば、各小幅ロール322,322,・・・,322の各回転軸320,320への接続および接続の解除を小幅ロール322,322,・・・,322毎に自在(意図的)に実施することができる。また、ブレーキシュー334,334,・・・,344による押圧力も小幅ロール322,322,・・・,322毎に自在(意図的)に実施することができる。これにより、単板の節および夾雑物の数や大きさ、硬など、あるいは、単板の樹種や厚さに良好に対応することができる。
【0091】
本実施の形態に係る単板の脱水装置1および上述した変形例の単板の脱水装置100,200,300では、摩擦式のクラッチ30,230,330によって、回転軸20,20,320,320と、小幅ロール22,122,222,322と、の接続および接続の解除を行う構成としたが、これに限らない。例えば、
図31に例示する単板の脱水装置400に示すように、回転式のクラッチ430によって、回転軸20と、小幅ロール422と、の接続および接続の解除を行う構成としても良い。
【0092】
変形例の単板の脱水装置400は、上側ロール4および下側ロール6を上側ロール404および下側ロール406に替えた点を除いて、上述した本実施の形態に係る単板の脱水装置1と同一の構成を有している。したがって、本実施の形態に係る単板の脱水装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は重複するため省略する。
【0093】
上側ロール404および下側ロール406は、
図31に示すように、それぞれ回転軸20と、当該回転軸20に支持された複数の小幅ロール422,424,・・・,422,424と、複数のクラッチ430,430,・・・,430と、を備えている。上側ロール404および下側ロール406は、それぞれ本発明における「第1ロール」および「第2ロール」に対応する実施構成の一例である。
【0094】
小幅ロール422,424は、
図32ないし
図35に示すように、後述する凹部441a,441bおよび円弧溝443a,443a,443a,443a,443b,443b,443b,443bの開口方向が異なる点を除いて、基本的に同一の構成を有している。したがって、以下、小幅ロール422を中心に説明する。なお、凹部441aおよび円弧溝443a,443a,443a,443aは、
図31および
図33において、右方向に開口しているのに対して、凹部441bおよび円弧溝443b,443b,443b,443bは、
図31および
図35において、左方向に開口している。なお、小幅ロール422,424は、
図31に示すように、クラッチ430を介して凹部441a,441bが対向するように配置される。
【0095】
小幅ロール422は、
図31に示すように、回転軸20の軸線と同軸に当該回転軸20の外周面に配置された金属製の円筒体440と、回転軸20の軸線と同軸となるように円筒体440の外周面に一体にされた弾性円筒体46と、を有している。
【0096】
円筒体440は、
図32ないし
図35に示すように、軸挿通孔40aと、凹部441a(小幅ロール424では凹部441b)と、四つの円弧溝443a,443a,443a,443a(小幅ロール424では四つの円弧溝443b,443b,443b,443b)と、を有している。回転軸20の軸線方向に直列に複数配置された複数の小幅ロール422,424,・・・,422,424の各円筒体440,440,・・・,440,440は、本発明における「第1円筒体」および「第2円筒体」に対応する実施構成の一例である。また、円弧溝443a,443bは、それぞれ本発明における「第1円弧溝」および「第2円弧溝」に対応する実施構成の一例である。
【0097】
凹部441a(凹部441b)は、正面視(
図32)において軸挿通孔40aと同心円状である。また、凹部441a(凹部441b)は、クラッチ430の後述する円板432の厚み方向寸法よりも小さい深さを有している。円弧溝443a,443a,443a,443a(小幅ロール424では四つの円弧溝443b,443b,443b,443b)は、
図32および
図34に示すように、凹部441a(凹部441b)の径方向の略中央の位置において、周方向に均等に配置されている。また、円弧溝443a,443a,443a,443a(小幅ロール424では四つの円弧溝443b,443b,443b,443b)は、回転軸20,20の回転方向(
図32および
図34における矢印の方向)に向かって前側の周方向端部に円弧面を有している一方、回転軸20,20の回転方向(
図32および
図34における矢印の方向)に向かって後側の周方向端部に平坦面を有している。ここで、円弧面は、クラッチ430の後述するピン435a,435bの直径と同じか若干大きい直径を有している。なお、本変形例では、円弧溝443aは、回転軸20,20の回転方向(
図32および
図34における矢印の方向)に向かって後側の周方向端部に平坦面を有する構成としたが、これに限らない。例えば、円弧溝443aは、回転軸20,20の回転方向(
図32および
図34における矢印の方向)に向かって後側の周方向端部に、後述するコイルスプリングSPR2の外径とほぼ同じ大きさの内径を有する孔(コイルスプリングSPR2が嵌合可能な孔)を有する構成や、コイルスプリングSPR2の内径とほぼ同じ大きさの外径を有するピンが立設される構成としても良い。
【0098】
クラッチ430は、
図36および
図37に示すように、表裏両面に突出状に配置されたピン435a,435a,435a,435a,435b,435b,435b,435bを有する金属製の円板432と、各ピン435a,435a,435a,435a,435b,435b,435b,435bに当接するように配置されるコイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2と、を有している。クラッチ430は、本発明における「接続部」に対応する実施構成の一例である。また、円板432は、本発明における「第1円板」および「第2円板」に対応する実施構成の一例である。さらに、ピン435a,435bは、それぞれ本発明における「突起」に対応し、ピン435aは、発明における「第1突起」に対応し、ピン435bは、本発明における「第2突起」に対応する実施構成の一例である。また、コイルスプリングSPR2は、本発明における「付勢部」、「第1付勢部」および「第2付勢部」に対応する実施構成の一例である。
【0099】
円板432は、
図36に示すように、中央に軸挿通孔432aを有している。当該軸挿通孔432aは、回転軸20の外径と同じか若干大きい直径を有している。また、円板432は、一対の突出片432b,432bを有している。突出片432b,432bは、円板432の内周面(軸挿通孔432a)から軸挿通孔432aの中心に向かって突出している。突出片432b,432bは、軸挿通孔432aの周方向に均等に配置されている。なお、ピン435a,435a,435a,435aおよびピン435b,435b,435b,435bは、互いに周方向の同じ位置となるよう当該周方向に均等に配置されている。
【0100】
こうして構成されたクラッチ430は、
図38に示すように、小幅ロール422,424間に配置される。具体的には、小幅ロール422の円筒体440の凹部441aと、小幅ロール424の円筒体440の凹部441bと、によって構成される空間内に配置される。このとき、
図32および
図34に示すように、四つのピン435a,435a,435a,435aおよび四つのコイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2は、凹部441aの円弧溝443a,443a,443a,443a内に収容され、四つのピン435b,435b,435b,435bおよび四つのコイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2は、凹部441bの円弧溝443b,443b,443b,443b内に収容される。なお、ピン435a,435a,435a,435aおよびピン435b,435b,435b,435bは、円弧溝443a,443a,443a,443aおよび円弧溝443b,443b,443b,443bの円弧面側に配置され、コイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR,SPR,SPR,SPRは、円弧溝443a,443a,443a,443aおよび円弧溝443b,443b,443b,443bの平坦面側に配置される。これにより、ピン435a,435a,435a,435aおよびピン435b,435b,435b,435bは、円弧溝443a,443a,443a,443aおよび円弧溝443b,443b,443b,443b内において、それぞれコイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2によって付勢され、円弧面側に押圧された状態となる。
【0101】
なお、変形例の単板の脱水装置400では、
図31に示すように、凹部441a,441b間にクラッチ430を配置した小幅ロール422,424を一組として、複数の小幅ロール422,424,・・・,422,424が回転軸20,20に配置される。このとき、クラッチ430の円板432,432の突出片432b,432bが、回転軸20,20の各溝20a,20aに係合されるため、クラッチ430が円板432を介して回転軸20,20と一体回転可能となる。
【0102】
次に、こうして構成の単板の脱水装置400の動作について説明する。上側ロール404および下側ロール406それぞれの小幅ロール422,424,・・・,422,424のうち第1状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424は、コイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2によって、ピン435a,435a,435a,435aおよびピン435b,435b,435b,435bが、円弧溝443a,443a,443a,443aおよび円弧溝443b,443b,443b,443bの円弧面側に押圧されて、上側ロール404および下側ロール406それぞれの小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424が、各クラッチ430,430,・・・,430によって各回転軸20,20と接続された状態となる。これにより、第1状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424が各回転軸20,20と一体回転される。この結果、第1状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424によって、単板がほぼ均等に圧縮されるため、単板の含有水分を良好に除去することができる。
【0103】
一方、上側ロール404および下側ロール406それぞれの小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424のうち第2状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424は、単板から当該単板の搬送方向に向かって引っ張られて、当該第2状態にある小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424が、
図39に示すように、コイルスプリングSPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2,SPR2を圧縮しながら、ピン435a,435a,435a,435aおよびピン435b,435b,435b,435bよりも先行して回転する。
【0104】
これにより、第2状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424は、各クラッチ430,430,・・・,430による各回転軸20,20との接続が解除されて、各回転軸20,20と相対回転される。この結果、単第2状態にある各小幅ロール422,424,422,424,・・・,422,424の各弾性円筒体46,46に、弾性領域を超えるような大きな変形が発生することはなく、各弾性円筒体46,46の破損や各弾性円筒体46,46の耐久性の低下を良好に抑制できる。
【0105】
なお、変形例の単板の脱水装置400では、小幅ロール422,424に周速差が発生次第、クラッチ430が作動するため、本実施の形態に係る単板の脱水装置1および上述した変形例の単板の脱水装置100,200,300における摩擦式のクラッチ30,230,330に比べて、小幅ロール422,424の弾性円筒体46,46への負担を小さくすることができる。
【0106】
本実施の形態および上述した変形例では、上側ロール4,104,204,304,404をモータM1によって回転駆動すると共に、下側ロール6,106,206,306,406をモータM2によって回転駆動する構成としたが、これに限らない。例えば、モータM1によって側ロール4,104,204,304,404のみを回転駆動する構成や、モータM2によって下側ロール6,106,206,306,406のみを回転駆動する構成としても良い。この場合、チェーンなどを用いて、モータM1またはモータM2の動力を、モータM1またはモータM2が接続されていないロール(上側ロール4,104,204,304,404または下側ロール6,106,206,306,406)に伝達する構成としても良い。なお、モータM1やモータM2によって回転駆動される(チェーンを介した回転駆動を含む)上側ロール4,104,204,304,404や下側ロール6,106,206,306,406に本発明を適用することができる。換言すれば、モータM1やモータM2によって回転駆動されない(チェーンを介した回転駆動を含む)上側ロール4,104,204,304,404や下側ロール6,106,206,306,406においては、クラッチ30,230,330,430は不要であると言うことができる。
【0107】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。