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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088241
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電力増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240625BHJP
   H03F 3/21 20060101ALI20240625BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/21
H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203315
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 純
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC16
5J500AC52
5J500AC92
5J500AF15
5J500AF16
5J500AH06
5J500AH24
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH35
5J500AK29
5J500AK68
5J500AM08
5J500AQ04
5J500AT01
5J500CK03
5J500CK06
5J500CK07
5J500LV08
(57)【要約】
【課題】搭載デバイスやモジュール上の配線簡略化や小型化及び性能向上が可能な電力増幅器を実現する。
【解決手段】電力増幅器1は、第1高周波信号を増幅する第1増幅器103と、少なくとも第1高周波信号を90度遅らせた第2高周波信号を増幅する第2増幅器104と、第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052を有するハイブリッドカプラ105と、第1増幅器103に電源を供給する第1電源供給回路109と、第2増幅器に電源を供給する第2電源供給回路110と、出力整合回路106と、を備える。ハイブリッドカプラ105は、第1伝送線路1051の一方端に第1増幅器103の出力端が接続される。第1伝送線路1051の他方端に第1電源供給回路109と出力整合回路106とが接続される。第2伝送線路1052の一方端に第2増幅器104の出力端が接続される。第2伝送線路1052の他方端に第2電源供給回路110が接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高周波信号を増幅する第1増幅器と、
少なくとも前記第1高周波信号を90度遅らせた第2高周波信号を増幅する第2増幅器と、
第1伝送線路及び第2伝送線路を有するハイブリッドカプラと、
前記第1増幅器に電源を供給する第1電源供給回路と、
前記第2増幅器に前記電源を供給する第2電源供給回路と、
出力整合回路と、
を備え、
前記ハイブリッドカプラは、
前記第1伝送線路の一方端に前記第1増幅器の出力端が接続され、
前記第1伝送線路の他方端に前記第1電源供給回路と前記出力整合回路とが接続され、
前記第2伝送線路の一方端に前記第2増幅器の出力端が接続され、
前記第2伝送線路の他方端に前記第2電源供給回路が接続される、
電力増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅器であって、
前記第1増幅器、前記第2増幅器、及び前記ハイブリッドカプラは、基板に実装されるチップデバイス上に構成され、
前記出力整合回路の少なくとも一部は、前記基板上に設けられ、
前記チップデバイスは、
前記第1電源供給回路に接続される第1端子と、
前記第2電源供給回路に接続される第2端子と、
を備え、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板上に設けられた電源端子から前記電源が供給される、
電力増幅器。
【請求項3】
請求項2に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路及び前記第2電源供給回路は、前記基板上に設けられ、
前記第1端子は、前記電源端子から前記基板に設けられた電源供給線路及び前記第1電源供給回路を介して、前記電源が供給され、
前記第2端子は、前記電源端子から前記電源供給線路及び前記第2電源供給回路を介して、前記電源が供給される、
電力増幅器。
【請求項4】
請求項3に記載の電力増幅器であって、
前記チップデバイスは、出力端子をさらに備え、
前記第1伝送線路から前記出力整合回路への信号出力線路上に前記出力端子が設けられている、
電力増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載の電力増幅器であって、
前記出力端子は、前記基板上において、前記ハイブリッドカプラに対して前記第1端子と前記第2端子と同じ側に設けられている、
電力増幅器。
【請求項6】
請求項2に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路及び前記第2電源供給回路は、前記チップデバイス上に設けられ、
前記第1端子は、前記電源端子から前記基板に設けられた電源供給線路を介して、前記電源が供給され、
前記第2端子は、前記電源端子から前記電源供給線路を介して、前記電源が供給され、
前記チップデバイスは、出力端子をさらに備え、
前記第1伝送線路から前記出力整合回路への信号出力線路上に前記出力端子が設けられている、
電力増幅器。
【請求項7】
請求項2に記載の電力増幅器であって、
前記ハイブリッドカプラは、前記チップデバイス上において、
前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路がZ方向に互いに誘電体層を挟んで構成されている、
電力増幅器。
【請求項8】
請求項7に記載の電力増幅器であって、
前記ハイブリッドカプラは、前記第1伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な前記第1伝送線路の断面積が前記第2伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な前記第2伝送線路の断面積よりも大きい、
電力増幅器。
【請求項9】
請求項2から8の何れか一項に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路は、チョークインダクタを含み、
前記チョークインダクタは、前記第1伝送線路の他方端と前記電源端子との間に電気的に直列接続される、
電力増幅器。
【請求項10】
請求項2から8の何れか一項に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路は、第1巻線及び第2巻線を有するオートトランスを含み、
前記第1巻線は、前記第1伝送線路の他方端と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続され、
前記第2巻線は、前記第1巻線の一方端と前記第1伝送線路の他方端との接続点と、前記電源端子との間に電気的に直列接続される、
電力増幅器。
【請求項11】
請求項2から8の何れか一項に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路は、第1線路及び第2線路を有する伝送線路トランスを含み、
前記第1線路は、前記第1伝送線路の他方端と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続され、
前記第2線路は、前記第1巻線の一方端と前記第1伝送線路の他方端との接続点と、前記電源端子との間に電気的に直列接続される、
電力増幅器。
【請求項12】
請求項2から8の何れか一項に記載の電力増幅器であって、
前記第1電源供給回路は、1次巻線及び2次巻線を有するコンベンショナルトランスを含み、
前記1次巻線は、前記第1伝送線路の他方端と前記電源端子との間に電気的に直列接続され、
前記2次巻線は、基準電位と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続される、
電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率な電力増幅器として、ドハティ(Doherty)増幅回路が知られている。ドハティ増幅回路は、一般的に、高周波入力信号の電力レベルにかかわらず動作するキャリアアンプと、高周波入力信号の電力レベルが小さい場合はオフとなり、大きい場合にオンとなるピークアンプとが並列に接続された構成である。当該構成では、高周波入力信号の電力レベルが大きい場合、キャリアアンプが飽和出力電力レベルで飽和を維持しながら動作する。これにより、ドハティ増幅回路は、通常の電力増幅回路に比べて効率を向上させることができる。
【0003】
このようなドハティ増幅回路において、第1伝送線路及び第2伝送線路を有するハイブリッドカプラを備えた構成が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、第1伝送線路の一方端にキャリアアンプから出力されるRF信号が入力され、第2伝送線路の一方端にピークアンプから出力されるRF信号が入力され、第2伝送線路の他方端が開放され、キャリアアンプから出力されるRF信号とピークアンプから出力されるRF信号との合成信号が第1伝送線路の他方端から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-093715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばフロントエンドモジュールにフリップチップ実装されるチップデバイスのダイ上に、上記従来技術に係るドハティ増幅回路の主要な回路ブロックが設けられる場合、回路ブロック間で電磁気的な結合が生じ、性能低下のリスクが生じてしまう場合がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、性能低下のリスクを抑制可能な電力増幅器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の電力増幅器は、第1高周波信号を増幅する第1増幅器と、少なくとも前記第1高周波信号を90度遅らせた第2高周波信号を増幅するピークアンプと、第1伝送線路及び第2伝送線路を有するハイブリッドカプラと、前記第1増幅器に電源を供給する第1電源供給回路と、前記ピークアンプに前記電源を供給する第2電源供給回路と、出力整合回路と、を備え、前記ハイブリッドカプラは、前記第1伝送線路の一方端に前記第1増幅器の出力端が接続され、前記第1伝送線路の他方端に前記第1電源供給回路と前記出力整合回路とが接続され、前記第2伝送線路の一方端に前記ピークアンプの出力端が接続され、前記第2伝送線路の他方端に前記第2電源供給回路が接続される。
【0008】
この構成では、第1伝送線路への電源供給線路と、出力整合回路への信号出力線路とを共通化することができる。この結果として、電力増幅器への電源供給線路が出力整合回路に跨って配線されることを回避することができる。これにより、電源供給線路と出力整合回路との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、出力整合回路やチップデバイスへの高周波信号の供給経路を避けて電源供給線路を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、小型化の阻害要因を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、搭載デバイスやモジュール上の配線簡略化や小型化及び性能向上が可能な電力増幅器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。
図3図3は、ドハティ増幅回路におけるキャリアアンプ及びピークアンプの動作特性の一例を示す図である。
図4図4は、ハイブリッドカプラのXZ平面断面図である。
図5図5は、ハイブリッドカプラに流れる直流電流特性の一例を示す図である。
図6図6は、比較例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。
図7図7は、比較例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。
図8図8は、実施形態1の第1変形例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態1の第1変形例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。
図10図10は、実施形態1の第2変形例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態1の第2変形例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。
図12図12は、実施形態2に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。
図13図13は、実施形態3に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。
図14図14は、実施形態4に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態に係る電力増幅器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。実施形態2以降では実施形態1と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。電力増幅器1は、高周波入力信号RFinを増幅して、高周波出力信号RFoutを出力する。図2は、実施形態1に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。
【0013】
図2では、電力増幅器1の一例として、フロントエンドモジュールに実装される例を示している。フロントエンドモジュールは、図2に示すX方向及び当該X方向に直交するY方向を含むXY平面に平行な基板2上に、XY平面に直交するZ方向に実装された複数の集積回路、及び各種機能部品を一体化した小型集積モジュールである。なお、XY平面に平行な基板2は、表面に多少凹凸がある基板などXY平面に略平行な基板も含むものとする。基板2は、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板等のセラミック積層基板や、樹脂多層基板やフィルム基板等が例示される。
【0014】
図1に示すように、電力増幅器1は、初段アンプ101、位相回路(分配器)102、キャリアアンプ(第1増幅器)103、ピークアンプ(第2増幅器)104、ハイブリッドカプラ105、出力整合回路106、入力整合回路107、チョークインダクタ108、第1電源供給回路109、第2電源供給回路110、キャパシタ111を備える。本開示において、電力増幅器1は、ドハティ増幅回路である。
【0015】
電力増幅器1の主要な回路ブロックは、フロントエンドモジュールの基板2に対してZ方向にフリップチップ実装されるXY平面に平行なチップデバイス3のダイ上に構成される。図2では、少なくとも、キャリアアンプ(第1増幅器)103、ピークアンプ(第2増幅器)104、及びハイブリッドカプラ105がチップデバイス3のダイ上に構成される例を示している。なお、本開示において、出力整合回路106は、フロントエンドモジュールの基板2上に設けられる。また、図1及び図2に示す実施形態1の構成において、第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)及び第2電源供給回路110(チョークインダクタ1101)は、フロントエンドモジュールの基板2上に設けられる。
【0016】
初段アンプ101は、入力整合回路107を介して入力される高周波入力信号RFinを増幅し、第1RF信号RF1を出力する。高周波入力信号RFinの周波数は、例えば、数GHz程度である。初段アンプ101には、チョークインダクタ108を介して、電源電圧Vccが供給される。
【0017】
キャリアアンプ(第1増幅器)103、ピークアンプ(第2増幅器)104、及びハイブリッドカプラ105は、初段アンプ101から出力される第1RF信号RF1を増幅する二段目の増幅回路である。
【0018】
位相回路(分配器)102は、キャパシタ111を介して初段アンプ101から出力される第1RF信号RF1を、キャリアアンプ(第1増幅器)103への第2RF信号RF2(第1高周波信号)と、ピークアンプ(第2増幅器)104への第3RF信号RF3(第2高周波信号)とに分配する。位相回路(分配器)102は、第3RF信号RF3(第2高周波信号)の位相を、第2RF信号RF2(第1高周波信号)の位相に対して約90度(λ/4)遅らせる回路である。なお、位相回路(分配器)102が、第3RF信号RF3(第2高周波信号)の位相を、第2RF信号RF2(第1高周波信号)の位相に対して90度遅らせる場合には、位相回路(分配器)102が、第3RF信号RF3(第2高周波信号)の位相を、第2RF信号RF2(第1高周波信号)の位相に対して90度±45度遅らせる場合も含むものとする。
【0019】
具体的に、位相回路(分配器)102は、例えば、伝送線路や90度ハイブリッドカプラなどにより構成される。図1に示す例において、位相回路(分配器)102は、2つの伝送線路で構成される90度ハイブリッドカプラである。この場合、ピークアンプ(第2増幅器)104の入力端には、一方の伝送線路を介して第3RF信号RF3(第2高周波信号)が入力され、キャリアアンプ(第1増幅器)103の入力端には、一方の伝送線路と電磁気的に結合した他方の伝送線路の一方端から第2RF信号RF2(第1高周波信号)が入力される。他方の伝送線路の他方端は、終端抵抗1021を介して基準電位(GND電位)に接続されている。
【0020】
キャリアアンプ(第1増幅器)103は、位相回路(分配器)102からの第2RF信号RF2(第1高周波信号)を増幅し、キャリアアンプ(第1増幅器)103の出力端から第4RF信号RF4を出力する。
【0021】
ピークアンプ(第2増幅器)104は、位相回路(分配器)102からの第3RF信号RF3を増幅し、ピークアンプ(第2増幅器)104の出力端から第5RF信号RF5を出力する。
【0022】
ハイブリッドカプラ105は、第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052を含む。本開示において、ハイブリッドカプラ105は、90度ハイブリッドカプラである。ハイブリッドカプラ105は、第1伝送線路1051の一方端にキャリアアンプ(第1増幅器)103から出力される第4RF信号RF4が入力され、第2伝送線路1052の一方端にピークアンプ(第2増幅器)104から出力される第5RF信号RF5が入力される。ハイブリッドカプラ105は、キャリアアンプ(第1増幅器)103から出力される第4RF信号RF4とピークアンプ(第2増幅器)104から出力される第5RF信号RF5との合成信号である第6RF信号RF6を第1伝送線路1051の他方端から出力する。
【0023】
本開示において、第1伝送線路1051の他方端には、第1電源供給回路109を介して電源電圧Vccが供給される。言い換えると、キャリアアンプ(第1増幅器)103には、第1電源供給回路109及び第1伝送線路1051を介して、電源電圧Vccが供給される。実施形態1において、第1電源供給回路109は、チョークインダクタ1091及びキャパシタ1092を含む。
【0024】
チョークインダクタ1091は、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と出力整合回路106との接続点と、フロントエンドモジュールの電源端子VTとの間に電気的に直列接続される。電源端子VTは、外部電源(不図示)からフロントエンドモジュールへの電源入力端子である。チョークインダクタ1091の一方端は、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と出力整合回路106との接続点に電気的に接続される。チョークインダクタ1091の他方端は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTと電気的に接続される。電源電圧Vccは、チョークインダクタ1091及びハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051を介して、キャリアアンプ(第1増幅器)103に印加される。
【0025】
キャパシタ1092は、一方端がチョークインダクタ1091の他方端に電気的に接続され、他方端が基準電位(GND電位)に電気的に接続される。
【0026】
また、本開示において、第2伝送線路1052の他方端には、第2電源供給回路110を介して電源電圧Vccが供給される。言い換えると、ピークアンプ(第2増幅器)104には、第2電源供給回路110及び第2伝送線路1052を介して、電源電圧Vccが供給される。本開示において、第2電源供給回路110は、チョークインダクタ1101及びキャパシタ1102を含む。
【0027】
チョークインダクタ1101は、ハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052の他方端とフロントエンドモジュールの電源端子VTとの間に電気的に直列接続される。チョークインダクタ1101の一方端は、ハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052の他方端に電気的に接続される。チョークインダクタ1101の他方端は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTと電気的に接続される。電源電圧Vccは、チョークインダクタ1101及びハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052を介して、ピークアンプ(第2増幅器)104に印加される。
【0028】
キャパシタ1102は、一方端がチョークインダクタ1101の他方端に電気的に接続され、他方端が基準電位(GND電位)に電気的に接続される。
【0029】
入力整合回路107は、電力増幅器1の入力側と初段アンプ101とのインピーダンスを整合させる。出力整合回路106は、第1伝送線路1051の他端と電力増幅器1の出力側とのインピーダンスを整合させる。第6RF信号RF6は、出力整合回路106を介して、高周波出力信号RFoutとして出力される。
【0030】
ここで、電力増幅器1におけるキャリアアンプ(第1増幅器)103及びピークアンプ(第2増幅器)104の動作特性について、図3を参照して説明する。図3は、ドハティ増幅回路におけるキャリアアンプ及びピークアンプの動作特性の一例を示す図である。
【0031】
図3において、横軸は高周波入力信号RFinの電圧[V]を示し、縦軸は図3において、横軸はキャリアアンプ(第1増幅器)103及びピークアンプ(第2増幅器)104の電流[A]を示している。図3に示す例では、キャリアアンプ(第1増幅器)103の電流の変化を直線Icで示し、ピークアンプ(第2増幅器)104の電流の変化を直線Ipで示している。
【0032】
上述した電力増幅器1の構成において、キャリアアンプ(第1増幅器)103は、高周波入力信号RFinの電圧レベルに関わらず動作する。言い換えると、キャリアアンプ(第1増幅器)103は、高周波入力信号RFinがゼロ(第1レベル)より高いレベルにおいて動作する。
【0033】
ピークアンプ(第2増幅器)104は、高周波入力信号RFinの電圧レベルが最大レベルVmaxから、所定レベル(例えば3[dB])だけ低いVback(第2レベル)以上の領域において動作する。
【0034】
キャリアアンプ(第1増幅器)103のみがオンとなる際の動作をバックオフ動作と称し、キャリアアンプ(第1増幅器)103及びピークアンプ(第2増幅器)104がオンとなる際の動作をピーク動作と称する。
【0035】
電力増幅器1の主要な回路ブロックが構成されるチップデバイス3は、例えばGaAs(ガリウム砒素)系のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)で構成されるHBTデバイス(集積回路、IC:Integrated Circuit)である。図2では、チップデバイス3のダイ上に、キャリアアンプ(第1増幅器)103、ピークアンプ(第2増幅器)104、及びハイブリッドカプラ105が構成された例を示している。チップデバイス3は、フロントエンドモジュールの基板2上に、例えば銅ピラー等でバンプボンディングされる。
【0036】
実施形態1に係る電力増幅器1の構成において、第1端子VT1は、フロントエンドモジュールの基板2上の第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)が電気的に接続される端子である。第1端子VT1は、チップデバイス3がフロントエンドモジュールの基板2上に実装される際に、例えば銅ピラー等でバンプボンディングされる端子であり、チップデバイス3上のハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端に接続される。
【0037】
また、実施形態1に係る電力増幅器1の構成において、第2端子VT2は、フロントエンドモジュールの基板2上の第2電源供給回路110(チョークインダクタ1101)が電気的に接続される端子である。第2端子VT2は、チップデバイス3がフロントエンドモジュールの基板2上に実装される際に、例えば銅ピラー等でバンプボンディングされる端子であり、チップデバイス3上のハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052の他方端に接続される。
【0038】
実施形態1において、第1端子VT1は、チップデバイス3から出力整合回路106への第6RF信号RF6の出力端子を兼ねている。すなわち、実施形態1において、第1端子VT1は、チップデバイス3上のキャリアアンプ(第1増幅器)103に電源電圧Vccを供給するための電源供給端子であると共に、チップデバイス3から出力される第6RF信号RF6の出力端子である。
【0039】
図2に示す例において、基板2は、複数の配線層が絶縁層を挟んで積層された多層基板である。また、チップデバイス3は、複数の配線層や半導体層が誘電体層を挟んで積層された多層構造を有している。本開示において、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052は、互いに誘電体層を挟んでチップデバイス3に設けられたストリップライン又はマイクロストリップラインで構成される。
【0040】
図2に示す例において、ハイブリッドカプラ105は、一方向に延びて形成される。より具体的に、図2に示す例において、ハイブリッドカプラ105は、X方向に延びて形成される。
【0041】
ハイブリッドカプラ105は、第1伝送線路1051を介してキャリアアンプ(第1増幅器)103に電源電圧Vccを供給する際に流れる電流方向と、第2伝送線路1052を介してピークアンプ(第2増幅器)104に電源電圧Vccを供給する際に流れる電流方向とは、互いに180度異なっている。図4は、ハイブリッドカプラのXZ平面断面図である。
【0042】
図4に示すように、ハイブリッドカプラ105は、チップデバイス3の内層に設けられている。チップデバイス3の各層には、GND配線が設けられている。各層のGND配線は、例えば非貫通ビア(IVH:Interstitial Via Hole)で接続され、例えばバンプボンディングによってチップデバイス3上の接地端子に接続される。
【0043】
ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052は、GND配線G1とGND配線G2との間に、Z方向に互いに誘電体層を挟んで設けられている。具体的には、例えば、図2に示すように、Z方向に見てチップデバイス3のGND配線G1及びGND配線G2に重なる領域にハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052が設けられる。
【0044】
また、本開示では、第1伝送線路1051の電流通流方向(図2に示す例では、ハイブリッドカプラ105の延伸方向(X方向))に直交する平面(図2では、XZ平面)に平行な第1伝送線路1051の断面積を、第2伝送線路1052の電流通流方向(図2では、ハイブリッドカプラ105の延伸方向(X方向))に直交する平面(図2では、XZ平面)に平行な第2伝送線路1052の断面積よりも大きくしている。図5は、ハイブリッドカプラに流れる直流電流特性の一例を示す図である。図5の横軸はドハティ増幅回路の出力電力(Pout)を示し、縦軸は各アンプにそれぞれ供給される直流電流Iを示している。図5に示す破線は、キャリアアンプにおける直流電流特性の一例を示し、実線は、ピークアンプにおける直流電流特性の一例を示している。
【0045】
一般に、ドハティ増幅回路は、PAPR(Peak‐to‐Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)の高い高周波信号を増幅する場合において、高効率動作を可能とする構成である。したがって、平均電力としては、バックオフレベル(ピークアンプが動作しない、もしくは入出力レベルが小さい状態)での動作となるため、電源からハイブリッドカプラを介して各アンプにそれぞれ供給される直流電流の大きさの関係は、図5に示すように、(ピークアンプ電流)≦(キャリアアンプ電流)となる。
【0046】
図5に示す例において、飽和出力レベル(Pout=36[dBm]付近)よりも約6[dBm]低いバックオフレベル(Pout=30[dBm]付近)では、キャリアアンプに供給される直流電流に比べ、ピークアンプに供給される直流電流が略半値となっている。なお、飽和出力レベルでは、キャリアアンプに供給される直流電流と、ピークアンプに供給される直流電流とが略一致しているが、一般に、飽和出力レベルでの高周波信号の増幅動作は行われない。
【0047】
このため、本開示では、上述したように、第1伝送線路1051の電流通流方向に直交する平面に平行な第1伝送線路1051の断面積を、第2伝送線路1052の電流通流方向に直交する平面に平行な第2伝送線路1052の断面積よりも大きくする。具体的には、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051に流れる電流量及び第2伝送線路1052に流れる電流量に応じて、第1伝送線路1051の電流通流方向に直交する平面に平行な第1伝送線路1051の断面積、及び、第2伝送線路1052の電流通流方向に直交する平面に平行な第2伝送線路1052の断面積を最適化する。これにより、第1伝送線路1051の断面積と第2伝送線路1052の断面積とを同一とする場合に比べて、ハイブリッドカプラ105を含む電力増幅器1の主要な回路ブロックが搭載されるチップデバイス3の小型化が可能となる。
【0048】
図6は、比較例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。図7は、比較例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。なお、実施形態1と同様の構成については、詳細な説明を省略している。
【0049】
図6及び図7に示す比較例において、第1端子VT1は、キャリアアンプ(第1増幅器)103に接続されるハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の一方端に接続されている。また、第2端子VT2は、ピークアンプ(第2増幅器)104に接続されるハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052の一方端に接続され、第2伝送線路1052の他方端は開放されている。この比較例に係る構成では、チップデバイス3から出力整合回路106への第6RF信号RF6の出力端子OTが設けられている。
【0050】
比較例では、図7に示すように、第1端子VT1及び第2端子VT2が、ハイブリッドカプラ105とキャリアアンプ(第1増幅器)103の出力及びピークアンプ(第2増幅器)104の出力との間において、ハイブリッドカプラ105のY方向両端部付近にそれぞれ対象配置されている。また、比較例の構成では、図7に示すように、出力端子OTがハイブリッドカプラ105を挟んで第1端子VT1と第2端子VT2との反対側に設けられている。この比較例に係る構成では、第2端子VT2に接続される第2電源供給回路110(チョークインダクタ1101)から基板2上に設けられたフロントエンドモジュールの電源端子VTまでの電源供給線路20aを出力整合回路106にZ方向に重ねて配線するか、あるいは、出力整合回路106やチップデバイス3への高周波入力信号RFinの供給経路を避けて電源供給線路20aを配線する必要がある。電源供給線路20aを出力整合回路106にZ方向に重ねて配線した場合、電源供給線路20aと出力整合回路106との間で電磁気的な結合が生じ、性能低下のリスクが生じる。また、出力整合回路106やチップデバイス3への高周波入力信号RFinの供給経路を避けて電源供給線路20aを配線した場合、フロントエンドモジュールの基板2上の配線の複雑化や小型化の阻害要因となる場合がある。
【0051】
図1及び図2に示す実施形態1に係る構成では、上述したように、第1端子VT1がチップデバイス3から出力整合回路106への第6RF信号RF6の出力端子を兼ねている。このため、第1端子VT1に接続される第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)から基板2上に設けられたフロントエンドモジュールの電源端子VTまでの電源供給線路20が出力整合回路106に跨って配線されることを回避することができる。これにより、電源供給線路20と出力整合回路106との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、出力整合回路106やチップデバイス3への高周波入力信号RFinの供給経路を避けて電源供給線路20を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、フロントエンドモジュールの小型化の阻害要因を低減することができる。
【0052】
また、図1及び図2に示す実施形態1に係る構成では、上述したように、第1端子VT1と第2端子VT2とがそれぞれ第1伝送線路1051及び第2伝送線路1052の他方端に接続されている。言い換えれば、キャリアアンプ(第1増幅器)103には、第1伝送線路1051を介して電源電圧Vccが供給され、ピークアンプ(第2増幅器)104には、第2伝送線路1052を介して、電源電圧Vccが供給されている。このため、ハイブリッドカプラ105とキャリアアンプ(第1増幅器)103の出力及びピークアンプ(第2増幅器)104の出力との間に第1端子VT1及び第2端子VT2を配置する必要がなくなる。これにより、キャリアアンプ(第1増幅器)103、ピークアンプ(第2増幅器)104、及び、ハイブリッドカプラ105を比較的短い距離で接続できて寄生インダクタンスの発生を低減できるため、特性劣化を抑制できる。
【0053】
(第1変形例)
図8は、実施形態1の第1変形例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。図9は、実施形態1の第1変形例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。なお、実施形態1と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0054】
図8及び図9に示す実施形態1の第1変形例に係る構成では、図1及び図2に示す実施形態1に係る構成と同様に、ハイブリッドカプラ105は、第1伝送線路1051の一方端にキャリアアンプ(第1増幅器)103から出力される第4RF信号RF4が入力され、第1伝送線路1051の他方端には、第1電源供給回路109を介して電源電圧Vccが供給される。
【0055】
実施形態1の第1変形例において、第1端子VT1は、チップデバイス3から出力整合回路106への第6RF信号RF6の出力端子を兼ねず、第1伝送線路1051の他方端に、第1電源供給回路109が接続される第1端子VT1と、チップデバイス3から出力整合回路106への第6RF信号RF6の出力端子OTとが設けられている。言い換えると、出力端子OTは、第1伝送線路1051から出力整合回路106への第6RF信号RF6の信号出力線路上に設けられている。
【0056】
実施形態1の第1変形例に係る構成においては、図9に示すように、出力端子ОTを、ハイブリッドカプラ105に対して第1端子VTおよび第2端子VTと同じ側に設けている。また、第1端子VT1と第2端子VT2との間に出力端子OTを配置しない構成とすることで、第1端子VT1に接続される第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)から基板2上に設けられたフロントエンドモジュールの電源端子VTまでの電源供給線路20が出力整合回路106に跨って配線されることを回避することができる。これにより、実施形態1と同様に、電源供給線路20と出力整合回路106との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、実施形態1と同様に、出力整合回路106やチップデバイス3への高周波入力信号RFinの供給経路を避けて電源供給線路20を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、フロントエンドモジュールの小型化の阻害要因を低減することができる。
【0057】
(第2変形例)
図10は、実施形態1の第2変形例に係る電力増幅器の構成の一例を示す図である。図11は、実施形態1の第2変形例に係る電力増幅器の主要な回路ブロックが設けられるチップデバイスのフロントエンドモジュール基板上における概念的な配置例を示す平面図である。なお、実施形態1及び第1変形例と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0058】
図10及び図11に示す実施形態1の第2変形例に係る構成では、第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)及び第2電源供給回路110(チョークインダクタ1101)をチップデバイス3のダイ上に設けた例を示している。チョークインダクタ1091及びチョークインダクタ1101は、例えば、チップデバイス3の配線により構成される。
【0059】
この実施形態1の第2変形例において、第1端子VT1は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTに接続される。第1端子VT1に供給された電源電圧Vccは、チップデバイス3のダイ上に設けられた第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)及びハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051を介して、キャリアアンプ(第1増幅器)103に供給される。
【0060】
また、第2端子VT2は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTに接続される。第2端子VT2に供給された電源電圧Vccは、チップデバイス3のダイ上に設けられた第2電源供給回路110(チョークインダクタ1101)及びハイブリッドカプラ105の第2伝送線路1052を介して、ピークアンプ(第2増幅器)104に供給される。
【0061】
また、図10及び図11に示す実施形態1の第2変形例に係る構成において、第1端子VT1は、第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)の他方端に設けられている。また、出力端子OTは、第1伝送線路1051の他方端と第1電源供給回路109(チョークインダクタ1091)の一方端との接続点に設けられている。言い換えると、出力端子OTは、第1伝送線路1051から出力整合回路106への第6RF信号RF6の信号出力線路上に設けられている。
【0062】
実施形態1の第2変形例に係る構成においても、図11に示すように、第1端子VT1と第2端子VT2との間に出力端子OTを配置しない構成とすることで、第1端子VT1から基板2上に設けられたフロントエンドモジュールの電源端子VTまでの電源供給線路20が出力整合回路106に跨って配線されることを回避することができる。これにより、実施形態1及び第1変形例と同様に、電源供給線路20と出力整合回路106との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、実施形態1及び第1変形例と同様に、出力整合回路106やチップデバイス3への高周波入力信号RFinの供給経路を避けて電源供給線路20を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、フロントエンドモジュールの小型化の阻害要因を低減することができる。
【0063】
(実施形態2)
図12は、実施形態2に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。なお、第1電源供給回路109a以外の構成は、実施形態1と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0064】
図12に示すように、実施形態2に係る第1電源供給回路109aは、オートトランス1093とキャパシタ1094とを含むオートトランス整合回路である。
【0065】
オートトランス1093は、第1巻線1093a及び第2巻線1093bを有する。第1巻線1093aと第2巻線1093bとは、電気的に直列接続されている。
【0066】
第1巻線1093aは、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と出力整合回路106との間に電気的に直列接続される。第1巻線1093aの一方端は、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と電気的に接続される。第1巻線1093aの他方端は、出力整合回路106と電気的に接続される。第1伝送線路1051の他方端から出力される第6RF信号RF6は、オートトランス1093の第1巻線1093aを介して、出力整合回路106に出力される。
【0067】
第2巻線1093bは、第1巻線1093aの一方端とハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端との接続点と、フロントエンドモジュールの電源端子VTとの間に電気的に直列接続される。第2巻線1093bの一方端は、第1巻線1093aの一方端とハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端との接続点に電気的に接続される。第2巻線1093bの他方端は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTと電気的に接続される。電源電圧Vccは、オートトランス1093の第2巻線1093b及びハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051を介して、キャリアアンプ(第1増幅器)103に印加される。
【0068】
キャパシタ1094は、一方端がオートトランス1093の第2巻線1093bの他方端に電気的に接続され、他方端が基準電位(GND電位)に電気的に接続される。
【0069】
このような構成とすることで、後段の出力整合回路6の構成要素の一部を第1電源供給回路109aに含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、オートトランス1093の第1巻線1093aを出力整合回路6の構成要素の一部として設計することができる。これにより、チップデバイス3が実装されるフロントエンドモジュールの小型化が可能となる。
【0070】
(実施形態3)
図13は、実施形態3に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。なお、第1電源供給回路109b以外の構成は、実施形態1及び実施形態2と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0071】
図13に示すように、実施形態3に係る第1電源供給回路109bは、伝送線路トランス(Transmission Line Transformer:TLT)1095とキャパシタ1096とを含む伝送線路整合回路である。実施形態3に係る第1電源供給回路109bは、実施形態2のオートトランス1093に代えて、伝送線路トランス1095を設けた構成である。
【0072】
伝送線路トランス1095は、第1線路1095a及び第2線路1095bを有する。第1線路1095aと第2線路1095bとは、電気的に直列接続されている。
【0073】
第1線路1095aは、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と出力整合回路106との間に電気的に直列接続される。第1線路1095aの一方端は、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端と電気的に接続される。第1線路1095aの他方端は、出力整合回路106と電気的に接続される。第1伝送線路1051の他方端から出力される第6RF信号RF6は、伝送線路トランス1095の第1線路1095aを介して、出力整合回路106に出力される。
【0074】
第2線路1095bは、第1線路1095aの一方端とハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端との接続点と、フロントエンドモジュールの電源端子VTとの間に電気的に直列接続される。第2線路1095bの一方端は、第1線路1095aの一方端とハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端との接続点に電気的に接続される。第2線路1095bの他方端は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTと電気的に接続される。電源電圧Vccは、伝送線路トランス1095の第2線路1095b及びハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051を介して、キャリアアンプ(第1増幅器)103に印加される。
【0075】
キャパシタ1096は、一方端が伝送線路トランス1095の第2線路1095bの他方端に電気的に接続され、他方端が基準電位(GND電位)に電気的に接続される。
【0076】
このような構成とすることで、後段の出力整合回路6の構成要素の一部を第1電源供給回路109bに含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、伝送線路トランス1095の第1線路1095aを出力整合回路6の構成要素の一部として設計することができる。これにより、チップデバイス3が実装されるフロントエンドモジュールの小型化が可能となる。
【0077】
(実施形態4)
図14は、実施形態4に係る電力増幅器の第1電源供給回路の一例を示す図である。なお、第1電源供給回路109c以外の構成は、上述した各実施形態と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0078】
図14に示すように、実施形態4に係る第1電源供給回路109cは、コンベンショナルトランス1097とキャパシタ1098とを含むコンベンショナルトランス整合回路である。
【0079】
コンベンショナルトランス1097は、1次巻線1097a及び2次巻線1097bを有する。コンベンショナルトランス1097は、巻線比を1:nとする1次巻線1097a及び2次巻線1097bを磁気結合させることにより変換比1:nのインピーダンス変換を実現するトランスである。
【0080】
1次巻線1097aは、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端とフロントエンドモジュールの電源端子VTとの間に電気的に直列接続される。1次巻線1097aの一方端は、ハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051の他方端に電気的に接続される。1次巻線1097aの他方端は、電源供給線路20を介してフロントエンドモジュールの電源端子VTと電気的に接続される。電源電圧Vccは、コンベンショナルトランス1097の1次巻線1097a及びハイブリッドカプラ105の第1伝送線路1051を介して、キャリアアンプ(第1増幅器)103に印加される。
【0081】
2次巻線1097bは、基準電位(GND電位)と出力整合回路106との間に電気的に直列接続される。2次巻線1097bの一方端は、出力整合回路106と電気的に接続される。2次巻線1097bの他方端は、基準電位(GND電位)に電気的に接続される。第1伝送線路1051の他方端から出力される第6RF信号RF6は、コンベンショナルトランス1097を介して、出力整合回路106に出力される。
【0082】
キャパシタ1098は、一方端がコンベンショナルトランス1097の1次巻線1097aの他方端に電気的に接続され、他方端が基準電位(GND電位)に電気的に接続される。
【0083】
このような構成とすることで、後段の出力整合回路6の構成要素の一部を第1電源供給回路109cに含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、コンベンショナルトランス1097の2次巻線1097bを出力整合回路6の構成要素の一部として設計することができる。これにより、チップデバイス3が実装されるフロントエンドモジュールの小型化が可能となる。
【0084】
なお、上述した各実施形態及び各変形例では、各電源供給回路がキャパシタを含む構成を例示したが、本開示はこれに限定されない。
【0085】
また、上述した各実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0086】
本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0087】
(1)本開示の一側面の電力増幅器は、第1高周波信号を増幅する第1増幅器と、少なくとも前記第1高周波信号を90度遅らせた第2高周波信号を増幅する第2増幅器と、第1伝送線路及び第2伝送線路を有するハイブリッドカプラと、前記第1増幅器に電源を供給する第1電源供給回路と、前記第2増幅器に前記電源を供給する第2電源供給回路と、出力整合回路と、を備え、前記ハイブリッドカプラは、前記第1伝送線路の一方端に前記第1増幅器の出力端が接続され、前記第1伝送線路の他方端に前記第1電源供給回路と前記出力整合回路とが接続され、前記第2伝送線路の一方端に前記第2増幅器の出力端が接続され、前記第2伝送線路の他方端に前記第2電源供給回路が接続される。
【0088】
この構成では、第1伝送線路への電源供給線路と、出力整合回路への信号出力線路とを共通化することができる。この結果として、電力増幅器への電源供給線路が出力整合回路に跨って配線されることを回避することができる。これにより、電源供給線路と出力整合回路との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、出力整合回路やチップデバイスへの高周波信号の供給経路を避けて電源供給線路を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、小型化の阻害要因を低減することができる。
【0089】
(2)上記(1)の電力増幅器において、前記第1増幅器、前記第2増幅器、及び前記ハイブリッドカプラは、基板に実装されるチップデバイス上に構成され、前記出力整合回路の少なくとも一部は、前記基板上に設けられ、前記チップデバイスは、前記第1電源供給回路に接続される第1端子と、前記第2電源供給回路に接続される第2端子と、を備え、前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板上に設けられた電源端子から前記電源が供給される。
【0090】
この構成では、基板上において、電源端子と第1端子及び第2端子との間の電源供給線路が出力整合回路に跨って配線されることを回避することができる。これにより、電源供給線路と出力整合回路との間での電磁気的な結合による性能低下のリスクを低減することができる。また、基板上において、出力整合回路やチップデバイスへの高周波信号の供給経路を避けて電源供給線路を配線する等による配線の複雑化を回避することができる。これにより、基板の小型化が可能となる。
【0091】
(3)上記(2)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路及び前記第2電源供給回路は、前記基板上に設けられ、前記第1端子は、前記電源端子から前記基板に設けられた電源供給線路及び前記第1電源供給回路を介して、前記電源が供給され、前記第2端子は、前記電源端子から前記電源供給線路及び前記第2電源供給回路を介して、前記電源が供給される。
【0092】
(4)上記(3)の電力増幅器において、前記チップデバイスは、出力端子をさらに備え、前記第1伝送線路から前記出力整合回路への信号出力線路上に前記出力端子が設けられている。
【0093】
(5)上記(4)の電力増幅器において、前記出力端子は、前記基板上において、前記ハイブリッドカプラに対して前記第1端子と前記第2端子と同じ側に設けられている。
【0094】
(6)上記(2)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路及び前記第2電源供給回路は、前記チップデバイス上に設けられ、前記第1端子は、前記電源端子から前記基板に設けられた電源供給線路を介して、前記電源が供給され、前記第2端子は、前記電源端子から前記電源供給線路を介して、前記電源が供給され、前記チップデバイスは、出力端子をさらに備え、前記第1伝送線路から前記出力整合回路への信号出力線路上に前記出力端子が設けられている。
【0095】
(7)上記(2)から(6)の電力増幅器において、前記ハイブリッドカプラは、前記チップデバイス上において、前記第1伝送線路及び前記第2伝送線路がZ方向に互いに誘電体層を挟んで構成されている。
【0096】
(8)上記(7)の電力増幅器において、前記ハイブリッドカプラは、前記第1伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な前記第1伝送線路の断面積が前記第2伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な前記第2伝送線路の断面積よりも大きい。
【0097】
この構成では、第1伝送線路に流れる電流量及び第2伝送線路に流れる電流量に応じて、第1伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な第1伝送線路の断面積、及び、第2伝送線路の電流通流方向に直交する平面に平行な第2伝送線路の断面積を最適化する。これにより、チップデバイスの小型化が可能となる。
【0098】
(9)上記(2)から(8)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路は、チョークインダクタを含み、前記チョークインダクタは、前記第1伝送線路の他方端と前記電源端子との間に電気的に直列接続される。
【0099】
(10)上記(2)から(8)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路は、第1巻線及び第2巻線を有するオートトランスを含み、前記第1巻線は、前記第1伝送線路の他方端と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続され、前記第2巻線は、前記第1巻線の一方端と前記第1伝送線路の他方端との接続点と、前記電源端子との間に電気的に直列接続される。
【0100】
この構成では、後段の出力整合回路の構成要素の一部を第1電源供給回路に含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、オートトランスの第1巻線を出力整合回路の構成要素の一部として設計することができる。これにより、基板の小型化が可能となる。
【0101】
(11)上記(2)から(8)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路は、第1線路及び第2線路を有する伝送線路トランスを含み、前記第1線路は、前記第1伝送線路の他方端と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続され、前記第2線路は、前記第1巻線の一方端と前記第1伝送線路の他方端との接続点と、前記電源端子との間に電気的に直列接続される。
【0102】
この構成では、後段の出力整合回路の構成要素の一部を第1電源供給回路に含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、伝送線路トランスの第1線路を出力整合回路の構成要素の一部として設計することができる。これにより、基板の小型化が可能となる。
【0103】
(12)上記(2)から(8)の電力増幅器において、前記第1電源供給回路は、1次巻線及び2次巻線を有するコンベンショナルトランスを含み、前記1次巻線は、前記第1伝送線路の他方端と前記電源端子との間に電気的に直列接続され、前記2次巻線は、基準電位と前記出力整合回路との間に電気的に直列接続される。
【0104】
この構成では、後段の出力整合回路の構成要素の一部を第1電源供給回路に含めた構成とすることができる。具体的には、例えば、コンベンショナルトランスの2次巻線を出力整合回路の構成要素の一部として設計することができる。これにより、基板の小型化が可能となる。
【0105】
本開示により、搭載デバイスやモジュール上の配線簡略化や小型化及び性能向上が可能な電力増幅器を実現することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 電力増幅器
2 基板
3 チップデバイス
20,20a 電源供給線路
101 初段アンプ
102 位相回路
103 キャリアアンプ(第1増幅器)
104 ピークアンプ(第2増幅器)
105 ハイブリッドカプラ
106 出力整合回路
107 入力整合回路
108 チョークインダクタ
109,109a,109b,109c 第1電源供給回路
110 第2電源供給回路
111 キャパシタ
1021 終端抵抗
1051 第1伝送線路
1052 第2伝送線路
1091 チョークインダクタ
1092 キャパシタ
1093 オートトランス
1093a 第1巻線
1093b 第2巻線
1094 キャパシタ
1095 伝送線路トランス
1095a 第1線路
1095b 第2線路
1096 キャパシタ
1097 コンベンショナルトランス
1097a 1次巻線
1097b 2次巻線
1101 チョークインダクタ
1102 キャパシタ
G1,G2 GND配線
OT 出力端子
VT 電源端子
VT1 第1端子
VT2 第2端子
図1
図2
図3
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図5
図6
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