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特開2024-88175直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法
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  • 特開-直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088175
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240625BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12P19/34 A ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203221
(22)【出願日】2022-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、[再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業]「遺伝子・細胞治療用ベクターのプラットフォーム製造技術開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西 輝之
(72)【発明者】
【氏名】前田 博文
(72)【発明者】
【氏名】水口 和信
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CC30
4B064CE02
4B064CE11
4B064DA20
(57)【要約】
【課題】直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中のエンドトキシンが低減された、高効率で、簡便に生産可能な、安全性の高い、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、
(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、
(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、
を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法。
【請求項2】
(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、
(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、
及び、
(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、
を含むことを特徴とするエンドトキシン低減方法。
【請求項3】
(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、
(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、
及び、
(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、
を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織や細胞に対する遺伝子送達技術において、DNAベクターが、非ウイルス性ベクターとして広く使用されている。前記DNAベクターとしては、作製方法が簡易な二本鎖環状プラスミドDNAベクターが一般的に使用されているが、抗生物質耐性タンパク質をコードする遺伝子や複製因子配列といった宿主由来の核酸配列の残存による免疫原性の懸念や、細胞内での目的タンパク質の発現減衰といった課題が依然として残っている。
一方、末端が閉じていない直鎖状の二本鎖DNAベクターは、PCR反応等を用いて簡易に作製することが可能であるが、ヌクレアーゼ耐性に欠けているために細胞内外で速やかに分解されてしまう。
【0003】
これらの課題を解決するために、二本鎖DNAの末端がヘアピン構造で閉じたベクターである、直鎖状共有結合閉鎖DNAの作製方法が報告されている(特許文献1)。前記直鎖状共有結合閉鎖DNAは、一般的な二本鎖環状プラスミドDNAベクターと比較してサイズが小さいために細胞への導入効率が高まること、宿主由来の核酸配列など不必要な塩基配列を含まないために免疫原性等のリスクが抑えられること、高品質な遺伝子送達が期待されること、細胞内での目的タンパク質の発現持続が期待されることから非常に有益である。そのため、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの革新的な作製技術を開発することが出来れば、幅広い産業展開が期待できる。
【0004】
しかしながら、大腸菌を用いてin vivo環境下で鋳型となるDNAを増幅し、直鎖状共有結合閉鎖DNAを作製する場合、大腸菌由来のエンドトキシンが直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中に持ち込まれることが懸念される。また、in vitro環境下で鋳型となるDNAを組換えDNAポリメラーゼによって増幅し、組換え酵素によって処理する方法で直鎖状共有結合閉鎖DNAを作製する場合でも、使用する組換えDNAポリメラーゼ及び組換え酵素液に含まれるエンドトキシンが直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中に持ち込まれることが懸念される。
【0005】
大腸菌を用いた二本鎖環状プラスミドDNAの作製方法において、界面活性剤を用いたエンドトキシン除去方法が開示されているが、二本鎖環状プラスミドDNAでない直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中におけるエンドトキシン除去方法については全く検討されていない(特許文献2及び3)。また、二本鎖環状プラスミドDNAからエンドトキシンを除去するキットが市販されているが、これらはTriton(登録商標)を使用するものであり、前記Triton(登録商標)は、REACH規制の対象となっており、安全に使用することが難しい(非特許文献1)。したがって、直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中のエンドトキシンが低減された、高効率で、簡便に生産可能な、安全性の高い、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法は知られておらず、これらの提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2022/209987号
【特許文献2】特表2003-525630号公報
【特許文献3】特許第4113580号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J Pharm Sci. 2021 110(7):2609-2624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中のエンドトキシンが低減された、高効率で、簡便に生産可能な、安全性の高い、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とするエンドトキシン低減方法、又は(a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法により、直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中のエンドトキシンが低減された、高効率で、簡便に生産可能な、安全性の高い、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法が提供できることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下のとおりである。すなわち、
<1> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法である。
<2> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とするエンドトキシン低減方法である。
<3> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、直鎖状共有結合閉鎖DNA溶液中のエンドトキシンが低減された、高効率で、簡便に生産可能な、安全性の高い、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、エンドトキシン低減方法、及び直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、製造例1-2における、pRC2-mi342_telRL_ara_TelNのベクターマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法)
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法は、(a)接触工程、(b)溶出工程、及び(c)混合工程、又は、洗浄工程を含み、さらに、その他の工程を含むことができる。
【0014】
前記直鎖状共有結合閉鎖DNA(linear covalently closed DNA)とは、末端がヘアピン構造で閉じた構造を有する直鎖状の二本鎖DNAであり、LCC DNAと略される。また、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAは、Doggybone DNA(dbDNA)やMinistring DNA(msDNA)、Closed end DNA(ceDNA)とも称される。
【0015】
-(a)接触工程-
前記接触工程は、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる工程である。
【0016】
前記微生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細菌、酵母、ウイルスなどが挙げられる。これらの中でも、細菌が好ましい。
前記細菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌などが挙げられる。これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、グラム陰性菌が好ましく、大腸菌がより好ましい。
【0017】
前記大腸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Eschericia属が好ましく、Eschericia coliがより好ましく、Eschericia coli K-12株、Eschericia coli B株などがさらに好ましい。また、市販の大腸菌株や、生物資源リソースセンターの大腸菌株を使用することができる。
【0018】
前記市販の大腸菌株や生物資源リソースセンターの大腸菌株としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JM109株、DH5株、DH5α株、DH10B株、NEB10β株、NEBstable株、HST08株、HST16CR株、HB101株、W3110株、MG1655株、BL21株、BL21 DE3株などが挙げられる。これらの株は、New England Biolabs社、タカラバイオ株式会社、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、東洋紡株式会社、ATCC(American Type Culture Collection)、NBRP(National Bio Resource Project)などから入手することができる。
また、本発明においては、これら大腸菌株からの誘導株も使用でき、例えばメチオニン要求性であればJW3973株(NBRPより入手可能)、ロイシン要求性であればJW2806株(NBRPより入手可能)、システイン要求性であればJW3582株(NBRPより入手可能)、チアミン及びヒスチジン要求性であればME5305株(NBRPより入手可能)などが挙げられる。
【0019】
前記微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを発現させた微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAなどが挙げられる。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを発現させた微生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロテロメラーゼをコードする核酸配列と、前記プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列と、前記一対の核酸配列の間に位置し、目的タンパク質をコードする核酸配列と、を有し、さらにその他の配列を有することができる、直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターで前記微生物を形質転換した微生物などが挙げられる。
【0020】
<プロテロメラーゼをコードする核酸配列>
本発明において「プロテロメラーゼ」とは、直鎖状共有結合閉鎖DNAを作製するために、二本鎖DNA分子における特定のパリンドローム様配列(プロテロメラーゼが認識する核酸配列)を認識して、その認識配列内又はその近傍の位置で二本鎖DNA分子を切断し、切断された末端における5’末端と3’末端とを再結合して共有結合閉鎖末端(covalently closed end)を形成させる活性を有するポリペプチドを指す。
【0021】
前記プロテロメラーゼとしては、上記機能を有しているポリペプチドであれば特に限定されないが、例えば、Agrobacterium fabrum由来のプロテロメラーゼ(TelAプロテロメラーゼ、ACCESSION No. AAK88254)、Halomonas virus HAP1由来のプロテロメラーゼ(ACCESSION No. ABY90402)、Vibrio virus VP882由来のプロテロメラーゼ(ACCESSION No. ABM73418)、Klebsiella phage phiKO2由来のプロテロメラーゼ(TelKプロテロメラーゼ、ACCESSION No. AAR83042)、Rhizobium pusense由来のプロテロメラーゼ(ACCESSION No. QKJ91773)、Feldmannia species virus由来のプロテロメラーゼ(ACCESSION No. ACH46812)、Vibrio phage vB_VpaM_MAR由来のプロテロメラーゼ(ACCESSION No. AFV81380)、Yersinia phage PY54由来のプロテロメラーゼ(Telプロテロメラーゼ、ACCESSION No. CAD91792)、Escherichia virus N15由来のプロテロメラーゼ(TelNプロテロメラーゼ、ACCESSION No. AAB81106)、又はこれらの変異体などが挙げられる。
【0022】
また、本来プロテロメラーゼであったが、人為的な改変あるいは変異によりその機能を喪失したプロテロメラーゼも、本発明におけるプロテロメラーゼに包含される。
【0023】
これらの中でも、TelAプロテロメラーゼ、TelKプロテロメラーゼ、Telプロテロメラーゼ、TelNプロテロメラーゼ、又はその変異体が好ましく、TelNプロテロメラーゼ、又はその変異体がより好ましい。
【0024】
前記変異体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、元のアミノ酸配列との相同性が、80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましく、99%以上のものが特に好ましい。
【0025】
本発明において「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸がペプチド結合したものを指し、タンパク質の他、ペプチドやオリゴペプチドと呼ばれる鎖長の短いものが含まれる。
【0026】
本発明において「プロテロメラーゼをコードする核酸配列」とは、プロテロメラーゼを構成するアミノ酸配列からなるポリペプチドに対して、コドン表に基づいて設計された核酸配列を指し、該核酸配列は、転写及び翻訳によってポリペプチドの生成をもたらす。
【0027】
前記プロテロメラーゼをコードする核酸配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、TelAプロテロメラーゼ、TelKプロテロメラーゼ、Telプロテロメラーゼ、TelNプロテロメラーゼ、又はその変異体をコードする核酸配列が好ましく、TelNプロテロメラーゼ、又はその変異体をコードする核酸配列がより好ましく、配列番号1で表される核酸配列、又はその変異体がさらに好ましい。
【0028】
前記変異体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、元の核酸配列との相同性が、80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましく、99%以上のものが特に好ましい。
【0029】
<プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列>
本発明において「プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列」とは、直鎖状共有結合閉鎖DNAを作製するために、プロテロメラーゼが認識し、その部位を切断し、末端が再結合される核酸配列の対を指す。
【0030】
前記プロテロメラーゼが認識する核酸配列としては、例えば、特定のパリンドローム様配列が挙げられ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、TelAプロテロメラーゼが認識する核酸配列、TelKプロテロメラーゼが認識する核酸配列、Telプロテロメラーゼが認識する核酸配列、又はTelNプロテロメラーゼが認識する核酸配列が好ましく、TelNプロテロメラーゼが認識する核酸配列がより好ましく、配列番号2で表される核酸配列(telRL配列)、又はその変異体がさらに好ましい。
【0031】
前記変異体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、元の核酸配列との相同性が、80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましく、99%以上のものが特に好ましい。
【0032】
<目的タンパク質をコードする核酸配列>
前記目的タンパク質をコードする核酸配列は、プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列の間に位置する核酸配列である。
すなわち、前記目的タンパク質をコードする核酸配列の前には、プロテロメラーゼが認識する核酸配列が存在し、前記目的タンパク質をコードする核酸配列の後にも、プロテロメラーゼが認識する核酸配列が存在する。
【0033】
前記目的タンパク質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、動物、植物、菌類、藻類、細菌、ウイルスなどが産生するポリペプチド、及びこれらの部分ペプチド、並びにウイルスを構成するポリペプチドなどが挙げられる。これらは、細胞・遺伝子治療薬、ワクチン、疾患治療薬などとして使用することができる。
【0034】
<その他の配列>
前記その他の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LacI遺伝子やAraC遺伝子等のアクチベーター又はレプレッサータンパク質をコードする核酸配列、前記プロテロメラーゼの発現を制御するための核酸配列、1つ以上の制限酵素認識部位を含むクローニングサイト、Clontech社のIn-FusionクローニングシステムやNew England Biolabs社のGibson Assemblyシステム等を利用するためのオーバーラップ領域、抗生物質耐性タンパク質をコードする核酸配列等の選択マーカー遺伝子の核酸配列などが挙げられる。前記クローニングサイト、オーバーラップ領域、選択マーカー遺伝子の核酸配列などの配列は、これらの配列を付加可能な形態(例えば、これらの配列を付加可能な1つ以上の制限酵素認識部位を含むクローニングサイトを含む形態)の核酸分子であってもよい。
【0035】
前記LacI遺伝子配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号3で表される核酸配列、又はその変異体が好ましい。
前記AraC遺伝子配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、配列番号4で表される核酸配列、又はその変異体が好ましい。
【0036】
前記変異体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、元の核酸配列との相同性が、80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましく、99%以上のものが特に好ましい。
【0037】
本発明において「発現を制御するための核酸配列」とは、「プロモーター」とも呼ばれ、前記ポリペプチドをコードする核酸配列の上流に位置する核酸配列領域を指し、RNAポリメラーゼのほか、転写の促進や抑制に関わる様々な転写調節因子が該領域に結合又は作用することによって鋳型である前記ポリペプチドをコードする核酸配列を読み取って相補的なRNAを合成(転写)する。
【0038】
前記発現を制御するための核酸配列としては、選択した条件にて発現が起こりうる配列であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱誘導プロモーター(lambda PR、lambda PLなど)、アラビノース誘導プロモーター(araBADプロモーターなど)、IPTG誘導プロモーター(LACプロモーター、LACUV5プロモーター、TACプロモーター、Trcプロモーター、LPPプロモーターなど)、T7プロモーター、低温誘導プロモーター(cspAプロモーターなど)、Trpプロモーター、ラムノース誘導プロモーター(rhaTプロモーターなど)、proUプロモーター、prpBプロモーター、phoAプロモーター、recAプロモーター、tetAプロモーター、cadAプロモーター、又はこれらの変異体等が挙げられる。
【0039】
前記変異体の取得方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、アクチベーター又はレプレッサーが結合する核酸配列を置換、挿入、付加、又は欠失させる方法、転写因子が結合する核酸配列を置換、挿入、付加、又は欠失させる方法、RNAポリメラーゼが結合する核酸配列を置換、挿入、付加、又は欠失させる方法、リボソームが結合する核酸配列を置換、挿入、付加、又は欠失させる方法、メッセンジャーRNAの安定化を向上又は低下させるために転写開始点から開始コドンまでの核酸配列を置換、挿入、付加、又は欠失させる方法、前記核酸配列をライブラリ化してスクリーニングする方法、複数のプロモーターを連結、融合させる方法などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、IPTG誘導プロモーター、アラビノース誘導プロモーターが好ましく、アラビノース誘導プロモーターがより好ましく、配列番号5で表される核酸配列、又はその変異体がさらに好ましい。
【0041】
前記変異体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、元の核酸配列との相同性が、80%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましく、99%以上のものが特に好ましい。
【0042】
<直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターの作製方法>
前記直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターの作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、全合成法、PCR法、Clontech社のIn-FusionクローニングシステムやNew England Biolabs社のGibson Assembly システムなどを使用する方法が挙げられる。
【0043】
前記抽出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ-SDS法などが挙げられる。
前記アルカリ-SDS法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微生物を、P1バッファー(キアゲン社、50mM Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)-HCl,10mM EDTA,pH8.0)で懸濁し、懸濁液にP2バッファー(キアゲン社、200mM NaOH,1%(w/v)SDS)を添加し、穏やかに混合し、混合液にP3バッファー(キアゲン社、3M Potassium acetate,pH5.5)を添加し、穏やかに混合し、混合液を室温で30分間静置し、0.22μmフィルター(AGCテクノグラス株式会社)で濾過する方法などが挙げられる。
【0044】
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液としては、直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、さらにエンドトキシンを含有する液が好ましい。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液が、前記エンドトキシンを含有する場合は、後述の、(c)混合工程、又は、洗浄工程により、前記エンドトキシンを低減することができる。
【0045】
前記エンドトキシンとは、大腸菌などのグラム陰性菌の外膜に存在するリポ多糖である。大腸菌から二本鎖環状プラスミドDNAなどを精製する場合は、しばしば多量のエンドトキシンが持ち込まれる。前記エンドトキシンは免疫原性などの望ましくない副反応をもたらす。従って、前記エンドトキシンの濃度を低減することは治療そのものに二本鎖環状プラスミドDNAなどを用いる場合だけでなく、原料として二本鎖環状プラスミドDNAなどを用いる場合においても、極めて重要な課題である。
【0046】
前記陰イオン交換材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン交換樹脂などが挙げられる。
前記陰イオン交換樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセファロースなどが挙げられる。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、ジエチルアミノエチルセルロースが好ましい。
【0047】
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液と前記陰イオン交換材料との接触としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)に、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液をロードする方法などが挙げられる。
【0048】
前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、モノリス型のカラムが好ましい。
前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)は、市販品を使用することもできる。前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)の市販品としては、例えば、キアゲン社のTip-20、Tip-100、Tip-500、BIA Separations社のCIMmultus DEAE 8mLカラムなどが挙げられる。
【0049】
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)へロードする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液をカラムに添加して自然落下(自由落下)させる方法、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液をカラムに添加してポンプなどを用いて吸引落下させる方法、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液をカラムに添加して加圧落下(押圧落下)させる方法などが挙げられる。これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を吸引落下させる方法が好ましい。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を前記陰イオン交換材料を含むカラムに添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分割して添加してもよく、1回で添加してもよく、連続で添加してもよい。
【0050】
-(b)溶出工程-
前記溶出工程は、前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する工程である。
【0051】
前記陰イオン交換材料からの、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの溶出としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液と接触させた、前記陰イオン交換材料に、溶出用溶液を添加する方法などが挙げられる。
【0052】
前記溶出用溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム含有溶液などが挙げられる。
前記塩化ナトリウム含有溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム含有緩衝液などが挙げられる。
前記緩衝液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)、TEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)などが挙げられる。
前記塩化ナトリウムの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1Mから10Mが好ましく、0.1Mから5Mがより好ましく、0.5Mから3Mがさらに好ましく、0.8Mから2Mが特に好ましい。
【0053】
前記陰イオン交換材料に、溶出用溶液を添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)に、溶出用溶液をロードする方法などが挙げられる。
【0054】
前記溶出用溶液を前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)へロードする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記溶出用溶液をカラムに添加して自然落下(自由落下)させる方法、前記溶出用溶液をカラムに添加してポンプなどを用いて吸引落下させる方法、前記溶出用溶液をカラムに添加して加圧落下(押圧落下)させる方法などが挙げられる。これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記溶出用溶液を吸引落下させる方法が好ましい。
前記溶出用溶液を前記陰イオン交換材料を含むカラムに添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分割して添加してもよく、1回で添加してもよく、連続で添加してもよい。
【0055】
-(c)混合工程、又は、洗浄工程-
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法は、混合工程、又は、洗浄工程を含むが、これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、洗浄工程を含むことが好ましい。
【0056】
--混合工程--
前記混合工程は、前記接触工程前に、前記微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液と非イオン性界面活性剤を混合する工程である。
【0057】
前記非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エステル型非イオン性界面活性剤、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド、高級アルコールなどが挙げられる。前記非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、エステル型非イオン性界面活性剤、エステルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド、高級アルコールが好ましく、エステルエーテル型非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0058】
前記エステル型非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0059】
前記エーテル型非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、安全性の点から、オクチルフェノールエトキシレートを含まないことが好ましく、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含まないことがより好ましい。
前記オクチルフェノールエトキシレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Nonidet(登録商標) P-40、Igepal(登録商標)CA 630などが挙げられる。
【0060】
前記エステルエーテル型非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点、安全性の点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0061】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポリソルベート21(Tween(登録商標)21)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、ポリソルベート61(Tween(登録商標)61)、ポリソルベート65(Tween(登録商標)65)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート81(Tween(登録商標)81)、ポリソルベート85(Tween(登録商標)85)などが挙げられる。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート80、又はポリソルベート81が好ましく、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、又はポリソルベート80がより好ましく、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、又はポリソルベート80がさらに好ましく、ポリソルベート20、ポリソルベート40、又はポリソルベート80がよりさらに好ましく、ポリソルベート20、又はポリソルベート80が特に好ましく、ポリソルベート20が最も好ましい。
【0062】
前記アルカノールアミド型イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEAなどが挙げられる。
【0063】
前記アルキルグリコシドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシドなどが挙げられる。
【0064】
前記高級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数が12から30のアルコールなどが挙げられる。
前記炭素数が12から30のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
【0065】
前記非イオン性界面活性剤の濃度(混合後の濃度)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、0.001%(v/v)以上が好ましく、0.002%(v/v)以上がより好ましく、0.003%(v/v)以上がさらに好ましく、0.004%(v/v)以上が特に好ましく、0.0045%(v/v)以上が最も好ましい。
前記非イオン性界面活性剤の濃度(混合後の濃度)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点、残存する非イオン性界面活性剤による細胞毒性等を低減する点、及び非イオン性界面活性剤自体のミセル化を抑制する点から、5%(v/v)以下が好ましく、1%(v/v)以下がより好ましく、0.5%(v/v)以下がさらに好ましく、0.1%(v/v)以下がよりさらに好ましく、0.05%(v/v)以下が特に好ましく0.02%(v/v)以下が最も好ましい。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記非イオン性界面活性剤の濃度(混合後の濃度)が、0.001%(v/v)以上5%(v/v)以下が好ましく、0.002%(v/v)以上1%(v/v)以下がより好ましく、0.003%(v/v)以上0.5%(v/v)以下がさらに好ましく、0.004%(v/v)以上0.1%(v/v)以下がよりさらに好ましく、0.0045%(v/v)以上0.05%(v/v)以下が特に好ましく0.0045%(v/v)以上0.02%(v/v)以下が最も好ましい。
【0066】
前記混合の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液と、非イオン性界面活性剤と、を混合する態様、前記微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を非イオン性界面活性剤を含有する溶液で透析する態様などが挙げられる。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を非イオン性界面活性剤を含有する溶液で透析する態様が好ましい。
【0067】
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非イオン性界面活性剤を含む緩衝液などが挙げられる。
前記緩衝液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビストリスプロパンバッファー、Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)バッファー、MOPSバッファー、HEPESバッファー、リン酸バッファーなどが挙げられ、pH調製剤として塩酸、硫酸、酢酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが含まれていてもよく、キレート剤としてEDTA、クエン酸などが含まれていてもよく、金属塩として塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが含まれていてもよく、還元剤としてDTTなどが含まれていてもよく、安定化剤としてアルブミンタンパク質が含まれていてもよい。これらの中でも、TEバッファー(50mM Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)-HCl,10mM EDTA,pH7.2)、TEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)などが好ましい。
【0068】
--洗浄工程--
前記洗浄工程は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する工程である。
【0069】
前記非イオン性界面活性剤は、上述の、--混合工程--に記載のとおりである。
【0070】
前記洗浄としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記陰イオン交換材料に、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液を添加する方法などが挙げられる。
【0071】
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非イオン性界面活性剤を含む緩衝液などが挙げられる。
前記緩衝液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビストリスプロパンバッファー、Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)バッファー、MOPSバッファー、HEPESバッファー、リン酸バッファーなどが挙げられ、pH調製剤として塩酸、硫酸、酢酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが含まれていてもよく、キレート剤としてEDTA、クエン酸などが含まれていてもよく、金属塩として塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが含まれていてもよく、還元剤としてDTTなどが含まれていてもよく、安定化剤としてアルブミンタンパク質が含まれていてもよい。これらの中でも、TEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)、TEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)などが挙げられる。
【0072】
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液における、前記非イオン性界面活性剤の濃度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、0.001%(v/v)以上が好ましく、0.002%(v/v)以上がより好ましく、0.003%(v/v)以上がさらに好ましく、0.004%(v/v)以上が特に好ましく、0.005%(v/v)以上が最も好ましい。
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液における、前記非イオン性界面活性剤の濃度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点、残存する非イオン性界面活性剤による細胞毒性等を低減する点、及び非イオン性界面活性剤自体のミセル化を抑制する点から、5%(v/v)以下が好ましく、1%(v/v)以下がより好ましく、0.5%(v/v)以下がさらに好ましく、0.1%(v/v)以下がよりさらに好ましく、0.05%(v/v)以下が特に好ましく0.02%(v/v)以下が最も好ましい。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液における、前記非イオン性界面活性剤の濃度が、0.001%(v/v)以上5%(v/v)以下が好ましく、0.002%(v/v)以上1%(v/v)以下がより好ましく、0.003%(v/v)以上0.5%(v/v)以下がさらに好ましく、0.004%(v/v)以上0.1%(v/v)以下がよりさらに好ましく、0.005%(v/v)以上0.05%(v/v)以下が特に好ましく0.005%(v/v)以上0.02%(v/v)以下が最も好ましい。
【0073】
前記陰イオン交換材料に、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液を添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)に、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液をロードする方法などが挙げられる。
【0074】
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液を前記陰イオン交換材料を含むカラム(前記陰イオン交換材料を充填したカラム)へロードする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液をカラムに添加して自然落下(自由落下)させる方法、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液をカラムに添加してポンプなどを用いて吸引落下させる方法、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液をカラムに添加して加圧落下(押圧落下)させる方法などが挙げられる。これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液を吸引落下させる方法が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤を含有する溶液を前記陰イオン交換材料を含むカラムに添加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分割して添加してもよく、1回で添加してもよく、連続で添加してもよい。
【0075】
前記非イオン性界面活性剤による洗浄の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、2回以上が好ましい。
高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記非イオン性界面活性剤による洗浄を2回行う場合は、1回目の洗浄における前記非イオン性界面活性剤の濃度と、2回目の洗浄における前記非イオン性界面活性剤の濃度は、同じであるか、又は2回目の洗浄における前記非イオン性界面活性剤の濃度が1回目の洗浄における前記非イオン性界面活性剤の濃度より低いことが好ましい。
【0076】
前記非イオン性界面活性剤による洗浄の前に、非イオン性界面活性剤を含有しない溶液による洗浄を行ってもよい。
高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、前記非イオン性界面活性剤による洗浄の後に、非イオン性界面活性剤を含有しない溶液による洗浄を行うことが好ましい。
【0077】
-その他の工程-
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合工程後の濾過工程、前記洗浄工程後のアルコール沈殿工程、前記洗浄工程後の濾過工程などが挙げられる。
【0078】
--混合工程後の濾過工程--
前記混合工程後の濾過工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、限外濾過膜を用いた限外濾過などが挙げられる。
【0079】
--洗浄工程後のアルコール沈殿工程--
前記洗浄工程後のアルコール沈殿工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール沈殿、エタノール沈殿などが挙げられる。
これらの中でも、高効率で、直鎖状共有結合閉鎖DNAを精製する点から、イソプロパノール沈殿、及びエタノール沈殿を行うことが好ましく、イソプロパノール沈殿の後にエタノール沈殿を行うことがより好ましい。
--洗浄工程後の濾過工程--
前記洗浄工程後の濾過工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、限外濾過膜を用いた限外濾過などが挙げられる。
【0080】
(エンドトキシン低減方法)
前記エンドトキシン低減方法は、(a)接触工程、(b)溶出工程、及び(c)混合工程、又は、洗浄工程を含み、さらに、その他の工程を含むことができる。
【0081】
前記エンドトキシン低減方法における、前記(a)接触工程は、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液が、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液であることを除いて、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(a)接触工程に記載のとおりである。
前記エンドトキシン低減方法における、前記(b)溶出工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(b)溶出工程に記載のとおりである。
前記エンドトキシン低減方法における、前記(c)混合工程、又は、洗浄工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(c)混合工程、又は、洗浄工程に記載のとおりである。
前記エンドトキシン低減方法における、前記その他の工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、その他の工程に記載のとおりである。
【0082】
前記エンドトキシン低減方法において、前記エンドトキシンは、前記非イオン性界面活性剤がエンドトキシン凝集体にインターカレートされることによってモノマーとして水溶液中に分散されることにより、低減される。
微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液が、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液である場合は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法、及び後述の直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法においても、同様である。
【0083】
(直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法)
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法は、(a)接触工程、(b)溶出工程、及び(c)混合工程、又は、洗浄工程を含み、さらに、その他の工程を含むことができる。
【0084】
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法における、前記(a)接触工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(a)接触工程に記載のとおりである。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法における、前記(b)溶出工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(b)溶出工程に記載のとおりである。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法における、前記(c)混合工程、又は、洗浄工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、(c)混合工程、又は、洗浄工程に記載のとおりである。
前記直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法における、前記その他の工程は、上述の、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法における、その他の工程に記載のとおりである。
【実施例0085】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<<製造例1:直鎖状共有結合閉鎖DNA>>
直鎖状共有結合閉鎖DNAは以下のとおり、国際公開第2022/209987号に記載に従い作製した。
【0087】
<製造例1-1:ベクターの調製に用いた各種遺伝子の調製>
ベクターの構築において利用した、Escherichia virus N15由来のプロテロメラーゼ(TelNプロテロメラーゼ)をコードする核酸配列(配列番号1)は、合成DNAをテンプレートにしてPCRで調製した。前記合成DNAは、配列がオーバーラップするように設計された複数のオリゴヌクレオチドを合成し、アニーリング後にDNAリガーゼやDNAポリメラーゼを使って目的の鎖長まで伸長させる方法等によって作製され、各社が提供する人工遺伝子合成サービスを利用することでも入手できる。
【0088】
ベクターの構築において利用した、プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列(telRL配列)は、核酸断片(配列番号2)を全合成した。
【0089】
ベクターの構築において利用した、プロモーターで制御されたAraC遺伝子(配列番号4)は、合成DNAをテンプレートにしてPCRで調製した。前記合成DNAは、配列がオーバーラップするように設計された複数のオリゴヌクレオチドを合成し、アニーリング後にDNAリガーゼやDNAポリメラーゼを使って目的の鎖長まで伸長させる方法等によって作製され、各社が提供する人工遺伝子合成サービスを利用することでも入手できる。
【0090】
ベクターの構築において利用した、アラビノース誘導プロモーターは、核酸断片(配列番号5)を全合成した。
【0091】
TelNプロテロメラーゼをコードする核酸配列はプライマー1(配列番号6 フォワードプライマー)及びプライマー2(配列番号7 リバースプライマー)、プロモーターで制御されたAraC遺伝子はプライマー3(配列番号8 フォワードプライマー)及びプライマー4(配列番号9 リバースプライマー)を用いてPCRで調製した。
【0092】
前記PCRには、Prime STAR MAX DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)等を用い、反応条件は添付のマニュアルに記載の方法で行った。
【0093】
<製造例1-2:パッケージング遺伝子を有するベクターの構築>
製造例1-2において、大腸菌の形質転換に用いるプラスミドは、構築したベクターで大腸菌E.coli DH5αコンピテントセル(9057、タカラバイオ株式会社)を形質転換し、得られた形質転換体を培養して増幅することによって調製した。プラスミド保持株からのプラスミドの調製は、FastGene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティクス株式会社)を用いて行った。
【0094】
プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列(telRL配列)の核酸断片(配列番号2)を全合成にて調製し、pRC2-mi342(タカラバイオ株式会社)のEcoRVサイト及びSnaBIサイトに挿入して、pRC2-mi342_telRLを構築した。
次に、TelNプロテロメラーゼをコードする核酸配列(配列番号1)をプライマー1(配列番号6)及びプライマー2(配列番号7)を用いたPCRにより核酸断片を調製し、プロモーターで制御されたAraC遺伝子(配列番号4)をプライマー3(配列番号8)及びプライマー4(配列番号9)を用いたPCRにより核酸断片を調製し、アラビノース誘導プロモーターの核酸断片(配列番号5)を全合成にて調製し、それぞれをpRC2-mi342_telRLのSmaIサイトに挿入して、pRC2-mi342_telRL_ara_TelNを構築した(図1)。
【0095】
前記pRC2-mi342_telRL_ara_TelNベクターは、直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターであり、TelNプロテロメラーゼがアラビノース誘導プロモーター制御下で発現するように設計されている。また、前記プロテロメラーゼが認識する一対の核酸配列としてtelRL配列を用い、パッケージングタンパク質をコードする核酸配列(Rep:配列番号10、Cap:配列番号11)が前記telRL配列の間に位置している。
【0096】
図1のRepはアデノ随伴ウイルスのパッケージングタンパク質Repをコードする核酸配列である。図1のCapはアデノ随伴ウイルスのパッケージングタンパク質Capをコードする核酸配列である。
【0097】
<製造例1-3:形質転換大腸菌の取得>
製造例1-2で構築した直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターpRC2-mi342_telRL_ara_TelNを用いて、以下のように大腸菌を形質転換した。
【0098】
大腸菌NEB10β株のコンピテントセル(New England Biolabs社、C3019H)溶液25μLと、100pgの前記pRC2-mi342_telRL_ara_TelNを含む、直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクター溶液を混合し、氷上で30分間静置した。
30分間静置後、42℃45秒間熱処理し、氷上で2分間静置した。
【0099】
2分間静置後、SOC培地225μLを添加し、大腸菌をLB寒天培地(1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)乾燥酵母エキス、1%(w/v)塩化ナトリウム、0.005%(w/v)カルベニシリン二ナトリウム(ナカライテスク株式会社))に塗布し、37℃1日間の静置培養で生育する株を選択し、前記直鎖状共有結合閉鎖DNA作製用ベクターで形質転換された大腸菌を取得した。
【0100】
<製造例1-4:形質転換大腸菌の培養>
製造例1-3で得られた形質転換大腸菌を、2mLのプラスグロウII培地(4%(w/v)Plusgrow II(ナカライテスク株式会社)、0.005%(w/v)カルベニシリン二ナトリウム)に接種し、これを37℃、6時間振盪培養後、前培養液を得た。
600mLのプラスグロウII培地(4%(w/v)Plusgrow II、0.005%(w/v)カルベニシリン二ナトリウム)に、前培養液を1200μL植継ぎ、これを37℃、16時間振盪培養した。
【0101】
16時間振盪培養後、600mLのプラスグロウII培地(4%(w/v)Plusgrow II、0.005%(w/v)カルベニシリン二ナトリウム)及び12mLのアラビノース溶液(10%(w/v)アラビノース)を添加し、これを37℃、1時間振盪培養した。1時間振盪培養後、遠心分離により菌体を回収した。これにより、直鎖状共有結合閉鎖DNAを有する湿菌体を取得した。
【0102】
<実施例1>
(実施例1-1:微生物からの直鎖状共有結合閉鎖DNAの抽出)
製造例1-4で得られた湿菌体4gをP1バッファー(キアゲン社、50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH8.0)40mLで懸濁した。懸濁液にP2バッファー(キアゲン社、200mM NaOH,1%(w/v)SDS)40mLを添加し、穏やかに混合した。混合液にP3バッファー(キアゲン社、3M Potassium acetate,pH5.5)40mLを添加し、穏やかに混合した。
混合液を室温で30分間静置し、0.22μmフィルター(AGCテクノグラス株式会社)で濾過した。これにより、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液100mLを取得した。
【0103】
(実施例1-2:界面活性剤及び陰イオン交換材料を用いた直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製)
実施例1-1で得られた微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液5mLを陰イオン交換材料を含むカラム(キアゲン社、Tip-100)に供した。
次に1回目の洗浄として、TEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)10mLをカラムに流した。
次に2回目の洗浄として、0.005%(v/v)のTween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)を含むTEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)10mLをカラムに流した。
次に3回目の洗浄として、0.005%(v/v)のTween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)と0.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)10mLをカラムに二度流した。
次に4回目の洗浄として、1.2M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)10mLをカラムに二度流した。
最後に溶出工程として、1.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(10mM Tris-HCl,1mM EDTA,pH7.0)10mLをカラムに流し、溶出液を回収した。
【0104】
回収液10mLにイソプロパノール(ナカライテスク株式会社)8mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットに70%(v/v)エタノール液1.5mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットは1時間室温にて乾燥させた。乾燥後のペレットに200μLの水を添加し、再溶解させた。これにより、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得した。DNAの濃度測定はNano drop(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を使用した。
【0105】
<<カイネティック比色法によるエンドトキシンの評価>>
得られた直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液中のエンドトキシンの評価は、以下のとおり、カイネティック比色法により行った。
Endosafe(登録商標) nexgen-PTSシステム(Charles River社) のPTSカートリッジFDA(0.01-1EU/mL)に、エンドトキシンフリー水(ロンザ社)で100倍希釈した溶液をアプライした。結果を表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
<実施例2>
実施例1において、Tween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)に代えて、Tween 80(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)を使用した以外は、実施例1と同様に直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得し、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表1に示した。
【0108】
<比較例1>
実施例1において、Tween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得し、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表1に示した。
【0109】
<比較例2>
実施例1において、Tween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)に代えて、Sodium Deoxycholate(ナカライテスク株式会社)(イオン性界面活性剤)を使用した以外は、実施例1と同様に直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得し、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表1に示した。
【0110】
<比較例3>
実施例1において、Tween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)に代えて、Sodium cholate(ナカライテスク株式会社)(イオン性界面活性剤)を使用した以外は、実施例1と同様に直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得し、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表1に示した。
【0111】
表1の結果は、非イオン性界面活性剤としてTween 20またはTween 80を使用した場合は、界面活性剤未使用時、またはイオン性界面活性剤としてSodium DeoxycholateまたはSodium cholateを使用した場合と比較して、エンドトキシン値が有意に低減していることを示している。つまり、陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する工程によってエンドトキシンが低減することを示唆している。
【0112】
<実施例3>
(実施例3-1:微生物からの直鎖状共有結合閉鎖DNAの抽出>
製造例1-4で得られた湿菌体8gをP1バッファー(キアゲン社、50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH8.0)80mLで懸濁した。懸濁液にP2バッファー(キアゲン社、200mM NaOH,1%(v/v)SDS)80mLを添加し、穏やかに混合した。混合液にP3バッファー(キアゲン社、3M Potassium acetate,pH5.5)80mLを添加し、穏やかに混合した。混合液に5M 塩化カルシウム液40mLを添加し、穏やかに混合した。
混合液を室温で30分間静置し、0.22μmフィルター(AGCテクノグラス株式会社)で濾過した。これにより、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液200mLを取得した。
【0113】
(実施例3-2:微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液と界面活性剤との混合、及び濾過)
実施例3-1で得られた微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液100mLを0.005%(v/v)のTween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)を含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)2000mLで透析濾過した。装置はAKTA Flux s(Cytiva社)、限外濾過膜はPellicon(登録商標)(メルクミリポア社、2Mini Cassette with Biomax 100kDa,0.1m)を使用した。これにより、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液とTween 20(BioVision社)を混合させ、限外濾過膜を透過しなかった濾過液を80mL取得した。
【0114】
(実施例3-3:陰イオン交換材料を用いた直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製)
実施例3-2で得られた濾過液40mLを陰イオン交換材料を含むカラム(BIA Separations社、CIMmultus DEAE 8mLカラム)に供した。装置はAKTA avant 25(Cytiva社)を使用した。
次に1回目の洗浄として、TEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
次に2回目の洗浄として、0.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
次に3回目の洗浄として、0.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
最後に溶出工程として、1.0M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)20mLをカラムに流した。
【0115】
回収液20mLにイソプロパノール(ナカライテスク株式会社)20mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットに70%(v/v)エタノール液3.0mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットは1時間室温にて乾燥させた。乾燥後のペレットに800μLの水を添加し、再溶解させた。これにより、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得した。
実施例1と同様に、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表2に示した。
【0116】
【表2】
【0117】
<実施例4>
(実施例4-1:微生物からの直鎖状共有結合閉鎖DNAの抽出>
実施例3-1と同様にして、微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を取得した。
【0118】
(実施例4-2:微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液の濾過)
実施例4-1で得られた微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液100mLをTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)2000mLで透析濾過した。装置はAKTA Flux s(Cytiva社)、限外濾過膜はPellicon(登録商標)(メルクミリポア社、2Mini Cassette with Biomax 100kDa,0.1m)を使用した。これにより、限外濾過膜を透過しなかった濾過液を80mL取得した。
【0119】
実施例4-2で得られた濾過液40mLを陰イオン交換材料を含むカラム(BIA Separations社、CIMmultus DEAE 8mLカラム)に供した。装置はAKTA avant 25(Cytiva社)を使用した。
次に1回目の洗浄として、0.01%(v/v)のTween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)を含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
次に2回目の洗浄として、0.007%(v/v)のTween 20(BioVision社)(非イオン性界面活性剤)及び0.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
次に3回目の洗浄として、0.6M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)80mLをカラムに流した。
最後に溶出工程として、1.0M塩化ナトリウムを含むTEバッファー(50mM Tris-HCl,10mM EDTA,pH7.2)20mLをカラムに流した。
【0120】
回収液20mLにイソプロパノール(ナカライテスク株式会社)20mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットに70%(v/v)エタノール液3.0mLを添加混合し、遠心して上清を廃棄した。ペレットは1時間室温にて乾燥させた。乾燥後のペレットに800μLの水を添加し、再溶解させた。これにより、直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得した。
実施例1と同様に、DNAの濃度測定、及びエンドトキシンの評価を行った。結果を表2に示した。
【0121】
表2の結果は、非イオン性界面活性剤としてTween 20を使用することによってエンドトキシン値が低減された直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製液を取得できていることを示している。つまり、陰イオン交換材料に微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を接触させる前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する工程、又は、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する工程によって、エンドトキシンが低減することを示唆している。
【0122】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの精製方法である。
<2> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNA及びエンドトキシンを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とするエンドトキシン低減方法である。
<3> (a)微生物から抽出した直鎖状共有結合閉鎖DNAを含有する液を陰イオン交換材料に接触させる接触工程、(b)前記陰イオン交換材料から前記直鎖状共有結合閉鎖DNAを溶出する溶出工程、及び、(c)前記接触工程前に、前記液と非イオン性界面活性剤を混合する混合工程、又は、前記接触工程後に、前記陰イオン交換材料を非イオン性界面活性剤によって洗浄する洗浄工程、を含むことを特徴とする直鎖状共有結合閉鎖DNAの製造方法である。
図1
【配列表】
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