(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088136
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車載器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240625BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20240625BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20240625BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20240625BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240625BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H05K7/20 B
H05K7/20 F
H05K7/14 A
H05K5/00 A
H02G3/14
H02G3/16
B60R16/02 610C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203163
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 徹示
(72)【発明者】
【氏名】澤村 慧
(72)【発明者】
【氏名】荒▲瀬▼ 和基
【テーマコード(参考)】
4E360
5E322
5E348
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360BB22
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360EA24
4E360EA30
4E360ED02
4E360GA24
4E360GB92
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322BA01
5E322EA10
5E322FA04
5E348AA32
5E348AA40
5G361AA06
5G361AB12
5G361AC02
5G361AC03
5G361AD01
5G361AD03
5G361BA01
5G361BB01
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】より放熱性を向上させることが可能な車載器を提供する。
【解決手段】車載器1は、上ケース10と上ケース10の下側に組み付けられる下ケース20とを有し、上ケース10及び下ケース20の前方に表ケース30を有する表ケースユニットYが組み付けられる。上ケース10と下ケース20と表ケース30とは筐体Hを構成しており、筐体Hの内部に電子部品を搭載した制御基板が収納されている。上ケース10は、少なくとも上板と側板とを有し、上板と側板との境界部に放熱用のスリットを有し、下ケース20は、空気導入用の開口部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケースと前記上ケースの下側に組み付けられる下ケースとを有した筐体の内部に電子部品を搭載した制御基板を収納した車載器であって、
前記上ケースは、少なくとも上板と側板とを有し、前記上板と前記側板との境界部に放熱用のスリットを有し、
前記下ケースは、空気導入用の開口部を有する
ことを特徴とする車載器。
【請求項2】
前記側板は、第1側板と前記第1側板と対向する第2側板とを有し、
前記スリットは、前記第1側板と前記上板との境界部、及び、前記第2側板と前記上板との境界部のそれぞれに一対に設けられ、
前記上ケースは、一対の前記スリットの間において、上方に複数枚の板状に突出する放熱フィン形状部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記筐体は、前記内部空間に複数枚の前記制御基板を上下方向に沿って多段に収納し、
前記複数枚の制御基板は、最上段のものから順に前記上ケースの上板側に対してネジ締めにより組付可能とされ、
前記下ケースは、前記複数枚の制御基板が組み付けられた前記上ケースに対して、組み付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載器。
【請求項4】
前記複数枚の制御基板のうち最上段の制御基板に搭載される電子部品と前記上ケースの前記上板とは、伝熱性部材を介して接触状態とされている
ことを特徴とする請求項3に記載の車載器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、筐体内に制御基板を備えた運行記録計、ドライブレコーダ、及びタクシーメータ等の車載器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のような車載器は、制御基板上の電子部品が発熱することから放熱性が高いことが好ましい。しかし、特許文献1に記載の車載器は、放熱性の面で向上の余地があるものであった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より放熱性を向上させることが可能な車載器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車載器は、上ケースと前記上ケースの下側に組み付けられる下ケースとを有した筐体の内部に電子部品を搭載した制御基板を収納した車載器であって、前記上ケースは、少なくとも上板と側板とを有し、前記上板と前記側板との境界部に放熱用のスリットを有し、前記下ケースは、空気導入用の開口部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より放熱性を向上させることが可能な車載器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る車載器を上方向から示す前方斜視図である。
【
図2】
図1に示した車載器の一部構成を取り除いた状態を示す前方斜視図である。
【
図3】
図1に示した上ケースを上方向から示す前方斜視図である。
【
図4】
図1に示した上ケースを下方向から示す後方斜視図である。
【
図5】
図3に示した上ケースのA-A断面図である。
【
図6】
図1に示した下ケースを下方向から示す前方斜視図である。
【
図7】
図1に示した下ケースを下方向から示す後方斜視図である。
【
図8】
図1に示した表ケースユニットを上方向から示す前方斜視図である。
【
図9】
図1に示した表ケースユニットを下方向から示す後方斜視図である。
【
図10】
図8及び
図9に示した表ケースを上方向から示す前方斜視図である。
【
図11】
図8及び
図9に示した表ケースを下方向から示す後方斜視図である。
【
図12】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第1工程図である。
【
図13】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第2工程図である。
【
図14】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第3工程図である。
【
図15】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第4工程図である。
【
図16】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第5工程図である。
【
図17】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第6工程図である。
【
図18】本実施形態に係る車載器の組付方法を示す第7工程図である。
【
図19】本実施形態に係る車載器の一部拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車載器を上方向から示す前方斜視図であり、
図2は、
図1に示した車載器の一部構成を取り除いた状態を示す前方斜視図である。
【0011】
図1に示す車載器1は、例えば車両のセンターコンソールに形成された凹部に嵌め込まれて車両搭載されるものであって、本実施形態においてはデジタルタコグラフの機能部とドライブレコーダの機能部とを有した機器として構成されたものである。前者機能部は、車両走行時等における運行記録を行う機能部であり、車両に設置された各種センサからの信号に基づいて車速、加減速度、及びエンジン回転数等の情報を記録するものである。後者機能部は、映像記録を行う機能部であって、少なくとも急加減速や事故の衝撃に相当する加速度があった前後の映像解析に利用されるものである。なお、後者機能部は、常時映像記録するものが好ましいが、急加減速前後等のみの映像を記録するものであってもよい。また、車載器1は、デジタルタコグラフの機能部とドライブレコーダの機能部とを備えるものに限らず、いずれか一方のみの機能部を備えるものであってもよい。また、車載器1は、タクシーメータの機能部や、有料道路等の自動料金収受機能部等、他の機能部のみを備えるもの等であってもよい。
【0012】
このような車載器1は、内部に上記機能部の制御基板SB(
図2参照)を収納した筐体Hを備えている。制御基板SBは、筐体Hの内部に上下方向に沿って多段に設けられている。
【0013】
この筐体Hは、上ケース10、下ケース20、及び表ケース30を有している。上ケース10は、筐体Hの上側を構成する部品であって、例えばアルミニウム等の放熱性に優れる部材によって構成されている。下ケース20は、上ケース10の下側に組み付けられる部品であって、筐体Hの下側を構成する。表ケース30は、筐体Hの表側(前側)に設けられるものである。表ケース30には、後述する表示部40、操作部50、それらの表示基板60等が組み付けられて表ケースユニットYとされている。
【0014】
図3は、
図1に示した上ケース10を上方向から示す前方斜視図であり、
図4は、
図1に示した上ケース10を下方向から示す後方斜視図である。
図3及び
図4に示すように、上ケース10は、上板11と、上板11に略直交する側板12,13と、上板11及び側板12,13の双方に対して略直交する後板14とを備えている。上板11は、第1段部11aと、第1段部11aよりも窪んだ第2段部11bとを備えている。第2段部11bは、上板11の前後方向(表ケース30と後板14とを結ぶ方向)の中間部となる位置に形成されている。さらに、上板11は、前端に表ケース30と連結するための複数の係止片11cを備えている。係止片11cは、後述する表ケース30の係止孔32bに嵌り込む構造となっている。
【0015】
側板12,13は、表ケース30側から向かって左側に位置する第1側板12と、第1側板12と対向して右側に位置する第2側板13とを備えている。上板11が前後方向の中間位置で第2段部11bを有することから、第1及び第2側板12,13は、この形状に併せて平面視して略U形状とされている。また、側板12,13は、下端に略半円形状の切欠き部12a,13aを有している。切欠き部12a,13aには、後述する下ケース20のネジ孔22c,23cが合致するようになっている。上ケース10は、切欠き部12a,13aと合致するネジ孔22c,23cにネジ締めされることで、下ケース20に組み付けられるようになっている。
【0016】
後板14は、コネクタ等が露出するための矩形等の切欠き部14a~14eが形成されている。
【0017】
ここで、本実施形態において上ケース10は、放熱用のスリットS1,S2を有している。第1スリットS1は、上板11のうち第2段部11bと第1側板12との境界部B1に形成され、第2スリットS2は、上板11のうち第2段部11bと第2側板13との境界部B2に形成されている。このスリットS1,S2は、放熱用に形成されており、他の部材が挿入等されることなく、全域が開放された構成となっている。すなわち、スリットS1,S2は、ネジ締め用の孔やコネクタ設置のための孔等のように、ネジやコネクタ等の他部材が挿入されない構成となっている。なお、スリットS1,S2については、放熱に影響がない範囲で一部に他部材が挿入等されることを否定するものではない。
【0018】
さらに、本実施形態において上ケース10は、放熱フィン形状部Fを備えている。放熱フィン形状部Fは、上板11の第2段部11bから上方に複数枚の板状に突出する部位である。
図5は、
図3に示した上ケース10のA-A断面図である。
図3及び
図5に示すように、放熱フィン形状部Fは、複数枚のフィンが互いに平行となるように幅方向に延びて設置されている。また、
図5に示すように、放熱フィン形状部Fは、各フィンの左右角部が削り取られるようにして、山部Mと谷部Vとを有する構造とされている。以上のような放熱フィン形状部Fは、フィンが延びる方向となる幅方向に空気が流れ易くなることはもとより、谷部Vによって前後方向にも空気が流れ易くなっており、放熱性能の向上が図られたものとなっている。
【0019】
また、
図4に示すように、上ケース10の上板11は裏面側に矩形状の複数の突出部11dを備えている。複数の突出部11dは、多段の制御基板SBのうち最上段の制御基板SB1に搭載される電子部品(不図示)と対向する位置に形成されている。これら突出部11dには、空気及び制御基板SBよりも放熱性が高い伝熱シート(伝熱性部材)HSが設けられるようになっている。最上段の制御基板SB1が筐体Hに取り付けられた状態において、突出部11dは、伝熱シートHSを介して最上段の制御基板SB1に搭載される電子部品に接触する構成となっている。
【0020】
また、上ケース10の上板11は裏面側にスタッドSD1~SD4(
図14~
図18参照)が挿入される内面がネジ切りされた挿入筒11eが立設されている。多段の制御基板SBは、
図12~
図18において後述するように、上ケース10の挿入筒11eに対してスタッドSD1~SD4を介してネジ締めされることで、組み付けられる。このネジ締めによって、最上段の制御基板SB1に設けられる電子部品は、伝熱シートHSを介して突出部11dに確実性高く接触状態となる。
【0021】
図6は、
図1に示した下ケース20を下方向から示す前方斜視図であり、
図7は、
図1に示した下ケース20を下方向から示す後方斜視図である。下ケース20は、
図6及び
図7に示すように、下板21と、下板21に略直交する側板22,23と、下板21及び側板22,23の双方に対して略直交する後板24とを備えている。
【0022】
下板21は、上板11と異なり段差を有することなく、略1枚板によって構成されている。下板21には、下板21を上板11に組み付けるためのネジ挿入孔21aが形成されている。また、下板21の前端には、表ケース30と組み付けるための複数の接続片21bが形成されている。接続片21bには、ネジ孔21cが形成されており、ネジ孔21cは、表ケース30の後述するネジ孔32eと合致するようにされており、下ケース20は、ネジ孔21cでのネジ締めによって表ケース30に組み付けられる。
【0023】
側板22,23は、表ケース30側から向かって左側に位置する第1側板22と、第1側板22と対向して右側に位置する第2側板23とを備えている。第1及び第2側板22,23は、上ケース10の第1及び第2側板12,13と略面一となる下方部22a,23aと、上ケース10の第1及び第2側板12,13の内側に位置する上方部22b,23bとを備えている。
【0024】
上方部22b,23bは、下方部22a,23aよりも内側に段差を有して形成されることで、上ケース10との組付時に上ケース10の第1及び第2側板12,13の内面に接触等する。上方部22b,23bには、上ケース10の切欠き部12a,13aと合致する複数のネジ孔22c,23cが形成されており、ネジ締めによって上ケース10に組み付けられる構成となっている。
【0025】
後板24は、コネクタ等が露出するための略矩形の切欠き部24a~24dが形成されている。さらに、後板24は、左右両端と中央にネジ孔24eを有している。このネジ孔24eは、例えば車両のセンターコンソール側等、車両側に取り付ける際の取付部として機能する部位である。
【0026】
ここで、下ケース20は、空気導入用の複数の開口部Oを有している。複数の開口部Oは、下板21と側板22,23との接続部にまたがって、それぞれがL字状の開口となるように形成されている。加えて、複数の開口部Oは、下板21と後板24との接続部にも同様に形成されている。
【0027】
このように、本実施形態に係る車載器1は、下ケース20に空気導入用の開口部Oが形成され、上ケース10に放熱用のスリットS1,S2が形成されている。このため、本実施形態に係る車載器1は、制御基板SBに搭載された電子部品からの熱が開口部OとスリットS1,S2との煙突効果によって、効率的に車載器1外に排出される。従って、より放熱性を向上させた構成とすることができる。
【0028】
なお、開口部Oについても、スリットS1,S2と同様に、他の部材が挿入等されることなく、全域が開放された構成となっているが、空気導入に影響がない範囲で一部に他部材が挿入等されることを否定するものではない。
【0029】
さらに、下ケース20は、側板22,23の下方部22a,23aと上方部22b,23bとにまたがって複数の第2開口部O2を有している。この第2開口部O2についても、開口部OやスリットS1,S2と同様に、空気導入や放熱に寄与する。
【0030】
図8は、
図1に示した表ケースユニットYを上方向から示す前方斜視図であり、
図9は、
図1に示した表ケースユニットYを下方向から示す後方斜視図である。表ケースユニットYは、表ケース30と、表示部40と、操作部50と、それらの表示基板60とを備えている。
【0031】
図10は、
図8及び
図9に示した表ケース30を上方向から示す前方斜視図であり、
図11は、
図8及び
図9に示した表ケース30を下方向から示す後方斜視図である。
図10及び
図11に示すように、表ケース30は、前面部31と、前面部31の周囲から後方に延びる筒壁32とを備えている。筒壁32のうち上壁32aの端部には、係止孔32bを有した複数の舌片32cを備えている。この係止孔32bには、上ケース10の係止片11c(
図3及び
図4参照)が嵌り込むようになっている。このため、舌片32cは、上ケース10との接続部を構成することとなる。
【0032】
さらに、表ケース30は、筒壁32のうち下壁32dに複数のネジ孔32eが形成されている。複数のネジ孔32eは、表ケース30と下ケース20とを組み付けた場合に、下ケース20が有する複数の接続片21bのネジ孔21c(
図6及び
図7参照)と合致するようになっている。表ケース30と下ケース20とは、ネジ孔21c,32eが合致した状態でネジ締めされる。
【0033】
また、表ケース30の前面部31の一方(左側)には、上下方向に並ぶ複数のスロットSLが形成されている。複数のスロットSLは、運行記録や映像等を記録するための記録媒体が挿入される部位である。
図2に示した多段の制御基板SBには、複数のスロットSLに対応して記録媒体への書き込み等を行うインターフェース部が設置されている。
【0034】
また、
図8~
図11に示すように、表ケース30には他方(右側)の上部に表示部40用の開口31aが形成されている。この開口31aには、表示基板60に搭載された表示部40が対応するようになっており、表示基板60による制御によって表示部40の表示内容が制御され、運転者等に提供されるようになっている。
【0035】
さらに、表ケース30には他方(右側)の下部に操作部50用の複数の開口31bが形成されている。この開口31bからは、操作部50が露出するようにされており、露出部分を後方に押し込むことで、表示基板60に搭載されるタクトスイッチ(不図示)がオンされるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態に係る車載器1の組付方法を説明する。本実施形態に係る車載器1は、上ケース10を主体とし、この上ケース10に対して多段の制御基板SBが順次積層されながら上ケース10に固定されていくこととなる。上ケース10に多段の表示基板60が組み付けられた後に、下ケース20が組み付けられ、最後に表ケースユニットYが組み付けられることとなる。
【0037】
図12~
図18は、本実施形態に係る車載器1の組付方法を示す工程図である。車載器1の組付時には、
図12に示すように、まず上ケース10が裏向きとされる。この裏向き状態において、上ケース10の突出部11dに対して伝熱シートHSが貼り付けられる。近接する突出部11dについては、長尺な伝熱シートHSが一括して貼り付けられる。ここで、上ケース10の挿入筒11eの先端は小径部11fを形成している。
【0038】
次に、
図13に示すように、上ケース10に最上段の制御基板SB1が載置される。ここで、最上段の制御基板SB1には、挿入筒11eの小径部11fのみが通過可能な開口SB11が形成されている。最上段の制御基板SB1は、開口SB11に小径部11fが嵌るように載置することで、適切な位置に載置される。
【0039】
次いで、
図14に示すように、複数の第1スタッドSD1及び第2スタッドSD2によって最上段の制御基板SB1がネジ締めされる。第1スタッドSD1及び第2スタッドSD2は、上ケース10側が雄ネジを形成すると共に下ケース20側が雌ネジを形成している。第1スタッドSD1及び第2スタッドSD2は、雄ネジがネジ切りされた挿入筒11eに対してネジ締めされることとなる。なお、第1スタッドSD1は、第2スタッドSD2よりも短く構成されている。また、
図13に示すように、制御基板SB1には、開口SB11に隣接して「M」「L」という表示がされている。「M」はミドルであって第2スタッドSD2よりも短い第1スタッドSD1でネジ締めすることを示している。また、「L」はロングであって第1スタッドSD1よりも長い第2スタッドSD2でネジ締めすることを示している。
【0040】
その後、
図15に示すように、第1スタッドSD1上に二段目の制御基板SB2が載置される。第1スタッドSD1についても、下ケース20側の先端に小径部SD11(
図14参照)が形成されており、二段目の制御基板SB2には、この小径部SD11に合致する開口SB21が形成されている。よって、二段目の制御基板SB2は、開口SB21に小径部SD11が嵌るように載置される。
【0041】
次いで、
図16に示すように、複数の第3スタッドSD3によって二段目の制御基板SB2がネジ締めされる。第3スタッドSD3は、他のスタッドSD1,SD2と同様に、上ケース10側が雄ネジを形成すると共に下ケース20側が雌ネジを形成している。第3スタッドSD3は、雄ネジ側が第1スタッドSD1に対してネジ締めされることとなる。なお、第1スタッドSD1のうち一部に対しては、ネジ部材SC1によりネジ締めされる。
【0042】
その後、
図17に示すように、第2スタッドSD2及び第3スタッドSD3(
図16等参照)上に三段目の制御基板SB3が載置される。第2スタッドSD2及び第3スタッドSD3についても、下ケース20側の先端に小径部SD21,SD31(
図16参照)が形成されており、三段目の制御基板SB3には、この小径部SD21,SD31に合致する開口SB31が形成されている。よって、三段目の制御基板SB3は、開口SB31に小径部SD21,SD31が嵌るように載置される。
【0043】
次いで、
図18に示すように、複数の第4スタッドSD4によって三段目の制御基板SB3がネジ締めされる。第4スタッドSD4は、他のスタッドSD1~SD3と同様に、上ケース10側が雄ネジを形成すると共に下ケース20側が雌ネジを形成している。第4スタッドSD4は、雄ネジ側が第2スタッドSD2及び第3スタッドSD3に対してネジ締めされることとなる。なお、第4スタッドSD4は、他のスタッドSD1~SD3よりも短い。三段目の制御基板SB3は、開口SB31に隣接して「S」という表示がされている。「S」はショートであって最も短い第4スタッドSD4でネジ締めすることを示している。
【0044】
以後、下ケース20が組み付けられてネジ締めされると共に、表ケースユニットYについても同様に、ネジ締め等によって組み付けられることとなる。
【0045】
次に、本実施形態に係る車載器1の作用について説明する。
図19は、本実施形態に係る車載器1の一部拡大端面図である。まず制御基板SBには電子部品が搭載されていることから、電子部品からの熱が筐体H内に籠り易くなる。しかし、本実施形態に係る車載器1は、
図19に示すように、下ケース20に空気導入用の開口部Oが形成されると共に、上ケース10に放熱用のスリットS1(
図19においてスリットS1のみを示すがスリットS2も同様である)が形成されている。このため、煙突効果により空気は開口部Oから筐体H内に導入され、スリットS1,S2から排出されることとなる。すなわち、車載器1は、開口部Oから空気を取り込んでスリットS1,S2から放熱することとなる。
【0046】
加えて、上ケース10は
図3等に示すようにスリットS1,S2間に放熱フィン形状部Fを備えている。このた、スリットS1,S2が形成されない幅方向の中央側については、放熱フィン形状部Fを通じて放熱されることとなる。特に、最上段の制御基板SB1の電子部品は、伝熱シートHSを介して上ケース10に接触状態となっている。このため、最上段の制御基板SB1上の電子部品から発生する熱は、直接的に上ケース10の放熱フィン形状部Fに伝達されて放出されることなる。
【0047】
ここで、上ケース10にスリットS1,S2が設けられる場合、車内に持ち込まれた飲料等をこぼした場合等において、飲料等が筐体H内に浸入する懸念がある(
図19参照)。しかし、スリットS1,S2が上板11と側板12,13との境界部B1,B2(
図19において境界部B1のみを示すが境界部B2も同様である)に設けられることから、仮に制御基板SBが境界部B1,B2の直下まで設けられていない場合には、たとえ飲料等が筐体H内に浸入したとしても制御基板SBの電子部品に掛かり難くなり、また制御基板SBが境界部B1,B2の直下まで設けられていたとしても、飲料等は側板12,13,22,23(
図19において側板12,22のみを図示)を伝って開口部Oまで到達し易く、スリットS1,S2を設けたことで生じる飲料等の浸入の弊害を軽減させることとなる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る車載器1は、
図12~
図18を参照して説明したように、多段の制御基板SBが上ケース10に順次組み付けられる構成となっている。詳細には、上ケース10に対して最上段の制御基板SB1が第1スタッドSD1及び第2スタッドSD2によってネジ締めされ、次いで、二段目及び三段目の制御基板SB2,SB3が他のスタッドSD3,SD4によって順番に組み付けられる。そして、多段の制御基板SBが組み付けられた上ケース10に対して下ケース20が組み付けられる。このように本実施形態に係る車載器1は、ネジ締め方向が上ケース10側となっており、最上段の制御基板SB1上の電子部品を伝熱シートHSを介して上ケース10側に接触させ易くすることとなる。加えて、多段の制御基板SBについては、ネジ締め方法が統一されていることから、それぞれの制御基板SBの組付方向が異なることなく、組付時における作業性の向上も図られている。
【0049】
このようにして、本実施形態に係る車載器1によれば、下ケース20に空気導入用の開口部Oを有し、上ケース10の上板11と側板12,13との境界部B1,B2に熱放出用のスリットS1,S2を有するため、制御基板SB上の電子部品からの熱は、開口部OとスリットS1,S2との煙突効果によって、効率的に車載器1外に排出される。従って、より放熱性を向上させることができる。
【0050】
加えて、スリットS1,S2は上板11と側板12,13との境界部B1,B2に形成されているため、仮にスリットS1,S2を通じて飲料等が入ってきたとしても、飲料等は制御基板SBの端部にしか掛らず制御基板SB上の電子部品に掛り難くすることができる。
【0051】
また、一対のスリットS1,S2の間において放熱フィン形状部Fを有する。このため、中央側の電子部品からの熱を放熱フィン形状部Fから放出させることができる。
【0052】
また、複数枚の制御基板SBは、最上段のものから順に上ケース10の上板11に対してネジ締めにより組付可能とされ、下ケース20は、複数枚の制御基板SBが組み付けられた上ケース10に対して、組み付けられている。このため、多段に収納される複数枚の制御基板SBは、組付対象が上ケース10の上板11側に統一されており、一部の制御基板SBが下ケース20に組み付けられる等の事態が生じない。しかも、複数枚の制御基板SBは上ケース10に対して最上段のものから順に上ケース10の上板11側に対してネジ締めにより組み付けられるため、上ケース10に対する組付順もバラバラとなることがない。従って、組付時においてより作業性の向上を図った車載器1を提供することができる。
【0053】
また、複数枚の制御基板SBのうち最上段の制御基板SB1に搭載される電子部品と上ケース10とは伝熱シートHSを介して接触状態とされているため、最上段の電子部品からの熱を上ケース10を介してより円滑に放出することができる。特に、最上段の制御基板SB1は上ケース10の上板11側に組み付けられているため、最上段の制御基板SB1が下ケース20に組み付けられている場合等を比較すると電子部品と上ケース10との接触状態を強固に維持し易くすることができる。
【0054】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。さらに、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態において放熱フィン形状部Fは、第1段部11aよりも窪んだ第2段部11bに形成されているが、これに限らず、第1段部11aに形成されていてもよいし、そもそも上板11が第1段部11a及び第2段部11bを有することなく、1枚板によって構成されていてもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態においては放熱フィン形状部Fはフィンが幅方向に延びて形成されているが、前後方向に延びていてもよいし、山部Mと谷部Vとを有する形状でなくともよい。
【符号の説明】
【0057】
1 :車載器
10 :上ケース
11 :上板
12,13:側板
12 :第1側板
13 :第2側板
20 :下ケース
21 :下板
30 :表ケース
31 :前面部
B1 :境界部
B2 :境界部
F :放熱フィン形状部
H :筐体
HS :伝熱シート(伝熱性部材)
O :開口部
S1,S2:スリット
SB :制御基板
SB1 :最上段の制御基板