IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本紙管工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高グリップ紙管及びその製造方法 図1
  • 特開-高グリップ紙管及びその製造方法 図2
  • 特開-高グリップ紙管及びその製造方法 図3
  • 特開-高グリップ紙管及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088140
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】高グリップ紙管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/28 20060101AFI20240625BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B65H75/28
B65H75/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203168
(22)【出願日】2022-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 営業活動日 令和4年10月12日(開始日)~令和4年12月27日(現在) 営業開始場所 東京ビッグサイト(東京国際展示場)東1~3・東6ホール(東京都江東区有明3-11-1) 営業所 日本紙管工業株式会社(大阪府大阪市旭区大宮1丁目11番3号)
(71)【出願人】
【識別番号】391050101
【氏名又は名称】日本紙管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】三木 研司
(72)【発明者】
【氏名】浦松 真一
(72)【発明者】
【氏名】若山 沙代
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA01
3F058AA02
3F058AA03
3F058AA04
3F058AB01
3F058BB05
3F058BB11
3F058DA04
3F058HA00
3F058HB02
3F058HB07
(57)【要約】
【課題】 タック性を排除した高グリップ性を持つ紙管を提供する。
【解決手段】 本発明の紙管1のグリップ領域2は、紙管1の周方向について紙管1の中心角を150度以下とする範囲に設けられたアクリル・スチレン系樹脂のコーティング層であり、前記グリップ領域2の紙管1周方向の長さを20mmとし、直径100mm軸方向の幅90mmの紙管に対し、シート材3を幅90mm厚み50μm巻き付け方向の長さ200mmのOPPとし、摂氏23度相対湿度50%RHの環境下で20mm毎分の引張速度にて引っ張った際、紙管1の径外方向へ引っ張った際、シート材3の剥離に要する力を20N以下とし、前記温度と前記相対湿度の環境下、シート材3を紙管1へ140mm巻き付け、前記引張速度にて引っ張った際、グリップ領域2は、紙管1の周方向即ち前記シート材の巻き取り方向についての前記シート材の摺動に対する摩擦抵抗を120N以上とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き取るシート材の端部をグリップし前記シート材の空回りを阻止するグリップ領域を外周面へ備えた紙管であり、前記シート材は、プラスチックフィルム、金属箔、布、不織布の何れかであり、
前記グリップ領域は、前記紙管の軸方向に沿って伸びる少なくとも1本の帯状の領域であるか或いは当該軸方向へ沿って断続的に設けられた複数の領域にて構成されたものであり、
前記グリップ領域は、前記紙管の周方向について前記紙管の中心角を150度以下とする範囲に設けられた樹脂層であり、
前記樹脂層の樹脂は、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂の、少なくとも何れか一の固形樹脂であり、
直径100mm軸方向の幅90mmに設定した紙管に対し、前記シート材を幅90mm厚み50μm巻き付け方向の長さ200mmの二軸延伸ポリプロピレンとし、当該紙管の軸方向について当該グリップ領域は紙管1の長さと同じ長さを備えるものとし、当該紙管の周方向についての前記グリップ領域の長さを20mmとし、当該シート材の巻き付けの開始端側となる先端側を当該グリップ領域全体へ貼り付けて、摂氏23度相対湿度50%RHの環境下で20mm毎分の引張速度にて当該グリップ領域から当該紙管の径外方向へ引っ張った際、当該紙管の径外方向への当該シート材の剥離に要する力を20N以下とし、当該シート材を当該紙管へ140mm巻き付け、当該シート材の当該紙管へ巻き付けられていない後端側の位置を、前記環境下前記引張速度にて当該位置における当該紙管の径外方向へ引っ張った際、当該紙管表面における当該シート材の摺動に対する摩擦抵抗を120N以上とする高グリップ紙管。
【請求項2】
前記グリップ領域を構成する前記樹脂層は、最低造膜温度を摂氏0度以上摂氏2度以下としガラス転移温度を摂氏-10度以上摂氏0度以下とする、前記アクリル・スチレン系樹脂又は前記アクリル系樹脂の、コーティング層であることを特徴とする請求項1記載の高グリップ紙管。
【請求項3】
前記樹脂層の樹脂はアクリル・スチレン共重合体又はアクリル酸エステルであり、
前記グリップ領域において、前記樹脂の量は、1平方メートル当たりに換算して11.5g以上とし、前記グリップ領域の樹脂層の厚みを20μm以下とする請求項2記載の高グリップ紙管。
【請求項4】
樹脂液を紙管表面へ噴霧し、噴霧後前記紙管表面の前記樹脂液を乾燥させることにより、前記グリップ領域を前記樹脂の固形分によるコーティング層として形成するものであり、
前記樹脂液は、前記樹脂層を構成する前記樹脂を含有する請求項1記載の高グリップ紙管の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂液は、水溶性の前記樹脂のエマルジョンを、水にて希釈したものであり、自然乾燥にて前記グリップ領域を前記樹脂の固形分によるコーティング層として形成するものである請求項4記載の高グリップ紙管の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂液の噴霧に先立ち、少なくとも前記グリップ領域を形成する前記紙管表面の領域へプラズマ照射を施すものである請求項4記載の高グリップ紙管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高グリップ紙管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムなどシート材の巻芯である紙管について、シート材の巻き取りに際し、シート材の巻き始めとなる当該シート材端部を確実に固定し、紙管に対しシート材を空回りさせないグリップ性を付与するために、従来紙管表面へ紙管の中心軸と平行に伸びる感圧接着剤層を配し、当該感圧接着剤層にてシート材の上記端部を紙管表面へ固定するものが提案されている(特許文献1及び2)。
【0003】
更に入手の手軽さから、シート材の紙管への巻き取り時の上記端部の具体的な固定手段として、市販の両面テープが多用されている。
両面テープは、表裏両面に粘着層を備える。紙管表面へ紙管の軸方向に沿って当該両面テープを貼り、当該両面テープを介してシート材の上記端部を紙管表面へ固着していたのである。
上記両面テープを利用する従来の問題点について説明する。
【0004】
第1の問題は、紙管を購入したシート材の供給者において、上記両面テープを手作業で紙管1本ずつに貼る手間を強いられた。また上記の粘着層はタック(べたつき)性を有するため、不意に他へくっ付いたり埃などの異物が付着しないように剥離紙(セパレータ)で覆われており、両面テープを紙管に貼る際には、両面テープを被覆する剥離紙を両面テープから取り除く手間も強いられるものであった。
上記タック性の問題については、特許文献1及び2の上記感圧性接着剤層を備えた紙管においても、十分な対策が講じられておらず、特許文献1及び2において、タック性に対する具体的な解決手段についての開示はない。
【0005】
第2の問題は、上記の通り手作業にて両面テープを紙管へ貼る際、両面テープを紙管の中心軸の方向に沿って真っすぐ正確に両面テープを貼るのは簡単ではなく、慣れていない作業者や熟練した作業者においても両面テープを正確に貼れずに、貼り直しを行うことが往々にしてあった。当該貼り直しは、新しい両面テープを用意することのみならず、紙管自体も新たなものの用意を強いられるものであり、そのコストは貼り直しを必要としない場合の凡そ2倍となるものであった。
【0006】
上記コストの増加については、上記両面テープを貼り直すために紙管から両面テープを剥がす際紙管の表面を傷つけ、紙管が不良となるからである。不良となった紙管を再利用する場合に両面テープを真っすぐ貼れたとしても、紙管の荒れた表面に貼られた両面テープへ微妙な起伏を生じさせ、上記シート材端部について、上記両面テープを介し紙管表面へ固着した際、皺や弛みが生じて綺麗に貼れないものとなる。従って、一度両面テープを剥がされた紙管は廃棄された。
【0007】
第3の問題は、上記のシート材を上記両面テープに対し貼り直す(固着し直す)必要が生じて上記シート材を両面テープから引き剥がした際に、両面テープの一部が千切れて上記シート側へ付着し、上記シート材を利用しようとした際用途によっては異物混入の原因となった。即ち、紙管に巻き取られたシート材を購入した者がシート材を例えば包装等に使用する際、両面テープの付着した上記シート材による被包装物のコンタミ(汚染)の危惧を招来した。
【0008】
第4の問題は、紙管表面に貼られた両面テープの厚みにより、巻き取ったシート材には数周に渡って段差が生じ、シート材に皺が生じるため、シート材の当該段差のある区間は、破棄され、巻き取られるシート材の厚みによっては数メートルのロスとなった。
【0009】
従来の上記タック性の問題を排除し、剥離紙を不要とする提案もなされている(特許文献3~5)。
特に特許文献4及び5へ示されたものは、水を塗布するまでタック性を発生しない即ちシート材の巻き取り時以外べとつかない具体的な手段(粘着剤)が開示されており、両面テープ排除に極めて有用な手段と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平5-92270号公報
【特許文献2】実開平6-25269号公報
【特許文献3】特開2005-162468号公報
【特許文献4】特許第6171063号公報
【特許文献5】特許第6648055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、本発明の発明者は上記の特許文献4及び5に開示された発明の有用性に満足することなく、鋭意研究の末本発明を創作したものであり、本発明は、シート材巻き取りの際に空回りが生じないグリップ性を備えると共に粘着剤を排除することで水の塗布の有無に拘わらずタック性を回避した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、巻き取るシート材の端部をグリップし前記シート材の空回りを阻止するグリップ領域を外周面へ備えた紙管であり、前記シート材は、プラスチックフィルム、金属箔、布、不織布の何れかであり、前記グリップ領域は、前記紙管の軸方向に沿って伸びる少なくとも1本の帯状の領域であるか或いは当該軸方向へ沿って断続的に設けられた複数の領域にて構成されたものであり、前記グリップ領域は、前記紙管の周方向について前記紙管の中心角を150度以下とする範囲に設けられた樹脂層であり、前記樹脂層の樹脂は、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂の、少なくとも何れか一の固形樹脂であり、直径100mm軸方向の幅90mmに設定した紙管に対し、前記シート材を幅90mm厚み50μm巻き付け方向の長さ200mmの二軸延伸ポリプロピレンとし、当該紙管の軸方向について当該グリップ領域は紙管1の長さと同じ長さを備えるものとし、当該紙管の周方向についての前記グリップ領域の長さを20mmとし、当該シート材の巻き付けの開始端側となる先端側を当該グリップ領域全体へ貼り付けて、摂氏23度相対湿度50%RHの環境下で20mm毎分の引張速度にて当該グリップ領域から当該紙管の径外方向へ引っ張った際、当該紙管の径外方向への当該シート材の剥離に要する力を20N以下とし、当該シート材を当該紙管に対し当該紙管へ140mm巻き付け、当該シート材の当該紙管へ巻き付けられていない後端側の位置を、前記環境下前記引張速度にて当該位置における当該紙管の径外方向へ引っ張った際、当該紙管表面における当該シート材の摺動に対する摩擦抵抗を120N以上とする高グリップ紙管を提供する。
また本発明は、前記グリップ領域を構成する前記樹脂層は、最低造膜温度を摂氏0度以上摂氏2度以下としガラス転移温度を摂氏-10度以上摂氏0度以下とする、前記アクリル・スチレン系樹脂又は前記アクリル系樹脂の、コーティング層である高グリップ紙管を提供できた。
更に本発明では、前記樹脂層の樹脂はアクリル・スチレン共重合体又はアクリル酸エステルであり、前記グリップ領域において、前記樹脂の量は、1平方メートル当たりに換算して11.5g以上とし、前記グリップ領域の樹脂層の厚みを20μm以下とする請求項2記載の高グリップ紙管を提供できた。
また更に本発明では、樹脂液を紙管表面へ噴霧し、噴霧後前記紙管表面の前記樹脂液を乾燥させることにより、前記グリップ領域を前記樹脂の固形分によるコーティング層として形成するものであり、前記樹脂液は、前記樹脂層を構成する前記樹脂を含有する前記高グリップ紙管の製造方法を提供できた。
更にまた本発明では、前記樹脂液は、水溶性の前記樹脂のエマルジョンを、水にて希釈したものであり、自然乾燥にて前記グリップ領域を前記樹脂の固形分によるコーティング層として形成するものである前記高グリップ紙管の製造方法を提供できた。
また本発明では、前記樹脂液の噴霧に先立ち、少なくとも前記グリップ領域を形成する前記紙管表面の領域へプラズマ照射を施すものである請求項4記載の高グリップ紙管の製造方法を提供できた。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、タック性を排除しつつ、シート材の紙管への巻き取りの際に必要なグリップ性を確保できた。本発明は、上記グリップ領域の形成にて、紙管へ空回りをさせずにシート材を巻き取ることができるグリップ性を紙管へ付与できたのである。特に本発明では、当該グリップ性を発揮させるのに水を付与する必要がない。
本発明の実施により、紙管に両面テープを使用することを不要とし、両面テープを用いることにより生じた前述の第1乃至第4の問題を解決できた。
具体的には、本発明の実施により、両面テープを貼る手間が省け、例えば長さが2mの紙管になると両面テープを真っすぐ貼るのは極めて困難であったが、この問題がなくなった。
本発明の実施により、シート材の巻き返しの際に、シート材がグリップ領域から綺麗に剥がれ、シート材を最後まで使用することができるものとなった。
また本発明の実施により、剥がれ性が優れることにて、紙管を傷つけることなく、紙管の再利用を可能とした。紙管に巻き取られたシート材を使用する際や、使用されたシート材のリサイクルに際して、異物混入を軽減できた。即ち、本発明の実施により、シート材へ接する物を汚染する危惧を低減できた。
本発明の実施により、両面テープを貼る際に生じる手間を回避し、両面テープで往々にして生じた紙管への貼り付け失敗の問題を解消した。
そして本発明の実施によって、両面テープ利用において顕著であった、前述の段差痕を軽減でき、巻き取ったシート材について、使用時に余尺即ち下巻きとして捨てていた区間を減らすことができた。
特にグリップ領域に水溶性であるアクリル・スチレン系樹脂を採用することにより、溶剤を不要とし環境に優しいものとした。
請求項4乃至6に記載の本発明により、上記本発明に係る高グリップ紙管を製造する具体的手段を提供できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明に係る高グリップ紙管の一実施の形態を示す斜視図、(B)は(A)の高グリップ紙管の端面図。
図2】(A)は図1(B)に示す高グリップ紙管の剥がれ性試験の説明図、(B)は(A)に示す高グリップ紙管のグリップ性試験の説明図。
図3図1に示す高グリップ紙管の製造過程を示す説明図。
図4図1に示す高グリップ紙管が従来の紙管と比較して剥がれ性に優れていることを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本願発明の好ましい実施の形態について説明する。
(概要)
本発明に係る高グリップ紙管では、紙管1の表面(外周面)へ、紙管1の中心軸と平行にアクリル・スチレン系の樹脂被膜をコーティングし、グリップ領域2とする。樹脂被膜は、紙管表面へ水溶させた樹脂の微粒子を噴霧して形成する(図1及び図3)。
グリップ領域2は、紙管1の周方向について、グリップ性(摩擦抵抗)を発揮し紙管へ巻き取るシート材3の端部(巻き始め)をグリップしてシート材3の空回りを阻止すると共に、タック性(べとつき)が低く紙管1の放射方向(径外方向)について紙管1へ巻き取るシート材3(プラスチックフィルム)の端部の剥離をし易いものとした(図2)。
グリップ領域2を、粘着剤による粘着でなくアクリル・スチレン系の樹脂被膜とすることで上記の通りタック性を抑制する。
【0016】
(紙管1)
上記紙管1は、シート材3として、プラスチックフィルム、金属箔、布、不織布を巻き取るものである。紙管1には、流通している既存の紙管を採用することができ、巻き取るシート材3の大きさ、即ちシート材3の長さや幅、厚みに適した寸法(直径及び長さ)のものを採用すればよい。
特に本発明に係る高グリップ紙管については、巻き取るシート材3としてプラスチックフィルム(樹脂フィルム)が適する。但しプラスチック以外のシート材3の巻き取りに本発明に係る高グリップ紙管を用いることも可能である。
【0017】
(グリップ領域2)
上記グリップ領域2は、この例では、紙管1の軸方向に沿って伸びる1本の帯状の領域である。
但し、グリップ領域2は、帯状に連続する領域とする以外に、紙管1の軸方向へ断続的に伸びる領域即ち間欠的な領域、或いは点在する複数の領域にて構成されたものとしても良い(図示は省略)。また、グリップ領域2は、上記の通り帯状に連続して伸びる領域とする場合も断続的に伸びる領域とする場合も、紙管1の軸方向に沿って並行して2本以上伸びるものとして実施しても良い。
【0018】
グリップ領域2は、紙管1の周方向について紙管1の中心角を150度以下とする範囲に設けられた樹脂層である。
上記中心角の範囲を前提として、軸方向へ伸びるグリップ領域2が呈するラインのライン幅(紙管1の周方向の長さ)について20mm以上とするのが望ましい。但し、適切なグリップ性を発揮できるものであれば良く、上記よりも小さなライン幅で実施することを排除するものではない。
但し、紙管1の軸方向について、グリップ領域2は紙管1よりも短いものとしても良い。
【0019】
グリップ領域2を構成する樹脂層の樹脂として、上記のアクリル系樹脂及びアクリル・スチレン系樹脂を例に採ると、当該樹脂の量は、1平方メートル当たりに換算して11.5g以上とし、当該樹脂層の厚みを20μm以下とするのが好ましい。
具体的には、固形分が約50%(重量%)の樹脂エマルジョンを当該樹脂エマルジョン:水=90:10となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ塗布(噴霧)しグリップ領域2を形成する場合、乾燥前の塗布量が1平方メートル換算で25gを超えるものとするのが望ましい。但し、上記樹脂液の乾燥後の樹脂層の厚みが20μm以下、より好ましい10μm以下となるものであればよい。
【0020】
グリップ領域2を構成する当該樹脂層の樹脂は、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂の、少なくとも何れか一の固形樹脂であって、次の条件を充足するものとする。
【0021】
(グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件)
紙管1の直径を100mmとし紙管1の軸方向の幅を90mmとし、シート材3を、幅90mmとし厚み50μmとし巻き付け方向の長さ200mmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)と設定した場合に、以下の条件を充足する樹脂を採用する。
【0022】
即ち、紙管1の軸方向(長手方向)について、グリップ領域2は、紙管1の長さと同じ長さを備えるものとし、紙管1の周方向についてのグリップ領域2の長さを20mmとし、シート材3の巻き付けの開始端側となる先端3a側をグリップ領域2全体へ貼り付けて(図2(A)、オートグラフを用い、摂氏23度相対湿度50%RHの環境下で20mm毎分の引張速度にて、当該グリップ領域から当該紙管の径外方向(図2(A)の白抜き矢印の方向即ち上方)へグリップ領域2へ貼られていない位置paを掴んで(クランプして)引っ張った際、当該紙管の径外方向への当該シート材の剥離に要する力を20N以下とし(剥がれ性)、シート材3を紙管1へ140mm巻き付け(図2(B))、シート材3の紙管1へ巻き付けられていない後端側の位置pbを掴んで(クランプして)、上記と同様摂氏23度相対湿度50%RHの環境下で20mm毎分の引張速度にて、当該位置pb(正確には上記巻き付けたシート材3の後端3b)における紙管1の径外方向(図2(B)の白抜き矢印の方向即ち上方)へ引っ張った際、当該紙管表面における当該シート材の摺動に対する摩擦抵抗を120N以上(保持力)とする。
上記140mmというのは、シート材3の先端3aから後端3bの間の長さであり、紙管1周方向におけるグリップ領域2の中央位置2aからシート材3の後端3bまでの長さは130mmとなる(図1(B))。紙管1周方向におけるグリップ領域2の中央位置2aからシート材3の後端3bまでの当該長さは、紙管1の中心o(中心軸)についての中心角θを150度とする円周(紙管1外周)の長さである。
【0023】
上記樹脂条件の剥がれ性に関し図2(A)へ示す通り、紙管1の周方向についてグリップ領域2の中央位置3aを横に寝かせた状態に固定した紙管1外周の最上点とする。また上記樹脂条件の保持力に関し図2(B)へ示す通り、シート材3の先端3aから紙管1へ上記140mm巻き付けたシート材3の当該巻き付けの後端3bが、紙管1の最上点となるように紙管1をセットする。図2(B)へ一点鎖線で示す通り、シート材3が引っ張られることにより、巻き付けたシート材3の後端3b側は、紙管1外周面から離れる。
剥がれ性の試験(図2(A))及び保持力(グリップ性)の試験(図2(B))の夫々において、掴み長さ即ち掴み位置(クランプ位置)の紙管1最上部からの高さptを何れも50mmとした。
【0024】
特に、グリップ領域2を構成する上記樹脂層の樹脂は、上記条件を充足する、最低造膜温度(MFT)を摂氏-2度より高く摂氏3度未満としガラス転移温度(Tg)を摂氏-10度より高く摂氏0度とする、アクリル・スチレン系樹脂又はアクリル系樹脂とする。
【0025】
(グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の実施に関する事項)
グリップ領域2を構成する樹脂層の樹脂にはMFT及びTgが上記範囲にあるアクリル・スチレン共重合体又はアクリル酸エステルを採用し、グリップ領域2を構成する当該樹脂の量は、1平方メートル当たりに換算して11.5g以上とし、グリップ領域の層の厚みを20μm以下とするのがより望ましい。
但し、ポリウレタン樹脂、アルキド系樹脂或いはシリコーン系樹脂であっても、MFT及びTgが上記範囲にあるものはグリップ領域2を構成する樹脂として採用することができる。
【0026】
また、アクリル酸エステルには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ジメチルアミノエチル、アクリル酸2-ビトロキシエチルなどあるが、上記条件を充足する限り、何れのアクリル酸エステルを採用しても良い。
【0027】
前述の樹脂の条件の説明においてシート材3とした二軸延伸ポリプロピレン(OPP)は、グリップ領域2を形成する樹脂(の性状)を特定するために例示したものであり、紙管1の用途として、紙管1へ巻き取るシート材3(製品)は、上記の通り、OPP以外のプラスチックや、金属箔、布、不織布であってもよい。また、上記樹脂の説明における紙管1やグリップ領域2の幅(紙管1周方向についての長さ)、シート材3の寸法についても、グリップ領域2を形成する樹脂(の性状)を特定するために例示したものであり、実施に際しては必要に応じて適切な寸法へ変更すればよい。
【0028】
紙管3の用途としては、包装用、工業用、光学用などのフィルム製品(シート材3)の巻き取りに利用することができる。
例えば、上記シート材3に関し、OPP以外の上記プラスチックとしては、PVC、PE、CPP、OPS、PVA、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン、POに代表される汎用フィルムや、アクリル、PET、ナイロン、PC、シリコンゴム、ポリウレタンに代表される高機能フィルムを例示できる。
【0029】
(本発明に係る高グリップ紙管の製造方法)
上記高グリップ紙管は、図3へ示す高グリップ紙管製造装置(グリップ領域形成装置)を用いて製造することができる。
高グリップ紙管製造装置は、紙管として形成され所定の長さにカットされる前の紙管、或いは所定長さにカットされた後の紙管に対し、上記グリップ領域2を形成する装置である。
高グリップ紙管製造装置は、従来の紙管装置と別体に形成され、従来の紙管装置へ付設されるものとしても良いし、従来の一般的な紙管装置の一部として当該従来の紙管装置に組み込まれたものとしても良い。
【0030】
この例では、上記の高グリップ紙管製造装置は、プラズマ照射装置4と、インクジェット装置5と、スプレー塗付装置6と、セパレータ貼着装置7と、コンベヤ8とを備える。
プラズマ照射装置4とインクジェット装置5とスプレー塗付装置6とセパレータ貼着装置7は、コンベヤ8の上流側から下流側へ向けて順に、コンベヤ8の上方へ配置され、コンベヤ8にて移送される紙管1の上方へ位置する。
【0031】
コンベヤ8は、紙管1の軸方向へ沿って紙管1を移動させる移送ラインを構成する。上記配置にてプラズマ照射装置4とインクジェット装置5とスプレー塗付装置6とセパレータ貼着装置7は、当該移送ラインの移送経路の途中に置かれ、移送されてくる紙管へ夫々加工を施す。即ち、プラズマ照射装置4とインクジェット装置5とスプレー塗付装置6とセパレータ貼着装置7は、コンベヤ8による紙管1の送り経路の途中において紙管1の上方から紙管1へ必要な処理を施す。
各部の構成について、具体的に説明する。
【0032】
上記のコンベヤ8には、紙管1を当該紙管1の長手方向に沿って真っすぐ移送できる既存のものを採用すればよい。例えば、移送方向を横断する断面視において中央の凹んだ、一般にトラフ(ベルト)コンベヤと呼ばれるコンベヤが、紙管1を真っすぐに安定して送れ、上記のコンベヤ8に適する。但し上記のコンベヤ8は、紙管1を真っすぐ安定して移動させることができるものであれば、上記のトラフコンベヤ以外の公知のコンベヤを採用して実施しても良い。
【0033】
コンベヤ8にて移送されて来る紙管1は、最初にプラズマ照射装置4の下を通過し、紙管1表面へプラズマが照射される(プラズマ照射工程)。プラズマ照射装置4は、流通している公知のものを採用すれば良い。プラズマ照射装置4には、紙管1の少なくともグリップ領域2を形成する部位へプラズマのシャワーを浴びせることが可能な、周知のプラズマシャワー照射装置を用いれば良い。プラズマ照射装置4にてプラズマを照射することにより、紙管表面を改質し、紙管表面の樹脂に対する密着性を高め、上記樹脂によるコーティング特性やインクジェット装置によるマーキングを確実に行えるものとすることができる。
【0034】
プラズマ照射装置4の下を通過してプラズマ照射された後、紙管1のインクジェット装置5の下を通過する部位に対し、インクジェット装置5は、インクを噴射し紙管1へ着色によるマーキングを施す(マーキング工程)。この例では、インクジェット装置5により、グリップ領域2を形成する部位を事前に赤色に着色することでマーキングを施す。紙管1に巻き取られていたシート材を使用することによりシート材の残余が僅かになると、紙管1に残っている透明な当該シート材から赤色のマーキングが透かし見えるようになり、シート材の消耗を知ることができる。
マーキングは、上記赤色に限定するものではなく、他の色に着色するものであってもよい。
また、マーキングが不要であれば、上記インクジェット装置5を用いないものとしても実施できる。
【0035】
インクジェット装置4は、工業用のマーカーや市販のインクジェットプリンターと同様の原理にて、紙管1へ向けて連続的に或いは断続的にインクを噴射する。インクジェット装置4は、紙管1の軸方向に沿って紙管1へインクを噴霧し、当該軸方向に沿って伸びるライン状のマーキング、或いは当該軸方向に沿って伸びる破線状のマーキングを、紙管1の表面のグリップ領域2を形成する位置に施すのである。
【0036】
インクジェット装置4について、具体的には、コンティニュアス型(連続吐出型)と呼ばれる装置を採用することができる。コンティニュアス型のインクジェット装置4では、ポンプによってノズルから連続的に押し出されたインクが超音波発振器によって微小な液滴になり、インク滴が電極によって電荷が加えられ、印字(マーキング)の必要に応じて偏向電極で軌道を曲げられて紙管表面に到達し、偏向電極で曲げられなかったインクはガターと呼ばれる回収口に吸い込まれ、インクタンクに戻り再利用される。
【0037】
この他、オンデマンド型と呼ばれる、印字(マーキング)時に必要なときに必要な量のインク滴を吐出する方式のものを採用しても良い。上記のオンデマンド型のインクジェット装置4では、吐出後のインク供給に毛管現象を利用しており高粘度のインキは使用できないので、高粘度のインクの利用には上記コンティニュアス型のものが適する。オンデマンド型のものはインク滴に圧力を加える方法により、ピエゾ方式・サーマル方式・静電方式に分けられるが、適切なマーキングを行うことができるものであれば、何れの方式のものを採用してもよい。
【0038】
紙管1の上記インクジェット装置4によりマーキングを施された部位がスプレー塗付装置6の下方を通過する際、スプレー塗付装置6により、当該部位へ水溶性の上記樹脂のエマルジョンを水で希釈した樹脂液が噴霧される(樹脂噴霧工程)。即ち、スプレー塗付装置6は、スプレー塗付装置6のスプレーノズルから、上記樹脂液を紙管1の上記マーキングを施された部位へ噴霧する。
【0039】
スプレー塗付装置6は、上記マーキングの形成された位置へ当該マーキングと同様、紙管1の軸方向に沿って紙管1へ上記樹脂液を連続的或いは断続的に噴霧(霧状に噴射して塗布)し、当該軸方向へ沿って伸びるライン状に上記樹脂液を付着させ、或いは当該軸方向に沿って伸びる破線状に樹脂液を付着させる。
上記マーキングを覆うように紙管1表面へ上記樹脂液を付着させるが好ましい。
また、スプレー塗付装置6には、公知の高粘度樹脂対応のスプレー(噴霧器)を採用するのが望ましい。
【0040】
噴霧後、紙管1表面の上記樹脂液を常温で自然乾燥させることにより(乾燥工程)、グリップ領域2が上記樹脂の固形分による即ち樹脂の固形分のみのコーティング層として形成される。
グリップ領域2は、紙管1を構成する紙材に浸透せずに上記の通りコーティング層として紙管1表面を被覆する樹脂層の領域である。
【0041】
上記乾燥後グリップ領域2として形成された領域が、セパレータ貼着装置7の下を潜ると、セパレータ貼着装置7の供給するセパレータ(剥離紙)と接触し順次帯状のセパレータがグリップ領域2へ貼着されて行き、グリップ領域2を覆う(セバレータ貼着工程)。セパレータ貼着装置7のボビン(図示は省略)には上記セパレータが巻回されてウェブとして保持されており、上記グリップ領域2の接触によりセパレータが順次ボビンから引き出されてグリップ領域2へ貼られて行く。
上記の各工程を経て高グリップ紙管が完成する。
【0042】
上記の高グリップ紙管製造装置を構成する上記各装置の配置間隔については、高グリップ紙管を適切に製造できるものであれば(既存の紙管を適切に加工できるものであれば)、特に限定はないが、この例では、プラズマ照射装置4とコンベヤ8上の紙管1との間の間隔t1を40mmとし、インクジェット装置5とコンベヤ8上の紙管1との間の間隔t2を50mmとし、スプレー塗付装置6とコンベヤ8上の紙管1との間の間隔t3を65mmとし、スプレー塗付装置6とコンベヤ8の最上部(左右の縁の夫々)との間の間隔t4を80mmとし、インクジェット装置5とスプレー塗付装置6との間隔t5を140mmとし、スプレー塗付装置6とセパレータ貼着装置7との間隔t6を110mmとして実施できた。但し、高グリップ紙管製造装置を構成する上記装置間の上記各間隔は例示であり、上記以外の数値にて実施することが可能である。特に紙管1の寸法やコンベヤ8の移送速度に合わせて、高グリップ紙管製造装置を構成する上記装置間の上記各間隔を適切な大きさとすれば良い。
【実施例0043】
表1へ本発明の実施例と比較例を示す。サンプルa1~a3は実施例の樹脂であり、サンプルb1、b2は比較例の樹脂である。表1へ示す通り、サンプルa1とサンプルa3の樹脂は夫々アクリル・スチレン共重合体であり、具体的にはサンプルa1の樹脂はMFT摂氏2度Tg摂氏-2度としサンプルa3の樹脂はMFT摂氏0度Tg摂氏0度とする、夫々アクリル・スチレン共重合体である。サンプルa2の樹脂はMFT摂氏0度Tg摂氏-10度とするアクリルである。
以下の実施例及び比較例の夫々のデータは、直径100mm(内径76mm+厚さ12mm)で軸方向の長さ90mmの(OPPの巻き取りに使用される一般的な)紙管1を採用し、グリップ領域2に関し紙管1周方向の長さを20mmとし、紙管1軸方向の長さを紙管1と同じ90mmとして得たものである。
【0044】
【表1】
【0045】
サンプルa1では、不揮発分即ち固形分50.0%の樹脂エマルジョンを採用し、サンプルa1の樹脂エマルジョン:水=90:10となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ噴霧し自然乾燥させてグリップ領域2を形成した。
サンプルa2では、不揮発分(固形分)49.5%の樹脂エマルジョンを採用し、サンプルa2の樹脂エマルジョン:水=90:10となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ噴霧し自然乾燥させてグリップ領域2を形成した。
サンプルa3では、不揮発分(固形分)45%の樹脂エマルジョンを採用し、サンプルa3の樹脂エマルジョン:水=95:5となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ噴霧し自然乾燥させてグリップ領域2を形成した。
サンプルb1では、不揮発分(固形分)58.0%の樹脂エマルジョンを採用し、サンプルb1の樹脂エマルジョン:水=80:20となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ噴霧し自然乾燥させてグリップ領域2を形成した。
サンプルb2では、不揮発分(固形分)52%の樹脂エマルジョンを採用し、サンプルb2の樹脂エマルジョン:水=90:10となるよう希釈した樹脂液を紙管1へ噴霧し自然乾燥させてグリップ領域2を形成した。
【0046】
【表2】
【0047】
表1のサンプルa1に関し、図2(B)へ示す保持力(グリップ性)の計測結果と、図2(A)へ示す剥がれ性(剥離性)の計測結果を表2へ示す。
上記計測には、万能試験機として一般に認知されているオートグラフを用い、保持力と剥がれ性について、何れも毎分20mmの速度で、図2(A)(B)へ示す各方向へ引張り試験を行った。
表2へ示す温度及び湿度の条件下で、上記保持力についてサンプルa1のグリップ領域2を備えた紙管1について、3回試験を行い、表2へ示す通り何れも200N(ニュートン)未満ではOPPのシート材3を引き剥がすことのできない保持力を示すことが確認できた。
また、剥がれ性(剥離性)についてサンプルa1のグリップ領域2を備えた紙管1の夫々について、3回試験を行い、表2へ示す通りOPPのシート材3の紙管1からの剥離に要した力に関し何れも5~10Nの範囲に収まることが確認できた。上記表2へ示す計測結果から、サンプルa1のグリップ領域2を備えた紙管1は、べとつかず即ちタック性が低く抑えられ尚且つ高いグリップ性を備えたものであることが把握できる。
両面テープの保管環境は通常摂氏10度~摂氏40度相対湿度65%RH以下とされるが、表2へ示す通り、両面テープにおける当該保管環境を外れる、摂氏9度相対湿度80%RH及び摂氏50度相対湿度80%RHの保管環境下においても、サンプルa1は上記優れた保持力と剥がれ性を示した。
尚表2へ示すサンプルa1の試験結果に関し、上記温度・相対湿度以外の、OPPのシート材3の寸法や試験の他の条件について前述の「グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件」欄、図2(A)(B)へ記載したものと同様である。
【0048】
【表3】
【0049】
サンプルa1のグリップ領域2を備えた紙管1の夫々について、参考に紙管1の中心角θ(図2(B))を150度としたものと、150度以外とした保持力の各3回の計測結果を表3へ併せて示す。
表3に示す計測試験の各データにおいても、サンプルa1の樹脂エマルジョン:水=90:10となるよう希釈して噴霧し乾燥させ、試験環境について摂氏23度・相対湿度50%RHとした。表3へ示す通り上記中心角θを150度として、200N未満ではOPPのシート材3を引き剥がすことができない保持力を示すことが確認できた。
また、上記中心角θを120度としても、何れも200N未満ではOPPのシート材3を引き剥がすことができない保持力を示し、中心角θが90度ではOPPのシート材3の引き剥がしに140N~170Nの範囲の力を要することが確認できた。
尚表2へ示すサンプルa1の試験結果に関し、OPPのシート材3の寸法や試験の中心角θを150度以外とする場合も、OPPのシート材3の寸法や試験の他の条件については前述の「グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件」欄、図2(A)(B)へ記載したものと同様である。
【0050】
【表4】
【0051】
また参考に表4へ、サンプルa1の樹脂液について、水への希釈比率を変えることで乾燥後の上記樹脂層の付着量を調整し、保持力と剥がれ性を計測した結果を示す。表4へ示すデータの試験環境についても摂氏23度・相対湿度50%RHとした。
【0052】
【表5】
【0053】
表1のサンプルa2のグリップ領域2を備えた紙管1に関し、上記サンプルa1と同様の、保持力(上記中心角θが150度)と剥がれ性(密着角度0度)について調べた結果を表5へ示す。
表5へ示すデータの試験環境についても摂氏23度・相対湿度50%RHとした。
また、表5において上記中心角θについて90度と120度の計測結果を併せて示す。
【0054】
サンプルa2のグリップ領域2を備えた紙管について3回試験を行ったところ、表5へ示す通り、何れも中心角150度において200N(ニュートン)未満ではOPPのシート材3を引き剥がすことのできない保持力を示すこと、及び、OPPのシート材3の紙管1からの剥離に要した力(剥がれ性)に関し何れも5N以下に収まることが確認できた。尚サンプルa2の紙管1に関し上記中心角120度と90度に設定した場合も、サンプルa1とほぼ同じ結果となることが確認できた。
上記サンプルa2の樹脂に関し、OPPのシート材3の寸法や試験の他の条件については前述の「グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件」欄及び図2(A)(B)へ記載したものと同様である。
【0055】
【表6】
【0056】
また参考に表6へ、サンプルa2の樹脂液について、水への希釈比率を変えることで乾燥後の上記樹脂層の付着量を調整し、保持力と剥がれ性を計測した結果を示す。表6へ示すデータの試験環境についても摂氏23度・相対湿度50%RHとした。
【0057】
【表7】
【0058】
表1のサンプルa3のグリップ領域2を備えた紙管1に関し、上記サンプルa1と同様の、保持力(上記中心角θが150度)と剥がれ性(密着角度0度)について調べた結果を表7へ示す。水に対する希釈比率をサンプルa3のエマルジョン樹脂:水=95:5とする。表7へ示すデータの試験環境について摂氏23度・相対湿度50%RHとした。
また、表7においても上記中心角θについて90度と120度の計測結果を併せて示す。
【0059】
サンプルa3のグリップ領域2を備えた紙管について3回試験を行ったところ、表7へ示す通り、何れも中心角150度において200N(ニュートン)未満ではOPPのシート材3を引き剥がすことのできない保持力を示すこと、及び、OPPのシート材3の紙管1からの剥離に要した力(剥がれ性)に関し何れも5N~10Nの範囲に収まることが確認できた。尚サンプルa3の紙管1に関し上記中心角120度と90度に設定した場合も、サンプルa1,a2とほぼ同じ結果となることが確認できた。
上記サンプルa3の樹脂に関し、OPPのシート材3の寸法や試験の他の条件については前述の「グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件」欄及び図2(A)(B)へ記載したものと同様である。
【0060】
【表8】
【0061】
また参考に表8へ、サンプルa3の樹脂液について、水への希釈比率を変えることで乾燥後の上記樹脂層の付着量を調整し、保持力と剥がれ性を計測した結果を示す。
【0062】
図4へ、サンプルa1の樹脂層によるグリップ領域2を備えた本発明に係る紙管1と従来の両面テープをシート材3の先端を固着する領域とする紙管について、上記樹脂層と両面テープ以外の条件を上記剥がれ性及びグリップ性を試験したサンプルa1の紙管1及びシート材3と同じとして上記の図2(A)へ示す方向へシート材を引っ張ることで剥がしたシート材の外観を示す。図4へ示す通り、サンプルa1の(高グリップ)紙管から、シート材を剥がした場合、シート材(フィルム)と紙管表面の何れもシート材貼り付け前と同様の綺麗な状態であった。即ち紙管表面について破れはなく、シート材について曇りや紙片の引っ付きが見られなかった。一方両面テープの紙管については、図4から、シート材を剥がした後、紙管表面に破れが見られ、シート材に破れた紙屑が付着していることが確認できる。
【0063】
【表9】
【0064】
表1のサンプルb1及びサンプルb2に関する保持力及び剥がれ性の試験結果について、表9へ示す。
表9へ示す試験結果から、グリップ領域2を構成する前記樹脂層に関し、ガラス転移温度の範囲を摂氏-10度以上摂氏0度以下とするサンプルa1~a3のほうが、ガラス転移温度の範囲を当該範囲外の(夫々摂氏-30度、摂氏-60度とする)サンプルb1、b2よりも剥がれ性に優れていることが把握できる。
サンプルb1及びサンプルb2の樹脂に関し、ガラス転移温度以外の、OPPのシート材3の寸法や試験の他の条件(温度・相対湿度を含む。)は表1、表3~表8のサンプルa1~a3と同様、前述の「グリップ領域2の樹脂層を構成する樹脂の条件」欄及び図2(A)(B)で記載したものと同じである。
【0065】
(試験結果の総括)
上記表1~表3、表5、表7及び図4へ示すサンプルa1~a3のグリップ領域2を備えた紙管1の試験結果から、本発明にあっては、剥がれ性の良好な即ちタック性の抑えられた、優れたグリップ性の、高グリップ紙管を提供できることが把握できた。
特にサンプルb1,b2は、グリップ性(保持力)について、サンプルa1~a3と比べ遜色ないものの、剥がれ性について、ガラス転移温度を摂氏-10度以上摂氏0度以下の範囲内とするサンプルa1~a3のほうが、当該範囲外であるサンプルb1,b2に比べて、シート材3の剥離に要する力を確実に20N以下に抑えている点で、タック性をより確実に排除していると言える。
【符号の説明】
【0066】
1 紙管
2 グリップ領域
3 シート材
4 プラズマ照射装置
5 インクジェット装置
6 スプレー塗付装置
7 セパレータ貼着装置
8 コンベヤ
図1
図2
図3
図4