(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088230
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ピッキング装置、自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B65G1/04 555A
B65G1/04 555Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203300
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】川野 勉
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022EE02
3F022FF02
3F022JJ01
3F022JJ11
3F022KK10
3F022KK20
3F022LL12
3F022LL20
3F022LL38
3F022MM01
3F022MM17
3F022PP01
3F022PP03
3F022PP06
3F022QQ03
3F022QQ07
(57)【要約】
【課題】本開示の目的の一つは、荷同士の隙間を縮めて積み付け可能なピッキング装置を提供することにある。
【解決手段】ある態様のピッキング装置10は、水平方向に移動可能なピッキング装置本体2と、ピッキング装置本体2に支持され、積付け対象の荷12を保持する保持部3と、を備える。ピッキング装置本体2に対する保持部3の変位を許容する可動モードを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に移動可能なピッキング装置本体と、
前記ピッキング装置本体に支持され、積付け対象の荷を保持する保持部と、
を備え、
前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の変位を許容する可動モードを有するピッキング装置。
【請求項2】
さらに、前記ピッキング装置本体に前記保持部を支持する支持機構を備え、
前記支持機構は、前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の相対位置の変位を許容する、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項3】
前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の変位を制限する制限モードを有する、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項4】
前記保持部が受ける加速度が閾値を超えるときは前記制限モードにセットされる、請求項3に記載のピッキング装置。
【請求項5】
前記対象の荷の位置が所定の範囲外であるときは前記制限モードにセットされる、請求項3に記載のピッキング装置。
【請求項6】
さらに、前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の変位を検知する変位検知部を備え、
前記ピッキング装置本体が移動しているとき、前記変位検知部が前記保持部の変位を検知した場合に、前記ピッキング装置本体の移動を停止する、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項7】
さらに、前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の変位を検知する変位検知部と、前記保持部に移動力を付与する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記変位検知部が前記保持部の変位を検知した場合に、前記保持部に前記ピッキング装置本体の移動方向とは反対の方向の移動力を付与する、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項8】
さらに、前記ピッキング装置本体に対して、地上側の荷の相対位置の変位を許容する地上側支持機構を備える、請求項1に記載のピッキング装置。
【請求項9】
荷を保管する保管部を有する棚と、前記保管部の荷を移動させるピッキング装置と、を備える自動倉庫システムであって、
前記ピッキング装置は、
水平方向に移動可能なピッキング装置本体と、
前記ピッキング装置本体に支持され、積付け対象の荷を保持する保持部と、
を備え、
前記ピッキング装置本体に対する前記保持部の変位を許容する可動モードを有する自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッキング装置および自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある収容部の荷を、別の収容部へ移動させるピッキング装置が知られている。本出願人は、特許文献1において、ピッキング装置を備える自動倉庫システムに関する技術を開示した。このピッキング装置は、保持部と、保持部の底面に設けられた複数の吸着部と、ガントリ型のクレーン機構とを備えており、一の収容部の上方から対象の荷を取り出し、水平方向に移動させ、上方から他の収容部のパレットに当該対象の荷を降ろすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以下の認識を得た。ピッキング装置では、取り出した荷をパレットに積み付けるとき、収容効率を高める観点から、積み付け後の荷姿サイズが所定の大きさ以内となるように、荷同士の隙間を小さくすることが望ましい。荷同士の隙間を小さく積み付けるために、先置きの荷に積付ける荷を接触させることが考えられる。この場合、荷の位置や大きさの誤差の影響により、接触時の衝撃が大きくなるおそれがあるため、この衝撃が過大にならないように積み付けすることが重要である。
これらから、特許文献1に記載のピッキング装置は、荷同士の隙間を縮めて積み付けるという観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、荷同士の隙間を縮めて積み付け可能なピッキング装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のピッキング装置は、水平方向に移動可能なピッキング装置本体と、ピッキング装置本体に支持され、積付け対象の荷を保持する保持部と、を備える。ピッキング装置本体に対する保持部の変位を許容する可動モードを有する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷同士の隙間を縮めて積み付け可能なピッキング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の自動倉庫システムを概略的に示す平面図である。
【
図2】複数の荷が積層された荷姿の一例を示す斜視図である。
【
図3】実施形態のピッキング装置の一例を示す正面図である。
【
図4】実施形態のピッキング装置の第1姿態を示す図である。
【
図5】実施形態のピッキング装置の第2姿態を示す図である。
【
図6】実施形態のピッキング装置のピッキング動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態のピッキング動作の過程を概略的に示す正面図である。
【
図8】第1変形例のピッキング装置の要部を概略的に示す正面図である。
【
図9】第2変形例のピッキング装置の要部を概略的に示す図である。
【
図10】第2変形例のピッキング装置の要部を概略的に示す別の図である。
【
図11】第3変形例のピッキング装置の要部を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るピッキング装置10を備えた自動倉庫システム100の構成を説明する。
図1は、自動倉庫システム100を概略的に示す平面図である。
図2は、複数の荷12が積層された荷姿の一例を示す斜視図である。
【0013】
本明細書では、荷について下記の用語を用いる。内容物を収容した段ボール等のケースを「荷」という。荷には複数の物品が収容されてもよい。また、空荷のパレットを単に「パレット11」という。一のパレット11上に荷12が単数または複数載置されたものを「荷集合」という。以下の説明で「荷12」というときは、荷12単独の場合と、パレット11に搭載された状態の荷12の場合とを含む。荷12はピッキングを行うときに取り扱いされる最小単位であってもよい。
【0014】
実施形態のピッキング装置10は、積付け対象の荷12(以下、「対象荷12A」という)を、積み付け予定位置に隣接する位置に先に置かれた荷(以下、先置荷12B」という)に接触させて積み付けすることにより、荷同士の隙間を縮めて積み付けできる(
図3も参照)。このため、実施形態のピッキング装置10は、水平方向に移動可能な装置本体2と、装置本体2に支持され、積付け対象の荷12Aを保持する保持部3と、を備え、ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を許容する可動モードを有する。
【0015】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。また、X方向を横方向と、Y方向を前後方向と、Z方向を上下方向ということがある。このような方向の表記は自動倉庫システム100の構成を制限するものではなく、自動倉庫システム100は、用途に応じて任意の構成で使用されうる。
【0016】
図2に示すように、内容物を取り出すために開封されることが想定された面を「反底面14」といい、反底面14とは反対側の面を底面という。
図2では、反底面14が上向で、底面が下向である状態の荷12を示す。荷12は、反転装置(不図示)により反転され、底面が上向面で反底面14が下向面である反転状態でピッキング等の荷扱いがなされてもよい。反底面14は、底面よりも開封容易であってもよいし、底面は、反底面14よりも高強度であってもよい。表示方法の一例として、ケースの側面に印字された文字が反転した向きであれば反転状態であるとしてもよい。
【0017】
先に、自動倉庫システム100の全体構成を説明する。
図1に示すように、自動倉庫システム100は、荷12を保管可能な複数の保管部52を有する棚5と、棚5に入庫または出庫のために荷12を移動する移動手段74、75、76と、荷12を保持して移動させるピッキング装置10と、制御部78とを主に備える。
【0018】
移動手段74、75、76は、第1移動手段74(例えば、第1台車)と、第2移動手段75(例えば、第2台車)と、第3移動手段76(例えば、昇降装置)とを含む。第1移動手段74、第2移動手段75および第3移動手段76は、荷12を、Y方向、X方向およびZ方向に移動させる搬送手段を構成する。第1移動手段74は、荷12をX方向に沿って移動させうる。第2移動手段75は、荷12をY方向に沿って移動させうる。第3移動手段76は、荷12をZ方向に移動させうる。
【0019】
例えば、搬送手段は、荷12を棚5の保管部52から搬出できる。例えば、搬送手段は、荷12を棚5の保管部52に搬入できる。例えば、搬送手段は、荷12を棚5の一の保管部52から棚5の他の保管部52に搬送できる。
【0020】
棚5は、多数の荷12を保管可能な保管スペースであり、保管棚と称されることがある。実施形態の棚5は、第2走行路73を挟んで図中右側の棚55と、図中左側の棚56に区分されている。棚5の構成は、複数の荷12を収容、保管可能であれば、特に限定されない。この例では、棚5は、X方向、Y方向およびZ方向(段方向)に沿って配列された複数の保管部52を含む。X方向、Y方向に配列された複数の保管部52を保管ステージという。言い換えると、棚5は、段方向に配列された複数段(例えば、3段)の保管ステージを備える。各保管部52は、荷12を収容可能に構成されている。
【0021】
棚5には、第1移動手段74が走行するための第1走行路71(例えば、第1レール)と、第2移動手段75が走行するための第2走行路73(例えば、第2レール)とが設けられる。第1走行路71は、棚55、56およびピッキング空間58においてX方向に延設される。第1移動手段74は、各保管部52の下部を走行できる。第2走行路73は、棚55、56およびピッキング空間58に隣接してY方向に延設される。
【0022】
第1移動手段74は、モータ(不図示)によって車輪を駆動し、空荷または荷12を搭載した状態で第1走行路71をX方向に走行する。第1移動手段74は、第2移動手段75および第3移動手段76に乗降できる。第2移動手段75は、モータ(不図示)によって車輪を駆動し、第2走行路73をY方向に走行する。第2移動手段75は、空荷の状態または荷12を搭載した状態の第1移動手段74を移送する。第3移動手段76は、第2走行路73に隣接して設けられる。第3移動手段76は、第1移動手段74および荷12を任意の保管ステージから他の保管ステージに昇降させることができる。
図1の例では、全段に対して単一の入出庫部77が設けられ、入出庫部77に第3移動手段76が連設されている。
【0023】
この例では、入庫対象の荷12は、フォークリフトなどの外部搬送手段(不図示)によって入出庫部77に搬入され、第3移動手段76によって目的の段に移送される。出庫対象の荷12は、保管されていた段から第3移動手段76によって入出庫部77の段に昇降され、入出庫部77に移送され、入出庫部77から外部搬送手段によって運び出される。
【0024】
制御部78は、MPU(Micro Processing Unit)などを含んで構成され、ユーザからの操作結果に基づき、入庫、出庫、搬出、移送等のために荷12の移動を制御する。一例として、制御部78は、入出庫用の領域と保管部との間や、複数の保管部間で荷12を移送するように、第1移動手段74、第2移動手段75および第3移動手段76の動作を制御する。また、制御部78は、荷12をピッキングするためにピッキング装置10の動作を制御する。
【0025】
(ピッキング装置)
図3も参照して、ピッキング装置10を説明する。
図3は、ピッキング装置10の一例を概略的に示す正面図である。この図では、一部の柱、梁、フレームなどの記載を省略している。実施形態のピッキング装置10は、単一種の荷が積まれた単載パレットを複数準備し(例えば、入庫により)、客先の要望に合わせて複数種の荷を混載した混載パレットを作成する用途に好適である。混載パレットを作成する場合に、ピッキング装置10は、単載パレットの1層分の荷のうち一部の荷(1つ以上の荷)を取り出して混載パレットに移載する際、移載先の混載パレットの荷の状況を把握して、移載する荷の積み付け位置を高精度に制御することができる。
【0026】
ピッキング空間58は、ピッキング装置10を用いてピッキングを行うためのスペースである。ピッキング空間58は、棚56の外部に設けられてもよいが、この例では棚56内に設けられている。
【0027】
ピッキング空間58には、ピッキング前の荷12(以下、「第1荷集合121」という)を載置するための第1領域521と、ピッキング後の荷12(以下、「第2荷集合122」という)を載置するための第2領域522とが設けられる。ピッキング装置10は、第1領域521の第1荷集合121から取り出した荷12を、第2領域522に移動し、第2領域522の第2荷集合122に積み付けることができる。
【0028】
なお、第1領域521および第2領域522は、ピッキング空間58内の特定の場所を指すものではなく、荷12を一時的に保管する領域を指している。したがって、ピッキング空間58における第1領域521および第2領域522の位置や範囲はピッキング作業ごとに変化する場合もある。実施形態の第1領域521および第2領域522は、保管部52と同様の構成を有する。
【0029】
実施形態のピッキング空間58には、第1走行路71がX方向に延設されている。第1領域521および第2領域522は、第1走行路71上に設けられている。第1移動手段74は、第1領域521および第2領域522の下部を走行できる。ピッキング前の第1荷集合121は、第1移動手段74によって第1領域521に運び入れされる。ピッキング装置10は、第1荷集合121から所定の荷12を吸着して持ち上げ、移動させて、第2荷集合122に積み入れする。ピッキング後の第2荷集合122は、第1移動手段74によって第2領域522から運び出される。
【0030】
図3に示すように、ピッキング装置10は、ピッキング前の第1荷集合121から1以上の荷12をピッキングして第2荷集合122へ移載する。実施形態のピッキング装置10は、いわゆるガントリ型のクレーン機構60に支持されている。クレーン機構60は、一対の横梁63と、横桁62と、クレーン台車64と、本体昇降機構66とを備える。一対の横梁63は、ピッキング空間58の上部空間においてX方向両側に離隔して設けられる。横梁63の両端は、縦柱61の上端に支持される。
【0031】
横桁62は、X方向に延びるレール状の構造体で、一対の横梁63の間に架け渡される。横桁62は、横梁63上をY方向に自走可能に構成される。横桁62は、クレーンガータと称されることがある。クレーン台車64は、横桁62上をX方向に自走可能な台車である。本体昇降機構66は、ピッキング装置10をクレーン台車64に吊下げるとともに、ピッキング装置10をZ方向に上下動させることができる。
【0032】
クレーン機構60は、ピッキング装置10を水平なX方向およびY方向に自在に移動可能に支持している。また、クレーン機構60は、ピッキング装置10を段方向(上下方向、Z方向)に移動可能に支持している。
【0033】
図4は、ピッキング装置10の第1姿態を概略的に示す図であり、ピッキング装置本体2がクレーン機構60に対して最も下降し、且つ、荷受部9がピッキング装置本体2に対して最も下降した状態を示す。
図5は、ピッキング装置10の第2姿態を概略的に示す図であり、ピッキング装置本体2および荷受部9が最も上昇した状態を示す。
図4(A)、
図5(A)は正面図であり、
図4(B)、
図5(B)は側面図である。これらの図では、説明に重要でない一部の柱やフレームなどの記載を省略している。
【0034】
図4、
図5に示すように、ピッキング装置10は、ピッキング装置本体2(以下、装置本体2ということがある。)と、保持部3と、支持機構4と、変位検知部81と、加速度検知部82と、駆動部6、荷受部9とを備える。ピッキング装置10は、対象荷12A、先置荷12B、第1荷集合121、第2荷集合122、装置本体2、および保持部3の位置と姿勢を検知して制御部78に提供可能なセンサ類(不図示)を備えている。制御部78は、このセンサ類の検知結果を用いてピッキング装置10およびクレーン機構60を制御する。
【0035】
装置本体2は、クレーン機構60により、水平方向及び上下方向に移動可能である。保持部3は、対象荷12Aを保持できる。保持部3は、装置本体2に支持される。ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を許容する可動モードを有する。一例として、可動モードでは、保持部3は、外部から力(加速度)を受けたら、装置本体2に対してその力の方向に相対移動できる。保持部3が可動であることで、保持部3に保持される対象荷12Aも可動になる。対象荷12Aが可動であることにより、先置荷12Bとの接触による衝撃を緩和できる。
【0036】
一方、対象荷12Aが衝撃を受ける可能性が低い状況では、対象荷12Aが可動でないことが望ましい場合がある。そこで、ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を制限する制限モードを有する。一例として、制限モードでは、保持部3は、装置本体2と一体に移動する。ピッキング装置10を移動させる際、制限モードにセットしておけば、装置本体2に対する保持部3の変位が制限されるので、保持部3に保持された対象荷12Aの不要な移動や揺動を抑制できる。
【0037】
図4の例では、ピッキング装置10は、装置本体2と、荷12を保持可能な保持部3を有し、地上の荷12(以下、「地上荷」ということがある)に対して相対移動可能に設けられる。本明細書で「地上」は、ピッキング空間58の下面であって、第1領域521および第2領域522を含む領域を意味する。装置本体2は、複数のフレーム材を組み合わせることによって形成された略長方形の平行六面体形状を有し、吊具と称されることがある。装置本体2は、本体昇降機構66の下端に連結され、本体昇降機構66の上端はクレーン機構60のクレーン台車64に連結される。
【0038】
本体昇降機構66は、クレーン台車64に連結されるガイド部661と、第1スライダ662と、第2スライダ663とを有する。第1スライダ662は、ガイド部661に対して上下にスライドできる。第2スライダ663は、第1スライダ662に対して上下にスライドできる。本体昇降機構66は、制御部78の制御に基づいて、モータを含む駆動手段(不図示)によって、第1スライダ662および第2スライダ663を上下に移動させることにより、装置本体2を昇降させることができる。
【0039】
保持部3は、ピッキング対象の荷12を保持可能であり、装置本体2の下方に取り付けられる。この例の保持部3は、複数の吸着部38と、複数の吸着部38を支持するブラケット37とを備える。複数の吸着部38は、Y方向およびX方向に所定の間隔でマトリックス状に配置される。
【0040】
吸着部38は、吸着パッドを有し、真空発生源(不図示)により生成された大気圧よりも低圧の空気(以下、「吸引流体」という)が通され、吸着部38の吸着パッドに発生させた負圧によって、荷12を吸着するための吸着力を発生させる。真空発生源は、真空ポンプ、エジェクタ、真空ブロアなどを含んで構成できる。真空発生源からの吸引流体は、配管(不図示)を通じて吸着部38に供給される。
【0041】
吸着部38が荷12を吸着可能な吸着力を発生することを、吸着部38は「オン状態」といい、オン状態でない状態を「オフ状態」という。保持部3は、制御部78の制御に基づいて、複数の吸着部38のそれぞれのオン/オフ状態を切り替えることにより、吸着対象の荷12に対応する領域の吸着部38をオン状態にし、当該吸着対象の荷12を吸着して保持できる。
【0042】
荷受部9は、装置本体2の保持部3で保持した荷12(以下、「保持荷」いうことがある)の下面を支持するための機構である。
図3は、保持部3が、保持荷の下面を支持している状態を示しており、保持荷は、保持部3と荷受部9とに上下に挟まれている。
図4の例では、荷受部9は、複数の支持部材91と、一対の展開機構92と、一対の退避機構93とを含む。支持部材91は、Y方向に延びる円筒パイプで、荷12を支持するときは、当該荷12の下面に展開される。一対の展開機構92は、装置本体2のY方向両側に離間して配置され、展開された複数の支持部材91の両端を支持できる。複数の支持部材91はスラットと称されることがある。
【0043】
一対の退避機構93は、退避した複数の支持部材91の両端を支持できる。展開機構92はX方向に延び、退避機構93はZ方向に延び、それぞれ角張ったC字状の断面を有する。展開機構92の一端と退避機構93の下端は連結され、正面視で横向きのL字状を呈する。複数の支持部材91は、制御部78の制御に基づいて、展開機構92と退避機構93との間で移動する。
【0044】
荷受部9は、装置本体2との相対位置を上下に変えることができるように設けられる。荷受部9は、本体昇降機構66とは別の昇降機構により独立して昇降可能であってもよいが、
図4の例では、装置本体2に支持される。荷受部9は、荷受部昇降機構96を介して装置本体2に連結され、荷受部昇降機構96によって、装置本体2との相対位置を上下に変えることができる。
【0045】
荷受部昇降機構96は、装置本体2に連結されるガイド部961と、ガイド部961に対して上下にスライド可能なスライド部962とを有する。スライド部962は、荷受部9の退避機構93に連結される。荷受部昇降機構96は、制御部78の制御に基づいて、モータを含む駆動手段(不図示)によって、スライド部962を上下に移動させることにより、荷受部9を昇降させることができる。
【0046】
支持機構4は、ボールガイドやリンク機構を含んで構成可能であり、装置本体2に保持部3を支持する。実施形態の支持機構4は、ボールガイドの一例として、THK株式会社製のLMガイド(登録商標)を含んでいる。支持機構4は、装置本体2に対する保持部3の相対位置の変位を許容する可動モードと、装置本体2に対する保持部3の変位を制限する制限モードとを有する。制限モードは、保持部3が装置本体2に対して相対移動しないロック状態であってもよい。支持機構4は、制御部78の制御に基づいて可動モードと制限モードとを切替できる。
【0047】
変位検知部81は、装置本体2に対する保持部3の変位を検知する。変位検知部81は、保持部3の変位を検知可能であれば構成に限定はなく、公知の原理に基づく変位センサを含んで構成できる。この変位センサとしては、エンコーダなどが挙げられる。
【0048】
加速度検知部82は、保持部3が受ける加速度を検知する。加速度検知部82は、保持部3が受ける加速度を検知可能であれば構成に限定はなく、公知の原理に基づく加速度センサを含んで構成できる。この加速度センサとしては、ピエゾ素子やジャイロセンサなどが挙げられる。変位検知部81および加速度検知部82は、検知結果を制御部78に提供する。
【0049】
対象荷12Aが先置荷12Bに接触したときの衝撃は小さいことが望ましい。そこで実施形態は、変位検知部81が保持部3の変位を検知した場合に、保持部3に装置本体2の移動方向とは逆方向の移動力を付与する駆動部6を備える。駆動部6は、制御部78の制御に基づいて保持部3に移動力を付与できる。つまり、駆動部6は、対象荷12Aが先置荷12Bに接触して保持部3が装置本体2に対して変位したら、対象荷12Aに逆方向の加速度を付与し、対象荷12Aが受ける衝撃を軽減できる。駆動部6は、保持部3に移動力を付与可能であれば構成に限定はなく、公知の原理に基づく加速度付与デバイスを含んで構成できる。この加速度付与デバイスとしては、モータ、圧電素子、スプリングなどが挙げられる。
【0050】
以上のように構成された、ピッキング装置10のピッキング動作の一例を説明する。
図6は、ピッキング装置10の動作S110を示すフローチャートである。
図7は、動作S110の過程を概略的に示す図である。これらの図では、説明に重要でない部材の記載を省略している。この動作説明では、ピッキング装置10の特徴の理解を容易にするため、荷受部9に関する記載を省略している。動作S110は、第1領域521の第1荷集合121(地上荷)からピッキング対象となる対象荷12Aを持ち上げて移動し、対象荷12Aを第2領域522の第2荷集合122の先置荷12Bに隣接する位置に積み付ける動作である。
【0051】
動作S110は、制御部78の制御に基づくピッキング装置10の動作であり、ピッキング装置10は、クレーン機構60による水平移動および上下移動を用いることができる。動作S110は、ピッキング装置10が第1領域521の地上荷である第1荷集合121の鉛直上方に位置する状態で開始される。この状態では、保持部3は第1荷集合121の対象荷12Aの鉛直上方に位置する。
【0052】
動作S110が開始されると、制御部78は、ピッキング装置10を制限モードにセットする(ステップS111)。このステップで、支持機構4は、装置本体2に対する保持部3の変位を制限する。このことにより、保持部3に保持された荷12が装置本体2に対して揺動することを抑制できる。
【0053】
ステップS111を実行した後、制御部78は、ピッキング装置10を下降させる(ステップS112)。このステップで、制御部78は、保持部3の下端(吸着部38の下端)が対象荷12Aの上面に接触するまで、装置本体2および保持部3を下降させる。
【0054】
ステップS112を実行した後、制御部78は、対象荷12Aに対応する領域の吸着部38をオン状態にし、対象荷12Aを吸着する(ステップS113)。
【0055】
ステップS113を実行した後、制御部78は、吸着した対象荷12Aを保持して、ピッキング装置10を上昇させる(ステップS114)。このステップにおいて、制御部78は、吸着された対象荷12Aが第1荷集合121から正常に分離され、正常姿勢で保持されているかを確認する。この確認は図示しないセンサ類を用いることにより実現できる。また、対象荷12Aの下に荷受部を展開して対象荷12Aを下から支持してもよい。
【0056】
ステップS114を実行した後、制御部78は、対象荷12Aを保持した状態でピッキング装置10を所定の高さに上昇させ、クレーン機構60により、第2領域522の第2荷集合122の鉛直上方位置まで、ピッキング装置10を水平移動させる(ステップS115、
図3も参照)。このステップで、制御部78は、対象荷12Aが、上面視で、先置荷12Bの側面から水平方向に少し離れた位置にくるように、ピッキング装置10を移動させる。この状態で、対象荷12Aは、上面視で、積付け予定位置から水平方向に少しずれた位置に位置する。このステップで、必要に応じて、対象荷12Aを旋回させてもよい。
【0057】
ステップS115を実行した後、制御部78は、ピッキング装置10を下降させる(ステップS116)。このステップで、制御部78は、対象荷12Aの下面が先置荷12Bの上面よりも低い位置で、対象荷12Aが、第2荷集合122に接触しない位置まで下降させる。対象荷12Aの下面の位置は、先置荷12Bの上下範囲を2等分した位置(一点鎖線Lcで示す)より下の位置であってもよい(
図7(A)を参照)。
【0058】
ステップS116を実行した後、制御部78は、ピッキング装置10を水平移動させて、対象荷12Aを先置荷12Bに接近させる(ステップS117)。このステップで、対象荷12Aは、先置荷12Bに徐々に接近する(
図7(B)を参照)。次に、制御部78は、対象荷12Aが所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS118)。この所定範囲は、上面視で、先置荷12Bからの離隔距離の範囲であり、例えば10mmから100mmの範囲で設定できる。この所定範囲は、作業時間や接触時の衝撃等が所望の条件を満たすようにシミュレーションまたは実験で設定できる。対象荷12Aが所定範囲内でない場合(ステップS118のN)、プロセスはステップS117の先頭に戻り、ステップS117~S118を繰り返す。
【0059】
対象荷12Aが所定範囲内である場合(ステップS118のY)、制御部78は、ピッキング装置10の移動の加速度を下げる(ステップS119)。次に、制御部78は、ピッキング装置10の移動の加速度が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS120)。この閾値は、作業時間や接触時の衝撃等が所望の条件を満たすようにシミュレーションまたは実験で設定できる。ピッキング装置10の加速度が閾値を超えている場合(ステップS120のN)、プロセスはステップS119の先頭に戻り、ステップS119~S120を繰り返す。
【0060】
ピッキング装置10の加速度が閾値以下の場合(ステップS120のY)、制御部78は、ピッキング装置10を可動モードにセットする(ステップS121)。このステップで、支持機構4は、装置本体2に対する保持部3の変位を許容する。この状態で、対象荷12Aが先置荷12Bに接触するための準備が整う。
【0061】
ステップS121を実行した後、制御部78は、ピッキング装置10を水平移動させて、対象荷12Aを先置荷12Bに接近させる(ステップS122)。次に、制御部78は、対象荷12Aが先置荷12Bに接触して保持部3が変位したか否かを判定する(ステップS123)。保持部3が変位していない場合(ステップS123のN)、プロセスはステップS122の先頭に戻り、ステップS122~S123を繰り返す。
【0062】
保持部3が変位した場合(ステップS123のY)、制御部78は、装置本体2の移動を停止させるためにピッキング装置10の移動にブレーキをかける(ステップS124)。このステップで、制御部78は、クレーン機構60を制御してピッキング装置10の移動にブレーキをかける。このことにより、対象荷12Aと先置荷12Bの衝撃を緩和できる。また、ブレーキをかけないと装置本体2がオーバーランして荷12がずれるところ、ブレーキをかけることで荷12のずれを抑制できる。なお、対象荷12Aと先置荷12Bが接触する前に、これらの間の距離が所定の距離以下になったときにピッキング装置10の移動にブレーキをかけるようにしてもよいし、これらの間の距離を用いて決定されタイミングにブレーキをかけるようにしてもよい。この場合、一層衝撃を緩和できる。
【0063】
ピッキング装置10の慣性により、ピッキング装置10は、ブレーキをかけても直ぐには停止できない場合がある。そこで、実施形態では、保持部3が変位した場合に、制御部78は、保持部3に移動方向とは逆方向の移動力を付与する(ステップS125)。対象荷12Aに逆方向の移動力を付与することにより、対象荷12Aと先置荷12Bの衝撃を一層緩和できる。この移動力は、対象荷12Aが先置荷12Bに接触した状態を維持できる程度に設定できる(
図7(C)を参照)。
【0064】
この移動力は、移動力による対象荷12Aの移動が観察できない程度であってもよい。なお、対象荷12Aと先置荷12Bが接触する前に、これらの間の距離が所定の距離以下になったときに移動力の付与を開始してもよいし、これらの間の距離を用いて決定されタイミングに移動力の付与を開始してもよい。移動方向は、対象荷12Aが先置荷12Bに接近する方向であり、その逆方向は、対象荷12Aが先置荷12Bから離れる方向である。
【0065】
ステップS125を実行した後、制御部78は、第2荷集合122上に対象荷12Aを下ろす(ステップS126)。このステップで、制御部78は、ピッキング装置10を下降させるとともに、対象荷12Aを吸着していた吸着部38をオフ状態にする。これにより、対象荷12Aは第2荷集合122上に静置される(
図7(D)を参照)。
【0066】
ステップS126を実行した後、制御部78は、所定位置までピッキング装置10を上昇させる(ステップS127)。このステップでは、空荷の装置本体2と保持部3が上昇する。ピッキング装置10が所定位置まで上昇したら、動作S110は終了する。上述の各ステップは一例であって、各種の変形が可能である。
【0067】
以上のように構成された実施形態のピッキング装置10の特徴を説明する。ピッキング装置10は、水平方向に移動可能な装置本体2と、装置本体2に支持され、積付け対象の荷12Aを保持する保持部3と、を備える。ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を許容する可動モードを有する。
【0068】
この構成によれば、可動モードで積み付けることにより、先置荷12Bの横に対象荷12Aを積付ける際、これらの荷同士が接触した場合に、対象荷12Aが保持部3とともに変位して対象荷12Aを逃がすことができるので、接触の衝撃を緩和できる。
【0069】
一例として、ピッキング装置10は、さらに、装置本体2に保持部3を支持する支持機構4を備える。支持機構4は、装置本体2に対する保持部3の相対位置の変位を許容する。この場合、支持機構4の構成により剛性や変位量を任意に設定できるので、衝撃量を制御でき、バラツキの少ない安定した衝撃緩和効果を得ることができる。
【0070】
一例として、ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を制限する制限モードを有する。この場合、ピッキング装置10を移動させる際、制限モードにセットしておけば、装置本体2に対する保持部3の変位が制限されるので、保持部3に保持された対象荷12Aの不要な移動を抑制できる。
【0071】
一例として、ピッキング装置10では、保持部3が受ける加速度が閾値を超えるときは制限モードにセットされる。この場合、保持部3が受ける加速度すなわち対象荷12Aが受ける加速度が大きいときには制限モードにセットされるので、対象荷12Aの不要な移動を抑制できる。
【0072】
一例として、ピッキング装置10では、対象の荷12Aの位置が所定の範囲外であるときは制限モードにセットされる。この場合、対象荷12Aが先置荷12Bから離れているときには制限モードにセットされるので、対象荷12Aの不要な移動を抑制できる。
【0073】
一例として、ピッキング装置10は、さらに、装置本体2に対する保持部3の変位を検知する変位検知部81を備える。実施形態では、装置本体2が移動しているとき、変位検知部81が保持部3の変位を検知した場合に、装置本体2の移動を停止させる。この場合、装置本体2の移動を停止させることにより、対象荷12Aと先置荷12Bの衝撃を緩和できる。
【0074】
一例として、ピッキング装置10は、さらに、装置本体2に対する保持部3の変位を検知する変位検知部81と、保持部3に移動力を付与する駆動部6と、を備える。実施形態では、駆動部6は、変位検知部81が保持部3の変位を検知した場合に、保持部3に装置本体2の移動方向とは逆方向の移動力を付与する。この場合、逆方向の移動力により、対象荷12Aと先置荷12Bの衝撃を一層緩和できる。
【0075】
以上のように構成された自動倉庫システム100の特徴を説明する。自動倉庫システム100は、荷12を保管する保管部52を有する棚5と、保管部52の荷12を移動させるピッキング装置10と、を備える。ピッキング装置10は、水平方向に移動可能な装置本体2と、装置本体2に支持され、積付け対象の荷12Aを保持する保持部3と、を備える。ピッキング装置10は、装置本体2に対する保持部3の変位を許容する可動モードを有する。
【0076】
この構成によれば、可動モードで積み付けることにより、先置荷12Bの横に対象荷12Aを積付ける際、これらの荷同士が接触した場合に、対象荷12Aが保持部3とともに変位して対象荷12Aを逃がすことができるので、接触の衝撃を緩和できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。また、実施形態を構成する各種デバイスや機構は、実施形態で説明したものに限定されず、公知の原理の基づく各種のデバイスや機構を用いてもよい。
【0078】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。変形例の図では、説明に重要でない部材の記載を省略している。
【0079】
[第1変形例]
図8を参照して、ピッキング装置10の第1変形例を説明する。
図8は、第1変形例を概略的に示す正面図である。実施形態の説明では、支持機構4が装置本体2に保持部3を支持する例を示したが、本発明はこれに限定されない。第1変形例では、ピッキング装置10は、支持機構4とは別に、装置本体2に対して地上側の荷12の相対位置の変位を許容する地上側支持機構48を備えている。この場合、地上側支持機構48により対象荷12Aが接触した際に先置荷12Bを逃がすことができるので、この接触の衝撃を緩和できる。
図8の例では、地上側支持機構48は、パレット11と、第2荷集合122との間に設けられ、地上側の第2荷集合122を平面方向に移動可能に支持する。
【0080】
地上側支持機構48は、ボールガイドやリンク機構を含んで構成可能である。この例では、地上側支持機構48は、パレット11と第2荷集合122との間に配置されたボールガイドであり、パレット11に対して第2荷集合122を水平移動可能に支持する。地上側支持機構48は、支持機構4と同様の可動モードと制限モードとを有する。可動モードであるとき、第2荷集合122の先置荷12Bに対象荷12Aが矢印の方向から接触すると、第2荷集合122は移動して接触時の荷同士の衝撃を緩和できる。
図8では、接触直前の第2荷集合122の状態を実線で示し、水平移動した第2荷集合122の輪郭を破線で示している。
【0081】
第1変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0082】
[第2変形例]
図9、
図10を参照して、ピッキング装置10の第2変形例を説明する。
図9、
図10は、ピッキング装置10の第2変形例を概略的に示す図である。
図9(A)、
図10(A)は、正面図であり、
図9(B)、
図10(B)は、上面視の図である。また、
図10(C)は、保持部3のブラケット37が反時計回りに回転した状態を示す上面視の図である。第2変形例では、支持機構4は、複数のアーム42と、これらのアームを屈曲可能に接続する関節43と、を有するリンク機構41を含む。リンク機構41の基端は、装置本体2の上部に支持され、リンク機構41の先端は、保持部3を支持する。
図9は、保持部3が非変位位置(通常位置)に位置する状態を示し、
図10は、保持部3が水平方向に変位した変位状態を示している。
図10に示すように、支持機構4は、リンク機構41によって保持部3の水平変位を許容する。また、
図10(C)に示すように、支持機構4は、リンク機構41によって保持部3の回転を許容可能である。
【0083】
第2変形例は、保持部3の移動を制限するための制限アーム44と、制限アーム44の回動を制限するアーム制御部45とを有する。制限アーム44の基端は、アーム制御部45に回動可能に支持される。制限アーム44の先端(係合部)は、ブラケット37に設けられた長孔39に係合する。
図10に示すように、変位状態では制限アーム44は、その基端を中心に回動すると共に、先端(係合部)は、長孔39の中を移動する。
【0084】
アーム制御部45は、装置本体2の四隅の縦フレーム21に支持される。アーム制御部45は、制御部78の制御に基づいて、可動モードと制限モードとを切替できる。アーム制御部45は、可動モードで制限アーム44の回動を許容し、制限モードで制限アーム44の回動を禁止する。この結果、ブラケット37は、可動モードで変位可能で、制限モードで変位が制限される。
【0085】
第2変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0086】
[第3変形例]
図11を参照して、ピッキング装置10の第3変形例を説明する。
図11は、ピッキング装置10の第3変形例を示す正面図である。実施形態の説明では、装置本体2、支持機構4および保持部3がクレーン機構60によって前後左右および上下に移動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。第3変形例のピッキング装置10では、装置本体2、支持機構4および保持部3は、ロボットアーム67に支持され、ロボットアーム67によって前後左右および上下に移動する。支持機構4および保持部3は、実施形態と同様の構成を有し、同様に機能する。
【0087】
ロボットアーム67の構成に限定はないが、この例のロボットアーム67は、複数のアーム68と、これらを接続する関節69と、を有する多関節ロボットである。各関節69は、楕円矢印X1~X4で示す回転方向に回転する。ロボットアーム67は、制御部78の制御に基づいて関節69を駆動することにより、実施形態のクレーン機構60と同様に、装置本体2、支持機構4および保持部3を3次元に移動させることができる。第3変形例では、支持機構4は、装置本体2と保持部3との間に配置されたボールガイド47であり、装置本体2に対して保持部3を水平移動可能に支持する。支持機構4は、実施形態と同様の可動モードと制限モードとを有する。
【0088】
第3変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0089】
[その他の変形例]
実施形態の説明では、ピッキング装置10が、自動倉庫に適用される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明のピッキング装置は、自動倉庫以外でもアームロボットを使用したデパレイズ装置やパレタイズ装置にも適用できる。
【0090】
実施形態の説明では、ピッキング空間58が、棚5と一体的に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング空間58は、棚5の外部に設けられてもよい。この場合、荷12は、フォークリフトなどの搬送機構によって、棚5とピッキング空間58との間で搬送されてもよい。
【0091】
実施形態の説明では、ピッキング空間58が棚5と同じ平面に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング空間58は棚5とは異なる平面に設けられてもよい。また、ピッキング装置10の一部が棚5と同じ平面に設けられ、他の部分が棚5の平面範囲から外へ張り出してもよい。
【0092】
実施形態の説明では、第2移動手段75と第3移動手段76とが別個に備えられる例を示したが、これに限定されない。第2移動手段として、荷12を段方向および列方向に移動可能な移動手段(例えば、スタッカークレーン)を採用してもよい。この場合、スタッカークレーンは、第1移動手段を搭載できないものであってもよいし、荷12とともに第1移動手段を搭載可能なものであってもよい。
【0093】
実施形態の説明では、全段に対して単一の入出庫部77が設けられ、入出庫部77に第3移動手段76が連設される例を示したが、これに限定されない。各段それぞれに入出庫部が設けられ、入出庫する荷は、フォークリフトによって各段の入出庫部に出し入れされてもよい。また、入出庫部は入庫部と出庫部とに分けられていてもよい。
【0094】
実施形態の説明では、ピッキング装置10が、ガントリ型のクレーン機構60によって天井側から支持される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ピッキング装置は多関節ロボットや別構成の支持手段によって支持されてもよい。また、ピッキング装置は側方の横壁に取付けられ、側方から支持される構成であってもよい。
【0095】
実施形態の説明では、対象荷12Aが受ける加速度が大きいときには制限モードにセットされる例、及び、対象の荷12Aの位置が所定の範囲外であるときは制限モードにセットされる例を示したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、ピッキング装置10は、何らかの揺れ検出手段(不図示)によって予め設定された大きさ以上の揺れが検知されたときに制限モードにセットされてもよい。この揺れ検出手段としては、加速度計、カメラ等の公知の原理に基づく各種の揺れ検知手段を採用できる。この揺れ検出手段は、ピッキング装置10が設けられる自動倉庫の内部に設けられてもよいし、この自動倉庫の外部に設けられてもよい。この場合、何らかの原因により揺れが発生したときに、対象荷12Aの不要な移動を抑制できる。
【0096】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0097】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0098】
2 ピッキング装置本体、 3 保持部、 4 支持機構、 5 棚、 6 駆動部、 10 ピッキング装置、 12 荷、 48 地上側支持機構、 52 保管部、 56 棚。