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特開2024-88234ボンディング装置およびボンディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088234
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ボンディング装置およびボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203307
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】北口 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄次
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044LL05
5F044PP16
5F044PP19
5F044RR12
(57)【要約】
【課題】 効率的に電子部品の全体を加熱する。
【解決手段】 裏面にバンプBが形成された半導体チップ1(電子部品)にレーザ光を照射し、半導体チップ1を加熱して上記バンプBを溶融させるボンディング装置に関する。
所定波長帯域λTよりも小さい第1波長λ1の第1レーザ光L1を透過させ、所定波長帯域λTよりも大きい第2波長λ2の第2レーザ光L2を反射させる誘電体多層膜Mからなる透過調整部16aを設ける。
上記第1レーザ光L1を照射して、上記透過調整部16aを透過した第1レーザ光L1によって半導体チップ1を加熱する第1照射動作と、上記第2レーザ光L2を照射して、上記透過調整部16aに照射された一部の第2レーザ光L2を反射させ、透過調整部16aに照射されなかった一部の第2レーザ光L2によって半導体チップ1を加熱する第2照射動作とを行う。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射するレーザ光照射手段と、上記レーザ光を導光する導光手段と、基板を支持するボンディングステージと、上記レーザ光を透過させるとともに電子部品の上面を保持する保持手段とを備え、
上記導光手段は導光したレーザ光を上記保持手段の上方から電子部品に向けて照射し、上記保持手段を透過したレーザ光によって電子部品を加熱するボンディング装置において、
上記レーザ光照射手段は、所定波長帯域外に設定した第1波長の第1レーザ光と、上記所定波長帯域内に設定した第2波長の第2レーザ光とを照射可能に構成され、
上記導光手段と上記保持手段に保持された電子部品との間に、上記所定波長帯域に設定されて、上記第1波長のレーザ光を透過させ、上記第2波長のレーザ光を反射させる誘電体多層膜からなる透過調整部を設け、
上記レーザ光照射手段が上記第1レーザ光を照射して、上記透過調整部を透過した第1レーザ光によって電子部品を加熱する第1照射動作と、上記第2レーザ光を照射して、上記透過調整部に照射された第2レーザ光の一部を反射させ、透過調整部に照射されなかった一部の第2レーザ光で電子部品を加熱する第2照射動作とを行うことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
上記透過調整部を、上記保持手段に保持された上記電子部品の中心部分に対応した位置に設け、
上記第1照射動作では上記電子部品の全体を第1レーザ光によって加熱し、第2照射動作では、上記透過調整部の外側を通過した第2レーザ光によって電子部品の中心部分を囲繞する外周部分を加熱することを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
上記透過調整部にレーザ光が通過可能な窓を設け、
上記第1照射動作では上記電子部品の全体を第1レーザ光によって加熱し、第2照射動作では、上記窓を通過した第2レーザ光によって上記電子部品における上記窓に対応した部分を加熱することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のボンディング装置。
【請求項4】
上記保持手段の電子部品を保持する部分に、着脱自在にツールアタッチメントを設け、上記透過調整部を上記ツールアタッチメントに形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のボンディング装置。
【請求項5】
レーザ光を透過させる保持手段によって電子部品の上面を保持し、レーザ光を上記保持手段の上方から電子部品に向けて照射して、上記保持手段を透過したレーザ光によって電子部品を加熱するボンディング方法において、
所定波長帯域外に設定した第1波長の第1レーザ光を透過させ、上記所定波長帯域内に設定した第2波長の第2レーザ光を反射させる誘電体多層膜からなる透過調整部を設け、
上記第1レーザ光を照射して、上記透過調整部を透過した第1レーザ光によって電子部品を加熱する第1照射動作と、上記第2レーザ光を照射して、上記透過調整部に照射された一部の第2レーザ光を反射させ、透過調整部に照射されなかった一部の第2レーザ光によって電子部品を加熱する第2照射動作とを行うことを特徴とするボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置およびボンディング方法に関し、詳しくは電子部品を基板に接合する際、上記電子部品をレーザ光によって加熱するボンディング装置およびボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどの電子部品を保持する保持手段を備えたボンディングヘッドと、基板を支持するボンディングステージとを備え、電子部品を基板に密着させて接合するボンディング装置が知られている。
上記電子部品の裏面にはハンダからなる複数のバンプが形成されており、上記電子部品をレーザ光によって加熱してバンプを溶融させ、その状態で電子部品と基板とを密着させるようになっている(特許文献1)。
このように電子部品をレーザ光によって加熱する際、電子部品の中心部分と外周部分、もしくは電子部品を構成する部材の熱伝導率の違いにより、電子部品が均一に加熱されず、上記バンプが均一に溶融しないという問題が生じた。
そこで特許文献1では、電子部品に角部領域や内側領域を設定するとともに、各領域に対してレーザ発振器および光ファイバを設けて、加熱されにくい角部領域に高い出力のレーザ光を照射することで、電子部品が均一に加熱されるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6237979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のボンディング装置の場合、電子部品の各領域にレーザ発振器および光ファイバを設ける必要があることから、構造が複雑となり、また制御も複雑になるという問題があった。
また近年は電子部品として一部に熱伝導率の異なる内蔵部品を設けるなど、電子部品の熱伝導率が部分的に異なるものも採用されており、多様な構造を有する電子部品であってもこれを均一に加熱することが可能な技術が求められている。
このような問題に鑑み、本発明はより効率的に電子部品の全体を均一に加熱することが可能なボンディング装置およびボンディング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかるボンディング装置は、レーザ光を照射するレーザ光照射手段と、上記レーザ光を導光する導光手段と、基板を支持するボンディングステージと、上記レーザ光を透過させるとともに電子部品の上面を保持する保持手段とを備え、
上記導光手段は導光したレーザ光を上記保持手段の上方から電子部品に向けて照射し、上記保持手段を透過したレーザ光によって電子部品を加熱するボンディング装置において、
上記レーザ光照射手段は、所定波長帯域外に設定した第1波長の第1レーザ光と、上記所定波長帯域内に設定した第2波長の第2レーザ光とを照射可能に構成され、
上記導光手段と上記保持手段に保持された電子部品との間に、上記所定波長帯域に設定されて、上記第1波長のレーザ光を透過させ、上記第2波長のレーザ光を反射させる誘電体多層膜からなる透過調整部を設け、
上記レーザ光照射手段が上記第1レーザ光を照射して、上記透過調整部を透過した第1レーザ光によって電子部品を加熱する第1照射動作と、上記第2レーザ光を照射して、上記透過調整部に照射された第2レーザ光の一部を反射させ、透過調整部に照射されなかった一部の第2レーザ光で電子部品を加熱する第2照射動作とを行うことを特徴としている。
また請求項5の発明にかかるボンディング方法は、レーザ光を透過させる保持手段によって電子部品の上面を保持し、レーザ光を上記保持手段の上方から電子部品に向けて照射して、上記保持手段を透過したレーザ光によって電子部品を加熱するボンディング方法において、
所定波長帯域外に設定した第1波長の第1レーザ光を透過させ、上記所定波長帯域内に設定した第2波長の第2レーザ光を反射させる誘電体多層膜からなる透過調整部を設け、
上記第1レーザ光を照射して、上記透過調整部を透過した第1レーザ光によって電子部品を加熱する第1照射動作と、上記第2レーザ光を照射して、上記透過調整部に照射された一部の第2レーザ光を反射させ、透過調整部に照射されなかった一部の第2レーザ光によって電子部品を加熱する第2照射動作とを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、第1照射動作によって第1レーザ光を照射した後、第2照射動作によって第2レーザ光を照射、または第2照射動作によって第2レーザ光を照射した後、第1照射動作によって第1レーザ光を照射すると、透過調整部の誘電体多層膜が第2レーザ光を反射させるようになっている。
したがって、透過調整部を電子部品における加熱されにくい部分に設定すれば、透過調整部に照射されなかった第2レーザ光によって当該加熱されにくい部分を加熱することができ、このように第1照射動作、第2照射動作を行うことによって電子部品の全体を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるボンディング装置の断面図
図2】保持手段の平面図
図3】動作を説明する図
図4】第2実施形態における保持手段の平面図
図5】第2実施形態における動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施形態について説明すると、図1は電子部品としての半導体チップ1を基板2に接合するボンディング装置3を示している。
上記ボンディング装置3は、レーザ光Lを照射するレーザ光照射手段4と、上記レーザ光Lを導光する導光手段5と、基板2を支持するボンディングステージ6と、上記半導体チップ1を保持するボンディングヘッド7とを備え、これらはコンピュータなどからなる制御手段8によって制御されるようになっている。
上記半導体チップ1は、図2に示すように略正方形を有しており、また図1に示すように半導体チップ1の裏面には複数の電極1aが設けられ、各電極1aにはハンダからなるバンプBが形成されている。
上記基板2は上記半導体チップ1よりも大きく形成されており、当該基板2の表面の所要の位置には、上記半導体チップ1の電極1aと同じ配置で電極2aが設けられている。
【0009】
上記ボンディングステージ6は図示しない吸着手段によってその上面で基板2を吸着保持するようになっている。なお、ボンディングステージ6を水平方向に移動させるX-Yテーブルを備えていてもよい。
【0010】
上記レーザ光照射手段4は第1レーザ発振器4aおよび第2レーザ発振器4bを備えており、これら第1、第2レーザ発振器4a、4bは異なる波長の第1レーザ光L1および第2レーザ光L2を発振するようになっている。
本実施形態の第1レーザ発振器4aは、第1波長λ1(波長:940nm)の第1レーザ光L1を発振し、第2レーザ発振器4bは第2波長λ2(波長:1020nm)の第2レーザ光L2を発振するようになっている。
ここで、半導体レーザとしては一般に波長375nm~2000nmのものが知られているが、半導体チップ1の材質がシリコンの場合、波長900nm~1100nmのレーザ光がシリコンに対する吸収加熱の効率が良いため、本実施形態では上記波長を選択している。
波長が900nmより短くなると、シリコンでの反射が起こりレーザ光を吸収せず十分な加熱ができなくなる。また、1100nmより長くなると、シリコンを透過してしまい、半導体チップ1を加熱することができなくなる。
制御手段8は上記レーザ光照射手段4を制御することにより、上記第1レーザ光L1または第2レーザ光L2を選択的に照射させるようになっている。
【0011】
上記導光手段5は、上記レーザ光照射手段4より照射されたレーザ光Lを光ファイバ5aによって導光し、ホモジナイザやエキスパンダ、コリメータなどからなる光学部品5bを用いて、レーザ光Lを平行光として照射するようになっている。光学部品5bにビームシェイパーを含め、レーザ光Lの出力形状(ビームプロファイル)をトップハット形状に整形するようにしてもよい。
上記光学部品5bは上記ボンディングヘッド7に固定され、光ファイバ5aによって導光されたレーザ光Lを上方から下方に向けて照射することで、ボンディングヘッド7に保持された半導体チップ1に対して上方から照射するようになっている。
またレーザ光Lの照射範囲は上記半導体チップ1の平面形状と略同形状に成形され、上記ボンディングヘッド7に保持された半導体チップ1にのみレーザ光Lが照射されるようになっている。
なお、上記導光手段5が導光するレーザ光Lの照射範囲は、必ずしも半導体チップ1と同形状にする必要はなく、レーザ光Lの照射範囲内に半導体チップ1が含まれていればよい。またレーザ光Lの照射範囲の設定方法としては、導光手段5と半導体チップ1との間にマスクを設けてもよい。
【0012】
上記ボンディングヘッド7は、上記導光手段5の光学部品5bを保持する保持部材11と、光学部品5bの下方に設けられて上記半導体チップ1を吸着保持する保持手段12と、当該保持手段12に保持された半導体チップ1の周囲に不活性ガスによるエアカーテンを形成する噴射手段13とを備えており、これらは移動手段9によって一体的に移動されるようになっている。
上記移動手段9は、上記ボンディングヘッド7を水平方向(X-Y方向)に移動させるとともに、上下方向(Z方向)に昇降させるように構成され、さらにボンディングヘッド7ごと上記半導体チップ1を回転させる回転機構を備えている。
【0013】
上記保持手段12は、透明な上部プレート14および下部プレート15と、上記下部プレート15の下面に設けられたツールアタッチメント16とを備えており、また保持手段12には負圧を供給する負圧供給手段17が接続されている。
上記上部プレート14および下部プレート15はレーザ光照射手段4からのレーザ光Lを透過可能な石英やガラス等の透明な素材によって構成されており、図2に示すように上記半導体チップ1よりも大きな面積を有した略正方形を有している。
上記上部プレート14、下部プレート15はホルダ12aによって囲繞されるように保持されており、上記レーザ光照射手段4が照射したレーザ光Lが上記上部プレート14および下部プレート15を上方から下方へと透過するのを許容するようになっている。
【0014】
上記上部プレート14および下部プレート15の間には、外周縁に沿って無端状に設けられたスペーサ18が設けられており、これにより上部プレート14および下部プレート15の間には上記負圧供給手段17に連通する負圧通路Rが形成されるようになっている。
そして、上記下部プレート15の略中央部には上下方向に貫通穴15aが形成されており、後述するように上記ツールアタッチメント16の同じ位置にも貫通穴16bが形成されている。
このような構成により、上記貫通穴15a、16bの下方に上記半導体チップ1が位置すると、上記負圧通路Rに供給された負圧によって当該半導体チップ1がツールアタッチメント16の下面に吸着されるようになっている。
上記負圧供給手段17は上記制御手段8によって制御され、負圧の供給を制御することで上記半導体チップ1の吸着保持および解除を行うことが可能となっている。
【0015】
上記ツールアタッチメント16はレーザ光Lを透過可能な石英やガラス等の透明な素材によって構成されており、図2に示すように上記半導体チップ1よりも大きな面積を有した略正方形を有している。
上記ツールアタッチメント16は上記下部プレート15の下面に吸着保持されるようになっており、このため下部プレート15の内部には吸引通路15bが形成され、当該吸引通路15bには負圧供給手段19が接続されている。
上記吸引通路15bの開口部は下部プレート15の下面に開口するとともに、上記ツールアタッチメント16の4隅に対応した4か所に設けられており、上記負圧供給手段19の負圧によって下部プレート15の下面にツールアタッチメント16が吸着保持されるようになっている。
【0016】
そして本実施形態におけるツールアタッチメント16の上面中央には、誘電体多層膜Mからなる上記透過調整部16aが設けられている。
本実施形態では、上記誘電体多層膜Mは、ツールアタッチメント16の表面にコーティングにより形成することが可能であるが、当該誘電体多層膜Mの層数が増えて全体の厚みが増大する場合には、ツールアタッチメント16の表面に微小な深さで凹部を形成し、上記誘電体多層膜Mを当該凹部に収容されるようにしてもよい。これによりツールアタッチメント16の上面における凹部以外の部分と、誘電体多層膜Mの下面とが面一とすることができる。
なお、透過調整部16aは、上記半導体チップ1に照射されるレーザ光Lの光路上に設けられていればよく、必ずしもツールアタッチメント16の上面に設ける必要はない。つまり、透過調整部16aをツールアタッチメント16の下面に設けたり、上部プレート14の上面や下面に設けたり、上部プレート14と導光手段5との間に位置させてもよい。
上記実施形態では、透過調整部16aをツールアタッチメント16に設けているため、対象とする半導体チップを変更する場合はツールアタッチメント16を取り換えることで、チップに対応した透過調整部16aに変更することができる。
また、透過調整部16aをツールアタッチメント16の上面に設けているため、ボンディング動作における半導体チップ1の吸着、解除の際に、半導体チップ1に透過調整部16aが接触することなく、透過調整部16aを下面に設けた場合に対して透過調整部16aの耐久性が向上する。
【0017】
上記誘電体多層膜Mは所定波長帯域の範囲外の波長のレーザ光を透過させ、範囲内の波長のレーザ光を反射させるものとなっており、本実施形態においては、上記レーザ光照射手段4から照射された上記第1波長λ1の第1レーザ光L1を透過させ、上記第2波長λ2の第2レーザ光L2を反射させるように構成されたものとなっている。
上記誘電体多層膜Mは従来公知であり、平らに研磨されたガラス基板に対して、透明で屈折率が高い膜と、屈折率の低い膜とを、位相が90°になる厚さで交互に積層させたものとなっている。
上記屈折率が高い膜としては、二酸化チタン(TiO)や酸化ハフニウム(HfO)が用いられ、上記屈折率が低い膜としては、二酸化ケイ素(SiO)やフッ化マグネシウム(MgF)が用いられる。
本実施形態の誘電体多層膜Mの所定波長帯域は990nm~1100nmに設定され、当該所定波長帯域の範囲外となる第1波長λ1(波長:940nm)の第1レーザ光L1を透過させ、所定波長帯域の範囲内である第2波長λ2(波長1020nm)の第2レーザ光L2を反射させるように構成されている。
そして本実施形態において、上記誘電体多層膜Mは、図2に示すように上記保持手段12に保持された上記半導体チップ1の中心部分1Aに対応した位置に設けられている。
したがって、半導体チップ1に対して第1レーザ光L1を照射すると、第1レーザ光L1は誘電体多層膜Mを透過するため、半導体チップ1の中心部分1Aおよび外周部分1Bの全体に照射されることとなる。
一方、半導体チップ1に対して第2レーザ光L2を照射すると、第2レーザ光L2の一部は誘電体多層膜Mに反射され、誘電体多層膜Mに照射されずに誘電体多層膜Mの外側を通過した一部の第2レーザ光L2が半導体チップ1の外周部分1Bに照射されるようになっている。
なお本発明において、反射とは全反射のみを意味するのではなく、第2レーザ光L2の一部を透過させるものであってもよい。
また、本実施形態においては、半導体レーザにより半導体チップ1を加熱する場合として、誘電体多層膜Mの所定波長帯域(990nm~1100nm)、第1レーザ光L1(波長:940nm)、第2レーザ光L2(波長1020nm)の一例を示したが、これに限定されるものではなく、使用するレーザの種類、半導体チップの材質、加熱する対象物により適宜所定波長帯域、レーザ光の波長を選択できる。
例えば、レーザ光Lによって半導体チップ1を透過させてバンプBを直接加熱する場合には、誘電体多層膜Mの波長帯域(1260nm~1500nm)に対し、第1レーザ光L1(波長:1200nm)、第2レーザ光L2(波長1300nm)等とすることもできる。
【0018】
図3は、上記レーザ光照射手段4によって第1レーザ光L1を照射した場合と、第2レーザ光L2を照射した場合とを説明する図である。なお図3では、説明のためツールアタッチメント16と半導体チップ1との間に隙間を形成したものとなっているが、実際にはツールアタッチメント16と半導体チップ1とは密接した状態である。ただし、半導体チップ1を基板2に載置した状態でこのように隙間を形成して、各レーザ光L1、L2を照射するようにしても構わない。
図3(a)はレーザ光照射手段4が第1波長λ1の第1レーザ光L1を照射した状態を示し、第1レーザ光L1は上記誘電体多層膜Mの所定波長帯域外の波長を有していることから、第1レーザ光は誘電体多層膜Mを透過し、半導体チップ1の全体にレーザ光Lが照射されることとなる。
これに対し、図3(b)はレーザ光照射手段4が第2波長λ2の第2レーザ光L2を照射した状態を示し、第2レーザ光L2は上記誘電体多層膜Mの所定波長帯域内の波長を有していることから、当該第2レーザ光L2は上記誘電体多層膜Mで反射することとなる。
しかしながら、誘電体多層膜Mは半導体チップ1の中心部分1Aに対応した位置に設けられているため、第2レーザ光L2は中心部分1Aには照射されないものの、誘電体多層膜Mの外側を通過して外周部分1Bに照射されるようになっている。
なお、本実施形態では誘電体多層膜Mの形状を略正方形としているが、その大きさや形状はレーザ光Lによる半導体チップ1への入熱状態に応じて適宜変更することが可能である。
【0019】
上記噴射手段13は、上記保持手段12を構成するハウジング11のさらに外周を囲繞するフレーム13aによって構成され、当該フレーム13aは開口部が内側を向いた断面略コ字型を有している。
これにより、フレーム13aと上記保持手段12のホルダ12aの外周面との間には上記ホルダ12aを無端状に囲繞するガス通路13bが形成され、当該ガス通路13bにはガス供給手段20が接続されている。
上記ガス供給手段20は上記半導体チップ1と基板2とを接合する際に、酸化による接合不良が生じないようにするため、窒素ガスなどの不活性ガスを供給するようになっている。
なお、バンプBを構成するハンダの酸化被膜を還元することを目的として、上記不活性ガスに水素や蟻酸等の還元性ガスを混入させるようにしてもよい。
そして、上記フレーム13aの下部には、上記ホルダ12aの外周面との間にスリットSが形成されており、このスリットSは上記ガス通路13aに連通することで、上記ガス通路13aに供給された不活性ガスを下方に向けて噴射するようになっている。
【0020】
以下、上記構成を有するボンディング装置3の動作を説明すると、最初に、制御手段8は上記移動手段9によってボンディングヘッド7を図示しないチップ供給手段へと移動させ、ボンディングヘッド7は上記負圧供給手段17からの負圧によって上記半導体チップ1を上記保持手段12に吸着保持する。
なお、ツールアタッチメント16は、動作開始に先立って、対象とする半導体チップ1に対応したツールアタッチメント16が、上記保持手段12によって、下部プレート15の下面に吸着保持されている。
一方、制御手段8は図示しない基板供給手段によって、上記ボンディングステージ6の所要の位置に上記基板2を供給し、ボンディングステージ6は当該基板2を吸着保持する。
続いて、制御手段8は図示しない撮影手段を用いて、上記ボンディングヘッド7に吸着保持された半導体チップ1と、上記ボンディングステージ6に保持された基板2とを撮影し、これらの相対的な位置関係を認識する。
その後、制御手段8は上記移動手段9によってボンディングヘッド7をボンディングステージ6の上方へと移動させ、その際、半導体チップ1の電極1aの位置と、基板2の電極2aの位置とが一致するよう、半導体チップ1の水平方向における位置の微調整と、水平面内における回転を行う。
【0021】
図1は、ボンディングヘッド7に保持された半導体チップ1がボンディングステージ6に支持された基板2における当該半導体チップ1の接合位置の上方(例えば、ボンディングヘッド7とボンディングステージ6との隙間が5mmとなる位置)に位置した状態を示している。
半導体チップ1が基板2における接合位置の上方に位置すると、制御手段8は上記ガス供給手段20により不活性ガスを供給し、不活性ガスはガス通路13aを流通した後、上記スリットSから下方に向けて噴射される。
上記スリットSは保持手段12を構成するホルダ12aを囲繞するように設けられていることから、噴射された不活性ガスは保持手段12に吸着保持された半導体チップ1と上記基板2との接合位置を囲繞する、層流からなるエアカーテンを形成するようになっている。
エアカーテンを形成することで、エアカーテンの外部からの空気の流入を防止して、半導体チップ1と基板2とを接合する際に、接合部分が酸化しないようにすることができる。
また、ボンディングヘッド7とボンディングステージ6との間に流入した不活性ガスは、上記半導体チップ1と基板2との間の空間に充満することで、それまで存在していた酸素を外部に排除するようになっている。
【0022】
このようにして、半導体チップ1と基板2との間の空間が不活性ガスによって置換されるのと並行して、制御手段8は上記レーザ光照射手段4を制御して第1レーザ光L1を半導体チップ1に照射する第1照射動作を行う。
図3(a)に示すように、レーザ光照射手段4は最初に第1レーザ発振器4aによって第1波長λ1の第1レーザ光L1を発振させ、導光手段5によって導光された第1レーザ光L1は上記保持手段12の上部プレート14、下部プレート15を透過した後、上記透過調整部16aに入射する。
第1レーザ光L1は上記誘電体多層膜Mに設定された所定波長帯域外の第1波長λ1を有していることから、当該第1レーザ光L1は誘電体多層膜Mを透過して半導体チップ1に照射されることとなる。
その結果、第1レーザ光L1は半導体チップ1の全面に照射されることとなり、当該半導体チップ1の全体(1A、1B)が加熱されるようになる。
【0023】
このように半導体チップ1の全体に第1レーザ光L1を照射すると、半導体チップ1の全体が加熱されるが、半導体チップ1の中心部分1Aは熱が逃げにくいことから、外周部分1Bよりも速やかに加熱されることとなる。
その結果、半導体チップ1の中心部分1Aと外周部分1Bとに温度差が生じ、例えば中心部分1Aに設けられたバンプBは溶融温度に達するものの、外周部分1BのバンプBは加熱が不十分となり、そのまま半導体チップ1と基板2とを密着させても接合不良の原因となる。
【0024】
そこで本実施形態では、図3(b)に示すように、レーザ光照射手段4によって第2レーザ光L2を照射する第2照射動作を行うようになっている。
上記第1レーザ光L1を照射する時間は、上記半導体チップ1の中心部分1Aが所要の温度となるまでの時間など、予め実験等で求めておき、制御手段8は当該照射時間が経過すると、上記レーザ光照射手段4を制御して第2レーザ光L2を照射させる。
すると、図3(b)に示すように第2レーザ光L2の一部は上記誘電体多層膜Mによって反射され、誘電体多層膜Mに対応する位置に設けられた半導体チップ1の中心部分1Aには第2レーザ光L2が照射されないようになっている。
一方、第2レーザ光L2のうち、誘電体多層膜Mの外側に照射された部分は、そのまま半導体チップ1の中心部分1Aを除く外周部分1Bに照射されることとなり、外周部分1Bが加熱されるようになっている。
このように、第2レーザ光L2を半導体チップ1の外周部分1Bに照射することにより、半導体チップ1の全体が均一に加熱され、半導体チップ1の裏面に形成された全てのバンプBを溶融させることができる。
すると、制御手段8は上記移動手段9を制御してボンディングヘッド7を下降させ、半導体チップ1を基板2に密着させる。すると、制御手段8はレーザ光照射手段4による第2レーザ光L2の照射を停止させ、これにより溶融したバンプBが冷却されて固化し、半導体チップ1と基板2とが接合される。
その後、制御手段8は負圧供給手段17による負圧の供給を停止するとともに、ボンディングヘッド7を上昇させて半導体チップ1より離脱させる。
【0025】
上記実施形態によれば、図3(a)において半導体チップ1の全面に第1レーザ光L1を照射すると、半導体チップ1の中心部分1Aが外周部分1Bよりも高温となるが、図3(b)に示すように第2レーザ光L2を照射して半導体チップ1の外周部分1Bだけを加熱することができ、半導体チップ1の全体を均一に加熱することが可能となっている。
【0026】
図4図5は第2実施形態を説明する図となっており、本実施形態において、電子部品としての半導体チップ1は、IPD(Integrated Passive Device)などからなる内蔵部品1bが内蔵されており、半導体チップ1の裏面には電極1aおよびバンプBが形成されている。
上記内蔵部品1bは半導体チップ1の中央部より偏倚した位置に設けられており、かつ図5に示すように当該内蔵部品1bは半導体チップ1を上下に貫通するように埋め込まれたものとなっている。
上記内蔵部品1bは、半導体チップ1の本体部1cよりも熱伝導率の高い素材によって構成されており、いわゆる熱抜けによって、本体部1cよりも昇温しにくいものとなっている。
【0027】
このように熱伝導率の異なる内蔵部品1bを備えた半導体チップ1を基板2に装着するため、半導体チップ1を加熱すると、上記内蔵部品1bの下方にあるバンプBの加熱が不十分となって接合不良が発生する恐れがある。
そこで本実施形態の透過調整部16aを構成する誘電体多層膜Mには、上記内蔵部品1bに対応する位置に窓Maを形成したものとなっており、誘電体多層膜Mはツールアタッチメント16の下面に形成されたものとなっている。
本実施形態では、誘電体多層膜Mは所定波長帯域外の第1波長λ1の第1レーザ光L1を透過させ、所定波長帯域内の第2波長λ2の第2レーザ光L2の80%を反射させるようになっている。
なお、本実施形態では、誘電体多層膜Mの外形を半導体チップ1の外形に一致させているが、上記第1の実施形態のように半導体チップ1の中心部分1Aに対応する位置に設けて、第2レーザ光L2の一部が外周部分1Bに照射されるようにしてもよい。
【0028】
このような構成により、最初に図5(a)に示すように第1照射動作を行い、レーザ光照射手段4から第1レーザ光L1を照射すると、当該第1レーザ光L1は誘電体多層膜Mを透過して、半導体チップ1の全面に照射される。
これにより半導体チップ1の全体が加熱され、内蔵部品1bも加熱されるが、内蔵部品1bは本体部1cよりも熱伝導率が高いことから、本体部1cよりも昇温しないようになっている。
続いて図5(b)に示すように第2照射動作を行い、レーザ光照射手段4によって第2レーザ光L2を照射させて、第2レーザ光L2の一部を誘電体多層膜Mによって80%反射させ、誘電体多層膜Mに照射されずに上記窓Maを通過した第2レーザ光L2によって内蔵部品1bを加熱するようにする。
これにより、内蔵部品1bが第2レーザ光L2によって加熱されるが、誘電体多層膜Mを透過した20%の第2レーザ光L2が第1照射動作において加熱されたバンプBの温度を維持することができ、第1レーザ光L1によって加熱されている本体部1cと内蔵部品1bとの温度差が解消されて、裏面に設けたバンプBが均一に溶融されることとなる。
【0029】
なお、上記第1、第2実施形態においては、最初に第1レーザ光L1を照射する第1照射動作を行い、半導体チップ1の全面を加熱してから第2照射動作を行って、第2レーザ光L2により半導体チップ1の外周部分1Bや内蔵部品1bを加熱するようになっている。
これに対し、最初に第2照射動作を行って第2レーザ光L2により半導体チップ1の一部を加熱してから、第1照射動作を行って第1レーザ光L1により半導体チップ1の全体を加熱するようにしてもよく、第1照射動作と第2照射動作を同時に行ってもよい。
また上記実施形態において、上述の通り、ツールアタッチメント16は下部プレート15の下面に吸着保持する構造を採用していることから、対象とする半導体チップ1に応じた誘電体多層膜Mを施したツールアタッチメント16を準備しておき、公知のツールチェンジャー機構によって交換可能な構成として、複数パターンの半導体チップ1のボンディングに用いることができる。
さらに、上記実施形態では第1、第2レーザ光L1、L2を照射し、第2レーザ光L2のみを誘電体多層膜Mによって反射させるようにしているが、3種類以上の波長を有するレーザ光Lを照射するとともに、2種類以上の誘電体多層膜Mを積層させた透過調整部16aを用いて、より細かく照射区域を分けることも可能である。
また、上記窓Maを第1実施形態の誘電体多層膜Mに設けるようにして、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせることも可能である。
また、本実施形態ではバンプBは半導体チップ1の電極1aに設けられているが、上記バンプBを基板2の電極2aに設けてもよく、また基板2の電極2aのみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 半導体チップ 2 基板
3 ボンディング装置 4 レーザ光照射手段
5 導光手段 12 保持手段
15 下部プレート 16 ツールアタッチメント
16a 透過調整部
L1 第1レーザ光 L2 第2レーザ光
M 誘電体多層膜 Ma 窓
図1
図2
図3
図4
図5