(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000880
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20231226BHJP
B60C 9/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C9/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099853
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA39
3D131BA07
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC03
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC44
3D131BC51
3D131BC55
3D131CA03
3D131DA09
3D131DA17
3D131DA34
3D131DA54
3D131EA04Y
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB42X
3D131EB42Y
3D131GA19
3D131HA01
3D131HA15
3D131HA33
3D131HA38
3D131HA45
(57)【要約】
【課題】製造上の手間が増えることなく空気抵抗の低減が図られる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア11及びビードフィラー12を含むビード部材16を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されたカーカスプライ50と、を備えた空気入りタイヤであって、カーカスプライ50の引張り強度が250N以上420N以下であり、規定リムに装着し、かつ、規定内圧をかけた状態でのタイヤ幅方向断面において、ビード部材16のタイヤ径方向長さが、タイヤ断面高さの20%以上25%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア及びビードフィラーを含むビード部材を有する一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記一対のビードの間に架け渡されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、
前記カーカスプライの引張り強度が250N以上420N以下であり、
規定リムに装着し、かつ、規定内圧をかけた状態でのタイヤ幅方向断面において、前記ビード部材のタイヤ径方向長さが、タイヤ断面高さの20%以上25%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスプライは、少なくとも互いに重ねられる2枚を備える複数層構造である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に空気入りタイヤは、タイヤ幅方向の両端内周部に配置される一対のビードの間にカーカスプライを架け渡した骨格構造を、トレッドゴムやサイドウォールゴム等で被覆した構造を有する。従来、サイドウォールゴムで構成されるタイヤの側面に、タイヤ周方向に沿って複数のフィン状の突起を配置することにより、空気抵抗の低減を図った空気入りタイヤが知られている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-49954号公報
【特許文献2】特許第6690642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、空気入りタイヤは金型で成形される。したがって、従来形状のタイヤの側面にフィン状の突起を形成するには新たな金型が必要となるが、その場合には工程の複雑化や製造コストの上昇を招くおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、製造上の手間が増えることなく空気抵抗の低減が図られる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコア及びビードフィラーを含むビード部材を有する一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記一対のビードの間に架け渡されたカーカスプライと、を備えた空気入りタイヤであって、前記カーカスプライの引張り強度が250N以上420N以下であり、規定リムに装着し、かつ、規定内圧をかけた状態でのタイヤ幅方向断面において、前記ビード部材のタイヤ径方向長さが、タイヤ断面高さの20%以上25%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造上の手間が増えることなく空気抵抗の低減が図られる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示している。
図2は、
図1のIIで示す部分の拡大図であって、後述するショルダー40の部分を主に示す断面図である。
図1の断面図は、タイヤ1を図示せぬ規定リムに装着し、かつ、規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0010】
実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態に係るタイヤ1は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用として採用することができる。
【0011】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。
図1は、タイヤ1の右半分の半断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。
図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつ、タイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0012】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示している。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては紙面右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては紙面下側である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のサイドウォール20のそれぞれとトレッド30との間に配置された一対のショルダー40と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ50と、カーカスプライ50のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー60と、を備えている。
【0015】
一対のビード10は、タイヤ幅方向両側、かつ、タイヤ径方向内側の端部に配置されている。ビード10は、ビード部材16と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、リムプロテクタ15と、を有している。
【0016】
ビード部材16は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、を含んでいる。ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードコア11のタイヤ径方向外側の面にビードフィラー12のタイヤ径方向内側の面が例えば接着剤等を用いて接合されることにより、ビード部材16が構成される。
【0017】
チェーハー13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲んで設けられるカーカスプライ50の外側をさらに囲んでいる。リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ50のタイヤ幅方向外側に配置されている。チェーハー13及びリムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムの内面に接触する。
【0018】
サイドウォール20は、カーカスプライ50のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含んでいる。サイドウォールゴム21は、タイヤ1のタイヤ周方向外側の側面を構成する。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側端部21cは、リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側端部14bを覆っている。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0019】
サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側端は、タイヤ周方向に沿った頂部21aを含んでいる。この頂部21aと、上述したリムストリップゴム14の外表面とにより、外傷からリムを保護するリムプロテクタ15が構成されている。このリムプロテクタ15は、タイヤ周方向に環状に連続している。
【0020】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ35と、トレッドゴム36と、を備えている。ベルト31は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ35は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0021】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト32と、内側ベルト32のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト33と、を備えた2層構造である。内側ベルト32及び外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0022】
内側ベルト32は、外側ベルト33よりも幅広である。したがって、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32aは、外側ベルト33のタイヤ幅方向外端33aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0023】
キャッププライ35は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ35は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ35のタイヤ幅方向外側端部35aは、タイヤ径方向外側から内側に折り畳まれて2重になっている。キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35bは、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。キャッププライ35は、ベルト31全体を1枚で覆う幅広の部材である。
【0024】
実施形態のキャッププライ35は1層であるが、2層以上の構造であってもよい。キャッププライ35を設けることにより、耐久性の向上や、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0025】
トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、走行時に路面と接地するトレッド30の外面である踏面36aを構成する部材である。トレッドゴム36の踏面36aには、トレッドパターン37が設けられている。
【0026】
トレッドパターン37は、複数の主溝38と、複数のスリット39と、を含む。実施形態の複数の主溝38は、タイヤ幅方向内側に配置された2本の第1主溝38Aと、これら第1主溝38Aよりもタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置された2本の第2主溝38Bと、を含む。第1主溝38A及び第2主溝38Bは、いずれもタイヤ周方向に沿って環状に形成されている。スリット39は、タイヤ幅方向に略沿って延びる細い溝であり、第2主溝38Bよりもタイヤ幅方向外側に配置されている。スリット39は、トレッド30の踏面36aのタイヤ幅方向外側の端部から、後述するショルダー40の外面にわたって形成されている。
【0027】
トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側端部36bは、キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35bを越えてタイヤ径方向内側に延び、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端部21bを覆っている。
【0028】
ショルダー40は、サイドウォール20からトレッド30へ移行する領域に配置されている。ショルダー40は、ショルダーゴム41を含んでいる。ショルダーゴム41は、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端部21bの外面の一部と、トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側端部36bの外面とを覆っている。
【0029】
カーカスプライ50は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ50は、一対のビード10の間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30のタイヤ内腔側を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0030】
カーカスプライ50は、タイヤ1の骨格となる複数の図示せぬプライコードを含んでいる。複数のプライコードは、例えばタイヤ幅方向に沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のプライコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ50が構成されている。
【0031】
カーカスプライ50は、プライ本体部51と、プライ折り返し部52と、屈曲部53と、を有する。プライ本体部51は、一方のビードコア11のタイヤ幅方向内側から、一方のサイドウォール20、トレッド30及び他方のサイドウォール20を経て、他方のビードコア11のタイヤ幅方向内側まで延在する部分である。プライ折り返し部52は、プライ本体部51のタイヤ径方向内端からビードコア11周りに折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている部分である。屈曲部53は、プライ本体部51からビードコア11周りにU字状に屈曲し、プライ折り返し部52につながる部分である。プライ本体部51とプライ折り返し部52とは、屈曲部53を介して連続している。
【0032】
プライ本体部51は、タイヤ径方向内側においてビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置されている。プライ折り返し部52は、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。屈曲部53は、カーカスプライ50においてタイヤ径方向の最も内側の部分を含んでいる。
【0033】
実施形態のカーカスプライ50は、第1カーカスプライ55及び第2カーカスプライ56が重ねられた2層構造を有している。プライ本体部51においては、第1カーカスプライ55が第2カーカスプライ56のタイヤ内腔側に配置される。
【0034】
プライ折り返し部52においては、第1カーカスプライ55が第2カーカスプライ56のタイヤ幅方向外側に配置されている。プライ折り返し部52の第1カーカスプライ55は、屈曲部53からサイドウォール20の外面におけるタイヤ最大幅位置H付近まで延びている。すなわち、第1カーカスプライ55の折り返し端55aは、タイヤ最大幅位置H付近に位置している。プライ折り返し部52の第2カーカスプライ56は、屈曲部53からビードフィラー12の途中まで延びている。すなわち、第2カーカスプライ56の折り返し端56aは、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に位置している。
【0035】
ビードフィラー12のタイヤ径方向外側には、スチール部材による補強層であるサイド補強層70が配置されている。このサイド補強層70は、ビードフィラー12と、カーカスプライ50のプライ折り返し部52との間に挟まれており、さらに、ビードフィラー12からタイヤ径方向外側に延びている。サイド補強層70のビードフィラー12からタイヤ径方向外側に延びている部分は、プライ本体部51の第2カーカスプライ56と、プライ折り返し部52の第1カーカスプライ55とに挟まれている。プライ折り返し部52の第1カーカスプライ55のタイヤ径方向外側端部55bは、プライ本体部51の第2カーカスプライ56に重ね合わされている。
【0036】
実施形態のカーカスプライ50は2層構造であるが、カーカスプライ50は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。カーカスプライ50が2層、あるいはそれ以上の層構造のプライにより構成されると、タイヤ1がリムの装着部付近で局所的に変形することが十分に抑制されるので好ましい。
【0037】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部53を含むカーカスプライ50のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、カーカスプライ50のプライ折り返し部52及びチェーハー13の、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側端部14bは、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側端部21cで覆われている。
【0038】
インナーライナー60は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー60は、トレッド30及びトレッド30からサイドウォール20にわたる領域では、プライ本体部51の内面を覆っている。また、インナーライナー60は、サイドウォール20からビード10にわたる領域では、プライ本体部51及びチェーハー13の内面を覆っている。したがってインナーライナー60は、タイヤ1の内壁面を構成する。インナーライナー60は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0039】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21及びインナーライナー60よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253に準拠して、23℃雰囲気において、タイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。
【0040】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。リムストリップゴム14の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍以上1.6倍以下程度がより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。
【0041】
以上が実施形態に係るタイヤ1の基本構成である。次いで、カーカスプライ50及びビード部材16の特徴的な構成について説明する。
【0042】
第1カーカスプライ55と第2カーカスプライ56とを含む2層構造の実施形態に係るカーカスプライ50は、その引張り強度が、250N以上420N以下である。すなわち、第1カーカスプライ55と第2カーカスプライ56とを合わせたカーカスプライ50全体の引張り強度が、250N以上420N以下である。例えば、第1カーカスプライ55及び第2カーカスプライ56が同一品種のものであって、それぞれの引張り強度が132Nであった場合、カーカスプライ50としての引張り強度は「132N×2」の264Nとなる。カーカスプライ50の引張り強度のほとんどはプライコードの引張り強度に依存するため、カーカスプライ50が当該の引張り強度を有するためには、プライコードの引張り強度及び本数を適宜調整することで達成される。
【0043】
カーカスプライが1枚からなる1層構造の場合と比べると、実施形態のカーカスプライ50のように2枚のカーカスプライ(第1カーカスプライ55と第2カーカスプライ56)による2層構造であると、プライコードの引張り強度を上げることなく、カーカスプライ50を所望の引張り強度にすることができる。したがって、引張り強度のより高いプライコードを用いて1枚のカーカスプライを用いる場合よりも、2層構造とすることで、簡便にカーカスプライ50を所望の引張り強度を備えた構成とすることができる。
【0044】
カーカスプライ50の引張り強度が、例えば200N程度である場合と比べて、250N以上420N以下といったように比較的引張り強度が高い場合、カーカスプライ50による拘束作用により、ショルダー40が内圧で外方に拡張することが抑制される。
【0045】
図2に示すように、ショルダー40が内圧で外方に拡張することが抑制されることにより、ショルダー傾斜角θが比較的大きくなる。このショルダー傾斜角θは、タイヤ幅方向と平行なタイヤ回転軸に対するショルダー40の外表面40aのなす角度であって、ショルダー40の外表面40aに沿った線L1と、タイヤ幅方向に沿った線L2とがなすタイヤ幅方向内側の角度である。このようにショルダー40の拡張が抑えられたタイヤ断面形状により、走行時においてショルダー40から後方に流れる空気の滞留が抑制されやすくなる。これにより、Cd値(空気抵抗値)の低減が図られる。
【0046】
ビード部材16においては、
図1に示すように、実施形態のタイヤ1を規定リムに装着し、かつ、規定内圧をかけた状態でのタイヤ幅方向断面において、ビード部材16の高さすなわちタイヤ径方向長さH2は、タイヤ断面高さH1の20%以上25%以下である。ビード部材16のタイヤ径方向長さH2は、ビードコア11のタイヤ径方向内端11aと、ビードフィラー12のタイヤ径方向外端12aとの間のタイヤ径方向における距離である。
【0047】
ビード部材16のタイヤ径方向長さH2が、タイヤ断面高さH1の例えば30%程度である場合と比べると、20%以上25%以下とすることにより、ビード部材16の重量が低減する。ビード部材16の重量低減はタイヤ1全体の軽量化につながり、これによって転がり抵抗が低減する。
【0048】
実施形態のタイヤ1によれば、カーカスプライ50の引張り強度を250N以上420N以下とすることにより、Cd値の低減が図られる。なお、カーカスプライ50を引張り強度が向上したものとすると、カーカスプライ50の重量が増大に伴いタイヤ1の重量が増大し、転がり抵抗の増大を招く可能性がある。しかし、実施形態のタイヤ1は、ビード部材16のタイヤ径方向長さH2をタイヤ断面高さH1の20%以上25%以下と比較的小さくして重量を低減することにより、転がり抵抗の増大を抑制することができる。すなわち、Cd値の低減と転がり抵抗の抑制を両立することができる。Cd値の低減は、カーカスプライ50の引張り強度を増大させることにより可能であり、例えば従来のようにタイヤ側面に複数のフィン状の突起を形成する場合よりも、製造上の手間はかからない。したがって、実施形態のタイヤ1によれば、製造上の手間が増えることなく、かつ、転がり抵抗が抑制されながら、空気抵抗を低減させることができる。なお、実用上問題ない程度の横剛性を有するタイヤとする上では、タイヤ断面高さH1に対するビード部材16のタイヤ径方向長さH2の比率が、20%以上を確保されていることが好ましい。
【0049】
以上説明した実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0050】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11及びビードフィラー12を含むビード部材16を有する一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されたカーカスプライ50と、を備え、カーカスプライ50の引張り強度が250N以上420N以下であり、規定リムに装着し、かつ、規定内圧をかけた状態でのタイヤ幅方向断面において、ビード部材16のタイヤ径方向長さH2が、タイヤ断面高さH1の20%以上25%以下である。
【0051】
これにより、実施形態に係るタイヤ1は、製造上の手間が増えることなく空気抵抗の低減が図られる。空気抵抗の低減により起こり得る転がり抵抗の増大は、ビード部材16のタイヤ径方向長さH2をタイヤ断面高さH1の20%以上25%以下としてビード部材16を軽量化することにより補完することができるため、空気抵抗の低減と転がり抵抗の抑制を両立することができる。
【0052】
(2)実施形態のタイヤ1においては、カーカスプライ50は、少なくとも互いに重ねられる2枚を備える複数層構造であることが好ましい。
【0053】
これにより、簡便にカーカスプライ50を所望の引張り強度を備えた構成とすることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0055】
以下、実施例について説明する。表1に示すように、カーカスプライの引張り強度を264Nまたは412N、ビード部材の高さ(タイヤ径方向長さ)をタイヤ断面高さの20.2%、23.4%、25%のいずれかとした実施例1~4のタイヤを、シミュレーションモデルにより評価した。表1のカーカスプライ強度は、カーカスプライの引張り強度である。実施例1~4のカーカスプライは、いずれも2層構造とした。一方、カーカスプライの引張り強度は250N以上420N以下の範囲内であるものの、ビード部材の高さがタイヤ断面高さの28.3%である比較例2および比較例3と、カーカスプライの引張り強度が132N、ビード部材の高さがタイヤ断面高さの28.3%である従来タイプの比較例1のタイヤを、シミュレーションモデルにより評価した。比較例2および比較例3のカーカスプライは、2層構造とした。比較例1のカーカスプライは、1層構造である。なお、実施例1~4及び比較例1~3のタイヤのサイズは、いずれも「225/55R19 99V」であり、かつ、上記実施形態と同様の基本構成を有する。また、ビード部材の高さは、タイヤを規定リムに装着し、空気圧230kPaとした状態での数値である。
【0056】
【0057】
実施例1~4及び比較例1~3のタイヤにつき、横剛性、Cd値及び転がり抵抗係数をシミュレーション測定した。測定にあたっては、タイヤが備えるロードインデックスにおける最大負荷荷重の69%の負荷を与えたものとして行った。
【0058】
これらの結果を表1に示す。なお、表1では、従来タイプの比較例1の各値を指数100とし、比較例2、3及び実施例1~4のタイヤを指数評価している。Cd値は、指数評価が小さいほど空気抵抗が低減しており、良好であると判定される。また、転がり抵抗係数は、指数評価が小さいほど転がり抵抗が小さく、良好であると判定される。また、横剛性は、指数評価が高いほど、良好であると判定される。
【0059】
表1によれば、カーカスプライの引張り強度をしだいに大きくした比較例1~3により、カーカスプライの引張り強度が大きくなるにしたがってCd値が低減することが認められる。しかし、タイヤ断面高さに対するビード部材の高さの比率(ビード部材高さ比率)が28.3%と比較的大きいため、転がり抵抗は大きくなることが認められる。これら比較例に対し、実施例1~4は、Cd値に関してはいずれも低減しており、カーカスプライの引張り強度が本発明範囲内であることにより空気抵抗が低減する。また、ビード部材高さ比率は本発明範囲内であって比較例2、3と比べて低いことから、これら比較例2、3よりも転がり抵抗は低いものとなっており、ビード部材高さ比率の低減により転がり抵抗の上昇を抑制できることが判る。なお、ビード部材高さ比率の低減は横剛性の低減を招来する可能性があるが、実施例1のようにビード部材高さ比率が20%を確保できていれば大幅に低減せず、実用的に許容されるものとなっている。