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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088102
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203096
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 康二
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA03
5J079BA11
5J079BA43
5J079FA01
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA16
5J079HA26
(57)【要約】
【課題】振動子を収容する凹部を有する振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有する半導体室を備えたH型構造の圧電発振器において、半導体素子下に樹脂を塗布し易くした圧電発振器を提供する。
【解決手段】圧電振動子を収容する凹部を有した振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有した半導体室が背中合わせに接合されているパッケージと、振動子室に収容されている当該圧電振動子と、半導体室に収容されている当該半導体素子と、半導体室底部及び半導体素子の間に充填された樹脂と、振動子室を封止する蓋部材と、を備える圧電発振器において、半導体素子は平面視で四角形状のものであり、半導体素子は半導体室に接合する面と反対の面に切れ込みを備え、切れ込みは、半導体素子の2辺にかかるように設けてあること、を特徴とする圧電発振器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を収容する凹部を有した振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有した半導体室が背中合わせに接合されているパッケージと、前記振動子室に収容されている当該圧電振動子と、前記半導体室に収容されている当該半導体素子と、前記半導体室底部及び前記半導体素子の間に充填された樹脂と、前記振動子室を封止する蓋部材と、を備える圧電発振器において、
前記半導体素子は平面視で四角形状のものであり、
前記半導体素子は、前記半導体室に接合する面と反対の面に切れ込みを備え、
前記切れ込みは、前記半導体素子の2辺にかかるように設けてあること、
を特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記切れ込みは、前記半導体素子の2辺にかかる1本又は複数本の切れ込みであることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記切れ込みは、前記半導体素子の平行又は隣り合う2辺にかかる切れ込みであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記切れ込みは、平面視で十字状であることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を収容する凹部を有する振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有する半導体室を備えたH型構造の圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の圧電発振器は、小型・軽量・低背であり、多くの携帯機器に使用されている。その1種に、圧電振動子を収容する凹部の振動子室と、半導体素子を収容する凹部の半導体室を有し、振動子室と半導体室を背中合わせに接合した、断面がHを模しているように見える(H型構造又は二部屋構造という)圧電発振器がある。
H型構造の圧電発振器の場合、半導体素子は半導体室にフェースダウンボンディングによって、搭載される。半導体室は、カバー部材等で密閉されることがなく、搭載した半導体素子はむき出しのまま圧電発振器は製品として完成する。その際、むき出しの半導体素子を保護するために、樹脂を半導体素子の表面に滴下塗布し、半導体素子下に流れ込ませ、半導体素子と半導体室底部の間を埋めることが行われる。これにより、半導体素子と半導体室底部の接合が強化され、外部からの振動や衝撃に対応できる。また、圧電発振器を携帯機器等に搭載する際に使用する半田のフラックスが、半導体素子と半導体室底部との間に入り込み、周波数が既定の周波数からずれてしまうことがあるが、上記樹脂はこれを防ぐことができる。
【0003】
特許文献1には、H型構造の圧電発振器の樹脂塗布方法について記載されている。この方法では、平面視で長方形状である凹部の短辺側の壁各々に樹脂注入用の突出孔を設け、突出孔から樹脂を半導体下に滴下塗布することが行われる(特許文献1の段落16、17)。この突出孔により、小型の圧電発振器の場合でも、半導体素子下に樹脂を塗布することができる(特許文献1の段落18)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-264429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電発振器は益々小型になる一方、樹脂塗布用ノズルの大きさは変わらないため、半導体室の短辺側の壁各々に樹脂注入用の突出孔を設けることが難しくなってきた。また、半導体室の凹部を囲う壁の1辺と半導体素子との隙間の領域を樹脂塗布の中心として、当該隙間に塗布した樹脂を半導体素子下に流れ込ませる塗布方法も考えられるが、この方法も圧電発振器の小型化が進むと、外周壁の四隅にある外部接続端子間が狭くなり、外周壁に塗布した樹脂が外部接続端子に塗布されてしまい、客先において圧電発振器を搭載する電子機器等の基板に実装する際の半田の濡れ性が悪くなってしまう。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、従ってこの出願の目的は、振動子を収容する凹部を有する振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有する半導体室を備えたH型構造の圧電発振器において、半導体素子下に樹脂を塗布し易くした圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、この発明の圧電発振器によれば、圧電振動子を収容する凹部を有した振動子室及び半導体素子を収容する凹部を有した半導体室が背中合わせに接合されているパッケージと、前記振動子室に収容されている当該圧電振動子と、前記半導体室に収容されている当該半導体素子と、前記半導体室底部及び前記半導体素子の間に充填された樹脂と、前記振動子室を封止する蓋部材と、を備える圧電発振器において、
前記半導体素子は平面視で四角形状のものであり、
前記半導体素子は、前記半導体室に接合する面と反対の面に切れ込みを備え、
前記切れ込みは、前記半導体素子の2辺にかかるように設けてあること、
を特徴とする。
ここで言う2辺とは、四角形状の4辺のうち、平行する2辺でもよいし、隣り合う2辺でもよい。
切れ込みは、1本でもよいし、複数本でもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明の圧電発振器によれば、切れ込みを有した半導体素子を使用することで、半導体素子表面に滴下塗布した樹脂が、切れ込みを伝って半導体素子下に流れやすくなり、半導体素子下に必要量の樹脂を充填することができる。これにより、圧電発振器を他機器へ半田搭載した際に、半田のフラックスが半導体素子下に入ることを防止できるので、フラックスに起因する周波数ずれを防げる。また本発明は、パッケージに工夫を施した発明ではないため、今後さらに圧電発振器の小型化が進んだ場合にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)、(B)、(C)図は、本発明の実施形態の圧電発振器を説明するための図である。
図2】(A)、(B)、(C)図は、本発明の実施形態の圧電発振器に樹脂を滴下塗布する工程の図である。
図3】(A)、(B)図は、本発明の実施形態の圧電発振器において、樹脂が半導体素子下に流れ込む様子の図である。
図4】(A)、(B)、(C)図は、比較例の圧電発振器に樹脂を滴下塗布する工程の図である。
図5】(A)、(B)図は、比較例の圧電発振器において、樹脂が半導体素子下に流れ込む様子の図である。
図6】本発明の圧電発振器における半導体素子の切れ込みの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明の圧電発振器の実施形態について説明する。
なお、説明に用いる各図はこの発明を理解出来る程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明で述べる形状、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の圧電発振器10を説明する図である。図1(A)は、圧電発振器10の半導体室12を上方から見た斜視図である。図1(B)は、圧電発振器10を半導体素子40の側から見た上面図である。図1(C)は、図1(B)中のA-A線に沿った断面図である。
【0012】
圧電発振器10は、振動子室11と、半導体室12と、パッケージ20と、圧電振動子30と、半導体素子40と、樹脂50と、蓋部材60と、を備えている。
パッケージ20は、振動子室11と半導体室12とが背中合わせに接合された構成となっている。具体的には、この実施形態の場合のパッケージ20は、圧電振動子30を収容する凹部11aを構成している枠状の第1層20xと、振動子室11及び半導体室12の共通の底部となる第2層20yと、半導体素子40を収容する凹部12aを構成している枠状の第3層20zとの、3層の積層構造となっている。
【0013】
従って、振動子室11は、第1層20xによって凹部11aを囲う壁を構成し、第2層20yによって底部11aaを構成してあり、そして、振動子室底部11aa上に、圧電振動子30を搭載するための接続パッド11bを備えている。
半導体室12は、第3層20zによって、凹部12aを囲う壁を構成し、第2層20yによって底部12aaを構成し、そして、半導体室底部12aa上に、半導体素子40を搭載するための接続パッド12bを備えている。
パッケージ20の第3層20zの四隅には、外部機器と接続する為の外部接続端子20wを備えている。このパッケージ20は、例えばセラミックパッケージで構成できる。
【0014】
圧電振動子30は、平面視において四角形状であり、表裏の面に励振用電極と、各励振用電極から圧電振動子30の一つの短辺に引出している、引出電極を備えている(図示せず)。この圧電振動子30は、引出電極の位置で、振動子室11の接続パッド11bに、導電性接着剤11cによって接続固定してある。
【0015】
半導体素子40は、平面視において四角形状であり、半導体室底部12aaの接続パッド12bと対向する部分に、球形状のバンプ40bを備えている。半導体素子40は、接続パッド12bとバンプ40bとによって、半導体室12の底部12aaに、例えばフリップチップボンディングによって接合してある。また、半導体素子40は、バンプ40bを備える面とは反対の面に切れ込み40aを有している。切れ込み40aは半導体素子の2辺にかかるように入っている例であり、図1の例の場合、半導体素子の平行する2長辺にかかるように切れ込み40aが入っている。また、平行する2短辺にかかるように切れ込みが入っていてもよい。切れ込み40aの深さ及び幅は、半導体素子40の切れ込み40aの形成面に製造時に滴下された樹脂(後述する)が、切れ込み40aを伝って半導体素子40の縁から半導体素子40の裏面側に流れ易い深さ及び幅であって、半導体素子40の強度を損ねることのない深さ及び幅としてある。切れ込み40aは、ダイシングにより半導体素子40をウエハから各個片に分割する際に、ダイシングソーの切れ込みの深さを浅くし、半導体素子40に形成すれば簡単に形成することができる。
なお、実施例の図1(C)では、切れ込み40aと直行する断面がU字状の例を示したが、切れ込み40aは、V字状やコの字状であってもよい。
【0016】
樹脂50は、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂材で構成してある。樹脂50は、滴下後に加熱処理工程で硬化してあるものである。
蓋部材60は、振動子室11を気密封止しているものであり、平面視において四角形状であり、例えば金属製である。この気密封止構造は、封止方式に応じて任意のものとできる。例えば、振動子室11内を適度な真空又は不活性ガス雰囲気にした後に、第1層20x上に備えられているシールリング(図示せず)と蓋部材60をシーム溶接で接合し、封止する構造等である。
【0017】
次に、本発明の理解を深めるため、図2図3を参照して、半導体室12の底部12aaと半導体素子40の裏面との間に樹脂50を塗布する工程について説明する。樹脂50を塗布する工程を説明するため、図2以降の図は、半導体室12を上面として記載してある。
図2(A)は、圧電発振器10の半導体素子40上に樹脂50を滴下する前の図、図2(B)は、圧電発振器10の半導体素子40上に樹脂50を滴下塗布した後の図、図2(C)は、圧電発振器10の半導体素子40上に樹脂50を滴下塗布した後の上面図、図3(A)は、圧電発振器10の半導体素子40の切れ込み40aの溝を伝って樹脂50が半導体素子40下に流れ込んでいる途中の図、図3(B)は圧電発振器10の半導体素子40の下に樹脂50が流れきり充填された図、である。
【0018】
樹脂50は、樹脂塗布用ノズル51によって半導体素子40の中央部分に滴下塗布される(図2(C))。樹脂塗布用ノズル51はディスペンサーであってもよい。塗布された直後の樹脂50は、断面から見ると裾広がりの形状になるが、半導体素子40の切れ込み40aがあることで、切れ込み40aの溝に樹脂50が流れ落ち、溝を伝って半導体素子40の裏面に流れる(図3(B))。溝を伝い、樹脂50が半導体室底部12aaに流れ落ち、半導体素子40の裏面、すなわちバンプ40bを備えている面と、半導体室底部12aaとの間を樹脂50で充填することが期待できる。ただ、樹脂50の表面張力の影響があるため、滴下された樹脂50が全て半導体素子40下に流れきることはなく、少量は半導体素子40上に残ると想定する。
【0019】
半導体素子40と半導体室底部12aaの間に、必要量の樹脂を充填することで、接続パッド12bバンプ40bを樹脂50によって保護することができ、圧電発振器10を別の電子機器に半田搭載した際に、半田のフラックスに起因する周波数ずれを防止することができる。また、半導体素子40と半導体室底部12aaの接合が強化され、外部からの振動や衝撃に対応できる。本発明はパッケージに工夫を施した発明ではないため、今後さらに圧電発振器が小型化した際にも対応できる。
【0020】
図4図5を参照して、比較例の半導体室12の底部12aaと半導体素子40の裏面との間に樹脂50を塗布する工程について説明する。図4(A)は、圧電発振器10の半導体素子41上に樹脂50を滴下する前の図、図4(B)は、圧電発振器10の半導体素子41上に樹脂50を滴下塗布した後の図、図4(C)は、圧電発振器10の半導体素子41上に樹脂50を滴下塗布した後の上面図、図5(A)は、圧電発振器10の半導体素子41上から樹脂50が半導体素子41下に流れ込んでいる途中の図、図5(B)は圧電発振器10の半導体素子41の下に樹脂50が流れきった図、である。
【0021】
樹脂50は、樹脂塗布用ノズル51によって半導体素子41の中央部分に滴下塗布される(図4(C))。塗布された直後の樹脂50は、断面から見ると裾広がりの形状になるが、半導体素子41の中央から放射状に広がっていく。しかし、半導体素子41が切れ込み40aを有していないことと、樹脂50の表面張力があることにより、少量の樹脂50しか半導体素子41の裏面に流れることができず、滴下した樹脂50の大半は半導体素子41上に残った状態となる。
【0022】
上記した実施形態では、平行する2辺にかかる一方の線状の切れ込み40aを設けた例を示したが、切れ込み40aの設け方は、これに限られない。
図6に、半導体素子40の切れ込み40aの他の例を示す。
図6(A)は、四角形状の半導体素子40の平行する2辺にかかっている1本の切れ込みの図、図6(B)は、四角形状の半導体素子40の平行する2辺にかかっている切れ込みが2本あり、2本の切れ込みは平面視で十字状になっている図、図6(C)は、四角形状の半導体素子40の4つの角のうちの対角する2つの角にかかって切れ込みが入っている図、図6(D)は、四角形状の半導体素子40の隣り合う2辺に複数本の切れ込みが入っている図、である。
なお、上記した実施形態では半導体素子は平面視で長方形状の例を示したが、半導体素子は平面視で正方形のものでも、もちろんよい。
【符号の説明】
【0023】
10:圧電発振器 11:振動子室
11a:振動子室凹部 11aa:振動子室底部
11b:振動子室の接続パッド 11c:導電性接着剤
12:半導体室 12a:半導体室凹部
12aa:半導体室底部 12b:半導体室の接続パッド
20:パッケージ 20x:パッケージの第1層
20y:パッケージの第2層 20z:パッケージの第3層
20w:外部接続端子 30:圧電振動子
40:本発明の半導体素子 40a:半導体素子の切れ込み
40b:バンプ 41:比較例の半導体素子
50:樹脂 51樹脂塗布用ノズル
60:蓋部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6