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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088038
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ジャケット
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/115 20060101AFI20240625BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240625BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20240625BHJP
   A41D 7/00 20060101ALI20240625BHJP
   A41D 1/04 20060101ALI20240625BHJP
   B63C 9/08 20060101ALI20240625BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20240625BHJP
   B60N 2/427 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
B63C9/115
A41D13/00 107
A41D13/015
A41D7/00 H
A41D1/04 D
B63C9/08 B
B60N2/58
B60N2/427
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202990
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】松井 潤二
(72)【発明者】
【氏名】芝垣 登志男
【テーマコード(参考)】
3B011
3B031
3B087
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AB11
3B011AC08
3B011AC10
3B031AA01
3B031AE09
3B031AE10
3B087CD05
3B211AA01
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC08
3B211AC10
(57)【要約】
【課題】水難時に浮力を得るだけではなく、車両のシートに装着することで、衝突時の衝撃緩衝材として利用できるジャケットを提供する。
【解決手段】車両のフロントシートのシートバックに被せられるジャケットである。このジャケットは、シートバックの後面に配置される前身頃と、シートバックの前面に配置される後身頃と、シートバックの左右の肩部を架け渡すように前身頃と後身頃とをつなぐ連結部とを備える。少なくとも前身頃は、クッション性を有する浮力材を備える。連結部は、前身頃と後身頃との間の長さを可変できるアジャスタを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントシートのシートバックに被せられるジャケットであって、
前記シートバックの後面に配置される前身頃と、
前記シートバックの前面に配置される後身頃と、
前記シートバックの左右の肩部を架け渡すように前記前身頃と前記後身頃とをつなぐ連結部とを備え、
少なくとも前記前身頃は、クッション性を有する浮力材を備え、
前記連結部は、前記前身頃と前記後身頃との間の長さを可変できるアジャスタを備えるジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席に装着可能なジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ライフジャケットを開示する。このライフジャケットは、前身頃と後身頃と延長体とを備える。延長体は、後身頃と略同じ幅であって、後身頃の延長方向に延在されている。延長体は後身頃に対して折り曲げることで、後身頃に重ねることができる。この延長体には、浮力材が内在されている。
【0003】
このライフジャケットは、平常時は、椅子の背もたれの前面に後身頃が位置され、椅子の背もたれの背面に前身頃が位置するように配置される。その際、前身頃の一部又は全部は、延長体により覆われる。このようなジャケットの椅子への配置により、前身頃が汚れることを防止できる。延長体における前身頃と向き合う面と反対側の面を防炎素材で構成すれば、火災などの災害時にライフジャケットを頭部に当てることで、頭部を保護することができる。水難時、ライフジャケットを着用すると共に、浮力材が内在された延長体を頭部に当接させることで、頭部が支持された状態で浮力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3180593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなジャケットは、車載時において、車両の衝突時の衝撃緩衝材として利用されることが望まれる。しかし、具体的にジャケットをどのように車室内に配置して衝撃緩衝材として利用するかについては、十分な検討がなされていない。
【0006】
本発明の目的の一つは、水難時に浮力を得るだけではなく、車両のシートに装着することで、衝突時の衝撃緩衝材として利用できるジャケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係るジャケットは、車両のフロントシートのシートバックに被せられるジャケットである。このジャケットは、前記シートバックの後面に配置される前身頃と、前記シートバックの前面に配置される後身頃と、前記シートバックの左右の肩部を架け渡すように前記前身頃と前記後身頃とをつなぐ連結部とを備える。少なくとも前記前身頃は、クッション性を有する浮力材を備える。前記連結部は、前記前身頃と前記後身頃との間の長さを可変できるアジャスタを備える。
(2)上記(1)に記載のジャケットにおいて、前記後身頃の後面は、前記シートバックの前面に対応した意匠を有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載のジャケットにおいて、前記後身頃は前記浮力材を備えず、前記前身頃だけが前記浮力材を備えてもよい。
(4)上記(1)または(2)に記載のジャケットにおいて、前記後身頃は浮力材を備え、前記後身頃の前記浮力材は、前記前身頃の前記浮力材よりも厚さが薄くてもよい。
(5)上記(1)から(3)のいずれかに記載のジャケットにおいて、前記前身頃の少なくとも一方は、ポケットを備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)のジャケットによれば、少なくとも前身頃が浮力材を有することで、フローティングベストとしての機能を果たすことができる。上記のジャケットは、後身頃をフロントシートのシートバックの前面に、前身頃をフロントシートのシートバックの後面に配置することで、前身頃がリアシートの乗員の前方に配置されることになる。前身頃が有する浮力材はクッション性を備えるため、車両の衝突時、ジャケットをリアシートの乗員の衝撃緩衝材として利用できる。さらに、連結部がアジャスタを有することで、シートバックに装着された後身頃に対して前身頃の位置を上下に調整することができる。そのため、フロントシートにおけるシートバックの後面のうち、車両の衝突時にリアシートの乗員が衝突し易い位置にジャケットを適切に配置することができる。
【0009】
上記(2)のジャケットによれば、後身頃の後面は、シートバックの前面に対応した意匠を有することで、ジャケットの車載時にシートバックにジャケットが装着されていることが目立ち難い。
【0010】
上記(3)のジャケットによれば、後身頃を薄くでき、ジャケットをシートバックに装着した際、ジャケットの車載時にシートバックにジャケットが装着されていることが目立ち難い。
【0011】
上記(4)のジャケットによれば、前身頃のみに浮力材を備える場合に比べてより大きな浮力を得ることができる。さらに後身頃が薄いことで、ジャケットの車載時にシートバックにジャケットが装着されていることが目立ち難い。
【0012】
上記(5)のジャケットによれば、ジャケットの着用時は着用者がポケットを小物入れとして利用でき、ジャケットの車載時はリアシートの乗員がポケットを小物入れとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係るジャケットの着用状態を示す前面図である。
図2図2は、実施形態1に係るジャケットの着用状態を示す後面斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るジャケットが装着された車両のフロントシートを示す後面斜視図である。
図4図4は、実施形態1に係るジャケットが装着された車両のフロントシートを示す前面斜視図である。
図5図5は、フロントシートに装着した実施形態1に係るジャケットとリアシートの乗員との位置関係を示す説明図である。
図6図6は、実施形態1に係るジャケットが有するアジャスタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るジャケットの一例を図面に基づいて説明する。以下の説明において、ジャケットの前後、左右及び上下は、着用者の前後、左右及び上下を基準とする。例えば、ジャケットのうち、着用者の胸及び腹に面する部位は前身頃、着用者の背中に面する部位は後身頃、着用者の左側に配置される前身頃が左前身頃、着用者の右側に配置される前身頃が右前身頃である。車両とその構成部材の前後、左右及び上下は、車両の前後、左右及び上下を基準とする。例えば、シートバックにおける車両の前方の面を前面、シートバックにおける車両の後方の面を後面とする。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。
【0015】
[実施形態1]
<概要>
実施形態に係るジャケット1は、図1及び図2に示すように、前身頃11、後身頃12、及び連結部20を有するライフジャケットである。このジャケット1は、車載時、図3図4に示すように、車両のフロントシート100のシートバック120に被せられる。フロントシート100は、シートクッション110、シートバック120及びヘッドレスト130を備える。少なくとも前身頃11には浮力材11Fが設けられている。連結部20は、第一連結部21L,21R及び第二連結部22L,22Rを有する。実施形態に係るジャケット1の特徴の一つは、浮力材11Fがクッション性を有すること及び第一連結部21L,21Rが前身頃11と後身頃12との間の長さを可変できるアジャスタ30Fを備えることにある。以下、各部の構成を詳細に説明する。
【0016】
<各部の構成>
≪前身頃≫
前身頃11は、図1に示すように、ジャケット1の着用時、着用者の胸及び腹に向かい合うように配置される。前身頃11は、図3に示すように、ジャケット1の車載時、車両のフロントシート100におけるシートバック120の後面120Bに配置される。本例の前身頃11は、互いに分離可能な左前身頃11L及び右前身頃11Rを有する。本例とは異なり、前身頃11は、左前身頃11Lと右前身頃11Rとが一体になった単一の前身頃であってもよい。左前身頃11L及び右前身頃11Rは、例えば図示しないファスナー又はサイドリリースバックル付きのベルトにより互いに閉じたり、離れたりすることができる。ジャケット1の車載時、前身頃11はリアシートの乗員の衝撃緩衝材として利用される。そのため、ファスナーであれば、バックルといった硬い部材がなく、上記乗員の傷害を軽減できる。前身頃11の材質は、吸水による重量変化が実質的になく、乾きやすいもので構成される。この材質は、例えばナイロンやネオプレンである。
【0017】
(浮力材)
前身頃11、つまり左前身頃11L及び右前身頃11Rの各々は、浮力材11Fを有する。浮力材11Fは、左前身頃11L及び右前身頃11Rの各々を構成する生地の内部に配置されている。生地は表地と裏地の2枚重ねとなっている。浮力材11Fは表地と裏地との間に配置されている。浮力材11Fは、ジャケット1の着用者の落水時に、適切な浮力が得られることに加え、クッション性を有している。クッション性と浮力材11Fとしての機能を併せ持つ材質としては、例えば発泡プラスチックがある。発泡プラスチックは、例えば発泡スチロール、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、又は発泡ポリプロピレンである。本例では、浮力材11Fは、左前身頃11L及び右前身頃11Rの各々のほぼ全域にわたって配置されている。浮力材11Fの厚さは、車両の衝突時にリアシートの乗員の衝撃緩衝材として機能する厚さとする。後述するように、本例のジャケット1は、浮力材は前身頃11にのみに浮力材11Fを備え、後身頃12には浮力材を備えていない。
【0018】
(ポケット)
前身頃11は、必要に応じてポケット40を備えてもよい。つまり、左前身頃11Lと右前身頃11Rの少なくとも一方に、必要に応じてポケット40を備えてもよい。ポケット40は、その内部に小物を収納することができる。ジャケット1の着用時は、着用者がポケット40を小物入れとして利用でき、ジャケット1の車載時は、リアシートの乗員がポケット40を小物入れとして利用できる。ポケット40の数は単数でも複数でもよい。本例では左前身頃11Lに3つ、右前身頃11Rに2つの合計5つのポケット40を有している。ポケット40のサイズも大小様々なものが利用できる。同じ大きさのポケット40を複数設けてもよいし、異なる大きさのポケット40を複数設けてもよい。ポケット40は、前身頃11にポケット40の本体部41を縫製することで構成される。例えば本体部41の底縁及び両側縁は前身頃11に縫製されている。本体部41の上縁は、前身頃11に縫製されることなく、前身頃11との間に開口部を構成している。ポケット40の開口部を開閉できる蓋部42を備えてもよい。蓋部42は、例えば前身頃11における本体部41の上部に縫製により取り付けられる。蓋部42は、本体部41の前面の一部に重なるように設けられる。蓋部42と本体部41との固定は、例えば面ファスナー、ホック又はボタンで行われる。
【0019】
(ベルト押さえ)
前身頃11は、必要に応じてベルト押さえ50を備えてもよい。ベルト押さえ50は、後述する第一連結部21L,21Rを構成する第一ベルト21Bの端部を前身頃11に保持させることで、第一ベルト21Bの端部がバタつくことを防止する。本例では、左前身頃11L及び右前身頃11Rの各々の上部にベルト押さえ50を設けている。各ベルト押さえ50は、例えば細いバンドである。この細いバンドは、前身頃11に対して両端部が縫製され、中間部は前身頃11との間に隙間が形成されている。第一ベルト21Bの端部は、上記隙間に通されることで前身頃11に対して保持される。
【0020】
≪後身頃≫
後身頃12は、図2に示すように、ジャケット1の着用時、着用者の背中に向かい合うように配置される。後身頃12は、図4に示すように、ジャケット1の車載時、車両のフロントシート100におけるシートバック120の前面120Fに配置される。本例の後身頃12は、シートバック120の前面120Fに対応した意匠を有する。「シートバック120の前面120Fに対応した意匠を有する」とは、後身頃12の後面が、フロントシート100のヘッドレスト130又はシートバック120の前面120Fと形状・色彩・模様の少なくとも一つにおいてデザイン上の統一性を有することを言う。後身頃12の後面とは、着用時の後身頃12を着用者の後方から見た際に見える面である。換言すれば、後身頃12の後面は、着用時に後身頃12が着用者の背中に接する面と反対側の面である。この後身頃12の後面は、ジャケット1をシートバック120に装着した際、フロントシート100を車両の前方から後方に向かって見た際に見える面でもある。
【0021】
本例では、後身頃12の中央部12Mがヘッドレスト130の前面と同色であり、後身頃12の左右の側部12Sが中央部12Mと異なる色となっている。図4では、ヘッドレスト130の前面及び後身頃12の中央部12Mにハッチングを付して同色であることを示している。例えば、ハッチングの付された箇所は有彩色、白抜きの箇所は無彩色である。後身頃12の中央部12Mは、例えば水平方向に延びる境界12Bが設けられている。この境界12Bは、中央部12Mを上下の領域に区画する。さらに、後身頃12の中央部12Mと左右の側部12Sは、シートバック120の前面120Fにおける中央部120Mとサイドサポート120Sの各領域に対応する。後身頃12の左右の側部12Sは、サイドサポート120Sと同色である。このような後身頃12をシートバック120の前面120Fに重なるように配置すると、後身頃12があたかもシートバック120の前面120Fと一体化したかのように見える。そのため、シートバック120の前面120Fにジャケット1の後身頃12が配置されていることが目立ちにくい。
【0022】
本例の後身頃12は、その生地の内部に浮力材が配置されていない。生地は表地と裏地の2枚重ねとなっていてもよいし、厚手の一枚の生地でもよい。後身頃12に浮力材が配置されていないと後身頃12を薄くでき、シートバック120の前面120Fに後身頃12を配置した場合、シートバック120の前面120Fと後身頃12との間の段差を可及的に小さくすることができる。
【0023】
後身頃12は、上記のようにシートバック120の前面120Fに配置されるため、ポケットはなくてもよい。ポケットがなければ、ジャケット1の車載時にシートバック120の前面120Fに凹凸が形成されることがなく、フロントシート100の乗員が背中に違和感を感じることもない。
【0024】
≪連結部≫
連結部20は、前身頃11と後身頃12とをつなぐ部位である。本例のジャケット1の連結部20は、第一連結部21L,21Rと第二連結部22L,22Rとを有する。第一連結部21L,21Rは、シートバック120の左右の肩部を架け渡すように左右の前身頃11L,11Rと後身頃12とをつなぐ。第二連結部22L,22Rは、前身頃11の左側縁と後身頃12の左側縁同士及び前身頃11の右側縁と後身頃12の右側縁同士をつなぐ。左前身頃11L、後身頃12、第一連結部21L及び第二連結部22Lで囲まれる開口が左アームホールとなる。右前身頃11R、後身頃12、第一連結部21R及び第二連結部22Rで囲まれる開口が右アームホールとなる。本例では、第一連結部21L,21Rと第二連結部22L,22Rのいずれも長さを調整できる。第一連結部21L,21Rと第二連結部22L,22Rの長さを調整できることで、着用者の体厚差、並びに着用者の体厚とシートバック120の厚さとの差があっても、過度に緩みや締め付けがないようにジャケット1を着用したり、シートバック120に装着したりできる。
【0025】
第一連結部21L,21Rは、第一ベルト21Bとアジャスタ30Fとを備える。第二連結部22L,22Rも第二ベルト22Bとアジャスタ30Sとを備える。第一ベルト21B及び第二ベルト22Bは、帯状の部材である。第一ベルト21Bは、前身頃11につながる第一前ベルト21BFと、後身頃12につながる第一後ベルト21BBとを有する。第二ベルト22Bは、前身頃11につながる第二前ベルト22BFと、後身頃12につながる第二後ベルト22BBとを有する。第一ベルト21B及び第二ベルト22Bの材質は、例えばナイロンである。
【0026】
第一連結部21L,21Rを例として、第一ベルト21B及びアジャスタ30Fの構成を説明する。第二連結部22L,22Rの構成は、第一連結部21L,21Rの構成と同様である。
【0027】
第一ベルト21Bの長さは、図5に示すように、フロントシート100の後面120Bにおいて、前身頃11がリアシートの乗員の下肢Lを保護できる位置に配置可能な長さとする。「下肢Lを保護できる位置」とは、リアシートに着席した乗員の主に膝から足首までの間を保護できる位置である。この位置の具体例としては、前身頃11の裾がフロントシートにおけるシートバック120の後面120Bの下縁まで至る程度とする。このとき、前身頃11は、シートバック120の後面120Bに配置されている。後身頃12の裾はシートクッション110に接触して、下方への移動が規制される。なお、図5では、前身頃11のポケット40は省略している。
【0028】
第二連結部22L,22Rの長さは、着用者の体格差に対応でき、かつ着用者の体厚とシートバック120の厚さとの差に対応できる長さであればよい。
【0029】
フロントシート100の後面120Bにおいて、前身頃11を後身頃12よりも下方寄りに位置させる。そのため、図1に示すように、着用状態のジャケット1を着用者の前面から見たとき、後身頃12の肩部の上縁が前身頃11の肩部の上縁よりも上方に位置することが好ましい。つまり、図1に示すように、着用者の前面からは第一連結部21L,21Rは大半が見えるが、図2に示すように、着用者の後面からは第一連結部21L,21Rはほとんど見えない。
【0030】
第一連結部21L,21Rの長さ、つまり第一ベルト21Bの長さの調整は、アジャスタ30Fにより行われる。第二連結部22L,22Rの長さ、つまり第二ベルト22Bの長さの調整は、アジャスタ30Sにより行われる。アジャスタ30F及びアジャスタ30Sは、図6に示すように、例えばテープアジャスタである。図6は、第一連結部21Lを示している。テープアジャスタは、例えば概ね矩形状の枠の内側に2本の中間軸が設けられた部材である。矩形状の枠は、一対の縦軸32と一対の横軸33とで構成されている。2本の中間軸34と一対の横軸33は実質的に平行に配置される。2本の中間軸34のうち、ジャケット1の着用時に前身頃11に近位の中間軸を前中間軸34F、後身頃12に近位の中間軸を後中間軸34B、一対の横軸33のうち、前身頃11に近位の横軸を前横軸33F、後身頃12に近位の横軸を後横軸33Bとする。また、両縦軸32、前横軸33F及び前中間軸34Fで囲まれる孔を前孔35F、両縦軸32、前中間軸34F及び後中間軸34Bで囲まれる孔を中孔35M、両縦軸32、後中間軸34B及び後横軸33Bで囲まれる孔を後孔35Bとする。
【0031】
一方、図示しない第一前ベルト21BFの前端は前身頃11に固定されている端部とし、第一前ベルト21BFの後端は前端とは反対側の端部であって、アジャスタ30Fを通った端部とする。図示しない第一後ベルト21BBの後端は後身頃12に固定されている端部とし、第一後ベルト21BBの前端はアジャスタ30Fに固定されている端部とする。
【0032】
第一前ベルト21BFの後端は、アジャスタ30Fの後面から中孔35Mを通って前中間軸34Fの前面に折り返され、前孔35Fを抜けて前横軸33Fの後面を通って着用者の前方又はシートバック120の後方に引き出される。第一後ベルト21BBの前端は、後横軸33Bの後面から後孔35Bを通って後中間軸34Bの前面に折り返され、中孔35Mを通って後身頃12に向かって引き出される。この第一後ベルト21BBの前端は、第一後ベルト21BBの途中に縫製にて固定されることでループを構成し、そのループに後中間軸34Bが通されていることでアジャスタ30Fに固定されている。
【0033】
第一ベルト21Bの長さ調整は、第一前ベルト21BFの後端を着用者の前方に引き出したり、後方に引き戻したりすることで行われる。第一前ベルト21BFの後端を前方に引き出すと、前身頃11と後身頃12との距離が短くなる。第一ベルト21Bの後端を後方に引き戻すと、前身頃11と後身頃12との距離が長くなる。つまり、ジャケット1の車載時、後身頃12はシートバック120の下方に移動できる。ジャケット1の車載時、第一ベルト21Bの長さ調整は、リアシートの乗員が第一前ベルト21BFの後端を車両の後方に引き出したり、車両の前方に引き戻したりすることで行われる。
【0034】
<使用手順>
以上のジャケット1は、次のように利用される。
着用時、着用者はジャケット1を着る。その際、前身頃11は着用者の胸と腹に向き合い、後身頃12は着用者の背中に向き合う。必要に応じて、第一ベルト21Bの長さ調整を行う。この長さ調整は、着用者が自身の前方に向けて第一ベルト21Bの後端を引くだけでよいため、容易に行うことができる。第二ベルト22Bの長さ調整も必要に応じて同様に行えばよい。
【0035】
車載時、ジャケット1は、フロントシート100のシートバック120に装着される。シートバック120の上方からジャケット1を下方に下ろすことで、ジャケット1の裾の開口にシートバック120が嵌められる。その際、ジャケット1は、前身頃11がシートバック120の後面120Bに、後身頃12がシートバック120の前面120Fに向き合うように配置される。後身頃12、前身頃11、及び左右の第一連結部21L,21Rで構成されるネックホールにヘッドレスト130を通すことで、ジャケット1はシートバック120に装着される。必要に応じて、第一ベルト21Bの長さ調整を行う。この長さ調整は、リアシートの乗員が車両の後方に向けて第一ベルト21Bの後端を引くだけでよいため、容易に行うことができる。第二ベルト22Bの長さ調整も必要に応じて同様に行えばよい。第一ベルト21Bの長さ調整により、前身頃11はシートバック120の下方寄りに配置される。この前身頃11の配置により、車両の衝突時、リアシートに着席した乗員の下肢Lを保護できる。
【0036】
[実施形態2]
次に、実施形態1とは異なる実施形態2のジャケットを説明する。実施形態2に係るジャケットは、後身頃も浮力材を備える点を除いて実施形態1と同様の構成である。以下の説明は、主に実施形態1との相違点について行い、共通する構成については、図1から図4を参照するが説明は省略する。
【0037】
実施形態2に係るジャケット1の後身頃12には、その生地の内部に浮力材が配置されている。生地は表地と裏地の2枚重ねとなっている。浮力材は表地と裏地との間に配置されている。後身頃12の浮力材の材質には、前身頃11に配置された浮力材11Fと同様の材質が利用できる。後身頃12にも浮力材が配置されていると、前身頃11のみに浮力材11Fが配置されている場合に比べてより大きな浮力を得ることができる。
【0038】
後身頃12の浮力材は、フロントシート100の座り心地の観点からクッション性があってもよい。但し、衝突時の衝撃緩衝材としてのクッション性は必須ではない。つまり、後身頃12の浮力材は薄くてもよい。より具体的には、後身頃12に配置される浮力材は、前身頃11に配置される浮力材11Fよりも薄くしてもよい。この薄い浮力材により、シートバック120の前面120Fに後身頃12を配置した場合、シートバック120の前面120Fと後身頃12との間の段差を小さくすることができる。後身頃12に浮力材を配置する場合、デザイン上、後身頃12が区画された領域ごとに形状やサイズが異なる浮力材を配置してもよい。例えば、上述のように、後身頃12の中央部12Mが上下の領域に区画されている場合、各領域の境界12B及び境界12Bの近傍は薄く、境界12Bから離れた領域は厚い浮力材を配置してもよい。このような浮力材を用いることで、フロントシート100への着席時、シートバック120にジャケット1が配置されているか否かによる感触の違いを軽減することができる。
【0039】
なお、本発明は上記の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 ジャケット
11 前身頃、11L 左前身頃、11R 右前身頃、12 後身頃、11F 浮力材
12M 中央部、12S 側部、12B 境界
20 連結部
21L,21R 第一連結部
21B 第一ベルト、21BF 第一前ベルト、21BB 第一後ベルト
22L,22R 第二連結部
22B 第二ベルト、22BF 第二前ベルト、22BB 第二後ベルト
30F,30S アジャスタ
32 縦軸、33 横軸、33B 後横軸、33F 前横軸
34 中間軸、34B 後中間軸、34F 前中間軸
35F 前孔、35M 中孔、35B 後孔
40 ポケット、41 本体部、42 蓋部
50 ベルト押さえ
100 フロントシート
110 シートクッション、120 シートバック、130 ヘッドレスト
120F 前面、120B 後面、120M 中央部、120S サイドサポート
L 下肢
図1
図2
図3
図4
図5
図6