(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088040
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両用時刻補正装置
(51)【国際特許分類】
G04G 5/00 20130101AFI20240625BHJP
G04R 20/02 20130101ALI20240625BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G04G5/00 J
G04R20/02
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202993
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔也
(72)【発明者】
【氏名】小林 健二
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎祐
【テーマコード(参考)】
2F002
5H181
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002BB04
2F002FA16
2F002GA06
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB16
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF22
(57)【要約】
【課題】自動運転制御に内部時刻を利用する車両において、内部時刻を大幅に補正する必要がある場合であっても、乗員に不具合を感じさせにくくすることを可能にする。
【解決手段】測位衛星から受信する絶対時刻の情報を逐次取得する時刻取得部110と、取得する絶対時刻の情報をもとに、絶対時刻に内部時刻を逐次同期させる時刻同期制御部130と、絶対時刻の情報の取得が中断された場合に、自車において自律的に内部時刻を補完する時刻制御部120と、絶対時刻の情報の取得が、中断後に再開された場合に、その絶対時刻と、補完していた内部時刻との差を補正する時刻補正部150と、自車のおかれた状況及び自車自体の状況の少なくともいずれかの状況を特定する状況特定部140とを備え、時刻補正部150は、状況特定部140で特定する状況に応じて、時刻補正部150での1度の補正あたりの補正量の上限値を変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転制御に内部時刻を利用する車両で用いられる車両用時刻補正装置であって、
前記車両の外部から通信によって受信する、前記内部時刻よりも正確な時刻である高精度時刻の情報を逐次取得する時刻取得部(110)と、
前記時刻取得部で逐次取得する前記高精度時刻の情報をもとに、前記高精度時刻に前記内部時刻を逐次同期させる時刻同期制御部(130)と、
前記時刻取得部での前記高精度時刻の情報の取得が中断された場合に、前記車両において自律的に前記内部時刻を補完する時刻制御部(120)と、
前記時刻取得部での前記高精度時刻の情報の取得が、前記中断後に再開された場合に、その高精度時刻と前記時刻制御部で補完していた前記内部時刻との差を補正する時刻補正部(150,150a,150b,150c,150d)と、
前記車両のおかれた状況及び前記車両自体の状況の少なくともいずれかの状況を特定する状況特定部(140,140a,140b)とを備え、
前記時刻補正部は、前記状況特定部で特定する前記状況に応じて、前記時刻補正部での1度の補正あたりの補正量の上限値である補正上限値を変更する車両用時刻補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部は、前記状況として、前記車両が遠隔操作による自動運転中か否かを特定するものであり、
前記時刻補正部は、前記状況特定部で前記車両が遠隔操作による自動運転中と特定したことをもとに、前記状況特定部で前記車両が遠隔操作による自動運転中でないと特定した場合よりも、前記補正上限値を小さくして前記内部時刻の補正を行う一方、前記状況特定部で前記車両が遠隔操作による自動運転中でないと特定したことをもとに、前記状況特定部で前記車両が遠隔操作による自動運転中と特定した場合よりも、前記補正上限値を大きくして前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部は、前記状況として、前記車両の車速を特定するものであり、
前記時刻補正部は、前記状況特定部で特定した前記車両の車速が速くなるのに応じて、前記補正上限値を小さくして前記内部時刻の補正を行う一方、前記状況特定部で特定した前記車両の車速が遅くなるのに応じて、前記補正上限値を大きくして前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部は、前記状況として、前記自動運転制御での予測される前記車両の挙動である予測挙動を特定するものであり、
前記時刻補正部は、前記状況特定部で、設定時間内に前記車両の車速が所定値以下となるか停車する前記予測挙動を特定した場合に、前記車両の実際の挙動がその予測挙動に達するまで前記内部時刻の補正を保留し、その予測挙動に達してから、前記補正上限値なしで前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部(140,140a)は、前記状況として、前記車両の走行路の形状を特定するものであり、
前記時刻補正部(150,150a,150c,150d)は、前記状況特定部で特定した前記走行路の形状がカーブ路の場合に、前記走行路の形状が直線路の場合よりも前記補正上限値を小さくして前記内部時刻の補正を行う一方、前記状況特定部で特定した前記走行路の形状が直線路の場合に、前記走行路の形状がカーブ路の場合よりも前記補正上限値を大きくして前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部(140b)は、前記状況として、閾値以上の横加速度及び横加加速度の少なくともいずれかの発生が推定されるカーブ路である対象カーブ路への前記車両の進入予定を特定するものであり、
前記時刻補正部(150b)は、前記対象カーブ路への前記車両の進入予定を前記状況特定部で特定した場合に、その対象カーブ路への進入前の直線路において、前記内部時刻の補正を完了させる車両用時刻補正装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部(140a)は、前記状況として、前記車両の通行の可否を切り替える交通インフラにおける通行の可否を特定するものであり、
前記時刻補正部(150a)は、前記交通インフラにおける通行が許可されると前記状況特定部で特定した場合に、前記交通インフラにおける通行が許可されない場合よりも前記補正上限値を小さくして前記内部時刻の補正を行う一方、前記交通インフラにおける通行が許可されないと前記状況特定部で特定した場合には、その交通インフラにおいて前記車両が停車するまで前記内部時刻の補正を保留し、前記車両が停車してから、前記補正上限値なしで前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部は、前記状況として、前記車両の先行車両及び後続車両の少なくともいずれかの対象車両と前記車両との間の車間距離を特定するものであり、
前記時刻補正部は、前記状況特定部で特定した前記車間距離が短くなるのに応じて、前記補正上限値を小さくして前記内部時刻の補正を行う一方、前記状況特定部で特定した前記車間距離が長くなるのに応じて、前記補正上限値を大きくして前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項9】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記状況特定部は、前記状況として、前記車両が遠隔操作による自動運転中か否かと、前記車両の周辺監視に用いられる周辺監視センサの不具合の有無とを特定するものであり、
前記時刻補正部は、前記車両が遠隔操作による自動運転中、且つ、前記周辺監視センサの不具合ありと前記状況特定部で特定した場合に、前記車両が遠隔操作による自動運転中でない、若しくは、前記周辺監視センサの不具合なしと前記状況特定部で特定した場合よりも、前記補正上限値を大きくして前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項10】
請求項1に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記時刻取得部は、測位衛星から通信によって、前記高精度時刻の情報を逐次取得するものであり、
前記車両の外部の、前記測位衛星以外の機器から通信によって、前記高精度時刻よりも精度が劣るが前記内部時刻よりも正確な時刻である暫定時刻の情報を取得することが可能な暫定取得部(170)を備え、
前記時刻補正部(150c)は、前記時刻取得部での前記高精度時刻の情報の取得が中断されているが、前記暫定取得部で前記暫定時刻の情報を取得することが可能な場合には、前記暫定取得部で取得する前記暫定時刻の情報をもとに、前記暫定時刻に前記内部時刻を暫定的に同期させる補正を行う車両用時刻補正装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記内部時刻を前記高精度時刻に同期させているか前記暫定時刻に同期させているかを識別可能な情報を、前記車両の外部に出力させる情報出力部(180)を備える車両用時刻補正装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の車両用時刻補正装置であって、
前記高精度時刻と前記時刻制御部で補完していた前記内部時刻との差が規定値以上の場合に、前記車両を所定速度以下に減速若しくは停車させる指示を行う制御指示部(190)を備え、
前記時刻補正部(150d)は、前記制御指示部での指示後に、前記車両が前記所定速度以下に減速若しくは停車してから、前記補正上限値なしで前記内部時刻の補正を行う車両用時刻補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用時刻補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自装置の外部から取得する、自装置の内蔵時計が刻む内部時刻よりも正確な時刻情報をもとに、自装置の内部時刻を補正する技術が知られている。特許文献1には、GPS受信機から受け付けた参照クロックに、生成する内部クロックを同期処理させる人工衛星が開示されている。特許文献1では、参照クロックの健全性に異常があれば、基準クロックに基づいて衛星内時刻を刻むと共に同期処理を停止する。特許文献1では、参照クロックに内部クロックを同期させる場合に、ソフトウェア動作への影響を最小にするべく、急激な時間変動が発生しないようにする。具体的には、一度に低減できる参照クロックと内部クロックとの位相差に上限を設け、複数回に分けて位相差を低減することで、同期を行う。つまり、内部時刻の1回分の補正量に上限を設けて補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定まった軌道を等速で回っている人工衛星と異なり、車両では環境に応じた運転が要求される。よって、自動運転制御に内部時刻を利用する車両では、内部時刻の1回分の補正量に上限を設けず、迅速に補正を行うことが、好ましい場合もあると考えられる。一方、内部時刻の1回分の補正量に上限を設け、時間をかけて補正を行うことが好ましい状況もあると考えられる。
【0005】
この開示の1つの目的は、自動運転制御に内部時刻を利用する車両において、内部時刻を大幅に補正する必要がある場合であっても、乗員に不具合を感じさせにくくすることを可能にする車両用時刻補正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、1つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の車両用時刻補正装置は、自動運転制御に内部時刻を利用する車両で用いられる車両用時刻補正装置であって、車両の外部から通信によって受信する、内部時刻よりも正確な時刻である高精度時刻の情報を逐次取得する時刻取得部(110)と、時刻取得部で逐次取得する高精度時刻の情報をもとに、高精度時刻に内部時刻を逐次同期させる時刻同期制御部(130)と、時刻取得部での高精度時刻の情報の取得が中断された場合に、車両において自律的に内部時刻を補完する時刻制御部(120)と、時刻取得部での高精度時刻の情報の取得が、中断後に再開された場合に、その高精度時刻と時刻制御部で補完していた内部時刻との差を補正する時刻補正部(150,150a,150b,150c,150d)と、車両のおかれた状況及び車両自体の状況の少なくともいずれかの状況を特定する状況特定部(140,140a,140b)とを備え、時刻補正部は、状況特定部で特定する状況に応じて、時刻補正部での1度の補正あたりの補正量の上限値である補正上限値を変更する。
【0008】
これによれば、内部時刻よりも正確な高精度時刻の情報の取得中断時に車両において自律的に補完していた内部時刻と、高精度時刻との差を、中断後に再開された場合に補正する際、車両のおかれた状況及び車両自体の状況の少なくともいずれかの状況に応じて、1度の補正あたりの補正量の上限値を変更できる。よって、1度の補正あたりの補正量を小さく抑えたい状況において、補正量の上限値を小さくし、1度の補正あたりの補正量を小さく抑えることが可能になる。また、1度の補正あたりの補正量を小さく抑える必要がないか大きくしたい状況において、補正量の上限値を大きくし、1度の補正あたりの補正量を大きくすることが可能になる。その結果、自動運転制御に内部時刻を利用する車両において、内部時刻を大幅に補正する必要がある場合であっても、乗員に不具合を感じさせにくくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両用システム1の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図2】時刻同期装置10の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図3】1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行う場合の例について説明するための図である。
【
図4】1度の補正あたりの補正量を抑え、複数回に分けて内部時刻の補正を行う場合の例について説明するための図である。
【
図5】1度の補正あたりの補正量を抑え、複数回に分けて内部時刻の補正を行う場合の例について説明するための図である。
【
図6】時刻同期装置10での時刻補正関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】車両用システム1aの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図8】時刻同期装置10aの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図9】車両用システム1bの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図10】時刻同期装置10bの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図11】車両用システム1cの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図12】時刻同期装置10cの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図13】時刻同期装置10cでの時刻補正関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】車両用システム1dの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図15】時刻同期装置10dの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図16】時刻同期装置10dでの時刻補正関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。
【0011】
(実施形態1)
<車両用システム1の概略構成>
以下、本開示の実施形態1について図面を用いて説明する。
図1に示す車両用システム1は、自動運転が可能な車両(以下、自動運転車両)で用いることが可能なものである。
図1に示す車両用システム1は、遠隔操作による自動運転が可能な車両(以下、遠隔運転車両)で用いることが可能なものであることが好ましい。遠隔運転車両は、遠隔操作センタから送信される遠隔操作指令値に従って車両制御を行うことで、遠隔操作による自動運転を実現すればよい。
【0012】
車両用システム1は、
図1に示すように、時刻同期装置10、通信モジュール11、ロケータ12、地図データベース(以下、地
図DB)13、車両状態センサ14、周辺監視センサ15、車両制御ECU16、及び自動運転ECU17を含んでいる。これらは、車内LAN(
図1のLAN参照)と接続される構成とすればよい。車両用システム1を用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0013】
自動運転車両の自動運転の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えば以下のようにLV0~5に区分される。
【0014】
LV0は、システムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは動的運転タスクと言い換えてもよい。運転タスクは、例えば操舵、加減速、及び周辺監視とする。LV0は、いわゆる手動運転に相当する。LV1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。LV1は、いわゆる運転支援に相当する。LV2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。LV2は、いわゆる部分運転自動化に相当する。LV1~2も自動運転の一部であるものとする。
【0015】
例えば、LV1~2の自動運転は、安全運転に係る監視義務(以下、単に監視義務)が運転者にある自動運転とする。監視義務としては、目視による周辺監視がある。LV3の自動運転は、特定の条件下ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。LV3の自動運転では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転者が迅速に対応可能であることが求められる。LV3は、いわゆる条件付運転自動化に相当する。
【0016】
LV4の自動運転は、対応不可能な道路,極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。LV4は、いわゆる高度運転自動化に相当する。LV5の自動運転は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。LV5は、いわゆる完全運転自動化に相当する。例えば、LV3~5の自動運転は、監視義務が運転者にない自動運転とする。つまり、監視義務なし自動運転とする。LV3~5の自動運転のうち、LV4以上の自動運転は、運転者の睡眠が許可される自動運転とする。つまり、睡眠許可自動運転とする。
【0017】
本施形態の自動運転車両は、自動化レベルが切り替え可能であるものとする。自動化レベルは、LV0~5のうちの一部のレベル間でのみ切り替え可能な構成であってもよい。なお、車両用システム1が用いられる自動運転車両は、自動化レベルが固定であっても構わない。
【0018】
通信モジュール11は、自車の外部のセンタとの間で、無線通信を介して情報の送受信を行う。つまり、広域通信を行う。通信モジュール11は、センタから配信される情報を広域通信で受信する。通信モジュール11は、他車との間で、無線通信を介して情報の送受信を行ってもよい。つまり、車車間通信を行ってもよい。通信モジュール11は、路側に設置された路側機との間で、無線通信を介して情報の送受信を行ってもよい。つまり、路車間通信を行ってもよい。路車間通信を行う場合、通信モジュール11は、路側機を介して、自車の周辺車両から送信されるその周辺車両の情報を受信してもよい。通信モジュール11は、センタを介して、自車の周辺車両から送信されるその周辺車両の情報を広域通信で受信してもよい。
【0019】
通信モジュール11は、遠隔操作センタから遠隔操作指令値が送信されてきた場合には、この遠隔操作指令値を受信する。遠隔操作センタは、自動運転車両の遠隔操作を行うためのセンタである。
【0020】
ロケータ12は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ12は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、ロケータ12を搭載した自車の車両位置(以下、自車位置)を逐次測位する。自車位置は、例えば緯度経度の座標で表されるものとすればよい。なお、自車位置の測位には、後述する車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離も用いる構成としてもよい。ロケータ12は、測位信号を受信する際に、測位信号に含まれる測位衛星の時刻情報も受信する。この時刻情報は、例えば原子時計で生成される時刻の情報である。この時刻情報は、絶対時刻の情報と言い換えることができる。また、この時刻情報は、時刻同期装置10で生成する内部時刻よりも正確な時刻の情報である。つまり、高精度時刻の情報に相当する。以下では、測位衛星からGNSS受信機が受信する時刻の情報を、絶対時刻の情報と呼ぶ。
【0021】
地
図DB13は、不揮発性メモリであって、高精度地図データを格納している。高精度地図データは、ナビゲーション機能での経路案内に用いられる地図データよりも高精度な地図データである。地
図DB13には、経路案内に用いられる地図データ(以下、経路案内地図データ)も格納しているものとする。
【0022】
高精度地図データには、例えば道路の三次元形状情報,車線数情報,各車線に許容された進行方向を示す情報等の自動運転に利用可能な情報が含まれている。他にも、高精度地図データには、例えば区画線等の路面標示について、両端の位置を示すノード点の情報が含まれていてもよい。
【0023】
経路案内地図データは、リンクデータ,ノードデータ等の地図データを格納している。リンクデータは、リンクを特定する固有番号であるリンクID、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンクの形状情報、リンクの始端と終端とのノード座標、及び道路属性の各データから構成される。道路属性としては、道路名称、道路種別、道路幅員、及び速度規制値等がある。一方、ノードデータは、地図上のノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノード種別、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種別等の各データから構成される。
【0024】
なお、外部サーバから配信される地図データを、通信モジュール11を介して広域通信で受信し、地
図DB13に格納してもよい。この場合、地
図DB13を揮発性メモリとし、通信モジュール11が自車位置に応じた領域の地図データを逐次取得する構成としてもよい。
【0025】
車両状態センサ14は、自車の各種状態を検出するためのセンサ群である。車両状態センサ14としては、車速センサ等がある。車速センサは、車速パルスを出力する。車両状態センサ14は、検出したセンシング情報を車内LANへ出力する。なお、車両状態センサ14で検出したセンシング情報は、自車に搭載されるECUを介して車内LANへ出力される構成であってもよい。
【0026】
周辺監視センサ15は、自車の周辺環境を監視する。一例として、周辺監視センサ15は、歩行者,他車等の移動物体、及び路上の落下物等の静止物体といった自車周辺の障害物を検出する。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示を検出する。周辺監視センサ15は、例えば、自車周辺の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周辺の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等のセンサである。周辺監視カメラは、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として自動運転ECU17へ逐次出力する。ソナー、ミリ波レーダ、LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報として自動運転ECU17へ逐次出力する。周辺監視センサ15で検出したセンシング情報は、車内LANを介さずに自動運転ECU17に出力される構成としてもよい。
【0027】
車両制御ECU16は、自車の走行制御を行う電子制御装置である。走行制御としては、加減速制御及び/又は操舵制御が挙げられる。車両制御ECU16としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU16は、自車に搭載された電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力することで走行制御を行う。
【0028】
自動運転ECU17は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。自動運転ECU17は、機能ブロックとして、走行環境認識部、行動判断部、及び制御実行部を備える。
【0029】
走行環境認識部は、ロケータ12から取得する自車位置、地
図DB13から取得する地図データ、及び周辺監視センサ15から取得するセンシング情報から、自車の走行環境を認識する。一例として、走行環境認識部は、これらの情報を用いて、自車の周囲の物体の位置、形状、及び移動状態を認識し、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。走行環境認識部では、自車位置及び地図データから、地図上での自車位置を認識すればよい。走行環境認識部は、通信モジュール11を介して周辺車両等の位置情報,速度情報等を取得できる場合には、これらの情報も用いて走行環境を認識すればよい。
【0030】
行動判断部は、運転者と自車のシステムとの間で運転操作の制御主体を切り替える。行動判断部は、運転操作の制御権がシステム側にある場合、走行環境認識部による走行環境の認識結果に基づき、自車を走行させる走行計画を決定する。走行計画としては、長中期の走行計画と、短期の走行計画とが生成される。
【0031】
長中期の走行計画では、設定された目的地に自車を向かわせるための経路が生成される。この経路とは、複数のリンクからなる経路である。自動運転ECU17は、この経路を、ナビゲーション機能の経路探索と同様にして生成すればよい。この経路探索は、例えばダイクストラ法によるコスト計算によって行えばよい。ダイクストラ法によるコスト計算では、距離優先,時間優先等の探索条件を満たすリンクのリンクコストを小さく設定する。そして、リンクコストの値がより小さくなる経路を推奨経路として探索する。
【0032】
行動判断部は、短期の走行計画では、生成した自車の周囲の仮想空間を用いて、長中期の走行計画に従った走行を実現するための予定走行軌跡を生成する。短期の走行計画では、車線変更のための操舵、速度調整のための加減速、及び障害物回避のための操舵及び制動等の実行を決定する。
【0033】
制御実行部は、運転操作の制御権が自車のシステム側にある場合、車両制御ECU16との連携により、行動判断部にて決定された走行プランに従って、自車の加減速制御及び操舵制御等を実行する。自動運転でのこれらの車両制御が、自動運転制御に相当する。
【0034】
なお、自車が遠隔自動運転を行う場合、自動運転ECU17は、走行環境認識部で認識した走行環境を、通信モジュール11を介して遠隔操作センタに送信すればよい。この場合、遠隔操作センタが、受信する走行環境をもとに、行動判断部と同様にして走行計画を決定する。自車が遠隔自動運転を行う場合、制御実行部は、通信モジュール11を介して遠隔操作センタから遠隔操作指令値を取得する。そして、制御実行部は、取得した遠隔操作指令値に従って、自車の加減速制御及び操舵制御等を実行する。遠隔操作指令値は、絶対時刻に紐づいた、操舵,加速,減速等の指令値である。遠隔自動運転でのこれらの車両制御も、自動運転制御に相当する。
【0035】
時刻同期装置10は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるコンピュータを主体として構成される。時刻同期装置10は、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、時刻同期に関する処理を行う。同期関連処理では、自車のシステム側の内部時刻を絶対時刻に同期させる。自車のシステム側の内部時刻は、自動運転制御に利用される。この時刻同期装置10が、車両用時刻補正装置に相当する。なお、時刻同期装置10の構成については以下で詳述する。
【0036】
<時刻同期装置10の概略構成>
続いて、
図2を用いて時刻同期装置10の概略構成についての説明を行う。時刻同期装置10は、
図2に示すように、時刻取得部110、時刻制御部120、時刻同期制御部130、状況特定部140、時刻補正部150、及び時刻出力部160を機能ブロックとして備える。なお、時刻同期装置10が実行する機能の一部又は全部を、1つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、時刻同期装置10が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。
【0037】
時刻取得部110は、ロケータ12で測位衛星から受信した絶対時刻の情報を取得する。時刻取得部110は、ロケータ12で絶対時刻の情報を受信するごとに、受信した絶対時刻の情報をロケータ12から取得する。一例として、測位衛星からの絶対時刻の送信は、1sec周期とすればよい。
【0038】
時刻制御部120は、時刻同期装置10の内部クロックをカウントすることにより時刻を計時する。そして、時刻制御部120は、計時した時刻を内部時刻として生成する。内部時刻の精度は、絶対時刻よりも劣るものとする。一例として、内部時刻の生成は、100msec周期とすればよい。
【0039】
時刻同期制御部130は、時刻取得部110で逐次取得する絶対時刻の情報をもとに、その絶対時刻に、時刻制御部120で生成した内部時刻を逐次同期させる。時刻同期制御部130は、時刻取得部110で絶対時刻の情報を取得した場合に、この絶対時刻に内部時刻を同期させる。つまり、時刻同期制御部130は、GNSS受信機で測位衛星から絶対時刻の情報を受信した場合に、この絶対時刻に内部時刻を同期させる。以下では、絶対時刻に内部時刻を同期させることを時刻同期と呼ぶ。
【0040】
時刻制御部120は、時刻同期が行われた後、時刻取得部110で新たに絶対時刻の情報を取得するまでの間は、自車において自律的に内部時刻を補完する。つまり、時刻同期した内部時刻を基準として、内部クロックでカウントした時刻を内部時刻として扱う。時刻制御部120は、時刻取得部110での絶対時刻の情報の取得が中断された場合にも、自車において自律的に内部時刻を補完する。絶対時刻の情報の取得の中断とは、絶対時刻の情報の取得間隔が、測位衛星からの絶対時刻の情報の送信周期よりも長くなった場合を指す。絶対時刻の情報の取得が中断される状況としては、自車がトンネル等に進入し、測位衛星からの測位信号を受信できなくなった状況が挙げられる。他にも、地下駐車場での長時間の停車時に、測位衛星からの測位信号を受信できなくなった状況が挙げられる。なお、絶対時刻の情報の取得が中断される状況が長引くほど、自車において自律的に補完する内部時刻の精度は低下していく。つまり、絶対時刻と内部時刻との差が大きくなっていく。以下では、絶対時刻の情報の取得の中断を、時刻取得中断と呼ぶ。
【0041】
状況特定部140は、自車のおかれた状況及び自車自体の状況の少なくともいずれかの状況を特定する。状況特定部140は、状況として、自車が遠隔操作による自動運転中か否かを特定すればよい。状況特定部140は、自動運転ECU17をモニタすることで、自車が遠隔操作による自動運転中か否かを特定すればよい。状況特定部140は、状況として、自車の車速を特定すればよい。状況特定部140は、車両状態センサ14のセンシング結果から、自車の車速を特定すればよい。
【0042】
状況特定部140は、状況として、自動運転制御での予測される自車の挙動を特定すればよい。自動運転制御での予測される自車の挙動を、以下では予測挙動と呼ぶ。状況特定部140は、自動運転ECU17の行動判断部で決定される走行計画から、予測挙動を特定すればよい。状況特定部140は、状況として、自車の走行路の形状を特定すればよい。状況特定部140は、自動運転ECU17の走行環境認識部で認識される走行環境から、自車の走行路の形状を特定すればよい。状況特定部140は、直進路かカーブ路かを特定すればよい。状況特定部140は、曲率が規定値以上の区間にあたる走行路をカーブ路と特定すればよい。規定値は、任意に設定可能な値とすればよい。
【0043】
状況特定部140は、状況として、自車の先行車両及び後続車両の少なくともいずれかの対象車両と自車との間の車間距離を特定すればよい。この車間距離を、以下では対象車間距離と呼ぶ。状況特定部140は、自動運転ECU17の走行環境認識部で認識される走行環境から、対象車間距離を特定すればよい。状況特定部140は、状況として、周辺監視センサ15の不具合の有無を特定すればよい。状況特定部140は、自動運転ECU17の走行環境認識部での認識結果から、周辺監視センサ15の不具合の有無を特定すればよい。例えば、走行環境の認識が失敗する場合に、周辺監視センサ15の不具合ありと特定すればよい。
【0044】
時刻補正部150は、時刻取得中断後に絶対時刻の情報の取得が再開された場合に、その絶対時刻と時刻制御部120で補完していた内部時刻との差を補正する。この絶対時刻と補完していた内部時刻との差を、以下では必要補正量と呼ぶ。時刻補正部150は、状況特定部140で特定する状況に応じて、補正上限値を変更する。補正上限値とは、時刻補正部150での1度の補正あたりの補正量の上限値である。時刻補正部150は、必用補正量が補正上限値以下の場合には、1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行う。一方、時刻補正部150は、必用補正量が補正上限値を上回る場合には、1度の補正での補正量が補正上限値に収まるように補正量を設定する。例えば、1度の補正あたりの補正量が均等になるように複数回分の補正量を設定すればよい。そして、1度の補正あたりの補正量を、設定した補正量とし、複数回に分けて内部時刻の補正を行う。
【0045】
以上の構成によれば、1度の補正あたりの補正量を小さく抑えたい状況において、1度の補正あたりの補正量を小さく抑えることが可能になる。また、1度の補正あたりの補正量を小さく抑える必要がないか大きくしたい状況において、1度の補正あたりの補正量を大きくすることが可能になる。その結果、自動運転制御に内部時刻を利用する車両において、内部時刻を大幅に補正する必要がある場合であっても、乗員に不具合を感じさせにくくすることが可能になる。
【0046】
ここで、
図3~
図5を用いて、本実施形態の効果について補足して説明する。ここでは、一例として遠隔自動運転の場合を例に挙げて説明する。
図3~
図5の例では、時刻取得中断により、絶対時刻と内部時刻との差が大きくなっているものとする。
図3は、1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行う場合の例について説明するための図である。
図4,
図5は、1度の補正あたりの補正量を抑え、複数回に分けて内部時刻の補正を行う場合の例について説明するための図である。
図4は、1回あたりの補正される時刻を均等にするように内部時刻の補正を行う場合の例である。
図5は、1回あたりの指令値の変化量を均等にするように内部時刻の補正を行う場合の例である。
図3~
図5の縦軸が指令値を示す。指令値とは、前述したように、操舵,加速,減速等の指令値である。
図3~
図5の横軸が時刻を示す。
図3~
図5の点線が、遠隔操作センタからの指令値である。
図3~
図5の太字の実線が、実際の自車への指令値である。
図3~
図5の両矢印が、遠隔操作センタからの指令値に対する実際の自車への指令値の時刻の遅れを示す。
【0047】
図3に示すように、1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行う場合、指令値の変化量が大きくなる。この場合、車両挙動が急激に変化することになり、乗員に不具合を感じさせやすくなる。一方、
図4,
図5に示すように、複数回に分けて内部時刻の補正を行う場合、指令値の変化量が小さくなる。この場合、車両挙動が急激に変化しにくく、乗員に不具合を感じさせにくくなる。なお、複数回に分けて内部時刻の補正を行う場合の例として、以下の例が挙げられる。
図4に示すように、1回あたりの補正される時刻を均等にするように内部時刻の補正を行ってもよい。
図5に示すように、1回あたりの指令値の変化量を均等にするように内部時刻の補正を行ってもよい。なお、
図4,
図5のいずれの場合も、1回あたりの内部時刻の補正量は、補正上限値に収まるように設定される。
【0048】
時刻補正部150は、状況特定部140で自車が遠隔操作による自動運転中と特定したことをもとに、補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。この場合、時刻補正部150は、状況特定部140で自車が遠隔操作による自動運転中でないと特定した場合よりも、補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行えばよい。遠隔自動運転中は、内部時刻の補正量が大きくなり過ぎると、遠隔操作指令値が急激に変化し、車両挙動に急激な変化が生じるおそれがある。これに対して、遠隔自動運転中は補正上限値を小さくすることで、車両挙動の急激な変化を抑えることが可能になる。
【0049】
時刻補正部150は、状況特定部140で特定した自車の車速が速くなるのに応じて、補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。時刻補正部150は、状況特定部140で特定した自車の車速が遅くなるのに応じて、補正上限値を大きくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。自車の車速が速くなるほど、内部時刻の補正による位置誤差が大きくなる。位置誤差が速くなるほど、高精度地図を用いた自動運転の精度が低下するため、位置誤差は小さく抑えることが好ましい。これに対して、以上の構成では、自車の車速が速くなるのに応じて、補正上限値を小さくする。よって、位置誤差を小さく抑えることが可能になる。一方、自車の車速が遅くなるほど、1度の補正量が大きくても、位置誤差は小さくなる。これに対して、以上の構成では、自車の車速が遅くなるのに応じて、補正上限値を大きくする。よって、位置誤差を小さく抑えられる状況では、補正量を大きくして迅速に内部時刻を補正することが可能になる。
【0050】
例えば必要補正量が30msecの場合、1度に補正すると、自車が100km/hで走行していた際に、約0.8mの位置誤差が発生することになる。ここで、補正上限値を5msecとした場合、6度に分けて補正することが必要になる。しかしながら、補正ごとの位置誤差は約0.15m程度で済むことになる。補正上限値は、この位置誤差の許容量に応じて設定すればよい。車速と補正上限値との対応関係は、一次関数,指数関数等で表現すればよい。車速と補正上限値との対応関係は、マップで表現してもよい。
【0051】
時刻補正部150は、状況特定部140で、所定の予測挙動を特定した場合に、自車の実際の挙動がその予測挙動に達するまで内部時刻の補正を保留することが好ましい。そして、時刻補正部150は、自車の実際の挙動がその予測挙動に達してから、補正上限値なしで内部時刻の補正を行うことが好ましい。所定の予測挙動とは、設定時間内に自車の車速が所定値以下となること、若しくは設定時間内に自車が停車することである。設定時間は任意に設定可能とすればよい。補正上限値なしでの内部時刻の補正とは、1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行うことを指す。上述の所定の予測挙動に達した状況とは、内部時刻の補正による位置誤差が小さく抑えられる状況である。よって、以上の構成によれば、内部時刻の補正による位置誤差が小さく抑えられる状況となるまで待ってから内部時刻を補正することが可能になる。
【0052】
時刻補正部150は、状況特定部140で特定した自車の走行路の形状がカーブ路の場合に、直線路の場合よりも補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。時刻補正部150は、状況特定部140で特定した自車の走行路の形状が直線路の場合に、カーブ路の場合よりも補正上限値を大きくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。自車の走行路がカーブ路の場合、車両挙動の急激な変化を抑えることが好ましい。これに対して、以上の構成では、自車の走行路の形状がカーブ路の場合に、直線路の場合よりも補正上限値を小さくする。よって、車両挙動の急激な変化を抑えることが可能になる。一方、自車の走行路が直線の場合、カーブ路の場合に比べ、車両挙動の急激な変化を許容しやすい。これに対して、以上の構成では、自車の走行路が直線の場合、カーブ路の場合に比べ、補正上限値を大きくする。よって、車両挙動の急激な変化を許容しやすい状況では、補正量を大きくして迅速に内部時刻を補正することが可能になる。
【0053】
時刻補正部150は、状況特定部140で特定した対象車間距離が短くなるのに応じて、補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。時刻補正部150は、状況特定部140で特定した対象車間距離が長くなるのに応じて、補正上限値を大きくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。対象車間距離が短くなるほど、自車の車両挙動の急激な変化を抑えることが好ましい。これに対して、以上の構成では、対象車間距離が短くなるのに応じて、補正上限値を小さくする。よって、車両挙動の急激な変化を抑えることが可能になる。一方、対象車間距離が長くなるほど、自車の車両挙動の急激な変化を許容しやすい。これに対して、以上の構成では、対象車間距離が長くなるほど、補正上限値を大きくする。よって、車両挙動の急激な変化を許容しやすい状況では、補正量を大きくして迅速に内部時刻を補正することが可能になる。
【0054】
時刻補正部150は、自車が遠隔自動運転中であっても、以下の条件を満たす場合には、補正上限値を大きくして内部時刻の補正を行うことが好ましい。この条件とは、周辺監視センサ15の不具合ありと状況特定部140で特定した場合である。ここで、補正上限値は、自車が遠隔自動運転中でない場合、及び周辺監視センサ15の不具合なしと状況特定部140で特定する場合よりも大きくすればよい。周辺監視センサ15の不具合ありの場合には、自車が自律的に障害物を回避することがより困難になる。よって、内部時刻をより迅速に補正し、遠隔操作指令値に従った遠隔自動運転を行うことが好ましい。以上の構成によれば、自車が遠隔自動運転中であっても、内部時刻をより迅速に補正することが好ましい状況においては、内部時刻をより迅速に補正することが可能になる。
【0055】
なお、時刻補正部150は、必要補正量が設定値未満の場合には、状況特定部140で特定した状況に応じた内部時刻の補正を行わない構成としてもよい。この場合、時刻同期制御部130が、時刻取得部110で取得した絶対時刻の情報をもとに、その絶対時刻に内部時刻を同期させればよい。ここで言うところの設定値は、任意に設定可能な値とすればよい。これによれば、必要補正量が十分に小さい場合に、状況特定部140で特定した状況に応じた内部時刻の補正を行う無駄を抑えることができる。
【0056】
時刻出力部160は、自動運転制御に利用する内部時刻を出力する。時刻出力部160は、時刻制御部120での補完も、時刻補正部150での補正も行われない場合は、時刻同期制御部130で同期した内部時刻を出力すればよい。時刻出力部160は、時刻制御部120での補完が行われたが、時刻補正部150での補正は行われない場合は、この補完が行われた内部時刻を出力すればよい。時刻出力部160は、時刻補正部150での補正が行われた場合は、この補正が行われた内部時刻を出力すればよい。
【0057】
<時刻同期装置10での時刻補正関連処理>
ここで、
図6のフローチャートを用いて、時刻同期装置10での内部時刻の補正に関連する処理(以下、時刻補正関連処理)の流れの一例について説明する。
図6のフローチャートは、時刻取得中断後にロケータ12で絶対時刻の情報を受信した場合に、開始される構成とすればよい。他にも、自動運転機能のオンオフを切り替えることができる構成の場合には、自動運転機能がオンとなっていることも条件に加える構成としてもよい。
【0058】
まず、ステップS1では、時刻取得部110が、ロケータ12で測位衛星から受信した絶対時刻の情報を取得する。ステップS2では、時刻制御部120が、内部時刻を生成する。ここでは、時刻制御部120は、時刻取得中断時に自律的に補完していた内部時刻を、内部時刻として生成する。
【0059】
ステップS3では、時刻補正部150が、S1で取得した絶対時刻と、S2で生成した内部時刻との差である必要補正量を特定する。ステップS4では、状況特定部140が、自車のおかれた状況及び自車自体の状況の少なくともいずれかの状況を特定する。
【0060】
ステップS5では、S4で特定した状況が、内部時刻の補正を保留する状況の場合(S5でYES)には、ステップS6に移る。内部時刻の補正を保留する状況としては、状況特定部140で、前述した所定の予測挙動を特定した場合が挙げられる。一方、S4で特定した状況が、内部時刻の補正を保留する状況でない場合(S5でNO)には、ステップS7に移る。以下では、内部時刻の補正の保留を、補正保留と呼ぶ。
【0061】
ステップS6では、補正保留を解除するタイミングとなった場合(S6でYES)には、ステップS7に移る。補正保留を解除するタイミングとしては、自車が停車したタイミングが挙げられる。補正保留を解除するタイミングは、自車の車速が所定値以下となったタイミングとしてもよい。補正保留を解除するタイミングは、時刻補正部150が判断すればよい。時刻補正部150は、状況特定部140で特定する自車の車速から、補正保留を解除するタイミングを判断すればよい。一方、補正保留を解除するタイミングとなっていない場合(S6でNO)には、S6の処理を繰り返す。
【0062】
ステップS7では、時刻補正部150が、S3で特定した必要補正量を分割して内部時刻を補正するか否かを判断する。S7では、S4で特定した状況に応じて、補正上限値を変更する。補正上限値を変更する条件として、複数の条件を用いる場合には、条件を満たす数に応じて補正上限値を上下させればよい。例えば、係数をかけ合わせる等して、補正条件値を上下させればよい。補正上限値を変更する条件の例は、前述した通りである。時刻補正部150は、必要補正量が補正上限値以下の場合に、必要補正量を分割せずに内部時刻を補正する判断を行う。一方、時刻補正部150は、必要補正量が補正上限値を上回る場合に、必要補正量を分割して内部時刻を補正する判断を行う。S7で必要補正量を分割して内部時刻を補正する判断を行った場合(S7でYES)には、ステップS9に移る。一方、S7で必要補正量を分割せずに内部時刻を補正する判断を行った場合(S7でNO)には、ステップS8に移る。
【0063】
ステップS8では、時刻補正部150が、S3で特定した必要補正量を1回分の補正量として設定する。つまり、1度の補正での補正量を、S3で特定した必要補正量とする。そして、ステップS10に移る。ステップS9では、時刻補正部150が、S3で特定した必要補正量を分割して補正する際の1回分の補正量を設定する。そして、ステップS10に移る。時刻補正部150は、時間あたりの補正量が均等になるように1回分の補正量を設定すればよい。時刻補正部150は、時間あたりの自動運転の制御量が均等になるように1回分の補正量を設定すればよい。この場合、各回の補正量は均等にならなくてもよい。
【0064】
ステップS10では、S8若しくはS9で設定された補正量で内部時刻を補正する。S8で設定された補正量で内部時刻を補正する場合、1度の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行うことになる。S9で設定された補正量で内部時刻を補正する場合、複数回の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行うことになる。
【0065】
ステップS11では、内部時刻の補正が完了した場合(S11でYES)には、時刻補正関連処理を終了する。一方、内部時刻の補正が完了していない場合(S11でNO)には、S10に戻って処理を繰り返す。複数回の補正で必要補正量分の内部時刻の補正を行う場合には、分割した回数分だけ、処理を繰り返すことになる。
【0066】
(実施形態2)
実施形態1の構成に限らず、以下の実施形態2のような構成としてもよい。以下では、実施形態2の一例について図を用いて説明する。
【0067】
<車両用システム1aの概略構成>
以下、本開示の実施形態2について図面を用いて説明する。
図7に示す車両用システム1aは、前述の自動運転車両で用いることが可能なものである。
図7に示す車両用システム1aは、前述の遠隔運転車両で用いることが可能なものであることが好ましい。
【0068】
車両用システム1aは、
図1に示すように、時刻同期装置10a、通信モジュール11a、ロケータ12、地
図DB13、車両状態センサ14、周辺監視センサ15、車両制御ECU16、及び自動運転ECU17aを含んでいる。車両用システム1aは、通信モジュール11の代わりに通信モジュール11aを含む。車両用システム1aは、時刻同期装置10の代わりに時刻同期装置10aを含む。車両用システム1aは、自動運転ECU17の代わりに自動運転ECU17aを含む。車両用システム1aは、これらの点を除けば、実施形態1の車両用システム1と同様である。
【0069】
通信モジュール11aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の通信モジュール11と同様である。以下では、この異なる点について説明する。通信モジュール11aは、交通インフラの管理センタから送信されてくる情報を受信する。交通インフラの管理センタを、以下では単に管理センタと呼ぶ。管理センタから送信されくる情報は、車両の通行の可否を切り替える交通インフラにおける通行の可否を特定可能な情報(以下、通行関連情報)であればよい。
【0070】
管理センタから送信されくる通行関連情報としては、信号機の信号制御情報が挙げられる。この場合、信号機が、車両の通行の可否を切り替える交通インフラに相当する。信号制御情報は、信号機の灯色状態、灯色の表示順序、信号1周期のサイクル長、1サイクルで各灯色に与えられる時間の比率、残りの予定秒数等の情報である。信号制御情報は、後述する絶対時刻に紐づけられている。なお、管理センタから送信されくる通行関連情報は、信号制御情報以外であってもよい。例えば、線路の踏み切りの開閉のタイミングを特定可能な情報であってもよい。この場合、踏み切りが、車両の通行の可否を切り替える交通インフラに相当する。
【0071】
自動運転ECU17aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の自動運転ECU17と同様である。以下では、この異なる点について説明する。自動運転ECU17aの行動判断部は、通信モジュール11aで管理センタから通行関連情報を受信した場合に、交通インフラにおける通行の可否を特定する。通行関連情報には、絶対時刻が紐付けられている。なお、通信モジュール11aは、交通インフラから交通関連情報が送信される場合には、この交通関連情報を受信して用いてもよい。また、行動判断部は、ロケータ12で測位衛星から受信する絶対時刻の情報を取得する。これにより、行動判断部では、絶対時刻を基準とした交通インフラの通行の可否のタイミングを特定する。そして、このタイミングと、走行計画から推定される交通インフラへの自車の到達時刻とから、交通インフラの通行の可否を特定する。行動判断部は、時刻取得中断が生じた場合、時刻取得中断後に測位衛星から受信できた絶対時刻を用いて、交通インフラの通行の可否を特定すればよい。行動判断部は、交通インフラの通行が可能と特定した場合に、その交通インフラを通過する走行計画を決定する。一方、行動判断部は、交通インフラの通行が不可能と特定した場合に、その交通インフラの手前で停車する走行計画を決定する。走行計画では、交通インフラの通行が可能と特定するまで停車を継続するように決定すればよい。
【0072】
交通インフラが信号機の場合は、以下のようにすればよい。行動判断部は、青信号の灯色期間に自車が信号機に到達予定の場合に、この信号機を通行可能と特定すればよい。一方、行動判断部は、青信号以外の灯色期間に自車が信号機に到達予定の場合には、この信号機を通行不可能と特定すればよい。青信号以外の灯色期間は、赤信号,黄色信号の灯色期間とすればよい。なお、時間帯によっては、赤色,黄色の点滅信号の期間に自車が信号機に到達予定の場合に、この信号機を通行可能と特定してもよい。交通インフラが踏み切りの場合には、遮断機が開いている期間に自車が踏み切りに到達予定の場合に、この踏み切りを通行可能と特定すればよい。一方、行動判断部は、遮断機が閉じている期間に自車が踏み切りに到達予定の場合には、この踏み切りを通行不可能と特定すればよい。なお、遠隔操作センタは、上述の行動判断部と同様に、交通インフラの通行の可否を特定し、走行計画を決定してもよい。
【0073】
<時刻同期装置10aの概略構成>
続いて、
図8を用いて時刻同期装置10aの概略構成についての説明を行う。時刻同期装置10は、
図2に示すように、時刻取得部110、時刻制御部120、時刻同期制御部130、状況特定部140a、時刻補正部150a、及び時刻出力部160を機能ブロックとして備える。時刻同期装置10aは、状況特定部140の代わりに状況特定部140aを備える。時刻同期装置10aは、時刻補正部150の代わりに時刻補正部150aを備える。時刻同期装置10aは、これらの点を除けば、実施形態1の時刻同期装置10と同様である。この時刻同期装置10aも車両用時刻補正装置に相当する。
【0074】
状況特定部140aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の状況特定部140と同様である。以下では、この異なる点について説明する。状況特定部140aは、状況として、車両の通行の可否を切り替える交通インフラにおける通行の可否を特定する。状況特定部140aは、前述の行動判断部での特定結果から、交通インフラにおける通行の可否を特定すればよい。
【0075】
時刻補正部150aは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の時刻補正部150と同様である。以下では、この異なる点について説明する。時刻補正部150aは、交通インフラにおける通行が許可されると状況特定部140aで特定した場合に、以下の補正を行う。時刻補正部150aは、交通インフラにおける通行が許可されない場合よりも補正上限値を小さくして内部時刻の補正を行う。一方、時刻補正部150aは、交通インフラにおける通行が許可されないと状況特定部140aで特定した場合には、以下の補正を行う。時刻補正部150aは、その交通インフラにおいて自車が停車するまで内部時刻の補正を保留し、自車が停車してから、補正上限値なしで内部時刻の補正を行う。
【0076】
以上の構成によれば、交通インフラにおける通行が許可される場合には、1度の補正あたりの補正量を小さく抑えることが可能になる。よって、走行中における1度の補正あたりの補正量を小さく抑えることが可能になる。従って、走行中に内部時刻を大幅に補正する必要がある場合であっても、乗員に不具合を感じさせにくくすることが可能になる。一方、交通インフラにおける通行が許可されない場合には、その交通インフラでの自車の停止まで待って、補正上限値なしで内部時刻の補正を行う。停止中であれば、1度の補正あたりの補正量が大きくなっても、自車の挙動には影響を与えない。よって、乗員に不具合を感じさせにくいタイミングで、迅速に内部時刻の補正を行うことが可能になる。
【0077】
なお、時刻同期装置10aでの時刻補正関連処理については、例えば以下のようにすればよい。S5の処理において、内部時刻の補正を保留する状況に、交通インフラにおける通行が許可されないと状況特定部140aで特定した場合を含ませればよい。
【0078】
(実施形態3)
前述の実施形態の構成に限らず、以下の実施形態3のような構成としてもよい。以下では、実施形態3の一例について図を用いて説明する。
【0079】
<車両用システム1bの概略構成>
以下、本開示の実施形態3について図面を用いて説明する。
図9に示す車両用システム1bは、前述の自動運転車両で用いることが可能なものである。
図9に示す車両用システム1bは、前述の遠隔運転車両で用いることが可能なものであることが好ましい。
【0080】
車両用システム1bは、
図9に示すように、時刻同期装置10b、通信モジュール11a、ロケータ12、地
図DB13、車両状態センサ14、周辺監視センサ15、車両制御ECU16、及び自動運転ECU17を含んでいる。車両用システム1bは、時刻同期装置10の代わりに時刻同期装置10bを含む点を除けば、実施形態1の車両用システム1と同様である。
【0081】
<時刻同期装置10bの概略構成>
続いて、
図10を用いて時刻同期装置10bの概略構成についての説明を行う。時刻同期装置10bは、
図2に示すように、時刻取得部110、時刻制御部120、時刻同期制御部130、状況特定部140b、時刻補正部150b、及び時刻出力部160を機能ブロックとして備える。時刻同期装置10bは、状況特定部140の代わりに状況特定部140bを備える。時刻同期装置10bは、時刻補正部150の代わりに時刻補正部150bを備える。時刻同期装置10bは、これらの点を除けば、実施形態1の時刻同期装置10と同様である。この時刻同期装置10bも車両用時刻補正装置に相当する。
【0082】
状況特定部140bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の状況特定部140と同様である。以下では、この異なる点について説明する。状況特定部140bは、状況として、閾値以上の横加速度及び横加加速度の少なくともいずれかの発生が推定されるカーブ路への自車の進入予定を特定すればよい。このカーブ路を、以下では対象カーブ路と呼ぶ。閾値は、任意に設定可能な値とすればよい。状況特定部140bは、カーブ路の曲率及びそのカーブ路での予定車速と、横加速度若しくは横加加速度との対応関係をもとに、対象カーブ路への進入予定を特定すればよい。対応関係は、例えばマップ等を用いればよい。状況特定部140bは、カーブ路の曲率については、地
図DB13から取得すればよい。状況特定部140bは、カーブ路での予定車速については、自動運転ECU17で決定した走行計画から取得すればよい。
【0083】
時刻補正部150bは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の時刻補正部150と同様である。以下では、この異なる点について説明する。時刻補正部150bは、対象カーブ路への進入予定を状況特定部140bで特定した場合に、その対象カーブ路への進入前の直線路において、内部時刻の補正を完了させる。一例としては、時刻補正部150bは、対象カーブ路への進入前の直線路において、補正上限値なしで内部時刻の補正を行えばよい。他にも、時刻補正部150bは、対象カーブ路に進入するまでに所定の複数回で補正完了できる補正上限値で内部時刻の補正を行ってもよい。この場合、対象カーブ路に進入するまでの猶予時間は、自車の車速と対象カーブ路までの距離とから推定すればよい。
【0084】
内部時刻の補正による車両挙動の変化が生じた場合、対象カーブ路よりも直線路の方が、乗員に不安を生じさせにくい。これに対して、以上の構成によれば、対象カーブ路の進入前の直線路で内部時刻の補正を完了するので、乗員に不安をより生じさせにくくなる。なお、実施形態3の構成と実施形態2の構成とを組み合わせても構わない。
【0085】
(実施形態4)
前述の実施形態の構成に限らず、以下の実施形態4のような構成としてもよい。以下では、実施形態4の一例について図を用いて説明する。
【0086】
<車両用システム1cの概略構成>
以下、本開示の実施形態4について図面を用いて説明する。
図11に示す車両用システム1cは、前述の自動運転車両で用いることが可能なものである。
図11に示す車両用システム1cは、前述の遠隔運転車両で用いることが可能なものであることが好ましい。
【0087】
車両用システム1cは、
図11に示すように、時刻同期装置10c、通信モジュール11c、ロケータ12、地
図DB13、車両状態センサ14、周辺監視センサ15、車両制御ECU16、及び自動運転ECU17を含んでいる。車両用システム1cは、時刻同期装置10の代わりに時刻同期装置10cを含む。車両用システム1cは、通信モジュール11の代わりに通信モジュール11cを含む。車両用システム1cは、これらの点を除けば、実施形態1の車両用システム1と同様である。
【0088】
通信モジュール11cは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の通信モジュール11と同様である。以下では、この異なる点について説明する。通信モジュール11cは、測位衛星以外の機器から、通信によって、暫定時刻の情報を受信する。暫定時刻は、絶対時刻よりも精度が劣るが、時刻同期装置10cで生成する内部時刻よりも正確な時刻である。測位衛星以外の機器の例としては、センタのサーバ装置,セルラー通信の基地局,無線LANのアクセスポイント,多機能携帯電話機等が挙げられる。以下では、この測位衛星以外の機器を、外部機器と呼ぶ。なお、通信モジュール11cが暫定時刻の情報を受信する通信は、セルラー通信であってもよいし、無線通信規格に準拠した通信であってもよい。
【0089】
<時刻同期装置10cの概略構成>
続いて、
図12を用いて時刻同期装置10cの概略構成についての説明を行う。時刻同期装置10cは、
図12に示すように、時刻取得部110、時刻制御部120、時刻同期制御部130、状況特定部140、時刻補正部150c、時刻出力部160、暫定取得部170、及び外部出力部180を機能ブロックとして備える。時刻同期装置10cは、時刻補正部150の代わりに時刻補正部150cを備える。時刻同期装置10cは、暫定取得部170及び外部出力部180を備える。時刻同期装置10cは、これらの点を除けば、実施形態1の時刻同期装置10と同様である。この時刻同期装置10cも車両用時刻補正装置に相当する。
【0090】
暫定取得部170は、外部機器から通信によって、暫定時刻の情報を取得する。暫定取得部170は、通信モジュール11cを介して、暫定時刻の情報を外部機器から取得すればよい。暫定取得部170は、外部機器から暫定時刻の情報を通信モジュール11cで受信した場合に、この暫定時刻の情報を取得すればよい。通信モジュール11cは、外部機器と通信が可能なタイミングにおいて、暫定時刻の情報を受信すればよい。このタイミングとは、自車が外部機器との通信範囲内に位置するタイミングとすればよい。
【0091】
時刻補正部150cは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の状況特定部140と同様である。以下では、この異なる点について説明する。時刻補正部150cは、時刻取得中断が生じているが、暫定取得部170で暫定時刻の情報を取得することが可能な場合に、暫定的な処理を行う。時刻補正部150cは、暫定的な処理として、暫定取得部170で取得する暫定時刻の情報をもとに、この暫定時刻に内部時刻を暫定的に同期させる補正を行う。
【0092】
暫定時刻は、時刻同期装置10cで生成する内部時刻よりも正確な時刻である。よって、暫定時刻に内部時刻を同期させ暫定的な補正を行えば、時刻同期装置10cで生成する内部時刻よりも正確な時刻に補正することができる。従って、時刻取得中断が解消し、絶対時刻に内部時刻を同期させる場合に、暫定的な補正を行わない場合に比べ、内部時刻の補正量を少なく抑えることが可能になる。その結果、乗員に不具合をより感じさせにくくすることが可能になる。
【0093】
外部出力部180は、内部時刻を絶対時刻に同期させているか暫定時刻に同期させているかを識別可能な情報(以下、識別用情報)を、自車の外部に出力させる。この外部出力部180が情報出力部に相当する。外部出力部180は、例えば通信モジュール11cを介して、例えば遠隔操作センタに識別用情報を送信すればよい。これによれば、内部時刻を絶対時刻に同期させているか暫定時刻に同期させているかに応じた遠隔操作の指示を、遠隔操作センタが行うことが可能になる。外部出力部180が識別用情報を出力する先は、遠隔操作センタ以外であっても構わない。
【0094】
<時刻同期装置10cでの時刻補正関連処理>
ここで、
図13のフローチャートを用いて、時刻同期装置10cでの時刻補正関連処理の流れの一例について説明する。
図13のフローチャートは、時刻取得中断時に、開始される構成とすればよい。他にも、自動運転機能のオンオフを切り替えることができる構成の場合には、自動運転機能がオンとなっていることも条件に加える構成としてもよい。
【0095】
まず、ステップS21では、ロケータ12で測位衛星から絶対時刻の情報を受信できる場合(S21でYES)には、ステップS22に移る。一方、絶対時刻の情報を受信できない場合(S21でNO)には、ステップS23に移る。ステップS22では、時刻取得部110が、ロケータ12で測位衛星から受信した絶対時刻の情報を取得し、ステップS25に移る。
【0096】
ステップS23では、通信モジュール11cで外部機器から暫定時刻の情報を受信できる場合(S23でYES)には、ステップS24に移る。一方、暫定時刻の情報を受信できない場合(S23でNO)には、ステップS35に移る。ステップS24では、暫定取得部170が、通信モジュール11cで外部機器から受信した暫定時刻の情報を取得し、ステップS25に移る。
【0097】
ステップS25では、S2と同様の処理を行う。ステップS26では、時刻補正部150cが、S3と同様にして、必要補正量を特定する。S26では、S22で絶対時刻の情報を取得した場合には、S22で取得した絶対時刻と、S25で生成した内部時刻との差である必要補正量を特定する。S26では、S24で暫定時刻の情報を取得した場合には、S24で取得した暫定時刻と、S25で生成した内部時刻との差である必要補正量を特定する。
【0098】
ステップS27~ステップS34では、S4~S11と同様の処理を行う。ステップS35では、時刻補正関連処理の終了タイミングであった場合(S35でYES)には、時刻補正関連処理を終了する。一方、時刻補正関連処理の終了タイミングでなかった場合(S35でNO)には、S21に戻って処理を繰り返す。時刻補正関連処理の終了タイミングとしては、例えば自車のパワースイッチがオフになったこと,自動運転機能がオフとなったこと等が挙げられる。パワースイッチとは、自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチである。なお、実施形態4の構成と実施形態2,3の構成とを組み合わせても構わない。
【0099】
(実施形態5)
前述の実施形態の構成に限らず、以下の実施形態5のような構成としてもよい。以下では、実施形態5の一例について図を用いて説明する。
【0100】
<車両用システム1dの概略構成>
以下、本開示の実施形態5について図面を用いて説明する。
図14に示す車両用システム1dは、前述の自動運転車両で用いることが可能なものである。
図14に示す車両用システム1dは、前述の遠隔運転車両で用いることが可能なものであることが好ましい。
【0101】
車両用システム1dは、
図14に示すように、時刻同期装置10d、通信モジュール11、ロケータ12、地
図DB13、車両状態センサ14、周辺監視センサ15、車両制御ECU16、及び自動運転ECU17を含んでいる。車両用システム1dは、時刻同期装置10の代わりに時刻同期装置10dを含む点を除けば、実施形態1の車両用システム1と同様である。
【0102】
<時刻同期装置10dの概略構成>
続いて、
図15を用いて時刻同期装置10dの概略構成についての説明を行う。時刻同期装置10dは、
図15に示すように、時刻取得部110、時刻制御部120、時刻同期制御部130、状況特定部140、時刻補正部150d、時刻出力部160、制御指示部190を機能ブロックとして備える。時刻同期装置10dは、時刻補正部150の代わりに時刻補正部150dを備える。時刻同期装置10dは、制御指示部190を備える。時刻同期装置10dは、これらの点を除けば、実施形態1の時刻同期装置10と同様である。この時刻同期装置10dも車両用時刻補正装置に相当する。
【0103】
制御指示部190は、絶対時刻と時刻制御部120で補完していた内部時刻との差が規定値以上の場合に、自車を所定速度以下に減速若しくは停車させる指示を行う。絶対時刻は、時刻取得部110で取得した絶対時刻を用いる。規定値は、任意に設定可能な値とすればよい。所定速度は、補正上限値なしで内部時刻の補正を行った場合でも乗員に不具合を感じさせにくいと推定される車速とすればよい。所定速度は、任意に設定可能な値とすればよい。制御指示部190は、自動運転ECU17に指示を行うことで、自車を所定速度以下に減速若しくは停車させればよい。制御指示部190での、自車を所定速度以下に減速若しくは停車させる指示を、以下では制御指示と呼ぶ。
【0104】
時刻補正部150dは、一部の処理が異なる点を除けば、実施形態1の時刻補正部150と同様である。以下では、この異なる点について説明する。時刻補正部150dは、制御指示部190での制御指示後に、自車が所定速度以下に減速若しくは停車してから、補正上限値なしで内部時刻の補正を行う。以上の構成によれば、必要補正量が大きい場合であっても、乗員に不具合をより感じさせにくくしつつ、迅速に内部時刻の補正を行うことが可能になる。時刻補正部150dは、自車が所定速度以下に減速若しくは停車するまでは、内部時刻の補正を保留すればよい。
【0105】
<時刻同期装置10dでの時刻補正関連処理>
ここで、
図16のフローチャートを用いて、時刻同期装置10dでの時刻補正関連処理の流れの一例について説明する。
図16のフローチャートは、時刻取得中断後にロケータ12で絶対時刻の情報を受信した場合に、開始される構成とすればよい。他にも、自動運転機能のオンオフを切り替えることができる構成の場合には、自動運転機能がオンとなっていることも条件に加える構成としてもよい。
【0106】
ステップS41~ステップS43までの処理は、S1~S3までの処理と同様とすればよい。ステップS44では、制御指示部190が、S43で特定した必要補正量が規定値以上か否かを判定する。言い換えると、S41で取得した絶対時刻と、S42で生成した内部時刻との差が、規定値以上か否かを判定する。そして、必要補正量が規定値未満であった場合(S44でYES)には、ステップS46に移る。一方、必要補正量が規定値以上であった場合(S44でNO)には、ステップS45に移る。
【0107】
ステップS45では、制御指示部190が、前述の制御指示を行い、ステップS46に移る。ステップS46では、S4と同様の処理を行う。ステップS47では、S5と同様の処理を行う。S47では、S45で制御指示部190が制御指示を行ったことも、内部時刻の補正を保留する状況に含ませればよい。ステップS48~ステップS53までの処理は、S6~S11までの処理と同様とする。なお、実施形態5の構成と実施形態2~4の構成とを組み合わせても構わない。
【0108】
(実施形態6)
前述の実施形態では、時刻補正部150,150a,150b,150c,150dが内部時刻の補正を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、時刻同期制御部130が内部時刻の補正までを行う構成としてもよい。なお、乗員が運転に関わる度合いが少ない車両ほど、時刻同期装置10,10a,10b,10c,10dを用いることにより、乗員に不具合を感じさせにくくする恩恵が得られやすい。よって、時刻同期装置10,10a,10b,10c,10dは、監視義務なし自動運転が可能な自動運転車両で用いることが好ましい。時刻同期装置10,10a,10b,10c,10dは、睡眠許可自動運転が可能な自動運転車両で用いることがより好ましい。また、時刻同期装置10,10a,10b,10c,10dは、遠隔自動運転が可能な自動運転車両で用いることがさらに好ましい。
【0109】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1,1a,1b,1c,1d 車両用システム、10,10a,10b,10c,10d 時刻同期装置(車両用時刻補正装置)、110 時刻取得部、120 時刻制御部、130 時刻同期制御部、140,140a,140b 状況特定部、150,150a,150b,150c,150d 時刻補正部、170 暫定取得部、180 外部出力部(情報出力部)、190 制限指示部