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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088126
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】避難支援装置、避難支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G08B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203148
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大輔
【テーマコード(参考)】
5C087
【Fターム(参考)】
5C087AA07
5C087AA25
5C087BB18
5C087BB73
5C087BB74
5C087DD02
5C087EE08
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG09
5C087GG10
5C087GG82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】想定された避難方法では避難し難い場合であっても状況に応じた避難誘導をする避難支援装置及び方法を提供する。
【解決手段】装置は、ユーザの属性情報と、ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶する記憶部102、災害が発生したことに応じて、避難訓練時における避難経路をユーザの端末装置1に送信する第1送信部1051、災害が発生して避難を開始した場合における、ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得する取得部1061、ユーザの避難データが示す位置及び経過時間とについて、学習済みモデルを用いることで、位置及び経過時間のうち少なくとも何れか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定する判定部104及び基準レベルを超えている場合に、案内情報をユーザ端末に送信する第2送信部1052を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの属性情報と、前記ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶する記憶部と、
災害が発生したことに応じて、前記避難訓練時における避難経路を前記ユーザの端末装置に送信する第1送信部と、
災害が発生して避難を開始した場合における、前記ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得する取得部と、
前記ユーザの避難データが示す位置及び経過時間とについて、前記学習済みモデルを用いることで、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定する判定部と、
前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が前記基準レベルを超えていると判定された場合に、前記基準レベルを超えたことに応じた案内情報を前記端末装置に送信する第2送信部と、
を有する避難支援装置。
【請求項2】
前記第2送信部は、前記経過時間が前記基準レベルを超える場合には、前記端末装置へ送信した避難経路とは異なる避難経路を送信する
請求項1に記載の避難支援装置。
【請求項3】
前記第2送信部は、前記位置が前記基準レベルを超えた場合には、前記ユーザの現在位置に応じて避難する避難経路を案内情報として送信する
請求項1に記載の避難支援装置。
【請求項4】
前記経過時間が前記基準レベルを超える場合には、前記端末装置の位置情報を、避難を支援する支援担当者の端末装置に対して送信する第3送信部
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の避難支援装置。
【請求項5】
記憶部が、ユーザの属性情報と、前記ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶し、
第1送信部が、災害が発生したことに応じて、前記避難訓練時における避難経路を前記ユーザの端末装置に送信し、
取得部が、災害が発生して避難を開始した場合における、前記ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得し、
判定部が、前記ユーザの避難データが示す位置及び経過時間とについて、前記学習済みモデルを用いることで、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定し、
第2送信部が、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が前記基準レベルを超えていると判定された場合に、前記基準レベルを超えたことに応じた案内情報を前記端末装置に送信する
避難支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難支援装置、避難支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施設において火災等の災害が発生した場合には、安全に避難するために、避難経路に沿って移動する場合がある。また、安全に避難することができるように、災害が生じた場合を想定した避難訓練を行うことで、事前に避難経路を理解しておくことも行われる場合がある。
特許文献1には、災害が発生した場合に、避難する人が携帯端末の表示部に避難誘導情報を表示させることで、避難経路の案内を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-071925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯端末において避難経路が表示されていたとしても、避難経路に障害物が存在している場合には、表示された避難経路に沿って避難することが難しい場合がある。また、表示された避難経路に沿って移動しようとしたとしても、避難する人が避難の途中で足を怪我し階段を利用した避難ができない場合がある等、想定通りの避難ができない場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、想定された避難方法では避難が難しい場合であっても状況に応じた避難誘導をすることが可能な避難支援装置、避難支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、ユーザの属性情報と、前記ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶する記憶部と、災害が発生したことに応じて、前記避難訓練時における避難経路を前記ユーザの端末装置に送信する第1送信部と、災害が発生して避難を開始した場合における、前記ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得する取得部と、前記ユーザの避難データが示す位置及び経過時間とについて、前記学習済みモデルを用いることで、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定する判定部と、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が前記基準レベルを超えていると判定された場合に、前記基準レベルを超えたことに応じた案内情報を前記端末装置に送信する第2送信部と、を有する避難支援装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、記憶部が、ユーザの属性情報と、前記ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶し、第1送信部が、災害が発生したことに応じて、前記避難訓練時における避難経路を前記ユーザの端末装置に送信し、取得部が、災害が発生して避難を開始した場合における、前記ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得し、判定部が、前記ユーザの避難データが示す位置及び経過時間とについて、前記学習済みモデルを用いることで、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定し、第2送信部が、前記位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が前記基準レベルを超えていると判定された場合に、前記基準レベルを超えたことに応じた案内情報を前記端末装置に送信する避難支援方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、想定された避難方法では避難が難しい場合であっても状況に応じた避難誘導をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による避難支援装置10を用いた避難支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
図2】訓練データの一例を示す図である。
図3】学習フェーズにおける避難支援装置10の動作を説明するフローチャートである。
図4】実行フェーズにおける避難支援装置10の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による避難支援装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による避難支援装置10を用いた避難支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
避難支援システムSは、複数のユーザ端末(1a、1b)と、複数の支援担当者端末(2a、2b)と、防災システム3と、避難支援装置10とがネットワークNWを介して通信可能に接続される。
【0011】
ユーザ端末1a、ユーザ端末1bは、スマートフォン、携帯電話、タブレット等のうちいずれであってもよい。ユーザ端末1a、ユーザ端末1bを特に識別しない場合には、単にユーザ端末1と称する場合がある。
ユーザ端末1は、施設内にいるユーザによって携帯される。施設は、オフィスビル、学校、複合商業施設、テーマパーク、公共機関の建物などであってもよい。このような施設においては、災害発生時において安全に避難をするための避難経路が定められている。避難経路は、フロアや居室の位置等に応じて異なる複数の種類が設定されている場合もある。
ユーザ端末1には、個別に識別情報(例えば端末ID)が割り当てられている。
ユーザ端末1は、この図では2つである場合について説明するが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0012】
支援担当者端末2a、支援担当者端末2bは、スマートフォン、携帯電話、タブレット等のうちいずれであってもよい。支援担当者端末2a、支援担当者端末2bを特に識別しない場合には、単に支援担当者端末2と称する場合がある。
支援担当者端末2は、施設において災害が発生した場合に救助が必要と思われる人の避難を支援する者や、施設内における残留者等の救助あるいは避難の支援をする者によって携帯される。
支援担当者は、消防隊員、防災要員、警備員等のうちいずれであってもよい。
支援担当者端末2は、この図では2つである場合について説明するが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0013】
防災システム3は、施設において災害が発生したか否かを検知し、災害が発生した場合に、災害の内容を発報する。防災システム3は、例えば火災監視システムであり、施設の異なる位置に複数設置された火災感知器の検知結果を、防災監視室に設置された監視装置が受信し、その検知結果に基づいて、火災が発生した火元となる場所の特定や、炎や煙が存在するエリアの特定等を行う。また、火災監視システムは、特定された火元の場所や、炎や煙が存在する位置等に基づいて、火災の発生状況や避難が必要であることを館内放送設備や、非常ベル等を利用して発報する。また、火災監視システムは、災害の発生状況に応じてスプリンクラー等の消火設備を稼働や、防火扉の稼働等をさせる。
また、防災システム3は、気象庁が提供する緊急地震速報を送信するシステムから送信される災害に関するアラート信号に基づいて災害が発生したことを検知してもよい。
【0014】
避難支援装置10は、通信部101、記憶部102、学習部103、判定部104、通知部105、制御部106を有する。
【0015】
通信部101は、ネットワークNWを介して、ユーザ端末1、支援担当者端末2、防災システム3と通信をする。
【0016】
記憶部102は、各種データを記憶する。
記憶部102は、訓練データ記憶部1021と、学習データ記憶部1022と、シナリオデータ記憶部1023と、を有する。
記憶部102は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部102は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0017】
訓練データ記憶部1021は、ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データを記憶する。避難訓練は、施設において定期的に実施される場合がある。避難訓練を実施す場合、避難訓練を受けるユーザにユーザ端末1を携帯してもらい、避難訓練をしてもらう。
ここで、ユーザには、予め属性情報が割り当てられる。属性情報は、ユーザを異なる複数のグループに分類することができるものであればよい。属性情報は、例えば、ユーザが車いすを利用する人であるか否か、高齢者であるか否か等であってもよいし、また、ユーザが施設において普段いる場所を示す情報であってもよい。
【0018】
ユーザが車いすを利用する人である場合には、車いすを利用した状態でも避難できる避難経路を案内することができる。ユーザが高齢者である場合には、なるべく階段を利用しなくてもよい経路や、手すりがあり歩きやすい経路、段差が少なくスロープとなっている経路などを案内することができる。
また、ユーザが普段いる場所を属性情報として用いる場合には、普段いる場所を起点とした避難訓練を受けていることを把握することができ、また、普段いる場所を起点とした避難経路を案内することができる。施設がオフィスビルである場合、ユーザが勤務時に利用するフロアや座席がある程度決まっている場合があり、その座席を普段いる場所として登録することができる。施設が学校である場合には、ユーザが授業を受ける際に通常利用する教室を普段いる場所として登録することができる。
【0019】
図2は、訓練データの一例を示す図である。
訓練データは、ユーザの属性情報、位置、経過時間が含まれる。
属性情報は、ユーザ登録をする際に、ユーザ毎に予め割り当てられる。
位置は、施設内における位置を表す。位置は、ユーザ端末1に搭載される測位機能によって計測された現在位置を用いることができる。
経過時間は、防災システム3において発報がなされ避難指示が出された時点からの経過時間である。この経過時間の起点となるタイミングは、防災システム3から発報された避難指示を避難支援装置10が受信したタイミングでもよいし、避難支援装置10から各ユーザ端末1にシナリオデータを送信したタイミングであってもよい。
【0020】
このように、訓練データを蓄積することで、避難訓練を実施した場合における、避難開始から避難終了までの位置の軌跡と、その位置における経過時間との関係が蓄積される。一般に、避難訓練では、避難経路が事前にユーザに対して説明されており、ユーザはその避難経路に沿って移動(避難)する。また、避難訓練では、実際には災害が生じていないため、避難経路についても正常に確保されており、障害物が存在せず、また、一般に工事中の場所等がない。また、避難訓練では実際には災害が生じていないため、災害に起因する怪我(落下物で足を怪我してしまう等)をしていない状態において移動することができる。このため、ユーザの属性毎に、正常に避難できた場合の位置とその経過時間を把握することができ、これを正常な状態として用いることができる。また、属性毎に、位置と経過時間を把握することができるため、同じ属性のユーザであれば、概ね同じような位置と経過時間で避難することができると推定することができる。
【0021】
学習データ記憶部1022は、ユーザの属性情報と、ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習した学習済みモデルを記憶する。このような学習済みモデルは、後述する学習部103によって生成された学習済みモデルである。
【0022】
シナリオデータ記憶部1023は、シナリオデータを記憶する。シナリオデータは、ユーザの属性情報毎に定められた、避難する際の避難経路を表す。例えば、シナリオデータは、普段いる場所を起点として避難先まで避難するまでの経路が定められている。このようなシナリオデータは、ユーザの属性情報毎に記憶される。
属性情報が車いすを利用することを示す場合には、車いすを利用した状態でも避難できる避難経路がシナリオデータとして定められる。また、属性情報が高齢者であることを示す場合には、なるべく階段を利用しなくてもよい経路や、手すりがあり歩きやすい経路、段差が少なくスロープとなっている経路などが避難経路として定められる。
また、シナリオデータは、施設内におけるセグメントと、そのセグメントに応じた案内内容とを対応付けた案内情報であってもよい。ここでいうセグメントは、例えば、施設内における区画である。案内内容は、セグメントに応じた、避難経路や避難する進行方向等を示すものであればよい。
【0023】
学習部103は、ユーザの属性情報と、ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データとの関係を学習することによって、学習済みモデルを生成する。
この学習は、機械学習であってもよい。また、学習としては、統計パターンから異常値を抽出する外れ値検知を用いる検知方式に基づくものであってもよく、また、正常か異常かについて判別するサポートベクターマシーンを用いてもよく、ロジスティック回帰を用いてもよい。
学習済みモデルを用いることで、避難訓練をした際における避難状況をユーザの属性情報毎に学習することができ、これにより、実際に災害が発生した場合においてユーザが避難している状況(位置、経過時間)が、避難訓練をした際の避難状況(位置、経過時間)から乖離が大きいが否かに基づく異常検知をすることができる。
【0024】
ここでは、避難訓練を実施することで得られた訓練データに基づくことで、ユーザの属性情報毎に、正常に避難できた場合における避難状況を表すデータを用い、データマイニングを利用して、災害発生時における避難状況が正常であるか異常であるかを識別することができる。正常であると識別された場合には、避難訓練通りに避難できていると推定することができるため、順調に避難できていると推定することができる。一方、異常である(避難訓練とはズレがある)と識別された場合には、順調に避難することができていないと推定することができる。例えば、普段いる場所とは違う場所にいる時に災害が発生したため、避難訓練をしていない位置から避難することになり、また、初めての場所なので迷子になってしまい、円滑な避難ができていないケースが考えられる。
また、普段いる場所とは違う場所(例えば自席ではなく倉庫)にいて災害が生じた場合に、その場所を起点とした避難訓練を受けていなかったために、避難経路の把握が遅れており円滑な避難ができていないケースが考えられる。
また、階段を利用して移動する経路を避難訓練として受けており、その避難訓練通りの経路に沿って避難をしている途中において、足に怪我をしてしまい、階段を通行することができない状況となっているケースが考えられる。
また、避難訓練通りの経路を利用して避難していたが、経路の途中の場所が工事中であり通行止めになっていたため、避難の途中において避難訓練とは異なる経路から避難せざるを得ないケースが考えられる。
このような場合には、避難の途中におけるユーザの現在位置と、防災システム3において発報がなされ避難指示が出された時点からの経過時間が、避難訓練時における避難状況からの乖離が生じ、その乖離が基準レベルよりも大きくなった場合には、異常であると検知することができる。基準レベルは、乖離の度合いを表すものであり予め決められた閾値であってもよい。
【0025】
判定部104は、ユーザの避難データが示す位置及び経過時間について、記憶部102に記憶された学習済みモデルを用いることで、位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定する。例えば判定部104は、災害発生時においてユーザが避難をしている状況を検出したデータである避難データを通信部101を介して制御部106によって取得されると、その避難データを学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルから出力される、正常であるか異常であるかの結果を得ることで、基準レベルを超えて相違するか否かを判定することができる。
基準レベルを超えている場合、避難訓練をした場合における避難開始から避難終了までの移動経路と移動にかかる時間(経過時間)を比べて、実際に災害が発生し避難している移動経路と経過時間について、ずれが生じていると推定することができる。このため、少なくとも移動経路が避難訓練のときとは異なる経路を移動してしまっているか、あるいは、経過時間が避難訓練のときに比べて時間がかかってしまっていると推定することができる。このような場合には、避難訓練時のシナリオデータではなく、そのときの状況に応じた案内情報を送信することで、想定された避難方法(避難訓練時のシナリオデータに基づく避難方法)では避難が難しい場合であっても状況に応じて避難誘導をすることができる。
【0026】
通知部105は、通信部101によって、ユーザ端末1または支援担当者端末2に各種データを送信させる。
例えば、通知部105は、災害が発生したことに応じて、避難訓練時における避難経路を、通信部101を介してユーザの端末装置に送信する第1送信部1051を有する。
また、通知部105は、判定部104によって、避難データの位置及び経過時間のうち少なくともいずれか一方が基準レベルを超えていると判定された場合に、基準レベルを超えたことに応じた案内情報をユーザ端末1または支援担当者端末2に対して通信部101を介して送信する第2送信部1052を有する。通知部105は、経過時間が基準レベルを超える場合には、前記端末装置へ送信した避難経路とは異なる避難経路を送信するようにしてもよい。通知部105は、位置が基準レベルを超えた場合には、ユーザの現在位置に応じて避難する避難経路を案内情報として送信するようにしてもよい。
また、通知部105は、経過時間が基準レベルを超える場合には、ユーザ端末1によって計測されたユーザ端末1の位置情報を、避難を支援する支援担当者の端末装置(支援担当者端末2)に対して通信部101を介して送信する第3送信部1053を有する。
【0027】
制御部106は、避難支援装置10の各部を制御する。
制御部106は、避難訓練を行った場合における、ユーザの属性情報と、ユーザが避難シナリオに沿って避難訓練をした場合における移動した位置及び経過時間を示す訓練データをユーザ端末1から取得し、記憶部102の訓練データ記憶領域に書き込む。
【0028】
また、制御部106は、災害が発生して避難を開始した場合における、ユーザが避難する位置と経過時間とを示す避難データを取得する取得部1061を有する。
【0029】
避難支援装置10において、通信部101、学習部103、判定部104、通知部105、制御部106は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0030】
次に、避難支援装置10の動作を説明する。
ここでは、避難支援装置10の動作として、学習済みモデルを生成する学習フェーズと、学習済みモデルを用いて避難支援を行う実行フェーズとについて説明する。
図3は、学習フェーズにおける避難支援装置10の動作を説明するフローチャートである。学習フェーズは、避難訓練を実施する際に実行される。
避難支援装置10の制御部106は、避難訓練が開始されると、開始タイミングを起点として経過時間のカウントを開始する。そして制御部106は、ユーザ端末1から端末IDと、ユーザ端末1において測位された現在位置を通信部101を介して取得し(ステップS101)、訓練データ記憶部1021に書き込む(ステップS102)。ここで、端末IDと属性情報とがユーザ情報として記憶部102に予め記憶されており、制御部106は、記憶部102のユーザ情報を参照することで、取得した端末IDに応じた属性情報を読み出し、読み出された属性情報と、取得された位置と、位置が取得された時点における経過時間を対応付けて訓練データとして訓練データ記憶部1021に記憶する。
【0031】
制御部106は、このような訓練データの取得と記憶の処理について、避難訓練が終了するまで行う。なお、避難訓練開始と終了のタイミングについては、管理者が端末装置に入力することで、端末装置から避難支援装置10に通知されるようにしてもよい。
【0032】
訓練データの記憶が終了すると、学習部103は、訓練データに基づいて学習を行うことで(ステップS103)、学習済みモデルを生成し、学習データ記憶部1022に記憶させる(ステップS104)。
ここでは、ユーザの属性情報毎に学習済みモデルが生成され、学習データ記憶部1022に記憶される。
【0033】
図4は、実行フェーズにおける避難支援装置10の動作を説明するフローチャートである。実行フェーズは、避難訓練が実施されていない期間において実行される。
避難支援装置10の制御部106は、防災システム3からの発報を受信すると(ステップS201)、避難訓練に基づくシナリオデータを各ユーザ端末1に送信する(ステップS202)。ここでは、制御部106は、送信先であるユーザ端末1の端末IDに対応する属性情報を、ユーザ情報を参照することで特定し、その属性情報に対応するシナリオデータをシナリオデータ記憶部1023から読み出し、読み出されたシナリオデータをユーザ端末1に送信する。
ユーザ端末1は、シナリオデータを受信すると、シナリオデータに含まれる避難経路を表示画面に表示する。これにより、ユーザは、表示画面に表示された避難経路を確認しつつ、避難することができる。また、ユーザ端末1は、シナリオデータを受信すると、ユーザ端末1の現在位置を測位し、測位結果に基づいて現在位置を避難支援装置10に一定時間毎に送信する。一定時間は、任意に定めることができるが、例えば、数秒間隔である。
【0034】
次に、制御部106は、経過時間のカウントを開始する(ステップS203)。そして制御部106は、各ユーザ端末1から現在位置を示す位置情報を端末IDとともに通信部101によって受信することに応じて取得する(ステップS204)。
【0035】
位置情報が取得されると、判定部104は、取得された位置情報と、当該位置情報が取得された時点における経過時間を取得し、学習データ記憶部1022に記憶された学習済みモデルを用いて、位置と経過時間の少なくともいずれか一方が基準レベルを超えて相違するか否かを判定する(ステップS205)。
【0036】
判定部104の判定結果において、位置と経過時間のいずれも基準レベルを超えるような相違がない、すなわち、避難訓練を行った際の位置及び経過時間とのズレがほとんどないと推定される場合には(ステップS205-NO)、制御部106は、処理をステップS207に進める。
【0037】
一方、判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方が基準レベルを超える相違があると判定された場合には、ユーザが、避難訓練を行った際の位置とは異なる位置にいると推定すること、あるいは、避難訓練を行った際の避難経路上にユーザがいるが、経過時間について避難訓練を行った際の経過時間よりも時間が多くかかっていると推定することができる。すなわち、このような場合、ユーザがシナリオデータに基づく避難をすることができていない状況であると推定することができる。
このような判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方が基準レベルを超える相違があると判定された場合、通知部105は、基準レベルを超えたことに応じた案内情報をユーザ端末1または支援担当者端末2に送信する(ステップS206)。
【0038】
ここで、案内情報をユーザ端末1に送信する場合、通知部105は、基準レベルが送信する項目が位置であるか経過時間であるかに基づいて、位置が基準レベルを超えた場合には、ユーザの現在位置に応じて避難する避難経路(避難訓練とは異なる避難経路)を案内情報として送信する。例えば、通知部105は、ユーザ端末1から送信された位置から避難する場合の避難経路を含むシナリオデータであって、送信対象のユーザ端末1のユーザの属性情報に応じたシナリオデータをシナリオデータ記憶部1023から読み出し、読み出したシナリオデータをユーザ端末1に送信する。これにより、ユーザが実施した避難訓練の経路上の位置とは異なる位置にいたとしてもその位置に応じた避難経路を案内することができる。例えば、避難途中において施設内において迷子になってしまった場合、障害物があって迂回したところ避難訓練の経路から外れてしまった場合等においても、現在位置(セグメント)に応じた案内情報(避難経路)を案内することができる。
ここでは、案内情報として送信するシナリオデータは、ユーザの属性情報毎に予め準備されており、安全に避難することが想定された避難経路と経過時間とが含まれるシナリオデータであり、ユーザの属性情報毎に予めシナリオデータ記憶部1023に記憶される。
【0039】
また、通知部105は、基準レベルが送信する項目が位置であるか経過時間であるかに基づいて、経過時間が基準レベルを超える場合には、ユーザ端末1によって計測されたユーザ端末1の位置情報を、支援担当者端末2に対して送信する。例えば、ユーザが避難訓練を実施したときと同じ避難経路に沿って移動していたとしても、想定していた経過時間よりも多く時間がかかっていることから、発生した災害によって怪我をしてしまっている場合には、避難が完了するまでの時間がさらに長引く場合が想定されるため、支援担当者端末2に救助の要請と、ユーザの位置とを含む案内情報を送信する。これにより、支援担当者がユーザの位置まで行き、ユーザの状況を確認し、救助等をすることができる。
案内情報が送信されると、制御部106は、処理をステップS207に進める。
【0040】
ステップS207において、制御部106は、処理を終了するか否かを判定する。処理を終了しないと判定された場合(ステップS207-NO)、制御部106は、処理をステップS204に移行し、各ユーザ端末1から現在位置を示す位置情報を端末IDとともに受信する(ステップS204)。
処理を終了しないと判定される場合としては、例えば、判定部104の判定結果において、位置と経過時間のいずれも基準レベルを超えるような相違がない場合であって、ユーザの位置がシナリオデータに基づく避難経路の最終地点まで到達していない場合である。このような場合には、引き続き、位置と経過時間のいずれも基準レベルを超えるような相違がなければ、ユーザの避難状況の確認が継続される。
【0041】
処理を終了すると判定された場合(ステップS207-NO)、制御部106は、処理を終了する。処理を終了すると判定される場合としては、例えば、判定部104の判定結果において、位置と経過時間のいずれも基準レベルを超えるような相違がない場合における、ユーザの位置がシナリオデータに基づく避難経路の最終地点まで到達したユーザのユーザ端末1については処理を終了する。
また、別の例としては、判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方について基準レベルを超えるような相違がある場合であって、支援担当者端末2に対して案内情報を送信するとされたユーザ端末1についての処理を終了する。
また、判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方について基準レベルを超えるような相違がある場合であって、避難訓練とは異なる避難経路のシナリオデータを案内情報として送信した対象のユーザ端末1について、案内情報であるシナリオデータに基づく避難経路の最終地点まで到達したユーザのユーザ端末1については処理を終了する。
【0042】
また、判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方について基準レベルを超えるような相違がある場合であって、避難訓練とは異なる避難経路のシナリオデータを案内情報として送信した対象のユーザ端末1について、案内情報であるシナリオデータに基づく位置と経過時間の少なくともいずれか一方について基準レベルを超えるような相違がある場合には、通知部105が、このようなユーザが携帯するユーザ端末1の位置情報を支援担当者端末2に案内情報として送信して処理を終了する。
また、他の例としては、判定部104の判定結果において、位置と経過時間の少なくともいずれか一方について基準レベルを超えるような相違がある場合であって、支援担当者端末2に案内情報を送信した対象のユーザ端末1について、処理を終了する。
案内情報が送信された対象のユーザ端末1については、支援担当者端末2に案内情報として通知されるため、支援担当者が救助に向かう等の各種対応をすることができる。
【0043】
以上説明した実施形態において、学習部103は、避難支援装置10の外部の装置とし、避難支援装置10に対して通信可能に接続されるようにしてもよい。
【0044】
上述した実施形態における避難支援装置10をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0045】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b…ユーザ端末、2,2a,2b…支援担当者端末、3…防災システム、10…避難支援装置、101…通信部、102…記憶部、1021…訓練データ記憶部、1022…学習データ記憶部、1023…シナリオデータ記憶部、103…学習部、104…判定部、105…通知部、106…制御部、1051…第1送信部、1052…第2送信部、1053…第3送信部、1061…取得部、NW…ネットワーク、S…避難支援システム
図1
図2
図3
図4