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特開2024-88204内歯車加工用転造工具および当該工具を用いた内歯車加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088204
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】内歯車加工用転造工具および当該工具を用いた内歯車加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21H 5/02 20060101AFI20240625BHJP
   B21H 5/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B21H5/02
B21H5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203264
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嗣紀
(57)【要約】
【課題】モジュールの小さい(例えばモジュールが1以下)内歯車を効率的に転造加工する内歯車加工用転造工具および当該内歯車加工用転造工具を用いた内歯車の転造加工方法を提供する。
【解決手段】
複数の加工歯11が回転軸O10を中心として円環状に形成されている内歯車加工用転造工具10において、これらの加工歯11を形成する最外周の稜線11Lを回転軸O10と平行な断面において曲線状とする。また、加工歯11の歯元における歯厚13を回転軸O10に沿って一定にしても構わない。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工歯が回転軸を中心として円環状に形成されている内歯車加工用転造工具であって、前記加工歯を形成する最外周の稜線は前記回転軸と平行な断面において曲線状を呈していることを特徴とする内歯車加工用転造工具。
【請求項2】
前記加工歯の歯元における歯厚は、前記回転軸に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載の内歯車加工用転造工具。
【請求項3】
前記加工歯の歯元における歯厚は、前記回転軸に沿って一定であることを特徴とする請求項1に記載の内歯車加工用転造工具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内歯車加工用転造工具を用いて被加工材の内周面に内歯車を加工することを特徴とする内歯車加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯車を転造加工するための転造工具および当該転造工具を用いた内歯車加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内歯車を転造加工により製作する場合、例えば特許文献1では内歯車状の断面を持つ円柱形状の工具の少なくとも一方に外径上がり、あるいは歯形上がりの円錐面を設けた工具と、内歯車を加工する円環状の被加工物とを5軸の工作機械で同期回転させ、被加工物の回転軸方向に工具を送ることによって内歯車を転造する、アキシャル送りによる内歯車同期転造加工法が開示されている。従来の内歯車加工用転造工具100の平面図を図16、正面図を図17図16に示す内歯車加工用転造工具100のZ-Z線断面図を図18、従来の内歯車加工用転造工具100の加工歯101の模式図を図19にそれぞれ示す。
【0003】
このような転造加工方法によれば、被加工物の内面を軸方向に内歯車を順次形成することができる。そのため、転造加工工具と被加工物の接触する面積を小さくでき、加工荷重を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-120164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すようなアキシャル送りによる同期転造加工では、歯幅方向に内歯車を順次加工して、転造荷重を大幅に軽減できるが、円錐面と円筒面の境界部分すなわち、円錐面の最も径の大きい部分に被加工物からの反発力が集中して、繰り返し荷重によりこの部分が破損しやすいという問題があった。
【0006】
また、転造加工工具とは異なるねじれ角を持つ内歯車を加工する場合には転造加工工具と被加工内歯車の中心軸に傾き(いわゆる交差角)を持たせる必要があり、転造加工工具が円筒面を持つので交差角が小さい場合(概ね5゜以下)では問題がないが、交差角が大きくなると転造加工工具と被加工内歯車が干渉するという問題もあった。一方、そのような転造加工工具と被加工内歯車との干渉を防ぐために円筒部を失くすと、転造加工工具の送り目が被加工内歯車の歯すじ方向に生じるので、歯すじ方向の粗さが大きくなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はモジュールの小さい(例えば、モジュールが1以下)内歯車を効率的に転造加工する内歯車加工用転造工具および当該を用いた内歯車の転造加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内歯車加工用転造工具は、複数の加工歯が回転軸を中心として円環状に形成されている内歯車加工用転造工具において、内歯車加工用転造工具の最外周を形成する加工歯の稜線が回転軸と平行な断面において曲線状を呈する形状とする。また、内歯車加工用転造工具を用いた内歯車加工方法の発明は、当該内歯車加工用転造工具を用いて被加工材の内周面に内歯車を加工する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内歯車加工用転造工具は、モジュールの小さい(例えば、モジュールm≦1)で内歯車を効率的に転造加工できるという効果を奏する。また、本発明の内歯車加工用転造工具は被加工内歯車からの変形抵抗が集中する部分が存在しないため、転造工具としての寿命延長が可能になる。同時に、本発明の内歯車加工用転造工具の外観が回転楕円形状であるため、転造加工時に被加工内歯車との交差角を与えても被加工内歯車の内面と干渉し難い。
【0010】
特に、内歯車加工用転造工具の外周形状が球状あるいは扁球状であれば、交差角が大きくても内歯車加工用転造工具の外周と被加工材である内歯車内面は干渉しないので、単一の内歯車加工用転造工具でねじれ角の異なる複数の斜歯内歯車を製造できる。さらに、内歯車加工用転造工具をねじれ角のない平内歯車の形状とすることができるので、製造コストも少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の内歯車加工用転造工具10の平面図である。
図2】本発明の内歯車加工用転造工具10の正面図である。
図3図1に示す内歯車加工用転造工具10のX-X線断面図である。
図4】本発明の内歯車加工用転造工具10の加工歯11の模式図である。
図5】本発明の内歯車加工用転造工具10を用いた転造加工の模式図である。
図6】本発明の内歯車加工用転造工具20の平面図である。
図7】本発明の内歯車加工用転造工具20の正面図である。
図8図1に示す内歯車加工用転造工具20のY-Y線断面図である。
図9】本発明の内歯車加工用転造工具20の加工歯21の模式拡大図である。
図10】本発明の内歯車加工用転造工具20を用いた転造加工の模式図である。
図11】回転砥石81を用いた内歯車加工用転造工具10製作時の模式平面図である。
図12】回転砥石81を用いた内歯車加工用転造工具10製作時の模式正面図である。
図13】回転砥石91を用いた内歯車加工用転造工具20製作時の模式平面図である。
図14】回転砥石91を用いた内歯車加工用転造工具20製作時の模式正面図である。
図15】本発明の内歯車加工用転造工具10を用いた転造加工状況の模式図である。
図16】従来の内歯車加工用転造工具100の平面図である。
図17】従来の内歯車加工用転造工具100の正面図である。
図18図16に示す内歯車加工用転造工具100のZ-Z線断面図である。
図19】従来の内歯車加工用転造工具100の加工歯101の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。本発明の内歯車加工用転造工具(第1実施形態)10の平面図を図1、正面図を図2図1に示すX-X線断面図を図3、内歯車加工用転造工具10を形成する複数の加工歯11の拡大模式図を図4にそれぞれ示す。また、図1ないし図4に示す内歯車加工用転造工具10を用いた場合の被加工材W10への加工形態の模式図を図5に示す。
【0013】
第1実施形態(歯丈上がり型)の内歯車加工用転造工具10は、図1ないし図3に示す様に回転軸O10を中心として複数の加工歯11が円環状に形成されている。この加工歯11は、図4に示す様に加工歯11を形成する最外周の稜線11Lは回転軸O10と平行な断面において曲線状を呈している。また、この加工歯11は、図4に示す様に歯先側の歯厚12は回転軸O10から離れるにつれて徐々に小さくなる。これに対して、歯元側の歯厚13は回転軸O 1 0に沿った方向に動かした任意の位置で常に一定である。
【0014】
次に、第2実施形態の内歯車加工用転造工具20の平面図を図6、正面図を図7図6に示すY-Y線断面図を図8、内歯車加工用転造工具20を形成する加工歯21の拡大模式図を図9にそれぞれ示す。図6ないし図9に示す内歯車加工用転造工具20を用いた場合の被加工材W20への加工形態の模式図を図10に示す。
【0015】
第2実施形態(歯形上がり型)の内歯車加工用転造工具20は、図6ないし図8に示す様に回転軸O20を中心として複数の加工歯21が円環状に形成されている。この加工歯21は、図9に示す様に加工歯21を形成する最外周の稜線21Lは、図1等に示す第1実施形態の内歯車加工用転造工具10と同様に回転軸O20と平行な断面において曲線状を呈している。また、この加工歯21は、図9に示す様に歯先側の歯厚22および歯元側の歯厚23はいずれも回転軸O10からの距離によらず常に一定である。
【0016】
これら第1および第2実施形態の内歯車加工用転造工具は、いずれも内歯車加工用転造工具の外径面が回転楕円体の形状である。具体的には、内歯車加工用転造工具の回転軸と垂直な断面において内歯車加工用転造工具の中心から最も離れた点、すなわち内歯車の頂点が内歯車加工用転造工具の中心軸を回転軸とする回転楕円体上にある内歯車加工用転造工具である。
【0017】
なお、本発明における加工歯の歯形の形態は歯丈(はたけ)上がり型、もしくは歯形上がり型いずれでも構わないが、交差角を大きくしても被加工材と歯元部分との干渉が生じないので歯形上がり型がより好ましい。
【0018】
次に、本発明の内歯車加工用転造工具の製作方法について、図面を用いて説明する。回転砥石による内歯車加工用転造工具の製作状況の模式図を図11ないし図14に示す。歯丈上がり型の内歯車加工用転造工具10を回転砥石81を使用して製作した場合の模式平面図を図11、同模式正面図を図12に示す。歯丈上がり型の内歯車加工用転造工具10の製作では、図示しない外径が円筒形状の平内歯車の形状に製作した後、当該平内歯車素材の外周を球面形状に加工する。
【0019】
すなわち、図11および図12に示すように回転砥石81による加工前の平内歯車素材を内歯車加工用転造工具10の回転軸周りに回転(内歯車加工用転造工具10の回転方向82)させながら、回転砥石81を同回転軸に沿って円弧上に動かして(回転砥石81の回転方向83、回転砥石81の移動方向84)外周面の研削加工を行う。この研削加工で内歯車加工用転造工具10の外周面が多数の加工歯11から成る形状となり、平内歯車素材時の歯溝がそのまま残ることで、球体に平内歯車素材の歯溝が形成された形状の内歯車加工用転造工具10となる。
【0020】
同様に、歯形上がり型の内歯車加工用転造工具20を回転砥石91によって製作した場合の模式平面図を図13、同模式正面図を図14に示す。歯形上がり型の内歯車加工用転造工具20の製作では、図13および図14に示すように、歯形上がり型の内歯車加工用転造工具20を回転軸を中心として回転させながら(内歯車加工用転造工具20の回転方向95)、歯形を加工する加工物(例えば回転砥石91)を歯形上がり型の内歯車加工用転造工具20の回転軸の方向に当該回転軸との相対距離を変化させながら円弧を描くように移動させる(回転砥石91の回転方向93、回転砥石91の移動方向94)。
【0021】
次に、本発明の内歯車加工用転造工具を用いた転造加工状況の模式図を図15に示す。当該内歯車加工用転造工具10を用いた転造加工時において、図15に示すように工作機械35に固定されて内歯車加工用転造工具10を回転方向31に回転させながら、同時に保持装置36に固定された被加工材34も回転させつつ(被加工材34の回転方向32)、軸方向に移動させて(被加工材34の移動方向33)転造加工を行う。
【0022】
内歯車加工用転造工具の加工歯に関する送り目については、内歯車加工用転造工具10の中心軸方向の曲率が十分に大きく、被加工材34の1回転当たりの送りが小さければ、十分に低減可能である。また、被加工材の理論面粗さは、下式(1)を用いて算出できる。
Ry=f/8R・・・・(1)
Ry:理論面粗さ(最大高さ)(mm)
f:送り量(mm/rev)
R:内歯車加工用転造工具の中心軸方向の最大径における曲率半径(mm)
例えば、f=0.04mm/rev、R=10mmとすると、Ry=20nmとなり、理論的には機械加工面として十分に平滑な面粗さが得られる。
【符号の説明】
【0023】
10,20 内歯車加工用転造工具
11,21 内歯車加工用転造工具の加工歯
11L,21L 加工歯を形成する最外周の稜線
12,22 加工歯の歯先における歯厚
13,23 加工歯の歯元における歯厚
31 内歯車加工用転造工具の回転方向
32 被加工材の回転方向
33 被加工材の移動方向
34 被加工材
35 工作機械
36 保持装置
81,91 回転砥石
82,92,95 内歯車加工用転造工具の回転方向
83,93 回転砥石の回転方向
84,94 回転砥石の移動方向
O10,O20 内歯車加工用転造工具の回転軸
W10,W20 被加工材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図13
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図15
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図17
図18
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