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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088138
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】掛時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G04B37/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203165
(22)【出願日】2022-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】517267846
【氏名又は名称】株式会社プリズム
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】御輿 伸司
(57)【要約】
【課題】
屋内に配置された家具類又は建物を構成する構造物に存在する出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計の提供である。
【解決手段】
前面に表示部が設けられた時計枠体Aは、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に、屋内の家具類の出隅部D1 ~D3 又は建物を構成する構造物の出隅部D11に掛け止められる掛止め凹部6が設けられ、当該掛止め凹部6を利用して、当該時計枠体Aが前記出隅部D1 ~D3 ,D11に掛け止められた状態を、当該時計枠体Aの前記掛止め凹部6に露出して組み込まれた永久磁石Mと前記出隅部D1 ~D3 ,D11との間の磁気吸引力により維持する構成とする。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計であって、
前面に表示部が設けられた時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に前記出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられ、
当該掛止め凹部を利用して、当該時計枠体が前記出隅部に掛け止められた状態を、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により維持する構成であることを特徴とする掛時計。
【請求項2】
前記時計枠体の裏面側に設けられた磁石を、前記出隅部の磁性部又は当該出隅部に貼着された磁気テープに磁気吸着させることを特徴とする請求項1に記載の掛時計。
【請求項3】
前記時計枠体は、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掛時計。
【請求項4】
前記時計枠体の前面には、当該時計枠体の正面形状と同一形状の透明樹脂板が所定間隔をおいて当該時計枠体の前面と平行に取付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の掛時計。
【請求項5】
前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、
前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の掛時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の家具類又は建物を構成する構造物に存在する出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掛時計の掛止め構造の一つとして、特許文献1に開示のものが知られている。この掛時計の掛止め構造は、壁面等に打ち込まれる掛け具に係止される掛止め穴が枠体の裏面に設けられた掛時計において、前記掛止め穴の下部に連続し、前記掛け具が進入可能に形成された案内凹部の内壁面に磁石が取付けられ、壁面等に固定された掛け具に対して掛時計の枠体の前記案内凹部を相対的に進入させて、前記掛け具と磁石との吸引力を感じ取った時点で、前記枠体をそのまま開放することで、前記掛止め穴に対する掛け具の掛止め操作を容易にしている。しかし、特許文献1に開示の技術によると、磁気吸引力の利用により、壁面等に対する掛時計の掛止め操作は、容易になるが、壁面等に打ち込まれた掛け具を、掛時計の枠体裏面に形成された掛止め穴に引っ掛けて、壁面等に掛時計を吊り下げる古来の掛止め固定構造が前提となっている。
【0003】
別の特許文献2に開示の掛時計に関しても、壁面等に固定された掛け金具30のフック部30aを、掛時計の筐体21に設けられた穴部に挿入して引っ掛けて固定する構造は、前記特許文献1と同様である。
【0004】
このように、従来の掛時計の掛止め固定構造は、壁面等に固定された掛止め具を、掛時計の枠体(筐体)に設けられた穴部に挿入して引っ掛けるものであり、これとは異なる発想の掛時計の掛止め固定構造は、存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3-74389号公報
【特許文献2】特開2013-136906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屋内に配置された家具類又は建物を構成する構造物に存在する出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、
屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計であって、
前面に表示部が設けられた時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に前記出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられ、
当該掛止め凹部を利用して、当該時計枠体が前記出隅部に掛け止められた状態を、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により維持する構成であることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、時計枠体は、側面視で逆L字状に形成されることで、背面側に、屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に掛け止められる掛止め凹部が形成されているため、時計枠体の前記掛止め凹部を前記出隅部に配置すると、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により、当該配置状態で維持されて、壁面等に固定する掛止め具等を一切使用することなく、前記出隅部に掛時計を掛止め固定することが可能となる。従って、水平方向に連続する出隅部に対して上方から時計枠体を掛止めることが正規の配置形態であるが、垂直方向に連続する出隅部に対して側方から時計枠体を掛止めて、前記磁気吸引力により時計枠体が下方に移動するのを阻止した状態で配置することも可能である。このように、請求項1の発明によれば、従来の掛時計の掛止め構造では、掛止め具等を一切使用することなく、従来において想定されていなかった家具類又は建物構造物の出隅部に掛時計を掛止め固定することが可能となって、掛時計を見る者に対して時計配置の「意外感」又は「斬新感」を与えられる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記時計枠体の裏面側に設けられた磁石を、前記出隅部の磁性部又は当該出隅部に貼着された磁気テープに磁気吸着させることを特徴としている。
【0010】
家具類又は建物構造物の出隅部が磁性を有していない場合には、当該部分に磁気テープを貼着することで、当該磁気テープと、時計枠体に組み込まれた永久磁石との間で磁気吸引力を生じさせて、前記出隅部に対する時計枠体の掛止め状態を維持できる。なお、出隅部が磁性を有している場合には、時計枠体の掛止め凹部を家具類の出隅部に配置するのみで、永久磁石との間の磁気吸引力により固定される。
【0011】
請求項3の発明は,請求項1又は2の発明において、前記時計枠体は、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明によれば、時計枠体が単なる木製ではなく、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されているため、掛時計としての意匠性が高められる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記時計枠体の前面には、当該時計枠体の正面形状と同一形状の透明樹脂板が所定間隔をおいて当該時計枠体の前面と平行に取付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明によれば、時計枠体の前面に所定間隔をおいて配置された透明樹脂板は、時計枠体の表面の時字を含む表示部、時針、分針、秒針等を単に保護するのみならず、時計枠体と透明樹脂板との間には、全周に亘って開口が形成されているため、当該透明樹脂板のみが空間に配置されているように視認されて、掛時計としての意匠性が高められる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、
前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることを特徴としている。
【0016】
請求項1の発明に係る掛時計が掛止め可能な家具類又は建物構造物の出隅部としては、水平方向に連続する出隅部又は垂直方向に連続する出隅部のいずれかであることが最も多く、水平方向に連続する出隅部に対する掛時計の配置と、垂直方向に連続する出隅部に対する掛時計の配置とは、時計枠体を左右のいずれかに90°だけ廻した関係にある。従って、請求項5の発明のように、前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、しかも前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることで、隣接する第1群の時字の中心角は、90°となるので、水平方向及び垂直方向のいずれの出隅部に対して掛時計を掛止めても、同一表示の計4個の第1群の時字は、常に垂直線上及び水平線上に配置され、しかも同一に配置されるので、時計を見る者にとって、時字を誤りなく認識できて、掛時計としての配置の自由度が高められる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に、屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられているため、前記出隅部に掛時計を配置すると、時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組込まれた永久磁石と前記出隅部との磁気吸引力により、当該配置状態が維持されて、掛止め具等を一切使用することなく、前記出隅部に掛時計を掛止め固定できる。従って、水平方向に連続する出隅部、又は垂直方向に連続する出隅部のいずれに対しても掛時計を掛け止めることができて、掛時計を見る者に対して時計配置の「意外感」又は「斬新感」を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a),(b)は、それぞれ本発明に係る掛時計Cを正面側及び背面側から見た斜視図である。
図2】掛時計Cの分解斜視図である。
図3】背面覆板31を分離して、掛時計Cを背面側から見た斜視図である。
図4】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの正面図及び背面図である。
図5】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの平面図及び底面図である。
図6】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの右側面図及び左側面図である。
図7】背面覆板31を取り外した状態の掛時計Cの背面図である。
図8】時計機構Kを二点鎖線で示した図4のX-X線断面図である。
図9図4のY-Y線断面図である。
図10】時計機構Kの内部機構を省略した図4のX-X線端面図である。
図11】透明部である透明保護板Pにハッチングを施した掛時計Cの斜視図である。
図12】収納ボードBに出隅部D1 ~D3 に対する掛時計Cの種々の配置形態を示す斜視図である。
図13】木目の異なる複数の木製ブロック51,52,53・・を組み合わせて形成された時計枠体A’を有する掛時計C’の斜視図である。
図14】異なる第1時字L11及び第2時字L12の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明の実施例の掛時計Cが、図1図10に詳細に図示されている。掛時計Cは、横長の長方形状であって、屋内に配置される家具類又は建物を構成する構造物の出隅部D1 ~D3 に対応させて側面視で逆L字状の木製の時計枠体Aと、当該時計枠体Aの中央部に組み込まれる時計機構Kと、前記時計枠体Aの表示部及び前記時計機構Kを構成する各針F1 ,F2 ,F3 を保護するために、当該時計枠体Aの前面との間に所定の間隔をおいて配置される透明樹脂板から成る透明保護板Pとから成る。
【0020】
時計枠体Aは、横長の長方形状の正面板部1と、当該正面板部1の左右両側に背面側に向けて一体に設けられた一対の逆L字状の側面板部2と、当該正面板部1に上下端部に背面側に向けて一体に設けられた横長の長方形状の上面板部3及び下面板部4とで構成されて、前記各板部1,2,3,4により、正面板部1の背面側に背面に開口した空間部5が形成されている。一対の側面板部2は、前後方向に沿って広幅部2aと、狭幅部2bとが高さ方向に沿った長さの比が(9/7)であって、前後方向に沿った長さの比が(5/2)の寸法比率を有していることで、前記広幅部2aと狭幅部2bとの間に、前記出隅部D1 ~D3 ,D11に掛け止めされる凹状の掛止め凹部6が形成されている。当該掛止め凹部6は、一対の側面板部2の広幅部2aの下端面2a1 と、狭幅部2bの背面側の端面2b1 とが直交することで形成されている。
【0021】
前記一対の側面板部2を構成する各広幅部2aの内側面には、前記広幅部2aの下端面2a1 と平行に配置される端面に薄板状の永久磁石Mが一体に設けられた長方形状の磁石取付け板7が一体に貼り付けられて、薄板状の前記永久磁石Mは、前記下端面2a1 と同一面上に配置されている。長方形状の磁石取付け板7における時計枠体Aの背面開口に臨んで配置されている互いに直交する各端面は、一対の側面板部2の広幅部2aの背面側端面2a2 及び下端面2a1 の双方に対して後述の背面覆板31の板厚分だけ後退して配置されることで、時計枠体Aの背面開口を覆う背面覆板31を支持可能とすると共に、当該背面覆板31の配置状態において、当該背面覆板31と、一対の側面板部2の広幅部2aの背面側端面2a2 及び下端面2a1 とが同一面上に配置されるようにしてある。
【0022】
長方形状の正面板部1の前面には、同一円上に同一の中心角30°を有して計12個の時字が刻印され、当該時字は、零時、3時、6時及び9時の状態で時針F1 が配置される計4個の同一表示の第1時字L1 と、当該第1時字L1 の間に2個ずつ配置されて、当該第1時字L1 とは異なる同一表示の残りの計8個の第2時字L2 とから成る。第1時字L1 は、三重の同心円で表示され、第2時字L2 は、二重の同心円で表示されることで、両時字L1 ,L2 は、明瞭に識別される。なお、「時字」は、時計業界において「アワーマーク(hour mark)」又は「インデックス(index) 」とも称される。正面板部1の中央部の背面側に、前記時計機構Kが組み込まれて配置され、当該時計機構Kを構成する時針F1 ,分針F2 及び秒針F3 の各回転軸部は、同心を保持して針収容筒状部11(図10参照)の内部に収容され、当該針収容筒状部11は、前記正面板部1の中央部に貫通された貫通穴8(図8及び図10参照)に挿通されることで、前記時針F1 ,分針F2 及び秒針F3 が当該正面板部1の前面に配置される。
【0023】
時計枠体Aの正面板部1に刻印された第1及び第2の各時字L1 ,L2 並びに当該正面板部1の前面に配置された各針F1 ,F2 ,F3 は、透明樹脂板から成る透明保護板Pにより保護される。当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面形状と同一の横長の長方形状であって、各コーナー部が円弧状に面取りされている。当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面板部1の前面に所定間隔をおいて配置され、図1図2及び図9に示されるように、正面板部1の背面側から挿通されて前面側に突出する固定ボルト21と、当該固定ボルト21の突出部に螺合されるボルト付雌ねじ筒22と、透明樹脂板Pを貫通して、当該透明樹脂板Pの前面に突出した前記ボルト付雌ねじ筒22のボルト部22aと螺合されるナット23とにより、当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面板部1の前面に所定間隔をおいて固定配置される。即ち、正面板部1の各コーナー部の計4箇所に、前記固定ボルト21を挿通させる挿通穴9が貫通して形成され、透明保護板Pにおける正面板部1の各挿通穴9に対応する部分には、前記ボルト付雌ねじ筒22のボルト部22aを挿通させる貫通穴24(図9及び図10参照)が貫通して形成されている。
【0024】
時計枠体Aの背面の空間部5は、図1及び図3に示されるように、当該時計枠体Aを構成する上面板部3、一対の側面板部2及び下面板部4の内側に嵌め込まれて、上面板部3、一対の側面板部2及び下面板部4の背面側の各端面と、一対の側面板部2の広幅部2aの下端面2a1 と同一平面上に配置される立体形状の背面覆板31により覆われる。
【0025】
即ち、背面覆板31は、上面板部3と一対の側面板部2の広幅部2aとで形成される背面開口を覆う第1覆板部31aと、一対の側面板部2の狭幅部2bと下面板部4とで形成される背面開口を覆う第2覆板部31bと、一対の側面板部2の広幅部2aの下端部との間に形成されて、背面側において下方に開口する空間を覆う第3覆板部31cとの計3つの部分から成り、互いに平行な関係にある第1及び第2の各覆板部31a,31bの幅方向に沿って内側の各一端部は、前記第3覆板部31cで連結されている。この結果、背面覆板31の側面視は、点対称に配置された一対のL字のうち互いに最も近接した平行部を一体化させた形状となる。
【0026】
第3覆板部31cの長手方向の両端部には、時計枠体Aに組み込まれた方形状の一対の永久磁石Mを露出させる磁石露出開口32が形成され、第2及び第3の各覆板部31b,31cの長手方向の中央部には、前記時計機構Kの時刻調整ダイヤル12の操作及び電源である乾電池13の交換を可能にするための時計機構露出開口33が、各覆板部31b,31cに亘って形成されている。なお、図3及び図9において、10は、背面覆板31の第2覆板部31bの長手方向の両端部を当接させることで、時計枠体Aの背面開口に前記第2覆板部31bを配置可能にするために、時計枠体Aの正面板部1の背面側の長手方向の両端部に貼着等により固着された一対の覆板当接ブロックを示し、時計枠体Aの一対の側面板部2の狭幅部2bの背面側の端面2b1 に対して背面覆板31の板厚だけ後退して配置されている。
【0027】
上記したように、掛時計Cの時計枠体Aは、側面視で逆L字状をなしていて、背面側に、屋内の家具類等の出隅部D1 ~D3 ,D11に掛け止められる凹状の掛止め凹部6が形成されて、当該時計枠体Aには、前記掛止め凹部6に露出するようにして永久磁石Mが組み込まれている。従って、図12に示されるように、室内に縦配置された収納ボードBが金属製である場合には、当該収納ボードBの横方向の出隅部D1 ,D3 ,D4 及び縦方向の出隅部D2 のいずれに対しても時計枠体Aを配置できて、配置状態において、時計枠体Aの掛止め凹部6に露出して組み込まれた永久磁石Mと金属製の収納ボードBとが磁気吸着されることで、いずれの場合でも配置状態が維持される。縦方向の出隅部D2 に時計枠体Aを配置した場合には、前記磁気吸着により、時計枠体Aが下方に移動するのが防止されると共に、収納ボードBの下方の水平方向の出隅部D3 に配置された時計枠体Aは、前記磁気吸着により配置状態が維持される。
【0028】
また、収納ボードBの上方の水平方向の出隅部D1 に配置された時計枠体Aを基準にすると、収納ボードBの垂直方向の出隅部D2 に配置された時計枠体Aは90°廻されて配置され、更に、収納ボードBの下方の水平方向の出隅部D3 に配置された時計枠体Aは、180°廻されて、即ち、上下反転されて配置されている。しかし、時計枠体Aの正面板部1の前面に刻印された計12個の時字は、零時、3時、6時及び9時の状態で時針F1 が配置される計4個の同一表示の第1時字L1 と、当該第1時字L1 とは異なる同一表示の残りの計8個の第2時字L2 とから成り、しかも第1及び第2の各時字L1 ,L2 は、重数の異なる多重円で構成されていて、隣接する第1時字L1 の中心角は、90°となるので、水平方向の出隅部D1 ,D3 及び垂直方向の出隅部D2 のいずれに対して掛時計を掛止めても、同一表示の計4個の第1時字L1 は、常に垂直線上及び水平線上に配置され、しかも第1及び第2の各時字L1 ,L2 は、全て同一に認識されるので、時計を見る者にとって、時字を誤りなく認識できて、掛時計としての配置の自由度が高められる。
【0029】
このため、第1及び第2の各時字L1 ,L2 の形状は、時計枠体Aを90°単位で廻しても、同一に認識される形状であればよいので、円形以外に正方形枠も採用可能である。
【0030】
なお、時計枠体Aの上面板部3の上面は、平面であるため、収納ボードBの底板部41に、水平方向の出隅部D1 に掛止め配置される時計枠体Aに対して上下反転させて上面板部3を下方にして、掛け止めることなく、単に設置した配置例である。
【0031】
また、時計枠体Aを掛け止める対象の出隅部D11が磁性を有していない場合には、図9に示されるように、当該出隅部D11における時計枠体Aの永久磁石Mと対向する面に磁気テープTを貼着することで、非磁性の出隅部D11に対して時計枠体Aの掛止めが可能となる。
【0032】
また、上記において、第1及び第2の各時字の例として、円形及び正方形枠形の図形を選択して、サイズの異なる複数の図形を同心配置させることで、第1及び第2の各時字を識別するものを挙げた。更に、図13に示されるように,零時、3時、6時及び9時において時針が配置される計4個の時字L11として、各針F1 ,F2 ,F3 の回転中心を通過する互いに直交する2本の直線を選択し、残りの8個の第2時字L12として、各針F1 ,F2 ,F3 の回転中心を通過する計8本の直線から短い線分をそれぞれ選択したものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
A:時計枠体
B:収納ボード
C:掛時計
1 ,D3 ,D4 :水平方向の出隅部
2 :垂直方向の出隅部
11:非磁性の出隅部
1 :時針
2 :分針
3 :秒針
K:時計機構
1 ,L11:第1時字(第1群の時字)
2 ,L12:第2時字(第2群の時字)
M:永久磁石
P:透明保護板
T:磁気テープ
6:掛止め凹部
51~53:木製ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計であって、
前面に表示部が設けられた時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に前記出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられ、
当該掛止め凹部を利用して、当該時計枠体が前記出隅部に掛け止められた状態を、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により維持する構成であることを特徴とする掛時計。
【請求項2】
前記時計枠体の裏面側に設けられた磁石を、前記出隅部の磁性部又は当該出隅部に貼着された磁気テープに磁気吸着させることを特徴とする請求項1に記載の掛時計。
【請求項3】
前記時計枠体は、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掛時計。
【請求項4】
前記時計枠体の前面には、当該時計枠体の正面形状と同一形状の透明樹脂板が所定間隔をおいて当該時計枠体の前面と平行に取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掛時計。
【請求項5】
前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、
前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掛時計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の家具類又は建物を構成する構造物に存在する出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掛時計の掛止め構造の一つとして、特許文献1に開示のものが知られている。この掛時計の掛止め構造は、壁面等に打ち込まれる掛け具に係止される掛止め穴が枠体の裏面に設けられた掛時計において、前記掛止め穴の下部に連続し、前記掛け具が進入可能に形成された案内凹部の内壁面に磁石が取付けられ、壁面等に固定された掛け具に対して掛時計の枠体の前記案内凹部を相対的に進入させて、前記掛け具と磁石との吸引力を感じ取った時点で、前記枠体をそのまま開放することで、前記掛止め穴に対する掛け具の掛止め操作を容易にしている。しかし、特許文献1に開示の技術によると、磁気吸引力の利用により、壁面等に対する掛時計の掛止め操作は、容易になるが、壁面等に打ち込まれた掛け具を、掛時計の枠体裏面に形成された掛止め穴に引っ掛けて、壁面等に掛時計を吊り下げる古来の掛止め固定構造が前提となっている。
【0003】
別の特許文献2に開示の掛時計に関しても、壁面等に固定された掛け金具30のフック部30aを、掛時計の筐体21に設けられた穴部に挿入して引っ掛けて固定する構造は、前記特許文献1と同様である。
【0004】
このように、従来の掛時計の掛止め固定構造は、壁面等に固定された掛止め具を、掛時計の枠体(筐体)に設けられた穴部に挿入して引っ掛けるものであり、これとは異なる発想の掛時計の掛止め固定構造は、存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3-74389号公報
【特許文献2】特開2007-285917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屋内に配置された家具類又は建物を構成する構造物に存在する出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、
屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に配置するのみで掛止め固定される掛時計であって、
前面に表示部が設けられた時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に前記出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられ、
当該掛止め凹部を利用して、当該時計枠体が前記出隅部に掛け止められた状態を、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により維持する構成であることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、時計枠体は、側面視で逆L字状に形成されることで、背面側に、屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に掛け止められる掛止め凹部が形成されているため、時計枠体の前記掛止め凹部を前記出隅部に配置すると、当該時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組み込まれた永久磁石と前記出隅部との間の磁気吸引力により、当該配置状態で維持されて、壁面等に固定する掛止め具等を一切使用することなく、前記出隅部に掛時計を掛止め固定することが可能となる。従って、水平方向に連続する出隅部に対して上方から時計枠体を掛止めることが正規の配置形態であるが、垂直方向に連続する出隅部に対して側方から時計枠体を掛止めて、前記磁気吸引力により時計枠体が下方に移動するのを阻止した状態で配置することも可能である。このように、請求項1の発明によれば、従来の掛時計の掛止め構造では、掛止め具等を一切使用することなく、従来において想定されていなかった家具類又は建物構造物の出隅部に掛時計を掛止め固定することが可能となって、掛時計を見る者に対して時計配置の「意外感」又は「斬新感」を与えられる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記時計枠体の裏面側に設けられた磁石を、前記出隅部の磁性部又は当該出隅部に貼着された磁気テープに磁気吸着させることを特徴としている。
【0010】
家具類又は建物構造物の出隅部が磁性を有していない場合には、当該部分に磁気テープを貼着することで、当該磁気テープと、時計枠体に組み込まれた永久磁石との間で磁気吸引力を生じさせて、前記出隅部に対する時計枠体の掛止め状態を維持できる。なお、出隅部が磁性を有している場合には、時計枠体の掛止め凹部を家具類の出隅部に配置するのみで、永久磁石との間の磁気吸引力により固定される。
【0011】
請求項3の発明は,請求項1又は2の発明において、前記時計枠体は、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明によれば、時計枠体が単なる木製ではなく、木目の異なる複数の木製ブロック材を組み合わせて形成されているため、掛時計としての意匠性が高められる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、前記時計枠体の前面には、当該時計枠体の正面形状と同一形状の透明樹脂板が所定間隔をおいて当該時計枠体の前面と平行に取付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明によれば、時計枠体の前面に所定間隔をおいて配置された透明樹脂板は、時計枠体の表面の時字を含む表示部、時針、分針、秒針等を単に保護するのみならず、時計枠体と透明樹脂板との間には、全周に亘って開口が形成されているため、当該透明樹脂板のみが空間に配置されているように視認されて、掛時計としての意匠性が高められる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、
前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることを特徴としている。
【0016】
請求項1の発明に係る掛時計が掛止め可能な家具類又は建物構造物の出隅部としては、水平方向に連続する出隅部又は垂直方向に連続する出隅部のいずれかであることが最も多く、水平方向に連続する出隅部に対する掛時計の配置と、垂直方向に連続する出隅部に対する掛時計の配置とは、時計枠体を左右のいずれかに90°だけ廻した関係にある。従って、請求項5の発明のように、前記時計枠体の表示部を構成する計12個の時字のうち零時、3時、6時及び9時の状態で時針が配置される計4個の第1群の時字は、同一の表示が施されていると共に、残りの計8個の第2群の時字は、前記第1群の時字とは異なる同一の表示が施され、しかも前記第1群及び第2群の各時字は、前記時計枠体を90°単位で廻した各状態において、同一に配置される図形又は線分を含む直線が選択されていることで、隣接する第1群の時字の中心角は、90°となるので、水平方向及び垂直方向のいずれの出隅部に対して掛時計を掛止めても、同一表示の計4個の第1群の時字は、常に垂直線上及び水平線上に配置され、しかも同一に配置されるので、時計を見る者にとって、時字を誤りなく認識できて、掛時計としての配置の自由度が高められる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、時計枠体は、側面視で逆L字状に形成することで、背面側に、屋内の家具類又は建物を構成する構造物の出隅部に掛け止められる掛止め凹部が設けられているため、前記出隅部に掛時計を配置すると、時計枠体の前記掛止め凹部に露出して組込まれた永久磁石と前記出隅部との磁気吸引力により、当該配置状態が維持されて、掛止め具等を一切使用することなく、前記出隅部に掛時計を掛止め固定できる。従って、水平方向に連続する出隅部、又は垂直方向に連続する出隅部のいずれに対しても掛時計を掛け止めることができて、掛時計を見る者に対して時計配置の「意外感」又は「斬新感」を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a),(b)は、それぞれ本発明に係る掛時計Cを正面側及び背面側から見た斜視図である。
図2】掛時計Cの分解斜視図である。
図3】背面覆板31を分離して、掛時計Cを背面側から見た斜視図である。
図4】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの正面図及び背面図である。
図5】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの平面図及び底面図である。
図6】(a),(b)は、それぞれ掛時計Cの右側面図及び左側面図である。
図7】背面覆板31を取り外した状態の掛時計Cの背面図である。
図8】時計機構Kを二点鎖線で示した図4のX-X線断面図である。
図9図4のY-Y線断面図である。
図10】時計機構Kの内部機構を省略した図4のX-X線端面図である。
図11】透明部である透明保護板Pにハッチングを施した掛時計Cの斜視図である。
図12】収納ボードBに出隅部D1 ~D3 に対する掛時計Cの種々の配置形態を示す斜視図である。
図13】木目の異なる複数の木製ブロック51,52,53・・を組み合わせて形成された時計枠体A’を有する掛時計C’の斜視図である。
図14】異なる第1時字L11及び第2時字L12の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。本発明の実施例の掛時計Cが、図1図10に詳細に図示されている。掛時計Cは、横長の長方形状であって、屋内に配置される家具類又は建物を構成する構造物の出隅部D1 ~D3 に対応させて側面視で逆L字状の木製の時計枠体Aと、当該時計枠体Aの中央部に組み込まれる時計機構Kと、前記時計枠体Aの表示部及び前記時計機構Kを構成する各針F1 ,F2 ,F3 を保護するために、当該時計枠体Aの前面との間に所定の間隔をおいて配置される透明樹脂板から成る透明保護板Pとから成る。
【0020】
時計枠体Aは、横長の長方形状の正面板部1と、当該正面板部1の左右両側に背面側に向けて一体に設けられた一対の逆L字状の側面板部2と、当該正面板部1に上下端部に背面側に向けて一体に設けられた横長の長方形状の上面板部3及び下面板部4とで構成されて、前記各板部1,2,3,4により、正面板部1の背面側に背面に開口した空間部5が形成されている。一対の側面板部2は、前後方向に沿って広幅部2aと、狭幅部2bとが高さ方向に沿った長さの比が(9/7)であって、前後方向に沿った長さの比が(5/2)の寸法比率を有していることで、前記広幅部2aと狭幅部2bとの間に、前記出隅部D1 ~D3 ,D11に掛け止めされる凹状の掛止め凹部6が形成されている。当該掛止め凹部6は、一対の側面板部2の広幅部2aの下端面2a1 と、狭幅部2bの背面側の端面2b1 とが直交することで形成されている。
【0021】
前記一対の側面板部2を構成する各広幅部2aの内側面には、前記広幅部2aの下端面2a1 と平行に配置される端面に薄板状の永久磁石Mが一体に設けられた長方形状の磁石取付け板7が一体に貼り付けられて、薄板状の前記永久磁石Mは、前記下端面2a1 と同一面上に配置されている。長方形状の磁石取付け板7における時計枠体Aの背面開口に臨んで配置されている互いに直交する各端面は、一対の側面板部2の広幅部2aの背面側端面2a2 及び下端面2a1 の双方に対して後述の背面覆板31の板厚分だけ後退して配置されることで、時計枠体Aの背面開口を覆う背面覆板31を支持可能とすると共に、当該背面覆板31の配置状態において、当該背面覆板31と、一対の側面板部2の広幅部2aの背面側端面2a2 及び下端面2a1 とが同一面上に配置されるようにしてある。
【0022】
長方形状の正面板部1の前面には、同一円上に同一の中心角30°を有して計12個の時字が刻印され、当該時字は、零時、3時、6時及び9時の状態で時針F1 が配置される計4個の同一表示の第1時字L1 と、当該第1時字L1 の間に2個ずつ配置されて、当該第1時字L1 とは異なる同一表示の残りの計8個の第2時字L2 とから成る。第1時字L1 は、三重の同心円で表示され、第2時字L2 は、二重の同心円で表示されることで、両時字L1 ,L2 は、明瞭に識別される。なお、「時字」は、時計業界において「アワーマーク(hour mark)」又は「インデックス(index) 」とも称される。正面板部1の中央部の背面側に、前記時計機構Kが組み込まれて配置され、当該時計機構Kを構成する時針F1 ,分針F2 及び秒針F3 の各回転軸部は、同心を保持して針収容筒状部11(図10参照)の内部に収容され、当該針収容筒状部11は、前記正面板部1の中央部に貫通された貫通穴8(図8及び図10参照)に挿通されることで、前記時針F1 ,分針F2 及び秒針F3 が当該正面板部1の前面に配置される。
【0023】
時計枠体Aの正面板部1に刻印された第1及び第2の各時字L1 ,L2 並びに当該正面板部1の前面に配置された各針F1 ,F2 ,F3 は、透明樹脂板から成る透明保護板Pにより保護される。当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面形状と同一の横長の長方形状であって、各コーナー部が円弧状に面取りされている。当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面板部1の前面に所定間隔をおいて配置され、図1図2及び図9に示されるように、正面板部1の背面側から挿通されて前面側に突出する固定ボルト21と、当該固定ボルト21の突出部に螺合されるボルト付雌ねじ筒22と、透明樹脂板Pを貫通して、当該透明樹脂板Pの前面に突出した前記ボルト付雌ねじ筒22のボルト部22aと螺合されるナット23とにより、当該透明保護板Pは、時計枠体Aの正面板部1の前面に所定間隔をおいて固定配置される。即ち、正面板部1の各コーナー部の計4箇所に、前記固定ボルト21を挿通させる挿通穴9が貫通して形成され、透明保護板Pにおける正面板部1の各挿通穴9に対応する部分には、前記ボルト付雌ねじ筒22のボルト部22aを挿通させる貫通穴24(図9及び図10参照)が貫通して形成されている。
【0024】
時計枠体Aの背面の空間部5は、図1及び図3に示されるように、当該時計枠体Aを構成する上面板部3、一対の側面板部2及び下面板部4の内側に嵌め込まれて、上面板部3、一対の側面板部2及び下面板部4の背面側の各端面と、一対の側面板部2の広幅部2aの下端面2a1 と同一平面上に配置される立体形状の背面覆板31により覆われる。
【0025】
即ち、背面覆板31は、上面板部3と一対の側面板部2の広幅部2aとで形成される背面開口を覆う第1覆板部31aと、一対の側面板部2の狭幅部2bと下面板部4とで形成される背面開口を覆う第2覆板部31bと、一対の側面板部2の広幅部2aの下端部との間に形成されて、背面側において下方に開口する空間を覆う第3覆板部31cとの計3つの部分から成り、互いに平行な関係にある第1及び第2の各覆板部31a,31bの幅方向に沿って内側の各一端部は、前記第3覆板部31cで連結されている。この結果、背面覆板31の側面視は、点対称に配置された一対のL字のうち互いに最も近接した平行部を一体化させた形状となる。
【0026】
第3覆板部31cの長手方向の両端部には、時計枠体Aに組み込まれた方形状の一対の永久磁石Mを露出させる磁石露出開口32が形成され、第2及び第3の各覆板部31b,31cの長手方向の中央部には、前記時計機構Kの時刻調整ダイヤル12の操作及び電源である乾電池13の交換を可能にするための時計機構露出開口33が、各覆板部31b,31cに亘って形成されている。なお、図3及び図9において、10は、背面覆板31の第2覆板部31bの長手方向の両端部を当接させることで、時計枠体Aの背面開口に前記第2覆板部31bを配置可能にするために、時計枠体Aの正面板部1の背面側の長手方向の両端部に貼着等により固着された一対の覆板当接ブロックを示し、時計枠体Aの一対の側面板部2の狭幅部2bの背面側の端面2b1 に対して背面覆板31の板厚だけ後退して配置されている。
【0027】
上記したように、掛時計Cの時計枠体Aは、側面視で逆L字状をなしていて、背面側に、屋内の家具類等の出隅部D1 ~D3 ,D11に掛け止められる凹状の掛止め凹部6が形成されて、当該時計枠体Aには、前記掛止め凹部6に露出するようにして永久磁石Mが組み込まれている。従って、図12に示されるように、室内に縦配置された収納ボードBが金属製である場合には、当該収納ボードBの横方向の出隅部D1 ,D3 ,D4 及び縦方向の出隅部D2 のいずれに対しても時計枠体Aを配置できて、配置状態において、時計枠体Aの掛止め凹部6に露出して組み込まれた永久磁石Mと金属製の収納ボードBとが磁気吸着されることで、いずれの場合でも配置状態が維持される。縦方向の出隅部D2 に時計枠体Aを配置した場合には、前記磁気吸着により、時計枠体Aが下方に移動するのが防止されると共に、収納ボードBの下方の水平方向の出隅部D3 に配置された時計枠体Aは、前記磁気吸着により配置状態が維持される。
【0028】
また、収納ボードBの上方の水平方向の出隅部D1 に配置された時計枠体Aを基準にすると、収納ボードBの垂直方向の出隅部D2 に配置された時計枠体Aは90°廻されて配置され、更に、収納ボードBの下方の水平方向の出隅部D3 に配置された時計枠体Aは、180°廻されて、即ち、上下反転されて配置されている。しかし、時計枠体Aの正面板部1の前面に刻印された計12個の時字は、零時、3時、6時及び9時の状態で時針F1 が配置される計4個の同一表示の第1時字L1 と、当該第1時字L1 とは異なる同一表示の残りの計8個の第2時字L2 とから成り、しかも第1及び第2の各時字L1 ,L2 は、重数の異なる多重円で構成されていて、隣接する第1時字L1 の中心角は、90°となるので、水平方向の出隅部D1 ,D3 及び垂直方向の出隅部D2 のいずれに対して掛時計を掛止めても、同一表示の計4個の第1時字L1 は、常に垂直線上及び水平線上に配置され、しかも第1及び第2の各時字L1 ,L2 は、全て同一に認識されるので、時計を見る者にとって、時字を誤りなく認識できて、掛時計としての配置の自由度が高められる。
【0029】
このため、第1及び第2の各時字L1 ,L2 の形状は、時計枠体Aを90°単位で廻しても、同一に認識される形状であればよいので、円形以外に正方形枠も採用可能である。
【0030】
なお、時計枠体Aの上面板部3の上面は、平面であるため、収納ボードBの底板部41に、水平方向の出隅部D1 に掛止め配置される時計枠体Aに対して上下反転させて上面板部3を下方にして、掛け止めることなく、単に設置した配置例である。
【0031】
また、時計枠体Aを掛け止める対象の出隅部D11が磁性を有していない場合には、図9に示されるように、当該出隅部D11における時計枠体Aの永久磁石Mと対向する面に磁気テープTを貼着することで、非磁性の出隅部D11に対して時計枠体Aの掛止めが可能となる。
【0032】
また、上記において、第1及び第2の各時字の例として、円形及び正方形枠形の図形を選択して、サイズの異なる複数の図形を同心配置させることで、第1及び第2の各時字を識別するものを挙げた。更に、図13に示されるように,零時、3時、6時及び9時において時針が配置される計4個の時字L11として、各針F1 ,F2 ,F3 の回転中心を通過する互いに直交する2本の直線を選択し、残りの8個の第2時字L12として、各針F1 ,F2 ,F3 の回転中心を通過する計8本の直線から短い線分をそれぞれ選択したものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
A:時計枠体
B:収納ボード
C:掛時計
1 ,D3 ,D4 :水平方向の出隅部
2 :垂直方向の出隅部
11:非磁性の出隅部
1 :時針
2 :分針
3 :秒針
K:時計機構
1 ,L11:第1時字(第1群の時字)
2 ,L12:第2時字(第2群の時字)
M:永久磁石
P:透明保護板
T:磁気テープ
6:掛止め凹部
51~53:木製ブロック