(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088052
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】乳酸菌含有組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20240625BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240625BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240625BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240625BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P43/00 105
A61K35/747
A61P3/00
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203021
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福崎 千紘
(72)【発明者】
【氏名】藤本 純子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 京
(72)【発明者】
【氏名】曽野 陽子
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B117LC04
4B117LK21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZC21
(57)【要約】
【課題】乳酸菌による新規な効果及び用途の提供。
【解決手段】ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株(受託番号:NITE BP-03571)を含む、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株(受託番号:NITE BP-03571)を含む、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善用組成物。
【請求項2】
アディポネクチンの減少抑制及び/又は改善用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪細胞の肥大化抑制及び/又は改善用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
経口組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
飲食品組成物又は医薬品組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株(受託番号:NITE BP-03571)を含む、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織は、単なるエネルギー貯蔵器官としてのみならず,アディポサイトカインと総称される生理活性物質を活発に産生・分泌する生体内で最大の内分泌器官として、多彩な生命現象に関与することが知られている。脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインは遠隔臓器に作用し、様々な生理機能を有していることが示唆されている。肥満の脂肪組織(すなわち、脂肪細胞が肥大化した脂肪組織)ではアディポサイトカイン産生調節が破綻し、メタボリックシンドローム等、種々の病態形成に関与すると考えられている。アディポサイトカイン産生調節の破綻として、具体的には、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-6(interleukin-6)、MCP-1(monocyte chemoattractantprotein-1)等に代表される炎症性アディポサイトカインの過剰産生、並びに、アディポネクチンに代表される抗炎症性アディポサイトカインの産生減少等が挙げられる(非特許文献1)。
【0003】
一方、乳酸菌醗酵物が有する、種々の効果が検討されている。乳酸菌醗酵物により、例えば腸バリアが改善される(特許文献1)、あるいは肌が改善される(特許文献2)等の効果が奏されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2019-011315号公報
【特許文献2】特開第2019-011316号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本内科学会雑誌 2011年100巻4号 pp.989~995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、乳酸菌による新規な効果及び用途を探索した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株(受託番号:NITE BP-03571)を摂取することで、脂肪細胞機能を維持及び/又は改善し得ることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0008】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株(受託番号:NITE BP-03571)を含む、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善用組成物。
項2.
アディポネクチンの減少抑制及び/又は改善用である、項1に記載の組成物。
項3.
脂肪細胞の肥大化抑制及び/又は改善用である、項1に記載の組成物。
項4.
経口組成物である、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
飲食品組成物又は医薬品組成物である、項1~4のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株を含む、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの経時的な体重変化(g)を示す。なお、*並びに+はp<0.05を、**はp<0.01を、***はp<0.001をそれぞれ示す。
【
図1B】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの解剖時の体重(g)を示す。なお、*はp<0.05を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図2A】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの経時的な体重の増加量(g)を示す。なお、*並びに+はp<0.05を、**並びに++はp<0.01を、***はp<0.001をそれぞれ示す。
【
図2B】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの投与開始時から解剖時までの体重の増加量(g)を示す。なお、*はp<0.05を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図3A】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの生殖器周囲脂肪量(g/体重100g)を示す。なお、**はp<0.01を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図3B】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの腎周囲及び後腹壁周囲脂肪量(g/体重100g)を示す。なお、*はp<0.05を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図3C】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの腸間膜脂肪量(g/体重100g)を示す。なお、*はp<0.05を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図3D】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの内臓脂肪量(生殖器周囲脂肪、腎周囲及び後腹壁周囲脂肪、腸間膜脂肪の合計)(g/体重100g)を示す。なお、**はp<0.01を、***はp<0.001を、それぞれ示す。
【
図4A】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの血中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度(IU/L)を示す。なお、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
【
図4B】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの血中総コレステロール(T-CHO)濃度(mg/dL)を示す。なお、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
【
図4C】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの血中糖濃度(血糖値、mg/dL)を示す。
【
図5A】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの脂肪組織におけるPPARγ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)遺伝子の発現量を示す。PPARγ遺伝子の発現量は、通常の飼料(Control)における発現量を1としたときの相対的な発現量を示す。なお、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
【
図5B】通常の飼料(Control)、高脂肪食飼料(HFD)、又は高脂肪食飼料及びラクチプランチバチルス プランタラム S25株死菌(HFD+S25)を経口摂取させたマウスの脂肪組織におけるアディポネクチン(Adiponectin)遺伝子の発現量を示す。アディポネクチン遺伝子の発現量は、通常の飼料(Control)における発現量を1としたときの相対的な発現量を示す。なお、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本開示に包含される組成物は、乳酸菌を含有する。本明細書において、当該組成物を「本開示の組成物」と表記することがある。
【0013】
本開示に用いられる乳酸菌は、ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株である。本明細書において、当該乳酸菌を「本開示の乳酸菌」と表記することがある。
【0014】
ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株は、2021年12月15日付で、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号:NITE BP-03571で受託されている。
【0015】
ラクチプランチバチルス プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)S25株は、京漬物である、すぐきから分離された植物性乳酸菌である。
【0016】
本開示の組成物における本開示の乳酸菌の含有量は、特に限定はされず、例えば0.1~100質量%程度が好ましく、1~99質量%程度、2~90質量%、又は5~50質量%程度がより好ましい。なお、当該範囲の上限又は下限は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、3、4、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、91、92、93、94、95、96、97、98であってもよい。
【0017】
本開示の組成物中、乳酸菌は、生菌体であってもよく、死菌体であってもよい。中でも、死菌体であることが好ましい。
【0018】
本開示の組成物中、乳酸菌は、例えば、破砕、加熱、乾燥(凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥など)、凍結、溶菌、抽出処理等がなされていてもよく、なされていなくてもよい。
【0019】
本開示の組成物は、本開示の乳酸菌を含み、効果が損なわれない範囲において、さらに他の成分を含むことができる。当該他の成分としては、薬理学上又は食品衛生学上許容される基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、抗酸化剤、保存剤、コーティング剤、着色料等が例示される。また、本開示の乳酸菌以外の乳酸菌を含んでもよい。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本開示の組成物は、特に限定されないが、例えば、経口組成物であってもよい。
【0021】
本開示の組成物は、医薬品組成物又は飲食品組成物であってもよい。飲食品組成物である場合には、例えば加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等であってもよい。
【0022】
本開示の組成物は、本開示の乳酸菌と、必要に応じて他の成分とを組み合わせて常法により調製することができる。
【0023】
摂取される乳酸菌の量は、特に制限されず、例えば一日当たり(特に成人一日当たり)1~1000億個が好ましく、10~100億個がより好ましい。
【0024】
本開示の組成物に含有される乳酸菌量についても、当該一日当たりの乳酸菌摂取量を参考として設定することもできる。乳酸菌死菌粉末1gあたり、通常1.0×1011~1.0~1013個程度の乳酸菌が含まれることから、例えば当該値を参考として本開示の組成物に乳酸菌死菌粉末を上記一日当たりの乳酸菌摂取量が含まれるように設定して組成物を調製することもできる。また、組成物に含まれる乳酸菌量を上記一日当たりの乳酸菌摂取量の例えば1/2若しくは1/3として、当該組成物の摂取を一日数回(2回若しくは3回)とすることもできる。
【0025】
本開示の組成物は、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善効果を奏し得る。より具体的には、本開示の組成物は、脂肪組織におけるアディポサイトカイン産生調節機能の維持及び/又は改善効果、アディポネクチンの減少抑制及び/又は改善効果、PPARγの減少抑制及び/又は改善効果、脂肪細胞の肥大化抑制及び/又は改善効果等を奏し得る。
【0026】
アディポネクチンは、インスリン感受性の亢進、動脈硬化抑制、抗炎症作用など多岐にわたる健康効果が知られている。このため、アディポネクチンの減少抑制及び発現亢進は重要であるといえる。
【0027】
PPARγを適度に活性化させることで、脂肪細胞のサイズが小型化すること、すなわち、脂肪細胞の肥大化が抑制及び/又は改善することが知られている。また、PPARγを適度に活性化させることで、TNF-αなどのインスリン抵抗性を惹起するサイトカインの発現又は分泌が低下し、アディポネクチンなどのインスリン感受性を改善するアディポサイトカインの発現又は分泌が増加することが知られている。このため、PPARγの減少抑制及び発現亢進は重要であるといえる。
【0028】
本開示の組成物の摂取対象としては、例えば、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル等)が挙げられる。
【0029】
ヒトとしては、例えば、脂肪細胞機能に異常があるヒト、脂肪細胞機能に異常が生じるおそれがあるヒト;脂肪組織におけるアディポサイトカイン産生調節機能に異常があるヒト、脂肪組織におけるアディポサイトカイン産生調節機能に異常が生じるおそれがあるヒト;アディポネクチン産生が低下しているヒト、アディポネクチン産生が低下するおそれがあるヒト;PPARγ産生が低下しているヒト、PPARγ産生が低下するおそれがあるヒト;脂肪細胞が肥大化しているヒト、脂肪細胞が肥大化するおそれがあるヒト;メタボリックシンドローム患者、メタボリックシンドローム予備群のヒト;脂質異常症患者、脂質異常症予備群のヒト;糖尿病患者(高血糖のヒト)、糖尿病予備群のヒト(血糖値が高めのヒト);食生活が乱れ脂肪細胞機能が低下していると考えられるヒト;喫煙や過度な飲酒の習慣があるヒト;体を動かす習慣がなく運動量が少ないヒト;BMI(Body Mass Index)が23以上のヒト;内臓脂肪量が比較的多いと考えられるヒト(例えば腹囲が男性で80cm以上、女性で85cm以上、あるいはCTスキャン等による内臓脂肪面積が90cm2以上等)、等が挙げられる。また、脂肪細胞機能に大きな異常が見られない場合であっても、正常な脂肪細胞機能を維持するために予防的に用いることもできる。
【0030】
理論に拘束されることを望むものではないが、本開示の組成物を摂取することにより、脂肪細胞の肥大化が抑制及び/又は改善され得て、これによって、脂肪細胞機能の維持及び/又は改善効果、並びに、脂肪組織におけるアディポサイトカイン産生調節機能の維持及び/又は改善効果等が奏されると考えられる。
【0031】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term “comprising” includes “consisting essentially of” and “consisting of.”)。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0032】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0033】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
使用動物
3週齢のマウス(C57BL/6J(SPF))雄を日本チャールス・リバー株式会社から購入して使用した。入荷から群分け日までを馴化期間とした。また、入荷日を0日として7日まで検疫期間とした。飼料は、検疫・馴化期間中及びA群の試験期間中はD12450J(通常の飼料、RESEARCH DIETS,INC.ロット番号:20080303)を、B及びC群の試験期間中はD12492(高脂肪食(HFD),RESEARCH DIETS,INC.ロット番号:20090202,20110303)を、ケージの蓋上に置き、絶食中を除き自由に与えた。飲料水は、ポリサルフォン製給水器(先管ステンレス製)により試験期間中を通じ自由に与えた。
群分け
検疫・馴化期間終了日に測定して得られた体重を指標に、次表に従い層別連続無作為化法により群分けを行った。
【0034】
【0035】
被験物質としては、ラクチプランチバチルス プランタラム S25株(受託番号:NITE BP-03571)(死菌)を用いた。なお、C群に対する被験物質の投与量0.55mg/日/匹は、菌数で示すと死菌10億個/日/匹である。
【0036】
C群のマウスに対しては、ゾンデにより被験物質を含む蒸留水を投与した。被験物質を投与しないA群及びB群のマウスには、ゾンデにより蒸留水を投与した。投与期間は77日間とした。
【0037】
投与期間中の経時的な体重変化及び解剖時の体重を
図1A及びBに示す。また、投与期間中の経時的な体重の増加量の変化及び投与開始時から解剖時までの体重の増加量を
図2A及びBに示す。
【0038】
投与期間後、一晩絶食させて麻酔をして解剖を行った。内臓脂肪(生殖器周囲脂肪、腎周囲及び後腹壁周囲脂肪、腸間膜脂肪の合計)を取得し、重さを測定して、体重100gあたりの値(g/体重100g)を算出した。結果を
図3A~Dに示す。
【0039】
また、取得した血中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度(IU/L)、総コレステロール(T-CHO)濃度(mg/dL)、及び糖濃度(血糖値、mg/dL)を測定した。結果を
図4A~Cに示す。
【0040】
図1A~4Cに示す通り、高脂肪食を77日間投与したB群は、通常の飼料を投与したA群と比較して、有意に体重、内臓脂肪量、血中ALT濃度及び血中総コレステロール濃度が増加した。なお、血中ALT濃度は肝機能の指標である。A群と比較してB群において血中ALT濃度が上昇した結果から、B群では高脂肪食投与により肝臓に脂肪が蓄積し、肝機能が低下したことが示唆された。
【0041】
高脂肪食に加えて被験物質を投与したC群においては、高脂肪食のみを投与したB群と比較して、体重、内臓脂肪量、血中ALT濃度及び血中総コレステロール濃度が有意に低下した。以上の結果から、高脂肪食摂取により生じる体重、内臓脂肪量、血中ALT濃度及び血中総コレステロール濃度の上昇が、ラクチプランチバチルス プランタラム S25株の投与により抑制されることが判明した。一方、血糖値については、A~C群間で有意な差異は認められなかった。
【0042】
回収した脂肪細胞を、凍結状態でメスにて切断した後、Total RNA Mini Kit(Bio-Rad社)を用いて、総RNAを回収した。回収した総RNAを用いて逆転写を行い、cDNAを作成した。前記cDNAを用いたリアルタイムPCRにより、PPARγ遺伝子及びアディポネクチン遺伝子の発現量を評価した。結果を
図5A及びBに示す。
【0043】
高脂肪食を77日間投与したB群は、通常の飼料を投与したA群と比較して、有意にPPARγ遺伝子の発現量が低下した。一方、高脂肪食に加えて被験物質を投与したC群においては、高脂肪食のみを投与したB群と比較して、PPARγ遺伝子の発現量が増加した。
【0044】
高脂肪食を77日間投与したB群は、通常の飼料を投与したA群と比較して、有意にアディポネクチン遺伝子の発現量が低下した。一方、高脂肪食に加えて被験物質を投与したC群においては、通常の飼料を投与したA群と同程度のアディポネクチン遺伝子の発現が認められた。
【0045】
図5A及びBに示した結果から、ラクチプランチバチルス プランタラム S25株投与により、高脂肪食負荷によって生じるPPARγ及びアディポネクチン産生の低下(すなわち、脂肪細胞機能の異常)が抑制され、正常な脂肪細胞機能が維持されることが判明した。
【0046】
また、本実施例の結果から、血糖値に異常が生じていなくても脂肪細胞機能には異常が生じている場合が存在すること、並びに、そのような対象においてもラクチプランチバチルス プランタラム S25株の投与によって脂肪細胞機能の維持及び/又は改善が達成され得ることが示された。