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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088212
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240625BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16F15/08 W
F16F15/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203273
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 太希
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD11
3J048BA04
3J048BA24
3J048EA01
(57)【要約】
【課題】側方ストッパゴムの圧縮変形量が小さい状態での柔らかいばね特性と、側方ストッパゴムの圧縮変形量が大きい状態での硬いばね特性とを、両立して実現することができる、新規な構造の防振装置を提供する。
【解決手段】第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有する防振装置10において、第一の取付部材12が側方に開口して延びる取付用の筒状部18を備えており、筒状部18の外周面から外周へ向けて筒状部18の中心軸Aと直交する側方へ突出する側方ストッパゴム30が設けられており、側方ストッパゴム30が突出先端へ向けて先細形状とされており、側方ストッパゴム30における突出方向の基端及び先端を外れた中間部分には、側方ストッパゴム30の周方向に延びる凹溝38が形成されており、側方ストッパゴム30の突出先端面32から突出する緩衝突起36が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有する防振装置において、
前記第一の取付部材が側方に開口して延びる取付用の筒状部を備えており、
該筒状部の外周面から外周へ向けて該筒状部の軸方向と直交する側方へ突出する側方ストッパゴムが設けられており、
該側方ストッパゴムが突出先端へ向けて先細形状とされており、
該側方ストッパゴムにおける突出方向の基端及び先端を外れた中間部分には、該側方ストッパゴムの周方向に延びる凹溝が形成されており、
該側方ストッパゴムの突出先端面から突出する緩衝突起が設けられている防振装置。
【請求項2】
前記凹溝は、前記側方ストッパゴムの突出方向の中央よりも基端側には形成されることなく、該側方ストッパゴムの突出方向の中央よりも先端側に形成されており、
該側方ストッパゴムは、前記筒状部の軸方向における長さ寸法が該筒状部の軸方向と直交する幅寸法よりも大きい扁平形状とされており、
前記緩衝突起は、該側方ストッパゴムの突出先端面の中央に部分的に設けられており、
該緩衝突起は、該筒状部の軸方向における長さ寸法が該筒状部の軸方向と直交する幅寸法よりも大きい扁平形状とされており、
該緩衝突起は、長さ方向の中央から両外側に向けて突出高さ寸法が小さくなる先細形状とされている請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記側方ストッパゴムの幅方向の両側面に一対の前記凹溝が形成されている請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記側方ストッパゴムの幅方向の両側面において前記凹溝が前記筒状部の軸方向と略平行に直線的に延びており、
該側方ストッパゴムにおける該凹溝よりも先端側の突出高さ寸法が、該筒状部の軸方向における両端部分で両外側に向けて小さくなっている請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項5】
前記緩衝突起は、幅方向の中央から両外側に向けて突出高さ寸法が小さくなる先細形状とされている請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項6】
前記側方ストッパゴムは、長さ方向の中央から両外側に向けて幅狭となっている請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項7】
前記第一の取付部材と前記第二の取付部材が車両に取り付けられた車両装着状態において、車両前方に向けて突出する前方ストッパゴムと、車両後方に向けて突出する後方ストッパゴムとが、設けられており、
該後方ストッパゴムが前記側方ストッパゴムとされており、
該前方ストッパゴムは、突出高さ寸法が該後方ストッパゴムよりも小さくされており、外周面の前記凹溝と突出先端面の前記緩衝突起とが何れも形成されていない請求項1又は2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車において、エンジンを車両ボデーに対して防振連結するエンジンマウント等に適用される防振装置が知られている。例えば、特表2006-505751号公報(特許文献1)にも示されているように、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有している。防振装置は、エンジンマウントとして用いられる場合に、例えば、第一の取付部材がエンジン側に取り付けられると共に、第二の取付部材が車両ボデー側に取り付けられることにより、エンジンと車両ボデーとを相互に防振連結する。
【0003】
また、特許文献1の防振装置には、第一の取付部材と第二の取付部材の側方への相対変位量を制限するストッパ機構が開示されている。ストッパ機構は、第一の取付部材の筒状部から外周側方へ向けて突出する側方ストッパゴムを介して第一の取付部材と第二の取付部材側(第二の取付部材に取り付けられるブラケット等)とが当接することで、第一の取付部材と第二の取付部材との相対変位量を側方ストッパゴムの突出方向において制限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006-505751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、側方ストッパゴムは、急激な加減速等によって第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位量が大きくなる場合に、十分な変位規制性能を発揮し得る硬いばね特性が要求されるが、一方で、強い変位規制性能を要求されない緩加速時等に第二の取付部材側に小さな圧縮変形量で当接する場合には、乗り心地への悪影響を防ぐ等の観点から柔らかいばね特性が望ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された側方ストッパゴムでは、このような圧縮変形量が小さい接触に際しても、比較的に硬いばね特性が発揮されてしまうことから、乗り心地性能等への悪影響が懸念されていた。
【0007】
本発明の解決課題は、側方ストッパゴムの圧縮変形量が小さい状態での柔らかいばね特性と、側方ストッパゴムの圧縮変形量が大きい状態での硬いばね特性とを、両立して実現することができる、新規な構造の防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結された構造を有する防振装置において、前記第一の取付部材が側方に開口して延びる取付用の筒状部を備えており、該筒状部の外周面から外周へ向けて該筒状部の軸方向と直交する側方へ突出する側方ストッパゴムが設けられており、該側方ストッパゴムが突出先端へ向けて先細形状とされており、該側方ストッパゴムにおける突出方向の基端及び先端を外れた中間部分には、該側方ストッパゴムの周方向に延びる凹溝が形成されており、該側方ストッパゴムの突出先端面から突出する緩衝突起が設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、凹溝の形成部分において側方ストッパゴムの突出方向に対する直交方向での断面積が小さくされていることから、側方ストッパゴムに対して突出方向で柔らかい圧縮ばね特性を設定することができる。特に、先細形状とされた側方ストッパゴムにおいて、凹溝が側方ストッパゴムにおける突出方向の中間部分に位置していることにより、側方ストッパゴムの突出方向での圧縮変形量が小さい状態において凹溝の形成による側方ストッパゴムの圧縮ばねの低減効果が有効に発揮される。
【0011】
また、側方ストッパゴムの突出先端面に緩衝突起が設けられていることによって、側方ストッパゴムの第二の取付部材側への当接初期の当接面積がより小さくされて、当接時の衝撃が低減される。緩衝突起の突出方向での圧縮変形量が大きくなった状態で、側方ストッパゴムの突出先端面が第二の取付部材側に当接することから、側方ストッパゴムの突出先端面の第二の取付部材側への当接による急激なばねの増大が回避される。加えて、緩衝突起の当接時において、側方ストッパゴムにも緩衝突起を介して当接力が及ぼされることで緩衝突起のベースとなる側方ストッパゴム自体の圧縮ばねも凹溝によって低減されることから、緩衝突起のボリュームを確保しつつ優れた当接衝撃の低減効果を得ることが可能になる。
【0012】
第二の態様は、第一の態様に記載された防振装置において、前記凹溝は、前記側方ストッパゴムの突出方向の中央よりも基端側には形成されることなく、該側方ストッパゴムの突出方向の中央よりも先端側に形成されており、該側方ストッパゴムは、前記筒状部の軸方向における長さ寸法が該筒状部の軸方向と直交する幅寸法よりも大きい扁平形状とされており、前記緩衝突起は、該側方ストッパゴムの突出先端面の中央に部分的に設けられており、該緩衝突起は、該筒状部の軸方向における長さ寸法が該筒状部の軸方向と直交する幅寸法よりも大きい扁平形状とされており、該緩衝突起は、長さ方向の中央から両外側に向けて突出高さ寸法が小さくなる先細形状とされているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、凹溝の形成位置が、先細形状とされた側方ストッパゴムにおける突出方向の中央よりも先端側とされていることにより、側方ストッパゴムの突出方向での圧縮変形量が小さい状態でも凹溝の形成による圧縮ばねの低減効果が有効に発揮される。
【0014】
側方ストッパゴムにおいて突出方向の圧縮変形量が大きくなると、凹溝が形成されていない側方ストッパゴムの基端部分によって硬い圧縮ばねが発揮されることから、大荷重の入力時には、側方ストッパゴムによる変位規制性能が有効に発揮される。
【0015】
側方ストッパゴムが筒状部の軸方向に長手とされていると共に、緩衝突起が側方ストッパゴムの突出先端面において中央部分に位置していることから、側方ストッパゴムの突出方向での圧縮変形量が大きくなるに従って、緩衝突起が設けられた中央部分から筒状部の軸方向両外側に向けて当接面積が徐々に広がっていく。このように、側方ストッパゴムの突出先端面は、全体が同時に第二の取付部材側に当接するのではなく、側方ストッパゴムの圧縮変形量の増大に伴って、筒状部の軸方向で中央側から外方へ向けて徐々に広がるように当接していくことから、当接面積の急激な変化が防止されて、急激なばねの増大が回避される。
【0016】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振装置において、前記側方ストッパゴムの幅方向の両側面に一対の前記凹溝が形成されているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、凹溝が側方ストッパゴムの幅方向の両側面にそれぞれ開口して側方ストッパゴムの長手方向に延びていることによって、側方ストッパゴムの突出方向に対する直交断面の断面積が凹溝の形成部分において効率的に小さくされている。それゆえ、側方ストッパゴムにおける凹溝の形成部分が優先的に変形することによって、柔らかい圧縮ばね特性を得ることができる。特に、側方ストッパゴムの両側に凹溝が形成されることにより、凹溝の深さが比較的に小さくても、凹溝の形成部分における側方ストッパゴムの断面積を小さく設定することができる。
【0018】
第一の取付部材と第二の取付部材の相対変位の方向(荷重入力方向)によっては、側方ストッパゴムが凹溝の形成部分で首振り状に変形することによって、当接初期のより柔らかいばね特性が発揮され得る。
【0019】
第四の態様は、第二又は第三の態様に記載された防振装置において、前記側方ストッパゴムの幅方向の両側面において前記凹溝が前記筒状部の軸方向と略平行に直線的に延びており、該側方ストッパゴムにおける該凹溝よりも先端側の突出高さ寸法が、該筒状部の軸方向における両端部分で両外側に向けて小さくなっているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、筒状部の軸方向において側方ストッパゴムの突出先端面の全体が第二の取付部材側の部材に同時に当接するのではなく、当接領域が中央部分から両外側へ向けて段階的に或いは徐々に広がることから、当接初期の柔らかいばね特性がより有利に実現されると共に、急激なばねの上昇によるショック感等が低減される。
【0021】
第五の態様は、第二又は第三の態様に記載された防振装置において、前記緩衝突起は、幅方向の中央から両外側に向けて突出高さ寸法が小さくなる先細形状とされているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、緩衝突起が筒状部の軸方向だけでなく周方向においても先細形状とされていることから、緩衝突起を備えた側方ストッパゴムが第二の取付部材側に当接する際に、緩衝突起による緩衝作用をより効果的に得ることができる。
【0023】
第六の態様は、第二又は第三の態様に記載された防振装置において、前記側方ストッパゴムは、長さ方向の中央から両外側に向けて幅狭となっているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、側方ストッパゴムの第二の取付部材側に対する当接領域が、緩衝突起が設けられた中央部分から筒状部の軸方向両外側へ向けて広がっていく際に、側方ストッパゴムの当接面積の急激な増大が抑えられる。それゆえ、側方ストッパゴムの圧縮ばねの急激な増大が防止される。
【0025】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された防振装置において、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材が車両に取り付けられた車両装着状態において、車両前方に向けて突出する前方ストッパゴムと、車両後方に向けて突出する後方ストッパゴムとが、設けられており、該後方ストッパゴムが前記側方ストッパゴムとされており、該前方ストッパゴムは、突出高さ寸法が該後方ストッパゴムよりも小さくされており、外周面の前記凹溝と突出先端面の前記緩衝突起とが何れも形成されていないものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた防振装置によれば、前方ストッパゴムと後方ストッパゴムは、凹溝及び緩衝突起の有無と突出高さ寸法の違いとによって、相互に異なるばね特性が設定されており、突出方向の圧縮変形量が小さい状態において後方ストッパゴムには前方ストッパゴムよりも柔らかいばね特性が設定されている。そして、防振装置の車両装着状態において、前方ストッパゴムが車両前方に位置している。これにより、例えば、後方ストッパゴムが小さな圧縮変形量で第二の取付部材側に当接する車両の緩加速時等において、後方ストッパゴムの比較的に柔らかいばね特性によって、良好な乗り心地等が実現される。一方、前方ストッパゴムが第二の取付部材側に当接する車両の減速時等には、前方ストッパゴムの比較的に硬いばね特性によって、制動時の良好な操縦安定性等が実現される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、側方ストッパゴムの突出方向での圧縮変形量が小さい状態における柔らかいばね特性と、側方ストッパゴムの突出方向での圧縮変形量が大きい状態における硬いばね特性とを、両立して実現することができる。そして、当接力が小さい初期の柔らかいばね特性と当接力が充分に大きくなった後の硬いばね特性との差を大きくして一層大きな非線型のばね特性を設定することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す部分断面図であって、図3のI-I断面に相当する図
図2図1のエンジンマウントの要部を示す斜視図
図3図2に示すエンジンマウントの要部の背面図
図4図2に示すエンジンマウントの要部の平面図
図5図2に示すエンジンマウントの要部の左側面図
図6図2のエンジンマウントの要部をアウタブラケットの装着状態で示す左側面図
図7図6のVII-VII断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1図5には、本発明に従う構造とされた防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、図1に示すように、第一の取付部材12と第二の取付部材14とが本体ゴム弾性体16で連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは後述する後方ストッパゴム30及び緩衝突起36の幅方向である図1中の上下方向を、前後方向とは車両前後方向となる図4中の上下方向を、左右方向とは後述する後方ストッパゴム30及び緩衝突起36の長さ方向である図4中の左右方向を、それぞれ言う。
【0031】
第一の取付部材12は、金属等で形成された硬質の部材であって、左右方向に延びる略四角筒形状とされた取付用の筒状部18と、筒状部18の下辺部分において下方へ突出する固着部20とを、一体的に備えている。なお、筒状部18の中心軸Aは、図1中の紙面直交方向に延びている。
【0032】
第二の取付部材14は、第一の取付部材12と同様に金属等で形成された硬質の部材とされており、第一の取付部材12の下方に離れて配置されている。第二の取付部材14の形状は、特に限定されないが、例えば、環状(筒状)や板状とされ得る。
【0033】
第一の取付部材12と第二の取付部材14の間には、本体ゴム弾性体16が配されている。本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状とされており、小径側の端部である上端部に第一の取付部材12が固着されていると共に、大径側の端部である下端部に第二の取付部材14が固着されている。
【0034】
第一の取付部材12の内周面には、嵌合ゴム22が固着されている。嵌合ゴム22は、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、逆向きの中空円錐台形状とされた固着部20の内部に充填されていると共に、筒状部18の内周面に層状に被着形成されている。筒状部18の内周には、嵌合ゴム22によって、左右方向に貫通する四角孔断面形状のブラケット装着孔24が形成されている。
【0035】
第一の取付部材12における筒状部18の外周面には、上方ストッパゴム26が固着されている。上方ストッパゴム26は、筒状部18の上辺部分の上面に固着されており、筒状部18から上方へ突出している。上方ストッパゴム26は、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。上方ストッパゴム26は、上面が前後方向で凹凸を繰り返す波状とされており、後述するアウタブラケット40との当接時の緩衝性能が付与されている。
【0036】
第一の取付部材12における筒状部18の外周面には、前方ストッパゴム28が固着されている。前方ストッパゴム28は、筒状部18の前方の側辺部分の前面に固着されており、筒状部18から前方へ突出している。前方ストッパゴム28は、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。前方ストッパゴム28は、図1及び図5に示すように、突出先端側(前方)に向けて上下方向で次第に幅狭となっていると共に、図4に示すように、突出先端側に向けて左右方向でも次第に幅狭となっている。前方ストッパゴム28は、図5に示すように、突出先端面が上下方向で凸状に湾曲する湾曲面とされており、上下方向の中央部分が両端部分よりも前方に突出している。前方ストッパゴム28は、外周面に局所的に形成される部分的な凹凸を備えておらず、特に後述する後方ストッパゴム30のような突出先端面に突出する緩衝突起(36)や外周面に開口する凹溝(38)が形成されていない。
【0037】
第一の取付部材12における筒状部18の外周面には、側方ストッパゴムとしての後方ストッパゴム30が固着されている。後方ストッパゴム30は、筒状部18の後方の側辺部分の前面に固着されており、筒状部18から後方へ突出している。従って、後方ストッパゴム30は、筒状部18の中心軸Aの延伸方向(軸方向)と直交する前後方向で前方ストッパゴム28と反対側に向けて突出している。後方ストッパゴム30は、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。
【0038】
後方ストッパゴム30は、左右方向の外寸(長さ寸法)が上下方向の外寸(幅寸法)よりも大きくされた扁平形状とされている。後方ストッパゴム30は、長尺方向である左右方向において中央から両外側へ向けて上下幅寸法が次第に小さくなっており、図3に示す後方から見た背面視において略六角形とされている。後方ストッパゴム30は、図1及び図5に示すように、突出先端側(後方)に向けて上下方向で次第に幅狭となっていると共に、図4に示すように、突出先端側に向けて左右方向でも次第に幅狭となっており、突出基端から突出先端へ向けて断面積が小さくなる先細形状とされている。
【0039】
後方ストッパゴム30の突出先端面(後面)は、図4に示すように、左右中央部分が突出方向(前後方向)と略直交して広がる平面状の中央直交面32とされていると共に、中央直交面32よりも左右両外側が左右外方に向けて前方へ傾斜する側方傾斜面34,34とされている。
【0040】
後方ストッパゴム30の突出先端面には、緩衝突起36が突出形成されている。緩衝突起36は、背面視において、左右方向の外寸(長さ寸法)が上下方向の外寸(幅寸法)よりも大きくされた扁平形状とされており、本実施形態では横長の略長方形とされている。緩衝突起36は、後方ストッパゴム30の突出先端面の上下方向及び左右方向の中央部分に部分的に設けられており、後方ストッパゴム30の突出先端面における上下両端及び左右両端までは達していない。本実施形態の緩衝突起36は、後方ストッパゴム30の突出先端面における中央直交面32に設けられており、中央直交面32の左右両端までは達していない。緩衝突起36は、短手方向である上下方向において中央から両外側へ向けて突出高さ寸法が小さくされており、それによって突出先端へ向けて幅狭となる先細形状とされている。緩衝突起36は、長手方向である左右方向において中央から両外側へ向けて突出高さ寸法が小さくされており、それによって突出先端へ向けて幅狭となる先細形状とされている。緩衝突起36が設けられた中央部分において、後方ストッパゴム30が最も後方へ突出している。
【0041】
後方ストッパゴム30の突出高さ寸法(前後寸法)H1は、前方ストッパゴム28の突出高さ寸法H2よりも大きくされている(図5参照)。好適には、後方ストッパゴム30における緩衝突起36を除いた部分の突出高さ寸法H1´が、前方ストッパゴム28の突出高さ寸法H2よりも大きくされている。なお、緩衝突起36の突出高さ寸法(H1-H1´)は、後方ストッパゴム30における緩衝突起36を除いた部分の突出高さ寸法H1´よりも小さくされており、好適にはH1´の1/4以下とされている。
【0042】
後方ストッパゴム30の上下両端部には、図1図5に示すように、凹溝38,38が形成されている。凹溝38は、後方ストッパゴム30の幅方向の端面である上面及び下面に開口しており、後方ストッパゴム30の周方向となる前後方向の全長に亘って連続して延びている。凹溝38は、図4に示すように、略一定の溝幅寸法で筒状部18の軸方向である左右方向に直線的に延びている。凹溝38は、図1に示すように、上下両側の開口へ向けて前後方向で拡開する溝断面形状を有している。凹溝38の断面形状は、溝長さ方向において略一定とされている。
【0043】
凹溝38は、溝深さ寸法が溝長さ方向で略一定とされており、後方ストッパゴム30の上面又は下面に沿って左右中央から外側へ向けて下傾又は上傾している。凹溝38は、溝深さ寸法が後方ストッパゴム30の上下方向寸法の1/4よりも小さくされており、より好適には1/6よりも小さくされている。また、凹溝38の深さ寸法は、凹溝38の形成部分における後方ストッパゴム30の横断面の面積が、後方ストッパゴム30の突出先端面の面積よりも小さくならない程度に抑えられることが望ましい。これにより、凹溝38の形成部位における歪みや応力の過度な集中や凹溝38より突出先端側における後方ストッパゴム30の首振り状の歪な変形などが効果的に抑えられる。
【0044】
上下両側の凹溝38,38は、前後方向で相互に同じ位置に形成されており、後方ストッパゴム30における幅方向(上下方向)の対向部位に形成されている。それら上下両側の凹溝38,38は、本実施形態では、互いに略対称形状の一対とされている。これにより、本実施形態において、凹溝38,38を備える後方ストッパゴム30は、緩衝突起36を含む全体が上下中央に対する対称形状とされている。
【0045】
凹溝38が筒状部18の軸方向(左右方向)と略平行に延びていることにより、先端面が中央直交面32とされた後方ストッパゴム30の左右中央部分では、後方ストッパゴム30における凹溝38よりも先端側への突出高さ寸法が左右方向で略一定とされている。また、先端面が側方傾斜面34とされた後方ストッパゴム30の左右両端部分において、後方ストッパゴム30における凹溝38よりも先端側は、突出高さ寸法が左右方向の外側に向けて小さくなっており、左右方向の外側へ向けて前後方向で薄肉となっている。
【0046】
凹溝38は、後方ストッパゴム30の基端及び先端から外れた突出方向の中間部分に形成されている。凹溝38は、前後方向の中央が、図1中に一点鎖線で示した後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bよりも突出先端側(後方)に位置している。好適には、凹溝38の全体が、後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bよりも後方に位置している。本実施形態の凹溝38は、後方ストッパゴム30の突出先端面(中央直交面32)よりも後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bに近い位置に配置されている。本実施形態の凹溝38は、後方ストッパゴム30における突出方向の一箇所だけに形成されており、後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bよりも前方(突出基端側)には、凹溝38が形成されていない。本実施形態の後方ストッパゴム30は、突出方向の中央Bよりも前方の外周面が部分的な凹凸をもたない滑らかな形状で周方向に連続している。
【0047】
このような構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付部材12が、ブラケット装着孔24に嵌め入れられる図示しないインナブラケットを介して、自動車のパワーユニット側に取り付けられると共に、第二の取付部材14が、アウタブラケット40を介して、車両ボデー側に取り付けられることにより、車両に装着される。そして、パワーユニットと車両ボデーが、車両に装着されたエンジンマウント10を介して相互に防振連結される。エンジンマウント10の車両への装着状態において、前方ストッパゴム28が車両前方に向けて突出し、後方ストッパゴム30が車両後方に向けて突出している。
【0048】
アウタブラケット40は、図6図7に示すように、第一の取付部材12の前後両側及び上側を囲むように配置されて、筒状部18の外周に対向配置されている。特に、アウタブラケット40の前壁部44と後壁部46は、前後のストッパゴム28,30に対して前後外方に所定のストッパクリアランスだけ離れた状態で配置されている。なお、上方ストッパゴム26は、図6においてアウタブラケット40の上壁部42に当接しているが、エンジンマウント10の車両装着状態では、パワーユニットの分担支持荷重によって第一の取付部材12がアウタブラケット40に対して下方へ相対移動することから、上方ストッパゴム26がアウタブラケット40の上壁部42に対して下方に離れた状態となる。
【0049】
エンジンマウント10の車両への装着状態において、パワーユニットと車両ボデーが相対的に変位する場合に、パワーユニット側に取り付けられた第一の取付部材12と、車両ボデー側に取り付けられた第二の取付部材14との相対変位量が過度に大きくなると、パワーユニットが他の部材に干渉したり、本体ゴム弾性体16が損傷する等の不具合が生じるおそれがある。そこで、エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14の相対変位量を制限するためのストッパ機構を備えている。
【0050】
エンジンマウント10は、第一の取付部材12の第二の取付部材14に対する上方への相対変位量を制限する上方ストッパ機構を備えている。上方ストッパ機構は、第一の取付部材12の筒状部18の上辺部分と、アウタブラケット40の上壁部42とが上方ストッパゴム26を介して当接することによって構成される。具体的には、例えば、自動車の段差やバンプの乗り越え等によって、パワーユニットが車両ボデーに対して上方へ大きく変位しようとする際に、パワーユニットと車両ボデーの相対変位量が上方ストッパ機構によって制限されて、本体ゴム弾性体16に対する上下方向の過度な引張力の作用が防止される。
【0051】
また、エンジンマウント10は、第一の取付部材12の第二の取付部材14に対する前方への相対変位量を制限する前方ストッパ機構を備えている。前方ストッパ機構は、第一の取付部材12の筒状部18における前側の側壁部と、第二の取付部材14側の部材であるアウタブラケット40の前壁部44とが前方ストッパゴム28を介して当接することによって構成される。具体的には、例えば、自動車の急減速等によって、パワーユニットが車両ボデーに対して前方へ大きく変位しようとする際に、パワーユニットと車両ボデーの相対変位量が前方ストッパ機構によって制限される。これにより、例えば、大質量のパワーユニットの変位を制限することによる操縦安定性の向上と、本体ゴム弾性体16の過度な変形を防ぐことによる耐久性の向上とが、図られる。
【0052】
前方ストッパゴム28は、後方ストッパゴム30のような緩衝突起や凹溝を備えていない。また、前方ストッパゴム28の突出高さ寸法は、後方ストッパゴム30の突出高さ寸法よりも小さくされており、前方ストッパゴム28の前後直交断面の最大断面積(基端の横断面積)は、後方ストッパゴム30の前後直交断面の最大断面積(基端の横断面積)と略同じとされている。これらによって、前方ストッパゴム28の突出方向の圧縮ばねは、後方ストッパゴム30の突出方向の圧縮ばねよりも硬く設定されており、前方ストッパ機構は、急減速時のパワーユニットの変位に対する優れた変位規制性能を有している。
【0053】
また、エンジンマウント10は、第一の取付部材12の第二の取付部材14に対する後方への相対変位量を制限する後方ストッパ機構を備えている。後方ストッパ機構は、第一の取付部材12の筒状部18における後側の側壁部と、アウタブラケット40の後壁部46とが後方ストッパゴム30を介して当接することによって構成される。具体的には、例えば、自動車の急加速等によって、パワーユニットが車両ボデーに対して後方へ大きく変位しようとする際に、パワーユニットと車両ボデーの相対変位量が後方ストッパ機構によって制限される。これにより、例えば、大質量のパワーユニットの変位を制限することによる操縦安定性の向上と、本体ゴム弾性体16の過度な変形を防ぐことによる耐久性の向上とが、図られる。
【0054】
ところで、後方ストッパ機構を構成する後方ストッパゴム30は、急激な加速(急加速)時だけでなく、例えば、緩やかな加速(緩加速)時にもアウタブラケット40の後壁部46に当接することから、緩加速時にもパワーユニットの車両ボデーに対する後方への相対変位量が後方ストッパ機構によって制限される。
【0055】
このような緩加速による後方ストッパゴム30のアウタブラケット40への当接状態では、ハンドル操作等によって左右方向等の他の方向の荷重も入力され得ることから、後方ストッパゴム30の当接によってばねが硬くなり過ぎるのを回避することが、乗り心地性能等の観点から重要になる。また、緩加速によってアウタブラケット40に当接した後方ストッパゴム30は、圧縮変形量が小さく、断面積が小さい先端部分が圧縮変形する一方で、断面積が大きい基端部分は圧縮変形が生じ難いことから、突出先端部分の柔らかいばね特性が求められる。ここにおいて、後方ストッパゴム30は、突出先端側に向けて上下方向及び左右方向で幅狭となる先細形状とされていることから、突出先端部分の前後直交断面の断面積が小さくされており、突出先端部分が基端部分よりも優先的に変形することによって、圧縮変形量が小さい状態での柔らかいばね特性が実現される。
【0056】
後方ストッパゴム30は、突出先端面に緩衝突起36を備えている。緩衝突起36は、前後直交断面が後方ストッパゴム30の突出先端面よりも小さくされており、柔らかい圧縮ばね特性を備えていると共に、後方ストッパゴム30の突出先端面から更に後方へ突出している。それゆえ、緩衝突起36がアウタブラケット40に対して優先的に当接して、柔らかいばね特性を得ることができる。しかも、緩衝突起36は、突出先端側に向けて先細とされており、前後方向での圧縮変形量が大きくなるに従って徐々に圧縮ばねが硬くなることから、当接初期におけるばね特性の立ち上がりが小さく抑えられ、圧縮変形量の増加に対する圧縮ばねの急激な増大に起因するショック感が抑えられて、良好な乗り心地性能等が実現される。特に本実施形態の緩衝突起36は、背面視において左右寸法が上下寸法よりも大きくされていることから、背面視において左右寸法が上下寸法よりも大きくされた後方ストッパゴム30の突出先端面にスペース効率よく形成されており、左右方向の寸法が大きく確保されていることによって、緩衝突起36の圧縮変形の進行に伴って圧縮ばねが硬くなる特性を得易い。
【0057】
後方ストッパゴム30は、左右中央から左右両外側へ向けて上下方向の幅寸法が徐々に小さくなっている。後方ストッパゴム30は、緩衝突起36が設けられた中央部分から左右両外側へ向けてアウタブラケット40に対する当接領域が広がっていくことから、後方ストッパゴム30が左右両外側へ向けて上下幅狭とされていれば、後方ストッパゴム30の当接領域が左右両外側へ拡大するのに伴う当接面積の増加率を抑えることができる。それゆえ、後方ストッパゴム30の圧縮変形量の増大に伴う圧縮ばねの変化がより緩やかになって、圧縮ばねの急激な変化による乗り心地への悪影響を防ぐことができる。
【0058】
後方ストッパゴム30には、上下の凹溝38,38が形成されている。そして、後方ストッパゴム30の前後直交断面の断面積が、凹溝38,38の形成部分において小さくされている。これにより、後方ストッパゴム30が前後方向で圧縮される際に、後方ストッパゴム30の圧縮ばねが低減されており、特に後方ストッパゴム30の圧縮変形量が小さい状態において柔らかいばね特性が実現される。
【0059】
凹溝38,38は、後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bよりも先端側に設けられていることから、後方ストッパゴム30の圧縮変形量が小さい状態においても凹溝38,38の形成部分の変形量が確保されて、凹溝38,38の形成による柔らかいばね特性が速やかに発揮される。しかも、先細とされた後方ストッパゴム30の先端部分に凹溝38,38を形成することで、凹溝38,38を過度に深くすることなく、凹溝38,38の形成部分における後方ストッパゴム30の前後直交断面積を十分に小さくすることができる。なお、凹溝38,38が後方ストッパゴム30の突出方向の中央Bよりも基端側には形成されていないことから、後方ストッパゴム30の圧縮変形量が大きくなる大荷重の入力時には、後方ストッパゴム30の基端部分の硬い圧縮ばね特性によって、優れた変位規制性能が発揮される。
【0060】
上下の凹溝38,38は、後方ストッパゴム30の突出方向における略同じ位置に形成されており、後方ストッパゴム30の上下対向部位に開口している。それゆえ、上下の凹溝38,38の深さを過度に大きくすることなく、それら凹溝38,38の形成部分における後方ストッパゴム30の前後直交断面の面積が小さくされて、後方ストッパゴム30の柔らかい圧縮ばね特性が実現される。本実施形態では、上下の凹溝38,38が互いに略同じ形状及び大きさとされていることから、後方ストッパゴム30に突出方向の圧縮力が作用する際に、凹溝38,38の形成による後方ストッパゴム30の歪な変形や凹溝38,38よりも突出先端側の首振り状の傾動変形などが生じ難い。
【0061】
緩衝突起36を含む後方ストッパゴム30とアウタブラケット40の後壁部46との前後離隔距離(ストッパクリアランス)は、前方ストッパゴム28とアウタブラケット40の前壁部44との前後離隔距離よりも小さくされている。これにより、後方ストッパゴム30は、比較的に小さい荷重の入力時にアウタブラケット40に当接して柔らかいばね特性を発揮し、入力荷重の増大に伴って圧縮ばねが徐々に硬くなって、パワーユニットの変位を規制するストッパ作用が徐々に強く発揮される。要するに、後方ストッパゴム30は、前方ストッパゴム28よりも圧縮変形のストロークが大きく設定されており、柔らかいばね特性から硬いばね特性へ徐々に移行するようになっている。それゆえ、エンジンマウント10は、通常の加速時には良好な乗り心地を実現し、急加速時にはパワーユニットの変位量を制限することで、操縦安定性と耐久性を確保している。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、側方ストッパゴムに複数の凹溝が形成されている場合に、それら複数の凹溝は、側方ストッパゴムの突出方向において相互に異なる位置に配置されていてもよい。
【0063】
凹溝は、側方ストッパゴムの周方向に全周に亘って連続して延びていてもよいし、周方向の一部だけに設けられていてもよい。このことからも分かるように、凹溝は、前記実施形態に示したように側方ストッパゴムの上面と下面に開口するものに限定されず、左面や右面に開口して形成されていてもよい。具体的には、例えば、側方ストッパゴムの左面と右面の両方又は一方に開口する凹溝や、側方ストッパゴムの上面と左面とに連続して鉤形に延びる凹溝、側方ストッパゴムの上面と左面と下面とに連続してU字形に延びる凹溝等が、何れも採用され得る。
【0064】
凹溝は、幅寸法、深さ寸法、断面形状の少なくとも一つが、溝長さ方向で変化していてもよい。前記実施形態に示した凹溝の幅寸法、深さ寸法、断面形状は、あくまでも例示であって、限定的に解釈されるべきではない。凹溝は、少なくとも一部が側方ストッパゴムの周方向に対して傾斜して延びていてもよい。凹溝は、全体として側方ストッパゴムの周方向に延びていればよく、部分的に側方ストッパゴムの突出方向に延びる部分を備えていてもよい。
【0065】
側方ストッパゴムは、突出方向視において前記実施形態に示したような略六角形に限定されず、四角形等の他の多角形や楕円形を含む円形、異形などであってもよい。
【0066】
側方ストッパゴムは、突出基端部の横断面積よりも突出先端面の面積の方が小さくされた先細形状であればよく、外周面における突出先端側への次第に細くなる傾斜面は、突出方向で部分的であってもよい。そこにおいて、側方ストッパゴムにおける凹溝の形成位置は、凹溝の形成部位における側方ストッパゴムの横断面積が、側方ストッパゴムの突出基端部の横断面積よりも小さく且つ突出先端面の面積よりも大きな位置とされる。
【0067】
緩衝突起の突出方向と直交する断面形状は、必ずしも扁平形状に限定されず、例えば、正方形や円形などであってもよい。緩衝突起は、側方ストッパゴムの先端面に複数が設けられていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、車両後方側に位置する後方ストッパゴムだけが本発明に係る側方ストッパゴムとされた例を示したが、車両前方側に位置する前方ストッパゴムを本発明に係る側方ストッパゴムで構成することもできる。要するに、本発明に係る側方ストッパゴムの配置(突出方向)は、特に限定されない。従って、例えば、側方ストッパゴムを車両の左右方向に突出するように設けることもできる。
【0069】
防振装置は、内部に液室を備えて液体の流動作用に基づく防振効果を発揮する流体封入式防振装置であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 エンジンマウント(第一の実施形態 防振装置)
12 第一の取付部材
14 第二の取付部材
16 本体ゴム弾性体
18 筒状部
20 固着部
22 嵌合ゴム
24 ブラケット装着孔
26 上方ストッパゴム
28 前方ストッパゴム
30 後方ストッパゴム(側方ストッパゴム)
32 中央直交面(突出先端面)
34 側方傾斜面(突出先端面)
36 緩衝突起
38 凹溝
40 アウタブラケット
42 上壁部
44 前壁部
46 後壁部
A 筒状部の中心軸
B 後方ストッパゴムの突出方向の中央
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7