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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088192
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】印刷システムおよび画面表示方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240625BHJP
   B41J 29/42 20060101ALI20240625BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 213
B41J2/01 303
B41J29/42 F
B41J5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203248
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2C187
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC26
2C056EC71
2C056EC74
2C056FA10
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061CQ04
2C061CQ23
2C061CQ34
2C187AC02
2C187AC08
2C187AE01
2C187AE07
2C187AF03
2C187CD12
2C187CD13
2C187CD19
(57)【要約】
【課題】ユーザが印刷物を直接確認しなくても、印刷物の画像および印刷の進捗を視覚的に把握することできる印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷システム1の備えるプリンタ10は、表示画面81と制御装置90とを備えている。制御装置90が、画像データDT1のうちインクの吐出が完了した範囲(第1吐出完了範囲PA1)を表示画面81に表示することにより、ユーザは、どの画像のどの範囲まで印刷が完了しているのかを視覚的に把握することができる。
【選択図】図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに向けてインクを吐出するインクヘッドと、
前記メディアと前記インクヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、
表示画面と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
印刷する画像の情報である画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データがRIP処理された印刷データを取得する印刷データ取得部と、
前記印刷データのうちインクの吐出が完了した範囲である第1吐出完了範囲を取得する吐出完了範囲取得部と、
前記画像データのうち、前記第1吐出完了範囲に対応する範囲である第2吐出完了範囲を算出する算出部と、
前記第2吐出完了範囲を可視化した吐出完了範囲画像を前記表示画面に表示させる表示部と、を備える印刷システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記印刷データのうちインクの吐出が完了していない範囲である第1吐出未完了範囲と、前記画像データのうち、前記第1吐出未完了範囲に対応する範囲である第2吐出未完了範囲と、を算出し、
前記表示部は、前記第2吐出未完了範囲を可視化した吐出未完了範囲画像と、前記吐出完了範囲画像と、を互いに異なる態様で前記表示画面に表示させる、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記表示部は、前記吐出完了範囲画像および前記吐出未完了範囲画像の前景または背景であるコントラスト画像と、前記吐出完了範囲画像および前記吐出未完了範囲画像と、を重畳表示し、重畳表示される画像のうち、前景となる画像の透明度を変化させて、前記吐出完了範囲画像と、前記吐出未完了範囲画像と、を互いに異なる態様で前記表示画面に表示させる、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記コントラスト画像の色を前記吐出完了範囲画像および前記吐出未完了範囲画像の色に基づいて決定するコントラスト色決定部を備え、
前記表示部は、前記コントラスト色決定部により決定した色により前記コントラスト画像を表示させる、請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記移動機構は、前記メディアと前記インクヘッドとを相対的に主走査方向に移動させるヘッド移動機構であり、
前記印刷データは、前記ヘッド移動機構が前記インクヘッドを主走査方向に移動させる動作であるパス動作を、前記メディアの同一の範囲に対して複数回行うマルチパス動作により印刷されるデータであり、
前記吐出完了範囲取得部は、前記マルチパス動作を完了した範囲を前記第1吐出完了範囲として取得する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記移動機構は、前記メディアと前記インクヘッドとを相対的に主走査方向に移動させるヘッド移動機構であり、
前記印刷データは、前記ヘッド移動機構が前記インクヘッドを主走査方向に移動させる動作であるパス動作を、前記メディアの同一の範囲に対して複数回行うマルチパス動作により印刷されるデータであり、かつ前記マルチパス動作のうち、一部の前記パス動作が完了した範囲である第1マルチパス範囲を有し、
前記算出部は、前記画像データのうち、前記第1マルチパス範囲に対応する範囲である第2マルチパス範囲を算出し、
前記表示部は、前記第2マルチパス範囲を可視化したマルチパス範囲画像と吐出完了範囲画像とをそれぞれ異なる態様で表示させる、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記印刷データは、前記メディアに吐出されたインクの上にインクを重ねて吐出することにより形成される複数のインク層の画像の情報である複数のインク層データを有し、
前記第1吐出完了範囲は、前記インク層データのうち、印刷中のインク層データにおいてインクの吐出が完了した範囲である、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記インク層データのうち、印刷が完了したインク層データである吐出完了インク層データが存在するか否か、を判定する判定部を備え、
前記表示部は、前記判定部により、前記吐出完了インク層データが存在すると判定された場合、前記画像データのうち前記吐出完了インク層データに対応する吐出完了画像層データを可視化した吐出完了インク層画像と、前記吐出完了範囲画像と、を互いに異なる態様にて前記表示画面に表示させる、請求項7に記載の印刷システム。
【請求項9】
印刷する画像の情報である画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データをRIP処理した印刷データを取得する印刷データ取得工程と、
インクを吐出するインクヘッドとメディアとを相対移動させながら前記インクヘッドからインクを吐出する吐出工程と、
前記印刷データのうちインクの吐出が完了した範囲である第1吐出完了範囲を取得する吐出完了範囲取得工程と、
前記画像データのうち前記第1吐出完了範囲に対応する範囲である第2吐出完了範囲を算出する算出工程と、
前記第2吐出完了範囲を可視化した吐出完了範囲画像を表示画面に表示する表示工程と、を含む画面表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび画面表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷に要する時間をユーザが把握することができる印刷システムが知られている。例えば、特許文献1には、実際に印刷を行った時間である実印刷時間を計測する実印刷時間計測部と、実印刷時間を印刷データのファイル名と対応付けて保存する実印刷時間保存部と、表示画面に残りの印刷時間を表示する印刷時間表示部と、を備える印刷システムが開示されている。かかる印刷システムでは、印刷物を印刷する際に、印刷データのファイル名が実印刷時間保存部に保存されているファイル名と同一か否かが判定される。印刷データのファイル名と実印刷時間保存部に保存されているファイル名とが同一であった場合、そのファイル名に対応付けられた実印刷時間に基づいて、残りの印刷時間を印刷時間表示部に表示する。残りの印刷時間が表示画面に表示されることにより、印刷が完了するまでの時間をユーザが把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-123061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような印刷システムの場合、ユーザは、表示画面に表示された印刷時間を見ることにより印刷が完了するまでの時間を把握することができる。しかし、ユーザは、印刷が完了するまでの時間しか把握することができないため、印刷中の印刷物の画像を視覚的に把握することができない。また、ユーザは、印刷物のどの範囲まで印刷が完了しているのかを視覚的に把握することができない。
【0005】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが印刷物を直接確認しなくても、印刷物の画像および印刷の進捗を視覚的に把握することができる印刷システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷システムには、メディアに向けてインクを吐出するインクヘッドと、前記メディアと前記インクヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、表示画面と、制御装置と、を備えている。前記制御装置は、印刷する画像の情報である画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像データがRIP処理された印刷データを取得する印刷データ取得部と、前記印刷データのうちインクの吐出が完了した範囲である第1吐出完了範囲を取得する吐出完了範囲取得部と、前記画像データのうち、前記第1吐出完了範囲に対応する範囲である第2吐出完了範囲を算出する算出部と、前記第2吐出完了範囲を可視化した吐出完了範囲画像を前記表示画面に表示させる表示部と、を備えている。
【0007】
本発明の印刷システムによると、印刷中に、インクの吐出が完了した範囲(第1吐出完了範囲)に対応する範囲(第2吐出完了範囲)の画像(吐出完了範囲画像)が表示画面に表示される。したがって、ユーザは、表示画面を見ることにより、画像データのうちのどの範囲まで印刷が完了しているのかを視覚的に把握することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷物を直接確認しなくても、印刷物の画像および印刷の進捗を視覚的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る印刷システムの概念図である。
図2】第1実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図3】第1実施形態に係るプリンタの正面図である。
図4A】第1実施形態に係る印刷データを示す図である。
図4B】第1実施形態に係る画像データを示す図である。
図4C】第1実施形態に係る表示画面を示す図である。
図5】第1実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図6】第1実施形態に係る印刷の進捗を表示する手順を示すフローチャートである。
図7A】第1実施形態に係るインク吐出前の表示画面を示す図である。
図7B】第1実施形態に係る複数回パスを実行したときの表示画面を示す図である。
図7C】第1実施形態に係る印刷完了時の表示画面を示す図である。
図8】第2実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図9A】第2実施形態に係る印刷データを示す図である。
図9B】第2実施形態に係る画像データを示す図である。
図9C】第2実施形態に係る表示画面を示す図である。
図10図10(a)~図10(c)は、マルチパス動作により印刷する際のプリンタの動きを説明する模式図である。
図11】第2実施形態に係る印刷の進捗を表示する手順を示すフローチャートである。
図12A】マルチパス動作が実行されたときの表示画面を示す図である。
図12B図12Aの後、再度マルチパス動作が実行されたときの表示画面を示す図である。
図13】第3実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
図14A】第3実施形態に係る印刷データを示す図である。
図14B】第3実施形態に係る画像データを示す図である。
図14C】第3実施形態に係る表示画面を示す図である。
図15】第3実施形態に係る印刷の手順の進捗を表示する手順を示すフローチャートである。
図16A】別実施形態に係る画像データを示す図である。
図16B】別実施形態に係る表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概念図である。図1に示すように、印刷システム1は、プリンタ10と、印刷データ作成装置70と、を備えている。印刷システム1では、プリンタ10で印刷される印刷対象の画像データDT1が印刷データ作成装置70により作成される。または、印刷データ作成装置70は、外部から画像データDT1を取り込む。印刷データ作成装置70は、画像データDT1に対してRIP処理を実施し、印刷データPD1を作成する。プリンタ10は、印刷データ作成装置70によって作成された印刷データPD1に基づいて、メディア5に画像データDT1を印刷する。以下、プリンタ10および印刷データ作成装置70について説明する。
【0012】
図2は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、所謂、Roll-to-Rollタイプのインクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、メディア5に印刷を行う。以下の説明では、便宜上、プリンタ10の方向を下記のように定義することとする。プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図3に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、搬送機構20と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド40と、インク供給ユニット50と、表示画面81と、制御装置90と、を備えている。
【0014】
プリンタ10は、メディア5に印刷を行う。メディア5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、メディア5は、シート状のものであってもよい。メディア5は、例えば、記録紙である。ただし、メディア5は、記録紙に限定されない。例えば、メディア5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0015】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシング11Aを有している。プリンタ本体11は、脚12によって支持されている。脚12は、プリンタ本体11の下面に設けられ、当該下面から下方に延びている。
【0016】
プラテン13は、メディア5への印刷の際、メディア5を支持する部材である。プラテン13は、主走査方向Yに延びている。プラテン13には、メディア5が載置される。
【0017】
プラテン13に支持されたメディア5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。なお、搬送機構20の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつガイドレール15よりも下方に設けられ、メディア5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられ、外周形状が円柱状の部材である。グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間にメディア5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことにより、プラテン13上のメディア5は副走査方向Xに搬送される。搬送機構20は、移動機構の一例である。なお、搬送機構20は、メディア5を主走査方向Yに搬送してもよい。
【0018】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられ、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0019】
ヘッド移動機構30は、プラテン13に支持されたメディア5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。ヘッド移動機構30は、移動機構の一例である。なお、ヘッド移動機構30は、メディア5に対してキャリッジ17およびインクヘッド40を副走査方向Xに相対移動させる機構であってもよい。
【0020】
ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。
【0021】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0022】
インクヘッド40はキャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40の数は特に限定されない。本実施形態では、インクヘッド40の数は4つである。4つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。なお、インクヘッド40の数は4つに限定されない。
【0023】
図示は省略するが、インクヘッド40の下面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。これら複数のノズルは、例えば副走査方向Xに並んで配置されている。なお、インクヘッド40から吐出されるインクの色は特に限定されず、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインク、およびクリアインク、ホワイトインク、プライマーインクなどの特色インクのうちの何れかの色のインクを吐出する。また、インクの色は、無色であってもよい。
【0024】
プリンタ10は、プリンタ本体11の右端部に表示パネル80を備えている。表示パネル80は、プリンタ本体11に対して脱着可能なものであってもよい。また、表示パネル80は、必ずしもプリンタ本体11に設けられていなくてもよく、例えば、プリンタ10と通信可能なスマートフォンやタブレット端末などの携帯型の端末によって実現されるものであってもよい。表示パネル80は、表示画面81と、ユーザが操作する操作ボタン82と、を有している。本実施形態において、表示画面81は、タッチパネル式であり、操作ボタン82(アイコン)が、表示画面81に表示されている。表示画面81は、例えば、印刷に関する設定の画面などを表示する。ユーザは、表示画面81の画像を確認しながら、操作ボタン82を操作することにより、所望の印刷を実行することができる。表示画面81は、図4Cに示すように、サムネイル表示領域81aを備えている。印刷が実行されているとき、サムネイル表示領域81aには、後述する吐出完了範囲画像FG1が表示されている。サムネイル表示領域81aの大きさは、特に限定されないが、本実施形態では、縦幅160ピクセル×横幅400ピクセルの大きさである。また、表示画面81には、印刷が完了するまでの残り時間や、プリンタ10の内部の温度の測定値など印刷に関わる情報が表示されていてもよい。表示画面81は、タッチパネル式に限定されない。操作ボタン82が物理的な操作キーによって実現されるものであり、操作ボタン82が表示画面81の外部に設けられていてもよい。
【0025】
図5は、印刷システム1のブロック図である。制御装置90は、メディア5への印刷に関する制御を行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。図3に示すように、制御装置90は、ケーシング11Aの内部に設けられている。ただし、制御装置90は、ケーシング11Aの内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置90は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10が有する基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。
【0026】
図5に示すように、制御装置90は、表示パネル80の表示画面81および操作ボタン82と通信可能に接続されている。制御装置90は、インクヘッド40に通信可能に接続されており、インクヘッド40からのインクの吐出のタイミングや吐出量を制御する。制御装置90は、ヘッド移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)、および搬送機構20(詳しくはフィードモータ23)に通信可能に接続されている。制御装置90は、ヘッド移動機構30を制御することにより、インクヘッド40の主走査方向Yの移動を制御する。また、制御装置90は、搬送機構20を制御することにより、プラテン13に支持されたメディア5の副走査方向Xへの移動を制御する。制御装置90は、画像データ取得部91と、印刷データ取得部92と、総パス数算出部93と、パス数計数部94と、吐出完了範囲取得部95と、算出部96と、表示部97と、コントラスト色決定部98と、を備えている。制御装置90の各部91~98についての詳細は、後述する。
【0027】
以上、本実施形態に係るプリンタ10について説明した。次に、本実施形態に係る印刷データ作成装置70の構成について説明する。ところで、本実施形態に係るプリンタ10を使用してメディア5に印刷する際、図5に示す印刷データPD1に基づいて印刷が行われる。この印刷データPD1は、メディア5に印刷する印刷対象を表す画像データDT1に対してRIP(Raster Image Processor)処理することで得られるラスターデータ、またはビットマップデータのことである。ここで、RIP処理とは、画像データDT1をプリンタ10が出力可能なデータに変換する処理全般を含む。例えば、画像データDT1の解像度を印刷解像度に変換する解像度変換処理や画像データDT1で表現される色をプリンタ10で使用されるインクの色で表現できるように色データを変換する色変換処理、印刷時に吐出されるインク量を調整するインク量調整処理、画像データDT1を2値化するハーフトーン処理等を含む。
【0028】
図1に示すように、印刷データPD1の作成は、印刷データ作成装置70によって行われる。印刷データ作成装置70は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータによって実現されている。印刷データ作成装置70を実現するコンピュータは、プリンタ10に対する専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。なお、印刷データ作成装置70は、プリンタ10の内部に設けられていてもよく、プリンタ10の制御装置90と一体的なものであってもよい。
【0029】
本実施形態にかかる印刷データ作成装置70は、RIP処理を実施することが可能であるとともに、画像データDT1を作成および編集することも可能である。ここで、画像データDT1とは、プリンタ10のインクヘッド40からメディア5にインクが吐出されることにより、メディア5に印刷される画像のことである。画像データDT1には、写真などの画像の他に、図形、記号、文字など、または、画像、図形、記号および文字などの組み合わせたものが含まれる。本実施形態では、画像データDT1は、例えば、PDF(Portable Document Foremat)形式で形成されている。画像データDT1には、カット線が含まれていてもよい。カット線は、例えば、カッターを有するカッティングヘッドを備えたプリンタによって使用される。カッティングヘッドを備えたプリンタは、カッティングヘッドのカッターを使用して、カット線に沿ってメディア5(図2参照)をカットする。
【0030】
図5に示すように、印刷データ作成装置70は、表示装置71と、操作機構72と、印刷管理装置73と、を備えている。表示装置71の種類は特に限定されないが、例えばデスクトップ型またはノート型のコンピュータのディスプレイである。操作機構72の種類も特に限定されない。操作機構72は、例えばコンピュータのキーボードおよびマウスである。操作機構72は、表示装置71に設けられたタッチパネルであってもよい。
【0031】
印刷管理装置73は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばCPUと、ROMと、RAMと、記憶装置などを備えている。印刷管理装置73は、表示装置71および操作機構72と通信可能に接続されている。また、印刷管理装置73は、プリンタ10の制御装置90と通信可能に接続されている。
【0032】
本実施形態では、印刷管理装置73は、画像データ保存部74と、画像データ送信部75と、RIP処理部76と、印刷データ送信部77と、を備えている。印刷管理装置73の各部74~77は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。印刷管理装置73の各部74~77は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0033】
画像データ保存部74は、印刷管理装置73に取り込まれた画像データDT1を取得し、保存する。あるいは、画像データ保存部74は、印刷管理装置73により作成された画像データDT1を保存する。画像データDT1は、ユーザによって予め定められた所定の保存フォルダに保存されるものであってもよい。また、本実施形態では、画像データ保存部74は、画像データDT1を識別するファイル名FLNを画像データDT1とともに保存する。本実施形態では、ファイル名FLNは、画像データDT1の名称として「File1」という情報を有している。
【0034】
画像データ送信部75は、画像データDT1をプリンタ10の備える制御装置90に送信する。本実施形態では、画像データ送信部75は、画像データDT1とともに画像データ保存部74に保存されているファイル名FLNも制御装置90に送信する。
【0035】
RIP処理部76は、RIP処理をするための専用のRIPアプリケーションがインストールされている。ユーザは、RIPアプリケーションを起動して表示装置71に表示させ、操作機構72を介してRIPアプリケーションを操作する。画像データ保存部74が取得した画像データDT1をRIPアプリケーションによりRIP処理することにより、印刷データPD1が作成される。
【0036】
印刷データ送信部77は、RIP処理部76が作成した印刷データPD1をプリンタ10の備える制御装置90に送信する。
【0037】
以上、印刷データ作成装置70の構成について説明した。次にプリンタ10の備える制御装置90の構成について説明する。上述の通り、印刷管理装置73が備える画像データ送信部75から画像データDT1が、印刷データ送信部77から印刷データPD1がそれぞれ制御装置90に送信される。
【0038】
図4Aは、印刷中の印刷データPD1を示す図である。なお、説明の都合上、印刷データPD1が図示されているが、印刷データPD1は、実際には電子情報により形成された電子データである。本実施形態では、印刷データPD1は、黒色の「A」の文字が印刷されるものであり、「A」の文字の外側の範囲は白色である。図4Aに示すように、本実施形態では、印刷データPD1の全範囲に対して第1方向Dxおよび第2方向Dyが設定されている。第1方向Dxと第2方向Dyとは、互いに交差しており、ここでは直交している。第1方向Dxは、プリンタ10における副走査方向X(図2参照)と同じ方向である。第2方向Dyは、プリンタ10における主走査方向Yに(図2参照)と同じ方向である。印刷データPD1は、第1方向DxのDx1からDx2に向かって印刷される。すなわち、Dx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。印刷データPD1は、印刷が完了している範囲である第1吐出完了範囲PA1と、印刷が完了していない範囲である第1吐出未完了範囲PA2とを有している。印刷データPD1は、印刷データ縦長さPD1Xと、印刷データ横長さPD1Yと、を乗じた大きさを有するデータである。印刷データ縦長さPD1Xは、印刷データPD1の第1方向Dxの長さである。印刷データ縦横長さPD1Yは、印刷データPD1の第2方向Dyの長さである。
【0039】
第1吐出完了範囲PA1は、第1吐出完了範囲縦長さPAX1と、第1吐出完了範囲横長さPAY1と、を乗じた大きさを有するデータである。第1吐出完了範囲縦長さPAX1は、第1吐出完了範囲PA1の第1方向Dxの長さである。第1吐出完了範囲横長さPAY1は、第1吐出完了範囲PA1の第2方向Dyの長さである。本実施形態において、第1吐出完了範囲横長さPAY1は、印刷データ横長さPD1Yと等しい。
【0040】
第1吐出未完了範囲PA2は、第1吐出未完了範囲縦長さPAX2と、第1吐出未完了範囲横長さPAY2と、を乗じた大きさを有するデータである。第1吐出未完了範囲縦長さPAX2は、第1吐出未完了範囲PA2の第1方向Dxの長さである。第1吐出未完了範囲横長さPAY2は、第1吐出未完了範囲PA2の第2方向Dyの長さである。本実施形態において、第1吐出未完了範囲横長さPAY2は、印刷データ横長さPD1Yと等しい。境界R1は、第1吐出完了範囲PA1と第1吐出未完了範囲PA2とを区切るものである。すなわち、第1方向Dxにおいて、境界R1より上流側が第1吐出完了範囲PA1である。境界R1より下流側が第1吐出未完了範囲PA2である。印刷データ縦長さPD1Xは、第1吐出完了範囲縦長さPAX1と、第1吐出未完了範囲縦長さPAX2とを足し合わせた長さである。印刷の進行に伴い、第1吐出完了範囲PA1の第1吐出完了範囲縦長さPAX1の長さが長くなり、第1吐出未完了範囲PA2の第1吐出未完了範囲縦長さPAX2の長さが短くなる。このとき、境界R1は、第1方向DxのDx1からのDx2に向かう方向に移動する。
【0041】
図4Bは、印刷中の画像データDT1を示す図である。説明の都合上、画像データDT1が図示されているが、画像データDT1は、実際には、電子情報により形成された電子データである。画像データDT1についても印刷データPD1と同様に、第1方向Dxおよび第2方向Dyが定義されている。第1方向DxについてDx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。図4Bに示すように、画像データDT1は、印刷が完了している範囲である第2吐出完了範囲DA1と印刷が完了していない範囲である第2吐出未完了範囲DA2とを有している。画像データDT1は、画像データ縦長さDT1Xと、画像データ横長さDT1Yと、を乗じた大きさを有するデータである。画像データ縦長さDT1Xは、画像データDT1の第1方向Dxの長さである。画像データ縦横長さDT1Yは、画像データDT1の第2方向Dyの長さである。
【0042】
第2吐出完了範囲DA1は、第2吐出完了範囲縦長さDAX1と、第2吐出完了範囲横長さDAY1と、を乗じた大きさを有するデータである。第2吐出完了範囲縦長さDAX1は、第2吐出完了範囲DA1の第1方向Dxの長さである。第2吐出完了範囲横長さDAY1は、第2吐出完了範囲DA1の第2方向Dyの長さである。本実施形態では、第2吐出完了範囲横長さDAY1は、画像データ横長さDT1Yと等しい。
【0043】
第2吐出未完了範囲DA2は、第2吐出未完了範囲縦長さDAX2と、第2吐出未完了範囲横長さDAY2と、を乗じた大きさを有するデータである。第2吐出未完了範囲縦長さDAX2は、第2吐出未完了範囲DA2の第1方向Dxの長さである。第2吐出未完了範囲横長さDAY2は、第2吐出未完了範囲DA2の第2方向Dyの長さである。本実施形態では、第2吐出未完了範囲横長さDAY2は、画像データ横長さDT1Yと等しい。
境界R2は、第2吐出完了範囲DA1と第2吐出未完了範囲DA2とを区切るものである。すなわち境界R2より上流側が第2吐出完了範囲DA1である。境界R2より下流側が第2吐出未完了範囲DA2である。画像データ縦長さDT1Xは、第2吐出完了範囲縦長さDAX1と、第2吐出未完了範囲縦長さDAX2とを足し合わせた長さである。印刷が進行するに伴い、第2吐出完了範囲DA1の第1吐出完了範囲縦長さDAX1の長さが長くなり、第2吐出未完了範囲DA2の第2吐出未完了範囲縦長さDAX2の長さが短くなる。このとき、境界R2は、第1方向DxのDx1からDx2に向かう方向に移動する。
【0044】
図4Bにおいて、画像データDT1、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2の大きさは、それぞれ印刷データPD1、第1吐出完了範囲PA1および第1吐出未完了範囲PA2の大きさと対応している。ここで「対応している」とは、比較となる2つの図が互いに相似または合同であることを意味する。すなわち、例えば、画像データDT1の画像データ縦長さDT1Xに対する第1吐出完了範囲縦長さDAX1の比は、印刷データPD1の印刷データ縦長さPD1Xに対する第1吐出完了範囲縦長さPAX1の比と等しい。
【0045】
図4Cは、印刷中の表示画面81を示す図である。図4Cに示すように、表示画面81のサムネイル表示領域81aには、吐出完了範囲画像FG1、吐出未完了範囲画像IG1およびコントラスト画像CGが表示されている。吐出完了範囲画像FG1は、画像データDT1の第2吐出完了範囲DA1(図4B参照)が可視化されたものである。吐出未完了範囲画像IG1は、第2吐出未完了範囲DA2(図4B参照)が可視化されたものである。本実施形態では、コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の前景となる画像である。コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1と吐出未完了範囲画像IG1の境界を明確にするための画像である。本実施形態では、コントラスト画像CGは、有色かつ無地の画像であり、例えば、白色の画像である。コントラスト画像CGのうち吐出完了範囲画像FG1と重畳している範囲である第1コントラスト部CG1の透明度は、吐出未完了範囲画像IG1と重畳している範囲である第2コントラスト部CG2の透明度よりも小さくなるように設定されている。ここで「透明度」とは、ある画像がその背後の色を透過させる度合いを示し、例えば0%~100%のパーセンテージで示す。すなわち、ある画像の透明度が100%のとき、その画像の背後の色は、完全に透過して表示される。ある画像の透明度が0%のとき、その画像の背後の色は、透過されないため表示されない。第1コントラスト部CG1は、例えば100%である。したがって、第1コントラスト部CG1と重畳している吐出完了範囲画像FG1は、第1コントラスト部CG1を完全に透過して表示される。第2コントラスト部CG2の値は、例えば50%である。したがって、吐出未完了範囲画像IG1を形成する光の一部のみが透過して表示される。第1コントラスト部CG1および第2コントラスト部CG2の透明度の値は、予め決定されていてもよく、ユーザによって適宜決定されるものであってもよい。コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1に対して、視認しやすい色であることが望ましい。コントラスト画像CGは、予め制御装置90に記憶されていてもよいし、印刷管理装置73により送信されるものであってもよい。なお、コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の背景となる画像であってもよい。例えば、吐出完了範囲画像FG1の透明度を0%とし、吐出未完了範囲画像IG1の透明度を50%とする。このとき、吐出完了範囲画像FG1は、コントラスト画像CGを透過しないが、吐出未完了範囲画像IG1は、コントラスト画像CGを透過する。したがって、コントラスト画像CGが吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の背景である場合でも、コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1と吐出未完了範囲画像IG1の境界を明確にすることができる。
【0046】
図5に示すように、画像データ取得部91は、印刷管理装置73の備える画像データ送信部75が送信した画像データDT1を取得する。本実施形態では、画像データ取得部91は、画像データDT1とともに送信されたファイル名FLNも受信する。
【0047】
印刷データ取得部92は、印刷管理装置73の備える印刷データ送信部77が送信した印刷データPD1を取得する。本実施形態では、印刷データ取得部92が取得した印刷データPD1に基づいて、印刷が実行される。すなわち、印刷データPD1のデータに基づいて、インクヘッド40がメディア5にインクを吐出する。
【0048】
総パス数算出部93は、印刷データPD1を印刷するときの総パス数を算出する。ここで、総パス数とは、プリンタ10が印刷物を印刷するときに、キャリッジ17(図3参照)が主走査方向Yの単方向への移動(パス)を繰り返す回数の総数である。総パス数算出部93は、印刷データ取得部92が取得した印刷データPD1に基づいて、印刷データPD1の総パス数を算出する。
【0049】
パス数計数部94は、印刷中にパス数を計数し保存する。ここで、パス数とは、印刷を行う際に実行されたパスの回数である。パス数は、キャリッジ17(図3参照)がパス数取得位置に存在するときに計数される。ここでパス数取得位置とは、次のパスを開始する前にキャリッジ17が存在する位置である。例えば、パス数取得位置は、プラテン13(図3参照)よりも外側の位置である。パス数取得位置に待機していたキャリッジ17が1回パスを実行したとき、パス数計数部94は、保存されているパス数に「1」を加算し、その値を記憶する。
【0050】
吐出完了範囲取得部95は、図4Aに示す印刷データPD1の第1吐出完了範囲PA1を取得する。吐出完了範囲取得部95が第1吐出完了範囲PA1を取得するタイミングは、特に限定されない。例えば、キャリッジ17がパス数取得位置に配置されているときに、吐出完了範囲取得部95が第1吐出完了範囲PA1を取得してもよい。詳細は後述するが、本実施形態では、第1吐出完了範囲PA1は、総パス数およびパス数を用いて算出される。
【0051】
算出部96は、図4Aおよび図4Bに示す第1吐出未完了範囲PA2、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2を算出する。詳細は後述するが、本実施形態では、第1吐出未完了範囲PA2、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2は、総パス数およびパス数を用いて算出される。
【0052】
図5に示す表示部97は、算出部96が算出した第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2をそれぞれ、図4Cに示すように表示画面81に表示する。表示画面81のサムネイル表示領域81aには、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1が表示されている。吐出完了範囲画像FG1は、表示部97が第2吐出完了範囲DA1を可視化した画像である。吐出未完了範囲画像IG1は、表示部97が第2吐出未完了範囲DA2を可視化した画像である。吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の大きさは、サムネイル表示領域81aの大きさにより決定されるものでよい。本実施形態では、サムネイル表示領域81aの大きさは、縦幅160ピクセル×横幅400ピクセルである。サムネイル表示領域81aの範囲に吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1が収まりきらない場合は、例えば、縦幅のみをサムネイル表示領域81aに合わせてもよい。すなわち、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の第1方向Dxの長さを160ピクセルとなるようにして、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1を拡大、縮小して表示してもよい。本実施形態では、表示部97は、画像データ取得部91が画像データDT1と共に取得していた、ファイル名FLNを表示画面81にファイル名画像FNIとして表示する。本実施形態では、ファイル名FLNは、「File1」の情報が含まれていた。したがって、表示画面81には、「File1」の文字が表示されている。表示部97は、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1に対する前景となるように、コントラスト画像CGを重畳して表示する。
【0053】
図5に示すコントラスト色決定部98は、図4Cに示すように、コントラスト画像CGの色を決定する。コントラスト画像CGは、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の境界を明確にするものである。したがって、コントラスト画像CGと、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1と、が互いに異なる色であることにより、ユーザは、コントラスト画像CGを認識しやすくなる。コントラスト色決定部98は、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2の色からコントラスト画像CGの色を決定する。本実施形態では、図4Bに示すように、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2により黒色の「A」の文字が形成される。したがって、図4Cに示すように、黒色よりも明度の高い白色をコントラスト画像CGの色としている。コントラスト画像CGの色は、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1の色に対して補色の関係となるように決定されてもよい。吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1が複数の色を含む場合、吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1のうち最も多く使用されている色に対して、コントラスト画像CGが補色の関係となるようにコントラスト画像CGの色が決定されてもよい。
【0054】
以上、制御装置90の構成について説明した。次に、表示画面81に吐出完了範囲画像FG1、吐出未完了範囲画像IG1およびコントラスト画像CGを表示するプロセスについて説明する。図6は、表示画面81に吐出完了範囲画像FG1、吐出未完了範囲画像IG1およびコントラスト画像CGを表示するプロセスの一例を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS101において、ユーザは、印刷データ作成装置70を操作して、印刷する画像データDT1を決定する。これにより、画像データ保存部74に画像データDT1が保存される。画像データDT1は、例えば、USBメモリなどの記憶媒体や他のコンピュータ(図示せず)により印刷管理装置73に取り込まれる。また、画像データDT1は、印刷管理装置73により作成されるものであってもよい。このとき、画像データDT1は、ファイル名FLNとともに保存される。このとき、ユーザは、ファイル名FLNの内容を編集してもよい。画像データ送信部75は、制御装置90の備える画像データ取得部91に画像データDT1およびファイル名FLNを送信する。画像データ取得部91は、画像データDTおよびファイル名FLNを受信する。このとき、まだインクの吐出が行われていないので、画像データDT1は、全範囲が第2吐出未完了範囲DA2となっている。
【0056】
ステップS102において、まず、印刷管理装置73のRIP処理部76が、画像データDT1をRIP処理する。画像データDT1がRIP処理されることにより、印刷データPD1が作成されると、印刷データ送信部77は、制御装置90の備える印刷データ取得部92に印刷データPD1を送信する。印刷データ取得部92は、印刷データPD1を受信する。
【0057】
ステップS103において、総パス数算出部93は、印刷データ取得部92が取得した印刷データPD1の総パス数を算出する。また、このとき、パスがまだ1回も実行されていないため、パス数計数部94に保存されているパス数は、「0」である。
【0058】
ステップS104において、表示部97は、吐出未完了範囲画像IG1とコントラスト画像CGを表示画面81のサムネイル表示領域81aに表示する。ステップS104の時点では、インクの吐出が実行されていないので、吐出未完了範囲画像IG1は、画像データDT1の全範囲を示し、吐出完了範囲画像FG1は表示されない。図7Aは、インクの吐出が開始される前の表示画面81を表した図である。なお、表示画面81には、ファイル名画像FNIが表示される。
【0059】
ステップS105において、制御装置90は、インクヘッド40を制御してパスを実行する。パスの最中、インクヘッド40は、印刷データPD1の情報に基づいて、所望の位置でインクを吐出する。パスが1回完了したとき、パス数計数部94は、保存されているパス数に「1」を加算する。
【0060】
ステップS106において、吐出完了範囲取得部95は、印刷データPD1の第1吐出完了範囲PA1を取得する。すなわち、第1吐出完了範囲PA1の第1吐出完了範囲縦長さPAX1および第1吐出完了範囲横長さPAY1を取得する。吐出完了範囲取得部95は、例えば、キャリッジ17が1回パスを実行するごとに第1吐出完了範囲PA1を取得する。本実施形態では、図4Aに示すように、第1吐出完了範囲横長さPAY1は、印刷データ横長さPD1Yと同一であり、パスごとに変化しない。第1吐出完了範囲PA1は、パスが一回実行されるごとに第1吐出完了範囲縦長さPAX1が長くなる。本実施形態では、第1吐出完了範囲縦長さPAX1は、印刷データ縦長さPD1X、総パス数およびパス数を用いて決定する。印刷データ縦長さPD1XがH1[ピクセル]、総パス数がN[回]であり、パス数がM[回]のとき、第1吐出完了範囲縦長さPAX1をh1[ピクセル]とすると、吐出完了範囲取得部95は、h1=H1×(M/N)としてh1を算出する。すなわち、プリンタ10が1回パスを実行するごとに、第1吐出完了範囲PAX1は、H1×(1/N)ずつ第1方向DxについてDx1からDx2に向かう方向に長くなる。
【0061】
ステップS107において、算出部96は、第1吐出未完了範囲PA2、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2を算出する。本実施形態では、第1吐出未完了範囲横長さPAY2は、印刷データ横長さPD1Yと等しい。第1吐出未完了範囲PA2の第1吐出未完了範囲縦長さPAX2は、印刷データ縦長さPD1Xから第1吐出完了範囲縦長さPAX1を減ずることにより得られる。第1吐出未完了範囲縦長さPAX2をh2[ピクセル]とすると、h2=H1-h1=H1×((N-M)/N)が成り立つ。
【0062】
算出部96は、第1吐出完了範囲PA1に対応する第2吐出完了範囲DA1を算出する。図4Aに示すように、第1吐出完了範囲PA1の第1吐出完了範囲横長さPAY1は、印刷データ横の長さPD1Yと等しい。印刷データPD1と画像データDT1とは対応しているため、第2吐出完了範囲DA1の第2吐出完了範囲横長さDAY1は、画像データ横長さDT1Yと等しい。第2吐出完了範囲DA1の第2吐出完了範囲縦長さDAX1は、画像データ縦長さDT1X、総パス数およびパス数を用いて算出される。画像データ縦長さDTXをH2[ピクセル]とする。総パス数がN[回]であり、パス数がM[回]のとき、第2吐出完了範囲縦長さDAX1をh2[ピクセル]とすると、算出部96は、h2=H2×(M/N)としてh2を算出する。すなわち、プリンタ10が1回パスを実行するごとに、第2吐出完了範囲DAX1は、H2×(1/N)ずつ第1方向DxについてDx1からDx2に向かう方向に長くなる。
【0063】
算出部96は、第2吐出未完了範囲DA2を算出する。本実施形態では、第1吐出未完了範囲横長さPAY2は、印刷データ横長さPD1Yと等しい。第2吐出未完了範囲DA2の第2吐出未完了範囲縦長さDAX2は、画像データ縦長さDT1Xから第2吐出完了範囲縦長さDAX1を減ずることにより得られる。第2吐出未完了範囲縦長さDAX2をh3[ピクセル]とすると、h3=H2-h2=H2×((N-M)/N)が成り立つ。図7Bは、パスが複数回実行されたときの表示画面81を示している。
【0064】
本実施形態では、第1吐出完了範囲PA1は、印刷データ縦長さPD1X、印刷データ横長さPD1Y、総パス数およびパス数により決定した。第2吐出完了範囲DA1は、画像データ縦長さDT1X、画像データ横長さDT1Y、総パス数およびパス数により決定した。したがって、印刷データ縦長さPD1Xの長さと画像データ縦長さDT1Xの長さが等しく、かつ印刷データ横長さPD1Yの長さと画像データ横長さDT1Yの長さが等しいとき、第1吐出完了範囲PA1と第2吐出完了範囲DA1は、互いに合同となる。それ以外の場合は、第1吐出完了範囲PA1と第2吐出完了範囲DA1は、互いに相似となる。第1吐出未完了範囲PA2と第2吐出未完了範囲DA2も同様に、互いに相似または合同となる。
【0065】
ステップS108において、表示部97は、算出部96が取得した第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2を、それぞれ吐出完了範囲画像FG1および吐出未完了範囲画像IG1として表示画面81のサムネイル表示領域81aに表示する。このときコントラスト色決定部98は、コントラスト画像CGのうち吐出未完了範囲画像IG1と重畳する第2コントラスト部CG2の色を、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2の有する色の情報に基づいて、決定する。本実施形態では、サムネイル表示領域81aに表示される「A」の文字が黒色であるため、コントラスト色決定部98は、黒色よりも明度の高い白色を第2コントラスト部CG2の色として決定する。表示部97は、コントラスト色決定部98が決定した色により第2コントラスト部CG2をサムネイル表示領域81aに表示する。図7Bは、複数回パスが実行されたときの表示画面81を示している。吐出完了範囲画像FG1と重畳する第1コントラスト部CG1の透明度が100%となっている。したがって、吐出完了範囲画像FG1を形成する光は、すべてコントラスト画像CGを透過して認識される。一方、吐出未完了範囲画像IG1と重畳する第2コントラスト部CG2の透明度は、例えば50%となっている。さらに、第2コントラスト部CG2の色は白色であるため、吐出未完了範囲画像IG1を形成する光の一部と白色を形成する光の一部が合成されて認識される。
【0066】
ステップS109において、制御装置90は、総パス数とパス数とに基づいて、印刷が完了したか否かを判定する。総パス数がN[回]であり、パス数がM[回]のとき、M<Nとなるならば、印刷データPD1の印刷が完了していない。このとき、ステップS105に戻り、次のパスが実行される。M=Nとなるとき、印刷データPD1の印刷が完了しているため、印刷を終了する。印刷が完了しているとき、パス数と総パス数が等しくなる。したがって、第1吐出完了範囲PA1は、印刷データPD1の全ての範囲となり、第2吐出完了範囲DA1は、画像データDT1の全ての範囲となる。画像データDT1の全ての範囲が吐出完了範囲画像FG1としてサムネイル表示領域81aに表示され印刷が完了する。図7Cは、印刷データPD1の印刷を完了したときの表示画面81を示している。図7Cに示すように、表示画面81には、吐出未完了範囲画像IG1が含まれず画像データDT1の全範囲が吐出完了範囲画像FG1として表示されている。
【0067】
以上のように、本実施形態の印刷システム1によると、画像データDT1の第2吐出完了範囲DA1が吐出完了範囲画像FG1として表示画面81のサムネイル表示領域81aに表示される。このことにより、ユーザは、表示画面81を見ることにより、印刷中の画像が画像のどの範囲なのか把握することができる。さらに、印刷が進行し、パス数が増加すると、第2吐出完了範囲DA1の有する第2吐出完了範囲縦長さDAX1の長さが増加する。したがって、サムネイル表示領域81aに表示される吐出完了範囲画像FG1の面積が徐々に増加する。このことにより、ユーザは、表示画面81を見ることにより印刷の進捗を確認することができる。
【0068】
本実施形態の印刷システム1によると、インクの吐出が完了した範囲である第1吐出完了範囲PA1と、第1吐出完了範囲PA1に対応する第2吐出完了範囲DA1とをもとに、吐出完了範囲画像FG1が表示される。ここで、印刷の進捗を確認するために、例えば、パスを実行する指示が制御装置90により出されたとき、そのパスの実行により進行する印刷の分だけ表示画面81の進捗を進めることも考えられる。しかしながら、パスを実行する指示が出されても、例えば、キャリッジ17の動作不良などにより、パスが正常に実行されない可能性がある。この場合、表示画面81に表示される進捗が進んでも、パスが正常に実行されていないため、表示画面81に表示される進捗とメディア5上の印刷の状態とが異なる可能性がある。しかしながら、本実施形態の印刷システム1の場合、インクの吐出が完了してから、吐出完了範囲画像FG1を表示、あるいは、吐出完了範囲画像FG1の面積を増加させるため、吐出完了範囲画像FG1とメディア5上の印刷の状態とが異なることを防ぐことができる。
【0069】
本実施形態の印刷システム1によると、表示画面81には、吐出完了範囲画像FG1と吐出未完了範囲画像IG1とが表示されている。このことにより、画像データDT1の全範囲が表示画面81に表示されている。さらに、コントラスト画像CGのうち吐出未完了範囲画像IG1と重畳する第2コントラスト部CG2の透明度を第1コントラスト部CG1の透明度よりも低くなるように設定している。これらのことにより、ユーザは、表示画面81を見れば、画像データDT1の全範囲に対してどこまで印刷が完了しているのかを視覚的に把握することができる。
【0070】
本実施形態の印刷システム1によると、表示画面81に表示されるコントラスト画像CGの色がコントラスト色決定部98により決定される。本実施形態では、画像データDT1により表示される黒色の「A」の文字よりも明度の高い白色をコントラスト画像CGの色にした。このことにより、ユーザは、表示画面81に表示されるコントラスト画像CG、特に第2コントラスト部CG2を視認しやすくなる。すなわち、吐出完了範囲画像FG1と吐出未完了範囲画像IG1との境界を視認しやすくなる。
【0071】
以上、第1実施形態に係る印刷システム1について説明した。ここで提案される印刷システム1は、第1実施形態に係る印刷システム1に限らず、他の種々の形態で実施することができる。次に他の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を使用し、その説明は省略することとする。
【0072】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る印刷システム1Aについて説明する。図8は、第2実施形態に係る印刷システム1Aの構成を示すブロック図である。印刷システム1Aは、プリンタ10に代えて、プリンタ10Aを備えている。プリンタ10Aは、プリンタ10の制御装置90に代えて、制御装置190を備えている。本実施形態では、第1実施形態の印刷データPD1および画像データDT1(図5参照)に代えて、印刷データPD2および画像データDT2が用いられる。上記の点を除き、印刷システム1Aは、印刷システム1と同様の構成を備えている。本実施形態に係る印刷データPD2は、メディア5の同一の範囲をキャリッジ17が複数回移動しながらインクの吐出を行う、所謂、マルチパス動作により印刷されるデータである。ここで、図10を参照しつつ、マルチパス動作について説明する。図10では、マルチパス動作において、メディア5の同一の範囲をキャリッジ17が主走査方向Yに2回移動(2パス)する。なお、図10では、インクヘッド40を副走査方向Xに2分割して、上流側(後方)から順に第1領域40aおよび第2領域40bとして表している。第1領域40aおよび第2領域40bに含まれるノズルの数は等しいものとする。本実施形態では、インクヘッド40の副走査方向Xの長さL1をパス数である2で割った値(L1/2)をメディア5の1回の搬送幅として、メディア5の同一の印刷領域をキャリッジ17が2回移動する。
【0073】
図10(a)は1回目の印刷動作を表している。図10(a)に示すように、1回目の印刷動作では、キャリッジ17が主走査方向Yの一方向(図10(a)の右から左に向かう矢印S1の方向)へ移動すると共に、インクヘッド40の第1領域40aからインクが吐出される。1回目の印刷動作の後、矢印Feで示すように、メディア5を、副走査方向Xの下流側に、L1/2の搬送幅で搬送させる。この搬送により、パス印刷範囲A1が第1領域40aよりも下流側に移動する。1回目の搬送の後、2回目のパスが行われる。
【0074】
図10(b)は2回目のパスを表している。図10(b)に示すように、2回目のパスでは、キャリッジ17が主走査方向Yの一方向(図10(b)の左から右に向かう矢印S2の方向)へ移動すると共に、第1領域40aおよび第2領域40bからそれぞれインクが吐出される。これにより、パス印刷範囲A1は、パス印刷範囲A2よりも、インクのドットの密度が高い。2回目のパスの後、矢印Feで示すように、1回目と同様、搬送が行われる。この搬送により、パス印刷範囲A2が第1領域40aよりも下流側に移動する。2回目のパスの後、3回目のパスが行われる。
【0075】
図10(c)は3回目のパスを表している。図10(c)に示すように、3回目の印刷動作では、キャリッジ17が主走査方向Yの一方向(図10(c)の右から左に向かう矢印S1の方向)へ移動すると共に、第1領域40aおよび第2領域40bからそれぞれインクが吐出される。これにより、パス印刷範囲A2は、パス印刷範囲A3よりもインクのドットの密度が高い。パス印刷範囲A1とパス印刷範囲A2とは、いずれも2回ずつパスが実行されており、それぞれのインクのドットの密度は同様である。これらのように、メディア5の搬送およびパスを繰り返すことにより、メディア5の全体に対してマルチパスによる印刷を行うことができる。
【0076】
図8に示す制御装置190は、メディア5への印刷に関する制御を行う装置である。制御装置190の構成は特に限定されない。制御装置190は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置190は、ケーシング11A(図2参照)の内部に設けられている。ただし、制御装置190は、ケーシング11Aの内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置190は、プリンタ10Aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置190は、有線または無線を介してプリンタ10Aが有する基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。図8に示すように、制御装置190は、画像データ取得部191と、印刷データ取得部192と、マルチパス範囲取得部193と、総パス数算出部194と、パス数計数部195と、吐出完了範囲取得部196と、算出部197と、表示部198と、を備えている。画像データ取得部191および印刷データ取得部192は、第1実施形態に対して、印刷データPD1に代えて印刷データPD2が、画像データDT1に代えて画像データDT2が用いられている点を除き、それぞれ画像データ取得部91および印刷データ取得部92(図5参照)と同様の構成であるため説明を省略する。総パス数算出部194およびパス数計数部195は、それぞれ総パス数算出部93およびパス数計数部94(図5参照)と同様の構成であるため説明を省略する。
【0077】
図9Aは、印刷中の印刷データPD2を示す図である。なお、説明の都合上、印刷データPD2が図示されているが、印刷データPD2は、実際には電子情報により形成される電子データである。図4Aと同様に、印刷データPD2の全範囲に対して第1方向Dxおよび第2方向Dyが設定されている。印刷データPD2は、第1方向DxのDx1からDx2に向かって印刷される。すなわち、Dx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。図9Aに示すように、印刷データPD2は、所定の領域に対してマルチパス動作による印刷が完了している範囲である第1吐出完了範囲PA1´を有している。本実施形態では、境界R3よりも上流側の範囲が第1吐出完了範囲PA1´である。印刷データPD2は、印刷データ縦長さPD2Xと、印刷データ横長さPD2Yと、を乗じた大きさを有するデータである。印刷データ縦長さPD2Xは、印刷データPD2の第1方向Dxの長さである。印刷データ横長さPD2Yは、印刷データPD2の第2方向Dyの長さである。本実施形態における印刷データPD2は、2パスによるマルチパス動作により印刷されるデータである。すなわち、メディア5上の同一の範囲に2回インクが吐出される。ただし、マルチパス動作におけるパス数は2パスに限定されない。
【0078】
第1吐出完了範囲PA1´は、第1吐出完了範囲PAX1´と、第1吐出完了範囲横長さPAY1´と、を乗じた大きさを有するデータである。第1吐出完了範囲PAX1´は、第1吐出完了範囲PA1´の第1方向Dxの長さである。第1吐出完了範囲横長さPAY1´は、第1吐出完了範囲PA1´の第2方向Dyの長さである。本実施形態において、第1吐出完了範囲横長さPAY´は、印刷データ横長さPD2Yと等しい。本実施形態では、第1吐出完了範囲PA1´は、マルチパス動作の2パス中2パスとも完了している範囲である。
【0079】
印刷データPD2は、所定の領域に対してマルチパス動作による印刷のうち、一部のパス動作が完了した範囲である第1マルチパス範囲MP1を有している。図9Aにおいて、第1方向Dxについて境界R3と境界R5とに挟まれた範囲が第1マルチパス範囲MP1である。図9Aにおいて、印刷データPD2は、境界R3より上流の範囲にて所定の領域に対するマルチパス動作におけるインクの吐出が完了し、境界R3と境界R4とに挟まれた範囲にて所定の領域に対するマルチパス動作の一部のパス動作が完了したときの状態を示している。本実施形態では、第1マルチパス範囲MP1は、マルチパス動作の2パス中1パスのみ完了している範囲である。
【0080】
図9Bは、画像データDT2を示す図である。説明の都合上、画像データDT2が図示されているが、画像データDT2は、実際には電子情報により形成された電子データである。画像データDT2についても印刷データPD2と同様に、第1方向Dxおよび第2方向Dyが定義されている。第1方向DxについてDx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。図9Bに示すように、画像データDT2は、印刷が完了している範囲である第2吐出完了範囲DA1´を有している。画像データDT2は、画像データ縦長さDT2Xと、画像データ横長さDT2Yと、を乗じた大きさを有するデータである。画像データ縦長さDT2Xは、画像データDT2の第1方向Dxの長さである。画像データ縦横長さDT2Yは、画像データDT2の主走査方向Yの長さである。
【0081】
第2吐出完了範囲DA1´は、第2吐出完了範囲縦長さDAX1´と、第2吐出完了範囲横長さDAY1´と、を乗じた大きさを有するデータである。第2吐出完了範囲縦長さDAX1´は、第2吐出完了範囲DA1´の第1方向Dxの長さである。第2吐出完了範囲横長さDAY1´は、第2吐出完了範囲DA1´の第2方向Dyの長さである。本実施形態では、第2吐出完了範囲横長さDAY1´は、画像データ横長さDT2Yと等しい。本実施形態では、第2吐出完了範囲DA1´は、マルチパス動作の2パス中2パスとも完了している範囲である。
【0082】
画像データDT2は、第2マルチパス範囲MP2を有している。第2マルチパス範囲MP2は、画像データDT2のうち、第1マルチパス範囲MP1のうち所定の領域に対するマルチパス動作の一部のパス動作が実行されている範囲に対応する範囲である。本実施形態では、第2マルチパス範囲MP2は、マルチパス動作の2パス中1パスのみ完了している範囲である。図9Aの第1方向Dxにおいて境界R3と境界R5とに挟まれた範囲に対応する範囲が第2マルチパス範囲MP2である。第2マルチパス範囲MP2は、境界R6と境界R7とに挟まれた範囲である。
【0083】
図9Cは、印刷中の表示画面81を示す図である。図9Cに示すように、表示画面81のサムネイル表示領域81aには、吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MGが表示されている。吐出完了範囲画像FG2は、画像データDT2の第1吐出完了範囲PA1´が表示されたものである。本実施形態では、マルチパス動作は2パスであるので、吐出完了範囲画像FG2は、2パスが完了している範囲を表示する画像である。マルチパス範囲画像MGは、画像データDT2の第2マルチパス範囲MP2を表示したものである。図9Bの境界R6と境界R7とに挟まれた範囲を表示した画像がマルチパス範囲画像MGである。本実施形態では、マルチパス範囲画像MGは、マルチパス動作の2パス中1パスのみ完了している範囲を表示する画像である。第1実施形態と同様にして、コントラスト画像CGがマルチパス範囲画像MGおよび吐出完了範囲画像FG2の背景である場合には、印刷中のマルチパス範囲画像MGは、吐出完了範囲画像FG2に比べて、透明度が高くなるように設定され、コントラスト画像CGがマルチパス範囲画像MGおよび吐出完了範囲画像FG2の前景である場合には、吐出完了範囲画像FG2と重畳する部分が、マルチパス範囲画像MGと重畳する部分に比べて、透明度が高くなるようにコントラスト画像CGの透明度が設定されている。
【0084】
図8に示すマルチパス範囲取得部193は、印刷データPD2の第1マルチパス範囲MP1を取得する。マルチパス範囲取得部193が印刷データPD2の第1マルチパス範囲MP1を取得するタイミングは、特に限定されない。例えば、キャリッジ17がパス数取得位置に配置されているときに、マルチパス範囲取得部193が第1マルチパス範囲MP1を取得してもよい。
【0085】
吐出完了範囲取得部196は、印刷データPD2の第1吐出完了範囲PA1´を取得する。吐出完了範囲取得部196が第1吐出完了範囲PA1´を取得するタイミングは、特に限定されない。例えば、キャリッジ17がパス数取得位置に配置されているときに、吐出完了範囲取得部196が第1吐出完了範囲PA1´を取得してもよい。本実施形態では、第1吐出完了範囲PA1´は、総パス数およびパス数を用いて算出される。
【0086】
算出部197は、図9Aおよび図9Bに示す第1吐出完了範囲PA1´より、画像データDT2の第2吐出完了範囲DA1´を算出する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、第1吐出未完了範囲PA2、第2吐出完了範囲DA1および第2吐出未完了範囲DA2は、総パス数およびパス数を用いて算出される。また、算出部197は、第1マルチパス範囲MP1が印刷されている場合、第1マルチパス範囲MP1に対応する画像データDT2の範囲である第2マルチパス範囲MP2を算出する。
【0087】
図8に示す表示部198は、算出部197が算出した第2吐出完了範囲DA1´および第2マルチパス範囲MP2を吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MGとして表示画面81のサムネイル表示領域81aに表示する。第1実施形態と同様にして、吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MGは、拡大または縮小されて表示されてもよい。また、第1実施形態と同様にして、表示部198は、第2吐出未完了範囲DA2を可視化した吐出未完了範囲画像IG1をさらに表示してもよい。この場合、コントラスト画像CGがマルチパス範囲画像MG、吐出完了範囲画像FG2、および吐出未完了範囲画像IG1の背景である場合には、吐出完了範囲画像FG2、マルチパス範囲画像MG、吐出未完了範囲画像IG1の順に透明度が高くなるように設定され、コントラスト画像CGがマルチパス範囲画像MG、吐出完了範囲画像FG2、および吐出未完了範囲画像IG1の前景である場合には、吐出未完了範囲画像IG1と重畳する部分、マルチパス範囲画像MGと重畳する部分、吐出完了範囲画像FG2と重畳する部分の順に透明度が高くなるようにコントラスト画像CGの透明度が設定されている。表示部198は、第1実施形態と同様に、表示画面81に「File1」の文字を表示する。
【0088】
以上、制御装置190の構成について説明した。次に、表示画面81に吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MGを表示するプロセスについて説明する。図11は、表示画面81に吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MGを表示するプロセスの一例を示すフローチャートである。なお、ステップS201~ステップS203は、第1実施形態に対して、印刷データPD1を印刷データPD2に代えて、画像データDTを画像データDT2に代えて実行されている点を除いて、それぞれステップS101~ステップS103と同様の動作のため、説明を省略する。
【0089】
ステップS204において、制御装置190は、インクヘッド40を制御してマルチパスを実行する。インクヘッド40は、印刷データPD2の情報に基づいて、所望の位置でインクを吐出する。パスが1回完了したとき、パス数計数部195は、保存されているパス数に「1」を追加する。
【0090】
ステップS205において、吐出完了範囲取得部196は、印刷データPD2の第1吐出完了範囲PA1´を取得し、マルチパス範囲取得部193は、第1マルチパス範囲MP1を取得する。第1吐出完了範囲PA1´の第1吐出完了範囲縦長さPAX1´および第1吐出完了範囲横長さPAY1´を取得する。第1吐出完了範囲縦長さPAX1´および第1吐出完了範囲横長さPAY1´の取得の方法は、第1実施形態のステップS106(図5参照)と同様であり説明を省略する。なお、図11のフローチャート開始後、1回目のパスが完了した時点では、図10(a)のように、マルチパス動作の2パスが完了した範囲が存在しないため、第1マルチパス範囲MP1は存在するが、第1吐出完了範囲PA1´は存在しない。
【0091】
算出部197は、第2吐出完了範囲DA1´および第2マルチパス範囲MP2を算出する。第2吐出完了範囲DA1´について、第2吐出完了範囲DA1´の第2吐出完了範囲縦長さDAX1´および第2吐出完了範囲横長さDAY1´を取得する。第2吐出完了範囲DA1´の第2吐出完了範囲縦長さDAX1´および第2吐出完了範囲横長さDAY1´の取得方法は、第1実施形態のステップS107(図5参照)同様であり、説明を省略する。
【0092】
表示部198は、算出部197が算出した第2吐出完了範囲DA1´および第2マルチパス範囲MP2を、それぞれ吐出完了範囲画像FG2およびマルチパス範囲画像MG´として表示画面81のサムネイル表示領域81aに表示する。図12Aは、ステップS207のときの表示画面81を示す図である。図12Aに示すように、サムネイル表示領域81aには、マルチパス範囲画像MG´が表示されている。本実施形態では、マルチパス範囲画像MG´は、透明度が0%より大きく設定されており、背景であるコントラスト画像CG(図示せず)の色を透過した状態により表示される。例えば、マルチパス範囲画像MG´は透明度が50%である。なお、吐出完了範囲画像FG2は、透明度が0%である。また、このとき、表示画面81には、ファイル名画像FNIが表示される。
【0093】
ステップS208において、制御装置90は、総パス数とパス数とに基づいて、印刷データPD2の印刷が完了したかを判定する。印刷が完了したか否かの判定の方法は、第1実施形態のステップS109(図5参照)と同様であり、説明を省略する。印刷データPD2の印刷が終了していると判断した場合は、印刷を終了する。画像の印刷が終了していないと判断した場合は、ステップS204に戻り、次のパスが実行される。
【0094】
図12Bは、図12Aの状態のとき、図11に示すステップS208からステップS204に戻り、その後ステップS204~S207が実行されたときの表示画面81を示す図である。図12Bに示すように、サムネイル表示領域81aには、吐出完了範囲画像FG2、マルチパス範囲画像MG´´が表示されている。図12Aにおけるマルチパス範囲画像MG´の領域は、図12Bでは吐出完了範囲画像FG2の一部となっている。図12Bにおけるマルチパス範囲画像MG´´は、図12Aと同様に、第2マルチパス範囲MP2が表示されたもの、すなわち、マルチパスの2パス中の1回目のパスが完了した範囲が表示されたものである。
【0095】
以上のように、本実施形態の印刷システム1Aによると、印刷データPD2のように第1マルチパス範囲MP1を含むデータを印刷する場合、マルチパス動作の複数のパスが完了した範囲が第1吐出完了範囲PA1´となる。このことにより、印刷データPD2がマルチパス動作を含む場合にも、印刷の進捗を視覚的に把握することができる。
【0096】
本実施形態の印刷システム1Aによると、マルチパス範囲画像MGが表示画面81に表示される。図12Aに示す吐出完了範囲画像FG2と、マルチパス範囲画像MG´と、を異なる態様で表示することによりユーザは、マルチパス動作の複数回のパスの全てが完了する前にも、パスごとの進捗を確認することができる。
【0097】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る印刷システム1Bについて説明する。図13は、第3実施形態に係る印刷システム1Bの構成を示すブロック図である。印刷システム1Bは、第1実施形態のプリンタ10に代えて、プリンタ10Bを備えている。プリンタ10Bは、プリンタ10の第1実施形態の制御装置90に代えて、制御装置290を備えている。図13に示すように、本実施形態では、第1実施形態の印刷データPD1および画像データDT1に代えて、印刷データPD3および画像データDT3が用いられる。上記の点を除き、印刷システム1Bは、印刷システム1と同様の構成を有している。
【0098】
図13において、制御装置290は、メディア5への印刷に関する制御を行う装置である。制御装置290の構成は特に限定されない。制御装置290は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置290は、ケーシング11A(図2参照)の内部に設けられている。ただし、制御装置290は、ケーシング11Aの内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置290は、プリンタ10Bの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置290は、有線または無線を介してプリンタ10Bが有する基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。制御装置290は、画像データ取得部291と、印刷データ取得部292と、総パス数算出部293と、パス数計数部294と、吐出完了範囲取得部295と、算出部296と、判定部297と、表示部298と、を備えている。画像データ取得部291および印刷データ取得部292は、第1実施形態に対して、印刷データPD1に代えて印刷データPD3が、画像データDT1に代えて画像データDT3が用いられている点を除き、それぞれ画像データ取得部91および印刷データ取得部92と同様の構成であるため説明を省略する。パス数計数部294は、第1実施形態のパス数計数部94(図5参照)と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0099】
図14Aは、印刷中の印刷データPD3を示す図である。なお、説明の都合上、印刷データPD3が図示されているが、印刷データPD3は、実際には電子情報により形成される電子データである。印刷データPD3の全範囲に対して第1方向Dxおよび第2方向Dyが設定されている。印刷データPD3は、第1方向DxのDx1からDx2に向かって印刷される。すなわち、Dx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。図14Aに示すように、本実施形態の印刷データPD3は、メディア5(図1参照)の上に形成されたインク層の上にさらにインクを吐出することにより複数のインク層を形成する、所謂、レイヤー印刷が行われるものである。レイヤー印刷は、例えば、メディア5にホワイトインクなどの特色インクで形成された下地層の上にプロセスカラーインクを吐出するような場合やメディア5にプロセスカラーインクで形成された層の上にクリアインクなどの特色インクを吐出するような場合に用いられる印刷方法である。本実施形態の印刷データPD3は、第1インク層データLDaと第2インク層データLDbとを有している。本実施形態において、第1インク層データLDaは、白色の下地を印刷するインク層データである。ただし、インク層データの数は2つに限定されない。また、第1インク層データLDaと第2インク層データLDbは同一のデータであってもよい。本実施形態では、印刷データPD3は、第1インク層データLDa、第2インク層データLDbの順に印刷が実行される。すなわち、第1インク層データLDaにおいて、第1方向DxのDx1からDx2に向かって印刷した後、第2インク層データにおいて、第1方向DxのDx1からDx2に向かって印刷を行う。図14Aにおいて、第1インク層データLDaは、印刷が完了し、第2インク層データLDbを印刷しているものとする。したがって、第1インク層データLDaが本発明における吐出完了インク層データである。印刷データPD3は、印刷データ縦長さPD3Xと、印刷データ横長さPD3Yと、を乗じた大きさを有し、かつ第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbが重畳しているデータである。印刷データ縦長さPD3Xは、印刷データPD3の第1方向Dxの長さ、すなわち第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbの第1方向Dxの長さである。印刷データ縦横長さPD3Yは、印刷データPD3の第2方向Dyの長さ、すなわち第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbの第2方向Dyの長さである。ただし、第1インク層データLDaと第2インク層データLDbとは、第1方向DxのDx1からDx2に向かって一回移動する間に印刷されるものであってもよい。例えば、インクヘッド40の有するノズルのうち、ホワイトインクを吐出するノズルは、インクヘッド40の副走査方向Xの中間より後方側すなわち印刷の上流側のノズルのみを使用する。一方、プロセスカラーインクを吐出するノズルは、ホワイトインクを吐出するノズルよりも前方、すなわち印刷の下流側のノズルのみを使用する。このとき、まず上流側から搬送されたメディア5にホワイトインクが吐出される。その後メディア5が搬送され、プロセスカラーインクが吐出される。したがって、メディア5が第1方向DxのDx1からDx2に向かって移動する間に複数のインク層が形成される。あるいは、複数のインクヘッドが副走査方向Xに対して互いにずれて配置されている、所謂、スタガー配置の場合も同様である。
【0100】
印刷データPD3は、第1吐出完了範囲LAを有している。本実施形態では、第1吐出完了範囲LAは、印刷データPD3のうち、印刷中のインク層データにおいて、インクの吐出が完了した範囲である。上述の通り、印刷データPD3は、第2インク層データLDbを印刷しているため、第1吐出完了範囲LAは、第2インク層データLDbのうちインクの吐出が完了している範囲である。図14Aにおいて、第2インク層データLDbのうち境界R8よりも上流側が第1吐出完了範囲LAである。第1吐出完了範囲LAは、第1吐出完了範囲縦長さLAXと第1吐出完了範囲横長さLAYとを乗じた大きさを有するデータである。第1吐出完了範囲縦長さLAXは、第1吐出完了範囲LAの第1方向Dxの長さである。第1吐出完了範囲横長さLAYは、第1吐出完了範囲LAの第2方向Dyの長さである。本実施形態において、第1吐出完了範囲横長さLAYは、印刷データ横長さPD3Yと等しい。
【0101】
図14Bは、画像データDT3を示す図である。説明の都合上、画像データDT3が図示されているが、画像データDT3は、実際には電子情報により形成された電子データである。画像データDT3についても印刷データPD3と同様に、第1方向Dxおよび第2方向Dyが定義されている。第1方向DxについてDx1が印刷の上流側であり、Dx2が印刷の下流側である。図14Bに示すように、画像データDT3は、第2吐出完了範囲LDを有している。画像データDT3は、画像データ縦長さDT3Xと画像データ横長さDT3Yとを乗じた大きさを有し、かつ第1画像層データLDTaおよび第2画像層データLDTbが重畳しているデータである。第1画像層データLDTaは、第1インク層データLDaに対応している。第2画像層データLDTbは、第2インク層データLDbに対応している。本実施形態では、第1画像層データLDTaの印刷が完了しているため、第1画像層データLDTaが本発明における吐出完了画像層データに該当する。
【0102】
第2吐出完了範囲LDは、第2吐出完了範囲縦長さLDXと、第2吐出完了範囲横長さLDYとを乗じた大きさを有するデータである。第2吐出完了範囲縦長さLDXは、第2吐出完了範囲LDの第1方向Dxの長さである。第2吐出完了範囲横長さLDYは、第2吐出完了範囲LDの第2方向Dyの長さである。本実施形態では、第2吐出完了範囲横長さLDYは、画像データ横長さDT3Yと等しい。
【0103】
図14Cは、印刷中の表示画面81を表す図である。図14Cに示すように、表示画面81のサムネイル表示領域81aには、吐出完了範囲画像LIと吐出完了インク層画像FLIとが重畳して表示されている。吐出完了範囲画像LIは、第2吐出完了範囲LDを可視化したものである。本実施形態では、第2吐出完了範囲LDは、第2インク層データLDbのうちインクの吐出が完了している範囲である。吐出完了インク層画像FLIは、印刷データPD3に含まれるインク層データのうちインクの吐出が完了しているインク層データを可視化したものである。本実施形態では、第1インク層データLDaについてインクの吐出が完了している。したがって、本実施形態では、吐出完了インク層画像FLIは、第1インク層データLDaが表示されたものである。
【0104】
図13において、総パス数算出部293は、第1実施形態の総パス数算出部93(図5参照)と同様に印刷データPD3の総パス数を算出する。ただし、本実施形態における総パス数は、第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbを印刷するときのパス数である。
【0105】
吐出完了範囲取得部295は、第1吐出完了範囲LAを取得する。本実施形態では、図14Aに示すように、第1インク層データLDaにおいてインクの吐出が完了している範囲である。吐出完了範囲取得部295が第1吐出完了範囲LAを取得するタイミングは、特に限定されない。例えば、キャリッジ17がパス数取得位置に配置されているときに、吐出完了範囲取得部295が第1吐出完了範囲LAを取得してもよい。本実施形態では、第1吐出完了範囲LAは、総パス数およびパス数を用いて算出される。
【0106】
算出部296は、図14Bに示す第2吐出完了範囲LDを算出する。詳細は後述するが、本実施形態では、第2吐出完了範囲LDは、総パス数およびパス数を用いて算出される。
【0107】
判定部297は、吐出完了インク層データが存在するか否かを判定する。本実施形態では、判定部297は、総パス数およびパス数を用いて、吐出完了インク層データが存在するか否か判定する。
【0108】
表示部298は、図14Cに示すように、算出部296が算出した第2吐出完了範囲LDを可視化した吐出完了範囲画像LIを表示画面81に表示する。さらに、表示部298は、印刷データPD3に吐出完了インク層データが含まれる場合は、吐出完了範囲画像LIと、吐出完了画像層データを可視化した吐出完了インク層画像FLIと、を表示画面81に重畳して表示する。本実施形態では、吐出完了インク層画像FLIは、第1画像層データLDTaを可視化した画像である。ただし、吐出完了範囲画像LIおよび吐出完了インク層画像FLIの表示の方法は、これに限定されない。例えば、吐出完了範囲画像LIと吐出完了インク層画像FLIとを重畳せず、横並びや縦並びにして表示画面81に表示してもよい。また、第1実施形態と同様にして、表示部298は、第2吐出未完了範囲DA2を可視化した吐出未完了範囲画像IG1をさらに表示してもよい。表示部298は、第1実施形態と同様に、表示画面81に「File1」の文字を表示する。
【0109】
以上、制御装置290の構成について説明した。次に、表示画面81に吐出完了範囲画像LIおよび吐出完了インク層画像FLIを表示するプロセスについて説明する。図15は、表示画面81に吐出完了範囲画像LIおよび吐出完了インク層画像FLIを表示するプロセスの一例を示すフローチャートである。なお、ステップS301およびステップS302は、第1実施形態に対して、印刷データPD1に代えて印刷データPD3を用い、画像データDT1に代えて画像データDT3を用いている点を除いて、それぞれステップS101およびステップS102と同様の動作のため、説明を省略する。
【0110】
ステップS303において、総パス数算出部293は、印刷データ取得部292が取得した印刷データPD3の総パス数を算出する。このとき、パスがまだ1回も実行されていないため、パス数計数部294に保存されているパス数は、「0」である。本実施形態では、1つのインク層データにつき、N[回]のパスが行われるものとする。したがって、第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbを印刷するとき、総パス数は、2N[回]となる。
【0111】
ステップS304において、制御装置290は、インクヘッド40を制御してパスを実行する。パスの最中、インクヘッド40は、印刷データPD3の情報に基づいて、所望の位置でインクを吐出する。パスが1回完了したとき、パス数計数部294は、保存されているパス数に「1」を加算する。
【0112】
ステップS305において、判定部297は、吐出完了インク層データが存在するか否かを判定する。本実施形態では、判定部297は、総パス数算出部293が算出した総パス数と、パス数計数部294が算出したパス数とを用いる。本実施形態では、総パス数が2N[回]である。パス数をM[回]としたとき、パス数と総パス数についてM>Nが成り立つとき、プリンタ10Bは、第2インク層データLDbを印刷しており、第1インク層データLDaの印刷は完了している。したがって、吐出完了インク層データが存在している。このときステップS306に進む。M>Nが成り立たない、すなわち、M≦Nとなるとき、プリンタ10Bは、第1インク層データLDaを印刷しており、吐出完了インク層データが存在していない。このときステップS308に進む。
【0113】
ステップS306において、吐出完了範囲取得部295は、第1吐出完了範囲LAを取得し、算出部296は、第2吐出完了範囲LDを算出する。ここでは、パス数および総パス数についてM>Nが成り立っているため、印刷データPD3のうち第2インク層データLDbが印刷されている。第2インク層データLDbにおいてパスが実行された回数は、M-N[回]である。したがって、印刷データ縦長さPD3XをH4[ピクセル]、第1吐出完了範囲縦長さLAXをh4[ピクセル]とすると、吐出完了範囲取得部295は、h4=H4×((M-N)/N)としてh4を取得する。本実施形態では、第1吐出完了範囲横長さLAYは、印刷データ横長さPD3Yと同一であり、パスごとに変化しない。吐出完了範囲取得部295は、印刷データ横長さPD3Yを吐出完了範囲横長さLAYとして取得する。また、第2吐出完了範囲縦長さLDXをH5[ピクセル]、第2吐出完了範囲縦長さLDXをh5[ピクセル]とすると、算出部296は、h5=H5×((M-N)/N)としてh5を算出する。なお、本実施形態では、第2吐出完了範囲横長さLDYは、画像データ横長さDT3Yと同一である。
【0114】
ステップS307において、表示部298は、図14Cに示すように、吐出完了範囲画像LIと吐出完了インク層画像FLIと表示画面81に表示する。表示画面81には、吐出完了範囲画像LIと吐出完了インク層画像FLIとが重畳して表示される。
【0115】
ステップS308において、吐出完了範囲取得部295は、第1吐出完了範囲LAを取得し、算出部296は、第2吐出完了範囲LDを算出する。ここでは、パス数および総パス数についてM≦Nが成り立っているため、印刷データPD3のうち第1インク層データLDaが印刷されている。第1インク層データLDaにおいてパスが実行された回数は、M[回]である。したがって、パスが実行された回数であるM[回]を用いて、ステップS306と同様に吐出完了範囲取得部295は、第1吐出完了範囲LAを取得する。また、ステップS306と同様に、算出部296は、第2吐出完了範囲LDを算出する。
【0116】
ステップS309において、表示部298は、吐出完了範囲画像LIを表示画面81に表示する。ここでは、吐出完了画像層データが存在しないため、ステップS307と異なり、吐出完了インク層画像FLIは、表示されない。
【0117】
ステップS310において、制御装置90は、総パス数とパス数とに基づいて、画像の印刷が完了したかを判定する。印刷が完了したか否かの判定の方法は、第1実施形態のステップS109(図5参照)と同様であり、説明を省略する。画像の印刷が終了していると判断した場合は、印刷を終了する。画像の印刷が終了していないと判断した場合は、ステップS304に戻る。
【0118】
以上のように、本実施形態の印刷システム1Bによると、吐出完了範囲画像LIが表示画面81に表示される。このことにより、レイヤー印刷においても、どのインク層のどの範囲まで印刷が完了しているのかが表示画面81に表示される。したがって、ユーザは、レイヤー印刷においても印刷の進捗度合いを把握することができる。
【0119】
本実施形態の印刷システム1Bによると、表示画面81には、吐出完了インク層画像FLIが表示されている。吐出完了範囲画像LIと吐出完了インク層画像FLIとを重畳表示することにより、メディア5上のインクの吐出の状態と、表示画面81に表示されている画像とが一致する。したがって、ユーザは、より印刷状態を把握しやすくなる。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は種々の形態で実施することができる。
【0121】
各実施形態では、パスが完了したときに表示画面81の表示を変化させていたが、印刷の進捗を把握する方法は、これに限定されない。例えば、キャリッジ17が、主走査方向Yに移動するときのキャリッジ17の移動量に応じて、表示画面81の表示が変更するようにしてもよい。
【0122】
上述した第3実施形態において、印刷データPD3は、マルチパス動作により印刷されるものであってもよい。すなわち、印刷データPD3の第1インク層データLDaおよび第2インク層データLDbがマルチパスにより印刷されるものであってもよい。この場合、印刷中のインク層データについて、第2実施形態のように、吐出完了範囲画像およびマルチパス範囲画像が表示される。したがって、どのインク層データを印刷しているのかを把握することができ、さらに、マルチパス動作の進捗も把握することができる。
【0123】
上述した第3実施形態では、画像データDT3は、第1画像層データLDTaおよび第2画像層データLDTbを有していたがこれに限定されない。画像データDT3は、複数の画像層データを備えないデータであってもよい。すなわち、画像データDT3は、単一の画像層データからなるデータであるが、画像データDT3をRIP処理した印刷データPD3が複数のインク層データを有するものであってもよい。このとき、図16Aに示すように、第1インク層データLDaを印刷しているときの第2吐出完了範囲LD2は、第2インク層データLDbにおいてインクを吐出する範囲を除いたものであってもよい。図16Aは、画像データDT3が単一の画像層データからなるデータであり、かつ第1インク層データLDa(図14A参照)を印刷しているときの画像データDT3を表している。図16Aにおいて境界R10より上流側の範囲が印刷を完了している範囲である。このとき、第2吐出完了範囲LD2は、第2吐出完了範囲縦長さLDXと第2吐出完了範囲横長さLDYとを乗じた範囲から、境界R11により囲まれた範囲を除いた範囲である。このとき、図16Bに示すように、表示画面81には、第2吐出完了範囲縦長さLDXと第2吐出完了範囲横長さLDYとを乗じた範囲から、境界R11により囲まれた範囲を除いた範囲を可視化した吐出完了範囲画像LIが表示される。
【0124】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、メディアを載置台の上に載置し、載置台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、メディアを台の上に載置し、載置台に対してキャリッジ17を主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。さらに、メディア5をインクヘッド40に対して搬送しながら印刷するライン方式のプリンタ10にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 印刷システム
5 メディア
20 搬送機構(移動機構)
30 ヘッド移動機構(移動機構)
40 インクヘッド
90 制御装置
91 画像データ取得部
92 印刷データ取得部
95 吐出完了範囲取得部
96 算出部
97 表示部
PD1 印刷データ
PA1 第1吐出完了範囲
DT1 画像データ
DA1 第2吐出完了範囲
FG1 吐出完了範囲画像
IG1 吐出未完了範囲画像
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B