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特開2024-88120スキンケアセット、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法、及び肌の乾燥防止方法
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  • 特開-スキンケアセット、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法、及び肌の乾燥防止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088120
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】スキンケアセット、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法、及び肌の乾燥防止方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240625BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61K8/44
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203139
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 沙絵
(72)【発明者】
【氏名】筒井 葉月
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【テーマコード(参考)】
4C082
4C083
【Fターム(参考)】
4C082PA02
4C082PC01
4C082PE10
4C082PG17
4C082PJ21
4C082PL05
4C083AC621
4C083AC622
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC02
4C083DD27
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】皮膚表面部の角層から表皮の状態を改善することを目的として、病原菌から表皮を守るバリアーとして機能する表皮ブドウ球菌を効率的に増殖させる。また、肌の乾燥を効率的に防止する。
【解決手段】ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する光照射装置とナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセットと、このスキンケアセットを用いた表皮ブドウ球菌の増殖促進方法、及び肌の乾燥防止方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する光照射装置と、
ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、
顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセット。
【請求項2】
前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、請求項1に記載のスキンケアセット。
【請求項3】
顔及び首の一方又は両方に対して、ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
【請求項4】
前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、請求項3に記載の表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
【請求項5】
前記赤色光をエネルギー積算量が10~100J/cmとなるように照射する、請求項3又は4に記載の表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
【請求項6】
顔及び首の一方又は両方に対して、ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する、肌の乾燥防止方法。
【請求項7】
前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、請求項6に記載の肌の乾燥防止方法。
【請求項8】
前記赤色光をエネルギー積算量が10~100J/cmとなるように照射する、請求項6又は7に記載の肌の乾燥防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケアセット、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法、及び肌の乾燥防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの赤色光の肌への有効性においては、真皮のコラーゲン産生による抗シワ効果が主に知られている(非特許文献1)。しかし、表在化しているシワを改善するためには、皮膚内部の真皮だけでなく、皮膚表面部の角層から表皮の状態が良くなることが必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Cosmetic Dermatology、7、2008年、p263-267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、皮膚表面部の角層から表皮の状態を改善することを目的として、病原菌から表皮を守るバリアーとして機能する表皮ブドウ球菌を効率的に増殖させること、また、肌の乾燥を効率的に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する光照射装置と、
ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料からなり、
顔及び首の一方又は両方に用いるスキンケアセット。
[2]前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、[1]に記載のスキンケアセット。
[3]顔及び首の一方又は両方に対して、ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する、表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
[4]前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、[3]に記載の表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
[5]前記赤色光をエネルギー積算量が10~100J/cmとなるように照射する、[3]又は[4]に記載の表皮ブドウ球菌の増殖促進方法。
[6]顔及び首の一方又は両方に対して、ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料を塗布すると共に、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する、肌の乾燥防止方法。
[7]前記赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にある、[6]に記載の肌の乾燥防止方法。
[8]前記赤色光をエネルギー積算量が10~100J/cmとなるように照射する、[6]又は[7]に記載の肌の乾燥防止方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のキンケアセットによれば、病原菌から表皮を守るバリアーとして機能する表皮ブドウ球菌を効率的に増殖させることができる。また、肌の乾燥を効率的に防止することができる。
また、本発明の表皮ブドウ球菌の増殖促進方法によれば、表皮ブドウ球菌を効率的に増殖させることができる。本発明の肌の乾燥防止方法によれば、効率的に肌の乾燥を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明で使用する光照射装置の一例を示す内側斜視図である。
図2】本発明で使用する光照射装置の一例を示す外側斜視図である。
図3】実施例で使用した光照射装置の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<スキンケアセット>
本発明のスキンケアセットは、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する光照射装置と、ナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方からなる成分(A)を含む皮膚化粧料からなる。本発明のスキンケアセットは、顔及び首の一方又は両方に適用される。
【0009】
[光照射装置]
光照射装置は、ピーク波長が600~700nmの範囲にある赤色光を照射する装置である。ピーク波長は620~670nmの範囲にあることが好ましく、625~635nmの範囲にあることがより好ましい。
【0010】
赤色光は、ピーク波長が625~635nmの範囲にあり、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にあることが好ましい。
ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長は、640~680nmの範囲にあることがより好ましい。640~700nmの長波長側にピーク波長における光強度の1/2という充分な光の強度があることにより、本発明の効果がより高まる。
【0011】
光照射装置の一例について、図1図2を用いて説明する。
図1図2の光照射装置は、カバー体1と、カバー体1を顔に装着するための左蔓11及び右蔓12と、カバー体1の裏面に取り付けられた左光照射部21、右光照射部22、及び光照射部本体23とを備えている。
【0012】
カバー体1は図2に示すように、左頬カバー部2と右頬カバー部3と、これらの間の中央隆起部4の領域を有している。左頬カバー部2と右頬カバー部3は、各々使用者の左頬と右頬をカバーするように、内側が凹となる形状とされている。
中央隆起部4は、左頬カバー部2と右頬カバー部3よりも外側に張り出しており、上側は、使用者の鼻をカバーできるようになっている。また、下側は、カバー体1と使用者の口との間に光照射部本体23を収容できるようになっている。
中央隆起部4の上下方向略中央部分であって、光照射部本体23を収容する部分より上方には、複数の空気孔6が形成されている。
【0013】
カバー体1は、左光照射部21、右光照射部22、光照射部本体23を保持可能な剛性を備えると共に、顔に装着した際、使用者の負担とならないよう、軽量であることが好ましい。
カバー体1の材質としては、例えば、ポリプロピレンを使用できる。
【0014】
左蔓11は、左頬カバー部2の上辺に沿って取り付けられた左蔓取付部13の端部に連続し、使用者の顔後方に向けて伸びている。右蔓12は、右頬カバー部3の上辺に沿って取り付けられた右蔓取付部14の端部に連続し、使用者の顔後方に向けて伸びている。
左蔓取付部13と左蔓11の間、右蔓取付部14と右蔓12の間には、各々ヒンジを介在させてもよい。
【0015】
左蔓取付部13と右蔓取付部14には、各々クッション性のある左頬当て16と右頬当て17が取り付けられている。また、カバー体1の凸片5の上辺にはクッション性のある一対の鼻当て18が取り付けられている。
左頬当て16、右頬当て17、鼻当て18の材質としては、例えば、ウレタンゴムを使用できる。
【0016】
左光照射部21は、左頬カバー部2の内側に沿って取り付けられている。右光照射部22は右頬カバー部3の内側に沿って取り付けられている。
左光照射部21と右光照射部22は、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を発する光源を備えている。光源部としては、有機発光ダイオード(有機LED)、又は無機発光ダイオード(無機LED)を使用することが好ましい。中でも、有機発光ダイオードは、ピーク波長における光強度の1/2の強度となる長波長側の波長が640~700nmの範囲にあるものを得やすいため、好ましい。
【0017】
左光照射部21と右光照射部22は、汗や水から光源部を守るため、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂製のカバーシートを有することが好ましい。
中央隆起部4の下方に取り付けられた光照射部本体23には、左光照射部21右光照射部22に電力を供給するバッテリー等の必要な機器が収納されている。
【0018】
光照射装置としては、図1図2に示すような頬から下の部分を覆うカバー体1を用いたものの他、顔全体を覆うカバー体を使用したものでもよい。また、首のみを覆うもの、さらには、顔と首の双方を覆うものでもよい。
また、カバー体の材質は剛性のある材質に限られず、例えば、不織布からなるシート等の柔軟なものでもよい。但し、その場合、光照射部本体等の重量のある部材はカバー体に装着せず、例えば、首にかける等、別の保持手段をとることが必要である。
【0019】
また、手で操作して、光照射部を所望の場所に当てるものでもよい。そのような光照射装置としては、例えば、手で保持する把持部の先端に光照射部を有するものが挙げられる。
また、光照射装置に、皮膚化粧料供給機能を持たせてもよい。例えば、手で保持する把持部の先端に光照射部と皮膚化粧料吐出孔を有するものが使用できる。
【0020】
[皮膚化粧料]
皮膚化粧料は、成分(A)を含む。成分(A)はナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方である。
皮膚化粧料中の成分(A)の濃度は、成分(A)がナイアシンアミドの場合、0.00001~10質量%であることが好ましく、0.0001~1質量%であることがより好ましく、0.0005~0.5質量%であることがさらに好ましい。
成分(A)がアミノ酪酸の場合、0.00001~10質量%であることが好ましく、0.0001~1質量%であることがより好ましく、0.0005~0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
成分(A)がナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の両方である場合、各成分の合計濃度は、0.00005~20質量%であることが好ましく、0.0001~10質量%であることがより好ましく、0.001~1質量%であることがさらに好ましい。
また、ナイアシンアミドとアミノ酪酸の質量比率は、1:1~10:1であることが好ましい。
皮膚化粧料中の成分(A)の濃度が好ましい範囲であると、高い表皮ブドウ球菌の増殖促進効果と肌の乾燥防止効果が得られる。
【0022】
皮膚化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。例えば保湿効果を高める観点から、グリセリン、ジプロピレングリコール、1-3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビット、プロピレングリコール等の多価アルコールを含むことが好ましい。
皮膚化粧料中の多価アルコールの含有量は、皮膚化粧料に求める効果を勘案して決定することができるが、10~50質量%が好ましく、15~30質量%がより好ましい。
【0023】
[表皮ブドウ球菌の増殖促進方法及び肌の乾燥防止方法]
皮膚化粧料は、600~700nmの範囲にピークがある赤色光を照射する前に、コットンや手を用いて、顔等の皮膚になじませておくとよい。皮膚化粧料の使用量は、1cmあたり、0.01~10mLが好ましく、0.1~1mLがより好ましい。
【0024】
また、不織布シートのように、液を含浸可能な材質で光照射装置のカバー体を構成する場合は、不織布シート等に皮膚化粧料を含浸させた状態で顔等に装着することも好ましい。その場合、不織布シート等に含浸させた皮膚化粧料を、充分に皮膚になじませてから、光を照射することが好ましい。
皮膚化粧料供給機能を有する光照射装置を使用する場合、例えば、手で保持する把持部の先端に光照射部と皮膚化粧料吐出孔を有するものを使用する場合、皮膚化粧料を適宜のタイミングで皮膚に供給しながら、光を照射すればよい。
【0025】
皮膚表面に対する赤色光の照射は、エネルギー積算量が0.04~100J/cmとなるように照射することが好ましく、10~100J/cmとなるように照射することが好ましく、10~80J/cmとなるように照射することがより好ましい。
皮膚表面に対して照射する赤色光のエネルギー積算量が好ましい範囲であると、高い表皮ブドウ球菌の増殖促進効果及び肌の乾燥防止効果が得られる。
【0026】
皮膚表面に到達した赤色光、特に波長650nmの光は、その約20~50%が皮膚表面から約0.2~3mmの真皮層に到達すると推定される(日本画像学会誌第56巻第5号466(2017))(Fig.5のデータからグラフを外挿することで推測)。
そのため、例えば、真皮線維芽細胞に2J/cmの赤色光を作用させるためには、おおよそ4~10J/cm(2J/cm÷0.5、2J/cm÷0.2)の光を皮膚表面に照射する必要がある。
【0027】
光のエネルギー積算量は、光の放射照度と照射時間との積として求められる。
皮膚表面に到達する光の放射照度は、10~600W/mであることが好ましく、20~100W/mであることがより好ましい。
皮膚表面に到達する光の放射照度が好ましい範囲の下限値以上であれば、迅速に、皮膚表面に到達する光のエネルギー積算量を、所望の積算量まで高めることができる。皮膚表面に到達する光の放射照度が好ましい範囲の上限値以下であれば、皮膚に過度の刺激を与えることを回避できる。
【0028】
光の照射時間は、放射照度に合わせて、エネルギー積算量が所望の範囲となるように適宜設定すればよい。
また、光の照射は連続して行っても間欠的におこなってもよい。例えば、1日に10分~30分程度照射することを毎日繰り返してもよい。
【実施例0029】
<光照射装置>
株式会社アイテックシステム社製面発光LED照明機器(TMN150x180―22RD―4)を使用した。
この光照射装置の発光スペクトルを図3に示す。この光照射装置のピーク波長は634nm、634nmにおける光強度の1/2の強度となる長波長側の波長は643nmである。
【0030】
<機能性成分>
実施例、比較例で使用した機能性成分は、以下のとおりである。
ナイアシンアミド:ニコチン酸アミド、CAS RN:98-92-0(純正化学株式会社製、53097-9010)。
アミノ酪酸:γ-アミノ酪酸、CAS RN:56-12-2(東京化成工業株式会社製、A0282)。
【0031】
りん酸リボフラビンナトリウム:CAS RN:130-40-5(富士フイルム和光純薬株式会社製、063-00172)。
3-o-エチルアスコルビン酸:CAS RN:86404-04-8(東京化成工業株式会社製)。
L-アスコルビン酸:CAS RN:50-81-7(富士フィルム和光純薬株式会社製)。
グルタチオン:CAS RN:70-18-8(ナカライテスク株式会社製)。
【0032】
<表皮ブドウ球菌の増殖促進効果の評価>
96wellプレートに、表1、2に示す各機能性成分2μLと1/2倍希釈SCDLP培地(日本製薬社製)178μLを添加し混合した。同プレートに表皮ブドウ球菌(NBRC100911)22μLを添加した。
【0033】
なお、表1において、機能性成分の濃度は、モル濃度と質量%の双方について記載した。
機能性成分がナイアシンアミドの場合、ナイアシンアミドの分子量が122.12、水1Lの重さを1000gとして、濃度1μMは、以下のように、約0.00001質量%になると換算できる。
0.00001質量%=(1×10-6)mol/L×122.12g/mol÷1000g/L×100
機能性成分がアミノ酪酸の場合、アミノ酪酸の分子量が103.12、水1Lの重さを1000gとして、濃度1μMは、以下のように、約0.00001質量%になると換算できる。
0.00001質量%=(1×10-6)mol/L×103.12g/mol÷1000g/L×100
【0034】
表皮ブドウ球菌を添加した後、上記光照射装置により、ピーク波長634nmの光を、室温にて照射した。放射照度は40W/mとし、照射時間は、エネルギー積算量が表1、2に示す値となる時間とした。照射後、660nmの吸光度から初期濁度を求めた。
初期濁度を測定後、37℃で16時間インキュベートし、16時間後、再度660nmの吸光度から16時間後の濁度を求めた。
【0035】
16時間後の濁度(X1)と初期濁度(X0)の差として求められる濁度の変化量(ΔX)を求めた。表1、2に示す各機能性成分2μLに代えて水2μLを用いた他は同様にして、16時間後の濁度(Y1)と初期濁度(Y0)を各々求め、両者の差として求められる濁度の変化量(ΔY)を求めた。
ΔX/ΔYで求められる比率を菌増殖の指標とし、以下の評価基準で評価した。結果を表1、2に示す。
【0036】
(評価基準)
◎:ΔX/ΔYが1.09以上。
〇:ΔX/ΔYが1.08以上~1.09未満。
△:ΔX/ΔYが1.05以上~1.08未満。
×:ΔX/ΔYが1.05未満。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1に示すように、ピーク波長634nmの光を照射すると共に機能性成分としてナイアシンアミド、及びアミノ酪酸の一方又は両方を用いた実施例では、菌増殖が促進されていた。これに対して、表2に示すように、光を照射しなかった比較例1、他の機能性成分を用いた比較例2~8では、菌増殖があまり促進されなかった。
【0040】
<肌の乾燥防止効果の評価>
健康な成人男女17名を対象とし、上記光照射装置により、ピーク波長634nmの光を、顔の頬部に照射する臨床試験を実施した。放射照度は、実施例12では4W/mとし、実施例13では40W/mとした。週の内5日間において、1日1回、15分間照射することを、4週間継続した。
【0041】
被験者に対して、試験開始から4、7、10週後の肌状態について、下記の基準で回答を求めた。なお、試験開始から4週後とは、4週間継続した光照射を終了した直後である。
(評価基準)
7点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」を非常に感じた。
6点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」をかなり感じた。
5点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」をやや感じた。
4点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」について判断ができない。
3点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」をあまり感じなかった。
2点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」をほとんど感じなかった。
1点:光を照射する前に比べて「乾燥しなくなった感じ」を全く感じなかった。
【0042】
17名の評価結果を平均し、以下の判定基準で判定した。結果を表3に示す。
(判定基準)
◎:4.1点以上。
〇:3.9点以上~4.1点未満。
△:3.1点以上~3.9点未満。
×:3.1点未満。
【0043】
【表3】
【0044】
表3に示すように、ピーク波長634nmの赤色光を照射すると、赤色光のエネルギー積算量を4.8J/cmとした際にある程度の肌の乾燥防止効果が得られ、赤色光のエネルギー積算量を48J/cmとした際には高い肌の乾燥防止効果が得られた。
【0045】
表4~6に本発明で用いる皮膚化粧料の処方例を示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【符号の説明】
【0049】
1 カバー体
11 左蔓
12 右蔓
21 左光照射部
22 右光照射部
23 光照射部本体
図1
図2
図3