(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088131
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】クリップ装置
(51)【国際特許分類】
B42F 1/02 20060101AFI20240625BHJP
F16B 2/24 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B42F1/02 Z
F16B2/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203156
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】397056145
【氏名又は名称】株式会社ティ・カトウ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊行
【テーマコード(参考)】
2C017
3J022
【Fターム(参考)】
2C017BA03
2C017CA04
2C017DA02
3J022DA11
3J022EA02
3J022EB03
3J022FA05
3J022FB30
3J022HA05
3J022HB02
(57)【要約】
【課題】力が弱い高齢者や子供であっても、種々の厚みの対象物を容易に挟んで保持することができる、ユニバーサルデザインのクリップ装置を提供する。
【解決手段】クリップ装置1は、互いに分離可能な一対のクリップ部材2を備え、クリップ部材2は、板状の挟持部4と、挟持幅方向Yに所定幅の隙間8を存して複数配列される板状のレール部6とを有し、一対のクリップ部材2は、各挟持部4で対象物14を挟んだ状態で、一方のクリップ部材2のレール部6を他方のクリップ部材2の隙間8にスライドして嵌め込むことにより、各レール部6において嵌合部16を形成し、嵌合部16の形成に相俟って、対象物14の挟持方向Zにおける厚みにより、一対のクリップ部材2のそれぞれの挟持部4が互いに挟持方向Zにおいて離間する方向に湾曲し、当該湾曲で生じる当該各挟持部4の反力によって対象物14を挟持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を挟んで保持するクリップ装置であって、
前記対象物における一端において前記対象物を挟持し、且つ互いに分離可能な一対のクリップ部材を備え、
前記クリップ部材は、
前記対象物における前記一端において前記対象物を挟持するときの挟持長方向に所定長を有して延設されるとともに、前記挟持長方向と交差する挟持幅方向に所定幅を有して延設される板状の挟持部と、
前記挟持部の前記挟持長方向における一端から、前記対象物を挟持するときの挟持方向に延設されるとともに、前記挟持幅方向に所定幅の隙間を存して複数配列される板状のレール部と
を有し、
前記一対のクリップ部材は、それぞれの前記挟持部が前記挟持方向に対向する姿勢で配置され、前記各挟持部で前記対象物を挟んだ状態で、一方の前記クリップ部材の前記レール部を他方の前記クリップ部材の前記隙間にスライドして嵌め込むことにより、前記挟持幅方向に隣接する前記各レール部において嵌合部を形成し、
前記嵌合部の形成に相俟って、前記対象物の前記挟持方向における厚みにより、前記一対のクリップ部材のそれぞれの前記挟持部が互いに前記挟持方向において離間する方向に湾曲し、当該湾曲で生じる当該各挟持部の反力によって前記対象物を挟持する、クリップ装置。
【請求項2】
前記湾曲によって前記嵌合部の嵌合力が増大することにより、前記挟持幅方向に隣接する前記各レール部の抜け止め機構が形成される、請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項3】
前記嵌合部は、
一方の前記クリップ部材の前記レール部において前記挟持方向に延設される凸条部と、
他方の前記クリップ部材の前記レール部において前記挟持方向に延設されるとともに、前記凸条部が前記挟持方向にスライドして嵌め込まれる凹条部と
から形成される、請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項4】
前記レール部は、前記挟持部から所定の立設角度を有して立設され、
前記立設角度は90度未満である、請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項5】
前記挟持部は、前記嵌合部を形成した際に前記レール部の先端の嵌入を許容する嵌入孔を有する、請求項1に記載のクリップ装置。
【請求項6】
前記一対のクリップ部材は、同一形状を有する、請求項1から5の何れか一項に記載のクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ装置に係り、詳しくは、対象物を挟んで保持するクリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コの字状に閉じた板バネの先端に回動自在なツマミを取り付け、このツマミによって板バネを開閉するクリップ(公報
図15参照)や、コの字状に閉じた板バネにグリップを取り付け、このグリップにおいて板バネを開閉するクリップ(公報
図13等参照)が開示されている。また、上記ツマミや上記グリップを排除し、コの字状に閉じた板バネの先端の開口縁を外側に反らせ、挟むための対象物を板バネの先端か押し込んで板バネを開閉するクリップ(公報
図16参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クリップにおいては、板バネを開閉するために、ツマミやグリップをある程度の力でつまんで押す必要があり、また、板バネの先端から対象物をある程度の力で押し込む必要がある。従って、特に力が弱い高齢者や子供は扱い難いという問題がある。また、厚みが大きい対象物を挟む場合、板バネを大きく開閉する必要があるため、より一層大きな力が必要となり、高齢者や子供はさらに扱いが困難となる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、力が弱い高齢者や子供であっても、種々の厚みの対象物を容易に挟んで保持することができるユニバーサルデザインのクリップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するべく、本発明のクリップ装置は、対象物を挟んで保持するクリップ装置であって、対象物における一端において対象物を挟持し、且つ互いに分離可能な一対のクリップ部材を備え、クリップ部材は、対象物における一端において対象物を挟持するときの挟持長方向に所定長を有して延設されるとともに、挟持長方向と交差する挟持幅方向に所定幅を有して延設される板状の挟持部と、挟持部の挟持長方向における一端から、対象物を挟持するときの挟持方向に延設されるとともに、挟持幅方向に所定幅の隙間を存して複数配列される板状のレール部とを有し、一対のクリップ部材は、それぞれの挟持部が挟持方向に対向する姿勢で配置され、各挟持部で対象物を挟んだ状態で、一方のクリップ部材のレール部を他方のクリップ部材の隙間にスライドして嵌め込むことにより、挟持幅方向に隣接する各レール部において嵌合部を形成し、嵌合部の形成に相俟って、対象物の挟持方向における厚みにより、一対のクリップ部材のそれぞれの挟持部が互いに挟持方向において離間する方向に湾曲し、当該湾曲で生じる当該各挟持部の反力によって対象物を挟持する。
【発明の効果】
【0007】
従って、本発明によれば、力が弱い高齢者や子供であっても、種々の厚みの対象物を容易に挟んで保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクリップ装置を上方から見た斜視図である。
【
図6】対象物を挟持した状態のクリップ装置の斜視図である。
【
図7】
図6を各レール部側から見たクリップ装置の背面図である。
【
図9】
図8のA-A矢視方向における各レール部の断面図である。
【
図12】嵌入孔にレール部が嵌入された状態のクリップ装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るクリップ装置1について図面を参照して説明する。
図1はクリップ装置1を上方から見た斜視図を示し、
図2はクリップ装置1を下方から見た斜視図を示す。クリップ装置1は、例えば複数枚の紙などを重ねた対象物を挟んで保持するために用いられ、一対のクリップ部材2から構成されている。一対のクリップ部材2は、対象物における一端において対象物を挟持し、且つ互いに分離可能である。本実施形態の場合、一対のクリップ部材は同一形状を有する。
【0010】
図3はクリップ部材2を上方から見た斜視図を示し、
図4はクリップ部材2を下方から見た斜視図を示す。クリップ部材2は、ある程度の湾曲が可能な可撓性を有する材料、例えばポリカーボネートなどの樹脂から形成され、板状の挟持部4と板状のレール部6とを備えている。挟持部4は、対象物における一端において対象物を挟持するときの挟持長方向Xに所定長を有して延設されるとともに、挟持長方向Xと交差する挟持幅方向Yに所定幅を有して延設される。
【0011】
レール部6は、挟持部4の挟持長方向Xにおける一端から、対象物を挟持するときの挟持方向Zに延設されるとともに、挟持幅方向Yに所定幅の隙間8を存して複数配列される。本実施形態の場合、レール部6は2つ配列され、一方のレール部6は挟持部4の挟持幅方向Yにおける一端に位置付けられる。一方、他方のレール部6は、挟持部4の挟持幅方向Yにおいて一方のレール部6と隙間8を存して位置付けられるとともに、挟持部4の挟持幅方向Yにおける他端から隙間8を存して位置付けられる。
【0012】
また、一方のレール部6の他方のレール部6に対向する側面には、凸条部10が形成されている。凸条部10は、挟持幅方向Yにおいて他方のレール部6に向けて突出し、且つ挟持方向Zに延設される。また、
図4に示すように、他方のレール部6の外方に向けた側面には、凹条部12が形成されている。凹条部12は、他方のレール部6の側面を挟持幅方向Yにおいて内方に向けて切り欠いて形成され、且つ挟持方向Zに延設される。
【0013】
図5はクリップ部材2の側面図を示す。クリップ部材2に形成される各レール部6は、挟持部4から所定の立設角度αを有して立設される。立設角度αは、90度未満であり、より好ましくは80°以上且つ90度未満であり、例えば86度である。なお、立設角度αは、クリップ部材2の材質や厚みなどに応じて最適な値が設定される。
【0014】
図6は、対象物14を挟持した状態のクリップ装置1の斜視図を示す。また、
図7は
図6を各レール部6側から見たクリップ装置1の背面図、
図8は
図6のクリップ装置1の側面図、
図9は
図8のA-A矢視方向における各レール部6の断面図、
図10は
図7における領域Bの拡大図、
図11は
図6のクリップ装置1の上面図をそれぞれ示す。
図6から
図8に示すように、一対のクリップ部材2は、それぞれの挟持部4が挟持方向Zに対向する姿勢で配置される。
【0015】
そして、一方のクリップ部材2のレール部6を他方のクリップ部材2の隙間8にスライドして嵌め込む。これにより、各挟持部4で対象物14を挟んだ状態で、挟持幅方向Yに隣接する各レール部6において嵌合部16が形成される。より詳しくは、嵌合部16は、一方のクリップ部材2のレール部6に形成される凸条部10を他方のクリップ部材2のレール部6に形成される凹条部12に挟持方向Zにスライドして嵌め込むことにより形成される。
【0016】
嵌合部16の形成に相俟って、対象物14の挟持方向Zにおける厚みtにより、一対のクリップ部材2のそれぞれの挟持部4が互いに挟持方向Zにおいて離間する方向(
図8に示す実線矢印方向)に湾曲する。この湾曲で生じる各挟持部4の反力が
図8に示す破線矢印方向に作用することによって対象物14が挟持される。各挟持部4には、対象物14を挟持する内側面に挟持長方向Xに亘って押圧条18がそれぞれ突出して形成されている。各挟持部4で挟まれた対象物14は、各押圧条18において滑ることなく保持される。
【0017】
さらに、各挟持部4の湾曲によって各レール部6が傾斜し、嵌合部16の嵌合力が増大することにより、挟持幅方向Yに隣接する各レール部6の抜け止め機構20が形成される。また、
図10に示すように、隙間8は、隣接する各レール部6が適度に接触する大きさに設定される。このため、対象物14の挟持中に各クリップ部材2が互いに挟持幅方向Yに横ずれすることが抑制される。また、
図11に示すように、挟持部4には、嵌合部16を形成した際にレール部6の先端の嵌入を許容する嵌入孔22がレール部6の数に対応して2つ形成されている。
【0018】
図12は、嵌入孔22にレール部6が嵌入された状態のクリップ装置1の背面図を示し、
図13は
図12のクリップ装置1の側面図を示す。これらの状態においては、レール部6の先端が嵌入孔22に嵌入され、挟持部4の外側面から若干突出している。これにより、嵌合部16における各レール部6の嵌合力に加え、嵌入孔22における挟持部4とレール部6との嵌合力を発生させることができる。
【0019】
これにより、厚みtが小さい対象物、例えば1枚の紙であっても、挟持部4を
図13に示す実線矢印方向に湾曲させることができる。従って、この湾曲で生じる各挟持部4の反力が
図13に示す破線矢印方向に作用することにより対象物14を挟持することができる。
【0020】
以上のように本実施形態のクリップ装置1は、各挟持部4で対象物14を挟んだ状態で、一方のクリップ部材2のレール部6を他方のクリップ部材2の隙間8にスライドして嵌め込むことにより嵌合部16が形成され、嵌合部16の形成に相俟って、対象物14の厚みtにより各挟持部4が互いに離間する方向に湾曲する。この湾曲で生じる各挟持部4の反力によって対象物14が挟持される。これにより、一方のクリップ部材2のレール部6を他方のクリップ部材2の隙間8にスライドして嵌め込むだけの簡単な動作で対象物14を挟持することができる。
【0021】
従って、力が弱い高齢者や子供であっても、厚みtが大きい対象物14であっても、対象物14を容易に挟んで保持可能なユニバーサルデザインのクリップ装置1を実現することができる。また、各挟持部4の湾曲によって嵌合部16の嵌合力が増大することにより、挟持幅方向Yに隣接する各レール部6の抜け止め機構20が形成される。これにより、嵌合部16の嵌合力をさらに高めることができるとともに、対象物14の挟持力を高めることができる。
【0022】
より具体的には、嵌合部16は、一方のクリップ部材2のレール部6に形成される凸条部10を他方のクリップ部材2のレール部6に形成される凹条部12に挟持方向Zにスライドして嵌め込むことにより形成される。これにより、レール部6に凸条部10又は凹条部12を形成するだけの簡単な加工で嵌合部16を形成することができる。従って、クリップ装置1の生産コストを低減することができる。
【0023】
また、レール部6は挟持部4から立設角度αを有して立設され、立設角度αは90度未満である。これにより、対象物14を挟持したときに各挟持部4を効果的に湾曲させることができるため、対象物14の挟持力をさらに高めることができる。また、挟持部4は、嵌合部16を形成した際にレール部6の先端の嵌入を許容する嵌入孔22を有する。これにより、厚みtが小さい対象物14であっても、挟持部4を湾曲させることができるため、種々の厚みtの対象物14を確実に挟持することができる。
【0024】
また、一対のクリップ部材2が同一形状を有することにより、各クリップ部材2を容易に製造することができるため、クリップ装置1の生産コストを低減することができる。また、各クリップ部材2で対象物14を挟み込む際の誤組付けが生じ得ないため、ユーザーの利便性を向上することができる。
【0025】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、一方のクリップ部材2のレール部6を他方のクリップ部材2の隙間8にスライドして嵌合部16を形成可能であれば、レール部6の数、挟持部4におけるレール部6の位置、レール部6の形状は、前述した形態に厳密に限定されない。
【0026】
また、クリップ部材2の材料は、可撓性を有するのであれば、樹脂に限らず金属や木材であっても良い。また、立設角度αは90度未満であることにより前述した効果を得られるが、形成される嵌合部16の嵌め合いを若干緩くし、各挟持部4を湾曲のみならず傾斜させることにより対象物14を挟持可能であれば、立設角度αは90度以上であっても良い。
【0027】
また、挟持部4は嵌入孔22を有するが、嵌合部16のみで十分に挟持力を発生可能であれば、嵌入孔22は必ずしも必要ない。また、一対のクリップ部材2が同一形状を有することにより前述した効果を得られるが、各クリップ部材2は必ずしも同一形状でなくとも良い。
【符号の説明】
【0028】
1 クリップ装置
2 クリップ部材
4 挟持部
6 レール部
8 隙間
10 凸条部
12 凹条部
14 対象物
16 嵌合部
20 抜け止め機構
22 嵌入孔
X 挟持長方向
Y 挟持幅方向
Z 挟持方向
α 立設角度
t 厚み