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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088218
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】冷媒再凝縮装置および冷媒補給方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20240625BHJP
   F25B 9/14 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F25B9/00 K
F25B9/14 530Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203281
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(57)【要約】
【課題】冷媒再凝縮装置における効率的な冷媒の補給に役立つ技術を提供する。
【解決手段】冷媒ガスを冷媒再凝縮室112で再凝縮する冷媒再凝縮装置10が提供される。冷媒再凝縮装置10は、再凝縮される冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有し、冷媒再凝縮室112を冷却する極低温冷凍機11と、極低温冷凍機11から分岐し、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガスの不可逆的な供給を可能とするように冷媒再凝縮室112に接続される非循環式のトランスファーライン70と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを冷媒再凝縮室で再凝縮する冷媒再凝縮装置であって、
再凝縮される前記冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有し、前記冷媒再凝縮室を冷却する極低温冷凍機と、
前記極低温冷凍機から分岐し、前記極低温冷凍機から前記冷媒再凝縮室への前記冷媒ガスの不可逆的な供給を可能とするように前記冷媒再凝縮室に接続される非循環式のトランスファーラインと、を備えることを特徴とする冷媒再凝縮装置。
【請求項2】
前記極低温冷凍機は、前記冷媒ガスの断熱膨張を内部で周期的に繰り返すように構成された膨張機と、前記膨張機に前記冷媒ガスを供給するように前記膨張機に接続された高圧ラインと、前記膨張機から前記冷媒ガスを回収するように前記膨張機に接続された低圧ラインと、を備え、
前記非循環式のトランスファーラインは、前記高圧ラインまたは前記低圧ラインのいずれかから分岐していることを特徴とする請求項1に記載の冷媒再凝縮装置。
【請求項3】
前記非循環式のトランスファーラインは、前記高圧ラインから分岐しており、前記低圧ラインには合流しないことを特徴とする請求項2に記載の冷媒再凝縮装置。
【請求項4】
前記非循環式のトランスファーラインは、前記極低温冷凍機に熱的に結合され、前記極低温冷凍機と前記トランスファーラインとの熱交換により前記トランスファーラインを冷却する熱交換器を備えることを特徴とする請求項1に記載の冷媒再凝縮装置。
【請求項5】
前記非循環式のトランスファーラインは、前記トランスファーラインを前記極低温冷凍機に接続しまたは切り離すバルブを備えることを特徴とする請求項1に記載の冷媒再凝縮装置。
【請求項6】
前記極低温冷凍機は、シリンダと、前記シリンダのまわりに配置される物体接触面を有し、前記シリンダよりも熱伝導率の高い材料で形成された冷却ステージと、を備え、
前記非循環式のトランスファーラインは、前記冷却ステージの前記物体接触面を迂回するように前記シリンダまたは前記冷却ステージに形成された冷媒ガス流路を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の冷媒再凝縮装置。
【請求項7】
冷媒ガスを冷媒再凝縮室で再凝縮する冷媒再凝縮装置における冷媒補給方法であって、前記冷媒再凝縮装置は、再凝縮される前記冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有する極低温冷凍機を備えており、前記方法は、
前記冷媒再凝縮室を冷却するように前記極低温冷凍機を運転することと、
前記極低温冷凍機の運転中に、前記極低温冷凍機から前記冷媒再凝縮室へと冷媒ガスを不可逆的に供給することと、を備えることを特徴とする冷媒補給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒再凝縮装置および冷媒補給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機などの極低温冷凍機は、冷媒再凝縮装置の冷却源として利用されている。例えば液体ヘリウムなどの液体冷媒は、たとえば超伝導機器、センサ、またはその他の物体を極低温に冷却し、その結果気化しうる。気化した冷媒は、極低温冷凍機によって再び凝縮され冷却に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-79106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒再凝縮装置のメンテナンスの際、極低温冷凍機が取り外され、液体冷媒の循環ラインが外部に開放され、内部の冷媒が気化して放出または漏洩されることがある。その場合、メンテナンス後に装置を再稼働するために、必要量の液体冷媒が補給されることになる。典型的な補給方法では、極低温に冷却され液化された冷媒が用意され装置内に流し込まれる。しかしながら、流入中に周囲からの熱で冷媒の一部が気化し霧散しうるなど、この方法では冷媒のロスが大きくなりがちである。また、離島など遠隔地には、極低温に保ちながら液体冷媒を運び込むこと自体が困難でありうる。使用される冷媒がヘリウムである場合には、このような問題がより顕在化しやすい。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、冷媒再凝縮装置における効率的な冷媒の補給に役立つ技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、冷媒ガスを冷媒再凝縮室で再凝縮する冷媒再凝縮装置が提供される。冷媒再凝縮装置は、再凝縮される冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有し、冷媒再凝縮室を冷却する極低温冷凍機と、極低温冷凍機から分岐し、極低温冷凍機から冷媒再凝縮室への冷媒ガスの不可逆的な供給を可能とするように冷媒再凝縮室に接続される非循環式のトランスファーラインと、を備える。
【0007】
本発明のある態様によると、冷媒ガスを冷媒再凝縮室で再凝縮する冷媒再凝縮装置における冷媒補給方法が提供される。冷媒再凝縮装置は、再凝縮される冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有する極低温冷凍機を備える。冷媒補給方法は、冷媒再凝縮室を冷却するように極低温冷凍機を運転することと、極低温冷凍機の運転中に、極低温冷凍機から冷媒再凝縮室へと冷媒ガスを不可逆的に供給することと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷媒再凝縮装置における効率的な冷媒の補給に役立つ技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る冷媒再凝縮装置を概略的に示す図である。
図2】実施の形態に係る冷媒再凝縮装置を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る冷媒補給方法の一例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態に係る冷媒再凝縮装置の他の一例の一部を概略的に示す図である。
図5】実施の形態に係る極低温装置の他の一例の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1および図2は、実施の形態に係る冷媒再凝縮装置10を概略的に示す図である。冷媒再凝縮装置10は、極低温冷凍機11と非循環式のトランスファーライン70を備え、極低温装置100に搭載される。トランスファーライン70の詳細は後述する。図1には、冷媒再凝縮装置10の使用例として極低温装置100に搭載された状態が示され、図2には、極低温冷凍機11の内部構造が示される。
【0012】
極低温装置100は、冷媒再凝縮装置10とともに、超伝導コイル102と、真空容器104と、輻射シールド106と、極低温冷媒回路110とを備える。極低温装置100は、超伝導コイル102を室温から極低温に冷却するとともに、超伝導コイル102の使用中、超伝導コイル102を極低温に維持するように構成される。極低温冷媒回路110は、冷媒再凝縮装置10とともに、超伝導コイル102の冷却システムを構成する。
【0013】
極低温装置100は、超伝導磁石装置として構成される。超伝導コイル102は、公知の超伝導コイル(たとえば、いわゆる低温超伝導コイル)であってもよく、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で通電されることにより強力な磁場を発生するように構成される。超伝導コイル102は、例えば単結晶引き上げ装置、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。よって、極低温装置100は、このような高磁場利用機器の一部を構成してもよい。
【0014】
真空容器104は、超伝導コイル102を超伝導状態とするのに適する極低温真空環境を提供する断熱真空容器であり、クライオスタットとも呼ばれる。真空容器104は、例えば、円柱状の形状、または中心部に中空部を有する円筒状の形状を有してもよい。真空容器104は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0015】
極低温冷凍機11は、冷媒再凝縮装置10によって再凝縮される冷媒ガスと同種の冷媒ガスを内部に有する。極低温冷凍機11は後述のように、冷媒再凝縮装置10の冷媒再凝縮室112を冷却する。
【0016】
極低温冷凍機11は、圧縮機12と、膨張機14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機11の冷媒ガスを膨張機14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。膨張機14は、コールドヘッドとも呼ばれる。冷媒ガスは、作動ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、冷媒ガスの流れる方向を図1および図2に矢印で示す。
【0017】
なお、一般に、圧縮機12から膨張機14に供給される冷媒ガスの圧力と、膨張機14から圧縮機12に回収される冷媒ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
【0018】
圧縮機12は、圧縮機本体12a、高圧ガス出口12b、低圧ガス入口12c、および圧縮機本体12aを収容する圧縮機筐体12dを備える。圧縮機本体12aは、その吸入口から吸入される冷媒ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体12aは、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または冷媒ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。高圧ガス出口12bは、圧縮機12の冷媒ガス吐出ポートとして圧縮機筐体12dに設置されており、圧縮機本体12aの吐出口に接続されている。低圧ガス入口12cは、圧縮機12の冷媒ガス吸入ポートとして圧縮機筐体12dに設置されており、圧縮機本体12aの吸入口に接続されている。
【0019】
圧縮機本体12aは、潤滑と冷却のためにオイルが使用されるオイル潤滑式であり、吸入された冷媒ガスは圧縮機本体12a内でこのオイルに直接さらされる。よって、冷媒ガスは、オイルが若干混入した状態で吐出口から送出される。そこで、冷媒ガスからオイルを除去するために、圧縮機本体12aの吐出口を高圧ガス出口12bに接続する高圧側の流路には、ガス清浄化装置12eが設置されている。ガス清浄化装置12eは、冷媒ガスからオイルを分離するオイルセパレータと、オイルセパレータでオイル分離された冷媒ガス中のガス状オイル成分(例えば、気化したオイルやミスト状のオイルなど)や水分を吸着することにより冷媒ガスを浄化するアドゾーバと、を備えてもよい。このようにして清浄化された冷媒ガスが圧縮機12から膨張機14に供給されることになる。
【0020】
圧縮機筐体12dには、極低温冷凍機11に冷媒ガスを充填するためのチャージポート12fが設けられている。チャージポート12fは、低圧ガス入口12cを圧縮機本体12aの吸入口に接続する低圧側の流路に接続されている。この低圧側の流路にストレージタンクが設けられている場合には、チャージポート12fはストレージタンクに接続されてもよい。冷媒ガスを充填するとき、チャージポート12fに冷媒ガスタンクが接続され、そこから冷媒ガスがチャージポート12fを通じて圧縮機12内に供給される。
【0021】
また、極低温冷凍機11は、圧縮機12と膨張機14の間で冷媒ガスを循環させるガスラインを備える。このガスラインは、圧縮機12から膨張機14に冷媒ガスを供給するように圧縮機12を膨張機14に接続する高圧ライン13aと、膨張機14から圧縮機12に冷媒ガスを回収するように圧縮機12を膨張機14に接続する低圧ライン13bとを備える。膨張機14には、高圧ガス入口14aと低圧ガス出口14bが設けられている。高圧ガス入口14aは、高圧配管15aによって圧縮機12の高圧ガス出口12bに接続され、低圧ガス出口14bは、低圧配管15bによって低圧ガス入口12cに接続されている。高圧ライン13aは、高圧ガス入口14aと高圧配管15aを含み、低圧ライン13bは、低圧ガス出口14bと低圧配管15bを含む。
【0022】
極低温冷凍機11は、一例として、二段式のGM冷凍機である。よって、極低温冷凍機11によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、膨張機14は、低温部として第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35は、例えば、銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。
【0023】
膨張機14は、第1シリンダ16aと第2シリンダ16bを有する膨張機シリンダ16を備える。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。膨張機シリンダ16は通例、例えばステンレス鋼など、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35に比べて熱伝導率の低い金属材料で形成される。
【0024】
また、膨張機シリンダ16は、膨張機14を真空容器104に設置するための装着フランジ22を備える。第1シリンダ16aは、装着フランジ22を第1冷却ステージ33に接続し、第2シリンダ16bは、第1冷却ステージ33を第2冷却ステージ35に接続する。膨張機ハウジング20は、第1シリンダ16aとは反対側で装着フランジ22に取り付けられている。
【0025】
膨張機シリンダ16内に、膨張機14は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有するディスプレーサ組立体を備える。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0026】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0027】
本書では、極低温冷凍機11の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機11の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0028】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0029】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCuなどの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0030】
第1ディスプレーサ18aおよび第2ディスプレーサ18bを備えるディスプレーサ組立体は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34を膨張機シリンダ16の内部に形成する。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0031】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された冷媒ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された冷媒ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された冷媒ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された冷媒ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0032】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の冷媒ガス流れが、膨張機シリンダ16とディスプレーサ組立体との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0033】
図1に示されるように、膨張機14は、圧力切替バルブ40を収容する膨張機ハウジング20を備える。膨張機ハウジング20は、装着フランジ22で膨張機シリンダ16と結合され、それにより、圧力切替バルブ40およびディスプレーサ組立体を収容する気密容器が構成される。
【0034】
膨張機14から圧縮機12に回収される冷媒ガスは、膨張機14の低圧ガス出口14bから低圧配管15bを通じて圧縮機12の低圧ガス入口12cに入り、圧縮機本体57によって圧縮され昇圧される。圧縮機12から膨張機14に供給される冷媒ガスは、圧縮機12の高圧ガス出口12bから出て、高圧配管15aを通じて高圧ガス入口14aから膨張機14に供給される。
【0035】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、膨張機シリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の冷媒ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の冷媒ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の冷媒ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じて膨張機14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の冷媒ガスが膨張機14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。
【0036】
また、膨張機14は、第1ディスプレーサ18aおよび第2ディスプレーサ18bの往復動を駆動する駆動モータ42を備える。駆動モータ42は、膨張機ハウジング20に取り付けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、膨張機ハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、第1ディスプレーサ18aおよび第2ディスプレーサ18bは膨張機シリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するようにこれらバルブに連結されている。
【0037】
膨張機14は、この例では、真空容器104の天板に設置されている。真空容器104の天板には開口部が設けられ、そこから膨張機14が真空容器104内に挿し込まれている。この開口部で装着フランジ22が真空容器104に取り付けられ、膨張機14は真空容器104に固定される。膨張機14は、膨張機ハウジング20を上方に向け、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35を下方に向けるようにして、縦向きに真空容器104に設置される。膨張機ハウジング20は、真空容器104の周囲環境(例えば室温大気圧環境)に露出されている。
【0038】
図1に示されるように、真空容器104内には、極低温冷凍機11の低温部および超伝導コイル102とともに、輻射シールド106が配置される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33と熱的に結合され第1冷却温度に冷却される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33に直接取り付けられ、第1冷却ステージ33と熱的に結合される。あるいは、輻射シールド106は、可撓性または剛性をもつ伝熱部材を介して第1冷却ステージ33に取り付けられてもよい。輻射シールド106は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。輻射シールド106は、第2冷却温度に冷却される超伝導コイル102、極低温冷凍機11の第2冷却ステージ35、およびその他の低温部を囲むように配置され、外部からの輻射熱からこれら低温部を熱的に保護することができる。
【0039】
極低温冷凍機11の膨張機14は、冷媒ガスの断熱膨張を内部で周期的に繰り返すように構成されている。極低温冷凍機11は、圧縮機12および駆動モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した冷媒ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。第1冷却ステージ33は、第1冷却温度、例えば30K~80Kに冷却される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33によって第1冷却温度に冷却される。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば約4K以下の液体ヘリウム温度に冷却される。
【0040】
極低温冷媒回路110は、超伝導コイル102の表面及び/または内部に配置された極低温冷媒配管111を有し、極低温冷媒配管111を流れる極低温冷媒と超伝導コイル102との熱交換により超伝導コイル102を冷却する。極低温冷媒回路110を循環する冷媒ガスは、極低温冷凍機11内の冷媒ガスと同種の冷媒ガスである。よって、極低温冷媒は例えば、液体ヘリウムである。
【0041】
極低温冷媒回路110における冷媒ガスの圧力は、極低温冷凍機11の冷媒ガスの圧力(例えば、高圧ライン13aの圧力、または低圧ライン13bの圧力)よりも低い圧力であってもよい。例えば、極低温冷媒回路110の冷媒ガスの圧力は、大気圧程度であってもよい。
【0042】
また、極低温冷媒回路110は、冷媒再凝縮室112を有する。冷媒再凝縮室112は、極低温冷凍機11によって例えば3~4K程度に冷却される。冷媒再凝縮室112は、ヘリウムポットとも呼ばれる。冷媒再凝縮室112は、内部に液体冷媒を貯留するよう構成され、冷媒再凝縮室112の壁には極低温冷凍機11の第2冷却ステージ35に熱的に結合された再凝縮部が設けられる。この再凝縮部は液体冷媒と接触する表面積を増やすためにフィン状または凹凸を冷媒再凝縮室112の内部に有してもよい。
【0043】
冷媒再凝縮室112は、供給配管113により極低温冷媒配管111の入口111aに接続される。冷媒再凝縮室112で再凝縮された極低温冷媒は、供給配管113を通じて極低温冷媒配管111に供給される。また、極低温冷媒配管111の出口111bは、戻り配管114により冷媒再凝縮室112に接続される。超伝導コイル102を冷却することにより気化した極低温冷媒は、戻り配管114を通じて極低温冷媒配管111から冷媒再凝縮室112に戻り、再凝縮される。戻り配管114には、気化した極低温冷媒を収容するバッファ容積115(例えば、ヘリウムガスタンク)が接続されていてもよい。
【0044】
このようにして、極低温冷凍機11は、極低温冷媒回路110を冷却し、それにより超伝導コイル102を冷却する。超伝導コイル102は、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で外部電源(図示せず)から通電されることにより強力な磁場を発生することができる。
【0045】
この実施の形態によると、極低温装置100には、省ヘリウムの超伝導コイル冷却システムが実現される。超伝導コイルの全体を液体ヘリウムに浸して冷却する従来型のいわゆる浸漬冷却では、たとえば1000リットル以上の液体ヘリウムが使用される。これに対して、この省ヘリウム冷却方式では、極低温冷媒回路110を循環する液体ヘリウムはたとえば50リットル未満で十分である。
【0046】
ところで、極低温装置100には、長期的な運用のなかで定期的に、または何らかのアクシデントに対処するために、メンテナンスが行われることがある。極低温装置100のメンテナンスの際、極低温冷凍機11にもメンテナンスを施すために、極低温装置100から極低温冷凍機11が取り外されてもよい。このとき、極低温冷凍機11が冷媒再凝縮室112から取り外され、冷媒再凝縮室112が開放され、内部のヘリウムが外部に放出または漏洩されうる。したがって、メンテナンス後に極低温装置100を再稼働するために、必要量のヘリウムが極低温冷媒回路110に補給されることになる。
【0047】
上述のように、典型的な冷媒補給方法では、液体ヘリウムが用意され装置内に流し込まれる。しかしながら、多くの既存設計では、この流入経路は、極低温装置100において極低温冷凍機11から離れた場所に設置されており、冷却の熱交換効率がよくない。そのため、流入中に周囲からの熱で冷媒の一部が気化し霧散しうるなど、この方法では液体ヘリウムのロスが大きくなりがちである。また、極低温装置100が離島など遠隔地に設置されている場合には、その設置場所まで液体ヘリウムを極低温に保ちながら運び込むこと自体が困難でありうる。
【0048】
そこで、この実施の形態では、冷媒再凝縮装置10は、極低温冷凍機11に付設された冷媒ガスのトランスファーライン70を備える。トランスファーライン70は、極低温冷凍機11から分岐し、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガスの不可逆的な供給を可能とするように冷媒再凝縮室112に接続される。極低温冷凍機11が内部に有する冷媒ガスと冷媒再凝縮室112で再凝縮される冷媒ガスは同種(本例ではヘリウムガス)であるため、トランスファーライン70を通じて極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112へと冷媒ガスを補給することができる。
【0049】
トランスファーライン70は、非循環式であり、すなわち、極低温冷凍機11に再び合流しない。よって、冷媒ガスは、極低温冷凍機11からトランスファーライン70を通じて冷媒再凝縮室112へと不可逆的に供給される。すなわち、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112に一度供給された冷媒ガスは、極低温冷凍機11に再び回収されることはない。
【0050】
この実施の形態では、トランスファーライン70は、高圧ライン13aから分岐しており、冷媒再凝縮室112に接続される。一例として、トランスファーライン70は、膨張機14の高圧ガス入口14aから分岐してもよい。高圧ガス入口14aは、膨張機ハウジング20に取り付けられた剛性管(例えばステンレス鋼の管)であってもよく、この剛性管がトランスファーライン70への分岐部を有してもよい。あるいは、トランスファーライン70は、高圧配管15aなど高圧ライン13aの他の部位から分岐してもよい。高圧配管15aは、フレキシブルホースなどの可撓性を持つ配管であってもよい。
【0051】
上述のように、圧縮機本体12aから高圧ライン13aに送出される冷媒ガスは、ガス清浄化装置12eによって清浄化されている。トランスファーライン70が高圧ライン13aから分岐しているので、このように清浄化されたガスを高圧ライン13aからトランスファーライン70を通じて冷媒再凝縮室112に供給することができ、有利である。
【0052】
トランスファーライン70は、上述のように非循環式であるため、冷媒再凝縮室112(または極低温冷媒回路110)から極低温冷凍機11へと冷媒ガスを回収する経路は存在しない。よって、トランスファーライン70は、冷媒再凝縮室112を終端としており、低圧ライン13bには合流しない。
【0053】
なお、代案として、トランスファーライン70は、低圧ライン13bから分岐して、冷媒再凝縮室112に接続されてもよい。トランスファーライン70は、膨張機14の低圧ガス出口14bから分岐してもよい。低圧ガス出口14bは、膨張機ハウジング20に取り付けられた剛性管であってもよく、この剛性管がトランスファーライン70への分岐部を有してもよい。あるいは、トランスファーライン70は、低圧配管15bなど低圧ライン13bの他の部位から分岐してもよい。低圧配管15bは、フレキシブルホースなどの可撓性を持つ配管であってもよい。この場合においても、トランスファーライン70は非循環式であるため、冷媒再凝縮室112を終端とし、冷媒再凝縮室112から極低温冷凍機11へと冷媒ガスを回収する経路は存在しない。
【0054】
トランスファーライン70は、バルブ72、フィードスルー74、熱交換器(例えば第1熱交換器76および第2熱交換器78)、および冷媒出口80を備える。
【0055】
バルブ72は、トランスファーライン70を極低温冷凍機11に接続しまたは切り離すように構成されている。バルブ72は、例えばオンオフ弁であってもよく、バルブ72が開いているとき極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112へと冷媒ガスが供給され、バルブ72が閉じているとき冷媒ガスは遮断される。
【0056】
あるいは、バルブ72は、例えば定流量弁であってもよい。この場合、バルブ72が開いているとき冷媒ガスがバルブ72を一定の流量で流れることになるため、バルブ72を開いている時間をカウントすることにより極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガスの供給量を把握することができ便利である。
【0057】
バルブ72は、極低温冷凍機11からの分岐部(この例では高圧ガス入口14a)とフィードスルー74との間でトランスファーライン70上に設けられている。よって、冷媒再凝縮装置10が極低温装置100に設置されたとき、バルブ72は、真空容器104の外に配置される。
【0058】
極低温冷凍機11を制御するコントローラ50が設けられていてもよく、バルブ72の開閉は、このコントローラ50によって制御されてもよい。コントローラ50は、図示の例では、圧縮機12に搭載されているが、膨張機14に搭載されてもよい。あるいは、バルブ72は、手動で開閉されてもよい。
【0059】
コントローラ50は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0060】
トランスファーライン70には、冷媒ガスの清浄化のために、フィルター73が設けられていてもよい。この例では、フィルター73は、バルブ72の下流、例えばバルブ72とフィードスルー74の間に設けられている。あるいは、フィルター73は、バルブ72の上流、例えば極低温冷凍機11からの分岐部とバルブ72との間に設けられてもよく、またはトランスファーライン70上のその他の部位に設けられてもよい。あるいは、フィルター73は、極低温冷凍機11の高圧ライン13aまたは低圧ライン13bに設けられてもよい。
【0061】
フィードスルー74は、真空容器104の気密性を保ちながら真空容器104の外から中へと冷媒ガスを流すことができるように構成された、いわゆる真空フィードスルーである。フィードスルー74は、例えば、膨張機14の装着フランジ22に設置されている。したがって、バルブ72が開かれると、冷媒ガスは、バルブ72からフィードスルー74を通じて真空容器104内に流入する。
【0062】
トランスファーライン70に設けられた熱交換器は、極低温冷凍機11に熱的に結合され、極低温冷凍機11とトランスファーライン70との熱交換によりトランスファーライン70を冷却するように構成される。熱交換器は、フィードスルー74と冷媒出口80との間でトランスファーライン70上に設けられている。よって、冷媒再凝縮装置10が極低温装置100に設置されたとき、熱交換器は、真空容器104の中に配置される。
【0063】
一例として、第1熱交換器76と第2熱交換器78が設けられている。第1熱交換器76は、膨張機14の第1シリンダ16aに熱的に結合され、第2熱交換器78は、第2シリンダ16bに熱的に結合されている。第1熱交換器76は、流入する冷媒ガスを周囲温度から第1冷却ステージ33の第1冷却温度に向けて冷却し、第2熱交換器78は、流入する冷媒ガスを第1冷却温度から第2冷却ステージ35の第2冷却温度に向けて冷却することができる。
【0064】
これら熱交換器は、例えば、トランスファーライン70を形成する冷媒ガス配管を対応するシリンダの外周にらせん状に巻き付けることで構成されてもよく、または、シリンダとトランスファーライン70との熱交換を可能にするそのほか適宜の構成を有してもよい。シリンダは冷却ステージに比べて小径であるため、シリンダに配管を巻き付けることで、冷却ステージに配管を巻き付ける場合に比べて熱交換器をコンパクトに収めることができる。
【0065】
なお、第1熱交換器76は、第1冷却ステージ33に設けられてもよく、第2熱交換器78は、第2冷却ステージ35に設けられてもよい。この場合、トランスファーライン70を冷却ステージの周囲に巻き付けることによって熱交換器が構成されてもよいし、または、トランスファーライン70の一部となる冷媒ガスの内部流路を冷却ステージ内に形成することによって熱交換器が構成されてもよい。また、第1熱交換器76は、第1シリンダ16aと第1冷却ステージ33の両方に設けられてもよく、第2熱交換器78は、第2シリンダ16bと第2冷却ステージ35の両方に設けられてもよい。
【0066】
トランスファーライン70には、第1冷却ステージ33を貫通する貫通流路77が設けられてもよい。よって、第1熱交換器76は、貫通流路77を通じて第2熱交換器78に接続される。貫通流路77は、第1熱交換器76の少なくとも一部を形成してもよい。
【0067】
トランスファーライン70の末端には、冷媒再凝縮室112に接続される冷媒出口80が設けられている。冷媒出口80は、冷媒再凝縮室112に取り外し可能に接続されてもよい。例えば、冷媒出口80は、冷媒再凝縮室112の冷媒入口に取り外し可能に装着される継手を有してもよい。
【0068】
第1熱交換器76および第2熱交換器78で冷却されながらトランスファーライン70を流れる冷媒ガスは、気体の状態のまま、冷媒出口80から冷媒再凝縮室112に供給されてもよい。あるいは、第1熱交換器76および第2熱交換器78で十分に冷却されることによって、冷媒ガスは液化されてもよく、液体状態で冷媒出口80から冷媒再凝縮室112に供給されてもよい。
【0069】
冷媒出口80は、図示のように冷媒再凝縮室112に直接取り付けられることに代えて、極低温冷媒回路110の任意の部位に取り付けられ、それによりトランスファーライン70が冷媒再凝縮室112に接続されてもよい。例えば、冷媒出口80は、極低温冷媒回路110のバッファ容積115に取り付けられ、トランスファーライン70は、バッファ容積115を介して冷媒再凝縮室112に接続されてもよい。
【0070】
図3は、実施の形態に係る冷媒補給方法の一例を示すフローチャートである。図3に示される方法は、極低温装置100のメンテナンスに際して行われる。まず、図3に示されるように、冷媒再凝縮装置10が極低温装置100から取り外される(S10)。つまり、極低温冷凍機11とトランスファーライン70が極低温装置100から取り外される。極低温冷凍機11の装着フランジ22の真空容器104への固定が解除され、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35がそれぞれ輻射シールド106と冷媒再凝縮室112から切り離される。また、トランスファーライン70の冷媒出口80が冷媒再凝縮室112から取り外される。こうして冷媒再凝縮装置10が真空容器104から取り出される。このとき、冷媒再凝縮室112が開放され、内部のヘリウムが外部に放出または漏洩されうる。取り出された冷媒再凝縮装置10、とくに極低温冷凍機11には、必要なメンテナンスが施される。
【0071】
メンテナンスが完了すると、冷媒再凝縮装置10は、極低温装置100に再び取り付けられる(S12)。装着フランジ22が真空容器104に再び固定され、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35がそれぞれ輻射シールド106と冷媒再凝縮室112に十分な押し付け力をもって接触し、熱的に結合される。また、トランスファーライン70の冷媒出口80が冷媒再凝縮室112に再び取り付けられる。このとき、冷媒再凝縮室112内のヘリウムは必要量よりも不足している。
【0072】
極低温冷凍機11が運転される(S14)。極低温冷凍機11が起動され冷却運転を開始する。第1冷却ステージ33により輻射シールド106は第1冷却温度に冷却され、第2冷却ステージ35により冷媒再凝縮室112は第2冷却温度に冷却される。また、第1シリンダ16aおよび第2シリンダ16bもそれぞれの冷却温度に冷却され、それによりトランスファーライン70の第1熱交換器76および第2熱交換器78も冷媒ガスを冷却可能となる。
【0073】
極低温冷凍機11の運転中に、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112へと冷媒ガスが不可逆的に供給される(S16)。トランスファーライン70のバルブ72が開かれ、極低温冷凍機11(上述の例では高圧ライン13a)からトランスファーライン70を通じて冷媒再凝縮室112に冷媒ガスが補充される。トランスファーライン70を流れる冷媒ガスは、第1熱交換器76と第2熱交換器78によって冷却されながら冷媒再凝縮室112に流入する。冷媒ガスは、気体の状態のまま冷媒再凝縮室112に流入してもよいし、冷却により液化されて冷媒再凝縮室112に流入してもよい。こうして冷媒再凝縮室112に供給された冷媒ガスは、極低温冷媒回路110を循環することとなり、極低温冷凍機11に再び回収されることはない。必要量の冷媒ガスが冷媒再凝縮室112に供給されれば、バルブ72は閉じられ、トランスファーライン70は遮断される。
【0074】
なお、トランスファーライン70を通じた冷媒ガスの供給の間、冷媒ガスの冷却を促進するために、極低温冷凍機11は、いわゆる加速冷却を実行してもよい。加速冷却とは、膨張機14の駆動モータ42の運転周波数(すなわち回転数)を高めることによって膨張機14での冷凍サイクルの単位時間あたりの回数を増加させることを指す。膨張機14の駆動モータ42は、運転周波数を可変とする電気モータであってもよく、その運転周波数は、コントローラ50によって制御されてもよく、加速冷却の開始および終了は、コントローラ50によって決定されてもよい。
【0075】
極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112へと冷媒ガスが不可逆的に供給された結果、極低温冷凍機11を循環する冷媒ガスの量が減ることになる。これを補うために、極低温冷凍機11に冷媒ガスが補充される(S18)。極低温冷凍機11に冷媒ガスを補充するために、冷媒ガスのタンク(例えばヘリウムガスのボンベ)が圧縮機12のチャージポート12fに装着される。このタンクからチャージポート12fを通じて極低温冷凍機11(例えば低圧ライン13b)に冷媒ガスが補充される。
【0076】
極低温冷凍機11への冷媒ガス補充は、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガス供給後に行われてもよい。あるいは、極低温冷凍機11への冷媒ガス補充は、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガス供給と同時に行われてもよい。同時に行えば、メンテナンス時間の短縮につながり、都合がよい。
【0077】
冷媒再凝縮室112に必要量の冷媒ガスを供給するために、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112への冷媒ガスの供給(S16)と極低温冷凍機11への冷媒ガスの補充(S18)とが複数回繰り返されてもよい。
【0078】
なお、極低温冷凍機11に補充すべき冷媒ガス量、すなわち極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112に流出した冷媒ガス量を把握するために、トランスファーライン70に流量センサが設けられてもよい。コントローラ50は、流量センサの出力に基づいて、極低温冷凍機11に補充すべき冷媒ガス量を決定してもよい。しかしながら、流量センサの設置はトランスファーライン70にコスト増を招きうるため、望まれないかもしれない。
【0079】
トランスファーライン70は、比較的高いインピーダンスをもつ流路であるため、バルブ72が開いているときの流量は制限され、比較的一定となりうる。そのため、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112に供給された冷媒ガス量は、バルブ72が開いている時間からおおよそ把握することができる。こうして把握された冷媒ガス量が極低温冷凍機11に補充されてもよい。
【0080】
あるいは、極低温冷凍機11の運転圧力(例えば、高圧ライン13aまたは低圧ライン13bの圧力)が所望の大きさまで回復されるように、冷媒ガスが極低温冷凍機11に補充されてもよい。
【0081】
チャージポート12fを開閉するバルブが設けられてもよく、このバルブとバルブ72がコントローラ50によって制御され、それにより、極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112に供給された冷媒ガス量の分だけ冷媒ガスがチャージポート12fから極低温冷凍機11に補充されてもよい。
【0082】
このようにして、図3に示される冷媒補給方法は終了し、その後、極低温装置100を再び稼働させることができる。極低温装置100の通常の動作中は、トランスファーライン70は使用されない。バルブ72は閉鎖され、極低温冷凍機11の冷媒ガス循環ライン(すなわち、圧縮機12、高圧ライン13a、低圧ライン13b、および膨張機14)と極低温冷媒回路110とは互いに遮断される。
【0083】
以上説明したように、実施の形態によれば、冷媒再凝縮装置10における効率的な冷媒の補給に役立つ技術を提供することができる。例えば、冷媒ガスを極低温冷凍機11によって冷却しながら冷媒再凝縮室112に補給することができる。上述の既存技術のように補給経路が極低温冷凍機11から離れている場合に比べて、良好な熱交換効率を実現できる。また、そうした既存の補給経路は不要となり、極低温装置100の構成を簡素化できる。
【0084】
補給のためにトランスファーライン70により極低温冷凍機11と冷媒再凝縮室112が接続される。よって、補給中に冷媒ガスが外部に漏れることがない。上述のように、液化した冷媒ガスを装置に流し込む既存の方法では、流入中に周囲からの熱で冷媒の一部が気化し霧散しうるため、冷媒のロスが大きくなりがちである。実施の形態によれば、こうしたロスを抑えられ、有利である。また、補給される冷媒ガスは、極低温に維持しながら運搬する必要がない。例えばガスボンベなど気体状態のものを用意すればよく、作業が容易になる。
【0085】
また、極低温冷媒回路110への冷媒ガスの補給作業を極低温冷凍機11のメンテナンス作業に組み込むことができる。専門性を有するメンテナンス作業員が極低温冷凍機11のメンテナンスとともにこの冷媒ガス補給作業を行うことで、トータルのメンテナンス時間の短縮につながりうる。極低温装置100のダウンタイムの短縮をもたらしうるので、有利である。
【0086】
図4は、実施の形態に係る冷媒再凝縮装置10の他の一例の一部を概略的に示す図である。図1に示される上述の実施の形態では、トランスファーライン70が第1冷却ステージ33に貫通流路77を有するが、図4の実施の形態では、トランスファーライン70は、第1冷却ステージ33の物体接触面33aを迂回するように第1シリンダ16aまたは第1冷却ステージ33に形成された冷媒ガス流路82を備える。上述の実施の形態と同様に、冷媒ガス流路82は、第1熱交換器76を第2熱交換器78に接続する。
【0087】
第1冷却ステージ33の物体接触面33aは、第1シリンダ16a(または第2シリンダ16b)のまわりに配置されている。物体接触面33aはシリンダまわりに環状に設けられている。図示の例では物体接触面33aは円錐状の面であるが、これに限られず、物体接触面33aは、円環状の平坦面であってもよい。極低温冷凍機11が極低温装置100に取り付けられるとき、第1冷却ステージ33によって冷却されるべき極低温装置100の対応する部位(例えば輻射シールド106)に物体接触面33aが接触し、押し付けられ、それにより、第1冷却ステージ33が極低温装置100に熱的に結合される。
【0088】
冷媒ガス流路82は、物体接触面33aを迂回するように第1シリンダ16aおよび第1冷却ステージ33を貫通している。図示されるように、冷媒ガス流路82は、第1シリンダ16a内でL字状の流路であってもよい。
【0089】
冷媒ガス流路82の入口は、物体接触面33aの径方向外側にあり、冷媒ガス流路82の出口は、物体接触面33aの径方向内側にある。冷媒ガス流路82のこれら出入口には、剛性管または継手が取り付けられていてもよい。
【0090】
このようにして、物体接触面33aを迂回する冷媒ガス流路82を設けることにより、トランスファーライン70は、物体接触面33aでの第1冷却ステージ33と物体(例えば輻射シールド106)との接触部との干渉を避けることができる。
【0091】
図5は、実施の形態に係る極低温装置100の他の一例の一部を概略的に示す図である。図5に示されるように、極低温冷媒回路110は、超伝導コイル102の表面及び/または内部に配置された極低温冷媒配管111と、極低温冷媒配管111から分離された液体循環回路116とを備えてもよい。
【0092】
極低温冷媒配管111は、極低温冷媒配管111を流れる極低温冷媒と超伝導コイル102との熱交換により超伝導コイル102を冷却する。この極低温冷媒は、高圧のヘリウムガスであってもよい。
【0093】
極低温冷媒回路110は、極低温冷媒配管111と液体循環回路116との間に熱交換器117を備えてもよい。液体循環回路116は、冷媒再凝縮室112、供給配管113、戻り配管114、バッファ容積115を備える。液体循環回路116には、上述の実施の形態と同様に、例えば液体ヘリウムが循環する。供給配管113は冷媒再凝縮室112から熱交換器117に液体ヘリウムを供給する。熱交換器117で極低温冷媒配管111を冷却した気体または液体のヘリウムは、熱交換器117から戻り配管114を通じて冷媒再凝縮室112に回収される。冷媒再凝縮室112でヘリウムガスは第2冷却ステージ35によって再凝縮される。このようにして、省ヘリウムの超伝導コイル冷却システムが構築されてもよい。
【0094】
この場合にも、上述の実施の形態と同様に、トランスファーライン70を通じて極低温冷凍機11から冷媒再凝縮室112に冷媒ガスを補給することができる。
【0095】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0096】
上述の実施の形態では、極低温装置100が超伝導コイル102に少量の液体ヘリウムを循環させることによって冷却する省ヘリウムタイプの装置である場合を例として説明している。しかしながら、ある実施の形態においては、極低温装置100は、超伝導コイル102を液体ヘリウムなどの極低温液体冷媒に浸して冷却する浸漬冷却式として構成されてもよい。このような浸漬冷却式の装置にも、実施の形態に係る冷媒再凝縮装置10は、冷媒ガスの補給のために適用されうる。
【0097】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機11が多段式のギフォード・マクマホン冷凍機である場合を例として説明しているが、本発明はこれに限られない。極低温冷凍機11は、単段式のギフォード・マクマホン冷凍機であってもよい。あるいは、極低温冷凍機11は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの単段式または多段式の極低温冷凍機であってもよい。
【0098】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0099】
10 冷媒再凝縮装置、 11 極低温冷凍機、 13a 高圧ライン、 13b 低圧ライン、 14 膨張機、 16a 第1シリンダ、 16b 第2シリンダ、 33 第1冷却ステージ、 33a 物体接触面、 35 第2冷却ステージ、 70 トランスファーライン、 72 バルブ、 76 第1熱交換器、 78 第2熱交換器、 82 冷媒ガス流路、 112 冷媒再凝縮室。
図1
図2
図3
図4
図5