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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088034
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】成形用材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240625BHJP
   C08K 7/08 20060101ALI20240625BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240625BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K7/08
C08L1/02
C08L67/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202982
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智博
(72)【発明者】
【氏名】横川 忍
(72)【発明者】
【氏名】中島 智枝子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 聖明
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01Y
4J002CF03W
4J002CF18X
4J002FA04Y
4J002FD01Y
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD180
4J002GG00
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】成形品の強度を向上させる成形用材料を提供すること。
【解決手段】成形用材料は、ポリエステル系エラストマーと、高極性ポリエステルと、セルロース繊維と、を含み、ポリエステル系エラストマーの含有量は、高極性ポリエステルの含有量に対して25質量%以上であり、ポリエステル系エラストマーと高極性ポリエステルとの合計の含有量は、セルロース繊維の含有量以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系エラストマーと、高極性ポリエステルと、セルロース繊維と、を含み、
前記ポリエステル系エラストマーの含有量は、前記高極性ポリエステルの含有量に対して25質量%以上であり、
前記ポリエステル系エラストマーと前記高極性ポリエステルとの合計の含有量は、前記セルロース繊維の含有量以下である成形用材料。
【請求項2】
前記ポリエステル系エラストマーの含有量は、前記高極性ポリエステルの含有量に対して、400質量%以下である、請求項1に記載の成形用材料。
【請求項3】
前記ポリエステル系エラストマーは、原料モノマーとして、アルキレン基の炭素数が2以上8以下のアルキルジカルボン酸またはフタル酸と、アルキレン基の炭素数が2以上8以下のアルキレンジオールとを含む、請求項2に記載の成形用材料。
【請求項4】
前記ポリエステル系エラストマーは、前記原料モノマーに加えてその他の原料モノマーを含み、
前記その他の原料モノマーは、スチレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アセトニトリル、イソブチレン、イソプレン、およびエチレンのうちの1種以上である、請求項3に記載の成形用材料。
【請求項5】
前記高極性ポリエステルは、原料モノマー由来の繰り返し構造において、炭素数が2に対して酸素数が1以上である、請求項3に記載の成形用材料。
【請求項6】
前記高極性ポリエステルは、ポリ乳酸およびポリヒドロキシ酪酸のうちの1種以上を含む、請求項5に記載の成形用材料。
【請求項7】
前記セルロース繊維の平均繊維長は、500μm未満である、請求項1に記載の成形用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維および樹脂などを含む成形用材料が知られていた。例えば、特許文献1には、セルロース繊維、オレフィン系樹脂などの主剤樹脂、およびゴム含有ポリマーを含むセルロース複合樹脂が開示されている。上記のゴム含有ポリマーは、特定の官能基のみを有する脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素などから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-33541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のセルロース複合樹脂では、セルロース繊維を増量すると、成形品の強度を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、セルロース繊維には古紙などから回収したものが活用可能である。また近年、環境負荷低減の観点から成形用材料中のセルロース繊維を増量して、合成樹脂の使用量を低減する動きもある。そのため、セルロース繊維の増量によって衝撃強さと曲げ強さとの両立がままならなくなり、成形品に変形や割れなどが生じ易くなる場合があった。すなわち、成形品の強度を向上させる成形用材料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
成形用材料は、ポリエステル系エラストマーと、高極性ポリエステルと、セルロース繊維と、を含み、前記ポリエステル系エラストマーの含有量は、前記高極性ポリエステルの含有量に対して25質量%以上であり、前記ポリエステル系エラストマーと前記高極性ポリエステルとの合計の含有量は、前記セルロース繊維の含有量以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例に係る成形用材料の組成および評価結果などを示す表。
図2】比較例に係る成形用材料の組成および評価結果などを示す表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.成形用材料
本実施形態に係る成形用材料は、ポリエステル系エラストマー、高極性ポリエステル、およびセルロース繊維を含む。成形用材料には、射出成形やプレス加工などの公知の成形方法が適用可能である。成形用材料から製造される成形品は、ポリスチレンなどの代替品として、各種容器、シート、プリンターなどの事務機器や家電製品などの筐体に好適である。以下、成形用材料に含まれる各種原材料について説明する。
【0008】
1.1.ポリエステル系エラストマー
ポリエステル系エラストマーは、熱可塑性を有し、成形用材料から成形品を製造する際に、溶融してセルロース繊維同士を結着させる。また、ポリエステル系エラストマーは、セルロース繊維と共に成形品の物性を担う。特に、ポリエステル系エラストマーによって成形品の靭性が高まり、衝撃強さが向上する。さらに、ポリエステル系エラストマーは、将来、バイオプラスチックとしての生産および利用の可能性を有しており、環境負荷低減の促進が期待される素材でもある。
【0009】
ポリエステル系エラストマーは、原料モノマーとして、アルキレン基の炭素数が2以上8以下のアルキルジカルボン酸またはフタル酸と、アルキレン基の炭素数が2以上8以下のアルキレンジオールとを含む。ポリエステル系エラストマーは、上記2種の原料モノマーが共重合して成る。ポリエステル系エラストマーは、上記2種の原料モノマーが公知の合成方法にて共重合して成る。
【0010】
上記のアルキルジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらのアルキルジカルボン酸は、分子構造中に置換基を有してもよい。ポリエステル系エラストマーの合成には、これらのうちの1種以上を用いる。
【0011】
フタル酸は、分子構造中に置換基を有してもよい。
【0012】
上記のアルキレンジオールとしては、例えば、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、および1,8-オクタンジオールがなどの2価アルコールが挙げられる。ポリエステル系エラストマーの合成には、これらのうちの1種以上を用いる。上述した3種の原料モノマーは、比較的に入手が容易であり、工業用途または商業用途に供することができる。
【0013】
ポリエステル系エラストマーは、上述した原料モノマーに加えて、その他の原料モノマーを含んでもよい。その他の原料モノマーとしては、スチレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アセトニトリル、イソブチレン、イソプレン、およびエチレンが挙げられ、これらの1種以上が適用される。
【0014】
その他の原料モノマーをポリエステル系エラストマーに組み込む場合には、原料モノマーの総モル数に対して、その他の原料モノマーの総モル数を1%以上50%未満とすることが好ましい。これらにより、成形品の強度をさらに向上させることができる。
【0015】
ポリエステル系エラストマーには市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、アロン化成社のES-A60NX、E-D27N、E-D42N、およびESシリーズ(以上商品名)などが挙げられる。ポリエステル系エラストマーとして、これらのうちの1種以上が適用可能である。
【0016】
ここで、成形用材料または成形体の形態において、ポリエステル系エラストマーの有無は、以下の物性分析および成分分析にて判定可能である。
【0017】
まず、物性分析にて、複合弾性率が100MPa以下の成分の有無を確認する。上記成分が含まれる場合に、エラストマー成分が含有されていると判定する。具体的には、例えば、パーク・システムズ・ジャパン社の走査型プローブ顕微鏡NX20を用いて、成形用材料または成形体の断面をコンタクトモードにて測定する。これにより、複合弾性率が100MPaの成分の有無を確認可能である。なお、エラストマー成分の有無の確認には、公知のナノインデンターを用いてもよい。
【0018】
次に、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法およびフーリエ変換赤外分光(FT-IR)法を併用した定性分析にて、エラストマー成分がポリエステル系エラストマーであるか否かを判定する。熱分解GC-MS法とは、試料を熱分解して発生する各種フラグメントを同定する分析方法である。FT-IR法とは、試料の赤外線吸収スペクトルから試料の分子構造を同定する分析方法である。これらにより、試料の分子構造を特定することが可能である。
【0019】
熱分解GC-MS法には、例えば、フロンティア・ラボ社のマルチショット・パイロライザーEGA/PY-3030Dと、当該装置が付設されたアジレント・テクノロジー社のGC/MS 5975とを用いる。FT-IR法には、例えば、サーモフィッシャー社のNicolet(登録商標) 380 Continuμm(登録商標)を用いる。
【0020】
1.2.高極性ポリエステル
高極性ポリエステルは、セルロース繊維とポリエステル系エラストマーとの相溶性を向上させる。これにより、セルロース繊維に対するポリエステル系エラストマーの濡れ性が高まり、主に成形品の曲げ強さが向上する。
【0021】
高極性ポリエステルは、極性が比較的に高い分子構造を有し、原料モノマー由来の繰り返し構造において炭素数が2に対して酸素数が1以上である。詳しくは、高極性ポリエステルは、原料モノマーとして、乳酸、ヒドロキシ酪酸、オキシコハク酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、セリン、スレオニン、アクリル酸、アクリル酸メチル、およびビニル酢酸などの原料モノマーを含む。これらは、比較的に入手が容易であり、工業用途または商業用途に供することができる。
【0022】
具体的には、高極性ポリエステルは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、およびポリ酢酸ビニルなどを1種以上含む。これらの中でも、高極性ポリエステルは、環境負荷低減の観点から、生分解性を具備するポリ乳酸およびポリヒドロキシ酪酸のうちの1種以上を含むことが好ましい。また、高極性ポリエステルは、ポリエチレンコハク酸やP3HBH(3-ヒドロキシ(ブチレート-コ-ヘキサノエート))などのような共重合体であってもよい。高極性ポリエステルとして市販品を用いてもよい。
【0023】
ここで、成形用材料において、ポリエステル系エラストマーの含有量は、高極性ポリエステルの含有量に対して、25質量%以上であり、さらには400質量%以下であることが好ましい。これにより、成形品において、衝撃強さと曲げ強さとをバランスよく向上させることができる。
【0024】
1.3.セルロース繊維
セルロース繊維は、成形品において充填材として機能し、成形用材料のかさ増しや成形品の強度などの物性向上に寄与する。
【0025】
セルロース繊維は、植物由来であって、比較的に豊富な天然素材である。そのため、セルロース繊維を用いることにより、合成繊維を用いる場合と比べて環境負荷の低減が促進される。セルロース繊維は、原材料の調達やコストの点でも優位である。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が高く、成形品の強度の向上にも寄与する。セルロース繊維として、バージンパルプを用いる他に、古紙、古布などを再利用してもよい。また、セルロース繊維として市販品を用いてもよい。
【0026】
セルロース繊維は、主としてセルロースで形成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでもよい。セルロース以外の成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニンなどが挙げられる。また、セルロース繊維には、漂白などの処理が施されていてもよい。
【0027】
セルロース繊維の平均繊維長は、成形品表面の外観を向上させる観点から、500μm未満であることが好ましく、50μm未満であることがより好ましい。セルロース繊維の平均繊維長は、ISO 16065-2:2007に準拠した方法にて求められる。
【0028】
成形用材料において、ポリエステル系エラストマーと高極性ポリエステルとの合計の含有量は、セルロース繊維の含有量以下である。これにより、成形品において、セルロース繊維の充填材としての機能および効果を顕著に発現させることができる。
【0029】
1.4.添加剤
成形用材料は、添加剤として難燃剤を含んでもよい。難燃剤には公知の物質が適用可能である。難燃剤としては、例えば、アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物などの無機系難燃剤、臭素化合物、リン化合物などの有機系難燃剤が挙げられる。難燃剤として市販品を用いてもよい。
【0030】
成形用材料において、難燃剤の含有量は、ポリエステル系エラストマー、高極性ポリエステル、およびセルロース繊維の合計の含有量を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部以下とする。これによれば、成形品の難燃性を向上させることができる。
【0031】
成形用材料は、難燃剤の他にその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、着色剤、防虫剤、防カビ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集抑制剤、および離型剤などが挙げられる。また、成形用材料は、上述したポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルの他に、その他の樹脂を含んでもよい。
【0032】
2.成形用材料の製造方法
成形用材料の製造方法について説明する。成形用材料の製造には、公知の方法が適用可能である。具体的には、例えば、以下に述べる方法が適用可能である。
【0033】
まず、上述した原材料を一軸混錬機または二軸混錬機にて混錬してストランド状とする。次に、ペレタイズ加工を施してペレット状の成形用材料とする。
【0034】
また、成形用材料の製造方法として以下の方法を適用してもよい。まず、古紙やパルプ材をシュレッダー装置にて粗砕してセルロース繊維とする。そして、セルロース繊維と、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルと、を計量して混錬する。次に、混錬した原材料を空気中にて堆積させてシート状の堆積物とする。該堆積物は空気を多く含み密度が小さいため、カレンダー装置にて圧縮して空気を排除して密度を高める。次に、加熱炉を用いて非接触にて加熱した後、ヒートプレス装置にて加熱プレスする。
【0035】
加熱炉およびヒートプレス装置では、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルの溶融温度に対して、約20℃高い温度にて加熱する。これにより、各原材料が偏りを抑えて分散されたシートが形成される。
【0036】
次に、シートをシュレッダー装置にて所望の形状に裁断して、ペレット状の成形用材料とする。成形用材料の所望の形状とは、特に限定されないが、2mm立法から5mm立法までの略立方体である。以上の方法によって成形用材料が製造される。なお、成形用材料の製造方法は上記に限定されるものではない。
【0037】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。成形品の強度を向上させることができる。ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルを併用することにより、衝撃強さと曲げ強さとのバランスが改善されて、これらの強さを両立することができる。したがって、成形品の強度を向上させる成形用材料を提供することができる。
【0038】
3.実施例および比較例
以下、実施例および比較例を示して、本発明の効果をより具体的に説明する。実施例1から実施例10の各成形用材料に関する、原材料の組成および成形品の評価結果などを図1に示す。比較例1から比較例7の各成形用材料に関する、原材料の組成および成形品の評価結果などを図2に示す。
【0039】
以下の説明では、実施例1から実施例10を総称して単に実施例ともいい、比較例1から比較例7を総称して単に比較例ともいう。本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。なお、図1および図2の組成の欄では、数値の単位は質量%であり、数値の記載がなく、-表記の欄は含有しないことを意味する。図1および図2に示した原材料の詳細は、以下の通りである。
【0040】
・ポリエステル系エラストマー:商品名ES-A60NX、アロン化成社。
・高極性ポリエステルa:ポリ乳酸。商品名テラマック(登録商標)TE-2000、ユニチカ社。
・高極性ポリエステルb:P3HBH。商品名Green Planet(登録商標)、カネカ社。
・セルロース繊維:商品名Guaiba BEKP、CMPC社。
・オレフィン系エラストマー:EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)。商品名NOLDEL(登録商標) 3720P、ダウ・東レ社。
・難燃剤a:ホスファゼン系難燃剤。商品名ラビトル(登録商標)FP-110、三井化学ファイン社。
・難燃剤b:リン酸エステル系難燃剤。商品名Exolit(登録商標)OP1230、クラリアント社。
【0041】
図1および図2の組成にしたがって、実施例および比較例の成形用材料を製造した。具体的には、ポリエステル系エラストマー、高極性ポリエステル、その他のエラストマーであるオレフィン系エラストマー、およびセルロース繊維などを秤量した。
【0042】
次に、テクノベル社の二軸混錬機 KZW15TW-45MGに投入して混錬した。混錬条件は、最高加熱温度を180℃とし、押し出し吐出量を1kg/hrとした。次に、ストランド状に加工してから、ペレタイザーにてペレット状の成形用材料とした。
【0043】
実施例および比較例の成形用材料を用いて、射出成形またはプレス加工によって、評価用の試験片を作製した。詳しくは、射出成形およびプレス加工共に、成形用材料の加熱温度は200℃とした。射出成形装置として日精樹脂工業社のTHX40-5Vを用い、プレス加工装置として東和精機社の油圧プレス PHKS-40ABSを用いた。各評価用の試験片の形状については後述する。
【0044】
ここで、実施例1は、ポリエステル系エラストマーの含有量を24.0質量%とし、高極性ポリエステルaの含有量を6.0質量%とし、セルロース繊維の含有量を70.0質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。実施例1では、ポリエステル系エラストマーの含有量が、高極性ポリエステルaの含有量に対して400質量%である。
【0045】
実施例2は、ポリエステル系エラストマーの含有量を30.0質量%とし、高極性ポリエステルbの含有量を20.0質量%とし、セルロース繊維の含有量を50.0質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。
【0046】
実施例3は、実施例2に対して、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルbを減量し、セルロース繊維を70.0質量%へ増量した水準である。
【0047】
実施例4は、実施例1に対して、ポリエステル系エラストマーを微増し、高極性ポリエステルaを増量し、セルロース繊維を50.0質量%に減量した水準である。
【0048】
実施例5は、実施例4に対して、ポリエステル系エラストマーを増量し、高極性ポリエステルaを減量し、セルロース繊維を52.2質量%に微増し、難燃剤aを4.3質量%添加した水準である。
【0049】
実施例6は、実施例5に対して、ポリエステル系エラストマーを減量し、高極性ポリエステルaを増量し、難燃剤aを難燃剤bに代えた水準である。
【0050】
実施例7は、実施例4に対して、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルaを減量し、セルロース繊維を60.0質量%に増量した水準である。
【0051】
実施例8は、実施例4に対して、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルaを減量し、セルロース繊維を80.0質量%に増量し、プレス成形により試験片を作製した水準である。
【0052】
実施例9は、実施例3に対して、ポリエステル系エラストマーおよび高極性ポリエステルbを減量し、セルロース繊維を80.0質量%に増量し、プレス成形により試験片を作製した水準である。
【0053】
実施例10は、実施例4に対して、ポリエステル系エラストマーを減量し、高極性ポリエステルaを増量した水準である。実施例10では、ポリエステル系エラストマーの含有量が、高極性ポリエステルaの含有量に対して25質量%である。
【0054】
比較例1は、ポリエステル系エラストマーの含有量を50.0質量%とし、高極性ポリエステルを用いず、セルロース繊維の含有量を50質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。
【0055】
比較例2は、比較例1に対して、ポリエステル系エラストマーをオレフィン系エラストマーに代えた水準である。
【0056】
比較例3は、ポリエステル系エラストマーを用いず、高極性ポリエステルaの含有量を50.0質量%とし、セルロース繊維の含有量を50.0質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。
【0057】
比較例4は、比較例3に対して、高極性ポリエステルaを高極性ポリエステルbに代えた水準である。
【0058】
比較例5は、ポリエステル系エラストマーの含有量を5.0質量%とし、高極性ポリエステルbの含有量を45.0質量%とし、セルロース繊維の含有量を50.0質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。比較例5では、ポリエステル系エラストマーの含有量が、高極性ポリエステルbの含有量に対して25質量%未満である。
【0059】
比較例6は、高極性ポリエステルaの含有量を40.0質量%とし、オレフィン系エラストマーの含有量を10.0質量%とし、セルロース繊維の含有量を50.0質量%として、射出成形により試験片を作製した水準である。
【0060】
比較例7は、比較例6に対して、高極性ポリエステルaを減量し、オレフィン系エラストマーを増量した水準である。
【0061】
衝撃強さの指標として、シャルピー衝撃強さを採用し、試験方法はISO 179(JIS K7111)に準拠して実施した。試験片の形状は、長辺80mm±2mm、短辺4.0mm±0.2mm、厚さ10.0mm±0.2mmの長方形の板状とした。試験装置は、東洋精機製作所社のインパクトテスタITを用いた。シャルピー衝撃試験では、ハンマー重量を4J(WR2.14N/m)、持上角度を150°、ノッチ残り幅を8.0mm±0.2mm、ノッチ角度を45°とした。
【0062】
曲げ強さの指標として、曲げ特性を採用し、試験方法はISO 178(JIS K7171)に準拠して実施した。試験片の形状は、長辺80mm±2mm、短辺10.0mm±0.2mm、厚さ4.0mm±0.2mmの長方形の板状とした。試験装置はインストロン社の68TM-30を用い、支点間距離を64mmにて試験を実施した。
【0063】
得られた各水準の試験結果について、以下の判定基準にしたがって成形品の強度を判定した。
判定基準
A:シャルピー衝撃強さが7.0kJ/m2以上、かつ曲げ弾性率が1000MPa以上である。
B:シャルピー衝撃強さが4.5kJ/m2以上7.5kj/m2未満、かつ曲げ弾性率が1000MPa以上である。
C:シャルピー衝撃強さが4.5kJ/m2未満、または曲げ弾性率が1000MPa未満である。
【0064】
図1に示すように、実施例は全ての水準でB判定以上となり、特に、実施例2、および実施例4から実施例7ではA判定となった。このことから、実施例では、衝撃強さと曲げ強さが共に高くなり成形品の強度が向上することが示された。
【0065】
これに対して、図2に示すように、比較例は全ての水準でC判定となり、衝撃強さと曲げ強さが両立され難いことが分かった。
図1
図2