(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088207
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】パレット駆動装置、及びこの駆動装置を備えたパレット移送設備
(51)【国際特許分類】
B65G 35/06 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B65G35/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203268
(22)【出願日】2022-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 令和3年12月20日 公開場所 ダイハツ九州株式会社大分(中津)工場第1工場(大分県中津市大字昭和新田1番地)
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 義之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 純
(57)【要約】
【課題】駆動装置の省スペース化を図りつつも、パレットの高速搬送を安定的に実現する。
【解決手段】このパレット駆動装置10は、駆動源11と、搬送ライン4と返送ライン5との間に配設され、パレット6,7と連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体12と、駆動源11に連結され、駆動源11の駆動力で移動することで移動体12を所定の方向に搬送可能な長尺搬送体13と、搬送ライン4上のパレット6,7と移動体12との連結と、返送ライン5上のパレット6,7と移動体12との連結とを切替え可能とする切替え機構14とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置した状態のパレットを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインの終端から始端へと空の前記パレットを返送する返送ラインとを有するパレット搬送ラインに組み込まれて使用されるパレット駆動装置であって、
駆動源と、
前記搬送ラインと前記返送ラインとの間に配設され、前記パレットと連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体と、
前記駆動源に連結され、前記駆動源の駆動力で移動することで前記移動体を前記所定の方向に搬送可能な長尺搬送体と、
前記搬送ライン上の前記パレットと前記移動体との連結と、前記返送ライン上の前記パレットと前記移動体との連結とを切替え可能とする切替え機構とを備えたパレット駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット駆動装置、及びこの駆動装置を備えたパレット移送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク搬送用パレットの駆動装置に関しては従来種々のものが提案、実施されている。また、車体もしくは車体部品等の搬送用パレットの駆動装置に関しても、種々の駆動装置が提案、実施されている。
【0003】
例えば特許文献1には、駆動機構の省スペース化を図ることで、パレット移送設備を小型化することを目的として、パレットの側面を、搬送時と返送時とで互いに異なるローラの側面と当接させてパレットに回転駆動力を付与することで、パレットを搬送しかつ返送することのできるパレット駆動装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き駆動装置によれば、返送用の駆動装置を搬送用の駆動装置と兼用させることができるので、その分の駆動装置の設置スペース及び設備コストを抑制することが可能となる。
【0006】
その一方で、上記構成のパレット駆動装置だと、ローラの摩擦力でパレットを駆動しているため、例えばパレットの搬送速度を上げようとしてローラの回転速度を高めると、ローラに対してパレットが滑る可能性が高まる。これでは、パレットの高速搬送を安定的に実施することが難しい。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、駆動装置の省スペース化を図りつつも、パレットの高速搬送を安定的に実現することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係るパレット駆動装置によって達成される。すなわち、この駆動装置は、ワークを載置した状態のパレットを搬送する搬送ラインと、搬送ラインの終端から始端へと空のパレットを返送する返送ラインとを有するパレット搬送ラインに組み込まれて使用されるパレット駆動装置であって、駆動源と、搬送ラインと返送ラインとの間に配設され、パレットと連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体と、駆動源に連結され、駆動源の駆動力で移動することで移動体を所定の方向に搬送可能な長尺搬送体と、搬送ライン上のパレットと移動体との連結と、返送ライン上のパレットと移動体との連結とを切替え可能とする切替え機構とを備えた点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明に係るパレット駆動装置では、パレットと連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体を、駆動源に連結された長尺搬送体で搬送させる構造とした。駆動源は長尺搬送体に連結されており、またパレットは移動体に連結されているので、従来技術のように駆動源との接触部が滑るような事態を回避して、駆動源の駆動力で移動体ひいては移動体に連結されたパレットを確実に駆動することができる。よって、安定したパレットの高速搬送を容易に実現することが可能となる。また、本発明に係るパレット駆動装置では、搬送ラインと返送ラインとの間に移動体が配設され、搬送ライン上のパレットと移動体との連結と、返送ライン上のパレットと移動体との連結とを切替え機構により切替え可能としたので、一つのパレット駆動装置で搬送ライン上のパレット搬送と、返送ライン上のパレット搬送を実施することが可能となる。よって、パレット駆動装置の省スペース化、ひいてはこの駆動装置を組み込んだパレット移送設備の省スペース化を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係るパレット駆動装置において、駆動源は所定の位置に固定されたモータであって、長尺搬送体はコンベアベルトであってもよい。
【0011】
上述したように、本発明は、長尺搬送体の移動により移動体を所定の方向(例えば搬送ラインに沿った方向)に搬送可能とするものであるから、駆動源を所定の位置に固定した場合であっても長尺搬送体を介して移動体を駆動させることができる。よって、駆動源を所定位置に固定されたモータとすることで、駆動源(モータ)を移動させるための機構が不要となり、更なる省スペース化が可能となる。また、長尺搬送体をコンベアベルトにすれば、長尺搬送体を閉ループ構造として回転駆動させることができるので、長尺搬送体の可動スペースを小さくでき、これによっても更なる省スペース化が可能となる。また、駆動源にモータを用いるのであれば、モータの回転方向を逆転させることで、容易に長尺搬送体の移動方向ひいては移動体の移動方向を逆にすることができる。よって、搬送ライン上のパレット搬送と返送ライン上のパレット搬送とを容易にかつ簡便に実施することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るパレット搬送装置において、切替え機構は、ともに移動体に設けられる第一昇降体及び第二昇降体と、ともに所定の位置に固定され第一昇降体を昇降駆動する第一昇降駆動源及び第二昇降体を昇降駆動する第二昇降駆動源とを有し、第一昇降体が上昇することで第一昇降体と搬送ライン上のパレットとが嵌合し、第二昇降体が上昇することで第二昇降体と返送ライン上のパレットとが嵌合するように構成されてもよい。
【0013】
移動体に搬送ライン用の第一昇降体と返送ライン用の第二昇降体とを設けて、第一昇降体の上昇により第一昇降体と搬送ライン上のパレットとが嵌合し、第二昇降体の上昇により第二昇降体と返送ライン上のパレットとが嵌合するように構成することで、移動体とパレットとを容易に連結することができる。また、各昇降体が上昇することにより当該昇降体とパレットとが嵌合する構造であれば、各昇降体が下降することで容易に移動体とパレットとの連結状態を解除することができる。また、各昇降体の駆動機構(第一及び第二昇降駆動源)は接地固定されているので、移動体が巨大化し又は移動体の重量が増大することで移動体の円滑な移動を妨げる心配もない。
【0014】
以上の説明に係るパレット駆動装置は、当該駆動装置の省スペース化を図りつつも、パレットの高速搬送を安定的に実現可能とするものであるから、例えばこのパレット駆動装置と、互いに並走して配設される第一の搬送ライン及び第二の搬送ラインと、二本の搬送ラインの間に配設される返送ラインとを備え、複数のパレット駆動装置が、第一の搬送ラインと返送ラインとの間と、第二の搬送ラインと返送ラインとの間とに交互に配設されているパレット移送設備として好適に提供することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、駆動装置の省スペース化を図りつつも、パレットの高速搬送を安定的に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパレット移送設備の平面図である。
【
図3】
図2に示す切替え機構を矢印Aの向きから見た図で、パレットと移動体とが非連結状態にある場合の正面図である。
【
図4】
図2に示す切替え機構を矢印Aの向きから見た図で、パレットと移動体とが連結状態にある場合の正面図である。
【
図5】
図1に示すパレット駆動装置を用いたパレットの搬送態様の一例を示す平面図で、搬送ライン上のパレットをパレット駆動装置で所定位置まで搬送した状態を示す図である。
【
図6】
図1に示すパレット駆動装置を用いたパレットの搬送態様の一例を示す平面図で、返送ライン上のパレットをパレット駆動装置で駆動可能とした状態を示す図である。
【
図7】
図1に示すパレット駆動装置を用いたパレットの搬送態様の一例を示す平面図で、返送ライン上のパレットをパレット駆動装置で所定位置まで搬送した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るパレット駆動装置の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、車幅方向とは車体の搬送方向、言い換えるとパレットの搬送方向に直交する向きをいうものとする。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るパレット駆動装置10、及びこの駆動装置10を組み込んでなるパレット移送設備1の一部を平面視した図である。同図に示すように、この移送設備1は、ワークとしての車体2を搬送するラインに組み込まれて使用されるものであり、車体2を載置した状態のパレット3を搬送する搬送ライン4と、搬送ライン4の終端から空のパレット3を返送する返送ライン5とを有する。
図1に示す例では、
図1中の左から二番目のパレット3上に位置する車体2のみを代表して二点鎖線で示している。もちろん、
図1は、搬送ライン4上に位置する二つ以上のパレット3上に車体2が存在する形態を否定するものではない。搬送ライン4上に位置する全てのパレット3上に車体2が存在してもよい。
【0019】
ここで、搬送ライン4は互いに平行に2列に配置されている。各搬送ライン4は、例えば基礎となるフレーム上に配設された搬送用レールによりそれぞれ構成されている。また、返送ライン5は、並走する2本の搬送ライン4の間に配設されており、搬送ライン4と同様、基礎となるフレーム上に配設された返送用レールにより構成されている。
【0020】
パレット3は、並列配置された2本の搬送ライン4上に分割して配置されている。これにより、双方の分割パレット6,7は、ワークとなる車体2を、その両側部にて部分的に載置及び支持する(
図1を参照)。
【0021】
ここで、各分割パレット6,7の形態は特に限定されず、上述した搬送ライン4を構成するレール上を移動可能な限りにおいて、任意の形態をとることが可能である。
【0022】
また、詳細な図示は省略するが、本実施形態では、各分割パレット6,7の上面に、車体2を保持するためのピンが複数箇所に設けられている。従い、これらのピンを車体2の一部(下部)に嵌め合わせて車体2を各分割パレット6,7に取付けることで、車体2の搬送時、車体2を介して一対の分割パレット6,7が同期して一体的に移送可能とされる。
【0023】
また、この実施形態では、一方の分割パレット6と他方の分割パレット7のうち互いに車幅方向に対峙する面に、分割パレット6,7同士を連結させるための一対の連結部8,9がそれぞれ設けられている。この場合、並走する一対の返送ライン5上に位置する一対の分割パレット6,7が一対の連結部8,9を介して互いに連結した状態で一対の返送ライン5上を移送可能とされている。
【0024】
パレット駆動装置10は、駆動源11と、搬送ライン4と返送ライン5との間に配設され、分割パレット6,7と連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体12と、駆動源11に連結され、駆動源11の駆動力で移動することで移動体12を所定の方向に搬送可能な長尺搬送体13と、搬送ライン4上の分割パレット6,7と移動体12との連結と、返送ライン5上の分割パレット6,7と移動体12との連結とを切替え可能とする切替え機構14(
図2を参照)とを備える。
【0025】
駆動源11は、例えばモータであって、所定の位置に接地固定される。本実施形態では、搬送ライン4に沿って延びる長尺搬送体13の長手方向一端側に配設されている。この場合、駆動源11は、移送設備1の床面に固定されてもよいし、移送設備1のうち床面に固定された部分に固定されてもよい。
【0026】
移動体12は、本実施形態では、長尺搬送体13上に配設され、長尺搬送体13と一体的に移動可能とされている。この際、移動体12は、長尺搬送体13と機械的に連結されていてもよい。
【0027】
長尺搬送体13は、本実施形態ではコンベアベルトであって、互いに平行に並走している搬送ライン4及び返送ライン5との間に配設されている。この場合、長尺搬送体13は閉ループ構造をなし、搬送ライン4に沿って設けられた複数の工程S1~S4間で移動体12を搬送可能に構成される。例えば
図1中の最も左側に位置するパレット駆動装置10(長尺搬送体13)は、移動体12及び移動体12と連結された分割パレット6を隣り合う工程S1,S2間で移動可能としている。
【0028】
切替え機構14は、ともに移動体12に設けられる第一昇降体15(15a)及び第二昇降体15(15b)と、ともに所定の位置に固定され第一昇降体15a及び第二昇降体15bを昇降駆動する昇降駆動源16とを有する。各昇降体15a,15bは移動体12の一部をなす収容体19に収容され、収容体19に対して昇降可能に構成されている。
【0029】
本実施形態では、第一昇降体15a及び第二昇降体15bは、
図2に示すように、移動体12の車幅方向両側に配設される。そして、移動体12と車幅方向外側で隣接する位置に搬送ライン4上の分割パレット6が位置する場合、第一昇降体15aが搬送ライン4上の分割パレット6の下方に位置し、移動体12と車幅方向内側(中央側)で隣接する位置に返送ライン5上の分割パレット6が位置する場合、第二昇降体15bが返送ライン5上の分割パレット6の下方に位置する。
【0030】
よって、昇降駆動源16により第一昇降体15aを上方に押し上げることにより、第一昇降体15aの上端部と、分割パレット6の下面に設けたパレット嵌合部18とが嵌合し、これにより移動体12に搬送ライン4上の分割パレット6が連結される(
図3及び
図4を参照)。
【0031】
あるいは、昇降駆動源16により第二昇降体15bを上方に押し上げることにより、第二昇降体15bの上端部と、分割パレット6の下面に設けたパレット嵌合部(図示は省略)とが嵌合し、これにより移動体12に返送ライン5上の分割パレット6が連結される。
【0032】
上記構成の切替え機構14において、例えば各工程S1~S4の所定位置に移動体12が停止した状態で、各昇降駆動源16により第一昇降体15aと第二昇降体15bの一方を上昇させると共に他方を下降させるように、各昇降駆動源16を制御してもよい。これにより、各パレット駆動装置10における移動体12と搬送ライン4上の分割パレット6(7)との連結と、移動体12と返送ライン5上の分割パレット6(7)との連結とを自動的に切り替えることが可能となる。
【0033】
本実施形態では、切替え機構14は、カムフォロアなどのローラ17と、移動体12の移動方向に沿って延びローラ17を案内するガイドレール20とをさらに有する。ローラ17は第一昇降体15aの車幅方向外側に取付けられており、昇降駆動源16の駆動により上方に押し上げられるようになっている。また、ガイドレール20は、第一昇降体15aの下降完了位置(
図3)と上昇完了位置(
図4)におけるローラ17の高さ方向位置に合わせて配設されており、上方のガイドレール20は、分割パレット6との連結状態における移動体12(分割パレット6)の円滑な移動を、下方のガイドレール20は、分割パレット6との非連結状態における移動体12(分割パレット6)の円滑な移動をそれぞれ可能としている。
【0034】
本実施形態では、上記構成をなす複数のパレット駆動装置10が、搬送ライン4と返送ライン5との間に配設されている。詳細には、複数のパレット駆動装置10が、一方の分割パレット6が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5(
図1でいえば上側の搬送ライン4と返送ライン5)との間と、他方の分割パレット7が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5(
図1でいえば下側の搬送ライン4と返送ライン5)との間とに交互に配設されている。この場合、各工程S1~S4において、二つのパレット駆動装置10の長尺搬送体13が搬送方向で重複した配置となる。
図1に示す構成の場合、各パレット駆動装置10の移動体12を、共通する工程S1~S4の搬送方向中央位置に配置可能なように構成されている。
【0035】
次に、上記構成のパレット移送設備1における一対の分割パレット6,7の移送形態について
図1、及び
図5~
図7を例にとり説明する。なお、以下の説明では、搬送方向で最も上流側に位置するパレット駆動装置10を第一のパレット駆動装置、第一のパレット駆動装置の搬送方向下流側で最も近い位置に配設されるパレット駆動装置10を第二のパレット駆動装置、第二のパレット駆動装置の搬送方向下流側で最も近い位置に配設されるパレット駆動装置10を第三のパレット駆動装置とする。
【0036】
まず
図1に示すように、搬送方向上流側の工程S1から工程S3において、一対の搬送ライン4上の分割パレット6,7を次工程S2~S4に搬送する場合を考える。この場合、最も上流側の工程S1の一方の分割パレット6と車幅方向で隣り合う位置に第一のパレット駆動装置10の移動体12を配置する。また、工程S1の下流側に位置する工程S2の他方の分割パレット7と車幅方向で隣り合う位置に第二のパレット駆動装置10の移動体12を配置すると共に、工程S2の下流側に位置する工程S3の一方の分割パレット6と車幅方向で隣り合う位置に第三のパレット駆動装置10の移動体12を配置する。然る後、各切替え機構14の昇降駆動源16を駆動させて第一のパレット駆動装置10の第一昇降体15aを上昇させると共に、第二のパレット駆動装置10の第二昇降体15bを上昇させ、かつ第三のパレット駆動装置10の第一昇降体15aを上昇させる。これにより、第一のパレット駆動装置10の移動体12と一方の分割パレット6とを連結すると共に、第二のパレット駆動装置10の移動体12と他方の分割パレット7とを連結し、かつ第三のパレット駆動装置10の移動体12と一方の分割パレット6とを連結した状態とする(
図1中、丸印で示す箇所で移動体12と分割パレット6,7の一方とが連結している)。
【0037】
そして、この状態から各パレット駆動装置10の駆動源11により長尺搬送体13を搬送方向に駆動させる。これにより各パレット駆動装置10の移動体12を搬送方向下流側に向けて移動させる。各移動体12は下流側で直近の工程S2~S4に到着した後、停止する。この際、第一のパレット駆動装置10の移動体12は工程S1中の一方の分割パレット6と連結した状態にある。また、一方の分割パレット6と対をなす他方の分割パレット7に跨って車体2が載置されている。そのため、移動体12と共に一方の分割パレット6を移動させることで、この分割パレット6と対をなす他方の分割パレット7とその上方に載置された車体2とが一体に移動を開始する。そして、移動体12の停止に伴い各分割パレット6,7と対応する車体2とが停止する。以上のようにして、各工程S1~S3から各工程S2~S4への車体2及びパレット3の搬送が行われる。
【0038】
次に、各工程S2~S4で所定の作業が行われている間、連結の切替えを行う。すなわち、
図5に示す連結状態から
図6に示す連結状態へと各移動体12と分割パレット6,7との連結を切り替える。
【0039】
詳述すると、
図5に示す状態において、各切替え機構14の昇降駆動源16を駆動させて第一のパレット駆動装置10の第一昇降体15aを下降させると共に、第二のパレット駆動装置10の第二昇降体15bを下降させ、かつ第三のパレット駆動装置10の第一昇降体15aを下降させる。これにより、第一のパレット駆動装置10の移動体12と工程S2の搬送ライン4上に位置する一方の分割パレット6との連結状態が解除されると共に、第二のパレット駆動装置10の移動体12と工程S3の搬送ライン4上に位置する他方の分割パレット7との連結状態が解除され、かつ第三のパレット駆動装置10の移動体12と工程S4搬送ライン4上に位置する一方の分割パレット6との連結状態が解除された状態となる。
【0040】
また、この際、第一のパレット駆動装置10の第二昇降体15bを上昇させると共に、第二のパレット駆動装置10の第一昇降体15aを上昇させ、かつ第三のパレット駆動装置10の第二昇降体15bを上昇させる。これにより、第一のパレット駆動装置10の移動体12と工程S2の返送ライン5上に位置する一方の分割パレット6とを連結させると共に、第二のパレット駆動装置10の移動体12と工程S3の返送ライン5上に位置する他方の分割パレット7とを連結され、かつ第三のパレット駆動装置10の移動体12と工程S4の返送ライン5上に位置する一方の分割パレット6とを連結した状態になる。このようにして返送ライン5上のパレット3を搬送(返送方向への搬送)可能な状態とする。
【0041】
上述した状態から、各パレット駆動装置10の駆動源11により長尺搬送体13を返送方向に駆動させる。これにより各パレット駆動装置10の移動体12を返送方向下流側に向けて移動させる。各移動体12は返送方向の下流側で直近の工程S1~S3に到着した後、停止する。この際、第一のパレット駆動装置10の移動体12は工程S2の返送ライン5上に位置する一方の分割パレット6と連結した状態にある。また、一方の分割パレット6と対をなす他方の分割パレット7は連結部8,9を介して相互に連結された状態にある。そのため、移動体12と共に一方の分割パレット6を移動させることで、この分割パレット6と対をなす他方の分割パレット7が一体に移動を開始する。以上のようにして、各工程S2~S4から各工程S1~S3へのパレット3の返送が行われる(
図7を参照)。
【0042】
上述した一連の動作を繰り返すことで、交互に配置したパレット駆動装置10により一対の分割パレット6,7が搬送ライン4上を搬送されると共に、一対の分割パレット6,7が返送ライン5上を返送される。よって、空のパレット3が搬送ライン4の最上流位置に連続的に供給されると共に、パレット3上に載置した車体2の下流側への搬送が連続的に実施され得る。
【0043】
以上述べたように、本実施形態に係るパレット駆動装置10では、分割パレット6,7と連結した状態で所定の方向に移動可能な移動体12を、駆動源11に連結された長尺搬送体13で搬送させる構造とした。駆動源11は長尺搬送体13に連結されており、また分割パレット6,7は移動体12に連結されているので、従来技術のように駆動源11との接触部が滑るような事態を回避して、駆動源11の駆動力で移動体12ひいては移動体12に連結された分割パレット6,7を確実に駆動することができる。よって、安定したパレット3の高速搬送を容易に実現することが可能となる。また、本実施形態に係るパレット駆動装置10では、搬送ライン4と返送ライン5との間に移動体12が配設され、搬送ライン4上の分割パレット6,7と移動体12との連結と、返送ライン5上の分割パレット6,7と移動体12との連結とを切替え機構14により切替え可能としたので、一つのパレット駆動装置10で搬送ライン4上のパレット搬送と、返送ライン5上のパレット搬送を実施することが可能となる。よって、パレット駆動装置10の省スペース化、ひいてはこの駆動装置を組み込んだパレット移送設備1の省スペース化を図ることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、上記構成をなす複数のパレット駆動装置10が、一方の分割パレット6が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間と、他方の分割パレット7が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間とに交互に配設されるようにした。このように複数のパレット駆動装置10を交互に配設することによって、各工程S1~S4において、二つのパレット駆動装置10の長尺搬送体13が搬送方向で重複した配置とすることができる。そのため、各パレット駆動装置10の移動体12を、共通する工程S1~S4の搬送方向の所定位置(ここでは中央位置)に配置することができ、複数のパレット駆動装置10間でスムーズに分割パレット6,7の受け渡しを行うことができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るパレット駆動装置、及びこの駆動装置を備えたパレット移送設備は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことは言うまでもない。
【0046】
例えば上記実施形態では、駆動源11をモータとしたが、モータ以外の駆動装置を用いることも可能である。同様に、上記実施形態では、長尺搬送体13としてコンベアベルトを例示したが、チェーンベルトなど他のベルト状構造体を用いることも可能である。あるいはラックアンドピニオン機構など他の機械要素を用いてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、分割パレット6,7との連結機能を有する切替え機構14として、第一及び第二昇降体15a,15bを設けて、これら昇降体15a,15bと分割パレット6,7のパレット嵌合部18と、各昇降体15a,15bの上端部とが嵌り合うことで、移動体12と分割パレット6,7との連結を選択的に可能とした場合を例示したが、切替え機構14はもちろんこれには限られない。各分割パレット6,7との連結と連結解除とを可能とし、かつ、何れか一方の分割パレット6,7との連結と、他方の分割パレット6,7との連結とを切替え可能な限りにおいて、任意の構成をなす切替え機構14を採用することが可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、複数のパレット駆動装置10を、一方の分割パレット6が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間と、他方の分割パレット7が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間とに交互に配設した場合を例示したが、もちろんパレット駆動装置10の配置態様はこれには限られない。例えば図示は省略するが、一方の分割パレット6が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間に、複数のパレット駆動装置10を搬送方向に連続して配設してもかまわない。あるいは、一方の分割パレット6が搬送される側の搬送ライン4と返送ライン5との間にのみ、複数のパレット駆動装置10を搬送方向に並べて配設してもかまわない。
【0049】
また、以上の説明では、互いに並走して配設される二本の搬送ライン4,4と、二本の搬送ライン4,4の間に二本の返送ライン5,5が配設されるパレット移送設備1に本判明に係るパレット駆動装置10を適用した場合を例示したが、もちろん本発明の適用対象はこれには限られない。例えば二本の搬送ライン4,4の間に一本の返送ライン5が配設される構造のパレット移送設備に本発明に係るパレット駆動装置10を適用してもよい。あるいは、一本の搬送ライン4と、一本の返送ライン5とが並走して配設される構造のパレット移送設備に本発明に係るパレット駆動装置10を適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 パレット移送設備
2 車体
3 パレット
4 搬送ライン
5 返送ライン
6,7 分割パレット
8,9 連結部
10 パレット駆動装置
1 駆動源
12 移動体
13 長尺搬送体
14 機構
15a 第一昇降体
15b 第二昇降体
16 昇降駆動源
17 ローラ
18 パレット嵌合部
19 収容体
20 ガイドレール
S1,S2,S3,S4 工程