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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088193
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】焼却プラント及び燃焼状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20240625BHJP
   F23N 5/16 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F23G5/50 L ZAB
F23N5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203250
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
(72)【発明者】
【氏名】神田 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小椋 凌
(72)【発明者】
【氏名】山川 翔平
【テーマコード(参考)】
3K005
3K062
【Fターム(参考)】
3K005WB04
3K005WB07
3K005WC06
3K062AA02
3K062BA02
3K062CA01
3K062CA08
3K062CB03
3K062CB08
3K062DA01
3K062DA22
3K062DA40
3K062DB08
3K062DB17
(57)【要約】
【課題】 再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定できる焼却プラント及び燃焼状態判定方法を提供する。
【解決手段】 複数の搬送装置21~23、主燃焼室11、再燃焼室12及び仕切壁13を含む焼却炉1と、空気供給装置52と、第1及び第2の音波取得装置93,94と、酸素濃度センサ92と、温度センサ91と、基準燃焼スペクトルを予め記憶する記憶器9Mと、判定器9aと、を備え、判定器9aは、酸素濃度センサ92による測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ温度センサ91による測定温度が温度許容範囲内であるときに、第1及び第2の音波取得装置93,94の各々で取得した音波のスペクトルを算出し、これらの音波のスペクトルに基づいて再燃焼室12の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、この燃焼音のスペクトルと基準燃焼スペクトルとに基づいて再燃焼室12の燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉と、
前記主燃焼室から前記再燃焼室へ流れる燃焼用空気を前記仕切壁を介して前記主燃焼室へ供給する空気供給装置と、
前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置に配置された第1及び第2の音波取得装置と、
前記再燃焼室内の酸素濃度を繰り返し測定する酸素濃度センサと、
前記再燃焼室内の温度を繰り返し測定する温度センサと、
前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである基準燃焼スペクトルを予め複数記憶する記憶器と、
前記再燃焼室内における燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する判定器と、を備え、
前記判定器は、
前記酸素濃度センサによる測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記温度センサによる測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、この導出した燃焼音のスペクトルが前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する、
焼却プラント。
【請求項2】
前記空気供給装置を制御する供給量制御器をさらに備え、
前記供給量制御器は、
前記判定器が燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合に、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が上昇傾向を示しているときには、前記空気供給装置に燃焼用空気の供給量を減少させ、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が下降傾向を示しているときには、前記空気供給装置に燃焼用空気の供給量を増加させる、
請求項1に記載の焼却プラント。
【請求項3】
前記供給量制御器によって制御され、前記焼却炉から排出される排ガスの一部を循環排ガスとして前記主燃焼室へ供給する排ガス供給装置をさらに備え、
前記供給量制御器は、
前記判定器が燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合に、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が上昇傾向を示し、かつ前記温度センサにより繰り返し測定された温度が上昇傾向を示しているときには、前記排ガス供給装置に循環排ガスの供給量を増加させ、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が下降傾向を示し、かつ前記温度センサにより繰り返し測定された温度が下降傾向を示しているときには、前記排ガス供給装置に循環排ガスの供給量を減少させる、
請求項2に記載の焼却プラント。
【請求項4】
前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルは、前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルと前記燃焼音以外の所定のノイズを含む複数のノイズのスペクトルとが積算されており、
前記判定器は、
前記所定のノイズの強度が最大となる特定周波数において前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルの強度が前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトルの強度と等しくなるように前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルを縮小し、この縮小した音波のスペクトルを前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトルから減算することにより、前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出する、
請求項1から3のいずれかに記載の焼却プラント。
【請求項5】
廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉の前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する、燃焼状態判定方法であって、
前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置で音波を取得し、
前記再燃焼室内の測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記再燃焼室内の測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び前記第2位置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び第2位置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、
前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである複数の基準燃焼スペクトルの中から前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルを抽出し、前記導出した燃焼音のスペクトルが前記抽出した基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する、
燃焼状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ごみ等の廃棄物を焼却する焼却プラント及び燃焼状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理施設として、ストーカ式の焼却炉を備える焼却プラントが知られている。ストーカ式焼却炉では、廃棄物を搬送しながら乾燥させて燃焼するために複数の搬送装置が廃棄物の搬送方向に並んで設置される。複数の搬送装置のそれぞれは、例えば、可動火格子と固定火格子とを複数有し、可動火格子が前後方向に揺動動作することにより、廃棄物を攪拌しながら搬送する。このような焼却炉では、良好な燃焼状態を維持できるように炉内のガス温度等に基づいて燃焼用空気の供給量等を制御するようになっている。
【0003】
特許文献1には、バーナの燃焼状態を診断する装置が記載されている。この装置では、バーナの燃焼音を1つの集音器で検出し、集音器から出力される検出信号がオクターブバンド分析器に入力される。オクターブバンド分析器にて各周波数帯域におけるノイズレベルが分析され、この分析結果が分析信号として燃焼診断装置に入力され、燃焼診断装置によりバーナの燃焼状態が正常燃焼,失火,不安定燃焼等に分類されて診断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-296450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ストーカ式の焼却炉には、燃焼室として、複数の搬送装置が設置され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室と、主燃焼室から流出する燃焼ガスを反転させて燃焼ガスを完全燃焼させる再燃焼室とを有する構成のものがある。このような焼却炉の燃焼室は領域が広い上、燃焼室には、燃焼用空気が供給されるため、燃焼状態に起因する燃焼音以外に燃焼用空気の供給に伴う音が生じる。さらに、搬送装置の可動火格子の動作に伴う音なども生じる。よって、このような焼却炉の燃焼室における燃焼状態を特許文献1に記載のバーナのように1つの集音器で検出した音に基づいて精度よく判定することは難しく、燃焼ガスを完全燃焼させる再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を判定することはなおさら難しい。
【0006】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定することができる焼却プラント及び燃焼状態判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係る焼却プラントは、廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉と、前記主燃焼室から前記再燃焼室へ流れる燃焼用空気を前記仕切壁を介して前記主燃焼室へ供給する空気供給装置と、前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置に配置された第1及び第2の音波取得装置と、前記再燃焼室内の酸素濃度を繰り返し測定する酸素濃度センサと、前記再燃焼室内の温度を繰り返し測定する温度センサと、前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである基準燃焼スペクトルを予め複数記憶する記憶器と、前記再燃焼室内における燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する判定器と、を備え、前記判定器は、前記酸素濃度センサによる測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記温度センサによる測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、この導出した燃焼音のスペクトルが前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する。
【0008】
本開示のある態様に係る燃焼状態判定方法は、廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉の前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する、燃焼状態判定方法であって、前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置で音波を取得し、前記再燃焼室内の測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記再燃焼室内の測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び前記第2位置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び第2位置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである複数の基準燃焼スペクトルの中から前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルを抽出し、前記導出した燃焼音のスペクトルが前記抽出した基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、以上に説明した構成を有し、再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定することができる焼却プラント及び燃焼状態判定方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の一例の焼却プラントの概略構成を示す図である。
図2図2は、焼却プラントの主要部の機能ブロック図である。
図3図3は、再燃焼室における温度許容範囲及び酸素濃度許容範囲を示す図である。
図4図4は、再燃焼室の同じ温度及び同じ酸素濃度に対応する基準燃焼スペクトル及び実燃焼スペクトルの例を示す図である。
図5図5は、制御装置による処理の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態の一例の焼却プラントの概略構成を示す図である。また、図2は、焼却プラント100の主要部の機能ブロック図である。
【0013】
図1に示す焼却プラント100は、焼却炉1、気体供給装置50、ボイラ30及び蒸気タービン発電設備35等を備える。
【0014】
まず、焼却プラント100についての概略を説明する。焼却炉1は、ストーカ式の焼却炉であり、供給された廃棄物を搬送しながら焼却する。ボイラ30は、焼却炉1における廃棄物の燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成する。つまり、ボイラ30は、流路壁に設けられた多数の水管31及び過熱器管32で、炉内で発生した高温の燃焼ガスと水との熱交換を行うことにより蒸気を生成する。ボイラ30で生成された蒸気は、蒸気タービン発電設備35へ供給され、発電に利用される。また、ボイラ30から排出される排ガスは、ろ過式の集じん機6等で浄化された後、煙突から大気中へ放出される。
【0015】
焼却炉1は、ホッパ41、フィーダ42、燃焼室10、仕切壁13、ストーカ装置20、焼却灰の排出シュート24、及び風箱25~27等を備えている。燃焼室10は主燃焼室11及び再燃焼室12を有する。
【0016】
焼却炉1では、ごみ等の廃棄物がホッパ41に供給される。ホッパ41に供給された廃棄物は、フィーダ42によって主燃焼室11へ押し出されて、主燃焼室11に設置されたストーカ装置20の乾燥段搬送装置21上へ供給される。
【0017】
ストーカ装置20は、主燃焼室11の下側に配置された複数の搬送装置、例えば、乾燥段搬送装置21、燃焼段搬送装置22及び後燃焼段搬送装置23を備えている。これらの複数の搬送装置は廃棄物の移動方向に配列されており、ストーカ装置20へ供給された廃棄物は、乾燥段搬送装置21、燃焼段搬送装置22及び後燃焼段搬送装置23の順に移動する。乾燥段搬送装置21、燃焼段搬送装置22及び後燃焼段搬送装置23の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、複数の可動火格子及び固定火格子を有し、可動火格子が揺動動作することにより、廃棄物を攪拌しながら下流側へ移動させる。搬送装置21~23は、例えば、廃棄物の移動方向に交互に並べて配置された複数の可動火格子及び固定火格子から構成され、可動火格子が間欠的に前後に揺動動作することにより、廃棄物を攪拌しながら下流側へ移動させる。このストーカ装置20では、乾燥段搬送装置21が廃棄物を乾燥させる乾燥ゾーンに割り当てられている。そして、燃焼段搬送装置22が乾燥された廃棄物を燃焼させる燃焼ゾーンに割り当てられ、後燃焼段搬送装置23が燃焼ゾーンで燃え残ったものを燃焼させる後燃焼ゾーンに割り当てられている。燃焼後に残った焼却灰は、排出シュート24から外部へ排出される。また、主燃焼室11で発生した燃焼ガスは、再燃焼室12へ送られて再燃焼室12で二次空気と混合及び撹拌され完全燃焼する。
【0018】
主燃焼室11は、複数の搬送装置21~23の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる。再燃焼室12は、廃棄物の移動方向における主燃焼室11の下流側端部から主燃焼室11と上下に重なるように斜め上向きに延びている。仕切壁13は、主燃焼室11と再燃焼室12との間に挟まれた壁であり、本例では仕切壁13に囲まれた空間が形成されているが、空間が形成されていない場合もある。
【0019】
気体供給装置50は、燃焼室10内に気体を供給する装置である。本実施形態の気体供給装置50は、一次空気供給装置51と、二次空気供給装置52と、排ガス供給装置53と、を有している。
【0020】
一次空気供給装置51は、送風機61及び第1,第2,第3ダンパ81,82,83を有し、送風機61から一次空気供給経路71を介して搬送装置21,22,23の下方から燃焼室10に一次空気を供給し、一次空気の供給量を調整可能である。一次空気供給経路71は、各搬送装置21,22,23の下方に設置された風箱25,26,27にそれぞれ一次空気を供給するための経路である。一次空気供給経路71には、風箱25,26,27のそれぞれに供給する一次空気の供給量を調整する第1,第2,第3ダンパ81,82,83が設置されている。一次空気供給装置51は、一次空気の供給量を増加させる場合は第1~第3ダンパ81~83の開度を大きくし、減少させる場合は第1~第3ダンパ81~83の開度を小さくする。
【0021】
二次空気供給装置52は、送風機62及び第4ダンパ84を有し、送風機62から二次空気供給経路72を介して、二次空気を燃焼室10に供給し、二次空気の供給量を調整可能である。具体的には、二次空気供給装置52は、主燃焼室11の天井部や両側面から二次空気を供給するとともに、仕切壁13を介して主燃焼室11に二次空気を供給する。主燃焼室11に供給された二次空気は主燃焼室11から再燃焼室12へ流れて、前述のように主燃焼室11で発生した燃焼ガスと混合及び攪拌される。二次空気供給経路72には、二次空気の供給量を調整する第4ダンパ84が設置されている。二次空気供給装置52は、二次空気の供給量を増加させる場合は第4ダンパ84の開度を大きくし、減少させる場合は第4ダンパ84の開度を小さくする。
【0022】
排ガス供給装置53は、送風機63及び第5ダンパ85を有し、ボイラ30から排出されて集じん機6で浄化された排ガスの一部を循環排ガスとして循環排ガス供給経路73を介して、送風機63によって燃焼室10に供給し、循環排ガスの供給量を調整可能である。つまり、ボイラ30から排出された排ガスは集じん機6で浄化され、その一部が循環排ガスとして排ガス供給装置53によって主燃焼室11の両側面や天井部から主燃焼室11内へ供給される。このように循環排ガスを主燃焼室11に供給することで、主燃焼室11内の酸素濃度を高めることなく、燃焼温度の局所的に過度な上昇を抑えてNOxの発生を抑えることができる。循環排ガス供給経路73には、循環排ガスの供給量を調整する第5ダンパ85が設置されている。排ガス供給装置53は、循環排ガスの供給量を増加させる場合は第5ダンパ85の開度を大きくし、減少させる場合は第5ダンパ85の開度を小さくする。
【0023】
また、再燃焼室12には、再燃焼室12内の温度を測定する温度センサ91が配設されるとともに、再燃焼室12の上部領域の酸素濃度を測定する酸素濃度センサ92が配設されている。また、主燃焼室11の下流側端部と再燃焼室12との境界部分において、互いに水平方向に離れて仕切壁13から遠い第1位置に第1の音波取得装置93が配設され、仕切壁13から近い第2位置に第2の音波取得装置94が配設されている。なお、3個以上の音波取得装置を、仕切壁13からの距離が異なるように水平方向に並べて配設し、この配設したうちのいずれか2個の音波取得装置を第1,第2の音波取得装置93,94としてもよい。
【0024】
また、燃焼室10の直近には、例えば耐熱ガラスを介して燃焼室10内を撮影する撮像装置95が設置されている。撮像装置95は、主燃焼室11で発生した火炎であって、再燃焼室12に到達した火炎を撮影することができる。また、撮像装置95の撮影画像を表示することができる表示装置96が、例えば監視室に設置されている。
【0025】
制御装置90は、例えばCPU及びメモリ等を含んで構成され、CPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、種々の演算を行うとともに、焼却炉1及び気体供給装置50等を制御する。すなわち、制御装置90は、フィーダ42、ストーカ装置20、一次空気供給装置51、二次空気供給装置52、及び排ガス供給装置53等を制御する。また、制御装置90は、撮像装置95の撮影画像を取得し、表示装置96に表示させることができる。また、制御装置90は、温度センサ91の測定値である再燃焼室12内の測定温度、酸素濃度センサ92の測定値である再燃焼室12内の測定酸素濃度、及び、第1,第2の音波取得装置93,94で取得した音波のデータを入力する。また、制御装置90は、判定器9a及び供給量制御器9bとしての機能を含む。なお、制御装置90は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。
【0026】
なお、本明細書で開示する制御装置90の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0027】
また、記憶器9Mには、予め、再燃焼室12内の複数の酸素濃度及び温度に対応付けられて再燃焼室12内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである基準燃焼スペクトルが記憶されている。なお、記憶器9Mは、制御装置90に含まれてもよい。
【0028】
図3は、再燃焼室12における温度許容範囲及び酸素濃度許容範囲を示す図である。温度許容範囲TRは、下限値TL以上、上限値TU以下の範囲である。酸素濃度許容範囲CRは、下限値CL以上、上限値CU以下の範囲である。温度許容範囲TR及び酸素濃度許容範囲CRは、再燃焼室12において正常な燃焼状態が得られる温度及び酸素濃度の範囲として設定されている。基準燃焼スペクトルは、温度許容範囲TR内にあり、かつ、酸素濃度許容範囲CR内にある複数の測定点PSの各々について導出され、記憶器9Mに記憶されている。基準燃焼スペクトルの導出方法については後述する。
【0029】
次に、制御装置90が判定器9a及び供給量制御器9bとして機能する場合について説明する。なお、温度センサ91は複数設置されているが、以降で述べる温度センサ91の測定値あるいは測定温度は、複数の温度センサ91の測定値の平均値であるものとする。
【0030】
まず、判定器9aについて説明する。焼却プラント100を運転中において、判定器9aは、温度センサ91の測定温度が温度許容範囲TR内であり、かつ酸素濃度センサ92の測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲CR内である場合に、第1,第2の音波取得装置93,94で取得した音波のデータを入力し、再燃焼室12内の燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する。この際、判定器9aは、第1の音波取得装置93で取得した音波のスペクトル及び第2の音波取得装置94で取得した音波のスペクトルを算出する。スペクトルは周波数ごとの強度を示す。そして、算出した第1の音波取得装置93で取得した音波のスペクトル及び第2の音波取得装置94で取得した音波のスペクトルに基づいて現在の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである実燃焼スペクトルを導出する。
【0031】
この実燃焼スペクトルの導出方法について説明する。音波取得装置93,94で取得した音波には、現在の燃焼状態に起因する燃焼音だけでなく複数のノイズが含まれる。ノイズには、例えば、二次空気の供給に伴う音や搬送装置21~23の可動火格子の動作に伴う音などが含まれる。二次空気の供給に伴う音は、例えば仕切壁13に設置されたノズルから二次空気が噴き出されるときに生じる音である。
【0032】
主燃焼室11から再燃焼室12へ向かう燃焼ガスの主流は矢印aで示す外側ルートを流れ、この外側ルートに配置された第1の音波取得装置93で取得される音波は、燃焼音の割合が高く、ノイズの割合が低い。一方、矢印bで示す内側ルートに配置された第2の音波取得装置94はノイズの発生源に近く、第2の音波取得装置94で取得される音波は、ノイズの割合が高く、燃焼音の割合が低い。
【0033】
そこで、例えば、二次空気の供給に伴う音等の所定のノイズのスペクトルにおいて、強度が最大となる周波数である特定周波数を予め求めておく。そして、第2の音波取得装置94で取得される音波のスペクトルにおける特定周波数の強度が、第1の音波取得装置93で取得される音波のスペクトルにおける特定周波数の強度と等しくなるように、第2の音波取得装置94で取得される音波のスペクトルを全周波数においてk倍(k<1)する。このk倍したスペクトル、すなわち縮小したスペクトルを第1の音波取得装置93で取得される音波のスペクトルから減算することにより、実燃焼スペクトルを導出する。これにより、ノイズが除去された燃焼音のスペクトルである実燃焼スペクトルを精度よく導出することができる。
【0034】
また、基準燃焼スペクトルは、次のようにして導出する。例えば、試運転時などにおいて、運転員等が表示装置96に表示される燃焼室10内の燃焼状態を視て正常と判断したときに入力装置を操作して制御装置90に基準燃焼スペクトルを導出する指示を入力する。すると、制御装置90は第1,第2の音波取得装置93,94で取得した音波のスペクトルを用いて、上述の実燃焼スペクトルを導出する場合と同様にして基準燃焼スペクトルを導出する。この基準燃焼スペクトルは、第1,第2の音波取得装置93,94で音波を取得したときの温度センサ91の測定温度及び酸素濃度センサ92の測定濃度に対応付けられて記憶器9Mに記憶される。
【0035】
このようにして、基準燃焼スペクトルは、予め定められた再燃焼室12における温度許容範囲TR内の複数の温度及び酸素濃度許容範囲CR内の複数の酸素濃度に対応付けられて複数導出され、記憶器9Mに記憶されている。
【0036】
図4は、再燃焼室12の同じ温度及び同じ酸素濃度に対応する基準燃焼スペクトルIS及び実燃焼スペクトルAS(AS1,AS2)の例を示す図である。予め基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SRが定められている。曲線SRaは許容範囲SRの上限を示す曲線であり、曲線SRbは許容範囲SRの下限を示す曲線である。
【0037】
判定器9aは、前述のように、酸素濃度センサ92の測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲CR内であり、かつ、温度センサ91の測定温度が温度許容範囲TR内である場合において、実燃焼スペクトルASを導出する。次に、判定器9aは、実燃焼スペクトルASを導出したときの測定酸素濃度及び測定温度に対応する基準燃焼スペクトルISを抽出し、抽出した基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SR内に実燃焼スペクトルASが収まるか否かに基づいて、再燃焼室12の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する。この際、判定器9aは、基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SR内に実燃焼スペクトルASが収まる場合、例えば、実燃焼スペクトルASが実燃焼スペクトルAS1のように、所定の全周波数領域において、強度が基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SR内に存在する場合は、燃焼状態の異常の兆候は無いと判定する。一方、判定器9aは、基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SR内に実燃焼スペクトルASが収まらない場合、例えば、実燃焼スペクトルASが実燃焼スペクトルAS2のように、ある周波数において、強度が基準燃焼スペクトルISに対する許容範囲SR外となる場合には、燃焼状態の異常の兆候が有ると判定する。
【0038】
上述したように、主燃焼室11から再燃焼室12へ流れる燃焼ガスの流路において燃焼ガスの主流が流れる外側ルートに配置された第1の音波取得装置93で取得される音波は、燃焼音の割合が高く、ノイズの割合が低い。一方、燃焼ガスの流路の内側ルートに配置された第2の音波取得装置94で取得される音波は、ノイズの割合が高く、燃焼音の割合が低い。よって、第1及び第2の音波取得装置93,94のそれそれで取得した音波のスペクトルを算出し、これらの音波のスペクトルに基づいて、ノイズが除去された燃焼音のスペクトルを導出することができる。この導出した燃焼音のスペクトルが基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、再燃焼室12の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定することにより、再燃焼室12における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定することができる。これにより、判定器9aによって燃焼状態の異常の兆候が有ると判定された場合に、再燃焼室12内の酸素濃度及び温度がそれぞれ許容範囲内であるうちに、後述の第5~第8処理のように、二次空気供給装置52による二次空気の供給量の調整等が可能となり、良好な燃焼状態を継続することが可能になる。
【0039】
次に供給量制御器9bについて説明する。焼却プラント100を運転中において、供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値及び温度センサ91の測定値に基づいて、以下の第1~第4処理のいずれかを行う。なお、二次空気供給装置52に燃焼用空気である二次空気の供給量を増加させると、再燃焼室12内の酸素濃度を増加させるとともに再燃焼室12内の温度の上昇を抑えることができる。一方、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を減少させると、再燃焼室12内の酸素濃度を低下させるとともに再燃焼室12内の温度の低下を抑えることができる。また、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を増加させると、再燃焼室12内の温度の上昇を抑えることができる。一方、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を減少させると、再燃焼室12内の温度の低下を抑えることができる。
【0040】
(第1処理)
供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CRの下限値CLを下回ったときには、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を増加させる。これにより、再燃焼室12内の酸素濃度を上昇させて酸素濃度許容範囲内に戻し、燃焼状態が不良になるのを防止できる。また、この際、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TRの下限値TLを下回っている場合には、供給量制御器9bは、再燃焼室12内の温度を温度許容範囲TR内に戻すために、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を減少させるようにしてもよい。
【0041】
(第2処理)
供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CRの上限値CUを上回ったときには、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を減少させる。これにより、再燃焼室12内の酸素濃度を低下させて酸素濃度許容範囲内に戻し、燃焼状態が不良になるのを防止できる。また、この際、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TRの上限値TUを上回っている場合には、供給量制御器9bは、再燃焼室12内の温度を温度許容範囲TR内に戻すために、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を増加させるようにしてもよい。
【0042】
(第3処理)
供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CR内であり、かつ、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TRの下限値TLを下回っている場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を減少させる。これにより、再燃焼室12内の温度を上昇させて温度許容範囲TR内に戻し、燃焼状態が不良になるのを防止できる。また、この場合、二次空気の供給量を減少させることに代えて、または、二次空気の供給量を減少させることに加えて、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を減少させるようにしてもよい。
【0043】
(第4処理)
供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CR内であり、かつ、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TRの上限値TUを上回っている場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を増加させる。これにより、再燃焼室12内の温度を低下させて温度許容範囲TR内に戻し、燃焼状態が不良になるのを防止できる。また、この場合、二次空気の供給量を増加させることに代えて、または、二次空気の供給量を増加させることに加えて、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を増加させるようにしてもよい。
【0044】
上記第1~第4処理の他、さらに、供給量制御器9bは、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CR内であり、かつ、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TR内である場合において、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合には、以下の第5~第9処理のいずれかの処理を行う。なお、制御装置90は、温度センサ91の測定値及び酸素濃度センサ92の測定値を所定時間間隔で取得し、取得した測定値を順次、制御装置90内のメモリに記憶している。
【0045】
以下の第5~第9処理において、供給量制御器9bは、メモリに記憶されている酸素濃度センサ92の測定値の経時変化に基づいて、酸素濃度センサ92の測定値が上昇傾向にあるか下降傾向にあるかを判断している。具体的には、例えば、酸素濃度センサ92の今回の測定値が前回の測定値に対して上昇していれば上昇傾向にあると判断し、下降していれば下降傾向にあると判断するようにしてもよい。また、供給量制御器9bは、メモリに記憶されている温度センサ91の測定値の経時変化に基づいて、温度センサ91の測定値が上昇傾向にあるか下降傾向にあるかを判断している。具体的には、例えば、温度センサ91の今回の測定値が前回の測定値に対して上昇していれば上昇傾向にあると判断し、下降していれば下降傾向にあると判断するようにしてもよい。
【0046】
(第5処理)
供給量制御器9bは、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定したときに、メモリに記憶している酸素濃度センサ92の測定値が上昇傾向にある場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を減少させる。これにより、再燃焼室12内の酸素濃度が酸素濃度許容範囲外に上昇するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。また、この際、メモリに記憶している温度センサ91の測定値が上昇傾向にある場合には、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を増加させることにより、温度の上昇を抑制するようにしてもよい。
【0047】
(第6処理)
供給量制御器9bは、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定したときに、メモリに記憶している酸素濃度センサ92の測定値が下降傾向にある場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を増加させる。これにより、再燃焼室12内の酸素濃度が酸素濃度許容範囲外に下降するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。また、この際、メモリに記憶している温度センサ91の測定値が下降傾向にある場合には、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を減少させることにより、温度の低下を抑制するようにしてもよい。
【0048】
(第7処理)
供給量制御器9bは、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定したときに、メモリに記憶している酸素濃度センサ92の測定値に上昇傾向及び下降傾向がなく、かつ温度センサ91の測定値が上昇傾向にある場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を増加させる。この二次空気の供給量を増加させることに代えて、または、これに加えて、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を増加させるようにしてもよい。これにより、再燃焼室12内の温度が温度許容範囲外に上昇するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。
【0049】
(第8処理)
供給量制御器9bは、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定したときに、メモリに記憶している酸素濃度センサ92の測定値に上昇傾向及び下降傾向がなく、かつ温度センサ91の測定値が下降傾向にある場合には、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を減少させる。この二次空気の供給量を減少させることに代えて、または、これに加えて、排ガス供給装置53に循環排ガスの供給量を減少させるようにしてもよい。これにより、再燃焼室12内の温度が温度許容範囲外に下降するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。
【0050】
(第9処理)
供給量制御器9bは、判定器9aが燃焼状態の異常の兆候が有ると判定したときに、メモリに記憶している酸素濃度センサ92の測定値に上昇傾向及び下降傾向がなく、かつ温度センサ91の測定値に上昇傾向及び下降傾向がない場合には、二次空気の供給量及び循環排ガスの供給量の増減は行わずに、現在の供給量を継続する。
【0051】
供給量制御器9bは、第1~第4処理において、二次空気供給装置52に二次空気の供給量を増加または減少させる場合、二次空気の供給量を第1の所定量増加または減少させるように制御する。また、供給量制御器9bは、第5~第8処理において、二次空気の供給量を増加または減少させる場合、二次空気の供給量を第2の所定量増加または減少させるように制御する。ここで、第2の所定量を第1の所定量よりも小さくしてもよいし、第1の所定量と同等にしてもよい。
【0052】
上述の二次空気の供給量を増減する場合と同様、供給量制御器9bは、第1~第4処理において循環排ガスの供給量を増加または減少させる場合の増減量と、第1~第8処理において循環排ガスの供給量を増加または減少させる場合の増減量とを、異ならせてもよいし、同等にしてもよい。
【0053】
図5は、制御装置90による処理の概略を示すフローチャートである。制御装置90は、図5に示す処理を、例えば所定時間間隔で繰り返し行う。
【0054】
制御装置90は、ステップS1で、酸素濃度センサ92の測定値及び温度センサ91の測定値を取得し、メモリに記憶する。次にステップS2では、制御装置90は、酸素濃度センサ92の測定値が酸素濃度許容範囲CR内であるか否かを判定するとともに、温度センサ91の測定値が温度許容範囲TR内であるか否かを判定する。酸素濃度センサ92の測定値及び温度センサ91の測定値の両方とも許容範囲内であれば、ステップS4へ進み、少なくともいずれか一方が許容範囲内ではない場合にはステップS3へ進む。
【0055】
ステップS3では、制御装置90は、酸素濃度センサ92の測定値及び温度センサ91の測定値に基づいて、前述の第1~第4処理のいずれかの処理を行い、二次空気等の供給量を増減させる。
【0056】
ステップS4では、制御装置90は、前述のように、実燃焼スペクトルASを導出し、基準燃焼スペクトルISと実燃焼スペクトルASとを比較して、再燃焼室12内の燃焼状態の異常の兆候が有るか否かを判定する。
【0057】
そして、制御装置90は、ステップS4で燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合には、ステップS5において、酸素濃度センサ92の測定値の上昇、下降傾向の有無及び温度センサ91の測定値の上昇、下降傾向の有無に基づいて、前述の第5~第9処理のいずれかの処理を行う。
【0058】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0059】
(本開示のまとめ)
本開示の第1態様に係る焼却プラントは、廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉と、前記主燃焼室から前記再燃焼室へ流れる燃焼用空気を前記仕切壁を介して前記主燃焼室へ供給する空気供給装置と、前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置に配置された第1及び第2の音波取得装置と、前記再燃焼室内の酸素濃度を繰り返し測定する酸素濃度センサと、前記再燃焼室内の温度を繰り返し測定する温度センサと、前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである基準燃焼スペクトルを予め複数記憶する記憶器と、前記再燃焼室内における燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する判定器と、を備え、前記判定器は、前記酸素濃度センサによる測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記温度センサによる測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、この導出した燃焼音のスペクトルが前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する。
【0060】
この構成によれば、第1及び第2の音波取得装置で取得される音波には、現在の燃焼状態に起因する燃焼音だけでなくノイズが含まれる。ノイズには、燃焼用空気の供給に伴う音や搬送装置の動作に伴う音などが含まれる。主燃焼室から再燃焼室へ流れる燃焼ガスの流路において燃焼ガスの主流が流れる外側ルートに配置された第1の音波取得装置で取得される音波は、燃焼音の割合が高く、ノイズの割合が低い。一方、燃焼ガスの流路の内側ルートに配置された第2の音波取得装置はノイズの発生源に近く、第2の音波取得装置で取得される音波は、ノイズの割合が高く、燃焼音の割合が低い。よって、第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルに基づいて、ノイズが除去された燃焼音のスペクトルを導出することができる。この導出した燃焼音のスペクトルが基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定することにより、再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定することができる。これにより、判定器によって燃焼状態の異常の兆候が有ると判定された場合に、再燃焼室内の酸素濃度及び温度がそれぞれ許容範囲内であるうちに、空気供給装置による燃焼用空気の供給量の調整等が可能となり、良好な燃焼状態を継続することが可能になる。
【0061】
本開示の第2態様に係る焼却プラントは、第1態様に係る焼却プラントにおいて、前記空気供給装置を制御する供給量制御器をさらに備え、前記供給量制御器は、前記判定器が燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合に、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が上昇傾向を示しているときには、前記空気供給装置に燃焼用空気の供給量を減少させ、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が下降傾向を示しているときには、前記空気供給装置に燃焼用空気の供給量を増加させる。
【0062】
この構成によれば、判定器が燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合に、酸素濃度センサによる測定酸素濃度が上昇傾向を示しているときには、空気供給装置に燃焼用空気の供給量を減少させることにより、再燃焼室内の酸素濃度が酸素濃度許容範囲外に上昇するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。また、酸素濃度センサによる測定酸素濃度が下降傾向を示しているときには、空気供給装置に燃焼用空気の供給量を増加させることにより、再燃焼室内の酸素濃度が酸素濃度許容範囲外に下降するのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。
【0063】
本開示の第3態様に係る焼却プラントは、第2態様に係る焼却プラントにおいて、前記供給量制御器によって制御され、前記焼却炉から排出される排ガスの一部を循環排ガスとして前記主燃焼室へ供給する排ガス供給装置をさらに備え、前記供給量制御器は、前記判定器が燃焼状態の異常の兆候が有ると判定した場合に、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が上昇傾向を示し、かつ前記温度センサにより繰り返し測定された温度が上昇傾向を示しているときには、前記排ガス供給装置に循環排ガスの供給量を増加させ、前記酸素濃度センサにより繰り返し測定された酸素濃度が下降傾向を示し、かつ前記温度センサにより繰り返し測定された温度が下降傾向を示しているときには、前記排ガス供給装置に循環排ガスの供給量を減少させる。
【0064】
この構成によれば、空気供給装置に燃焼用空気の供給量を減少あるいは増加させて再燃焼室内の酸素濃度が酸素濃度許容範囲外になることを防止することに加え、排ガス供給装置に循環排ガスの供給量を増加あるいは減少させることにより、再燃焼室内の温度が温度許容範囲外となるのを防止し、良好な燃焼状態を継続させることができる。
【0065】
本開示の第4態様に係る焼却プラントは、第1から第3態様のいずれかの態様に係る焼却プラントにおいて、前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトル及び前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルは、前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルと前記燃焼音以外の所定のノイズを含む複数のノイズのスペクトルとが積算されており、前記判定器は、前記所定のノイズの強度が最大となる特定周波数において前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルの強度が前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトルの強度と等しくなるように前記第2の音波取得装置で取得した音波のスペクトルを縮小し、この縮小した音波のスペクトルを前記第1の音波取得装置で取得した音波のスペクトルから減算することにより、前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出する。これにより、燃焼音のスペクトルを精度よく導出することができる。
【0066】
本開示のある態様に係る燃焼状態判定方法は、廃棄物の移動方向に配列された複数の搬送装置、前記複数の搬送装置の上方に形成され廃棄物の移動方向と同方向に燃焼ガスが流れる主燃焼室、廃棄物の移動方向における前記主燃焼室の下流側端部から上向きに延びる再燃焼室、及び、前記主燃焼室と前記再燃焼室との間に挟まれた仕切壁、を含む焼却炉の前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候の有無を判定する、燃焼状態判定方法であって、前記主燃焼室の下流側端部と前記再燃焼室との境界部分において、互いに水平方向に離れて前記仕切壁から遠い第1位置及び前記仕切壁から近い第2位置で音波を取得し、前記再燃焼室内の測定酸素濃度が酸素濃度許容範囲内であり、かつ前記再燃焼室内の測定温度が温度許容範囲内であるときに、前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び前記第2位置で取得した音波のスペクトルを算出し、この算出した前記第1位置で取得した音波のスペクトル及び第2位置で取得した音波のスペクトルに基づいて前記再燃焼室の燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルを導出し、前記再燃焼室内の複数の酸素濃度及び温度と対応付けられ、前記再燃焼室内の燃焼状態が正常なときの燃焼状態に起因する燃焼音のスペクトルである複数の基準燃焼スペクトルの中から前記測定酸素濃度及び前記測定温度と対応する前記基準燃焼スペクトルを抽出し、前記導出した燃焼音のスペクトルが前記抽出した基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、前記再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定する。
【0067】
この方法によれば、第1及び第2位置で取得される音波には、現在の燃焼状態に起因する燃焼音だけでなくノイズが含まれる。ノイズには、燃焼用空気の供給に伴う音や搬送装置の動作に伴う音などが含まれる。主燃焼室から再燃焼室へ流れる燃焼ガスの流路において燃焼ガスの主流が流れる外側ルートに位置する第1位置で取得される音波は、燃焼音の割合が高く、ノイズの割合が低い。一方、燃焼ガスの流路の内側ルートに位置する第2位置はノイズの発生源に近く、第2位置で取得される音波は、ノイズの割合が高く、燃焼音の割合が低い。よって、第1位置で取得した音波のスペクトル及び第2位置で取得した音波のスペクトルに基づいて、ノイズが除去された燃焼音のスペクトルを導出することができる。この導出した燃焼音が基準燃焼スペクトルに対する許容範囲内に収まるか否かに基づいて、再燃焼室の燃焼状態の異常の兆候が無いか有るかを判定することにより、再燃焼室における燃焼状態の異常の兆候の有無を精度よく判定することができる。これにより、燃焼状態の異常の兆候が有ると判定された場合に、再燃焼室内の酸素濃度及び温度がそれぞれ許容範囲内であるうちに、燃焼用空気の供給量の調整等が可能となり、良好な燃焼状態を継続することが可能になる。
【符号の説明】
【0068】
1 焼却炉
9a 判定器
9b 供給量制御器
9M 記憶器
11 主燃焼室
12 再燃焼室
13 仕切壁
21~23 搬送装置
52 二次空気供給装置
53 排ガス供給装置
91 温度センサ
92 酸素濃度センサ
93 第1の音波取得装置
94 第2の音波取得装置
100 焼却プラント
図1
図2
図3
図4
図5