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特開2024-88177血中LBP抑制用組成物、及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物
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  • 特開-血中LBP抑制用組成物、及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088177
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】血中LBP抑制用組成物、及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240625BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20240625BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240625BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240625BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/15
A23L33/16
A23L2/00 F
A23L2/02 F
A23L2/52 101
A23L2/52
A61K36/81
A61K31/015
A61K33/00
A61K31/122
A61K31/51
A61K31/197
A61P3/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203228
(22)【出願日】2022-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福家 暢夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】中路 重之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD02
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD23
4B018MD53
4B018ME14
4B117LC04
4B117LG09
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK16
4B117LL09
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC83
4C086GA07
4C086GA10
4C086HA02
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4C086NA14
4C086ZC21
4C086ZC23
4C086ZC24
4C086ZC25
4C086ZC29
4C086ZC75
4C088AB48
4C088AC04
4C088MA03
4C088MA06
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC21
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206CB28
4C206GA05
4C206GA36
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZC21
4C206ZC23
4C206ZC24
4C206ZC25
4C206ZC29
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、代謝性エンドトキシン血症を抑制する食事因子を見出すことである。
【解決手段】トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を、血中LBP抑制用組成物又は代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物の有効成分とする。前記有効成分のうち、トマトがより好ましく、生トマト換算量として20g/日以上摂取される態様で摂取される組成物が特に好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を有効成分として含有する、血中LBP抑制用組成物。
【請求項2】
トマトを有効成分として含有し、生トマト換算量として20g/日以上摂取される、血中LBP抑制用組成物。
【請求項3】
トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を有効成分として含有する、代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物。
【請求項4】
トマトを有効成分として含有し、生トマト換算量として20g/日以上摂取される、代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物。
【請求項5】
飲食品の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
飲料又はサプリメントである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
機能性表示食品である、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項8】
特定保健用食品である、請求項5に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、血中リポ多糖結合タンパク質(lipopolysaccharide binding protein;LBP)抑制用組成物、及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物である。
【背景技術】
【0002】
リポ多糖(lipopolysaccharide;LPS)は、グラム陰性細菌の細胞壁外膜の構成成分であり、内毒素(エンドトキシン)として知られている。エンドトキシンは、免疫系細胞を活性化し、炎症性サイトカインを上昇させることが知られている。感染症ではないにも関わらず、血液中にLPSが流入している状態を代謝性エンドトキシン血症という。代謝性エンドトキシン血症によって炎症性サイトカインが上昇した状態が継続すると、生体は慢性炎症の状態になり、生活習慣病、動脈硬化、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、種々の自己免疫病、うつ病、慢性疲労などの慢性疾病の基礎病態となり得ると考えられている。そのため、健康長寿のためには、代謝性エンドトキシン血症を抑制することが重要であると考えられる。
【0003】
また、近年の消費者の健康志向の高まりから、日常の食事等で健康を管理したいという需要があり、セルフメディケーションに有用なサプリメントや機能性食品などが注目されている。血中LPSを抑制する手段についても、サプリメントや機能性食品等の日常で摂取しやすい飲食品が検討されている。
例えば、食物繊維 (非特許文献1)、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸(非特許文献2)、亜鉛(非特許文献3)、総カロテノイドやβ-カロテン(非特許文献4)、グルコラファニン及び/又はスルフォラファン(特許文献1)について、ヒトの血中LPS濃度を低下させる可能性が見出されている。
しかしながら、代謝性エンドトキシン血症を抑制し得る個別の成分については示唆があるものの、どのような食事を摂取すれば代謝性エンドトキシン血症を抑制し得るかは十分に解明されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178805号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fuke N. et al., Nutrients. 2019 Sep. 23;11(10):2277
【非特許文献2】Lopez-Moreno J. et al., J Agric Food Chem. 2017 Sep. 6;65(35):7756-7763
【非特許文献3】Maes M. et al., Neuro Endocrinol Lett. 2008 Dec.;29(6):902-10.
【非特許文献4】Umoh FI. et al., Eur J Nutr. 2016 Mar.;55(2):793-798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑みて、本発明は、代謝性エンドトキシン血症を抑制する食事因子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究の末、血中LBP濃度と負の相関を示す食事因子として、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及びパントテン酸を見出した。血中LBP濃度は血中LPS濃度を反映することか
ら、これらの食事因子が血中LBP濃度を抑制し、また血中LPS濃度を抑制して代謝性エンドトキシン血症抑制し得ることに想到して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通り定義される。
【0008】
<血中LBP抑制用組成物>
本発明の第一の態様である血中LBP抑制用組成物は、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を有効成分として含有する。
好ましい態様において、血中LBP抑制用組成物は、トマトを有効成分として含有し、生トマト換算量として20g/日以上摂取される。
好ましい態様において、血中LBP抑制用組成物は、飲食品の形態である。
好ましい態様において、前記飲食品は、飲料又はサプリメントである。
好ましい態様において、前記飲食品は、機能性表示食品である。
好ましい態様において、前記飲食品は、特定保健用食品である。
【0009】
<代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物>
本発明の第二の態様である代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物は、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を有効成分として含有する。
好ましい態様において、代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物は、トマトを有効成分として含有し、生トマト換算量として20g/日以上摂取される。
好ましい態様において、代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物は、飲食品の形態である。
好ましい態様において、前記飲食品は、飲料又はサプリメントである。
好ましい態様において、前記飲食品は、機能性表示食品である。
好ましい態様において、前記飲食品は、特定保健用食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、代謝性エンドトキシン血症を抑制する食事因子が提供される。健康長寿に有用な日々の食事の参考になるほか、日常で摂取しやすい機能性食品の有効成分としての適用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】血中LPS濃度と、採血前1か月間のトマト摂取量との相関を示すグラフ。
図2】採血前1か月間のトマト摂取量20g/日以上群と20g/日未満群の各血中LPS濃度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0013】
本発明の血中LBP抑制用組成物及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物は、それぞれ、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を有効成分として含有する。これらの食事因子は、一種又は任意の二種以上を含有してもよい。
これらのうち、トマトは、トマト果実を指し、その生の形態でも加工された形態であってもよい。加工された形態としては、加熱、乾燥、濃縮、破砕、搾汁等の処理が施された加工物であってよく、ジュース、ピューレ、ケチャップ等の加工品であってよい。
【0014】
本発明におけるこれらの有効成分は、後述する血中LBP抑制作用を有することが初め
て見出されたものである。
特に、個別の栄養素ではなく野菜であるトマト自体についてその作用効果が見出されたことは意義深い。従前、カロテノイド類については血中LPS濃度を低下させる作用を有することが示唆されていたが(非特許文献4)、特定のカロテノイドについてはそのような知見はなかった。また、トマトには通常はリコピンが含まれるところ、本発明者らの研究では血中リコピン濃度と血中LBP濃度との間には有意な相関は認められなかった。そのため、特定の成分ではなく複合体であるトマト自体についての血中LBP抑制効果及び代謝性エンドトキシン血症抑制効果は、予測できないものである。
【0015】
本発明の血中LBP抑制用組成物及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物における前記有効成分の量は、摂取の態様により適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、好ましくは組成物全体の0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上とするのがよい。有効成分の含量の上限は特に制限されないが、例えば100質量%以下であってよい。
【0016】
また、本発明の血中LBP抑制用組成物及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物における前記有効成分の摂取量は、それぞれ適宜設定されてよい。
例えば、トマトは生トマト換算量として20g/日以上摂取されることが好ましい。
β-クリプトキサンチンは、115μg/日以上摂取されることが好ましい。
カリウムは、2241mg/日以上摂取されることが好ましい。
ビタミンKは、292μg/日以上摂取されることが好ましい。
ビタミンB1は、0.7mg/日以上摂取されることが好ましい。
パントテン酸は、6.2mg/日以上摂取されることが好ましい。
これらの有効成分の摂取量の上限については特に限定されない。
【0017】
また、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及びパントテン酸の栄養因子は、精製された成分として摂取される態様の他に、食材や調味料等に含まれる態様で摂取されてよい。
【0018】
本発明における有効成分であるトマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、又はパントテン酸は、LBP抑制作用を有する。
本明細書において「LBP抑制」とは、本発明の組成物の適用前に比べて適用後に、又は本発明の組成物の適用の場合に非適用の場合に比べて、血中、特に血漿中のLBP濃度を低下させること、又は、血中、特に血漿中のLBP濃度の上昇を抑制する作用をいう。
血中LBPが抑制されたことは、血中LBP濃度を測定してその低下又は上昇抑制を観察することにより評価することができる。
【0019】
また、LBPは生体のLPSへの曝露に伴い産生されるため、血中LPS濃度と血中LBP濃度とは有意に相関して変動することから(Int. J. Obes. 2012 Nov; 36 (11): 1442-1449)、血中LBPが抑制されることは血中LPSが抑制されることを示す。
そのため、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、又はパントテン酸は、血中LPS抑制作用を有し、すなわち代謝性エンドトキシン血症抑制作用を有する。
本明細書において「代謝性エンドトキシン血症抑制」とは、本発明の組成物の適用前に比べて適用後に、又は本発明の組成物の適用の場合に非適用の場合に比べて、血中、特に血漿中のLPS濃度を低下させること、又は、血中、特に血漿中のLPS濃度の上昇を抑制する作用をいう。そのため「代謝性エンドトキシン血症抑制」は「血中LPS抑制」と言い換えてもよい。なお、通常、かかる作用は細菌による感染を伴わない場合を包含する。
代謝性エンドトキシン血症が抑制されたことは、血中LPS濃度又は血中LBP濃度を
測定してその低下又は上昇抑制を観察することにより評価することができる。
【0020】
本発明の血中LBP抑制用組成物及び代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物は、血中LBP又はLPSが高値であることに関連する疾患や状態の予防及び/又は改善に有用となり得る。例えば、生活習慣病(肥満症、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、脂肪肝炎、脳卒中、心臓病)、動脈硬化、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、種々の自己免疫病(関節リウマチ、乾癬、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性腎炎、潰瘍性大腸炎、紅班性狼瘡、シェーグレン症候群など)、うつ病、慢性疲労などの慢性疾病、等の予防及び/又は改善に効果が期待される。
【0021】
本発明の第一の態様の別の側面は、血中LBP抑制用組成物の製造における、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸の使用である。
また別の側面は、血中LBP抑制における、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸の使用である。
また別の側面は、血中LBP抑制のために用いられる、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸である。
また別の側面は、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を摂取すること又は対象に投与することを含む、血中LBPを抑制する方法である。
【0022】
本発明の第二の態様の別の側面は、代謝性エンドトキシン血症抑制用組成物の製造における、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸の使用である。
また別の側面は、代謝性エンドトキシン血症抑制における、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸の使用である。
また別の側面は、代謝性エンドトキシン血症抑制のために用いられる、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸である。
また別の側面は、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を摂取すること又は対象に投与することを含む、代謝性エンドトキシン血症を抑制する方法である。
【0023】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象は、動物であれば特に限定されないが、通常は哺乳動物であり、ヒトが好ましい。
なお、「対象に摂取させること」は「対象に投与すること」と同義であってよい。摂取は、自発的なもの(自由摂取)であってもよく、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象に前記有効成分を自由摂取させる工程であってもよい。
【0024】
本発明の組成物の摂取(投与)時期や摂取(投与)期間は、特に限定されず、投与対象の状態に応じて適宜選択することができる。
【0025】
本発明の組成物は、それ自体を飲食品や医薬品等の形態としてもよいし、添加物として飲食品や医薬品等に含有させる形態としてもよい。
本発明の組成物の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが、通常は経口である。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物を経口摂取される組成物とする場合は、飲食品の態様とすることが好ましい。
飲食品としては、本発明の効果を損なわず、経口摂取できるものであれば形態や性状は特に制限されず、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸を含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。なお、前記有効成分のうち栄養因子(β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及びパントテン酸)は、食材や調味料に含有される態様で飲食品に配合されてもよい。
【0027】
飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト(発酵乳)類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;サプリメント、調製乳(粉乳、液状乳等を含む)等の栄養組成物;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0028】
なお、飲食品としてサプリメントの形態とする場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤;等に製剤化することができる。かかる製剤化に際しては、後述する医薬品の製剤化に係る成分、担体、及び方法の説明に準ずることができる。
【0029】
また、飲食品の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、トマト、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、及び/又はパントテン酸の他に例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
【0030】
本発明の組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、血中LBP抑制や代謝性エンドトキシン血症抑制の用途が表示された飲食品として提供・販売されることができる。
【0031】
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含
まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0032】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0033】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「血中LPS濃度を低下させる機能性」、「血中LPS濃度の上昇を抑制する機能性」、「血中LPS濃度が高めの人の食生活の改善に役立つ機能性」、「血中LPS濃度が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「血中LPS濃度の上昇が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「血中LBP濃度を低下させる機能性」、「血中LBP濃度の上昇を抑制する機能性」、「血中LBP濃度が高めの人の食生活の改善に役立つ機能性」、「血中LBP濃度が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「血中LBP濃度の上昇が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、「生活習慣病が気になる人の食生活の改善に役立つ機能性」、等が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物は、医薬品の態様とすることもできる。
かかる医薬品としては、血中LBP又はLPSが高値であることに起因する疾患や状態に対して、その予防、改善又は治療のために投与されるものも好ましい。
そのような疾患や状態としては、例えば、生活習慣病(肥満症、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧、脂肪肝炎、脳卒中、心臓病)、動脈硬化、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、種々の自己免疫病(関節リウマチ、乾癬、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性腎炎、潰瘍性大腸炎、紅班性狼瘡、シェーグレン症候群など)、うつ病、慢性疲労などの慢性疾病などが挙げられる。
【0035】
医薬品の投与経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
医薬品の形態としては、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、腸溶性コーティング等により、腸溶剤とすることもできる。非経口投与の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、本発明に係る有効成分の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤
、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出される血中LBP抑制作用又は代謝性エンドトキシン血症抑制作用を有する成分等を併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、通常製剤化に用いる担体を配合して製剤化してもよい。かかる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の医薬品を摂取するタイミングは、例えば食前、食後、食間、就寝前など特に限定されない。
【実施例0037】
<試験例1>研究対象者の血中LBP濃度と摂取食事因子との関連
弘前大学COI研究推進機構の岩木健康増進プロジェクトの健診に参加した20歳以上の男女のうち、評価対象項目に欠損データがない896名を研究対象者とした。
同対象者において「簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)」(株式会社ジェンダーメディカルリサーチ(EBNJAPAN))を用いて評価された、食事因子の摂取量を解析対象とした。BDHQは、栄養素や食品の摂取状態を定量的に、かつ、詳細に調べるための質問票を中心としたシステムであるDHQ(自記式食事歴法質問票:self-administered diet history questionnaire)の簡易版である。
また、同対象者において採取した血液について、血中カロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、リコピン)濃度、ビタミンA濃度、及びビタミンE濃度を測定し、解析対象とした。測定は、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用い、既報 (Oshima S., et al., J Nutr. 1997 Aug;127(8):1475-9.) に準じて測定した。HPLC分析では、C30カロテノイドカラム、photodiode array検出器(Prominence LC-30AD/Nexera X2 SPPD-M30A、島津製作所)を用いた。
また、同対象者において採取した血液について、測定キット(R01K02、シマ研究所)を用い手測定した、ビタミンC濃度を解析対象とした。
また、同対象者において採取した血液の血漿について、ELISAキット(LBP, soluble mouse ELISA kit # ALX-850-305-KI0, Enzo Life sciences, Farmingdale, NY)を用いて測定した、血中LBP濃度を解析対象とした。
【0038】
研究対象者の血中LBP濃度を目的変数とし、各食事因子の摂取量又は血中濃度、年齢、性別、ボディマス指数(BMI)、喫煙習慣の有無、飲酒習慣の有無、エネルギー摂取量(残渣法)、エネルギー摂取量(BDHQ)を説明変数とした重回帰分析を実施した。有意差検定は統計解析ソフトRにて行った。
【0039】
表1に結果を示す。
血中LBP濃度と、β-クリプトキサンチンの血中濃度、又はカリウム、ビタミンK、ビタミンB1、パントテン酸、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カブ、若しくはトマトの摂取量との間に、有意な負の関連が見られた。なお、血中LBP濃度と血中リコピン濃度との間には、有意な相関は見られなかった。
血中LPS濃度は、血中LBP濃度と有意に相関して変動する(Int. J. Obes. 2012 Nov; 36 (11): 1442-1449)。そのため、試験例1の結果から、β-クリプトキサンチン、カリウム、ビタミンK、ビタミンB1、パントテン酸、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カブ、及び/又はトマトが、血中LBP濃度を抑制し、また血中LPS濃度を抑制して代謝性エンドトキシン血症抑制作用を有することが示唆された。
【0040】
【表1】
【0041】
<試験例2>トマト摂取量と血中LPS濃度との関連
年齢が20歳以上の男女25名を研究対象者とした。
同対象者において空腹時に採取した血液の血漿について、LPS測定試薬(エンドスペシーES―50M、生化学工業株式会社)を用いて測定した血中LPS濃度を解析対象とした。
また、同対象者に、採血前1か月間の食習慣を振り返ってBDHQを用いて食事因子の摂取量を回答してもらい、解析対象とした。
研究対象者の血中LPS濃度と、採血前1か月間のトマト摂取量との相関解析を実施した。また、研究対象者を採血前1か月間のトマト摂取量が20g/日以上群と20g/日未満群とで分けて、血中LPS濃度を比較した。
【0042】
図1に示すように、研究対象者の血中LPS濃度と、採血前1か月間のトマト摂取量との間に、有意な負の相関が認められた(スピアマンの積率相関係数:-0.506、p=0.02)。
図2に示すように、採血前1か月間のトマト摂取量が20g/日以上群では、20g/日未満群に比べて血中LPS濃度が有意に低かった(Mann-Whitney test、p=0.005)。
試験例2の結果から、トマトを摂取すること、特に20g/日以上のトマトを摂取する
ことにより、血中LPS濃度を抑制することができ、代謝性エンドトキシン血症を抑制できることが示唆された。
図1
図2