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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088055
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両用シート及び車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20240625BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74
A47C7/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203027
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛 陽雲
(72)【発明者】
【氏名】眞谷 健汰
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JE02
3B084JG06
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】冷房が効く前に乗員に冷感を付与することが可能な車両用シート及び車両用シート装置を得る。
【解決手段】シート本体20の上部にドライミスト噴射部30が設けられている。ドライミスト噴射部30はシート上方側へドライミストを噴射することが可能になっている。また、温度検出部42が車室内の温度を検出し、湿度検出部44が車室内の湿度を検出する。さらに、制御部52は、温度検出部42による検出温度が基準温度よりも高くかつ湿度検出部44による検出湿度が基準湿度よりも低い場合にドライミスト噴射部30がドライミストを噴射するように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能でかつ着座した乗員の上半身を支持可能なシート本体と、
前記シート本体の上部に設けられ、シート上方側へドライミストを噴射するドライミスト噴射部と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートと、
車室内の温度を検出する温度検出部と、
前記車室内の湿度を検出する湿度検出部と、
前記温度検出部による検出温度が基準温度よりも高くかつ前記湿度検出部による検出湿度が基準湿度よりも低い場合に前記ドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する制御部と、
を備える車両用シート装置。
【請求項3】
車両の乗員乗降用のドアの開閉を検出するドア開閉検出部を備え、
前記制御部は、前記ドア開閉検出部によって前記ドアの開放が検出された場合には、前記温度検出部による検出温度が前記基準温度よりも高くかつ前記湿度検出部による検出湿度が前記基準湿度よりも低い場合に前記ドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する、請求項2に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及び車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置に関する技術が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両用空調装置では、冷房運転が可能であり、乗員によって設定された車室内の設定温度となるように空調風を生成して車室内に吹き出すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-11669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、冷房が効くまでは乗員に冷感を付与することができず、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、冷房が効く前に乗員に冷感を付与することが可能な車両用シート及び車両用シート装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、乗員が着座可能でかつ着座した乗員の上半身を支持可能なシート本体と、前記シート本体の上部に設けられ、シート上方側へドライミストを噴射するドライミスト噴射部と、を備える。なお、「シート上方側へドライミストを噴射する」の概念には、シート上下方向の真上側へドライミストを噴射する場合が含まれる他、シート上方斜め前方側へドライミストを噴射する場合やシート上方斜め後方側へドライミストを噴射する場合も含まれる(本明細書において同じ)。
【0007】
上記構成によれば、乗員が着座可能なシート本体は、着座した乗員の上半身を支持可能になっている。このシート本体の上部にはドライミスト噴射部が設けられ、ドライミスト噴射部はシート上方側へドライミストを噴射する。このため、冷房が効く前に、ドライミスト噴射部によってドライミストを噴射させれば、気化熱で周囲の熱を奪って乗員の周りの温度を下げることができるので、乗員に冷感を付与することができる。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用シート装置は、請求項1に記載の車両用シートと、車室内の温度を検出する温度検出部と、前記車室内の湿度を検出する湿度検出部と、前記温度検出部による検出温度が基準温度よりも高くかつ前記湿度検出部による検出湿度が基準湿度よりも低い場合に前記ドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する制御部と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、温度検出部が車室内の温度を検出し、湿度検出部が車室内の湿度を検出する。また、制御部は、温度検出部による検出温度が基準温度よりも高くかつ湿度検出部による検出湿度が基準湿度よりも低い場合にドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する。このため、例えば、冷房運転開始後で冷房が効く前に、ドライミスト噴射部によってドライミストを噴射させて乗員に冷感を付与することが可能になる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用シート装置は、請求項2に記載の構成において、車両の乗員乗降用のドアの開閉を検出するドア開閉検出部を備え、前記制御部は、前記ドア開閉検出部によって前記ドアの開放が検出された場合には、前記温度検出部による検出温度が前記基準温度よりも高くかつ前記湿度検出部による検出湿度が前記基準湿度よりも低い場合に前記ドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する。
【0011】
上記構成によれば、ドア開閉検出部が車両の乗員乗降用のドアの開閉を検出する。制御部は、ドア開閉検出部によってドアの開放が検出された場合には、温度検出部による検出温度が基準温度よりも高くかつ湿度検出部による検出湿度が基準湿度よりも低い場合にドライミスト噴射部がドライミストを噴射するように制御する。このため、車室内の温度が基準温度よりも高くかつ車室内の湿度が基準湿度よりも低い状態で乗員が車両に乗り込む場合、乗員が車両に乗り込むのに合わせて、ドライミスト噴射部によってドライミストを噴射させて乗員に冷感を付与することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の車両用シート及び車両用シート装置によれば、冷房が効く前に乗員に冷感を付与することが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートを備えた車両用シート装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】車両用シート装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】制御ECUによるドライミスト噴射制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用シートを含む車両用シート装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用シートを備えた車両用シート装置について図1図3を用いて説明する。
【0015】
(構成)
図1には、本実施形態に係る車両用シート装置10の概略構成が示されている。なお、図1において示される矢印FRは車両用シートの前方側を示しており、矢印UPは車両用シートの上方側を示しており、矢印Wは車両用シートの幅方向を示している。また、図面の寸法比率は、説明の便宜上、誇張されており、実際の寸法比率とは異なる場合がある。図1に示される車両用シート装置10が搭載される車両には、一例として、バッテリ式電動自動車を適用することができる。また、車両用シート装置10が搭載される車両には、車両用空調装置(図示省略)が搭載されている。
【0016】
図1に示されるように、車両用シート装置10は、車両用シート12を含んで構成されている。車両用シート12は、乗員が着座可能でかつ着座した乗員の上半身を支持可能なシート本体20を備えている。シート本体20は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション22と、着座乗員の背部を支持するシートバック24と、を含んで構成されている。また、シート本体20は、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト26を備えている。
【0017】
シートクッション22は、シートクッションフレームにシートクッションパッドが支持されると共にシートクッションパッドの表面がシートクッション表皮によって覆われた構成とされている。シートバック24は、シートバックフレームにシートバックパッドが支持されると共にシートバックパッドの表面がシートバック表皮によって覆われた構成とされている。シートクッション22の後端部側とシートバック24の下端部側とは連結されている。
【0018】
また、ヘッドレスト26は、ヘッドレストステー26Aを有し、このヘッドレストステー26Aにヘッドレストパッドが支持されると共に、ヘッドレストパッドの表面がヘッドレスト表皮によって覆われた構成とされている。本実施形態のヘッドレスト表皮には通気性を有する素材が適用されている。また、ヘッドレストステー26Aは、シートバック24の上端部に挿し込まれて連結されている。
【0019】
シート本体20の上部、より具体的にはヘッドレスト26の内部には、シート上方側へドライミストを噴射するドライミスト噴射部30が設けられている。すなわち、ドライミスト噴射部30は、車両用シート12に着座する乗員の位置に極めて近い位置に設定されている。ドライミスト噴射部30の設定位置について更に補足説明すると、夏場において車両用シート12に着座した直後の乗員に瞬時に冷感を感じさせたい部位は、肌が露出する顔面及び首であることから、夏場に着座直後の乗員の顔面及び首に瞬時に冷感を感じさせるために、ドライミスト噴射部30をシート本体20の上部に設ける構成が採られている。また、冬場においても着座乗員の顔面及び首の周りの湿度を改善したいというニーズがあるが、ドライミスト噴射部30をシート本体20の上部に設ける構成は、そのようなニーズにも応えることが可能な構成となっている。なお、図中では、構成を分かり易くするために、シート本体20の内部に設けられた構成部の一部を実線でかつ簡略化して示している。
【0020】
ドライミスト噴射部30は、ドライミスト発生器(「ドライミスト発生装置」、「ドライミスト発生機構」等ともいう。)32、ブロワー(広義には「送風機」として把握される要素)34、及びダクト36を含んで構成されている。また、ヘッドレスト26の内部において、ドライミスト噴射部30の下方側には、貯水タンク38が設けられている。なお、貯水タンク38は、一例としてドライミスト噴射部30と一体化されているが、例えばドライミスト噴射部30と一体化されないでシートバック24の内部に設けられてもよい。
【0021】
貯水タンク38には、ドライミスト用の液体が貯留可能になっている。ドライミスト用の液体としては、一例として水に香料(例えばミント系香料)を添加したものが適用可能である。貯水タンク38に貯留された液体はドライミスト発生器32に供給されるように構成されている。なお、ドライミスト用の液体を補充し易くするために、貯水タンク38はカートリッジ化されてもよい。
【0022】
ドライミスト発生器32は、貯水タンク38から供給された液体からドライミスト(微細な水滴の霧)を発生させる。ドライミスト発生器32の構成には、公知構成を適用できるため、詳細説明を省略する。
【0023】
ダクト36は、ドライミスト発生器32の上方側に設けられてヘッドレスト26の内部の上端側に配置されている。ダクト36は、ドライミストの出口である噴射口36Aを含んで構成されている。噴射口36Aは、シート上方斜め前方側へ向けられ、噴射口36Aから噴射されたドライミストが乗員に直接かからない構成になっている。なお、ダクト36内には、一例として、ドライミストの噴射方向を規制する規制部材(図示省略)が所定範囲内で向きを変えられるように設けられている。ブロワー34は、ドライミスト発生器32とダクト36との間に設けられ、作動することによってドライミスト発生器32側からダクト36側へ向かう気流を発生させ、ドライミスト発生器32で発生されたドライミストをダクト36へ送るように構成されている。
【0024】
また、ヘッドレスト26の側面部には、操作スイッチ31が設けられている。操作スイッチ31は一例として押しボタン式のスイッチとされる。操作スイッチ31は、押圧によって、ドライミスト噴射部30の電源をON/OFFできるようになっている。補足説明すると、本実施形態では、操作スイッチ31が押圧されてドライミスト噴射部30の電源がONされるとドライミスト発生器32及びブロワー34が作動してドライミストが噴射され、操作スイッチ31が押圧されてドライミスト噴射部30の電源がOFFされるとドライミスト発生器32及びブロワー34の作動が停止されてドライミストの噴射が停止されるようになっている。なお、操作スイッチ31は、図1に示される位置とは異なる位置に設けられてもよい。
【0025】
また、車両用シート装置10は、温湿度センサ40を備えている。温湿度センサ40は、一例として、ヘッドレスト26の上端部側に設けられている。温湿度センサ40は、車室内の温度を検出する温度検出部42(図中では模式化して図示)と、車室内の湿度を検出する湿度検出部44(図中では模式化して図示)と、を有する。
【0026】
また、車両用シート装置10は、ドア開閉検出部としてのドア開閉センサ46を備えている。ドア開閉センサ46は、車両用シート装置10を備えた車両の乗員乗降用のドア60の開閉を検出する。ドア開閉センサ46には、一例として、車両のドア開口部62の周縁に設けられるカーテシスイッチが用いられている。ドア開閉センサ46は、ドア60の開閉に応じてON/OFFが切り替わる開閉信号を出力可能になっている。
【0027】
さらに、車両用シート装置10は、制御ECU(Electrical Control Unit)50を備えている。制御ECU50は、一例として、シートクッション22の内部に搭載されている。前述したドライミスト発生器32、ブロワー34、温湿度センサ40及びドア開閉センサ46は、制御ECU50に接続されている。温湿度センサ40及びドア開閉センサ46は、制御ECU50に検出結果を示す信号を出力できるようになっている。また、ドライミスト発生器32及びブロワー34は、制御ECU50からの信号によって作動が制御される。
【0028】
図2には、車両用シート装置10のハードウェア構成の一例がブロック図で示されている。図2に示されるように、制御ECU50は、CPU50A(Central Processing Unit:プロセッサ)、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、通信インタフェース(図2では「通信I/F」と略す)50E及び入出力インタフェース(図2では「入出力I/F」と略す)50Fを含んで構成されている。CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、通信インタフェース50E及び入出力インタフェース50Fは、バス50Zを介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0030】
ROM50Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶する。本実施形態では、ROM50B又はストレージ50Dには、ドライミスト噴射制御プログラムが記憶されている。
【0031】
通信インタフェース50Eは、他の通信機器と無線通信するためのインタフェースである。当該通信には、例えば、4G、5G、又はWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0032】
入出力インタフェース50Fは、車両用シート装置10を備えた車両に搭載される各装置と通信するためのインタフェースである。本実施形態においては、制御ECU50には、入出力インタフェース50Fを介して、一例として、ドライミスト発生器32、ブロワー34、温湿度センサ40、ドア開閉センサ46及びユーザインタフェース(図2では「ユーザI/F」と略す)48が接続されている。
【0033】
ユーザインタフェース48は、ユーザである乗員が車両用シート装置10を使用する際のインタフェースであり、入力部と表示部とを含んで構成されている。ユーザインタフェース48には、一例として、乗員によるタッチ操作を可能とするタッチパネルを備えた液晶ディスプレイが適用される。
【0034】
本実施形態では、乗員は、ユーザインタフェース48を用いて、ドライミスト噴射制御に関するパラメータを設定できるようになっている。パラメータとしては、例えば、基準温度、第1基準湿度(夏期基準湿度)、第2基準湿度(冬期基準湿度)、ドライミスト噴射方向、所定時間当たりのドライミストの噴射量及びドライミスト噴射モード等が挙げられる。ドライミスト噴射方向及び所定時間当たりのドライミストの噴射量は、所定の範囲内で設定可能となっている。本実施形態ではドライミスト噴射方向の設定に応じてダクト36内の前述した規制部材(図示省略)の向きが変えられるようになっている。また、ドライミスト噴射モードとしては、例えば、連続噴射モード、断続噴射モード等の複数のモードがある。
【0035】
制御ECU50は、機能構成として、便宜上図1にブロック化して示す制御部52を有する。制御部52の機能構成は、図2に示されるCPU50AがROM50B又はストレージ50Dに記憶されたドライミスト噴射制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0036】
図1に示す制御部52は、温度検出部42による検出温度が基準温度よりも高くかつ湿度検出部44による検出湿度が基準湿度よりも低い場合にドライミスト噴射部30がドライミストを噴射するように制御する構成部であり、本実施形態では、ドア開閉センサ46によってドア60の開放が検出された場合には、温度検出部42による検出温度が基準温度よりも高くかつ湿度検出部44による検出湿度が基準湿度よりも低い場合にドライミスト噴射部30がドライミストを噴射するように制御する。
【0037】
次に、本実施形態の作用として、図1及び図2に示される車両用シート装置10においてCPU50A(図2参照)で実行されるドライミスト噴射制御プログラムの処理について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0038】
ここでは、ドア開閉センサ46によってドア60の開放が検出された場合に、図3に示される制御処理の実行が開始される。なお、図3に示される制御処理の実行の開始条件となる「ドア開閉センサ46によってドア60の開放が検出された場合」については、ここでは一例として、車両用シート装置10に最も近いドア60の開放がドア開閉センサ46によって検出された場合とするが、変形例として、車両に設けられた複数のドア60の少なくとも1つの開放がドア開閉センサ46によって検出された場合としてもよい。
【0039】
図3のフローチャートのステップS101において、CPU50Aは、例えばシステム日付に基づいて夏期であるか否かを判定する。夏期でない場合(ステップS101:N)、CPU50AはステップS106の処理へ移行する。夏期である場合(ステップS101:Y)、CPU50Aは、ステップS102において、車室内の検出温度Tr及び車室内の検出湿度Hrを温湿度センサ40から取得し、ステップS103の処理へ移行する。
【0040】
ステップS103において、CPU50Aは、車室内の検出温度Trと、予め設定された基準温度T(例えば、28°C)とを比較し、検出温度Tr>基準温度Tであるか否かを判定する。検出温度Tr>基準温度Tでない場合(ステップS103:N)、CPU50Aは、図3に示される制御処理を終了する。検出温度Tr>基準温度Tである場合(ステップS103:Y)、CPU50Aは、ステップS104において、車室内の検出湿度Hrと、予め設定された基準湿度としての第1基準湿度H1(例えば、60%Rh)とを比較し、検出湿度Hr<第1基準湿度H1であるか否かを判定する。
【0041】
検出湿度Hr<第1基準湿度H1でない場合(ステップS104:N)、CPU50Aは、図3に示される制御処理を終了する。検出湿度Hr<第1基準湿度H1である場合(ステップS104:Y)、CPU50Aは、ステップS105において、ドライミスト噴射部30がドライミストを所定量(又は所定時間)噴射するように制御し、ステップS102の処理に戻る。
【0042】
一方、ステップS106において、CPU50Aは、例えばシステム日付に基づいて冬期であるか否かを判定する。冬期でない場合(ステップS106:N)、CPU50Aは、図3に示される制御処理を終了する。冬期である場合(ステップS106:Y)、CPU50Aは、ステップS107において、車室内の検出湿度Hrを温湿度センサ40から取得し、ステップS108の処理へ移行する。
【0043】
ステップS108において、CPU50Aは、車室内の検出湿度Hrと、予め設定された第2基準湿度H2(例えば、40%Rh)とを比較し、検出湿度Hr<第2基準湿度H2であるか否かを判定する。検出湿度Hr<第2基準湿度H2でない場合(ステップS108:N)、CPU50Aは、図3に示される制御処理を終了する。検出湿度Hr<第2基準湿度H2である場合(ステップS108:Y)、CPU50Aは、ステップS109において、ドライミスト噴射部30がドライミストを所定量(又は所定時間)噴射するように制御し、ステップS107の処理に戻る。
【0044】
図3に示す制御処理によって、夏期において車室内の温度が高くかつ車室内の湿度が低い状態で乗員が車両に乗り込む場合、乗員が車両に乗り込むのに合わせてドライミストが噴射され、当該ドライミストが瞬時に気化することによって気化熱で周囲の熱を奪って乗員の周りの温度を下げることができるので、乗員に冷感を付与することができる。また、冬期において車室内の湿度が低い状態で乗員が車両に乗り込む場合、乗員が車両に乗り込むのに合わせてドライミストが噴射され、乗員の周りの湿度を上げること(つまりドライミスト噴射部30を加湿器として機能させること)ができるので、乗員の肌の乾燥を防ぐことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両空調装置(図示省略)による冷房が効く前に乗員に冷感を付与することが可能になる。また、そのような冷感の付与を効果的にかつ消費電力を抑えながら実現することができる。補足説明すると、例えば冷感付与のために車両用シートに送風・吸気等の機構を設けた場合、冷感を付与するのに時間がかかるうえ消費電力も大きく増加することになるが、本実施形態では、そのような課題を解消できる。
【0046】
また、本実施形態では、ドライミストは乗員に直接かからない向きに噴射されるので濡れるような感覚を乗員に与えることが基本的にはない。また、本実施形態では、一例としてドライミストにミント系香料が含まれているので、乗員に清涼感を容易に感じさせることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、ドア開閉センサ46によってドア60の開放が検出された場合に、図3に示される制御処理の実行が開始されているが、上記実施形態の変形例として、例えば、車両空調装置の作動スイッチ(図示省略)がONされた場合に図3に示される制御処理の実行が開始されるような構成でもよい。また、図3に示される制御処理の実行が開始されるタイミングを、ユーザインタフェース48を用いて、乗員が設定できるような構成にしてもよい。
【0048】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用シートを備えた車両用シート装置について、図4を用いて説明する。図4には、第2の実施形態に係る車両用シート72を備えた車両用シート装置70の概略構成が斜視図で示されている。図4に示されるように、第2の実施形態は、ドライミスト噴射部30及びその操作スイッチ31、並びに貯水タンク38の配置位置が第1の実施形態とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。なお、第1の実施形態のシートバック24のシートバック表皮には通気性を有する素材が適用されてもよいし通気性を有さない素材が適用されてもよいが、第2の実施形態のシートバック24のシートバック表皮には通気性を有する素材が適用されている。
【0049】
図4に示されるように、ドライミスト噴射部30は、シート本体20の上部、より具体的にはシートバック24の上端部側の部分の内部に左右一対で設けられている。すなわち、本実施形態においても、ドライミスト噴射部30は、車両用シート72に着座する乗員の位置に極めて近い位置に設定されている。ドライミスト噴射部30は、第1の実施形態と同様に、シート上方側へドライミストを噴射するように構成されている。ドライミスト噴射部30のダクト36の噴射口36Aは、シートバック24の上端部(肩口部)近傍に配置されてシート上方斜め前方側を向いており、噴射口36Aから噴射されたドライミストが乗員に直接かからない構成になっている。
【0050】
左右一対のドライミスト噴射部30のそれぞれの下方側には、貯水タンク38がドライミスト噴射部30と一体化されて設けられている。また、一例として、シートバック24の一方の側面部に操作スイッチ31が設けられている。なお、ここでは、操作スイッチ31は一個設けられているが、左右一対のドライミスト噴射部30に対応するようにシートバック24の両方の側面部に一個ずつ設けられてもよい。
【0051】
以上説明した第2の実施形態によっても、前述した第1の実施形態と実質的に同様の作用及び効果が得られる。
【0052】
[実施形態の補足説明]
なお、図1図4に示される上記第1、第2の実施形態では、所定の場合にドライミスト噴射部30が自動的にドライミストを噴射するように制御する制御部52が設けられているが、そのような制御部52が設けられないで操作スイッチ31の操作のみに応じてドライミスト噴射部30がドライミストを噴射する、という構成も採り得る。
【0053】
また、上記第1の実施形態では、ドライミスト噴射部30がヘッドレスト26の内部に設けられ、上記第2の実施形態では、ドライミスト噴射部30がシートバック24の上端部側の部分の内部に左右一対で設けられているが、例えば、ドライミスト噴射部(30)がヘッドレスト(26)の内部に設けられると共にシートバック(24)の上端部側の部分の内部にも左右一対で設けられる、という構成も採り得る。
【0054】
また、上記第1、第2の実施形態では、ドライミスト噴射部30は、ブロワー34を有するが、ブロワー34に代えて、ファン(広義には「送風機」として把握される要素)が設けられてもよい。
【0055】
また、上記第1、第2の実施形態では、ドライミスト噴射部30の噴射口36Aがシート上方斜め前方側を向いているが、ドライミスト噴射部(30)の噴射口(36A)がシート上下方向の直上側を向くという構成も採り得る。また、ドライミスト噴射部(30)を備えた車両用シート(12)がフロントシートの場合、ドライミスト噴射部(30)の噴射口(36A)をシート上方斜め後方側(言い換えるとリヤシートの上方側)へ向けるような構成も採り得る。
【0056】
また、上記第1、第2の実施形態では、温度検出部42と湿度検出部44とを有する温湿度センサ40がシート本体20(より具体的にはヘッドレスト26の上端部側)に設けられているが、温度検出部(42)がシート本体(20)の周囲部に設けられる構成も採り得るし、湿度検出部(44)がシート本体(20)の周囲部に設けられる構成も採り得る。
【0057】
また、上記実施形態では、ドライミスト用の液体として、一例として水に香料を添加したものが適用されているが、ドライミスト用の液体は、香料が添加されていない水でもよい。
【0058】
また、上記実施形態においてCPU50Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
また、上記実施形態で説明したドライミスト噴射制御プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0061】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 車両用シート装置
12 車両用シート
20 シート本体
30 ドライミスト噴射部
42 温度検出部
44 湿度検出部
46 ドア開閉センサ(ドア開閉検出部)
52 制御部
70 車両用シート装置
72 車両用シート
図1
図2
図3
図4