(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088133
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】壁体の補強構造
(51)【国際特許分類】
H02B 1/30 20060101AFI20240625BHJP
H05K 7/18 20060101ALI20240625BHJP
A47B 55/00 20060101ALI20240625BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02B1/30 A
H05K7/18 C
A47B55/00
F16B5/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203158
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】山根 拓也
(72)【発明者】
【氏名】滿永 修二
【テーマコード(参考)】
3B067
3J001
5G016
【Fターム(参考)】
3B067AA08
3B067CA04
3B067DA03
3B067EA03
3J001FA07
3J001GB01
3J001HA03
3J001JA10
3J001JC02
3J001KA19
3J001KA21
3J001KA26
3J001KB03
5G016CA07
(57)【要約】
【課題】固定部材によって剛性を向上できるようにすること。
【解決手段】前後方向に延出する第1フレーム(11)と、第1フレームに交差する左右方向に延出する第2フレーム(12)と、第1フレーム及び第2フレームの交差位置に設けられる固定部材(20)とを備えている。固定部材は、前後方向に平行に形成された第1片部(21)と、第1片部の一端に連なって左右方向に平行に形成された第2片部(22)とを備えた屈曲形状に設けられている。第1片部は、第1フレームの左面に面接触して第1フレームに固定されるとともに、第2フレームを跨いで配置される。第2片部は、第2フレームの前面に面接触して第2フレームに固定される。第1片部は外面(212)で第1フレームと面接触し、第2片部は内面(221)で第2フレームと面接触する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の厚さ方向における少なくとも一方の面に沿って設けられる壁体の補強構造であって、
第1方向に延出し、延出する方向に直交する方向に厚さを有する第1フレームと、
前記第1フレームに交差する第2方向に延出し、延出する方向に直交する方向に厚さを有する第2フレームと、
前記第1フレーム及び前記第2フレームの交差位置に設けられる固定部材とを備え、
前記固定部材は、前記第1方向に平行に形成された第1片部と、
前記第1片部の一端に連なって前記第2方向に平行に形成された第2片部とを備えた屈曲形状に設けられ、前記第1片部及び前記第2片部の入隅側を内面、出隅側を外面として形成し、
前記第1片部は、前記第1フレームの厚さ方向一方の面に面接触して前記第1フレームに固定されるとともに、前記第2フレームを跨いで配置され、
前記第2片部は、前記第2フレームの厚さ方向一方の面に面接触して前記第2フレームに固定され、
前記第1片部は外面で前記第1フレームと面接触し、前記第2片部は内面で前記第2フレームと面接触することを特徴する壁体の補強構造。
【請求項2】
前記第1片部には、前記第2フレームを受容する取付用溝が形成されることを特徴する請求項1に記載の壁体の補強構造。
【請求項3】
前記第1フレームは、受容する前記第2フレームを前記第2フレームの厚さ方向から挟んで位置する第1フレーム溝を備え、
前記第2フレームは、受容する前記第1フレームを前記第1フレームの厚さ方向から挟んで位置する第2フレーム溝を備え、
前記第1フレーム及び前記第2フレームは、前記第1フレーム溝の底部と前記第2フレーム溝の底部とが対向するよう組み合わされて交差することを特徴する請求項1または請求項2に記載の壁体の補強構造。
【請求項4】
前記第1フレーム溝は、前記第2フレームの厚さに応じた溝幅に形成され、
前記第2フレーム溝は、前記第1フレームと前記第1片部とを重ねた厚さに応じた溝幅に形成されることを特徴する請求項3に記載の壁体の補強構造。
【請求項5】
前記固定部材は前記取付用溝に前記第2フレームを差し込んで受容し、
前記第1片部と前記第1フレームが固定される第1固定部と、前記第2片部と前記第2フレームが固定される第2固定部とを有し、前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記取付用溝に前記第2フレームを差し込む方向において位置が異なることを特徴とする請求項2に記載の壁体の補強構造。
【請求項6】
前記第1片部は前記第1フレームに第1締結具により固定され、前記第2片部は前記第2フレームに第2締結具により固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁体の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差するフレームによって補強することができる壁体の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の電気機器を収容する配電盤等にあっては、箱状をなす筐体を備えて構成される。かかる構成としては、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される箱体は、箱形フレームと、箱形フレームに取り付けられる天井板、底板、左右の側板とで構成されている。箱形フレームは、四角形の枠内を格子形補強体で補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような格子形補強体にあっては、補強する底板等の面方向に平行な方向から荷重が加わるが、かかる荷重に対して剛性を良好に発揮できることが求められている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、固定部材によって剛性を向上することができる壁体の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の壁体の補強構造は、壁体の厚さ方向における少なくとも一方の面に沿って設けられる壁体の補強構造であって、第1方向に延出し、延出する方向に直交する方向に厚さを有する第1フレームと、前記第1フレームに交差する第2方向に延出し、延出する方向に直交する方向に厚さを有する第2フレームと、前記第1フレーム及び前記第2フレームの交差位置に設けられる固定部材とを備え、前記固定部材は、前記第1方向に平行に形成された第1片部と、前記第1片部の一端に連なって前記第2方向に平行に形成された第2片部とを備えた屈曲形状に設けられ、前記第1片部及び前記第2片部の入隅側を内面、出隅側を外面として形成し、前記第1片部は、前記第1フレームの厚さ方向一方の面に面接触して前記第1フレームに固定されるとともに、前記第2フレームを跨いで配置され、前記第2片部は、前記第2フレームの厚さ方向一方の面に面接触して前記第2フレームに固定され、前記第1片部は外面で前記第1フレームと面接触し、前記第2片部は内面で前記第2フレームと面接触することを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1片部の外面が第1フレームと面接触し、第2片部の内面が第2フレームと面接触するので、固定部材にて、第1フレームの厚さ方向両側からの荷重を受けられるようにしつつ、第2フレームの厚さ方向両側からの荷重も受けることができる。
これにより、固定部材にて交差する2方向からの荷重を受けることができるようになり、各フレームの交差部分における応力を緩和して剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る補強構造が適用される筐体の概略斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態の補強構造の部分拡大斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態における第1フレーム及び第2フレームの交差位置における平面図である。
【
図5】第1の実施の形態における格子構造を組み立てる中途段階の斜視図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、従来構造の固定部材における荷重の作用の説明図であり、
図6C及び
図6Dは、第1の実施の形態の固定部材における荷重の作用の説明図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、従来構造の固定部材における荷重の作用の説明図であり、
図7C及び
図7Dは、第1の実施の形態の固定部材における荷重の作用の説明図である。
【
図8】第2の実施の形態の補強構造における固定部材周りの平面図である。
【
図9】第2の実施の形態の固定部材の斜視図である。
【
図10】変形例における補強構造の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る補強構造が適用される筐体について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。また、以下の説明において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各図において矢印で示した方向を基準として用いる。但し、各構成の向きは、一例にすぎず、任意の向きに変更することができる。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る補強構造が適用される筐体の概略斜視図である。
図1に示す筐体1は、内部に所定の収容空間を備え、例えば、図示省略した配電盤や制御盤、遮断器等の所定の電気機器を収容空間内に収容する。筐体1は、板状の金属材料となる板金により構成される複数の壁体を備え、かかる複数の壁体を連結した構造に設けられる。更に述べると、筐体1は、上部壁体2と、下部壁体3と、上部壁体2及び下部壁体3の間に設けられる複数の側方壁体5とを備えている。
【0011】
なお、各壁体2、3、5を構成する金属材料としては、鉄鋼(軟鋼板や表面処理鋼板、ステンレス鋼板等を含む)の他、非鉄金属材料(例えば、アルミニウム板、銅合金板等を含む)を用いることが例示できる。
【0012】
続いて、筐体1の底面を形成する下部壁体3の補強構造10について説明する。下部壁体3は、厚さ方向が上下方向と平行に向けられ、所定の設置面上に設けられる。下部壁体3には、上面(厚さ方向の一方の面)に沿って格子状に補強構造10が設けられる。
【0013】
図2は、第1の実施の形態の補強構造の部分拡大斜視図である。
図2に示すように、下部壁体3に格子状に設けられる補強構造10は、複数の第1フレーム11と、第1フレーム11に交差する複数の第2フレーム12と、第1フレーム11及び第2フレーム12の交差位置に設けられる固定部材20とを備えている。
【0014】
第1フレーム11は、第1方向となる前後方向に延出する板状に設けられている。よって、第1フレーム11の厚さ方向は左右方向に向けられる。第2フレーム12は、第2方向となる左右方向に延出する板状に設けられている。よって、第2フレーム12は、第1フレーム11に直交(直角に交差)する方向に延出し、第2フレーム12の厚さ方向は前後方向に向けられる。本実施の形態では、第1フレーム11及び第2フレーム12は同一の厚さ、同一の上下幅に形成される。
【0015】
固定部材20は、上下方向から見て、L字状となる屈曲形状に設けられている。固定部材20は、前後方向に平行に形成された第1片部21と、左右方向に平行に形成された第2片部22とを備えている。固定部材20の屈曲位置となる第1片部21の後端(一端)と、第2片部22の右端とが連なっている。
【0016】
第1片部21及び第2片部22は、L字状となる固定部材20の入隅側を内面211、221、出隅側を外面212、222として形成している。本実施の形態では、固定部材20は、第1フレーム11及び第2フレーム12と同一の上下幅に形成される。第1片部21の外面212は、第1フレーム11の左面(厚さ方向一方の面)に面接触している。第1片部21は、第1フレーム11及び第2フレーム12の交差位置にて、第2フレーム12を跨いで配置される。第2片部22の内面221は、第2フレーム12の後面(厚さ方向一方の面)に面接触している。
【0017】
図3は、
図2の分解斜視図である。
図3に示すように、第1片部21は、ねじ部材231及びナット232からなる第1締結具23により第1フレーム11に固定される。第2片部22は、ねじ部材241及びナット242からなる第2締結具24により第2フレーム12に固定される。
【0018】
第1フレーム11は、下部を開放する第1フレーム溝111を備えている。第1フレーム溝111は、第1フレーム11の上下幅の略半分の溝深さに形成され、上方に底部112が形成される。第1フレーム溝111は、第2フレーム12の厚さと略同一となるよう、該厚さに応じた溝幅に形成される。
【0019】
第2フレーム12は、上部を開放する第2フレーム溝121を備えている。第2フレーム溝121は、第2フレーム12の上下幅の略半分の溝深さに形成され、下方に底部122が形成される。第2フレーム溝121は、第1フレーム11の厚さより大きい溝幅に形成される。更に述べると、第2フレーム溝121の溝幅は、第1フレーム11の厚さ及び固定部材20の第1片部21の厚さの総和と略同一とされ、第1フレーム11と第1片部21とを重ねた厚さに応じた溝幅に形成される(
図4参照)。
【0020】
第1フレーム溝111は、第2フレーム12における第2フレーム溝121の下部を受容し、受容する第2フレーム12を厚さ方向(前後方向)から挟んで位置するようになる。第2フレーム溝121は、第1フレーム11における第1フレーム溝111の上部を受容し、受容する第1フレーム11を厚さ方向(左右方向)から挟んで位置するようになる。第1フレーム11及び第2フレーム12は、交差して組み合わされた状態で、第1フレーム溝111の底部112と、第2フレーム溝121の底部122とが対向するようになる。
【0021】
第1フレーム11は、第1フレーム溝111の前方に穴113が形成され、該穴113に第1締結具23のねじ部材231が挿入される。第2フレーム12は、第2フレーム溝121の左側に穴123が形成され、該穴123に第2締結具24のねじ部材241が挿入される。
【0022】
固定部材20は、屈曲位置に沿って形成される取付用溝26を備えている。取付用溝26は、下部を開放しつつ上方に底部262が形成され、第2フレーム12の上下幅の略半分の溝深さを有している。取付用溝26は、固定部材20の入隅側から見て、第1片部21及び第2片部22の交差位置から第1片部21側(前側)に形成される。また、取付用溝26にて第1片部21に形成される鉛直面と、第2片部22の内面221との前後の距離は、第2フレーム12の厚さと略同一となるよう、該厚さに応じた距離(溝幅)に形成される。よって、取付用溝26は、第2フレーム12における第2フレーム溝121の下部を受容し、受容する第2フレーム12を第2片部22と厚さ方向(前後方向)から挟むようになる。
【0023】
図4は、第1の実施の形態における第1フレーム及び第2フレームの交差位置における平面図である。
図4にも示すように、固定部材20において、第1片部21には、穴113に連通する貫通穴213が形成され、穴113及び貫通穴213に第1締結具23のねじ部材231が挿入される。第2片部22には、第2フレーム12の穴123に連通する貫通穴223が形成され、穴123及び貫通穴223に第2締結具24のねじ部材241が挿入される。
【0024】
次いで、第1の実施の形態の補強構造10の組み立て要領について、
図2から
図4に加え、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態における格子構造を組み立てる中途段階の説明図である。
【0025】
補強構造10の組み立ては、まず、
図3に示すように、第2フレーム12の上方にて、上から見て第2フレーム12に対し第1フレーム11を直交する方向に向けて配置する。このとき、第2フレーム12の第2フレーム溝121の上方に、第1フレーム11の第1フレーム溝111が位置するようにする。そして、第1フレーム溝111及び第2フレーム溝121が互いを内部に受容するよう差し込ませ、
図5に示すように、第1フレーム溝111の底部112と第2フレーム溝121の底部122とが対向するよう組み合わせる。
【0026】
図5に示す状態にて、第1フレーム溝111が第2フレーム12を第1フレーム11の厚さ方向(前後方向)から挟み、第1フレーム11及び第2フレーム12の前後方向の相対変位が規制される。また、第1フレーム溝111より溝幅が大きい第2フレーム溝121内にて、第1フレーム11を右側に寄せた状態とし、第1フレーム11の左側に固定部材20を挿入するスペースSを形成する。
【0027】
かかるスペースSを形成した状態で、
図3に示すように、第2フレーム12の第2フレーム溝121の上方に、固定部材20の取付用溝26が位置するよう配置する。そして、取付用溝26及び第2フレーム溝121が互いを内部に受容するよう差し込ませ、取付用溝26の底部262と第2フレーム溝121の底部122とが対向するよう嵌め込む。これにより、
図2及び
図4に示すように、第2フレーム溝121が第1フレーム11及び固定部材20の第1片部21を第1フレーム11の厚さ方向(左右方向)から挟み、第1フレーム11及び第2フレーム12の左右方向の相対変位が規制される。
【0028】
第2フレーム溝121に固定部材20を嵌め込んだ後、各締結具23、24により固定部材20を各フレーム11、12に固定する。具体的には、第1フレーム11の穴113及び第1片部21の貫通穴213に、第1締結具23のねじ部材231を挿入してから該ねじ部材231にナット232を螺合し、第1締結具23にて第1フレーム11及び第1片部21を締結して固定する。また、第2フレーム12の穴123及び第2片部22の貫通穴223に、第2締結具24のねじ部材241を挿入してから該ねじ部材241にナット242を螺合し、第2締結具24にて第2フレーム12及び第2片部22を締結して固定する。
【0029】
ここにおいて、第1片部21と第1フレーム11とが固定される構造部分を第1固定部、第2片部22と第2フレーム12が固定される構造部分を第2固定部とする。第1固定部は、第1締結具23のねじ部材231が挿通される穴113及び貫通穴213を含み、第2固定部は、第2締結具24のねじ部材241が挿通される穴123及び貫通穴223を含む。第1締結具23のねじ部材231が挿通される穴113及び貫通穴213と、第2締結具24のねじ部材241が挿通される穴123及び貫通穴223とは、取付用溝26に第2フレーム12を差し込む方向(上下方向)において位置が異なる。これにより、各締結具23、24を取り付ける際の干渉を防止することができる。
【0030】
図2及び
図4に示すように組み立てが完了した補強構造10では、固定部材20によって、前後方向両側及び左右方向両側から加わる荷重を受けて剛性の向上を図ることができる。以下、
図6及び
図7を用い、固定部材20が荷重を受ける領域について、従来構造と比較して説明する。
【0031】
【0032】
図6A、
図6B、
図7A及び
図7Bに示す従来構造の固定部材50は、上記第1の実施の形態の固定部材20に対し、第1片部51が第2フレーム12を跨がずに配置され、第2片部52の外面522が第2フレーム12の前面に面接触して固定される。
【0033】
図6Aの従来構造にて、固定部材50における第2片部52の先端側にて第2フレーム12に前方に押し込む荷重(図中白印で図示、以下同様)が加わった場合、第2フレーム12の前面に面接触する第2片部52の外面522にて荷重を受けることとなる。一方、
図6Bに示すように、第2フレーム12に後方に押し込む荷重が加わった場合、従来構造の固定部材50で荷重を受けにくくなり、各フレーム11、12の交差部分に応力集中が発生する。
【0034】
この点、
図6Cの第1の実施の形態にて、
図6Aと同様となる後方への荷重が加わった場合、第2フレーム12の前面に面接触する固定部材20の取付用溝26にて荷重を受ける。一方、
図6Dに示すように、
図6Bと同様となる前方への荷重が加わった場合、第2フレーム12の後面に面接触する第2片部22の内面221にて荷重を受ける。よって、第1の実施の形態における固定部材20は、前方及び後方の両方からの荷重を受ける領域を備えた構成となり、各フレーム11、12の交差部分に応力集中が発生することを抑制して格子状となる各フレーム11、12の剛性の向上を図ることができる。
【0035】
図7Aの従来構造にて、固定部材50における第1片部51の先端側にて第1フレーム11に左方向に押し込む荷重が加わった場合、第1フレーム11の左面に面接触する第1片部51の外面512にて荷重を受けることとなる。一方、
図7Bに示すように、第1フレーム11に右方向に押し込む荷重が加わった場合、従来構造の固定部材50で荷重を受けにくくなり、各フレーム11、12の交差部分に応力集中が発生する。
【0036】
この点、
図7Cの第1の実施の形態にて、
図7Aと同様となる左方向の荷重が加わった場合、第1フレーム11の左面に面接触する第1片部21の外面212にて荷重を受ける。一方、
図7Dに示すように、
図7Bと同様となる右方向の荷重が加わった場合、荷重が加わる位置と第2フレーム12を挟んで反対側にて、固定部材20の屈曲位置近傍での第1片部21の外面212で第1フレーム11の左面から荷重を受ける。よって、第1の実施の形態における固定部材20は、左右の両方からの荷重を受ける領域を備えた構成となり、各フレーム11、12の交差部分に応力集中が発生することを抑制して格子状となる各フレーム11、12の剛性の向上を図ることができる。
【0037】
以上のように、第1の実施の形態によれば、補強する下部壁体3の主面に平行な前後及び左右の直交二方向の荷重を受ける領域を固定部材20にて確保できる。これにより、固定部材20によって前後方向及び左右方向の荷重に対して補強され、各フレーム11、12の交差部分における剛性を向上することができる。
【0038】
また、固定部材20の屈曲位置に隣接する第1片部21に取付用溝26を設けたので、取付用溝26と第2片部22の内面221とによって第2フレーム12を前後から挟んで剛性向上を図ることができる。
【0039】
更に、第1フレーム11及び第2フレーム12を交差した状態に組み立てできるよう形成した第1フレーム溝111を第2フレーム溝121より大きく形成して、第1フレーム溝111に固定部材20が差し込み可能となっている。言い換えると、第1フレーム溝111を利用して固定部材20を簡単に取り付けでき、第1片部21の外面212が第1フレーム11と面接触し、第2片部22の内面221が第2フレーム12と面接触した位置関係を容易に形成することができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0041】
本発明の第2の実施の形態について
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態の補強構造における固定部材周りの平面図である。
図9は、第2の実施の形態の固定部材の斜視図である。
図8及び
図9に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、固定部材20の第1片部21を前方に延長し、第1片部21の前端(他端)を屈曲位置として形成される第3片部30を備えた構成とされる。よって、第2の実施の形態の固定部材20は、上下方向から見て、クランク状となる屈曲形状に設けられる。
【0042】
第2の実施の形態の補強構造10にて、第2フレーム12から前方へ所定の離間距離を隔てて第3フレーム13が設けられ、第3フレーム13は第2フレーム12と同じく左右方向に延出して設けられる。第2の実施の形態の固定部材20における第1片部21は、第2フレーム12及び第3フレーム13の離間距離に応じた前後長さに形成されている。第1片部21には貫通穴213が前後2箇所に形成され、かかる2箇所の貫通穴213に応じて第1フレーム11にも穴113が前後2箇所に形成される。そして、穴113及び貫通穴213を挿通して第1片部21を第1フレーム11に固定する第1締結具23が前後2箇所に設けられる。
【0043】
第2の実施の形態の固定部材20における第3片部30は、左右方向に平行に形成され、第1片部21の前端と、第3片部30の左端とが連なっている。第3片部30は、第1片部21との入隅側を内面301、出隅側を外面302として形成している。第3片部30の外面302は、第3フレーム13の後面(厚さ方向一方の面)に面接触している。第3片部30は、第1フレーム11及び第3フレーム13の交差位置にて、第1フレーム11を跨いで配置される。第3片部30は、ねじ部材311及びナット312からなる第3締結具31により第3フレーム13に固定される。
【0044】
図9にも示すように、固定部材20における第1片部21及び第3片部30の屈曲位置に沿って取付用溝32が形成される。取付用溝26は、第1片部21及び第3片部30の入隅側から見て、それらの交差位置から第3片部30側(左側)に形成される。取付用溝32は、下部を開放しつつ上方に底部322が形成される。取付用溝32の溝深さは、第1フレーム11の上下幅の略半分とされる。取付用溝32にて第3片部30に形成される鉛直面と、第1片部21の外面212との左右の距離は、第1フレーム11の厚さと略同一となるよう、該厚さに応じた距離(溝幅)に形成される。よって、取付用溝32は、第1フレーム11における後述する受容溝114の下部を受容し、受容する第1フレーム11を第1片部21と厚さ方向(左右方向)から挟むようになる。
【0045】
なお、第2の実施の形態にて、第3フレーム13は、下部を開放する第3フレーム溝131を備えている。第3フレーム溝131は、第1フレーム11の上下幅の略半分の溝深さに形成され、上方に底部(不図示)が形成される。第3フレーム溝131は、第1フレーム11の厚さと略同一となるよう、該厚さに応じた溝幅に形成される。
【0046】
また、第2の実施の形態にて、第1フレーム11における第3フレーム13との交差位置には、第3フレーム13及び固定部材20の第3片部30を受容する受容溝114が形成される。受容溝114は、第3フレーム13の厚さより大きい溝幅に形成される。更に述べると、受容溝114の溝幅は、第3フレーム13の厚さ及び固定部材20の第3片部30の厚さの総和と略同一とされ、第3フレーム13と第3片部30とを重ねた厚さに応じた溝幅に形成される(
図8参照)。
【0047】
第2の実施の形態によれば、3本の各フレーム11~13を1体の固定部材20によって補強して剛性を向上することができる。
【0048】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0049】
上記第1の実施の形態では、第1フレーム11及び第2フレーム12をそれぞれ複数設けた場合を説明したが、少なくとも一方を1本だけに変更してもよい。また、上記第2の実施の形態では、各フレーム11~13を1本ずつ図示し、クランク状の固定部材20を設けた場合を説明したが、これに限られるものでない。単一の補強構造10にて、各フレーム11~13の本数は任意であり、第1の実施の形態のL字状の固定部材20や、第2の実施の形態のクランク状の固定部材20の設置数も適宜変更可能である。
【0050】
また、補強構造10は、下部壁体3の裏面(上面)に設けた場合を説明したが、下部壁体3の裏面及び表面(下面)の少なくとも一方に設けた構成としてもよい。更に、下部壁体3以外の壁体となる上部壁体2や側方壁体5に補強構造10を設けてもよい。
【0051】
また、第1フレーム11の延出方向となる第1方向及び第2フレーム12の延出方向となる第2方向は、上述の前後及び左右方向と異なる方向としてもよく、第1方向及び第2方向の交差角度を直角以外の角度としてもよい。
【0052】
また、第1締結具23及び第2締結具24による固定は、上記各実施の形態と同様に固定できる限りにおいて、リベットや溶接にする等、種々の変更が可能である。
【0053】
更に、各フレーム11~13は、フラットな板状に限られるものでなく、延出方向に直交する方向に厚さを有する構造であれば、他の形状としてもよい。例としては、
図10及び
図11に示す変形例の構成を挙げることができる。
図10は、変形例における補強構造の部分斜視図である。
図11は、
図10の平面図である。
【0054】
図10に示すように、第1フレーム11は、第2フレーム12の上端より若干高い位置にて水平となる水平壁115と、水平壁115の左右両端から垂下する垂下壁116とを備え、下向きコ字状に形成されている。水平壁115及び垂下壁116は前後方向に延出している。第1フレーム11は、水平壁115及び垂下壁116によって囲まれる空間を形成でき、該空間にケーブル等を通して利用することができる。なお、固定部材20は、第1の実施の形態と同様に構成される。
【0055】
第2フレーム12における第2フレーム溝121は、固定部材20の第1片部21の厚さと略同一となるよう、該厚さに応じた溝幅に形成される。第2フレーム12の延出方向における第2フレーム溝121の形成位置は、第1フレーム11の左右位置に応じて形成される。
【0056】
変形例の補強構造10の組み立てでは、
図11に示すように、2箇所の第2フレーム溝121それぞれにて、固定部材20の第1片部21の外面212が相互に向き合うよう、第2フレーム12に固定部材20を取り付ける。かかる取り付けは、第2フレーム溝121及び固定部材20の取付用溝26が互いを内部に受容するよう差し込ませた後、第2締結具24にて第2フレーム12及び第2片部22を締結する。
【0057】
この状態で、第2フレーム12の後方に第1フレーム11を配置し、2つの固定部材20における第1片部21の外面212の間に第1フレーム11を後方に向かって差し込む。このとき、第1片部21の外面212が第1フレーム11の垂下壁116に摺動するようになり、第1片部21によって第1フレーム11の差し込み動作がガイドされる。
【0058】
このようにガイドして第1フレーム11を第2フレーム12に接近させた後、第1締結具23にて第1フレーム11の垂下壁116と固定部材20の第1片部21を締結することで、
図10に示すように補強構造10の組み立てが完了する。
【符号の説明】
【0059】
1 :筐体
2 :上部壁体(壁体)
3 :下部壁体(壁体)
5 :側方壁体(壁体)
10 :補強構造
11 :第1フレーム
111 :第1フレーム溝
112 :底部
12 :第2フレーム
121 :第2フレーム溝
122 :底部
20 :固定部材
21 :第1片部
211 :内面
212 :外面
22 :第2片部
221 :内面
222 :外面
23 :第1締結具
24 :第2締結具
26 :取付用溝