(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088061
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203039
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】ジラパン ロジャナプラティープ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB16
4C267CC08
4C267GG22
4C267GG23
4C267HH03
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】本発明は、体内で先端部の剛性を増加させることが可能なガイドワイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】ガイドワイヤであって、シャフトと、シャフトの外周を覆うチューブと、シャフトの軸方向において、チューブよりも先端側に設けられ、シャフトの外周を覆うコイルと、を備え、コイルの先端部は、シャフトの先端部に接続され、コイルの後端部は、チューブの先端部に接続され、チューブは、シャフトの軸を中心に回転可能であり、コイルは、シャフトに対するチューブの相対的な回転角度の変化にともなって、シャフトの径方向外側に拡張する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
シャフトと、
前記シャフトの外周を覆うチューブと、
前記シャフトの軸方向において、前記チューブよりも先端側に設けられ、前記シャフトの外周を覆うコイルと、を備え、
前記コイルの先端部は、前記シャフトの先端部に接続され、
前記コイルの後端部は、前記チューブの先端部に接続され、
前記チューブは、前記シャフトの軸を中心に回転可能であり、
前記コイルは、前記シャフトに対する前記チューブの相対的な回転角度の変化にともなって、前記シャフトの径方向外側に拡張する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤは、さらに、
前記チューブの外周を覆う外側チューブと、
前記シャフトと前記外側チューブのそれぞれに接続され、前記シャフトに対する前記外側チューブの相対的な回転を規制する規制部と、
前記チューブの後端部に接続され、自身の回転によって前記チューブを回転させる回転操作部と、を備え、
前記回転操作部は、前記規制部に対する相対的な回転角度を変化させることで、前記シャフトに対する前記チューブの相対的な回転角度を変化させる、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記回転操作部は、前記規制部と係合する係合部を備え、
前記規制部は、前記係合部と係合し、前記規制部に対する前記回転操作部の相対的な回転を規制する被係合部を備える、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項3に記載のガイドワイヤであって、さらに、
前記回転操作部と前記規制部とを互いに近づける方向に付勢する付勢部を備え、
前記回転操作部と前記規制部とは、前記付勢部から受ける力に抗して互いに離間させることによって、前記係合部と前記被係合部との係合を解除でき、前記規制部に対する前記回転操作部の相対的な回転角度を変更可能な、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤは、さらに、
前記コイルの外周を覆う筒状部材を備え、
前記筒状部材の先端部は、前記シャフトの先端部に接続され、
前記外側チューブの先端部は、前記筒状部材の後端部に接続される、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管の診断や治療などに用いられる医療機器の一つとして、ガイドワイヤが知られている。特許文献1には、血管内に係止するために先端部が拡張するガイドワイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0228684号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドワイヤの先端部には、湾曲する血管内を進行するための柔軟性が求められる一方で、血管内の閉塞部を通過するための剛性が求められていた。
【0005】
本発明は、体内で先端部の剛性を増加させることが可能なガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態は、ガイドワイヤであって、シャフトと、シャフトの外周を覆うチューブと、シャフトの軸方向において、チューブよりも先端側に設けられ、シャフトの外周を覆うコイルと、を備え、コイルの先端部は、シャフトの先端部に接続され、コイルの後端部は、チューブの先端部に接続され、チューブは、シャフトの軸を中心に回転可能であり、コイルは、シャフトに対するチューブの相対的な回転角度の変化にともなって、シャフトの径方向外側に拡張する。
【0008】
この構成によれば、コイルが径方向外側に拡張することで、ガイドワイヤの先端部の剛性を増加させることができる。
【0009】
(2)上記形態のガイドワイヤにおいて、チューブの外周を覆う外側チューブと、シャフトと外側チューブのそれぞれに接続され、シャフトに対する外側チューブの相対的な回転を規制する規制部と、チューブの後端部に接続され、自身の回転によってチューブを回転させる回転操作部と、を備え、回転操作部は、規制部に対する相対的な回転角度を変化させることで、シャフトに対するチューブの相対的な回転角度を変化させてもよい。
【0010】
この構成によれば、ガイドワイヤが回転操作部を有することにより、ガイドワイヤの使用者がチューブを容易に回転させることができる。
【0011】
(3)上記形態のガイドワイヤにおいて、回転操作部は、規制部と係合する係合部を備え、規制部は、係合部と係合し、規制部に対する回転操作部の相対的な回転を規制する被係合部を備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、係合部と被係合部を係合させることで、規制部に対する回転操作部の相対的な回転を規制することができる。
【0013】
(4)上記形態のガイドワイヤであって、回転操作部と規制部とを互いに近づける方向に付勢する付勢部を備え、回転操作部と規制部とは、付勢部から受ける力に抗して互いに離間させることによって、係合部と被係合部との係合を解除でき、規制部に対する回転操作部の相対的な回転角度を変更可能であってもよい。
【0014】
この構成によれば、付勢部により、回転操作部と規制部との係合状態を維持することが容易となる。
【0015】
(5)上記形態のガイドワイヤにおいて、コイルの外周を覆う筒状部材を備え、筒状部材の先端部は、シャフトの先端部に接続され、外側チューブの先端部は、筒状部材の後端部に接続されてもよい。
【0016】
この構成によれば、コイルが径方向外側に拡張した際に、筒状部材に接触する。これにより、ガイドワイヤの先端部の剛性を増加させることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤの製造方法、カテーテルの製造方法、内視鏡、ダイレータ、などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のガイドワイヤの全体構成を例示した説明図である。
【
図2】ガイドワイヤの先端部の縦断面を例示した説明図である。
【
図4】回転操作部とストッパーが係合していない状態を例示した説明図である。
【
図6】回転操作部とストッパーが係合している状態を例示した説明図である。
【
図7】ガイドワイヤの後端部を例示した説明図である。
【
図8】第2実施形態のガイドワイヤの後端部の縦断面を例示した説明図である。
【
図9】第2実施形態のガイドワイヤのストッパーを例示した説明図である。
【
図10】第3実施形態のガイドワイヤの先端部の縦断面を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドワイヤ1の全体構成を例示した説明図である。
図1は、ガイドワイヤ1の縦断面を例示しているが、後述するシャフト20の先端部と、内側チューブ30の先端部と、コイル80とは、縦断面ではなく外形が例示されている。
図1から
図7を用いてガイドワイヤ1について説明する。
図1から
図7で示されているガイドワイヤ1の各構成部材の大きさは例示であり、実際とは異なる尺度で表されている場合がある。以下では、ガイドワイヤ1の各構成部材の、先端側に位置する端部を「先端」と記載し、「先端」を含み先端から後端側に向かって中途まで延びる部位を「先端部」と記載する。同様に、各構成部材の、後端側に位置する端部を「後端」と記載し、「後端」を含み後端から先端側に向かって中途まで延びる部位を「後端部」と記載する。
【0020】
ガイドワイヤ1は、血管や消化器官に挿入されて、主にカテーテルなどの他の医療機器を体内に挿入するために用いられる医療機器である。
【0021】
ガイドワイヤ1は、シャフト20と、内側チューブ30と、外側チューブ40と、コイ
ル80と、筒状部材90と、回転操作部110と、規制部115と、付勢部140と、を有している。規制部115は、ストッパー120と、カバー130と、を有している。
【0022】
シャフト20は、ガイドワイヤ1の長手方向に延びる長尺の部材である。シャフト20は、先端側に位置し外径が相対的に細い細径部と、基端側に位置し外径が相対的に太い太径部と、細径部と太径部との間に位置するテーパー部とを有している。シャフト20の先端は、内側チューブ30の先端と、外側チューブ40の先端よりも先端側に位置している。シャフト20の後端は、規制部115よりもガイドワイヤ1の後端側まで延びている。
【0023】
シャフト20の材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、白金、金、タングステン等を用いることができる。シャフト20の材料には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を用いることが好ましい。
【0024】
内側チューブ30は、シャフト20の外周を覆う中空の部材である。内側チューブ30は、シャフト20の細径部のうちの基端側の一部分を覆う細管部と、シャフト20の太径部を覆う太管部と、細管部と太管部との間に位置しシャフト20のテーパー部を覆うテーパー管部とを有している。内側チューブ30の先端は、外側チューブ40の先端より先端側に位置し、コイル80の内側に配置されている。内側チューブ30の先端部は、第2固定部152によって、コイル80の後端部に接続されている。内側チューブ30の後端部は、回転操作部110に接続されている。内側チューブ30の内周と、シャフト20の外周は接続されておらず、内側チューブ30は、シャフト20の長手方向において、シャフト20に対して相対的に移動することができる。また、内側チューブ30は、シャフト20の軸C0を中心に回転し、シャフト20に対する内側チューブ30の相対的な相対角度を変化させることができる。
【0025】
外側チューブ40は、内側チューブ30の外周を覆う中空の部材である。外側チューブ40は、内側チューブ30のテーパー管部を覆う外側テーパー管部と、内側チューブ30の太管部を覆う外側太管部とを有している。外側チューブ40の先端は、内側チューブ30の先端よりも後端側に配置されている。外側チューブ40の先端部は、筒状部材90の後端部に、第4固定部154により接続されている。外側チューブ40の後端部は、規制部115のストッパー120に接続されている。
【0026】
内側チューブ30と、外側チューブ40のそれぞれの材料は特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、白金、金、タングステン等を用いることができる。内側チューブ30と、外側チューブ40には、Ni-Ti合金等の超弾性合金を用いることが好ましい。
【0027】
コイル80は、シャフト20の長手方向に沿って螺旋状に巻かれた素線81により形成されている。コイル80は、シャフト20の一部(細径部)と、内側チューブ30の先端部(細管部)を覆っている。コイル80の先端部は、第1固定部151によってシャフト20の先端部(細径部)に固定されている。コイル80の後端部は、第2固定部152によって内側チューブ30の先端部(細管部)に固定されている。第1固定部151と、第2固定部152は、例えば、シャフト20とコイル80をレーザー等によって溶接することにより形成される。
【0028】
コイル80の材料は、特に限定されないが、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系
合金、コバルト合金、白金、金、タングステン等を用いることができる。コイル80の材料には、Ni-Ti合金等の超弾性合金を用いることが好ましい。コイル80の材料が超弾性合金である場合、後述するようにコイル80が回転され、拡張されても、回転前の形状に戻ることが容易であるため、コイル80を繰り返し回転し、拡張することができる。
【0029】
筒状部材90は、ガイドワイヤ1の長手方向に沿って延びる中空の部材である。本実施形態において筒状部材90は、シャフト20の長手方向に沿って螺旋状に巻かれた素線91により形成されたコイルである。筒状部材90は、コイル80の外周を覆っている。筒状部材90の先端部は、第3固定部153によってシャフト20の先端部に接続されており、筒状部材90の後端部は、第4固定部154によって外側チューブ40の先端部(外側テーパー管部)に接続されている。
【0030】
筒状部材90の材料は、特に限定されないが、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、白金、金、タングステン等を用いることができる。
【0031】
回転操作部110は、シャフト20の外周に設けられた筒状の部材である。回転操作部110は、内側チューブ30の後端部と接続されている一方で、外側チューブ40とは接続されていない。回転操作部110は、コイル80を拡張させるときに術者によって回転操作される。回転操作部110の具体的な構成は後述する。
【0032】
規制部115は、シャフト20と外側チューブ40のそれぞれに接続され、シャフト20に対する外側チューブ40の相対的な回転を規制する。規制部115は、ストッパー120と、カバー130を備えている。術者は、規制部115に対する回転操作部110の相対的な回転角度を変化させることで、シャフト20に対する内側チューブ30の相対的な回転角度を変化させ、コイル80を拡張させることができる。規制部115の具体的な構成は後述する。
【0033】
付勢部140は、コイル形状をしており、シャフト20の長手方向に伸縮することができ、回転操作部110とストッパー120にそれぞれ接続されている。付勢部140は、術者によって回転操作部110をストッパー120から離間させたとき、回転操作部110とストッパー120とを互いに引き寄せる方向に力を付与する。
【0034】
図2は、ガイドワイヤ1の先端部の縦断面を例示した説明図である。
図2は、ガイドワイヤ1の縦断面を例示しているが、シャフト20の先端部と、内側チューブ30の先端部と、コイル80とは、縦断面ではなく外形が例示されている。コイル80の外周と、筒状部材90の内周の間には、距離T0の隙間が形成されている。コイル80は、シャフト20と内側チューブ30にそれぞれ接続されているため、シャフト20に対する内側チューブ30の相対的な回転角度の変化にともなって、シャフト20の径方向外側に拡張する。コイル80が径方向外側に拡張されることで、隙間の距離T0は徐々に小さくなり、さらにコイル80が径方向外側に拡張すると、コイル80が筒状部材90に接触する。
【0035】
図3は、コイル80の縦断面を例示した説明図である。コイル80の素線81は、一般に「平線」などと呼ばれる、横断面が偏平した形状の金属線である。具体的には、素線81の横断面は、長辺82と短辺83に囲まれて形成された略長方形である。長辺82の長さは、短辺83の長さよりも長い。長辺82は、コイル80の軸C1と略平行である。コイル80の素線81は、平線として構成されているため、コイル80を拡張させたとき、平線の平坦な外周面によって筒状部材90(
図2)の内周面を良好に支持することができる。
【0036】
図4は、回転操作部110とストッパー120が係合していない状態を例示した説明図である。回転操作部110は、ストッパー120と対向する面にストッパー120側に突出する突起状の係合部111を有している、係合部111は、後述するストッパー120の凹状の被係合部121と係合する。
【0037】
ストッパー120は、外側チューブ40の外周に設けられた筒状の部材である。ストッパー120は、回転操作部110よりも先端側に位置している。ストッパー120は、外側チューブ40の後端部に接続されている一方で、内側チューブ30には接続されていない。ストッパー120は、回転操作部110と対向する面に凹状の被係合部121を有している。被係合部121は、回転操作部110の係合部111と係合する。本実施形態において、被係合部121は、回転操作部110の係合部111の外形と適合するように、ストッパー120の先端側に向かって窪んでいる。
【0038】
カバー130は、回転操作部110と、ストッパー120の外周の一部を覆う筒状の部材である。カバー130の先端部は、ストッパー120と接続され、カバー130の後端部は、シャフト20の外周に接続されている。一方で、カバー130は、回転操作部110と接続されていない。
【0039】
図4に示されるような、係合部111と被係合部121が係合されていない状態をガイドワイヤ1の「解除状態」と呼ぶ。また、係合部111と被係合部121が係合した状態をガイドワイヤ1の「係合状態」と呼ぶ。ガイドワイヤ1の使用者(術者)が、係合状態にあるガイドワイヤ1の回転操作部110を保持して、回転操作部110を回転操作部100の後端側に移動させる(
図4中の矢印A0の方向に移動する)と、被係合部121から係合部111が外れ、ガイドワイヤ1は解除状態となる。ガイドワイヤ1が解除状態にあると、回転操作部110は、シャフト20の軸C0を中心にR0の方向に回転することができる。ガイドワイヤ1が係合状態にあると、回転操作部110の、シャフト20に対する相対的な回転が規制される。
【0040】
付勢部140の先端部は、ストッパー120の内周に接続されており、付勢部140の後端部は、回転操作部110の内周に接続されている。付勢部140は、回転操作部110がシャフト20の後端側に移動することにより、回転操作部110に引っ張られてシャフト20の長手方向に伸びる。付勢部140が伸びると、付勢部140は、自身の弾性によって伸びる前の形状に戻ろうとする。これにより、付勢部140は、回転操作部110とストッパー120に、回転操作部110とストッパー120とを互いに引き寄せるような力を加える。
【0041】
上述の構成により、規制部115(ストッパー120とカバー130)は、外側チューブ40とシャフト20に接続されている。また、外側チューブ40は、シャフト20に接続された筒状部材90(
図2)と接続されている。これにより、規制部115は、シャフト20と一体的に形成されており、シャフト20の移動や回転と連動して移動し、回転する。一方で、回転操作部110は、内側チューブ30と接続されている。また、内側チューブ30は、コイル80に接続されている。コイル80は、先端部のみが、第1固定部151(
図2)によってシャフト20に接続されている。これにより、ガイドワイヤ1が解除状態にあるとき、回転操作部110が、シャフト20の軸C0を中心に回転し、規制部115に対する相対的な回転角度が変化すると、回転操作部110のシャフト20に対する内側チューブ30の相対的な回転角度が変化する。
【0042】
図5は、コイル80が拡張した状態を例示した説明図である。上述したように、内側チューブ30の先端部とコイル80の後端部は第2固定部152(
図2)により接続されているため、内側チューブ30がシャフト20の軸C0を中心に回転すると、シャフト20
に対する内側チューブ30の相対的な回転角度の増加にともなって、コイル80の後端部も回転する。一方で、コイル80の先端は、第1固定部151によりシャフト20に接続されているため、内側チューブ30がシャフト20の軸C0を中心に回転しても、回転しない。これにより、コイル80の後端部が回転しても、コイル80全体はシャフト20の軸C0を中心に回転せず、シャフト20の径方向外側(
図5中のD0の方向)に向かって拡張する。コイル80が拡張されると、コイル80の外周と筒状部材90の内周との距離T0が縮小する。内側チューブ30を回転させ続けると、コイル80がさらに拡張され、素線81は、コイル80の径方向外側に移動し、筒状部材90と接触する。コイル80が拡張されると、コイル80の剛性(曲げ剛性)が高くなり、ガイドワイヤ1の先端部の剛性(曲げ剛性)が高くなる。また、コイル80が筒状部材90の内周に接触するまで拡張されると、コイル80が筒状部材90の変形を抑制することで、さらに、ガイドワイヤ1の先端部の剛性(曲げ剛性)が高くなる。
【0043】
図6は、回転操作部110とストッパー120が係合している状態を例示した説明図である。ガイドワイヤ1の使用者(術者)が回転操作部110の保持をやめると、付勢部140が回転操作部110をシャフト20の先端方向(
図6中のA1の方向)に引っ張ることにより、回転操作部110がシャフト20の先端側に移動する。回転操作部110の係合部111がストッパー120の被係合部121に係合することで、解除状態から係合状態に移行する。
【0044】
図7は、ガイドワイヤ1の後端部を例示した説明図である。カバー130は、開口131を備えている。開口131は、カバー130の内側と外側と連通する、カバー130の側壁に設けられた開口部である。開口131によって、回転操作部110の外周の一部とストッパー120の外周の一部とは、カバー130に覆われておらず、外部に露出している。これにより、ガイドワイヤ1の使用者(術者)は、開口131を通じて回転操作部110とストッパー120を操作することができる。
【0045】
以上説明した本実施形態のガイドワイヤ1によれば、ガイドワイヤ1の使用者が体外の回転操作部110を回転させることで、体内のコイル80が径方向外側に拡張され、ガイドワイヤ1の先端部の剛性(曲げ剛性)が増加する。これにより、ガイドワイヤ1の先端が、血管等の閉塞部に突き当てられたときに、閉塞部に与える荷重が増加し、ガイドワイヤ1が閉塞部を通過することが容易となる。ガイドワイヤ1は、コイル80が拡張される前は、湾曲した血管を進行するための柔軟性を維持しており、コイル80が拡張されることで、先端部の剛性を増加させることができ、閉塞部を通過することが容易となる。ガイドワイヤ1によって、ガイドワイヤ1の使用者が、先端部の柔軟性が高いガイドワイヤと、先端部の柔軟性が低いガイドワイヤを治療に応じて使い分ける回数が低減する。これにより、治療時間の短縮を図ることができる。
【0046】
ガイドワイヤ1は、シャフト20の軸C0を中心に回転可能な回転操作部110を備えている。ガイドワイヤ1の使用者(術者)は、回転操作部110を回転させることで、コイル80を径方向外側に拡張させることができる。これにより、ガイドワイヤ1の使用者がコイル80の拡張操作を容易に行うことができる。
【0047】
規制部115は、回転操作部110の係合部111と係合する被係合部121を備えている。これにより、ガイドワイヤ1の使用者は、回転操作部110を回転させた状態で、係合部111を被係合部121に係合させ、回転操作部110を規制部115に固定することができる。つまり、コイル80が拡張した状態でガイドワイヤ1を係合状態にすることで、使用者(術者)が回転操作部110を保持していなくとも、コイル80が拡張した状態を維持することができる。
【0048】
ガイドワイヤ1は、筒状部材90を有している。コイル80が径方向外側に拡張し、筒状部材90と接触することで、筒状部材90の変形をコイル80が抑制し、ガイドワイヤ1の先端部の剛性が増加する。これにより、ガイドワイヤ1の先端が、血管等の閉塞部に突き当てられたときに、閉塞部に与える荷重が増加し、ガイドワイヤ1が閉塞部を通過することが容易となる。
【0049】
ガイドワイヤは、付勢部140を備えている。これにより、回転操作部110とストッパー120が係合した係合状態を維持することが容易となる。また、ガイドワイヤ1の使用者が、係合部111をストッパー120の被係合部121から外し、回転操作部110を回転させた後、回転操作部110から手を離すと、回転操作部110が付勢部140により、ストッパー120に向かって移動する。これにより、解除状態から係合状態への移行が容易となる。
【0050】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bの後端部の縦断面を例示した説明図である。第2実施形態のガイドワイヤ1Bは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、ストッパー120Bが二つの被係合部(121B、122B)を有しているという点で異なる。ガイドワイヤ1Bの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する構成については説明を省略する。
【0051】
ガイドワイヤ1Bは、被係合部121Bと被係合部122Bを有している。被係合部(121B、122B)は、ストッパー120Bの先端側に向かって窪んだ形状をしている。被係合部(121B、122B)は、回転操作部110の係合部111と係合することができる。ストッパー120Bを、ストッパー120Bの後端側から先端側を観察したとき(
図8中に表示された座標軸の+X方向の視点により観察したとき)の、ストッパー120Bの後端側の面を、「背面123」と呼ぶ。
【0052】
図9は、第2実施形態のガイドワイヤ1Bのストッパー120Bを例示した説明図である。
図9(A)および
図9(B)は、ストッパー120Bの背面123を例示している。
図9(A)は、回転操作部110の係合部111が被係合部121Bに係合している状態を例示している。
図9(B)は、回転操作部110の係合部111が被係合部122Bに係合している状態を例示している。本実施形態において、被係合部121Bと、被係合部122Bのなす角度を、「角度θ」と呼ぶ。被係合部122Bは、被係合部121Bに対して、シャフト20の軸C0を中心として180度反対側の位置に設けられている。つまり、被係合部121Bと、被係合部122Bとは、角度θが180度となるように設けられている。被係合部121Bと係合する係合部111は、回転操作部110の回転によって、シャフト20の軸C0を中心に180度回転し、被係合部122Bの位置に移動することができる。
【0053】
ガイドワイヤ1Bのように、被係合部121Bと、被係合部122Bとが、角度θが180度となるように設けられていると、係合部111を、被係合部121Bから被係合部122Bへ回転移動させることで、コイル80(
図2)を180度回転させた状態で、回転操作部110のシャフト20に対する相対的な回転を規制することができる。例えば、コイル80を、回転操作部110の回転角度が360度に達したときに筒状部材90に接触するように構成されていた場合、180度だけ回転されたコイル80は、径方向外側に拡張するが筒状部材90に接触しない。これによって、コイル80の拡張度合いを調整することが容易となり、ガイドワイヤ1の先端部の剛性の調整をすることが容易となる。ガイドワイヤ1Bによっても、コイル80が径方向外側に拡張されることにより、ガイドワイヤ1Bの先端部の剛性が増加する。これにより、ガイドワイヤ1Bの先端が、血管等の閉塞部に突き当てられたときに、閉塞部に与える荷重が増加し、ガイドワイヤ1Bが閉塞
部を通過することが容易となる。
【0054】
ガイドワイヤ1Bは、二つの被係合部(121B、122B)を有していたが、三つ以上の被係合部(121B、122B)を有していてもよい。例えば、ガイドワイヤ1Bは三つの被係合部(121B、122B)を有してもよく、それぞれの被係合部(121B、122B)がなす角度θが120度となるように設けられてもよい。
【0055】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態のガイドワイヤ1Cの先端部の縦断面を例示した説明図である。
図10は、ガイドワイヤ1Cの縦断面を例示しているが、シャフト20の先端部と、内側チューブ30の先端部と、コイル80とは、縦断面ではなく外形が例示されている。第3実施形態のガイドワイヤ1Cは、第1実施形態のガイドワイヤ1と比較して、外側チューブ40と、筒状部材90を有していないという点で異なる。ガイドワイヤ1Cの構成のうち、ガイドワイヤ1と共通する構成については説明を省略する。
【0056】
コイル80の先端部は、シャフト20の先端部に、第3固定部153により固定されている。ガイドワイヤ1Cによっても、ガイドワイヤ1Cのコイル80は、筒状部材90などの別部材がないため、より大きく径方向外側に拡張することができる。コイル80が径方向外側に拡張されることにより、ガイドワイヤ1Cの先端部の剛性が増加する。これにより、ガイドワイヤ1Cの先端が、血管等の閉塞部に突き当てられたときに、閉塞部に与える荷重が増加し、ガイドワイヤ1Cが閉塞部を通過することが容易となる。
【0057】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
<変形例1>
第1から第3実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C)において、コイル80の素線81は平線であるが、平線でなくてもよい。素線81の横断面は、例えば、円形、楕円形、三角形、台形、四角形などの、任意の形状とすることができる。
【0059】
<変形例2>
第1から第3実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C)は、一つの係合部111を有していたが、二つ以上の係合部111を有していてもよい。この場合、ガイドワイヤ(1、1B、1C)は、係合部111の数に応じた被係合部(121、121B、122B)を備えることができる。
【0060】
<変形例3>
第1から第3実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C)は、回転操作部110と、規制部115を備えていたが、ガイドワイヤ(1、1B、1C)は、回転操作部110と、規制部115を備えていなくてもよい。また、ガイドワイヤ(1、1B、1C)は、回転操作部110を備え、規制部115を備えていなくてもよい。
【0061】
<変形例4>
第1から第3実施形態のガイドワイヤ(1、1B、1C)において、筒状部材90は、コイルであった。しかし、筒状部材90は、コイルでなくてもよい。筒状部材90は、例えば、金属や樹脂により形成された円筒状の部材でもよく、金属製の細線を編むことにより形成された編組でもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ガイドワイヤ
20…シャフト
30…内側チューブ
40…外側チューブ
80…コイル
90…筒状部材
110…回転操作部
111…係合部
115…規制部
120…ストッパー
121…被係合部
130…カバー
140…付勢部
151…第1固定部
152…第2固定部
153…第3固定部
154…第4固定部