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特開2024-88246デジタル移相回路およびデジタル移相器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088246
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】デジタル移相回路およびデジタル移相器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/18 20060101AFI20240625BHJP
   H03H 7/20 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
H01P1/18
H03H7/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203322
(22)【出願日】2022-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
(57)【要約】
【課題】小型化と、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相との差の拡大と、を両立できるデジタル移相回路およびデジタル移相器を提供する。
【解決手段】デジタル移相回路は、信号線路と、前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、第1接地導体と、第2接地導体と、第1電子スイッチと、第2電子スイッチと、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線路と、
前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、
前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、
前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、
前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、
前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、
前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を備え、
前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する、
デジタル移相回路。
【請求項2】
前記第2平行線路の他方の端部と前記第2電子スイッチとの間に設けられた接続パッドをさらに備え、
前記接続パッドの前記交差方向における寸法の最大値は、前記第2平行線路の幅よりも大きい、
請求項1に記載のデジタル移相回路。
【請求項3】
前記第2交差線路の少なくとも一部と、前記接続パッドの少なくとも一部とは、前記長手方向において対向している、
請求項2に記載のデジタル移相回路。
【請求項4】
前記交差方向において、前記第2平行線路の中心線と前記第3平行線路の中心線との間の距離は、前記第2平行線路の中心線と前記第1接地導体の前記第3平行線路側の外縁との間の距離よりも大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項5】
前記第1接地導体および前記第2接地導体のうち少なくとも一方は、多層構造を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項6】
前記第2交差線路は、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、および前記第1平行線路と交差するように延びており、
前記第2線路は、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路と、をさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項7】
前記第1線路は、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路と、をさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路を複数と、
当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数備え、
複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されている、
デジタル移相器。
【請求項9】
前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されている、
請求項8に記載のデジタル移相器。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路を複数と、当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数有する第1列と、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデジタル移相回路を複数と、当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数有し、前記交差方向から見て前記第1列と重なるように前記第1列と平行に延びる第2列と、
前記第1列の一方の端部と前記第2列の一方の端部とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記第1列が有する複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されており、
前記第2列が有する複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されており、
前記第1列が有する複数の前記第3平行線路と、前記第2列が有する複数の前記第3平行線路とは、前記交差方向において隣接していない、
デジタル移相器。
【請求項11】
前記第1列において、前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されており、
前記第2列において、前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されている、
請求項10に記載のデジタル移相器。
【請求項12】
前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路とを接続する信号線接続路と、前記信号線接続路の両側に間隔を空けて配された一対の接地線接続路と、を有する、
請求項10に記載のデジタル移相器。
【請求項13】
前記接続部は、前記信号線接続路および前記一対の接地線接続路の上方および下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、前記一対の接地線接続路と前記グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する、
請求項12に記載のデジタル移相器。
【請求項14】
前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路との間に直列接続された第1素子と、前記第1素子の両側に並列接続された一対の第2素子と、を有し、
前記第1素子および前記第2素子のうち、一方の素子はコイルであり、他方の素子はコンデンサである、
請求項10に記載のデジタル移相器。
【請求項15】
前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路との間に並列接続された第3素子と、前記第3素子の両側に直列接続された一対の第4素子と、を有し、
前記第3素子および前記第4素子のうち、一方の素子はコイルであり、他方の素子はコンデンサである、
請求項10に記載のデジタル移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相回路およびデジタル移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば非特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波あるいはミリ波を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。このデジタル移相回路は、非特許文献1の図2に示されているように、信号線路(signal line)、一対の内側線路(inner lines)、一対の外側線路(outer lines)、第1接地バー、第2接地バー、および一対のNMOSスイッチ等を備える。一対の内側線路は、信号線路の両側に設けられる。一対の外側線路は、一対の内側線路の外側に設けられる。第1接地バーは、各内側線路及び各外側線路の一端に接続される。第2接地バーは、各外側線路の他端に接続される。各NMOSスイッチは、各内側線路の他端と第2接地バーとの間に設けられる。
【0003】
このようなデジタル移相回路は、信号線路における信号波の伝送に起因して生じるリターン電流が、一対の内側線路および一対の外側線路のいずれに流れるかを、一対のNMOSスイッチの開/閉に応じて切り替える。これにより、デジタル移相回路の動作モードが、低遅延モードと高遅延モードとの間で切り替わる。すなわち、このデジタル移相回路は、一対の内側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが低遅延モードとなり、一対の外側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが高遅延モードとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなデジタル移相回路においては、回路定数の1つであるインダクタンスについて、高遅延モード時の値(インダクタンス値)を低遅延モード時のインダクタンス値に対して十分に大きくすることが望ましい。しかしながら、デジタル移相回路に上述した従来の構造を適用した場合、インダクタンス値を大きくしようとすると回路のサイズが大きくなるという問題があった。この結果、従来のデジタル移相回路では、小型化と、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相との差(移相量)を十分に確保することと、を両立することが困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、小型化と、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相との差の拡大と、を両立できるデジタル移相回路およびデジタル移相器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係るデジタル移相回路は、信号線路と、前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、前記第1平行線路の一方の端部および前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を備え、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する。
【0008】
本発明の態様1によれば、第1交差線路、第3平行線路、および第2交差線路が、U字状にループしたループ線路を構成する。このため、リターン電流が第1交差線路で発生させる磁界と、第3平行線路で発生させる磁界と、第2交差線路で発生させる磁界とが、当該ループの中心において互いに強め合う。これにより、デジタル移相回路のサイズを過度に大きくせずとも、高遅延モード時のインダクタンス値を高めることができ、低遅延モード時の位相と高遅延モード時の位相の差(移相量)を十分に拡大することができる。
【0009】
また、本発明の態様2は、態様1のデジタル移相回路において、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2電子スイッチとの間に設けられた接続パッドをさらに備え、前記接続パッドの前記交差方向における寸法の最大値は、前記第2平行線路の幅よりも大きい。
【0010】
また、本発明の態様3は、態様2のデジタル移相回路において、前記第2交差線路の少なくとも一部と、前記接続パッドの少なくとも一部とは、前記長手方向において対向している。
【0011】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つのデジタル移相回路において、前記交差方向において、前記第2平行線路の中心線と前記第3平行線路の中心線との間の距離は、前記第2平行線路の中心線と前記第1接地導体の前記第3平行線路側の外縁との間の距離よりも大きい。
【0012】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つのデジタル移相回路において、前記第1接地導体および前記第2接地導体のうち少なくとも一方は、多層構造を有する。
【0013】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つのデジタル移相回路において、前記第2交差線路は、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、および前記第1平行線路と交差するように延びており、前記第2線路は、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路と、をさらに含む。
【0014】
また、本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つのデジタル移相回路において、前記第1線路は、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路と、をさらに含む。
【0015】
また、本発明の態様8に係るデジタル移相器は、態様1から態様6のいずれか一つのデジタル移相回路を複数と、当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数備え、複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されている。
【0016】
また、本発明の態様9に係るデジタル移相器は、態様8のデジタル移相器において、前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されている。
【0017】
また、本発明の態様10に係るデジタル移相器は、態様1から態様6のいずれか一つのデジタル移相回路を複数と、当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数有する第1列と、態様1から態様6のいずれか一つのデジタル移相回路を複数と、当該デジタル移相回路を前記信号線路の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路を複数有し、前記交差方向から見て前記第1列と重なるように前記第1列と平行に延びる第2列と、前記第1列の一方の端部と前記第2列の一方の端部とを電気的に接続する接続部と、を備え、前記第1列が有する複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されており、前記第2列が有する複数の前記デジタル移相回路および複数の前記反転デジタル移相回路は、前記長手方向において交互に縦続接続されており、前記第1列が有する複数の前記第3平行線路と、前記第2列が有する複数の前記第3平行線路とは、前記交差方向において隣接していない。
【0018】
また、本発明の態様11に係るデジタル移相器は、態様10のデジタル移相器において、前記第1列において、前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されており、前記第2列において、前記長手方向に隣り合う前記デジタル移相回路および前記反転デジタル移相回路は、互いに一部が入り込むように縦続接続されている。
【0019】
また、本発明の態様12に係るデジタル移相器は、態様10または11のデジタル移相器において、前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路とを接続する信号線接続路と、前記信号線接続路の両側に間隔を空けて配された一対の接地線接続路と、を有する。
【0020】
また、本発明の態様13に係るデジタル移相器は、態様12のデジタル移相器において、前記接続部は、前記信号線接続路および前記一対の接地線接続路の上方および下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、前記一対の接地線接続路と前記グランド層とを接続する接続導体と、をさらに有する。
【0021】
また、本発明の態様14に係るデジタル移相器は、態様10または11のデジタル移相器において、前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路との間に直列接続された第1素子と、前記第1素子の両側に並列接続された一対の第2素子と、を有し、前記第1素子および前記第2素子のうち、一方の素子はコイルであり、他方の素子はコンデンサである。
【0022】
また、本発明の態様15に係るデジタル移相器は、態様10または11のデジタル移相器において、前記接続部は、前記第1列が有する前記信号線路と前記第2列が有する前記信号線路との間に並列接続された第3素子と、前記第3素子の両側に直列接続された一対の第4素子と、を有し、前記第3素子および前記第4素子のうち、一方の素子はコイルであり、他方の素子はコンデンサである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記態様によれば、小型化と、低遅延モードの位相と高遅延モードの位相との差の拡大と、を両立可能なデジタル移相回路およびデジタル移相器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るデジタル移相回路を示す平面図である。
図2図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3図1に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るデジタル移相回路を示す平面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るデジタル移相回路を示す平面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るデジタル移相器を示す平面図である。
図7】本発明の第5実施形態に係るデジタル移相器を示す平面図である。
図8】本発明の第6実施形態に係るデジタル移相器を示す平面図である。
図9図8に示すIX-IX線に沿う断面図である。
図10】本発明の第7実施形態に係るデジタル移相器を示す平面図である。
図11】本発明の第7実施形態に係る接続部の等価回路を示す図である。
図12】本発明の第7実施形態の変形例に係る接続部の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るデジタル移相回路Bは、マイクロ波、準ミリ波あるいはミリ波等の高周波信号を入力とし、所定の移相量だけ位相シフトした高周波信号を外部に出力する高周波回路である。
【0027】
本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、図1に示すように、信号線路10と、第1線路21と、第2線路22と、第1接地導体31と、第2接地導体32と、を備える。本実施形態に係る第1線路21は、第1平行線路21p1と、一対の上側パッド21d1、21d2と、を含む。本実施形態に係る第2線路22は、第2平行線路22p2と、第1交差線路22c1と、第3平行線路22p3と、第2交差線路22c2と、上側パッド22dと、を含む。また、本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、3つの電子スイッチ41~43と、複数の接続導体50と、コンデンサ60と、複数の接続パッドP1~P4と、を備える(図2および図3も参照)。
【0028】
信号線路10は、図1に示すように、一方向に延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路10は、一定の幅、一定の厚さおよび所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路10には、図1における紙面左側から紙面右側に向かって、つまり紙面左側の端部(入力端)から紙面右側の端部(出力端)に向かって信号電流が流れる。この信号電流は、上述したマイクロ波、準ミリ波あるいはミリ波の波長域を有する高周波信号である。
【0029】
<方向定義>
ここで、本実施形態では、信号線路10の長手方向(信号線路10が延在する方向)を、単に長手方向Xと称する。長手方向Xに沿って、信号線路10の入力端から出力端に向かう向きを、+Xの向きまたは右方と称する。右方とは反対の向きを、左方または-Xの向きと称する。信号線路10に交差する(例えば、直交する)方向を、交差方向Yと称する。交差方向Yに沿う一つの向きを、奥側または+Yの向きと称する。奥側とは反対の向きを、手前側または-Yの向きと称する。長手方向Xおよび交差方向Yの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、上下方向Zと称する。上下方向Zに沿う一つの向きを、上方または+Zの向きと称する。上方とは反対の向きを、下方または-Zの向きと称する。上下方向Zから見ることを、平面視という。
【0030】
信号線路10は、電気的には分布回路定数としてのインダクタンスL1を有する。このインダクタンスL1は、信号線路10の長さ等、信号線路10の形状に応じた大きさを有する寄生インダクタンスである。また、信号線路10は、電気的には分布定数回路としての静電容量C1をも有する。この静電容量C1は、信号線路10と第1平行線路21p1(詳細は後述)との間、信号線路10と第2平行線路22p2(詳細は後述)との間、信号線路10と第3平行線路22p3(詳細は後述)との間、または信号線路10とシリコン基板(不図示)との間等における寄生容量である。
【0031】
第1平行線路21p1は、信号線路10の他方の側方(-Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第1平行線路21p1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1平行線路21p1は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第1平行線路21p1と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0032】
上側パッド21d1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d1の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド21d1の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d1の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0033】
上側パッド21d2は、第1平行線路21p1の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d2の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド21d2の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d2の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0034】
第2平行線路22p2は、信号線路10の一方の側方(+Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第2平行線路22p2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2平行線路22p2は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第2平行線路22p2と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0035】
第2平行線路22p2は、信号線路10に対して第1平行線路21p1とは逆側に設けられている。言い換えれば、第2平行線路22p2は、信号線路10が交差方向Yにおいて第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の間に位置するように、配置されている。
【0036】
第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に接続された直線状の帯状導体である。第1交差線路22c1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。つまり、本実施形態に係る第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)から奥側(+Y側)に向けて延びている。第1交差線路22c1の手前側の端縁(-Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。
【0037】
上側パッド22dは、第2平行線路22p2の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22dの長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22dの短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド22dの他方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22dの交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0038】
第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第3平行線路22p3は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態に係る第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。
【0039】
第3平行線路22p3は、信号線路10の一方側(+Y側)において、第2平行線路22p2よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第3平行線路22p3は、第2平行線路22p2が交差方向Yにおいて信号線路10と第3平行線路22p3との間に位置するように、配置されている。
【0040】
図1に示すように、交差方向Yにおいて、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離d1は、第2平行線路22p2の中心線と第1接地導体31の奥側の外縁(第3平行線路22p3側の外縁)との間の距離d2よりも大きい。また、第3平行線路22p3の右端(+X側)は、第2線路22の上側パッド22dの右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0041】
第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第2交差線路22c2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態に係る第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X端)から手前側(-Y側)に向けて延びている。
【0042】
本実施形態に係る第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)および第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド22dと第2交差線路22c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態に係る第2交差線路の左側縁(-X側)は、信号線路10の右端縁(+X側)と略同一の位置にある。
【0043】
また、本実施形態に係る第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第2線路22の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0044】
以上説明した第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2は、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。
【0045】
第1接地導体31は、信号線路10の入力端側(-X側)に設けられる板状の導体である。第1接地導体31は、電気的に接地されている。また、第1接地導体31の右側(+X側)の側縁には、長方形状の切欠き31aが形成されている。本実施形態では、この切欠き31aが形成されていることにより、第1接地導体31と信号線路10とが長手方向Xにおいて重なっていない。
【0046】
また、本実施形態では、第1接地導体31のうち切欠き31aよりも左側(-X側)に位置する部分を「基部31b」と称し、切欠き31aよりも手前側(-Y側)に位置する部分を「第1突起部31c」と称し、切欠き31aよりも奥側(+Y側)に位置する部分を「第2突起部31d」と称する。第1突起部31cおよび第2突起部31dの各々は、基部31bから右側(+X側)に向けて突出している。
【0047】
第1突起部31cおよび第2突起部31dの各々は、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状を有する。第1突起部31cは、上側パッド21d1と上下方向Zにおいて重なっている。第2突起部31dは、上下方向Zにおいて、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上下方向Zにおいて重なっている。第1接地導体31は、図2に示すように、信号線路10、第1線路21(上側パッド21d1)、および第2線路22(第1交差線路22c1)よりも下方に位置する。
【0048】
第2接地導体32は、信号線路10の出力端側(+X側)に設けられる板状の導体である。第2接地導体32は、電気的に接地されている。詳細な図示は省略するが、第2接地導体32は、信号線路10、および第2線路22(第2交差線路22c2)よりも下方に位置する。
【0049】
第1接続パッドP1は、図2に示すように、上述した上側パッド21d1と、上側中間パッド71aと、下側中間パッド71bと、上述した第1突起部31cと、を含む。上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、および第1突起部31cは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、および第1突起部31cは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0050】
詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、および第1突起部31cは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、および第1突起部31cは、長手方向Xおよび交差方向Yにおける位置および寸法が、互いに略同一である。
【0051】
図2に示すように、上側パッド21d1と上側中間パッド71aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、上側中間パッド71aと下側中間パッド71bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、下側中間パッド71bと第1突起部31cとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第1接続パッドP1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0052】
なお、本明細書において「接続導体50」は、上下方向Zに延在する導体であり、接続導体50の上端に接続される部材と接続導体50の下端に接続される部材とを電気的かつ機械的に接続する部材である。接続導体50は、例えば絶縁層(不図示)を上下方向Zに貫通するビアである。
【0053】
第2接続パッドP2は、図2に示すように、上述した第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と、上側中間パッド72aと、下側中間パッド72bと、上述した第2突起部31dと、を含む。第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、および第2突起部31dは、平面視において互いに重なっている。また、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、および第2突起部31dは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0054】
詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、および第2突起部31dは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、および第2突起部31dの各々は、長手方向Xおよび交差方向Yにおける位置および寸法が、互いに略同一である。
【0055】
図2に示すように、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上側中間パッド72aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、上側中間パッド72aと下側中間パッド72bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、下側中間パッド72bと第2突起部31dとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、第2平行線路22p2の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0056】
第3接続パッドP3は、図3に示すように、上述した上側パッド21d2と、上側中間パッド73aと、下側中間パッド73bと、下側パッド33aと、を含む。上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、および下側パッド33aは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、および下側パッド33aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0057】
ここで、下側パッド33aは、図1に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33aは、第2接地導体32とは別体に設けられる。下側パッド33aと第2接地導体32とは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。したがって、下側パッド33aは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0058】
詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、および下側パッド33aは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、および下側パッド33aは、長手方向Xおよび交差方向Yにおける位置および寸法が、互いに略同一である。
【0059】
図3に示すように、上側パッド21d2と上側中間パッド73aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、上側中間パッド73aと下側中間パッド73bとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。また、下側中間パッド73bと下側パッド33aとは、複数の接続導体50によって電気的かつ機械的に接続されている。これにより、第3接続パッドP3は、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第1電子スイッチ41とを、常時電気的に接続している。
【0060】
第4接続パッドP4は、図3に示すように、上述した上側パッド22dと、上側中間パッド74aと、下側中間パッド74bと、下側パッド33bと、を含む。上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、および下側パッド33bは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、および下側パッド33bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0061】
ここで、下側パッド33bは、図1に示すように、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33bは、第2接地導体32および下側パッド33aとは別体に設けられる。下側パッド33bと第2接地導体32とは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。したがって、下側パッド33bは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0062】
詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、および下側パッド33bは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、および下側パッド33bは、長手方向Xおよび交差方向Yにおける位置および寸法が、互いに略同一である。
【0063】
ここで、前述したように、上側パッド22dの交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい(図1も参照)。したがって、第4接続パッドP4の交差方向Yにおける寸法の最大値は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0064】
また、前述したように、本実施形態に係る第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)と略同一の位置にある(図1も参照)。したがって、第2交差線路22c2の少なくとも一部と第4接続パッドP4の少なくとも一部(本実施形態では全部)とは、長手方向Xにおいて対向している。
【0065】
コンデンサ60は、例えば、図2に示すように、上部電極が信号線路10に接続され、下部電極が第3電子スイッチ43を介して第1接地導体31に接続される平行平板である。コンデンサ60は、平行平板の対向面積に応じた静電容量Caを有する。すなわち、この静電容量Caは、信号線路10と第1接地導体31との間に設けられる回路定数である。ただし、コンデンサ60は櫛歯型コンデンサであってもよい。
【0066】
第1電子スイッチ41は、図1に示すように、第3接続パッドP3の下側パッド33aと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態に係る第1電子スイッチ41は、図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第3接続パッドP3の下側パッド33aに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0067】
第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80によって、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第2接地導体32との接続をON/OFFする。
【0068】
第2電子スイッチ42は、図1に示すように、第4接続パッドP4の下側パッド33bと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態に係る第2電子スイッチ42は、図1に示すように、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第4接続パッドP4の下側パッド33bに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0069】
第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80によって、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2接地導体32との接続をON/OFFする。
【0070】
第3電子スイッチ43は、図2に示すように、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31(図2においては、基部31b)とを開閉自在に接続するトランジスタである。第3電子スイッチ43は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ60の下部電極に接続され、ソース端子が第1接地導体31に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0071】
第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソースとの導通状態を開状態あるいは閉状態に切り替える。すなわち、第3電子スイッチ43は、スイッチ制御部80によって、コンデンサ60の下部電極と第1接地導体31との接続をON/OFFする。
【0072】
スイッチ制御部80は、上述した第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、および第3電子スイッチ43を制御する制御回路である。スイッチ制御部80は、3つの出力ポートを備えており、各出力ポートから第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、および第3電子スイッチ43の各ゲート端子にゲート信号を個別に出力する。すなわち、スイッチ制御部80は、上記ゲート信号によって、第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、および第3電子スイッチ43のON/OFF動作を制御する。
【0073】
次に、以上のように構成されたデジタル移相回路Bの作用について説明する。
【0074】
本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、第1~第3電子スイッチ41~43の導通状態に応じて動作モードが切り替えられる。すなわち、デジタル移相回路Bの動作モードには、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42のみがON状態に設定される低遅延モードと、スイッチ制御部80によって第3電子スイッチ43のみがON状態に設定される高遅延モードと、がある。
【0075】
低遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42をON状態に設定し、第3電子スイッチ43をOFF状態に設定する。すなわち、低遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(左端)から出力端(右端)まで伝播するまでの第1伝搬遅延時間Tによって、出力端(右端)における位相が、高遅延モードにおける第2の位相θよりも小さな第1の位相θとなる。以下、低遅延モードについてさらに詳しく説明する。
【0076】
第1電子スイッチ41がON状態に設定されることにより、第1平行線路21p1の他端(+X側)は、第3接続パッドP3を介して、第2接地導体32と接続される(図1参照)。一方、第1平行線路21p1の一端(-X側)は、第1接続パッドP1を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図1および図2参照)。したがって、第1平行線路21p1は、他端(+X側)が第1電子スイッチ41を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第1通電経路を形成する。
【0077】
また、第2電子スイッチ42がON状態に設定されることにより、第2平行線路22p2の他端(+X側)は、第4接続パッドP4を介して、第2接地導体32と接続される(図1参照)。一方、第2平行線路22p2の一端(-X側)は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図1および図2参照)。したがって、第2平行線路22p2は、他端(+X側)が第2電子スイッチ42を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第2通電経路を形成する。
【0078】
そして、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2の両端接続状態において、信号線路10に入力端から出力端に向けた信号電流が流れると、当該信号電流の伝播に起因して、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2にリターン電流が生じる。当該リターン電流は、第1平行線路21p1および第2平行線路22p2を、他端(+X側)から一端(-X側)に向かって流れる。
【0079】
すなわち、第1通電経路を形成する第1平行線路21p1には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向きの第1リターン電流が流れる。また、第2通電経路を形成する第2平行線路22p2には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向き、つまり第1リターン電流と同じ向きの第2リターン電流が流れる。
【0080】
ここで、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流および第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は、いずれも、信号電流の通電の向きとは逆向きである。したがって、第1リターン電流および第2リターン電流は、信号線路10と第1平行線路21p1との電磁気的な結合および信号線路10と第2平行線路22p2との電磁気的な結合に起因して、信号線路10のインダクタンスL1を減少させるように作用する。このインダクタンスL1の低減量をΔLsとすると、信号線路10の実効的なインダクタンスLmは(L1-ΔLs)となる。
【0081】
また、信号線路10は、上述したように寄生容量としての静電容量C1を有している。低遅延モードでは、第3電子スイッチ43がOFF状態に設定されるので、コンデンサ60は、信号線路10と第1接地導体31との間に接続されていない。すなわち、コンデンサ60の静電容量Caは、信号線路10を伝播する高周波信号に影響を与えない。したがって、信号線路10を伝播する高周波信号には、(Lm×C1)1/2に比例した第1伝搬遅延時間Tが作用する。
【0082】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第1伝搬遅延時間Tに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第1の位相θだけ遅れたものとなる。すなわち、低遅延モードでは、第1リターン電流および第2リターン電流に起因して信号線路10のインダクタンスL1がインダクタンスLmに低減されることによって、信号線路10が有する本来の伝搬遅延時間が減少する。結果として、信号線路10が本来有する位相よりも小さな第1の位相θが実現される。
【0083】
一方、高遅延モードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42をOFF状態に設定し、第3電子スイッチ43をON状態に設定する。すなわち、高遅延モードでは、高周波信号が信号線路10の入力端(左端)から出力端(右端)まで伝播するまでの第2伝搬遅延時間Tによって、出力端(右端)における位相が、低遅延モードにおける第1の位相θよりも大きな第2の位相θとなる。以下、高遅延モードについてさらに詳しく説明する。
【0084】
上述したように、高遅延モードでは、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42がOFF状態に設定される。よって、第1平行線路21p1には上述した第1導電経路が形成されず、また、第2平行線路22p2には上述した第2導電経路が形成されない。したがって、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流は極めて小さくなり、また、第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は極めて小さくなる。
【0085】
これに対して、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(図2参照)。また、第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、上述したように、第2接地導体32と常時接続されている。したがって、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2には、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部との間に電流が流れ得る第3通電経路が予め形成されている。このため、高遅延モードでは、信号線路10における信号電流に起因して、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から第3平行線路22p3を経由して第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部に向かう第3リターン電流が流れる。
【0086】
ここで、第3リターン電流は、信号線路10と平行な第3平行線路22p3において、信号線路10における信号電流の通電の向きとは逆向きに流れる。また、第3リターン電流が流れる第2交差線路22c2、第3平行線路22p3、および第1交差線路22c1は、信号線路10とは反対側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。したがって、リターン経路(第3リターン電流が流れる経路)がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。これにより、伝送系のインダクタンスを増加させることができる。
【0087】
なお、第3リターン電流がリターン経路のインダクタンスを増加させるように作用する原理は次のように説明できる。つまり、第3リターン電流が第2交差線路22c2を流れる際に発生させる磁界、第3リターン電流が第3平行線路22p3を流れる際に発生させる磁界、および第3リターン電流が第1交差線路22c1を流れる際に発生させる磁界は、いずれも、上記ループ線路の中心O(図1参照)において同一の向き(+Zの向き)である。このため、これらの磁界は互いに強め合う。したがって、第3リターン電流が流れる線路がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、第3リターン電流が生じさせる磁界を大きくし、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。また、ループの高さ(すなわち、第3平行線路22p3の交差方向Yにおける位置、ならびに、第1交差線路22c1および第2交差線路22c2の長さ)を調整することにより、リターン経路のインダクタンスの値を大きく変化させることができる。
【0088】
一方、信号線路10は寄生容量としての静電容量C1を有している。また、高遅延モードでは、第3電子スイッチ43がON状態に設定されるので、信号線路10と第1接地導体31との間には、コンデンサ60が接続されている。すなわち、信号線路10は、コンデンサ60の静電容量Caと静電容量C1(寄生容量)とを合算した静電容量Cbを有する。したがって、信号線路10を伝播する高周波信号には、伝送系のインダクタンスの増加と、合算した静電容量Cbと、に係る第2伝搬遅延時間Tが作用する。
【0089】
そして、信号線路10の出力端における高周波信号は、このような第2伝搬遅延時間Tに起因して、信号線路10の入力端における高周波信号より位相が第2の位相θだけ遅れたものとなる。すなわち、高遅延モードでは、第3リターン電流に起因して伝送系のインダクタンスが増大されることによって、信号線路10が有する本来の伝搬遅延時間が増大する。結果として、信号線路10が本来有する位相よりも大きな第2の位相θが実現される。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、信号線路10と、信号線路10と平行に延びる第1平行線路21p1を含む第1線路21と、信号線路10と平行に延びる第2平行線路22p2と、第2平行線路22p2の一方の端部(-X側)から交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びる第1交差線路22c1と、第1交差線路22c1の一方の端部(+Y側)から信号線路10と平行に延びる第3平行線路22p3と、第3平行線路22p3の一方の端部(+X側)から交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びる第2交差線路22c2と、を含む第2線路22と、第1平行線路21p1の一方の端部(-X側)および第2平行線路22p2の一方の端部(-X側)に電気的に接続された第1接地導体31と、第2線路22の一方の端部(第2交差線路22c2の一方の端部(-Y側))に接続された第2接地導体32と、第1平行線路21p1の他方の端部(+X側)と第2接地導体32との間に設けられた第1電子スイッチ41と、第2平行線路22p2の他方の端部(+X側)と第2接地導体32との間に設けられた第2電子スイッチ42と、を備え、第1平行線路21p1と第2平行線路22p2との間に信号線路10が位置する。
【0091】
この構成によれば、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2が、U字状にループしたループ線路を構成する。このため、第3リターン電流が第2交差線路22c2を流れる際に発生させる磁界、第3リターン電流が第3平行線路22p3を流れる際に発生させる磁界、および第3リターン電流が第1交差線路22c1を流れる際に発生させる磁界は、上記ループ線路の中心Oにおいて互いに強め合う。したがって、リターン経路(第3リターン電流が流れる線路)がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、第3リターン電流が生じさせる磁界を大きくし、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。これにより、伝送系のインダクタンスを増大させることができる。つまり、デジタル移相回路Bのサイズを過度に大きくせずとも、低遅延モード時の位相θと高遅延モード時の位相θとの差(移相量)を十分に確保することができる。また、ループの高さを調整することにより、デジタル移相回路Bのサイズを過度に大きくせずとも伝送系のインダクタンスの値および移相量を大きく変化させることができる。
【0092】
また、本実施形態に係るデジタル移相回路Bは、第2平行線路22p2の他方の端部(+X側)と第2電子スイッチ42との間に設けられた第4接続パッドP4をさらに備え、第4接続パッドP4の交差方向Yにおける寸法の最大値は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。この構成により、抵抗損失の調整等を目的として第2電子スイッチ42のサイズを第2平行線路22p2の幅より大きく設計する場合においても、第4接続パッドP4によって第2平行線路22p2と第2電子スイッチ42とを安定して接続することができる。
【0093】
また、第2交差線路22c2の少なくとも一部と、第4接続パッドP4の少なくとも一部とは、長手方向Xにおいて対向している。この構成により、第2交差線路22c2の長さを十分に確保し、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値を増大させやすくなる。
【0094】
また、交差方向Yにおいて、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離d1は、第2平行線路22p2の中心線と第1接地導体31の+Y側の端部(第3平行線路22p3側の端部)との間の距離d2よりも大きい。この構成により、第3リターン電流が流れるループ線路のループの高さを十分に確保し、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させやすくなる。
【0095】
なお、本実施形態において第1接地導体31および第2接地導体32の各々は1層構造を有していたが、第1接地導体31および第2接地導体32のうち少なくとも一方が2層構造を有していてもよい。この構成によれば、第1接地導体31または第2接地導体32の抵抗値を低下させて、第1接地導体31または第2接地導体32を流れるリターン電流に係る損失を低減させることができる。なお、第1接地導体31および第2接地導体32のうち少なくとも一方が、3層以上の構造を有していてもよい。また、第2接地導体32が多層構造を有する構成は、第1電子スイッチ41および第2電子スイッチ42と第2接地導体32との接続が容易に行いやすくなるという点においても好適である。
【0096】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0097】
図4に示すように、本実施形態に係るデジタル移相回路B´においては、第3平行線路22p3の右端(+X側)が第2平行線路22p2の右端(+X側)よりも左方に位置する。また、本実施形態に係る第2交差線路22c2´は、前記実施形態に係る第2交差線路22c2とは異なり、平面視において第2平行線路22p2、信号線路10、および第1平行線路21p1と交差するように延びている。
【0098】
なお、第2交差線路22c2´が第2平行線路22p2、信号線路10、または第1平行線路21p1と接触しないよう、第2交差線路22c2´は、これらの線路22p2、10、21p1よりも上方に位置している。より具体的に、第2交差線路22c2´は、これらの線路22p2、10、21p1が形成された導電層と絶縁層を挟んで対向する別の導電層に形成される。また、第2交差線路22c2´は、第3平行線路22p3よりも上方に位置し、第2交差線路22c2´の他端(+Y側)と第3平行線路22p3の右端(+X側)とは、不図示の導体(例えば、ビア)によって電気的に接続されている。なお、第2交差線路22c2´は、線路22p2、10、21p1よりも下方に位置していてもよい。ただし、第2交差線路22c2´が線路22p2、10、21p1よりも上方に位置する構成は、配線を太くしやすく、これにより配線の抵抗値を下げやすいという点で好適である。
【0099】
また、本実施形態に係る第2線路22は、上側パッド22d、第2平行線路22p2、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2´に加えて、第4平行線路22p4および第3交差線路22c3をさらに含んでいる。第4平行線路22p4および第3交差線路22c3は、上下方向Zにおいて第2平行線路22p2、第1交差線路22c1および第3平行線路22p3と同じ位置にある。つまり、第4平行線路22p4および第3交差線路22c3は、第2平行線路22p2、第1交差線路22c1および第3平行線路22p3と同じ導電層に形成される。
【0100】
第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2´の一端(-Y側)に接続された直線状の帯状導体である。第4平行線路22p4は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2´の一端(-Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態に係る第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2´の一端(-Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。第2交差線路22c2´の一端(-Y側)と第4平行線路22p4の左端(-X側)とは、不図示の導体(例えば、ビア)によって電気的に接続されている。
【0101】
第4平行線路22p4は、信号線路10の他方側(-Y側)において、第1平行線路21p1よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第4平行線路22p4は、第1平行線路21p1が交差方向Yにおいて信号線路10と第4平行線路22p4との間に位置するように、配置されている。また、第4平行線路22p4の右端(+X側)は、第1線路21の上側パッド21d2の右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0102】
第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第3交差線路22c3は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態に係る第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)から奥側(+Y側)に向けて延びている。
【0103】
また、上側パッド21d2と第3交差線路22c3とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態に係る第3交差線路22c3の一端(+Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第2線路22の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0104】
本実施形態に係るデジタル移相回路B´においては、第1実施形態に係るデジタル移相回路Bと同様に、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2´が、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。これに加えて、本実施形態に係るデジタル移相回路B´においては、第2交差線路22c2´、第4平行線路22p4、および第3交差線路22c3が、手前側(-Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。つまり、高遅延モード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れる線路)が、2つのループ線路を含んでいる。このため、第3リターン電流が生じさせる磁界をより大きくし、リターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)をより増大させることができる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相回路B´において、第2交差線路22c2´は、平面視において第2平行線路22p2および第1平行線路21p1と交差するように延びており、第2線路22は、第2交差線路22c2´の一方の端部から信号線路10と平行に延びる第4平行線路22p4と、第4平行線路22p4の一方の端部から交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びる第3交差線路22c3と、をさらに含む。この構成によれば、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させ、低遅延モード時の位相θと高遅延モード時の位相θとの差(移相量)をより大きくすることができる。
【0106】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0107】
図5に示すように、本実施形態に係るデジタル移相回路B´´は、第1実施形態において説明したデジタル移相回路Bと第1線路21の構成が異なる。具体的に、本実施形態に係る第1線路21は、第1平行線路21p1および上側パッド21d2に加えて、第4交差線路21c1と、第5平行線路21p2と、第5交差線路21c2と、を備える。なお、上側パッド21d1は省略されている。第4交差線路21c1、第5平行線路21p2、および第5交差線路21c2は、上下方向Zにおいて第1平行線路21p1および上側パッド21d2と同じ位置にある。つまり、第4交差線路21c1、第5平行線路21p2、および第5交差線路21c2は、第1平行線路21p1および上側パッド21d2と同じ導電層に形成される。
【0108】
第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された直線状の帯状導体である。第4交差線路21c1は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。つまり、本実施形態における第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)から手前側(-Y側)に向けて延びている。第4交差線路21c1の奥側の端縁(+Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。
【0109】
第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一端(-Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第5平行線路21p2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一端(-Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一端(-Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。
【0110】
第5平行線路21p2は、信号線路10の他方側(-Y側)において、第1平行線路21p1よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第5平行線路21p2は、第1平行線路21p1が交差方向Yにおいて信号線路10と第5平行線路21p2との間に位置するように、配置されている。
【0111】
図5に示すように、交差方向Yにおいて、第1平行線路21p1の中心線と第5平行線路21p2の中心線との間の距離は、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離d1(図1参照)と同じ(または、同程度)である。なお、第5平行線路21p2の右端(+X側)は、上側パッド21d2の右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0112】
第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第5交差線路21c2は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態における第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X端)から奥側(+Y側)に向けて延びている。
【0113】
本実施形態における第5交差線路21c2の他端縁(+Y側)は、上側パッド21d2の他方の短辺(+Y側)および第1平行線路21p1の他方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d2と第5交差線路21c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態における第5交差線路の左側縁(-X側)は、信号線路10の右端縁(+X側)と長手方向Xにおいて略同一の位置にある。
【0114】
また、本実施形態における第5交差線路21c2の他端(+Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第1線路21の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0115】
以上説明した第4交差線路21c1、第5平行線路21p2、および第5交差線路21c2は、手前側(-Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。
【0116】
本実施形態に係るデジタル移相回路B´´においては、第1実施形態に係るデジタル移相回路Bと同様に、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、および第2交差線路22c2が、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。これに加えて、本実施形態に係るデジタル移相回路B´´においては、第4交差線路21c1、第5平行線路21p2、および第5交差線路21c2が、手前側(-Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。つまり、高遅延モード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れる線路)が、2つのループ線路を含んでいる。このため、第3リターン電流が生じさせる磁界をより大きくし、リターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)をより増大させることができる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相回路B´´において、第1線路21は、第1平行線路21p1の一方の端部から交差方向において信号線路10から遠ざかるように延びる第4交差線路21c1と、第4交差線路21c1の一方の端部から信号線路10と平行に延びる第5平行線路21p2と、第5平行線路21p2の一方の端部から交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びる第5交差線路21c2と、をさらに含む。この構成によれば、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させ、低遅延モード時の位相θと高遅延モード時の位相θとの差(移相量)をより大きくすることができる。
【0118】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態に係るデジタル移相器A1は、図6に示すように、複数の基本デジタル移相回路B、B、(中略)、Bn-1と、複数の反転デジタル移相回路rB、(中略)、rBと、を長手方向Xにおいて交互に縦続接続したものである。すなわち、デジタル移相器A1では、第1デジタル移相回路B、第2デジタル移相回路rB、(中略)、第nデジタル移相回路rBが長手方向Xにおいて一列に縦続接続されており、第1デジタル移相回路B、第3デジタル移相回路B、(中略)、第n-1デジタル移相回路Bn-1に基本デジタル移相回路Bを採用し、第2デジタル移相回路rB、(中略)、第nデジタル移相回路rBに反転デジタル移相回路rBを採用する。デジタル移相器A1は、第1デジタル移相回路Bまたは第nデジタル移相回路rBから高周波信号を外部に出力する。なお、見やすさのため、図6以降の図において第1電子スイッチ41、第2電子スイッチ42、およびスイッチ制御部80の図示は省略している。
【0119】
ここで、第1デジタル移相回路B、第3デジタル移相回路B、(中略)、第n-1デジタル移相回路Bn-1として採用する基本デジタル移相回路Bは、第2接地導体32にも第1接地導体31と同様の切欠き31a(図1参照)が形成されていることを除き、第1実施形態に係るデジタル移相回路Bと基本的には同一である。そのため、基本デジタル移相回路Bの各構成には第1実施形態に係るデジタル移相回路Bと同様の符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0120】
一方、第2デジタル移相回路rB、(中略)、第nデジタル移相回路rBとして採用する反転デジタル移相回路rBは、基本デジタル移相回路Bを、信号線路10の中心線に対して反転させた構造を有する。より具体的に、反転デジタル移相回路rBは、基本デジタル移相回路Bを、信号線路10の中心線に対して、交差方向Yに鏡映反転させた構造を有する。また、反転デジタル移相回路rBの各構成には基本デジタル移相回路Bと同様の符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0121】
本実施形態に係るデジタル移相器A1において、各反転デジタル移相回路rBは、当該反転デジタル移相回路rBの左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bに対し一部が入り込むように接続されている。より具体的には、各反転デジタル移相回路rBは、当該反転デジタル移相回路rBが有する第1交差線路22c1と、左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bが有する第2交差線路22c2とが同一軸上にあるように配置されている。例えば、第2デジタル移相回路rBが有する第1交差線路22c1と、第1デジタル移相回路Bが有する第2交差線路22c2とは、図6に示すように、同一軸上に位置している。
【0122】
また、各反転デジタル移相回路rBは、当該反転デジタル移相回路rBの左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bが有する第2接地導体32を、自らの第1接地導体31として用いている。例えば、第1デジタル移相回路Bが有する第2接地導体32は、図6に示すように、第2デジタル移相回路rBの第1接地導体31として機能している。
【0123】
また、各反転デジタル移相回路rBが有する第1線路21は、当該反転デジタル移相回路rBの左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bが有する第2線路22と接続されている。より具体的には、各反転デジタル移相回路rBが有する第1平行線路21p1と、当該反転デジタル移相回路rBの左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bが有する第2交差線路22c2とが直接接続されている。例えば、第2デジタル移相回路rBが有する第1平行線路21p1と第1デジタル移相回路Bが有する第2交差線路22c2とが直接接続されることにより、第2デジタル移相回路rBの第1線路21と第1デジタル移相回路Bの第2線路22とが接続されている。
【0124】
同様に、本実施形態に係るデジタル移相器A1において、各基本デジタル移相回路Bは、当該基本デジタル移相回路Bの左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBに対し一部が入り込むように接続されている。より具体的には、各基本デジタル移相回路Bは、当該基本デジタル移相回路Bが有する第1交差線路22c1と、左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBが有する第2交差線路22c2とが同一軸上にあるように配置されている。例えば、第3デジタル移相回路Bが有する第1交差線路22c1と、第2デジタル移相回路rBが有する第2交差線路22c2とは、図6に示すように、同一軸上に位置している。
【0125】
また、各基本デジタル移相回路Bは、当該基本デジタル移相回路Bの左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBが有する第2接地導体を、自らの第1接地導体31として用いている。例えば、第2デジタル移相回路rBが有する第2接地導体32は、図6に示すように、第3デジタル移相回路Bの第1接地導体31として機能している。
【0126】
また、各基本デジタル移相回路Bが有する第1線路21は、当該基本デジタル移相回路Bの左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBが有する第2線路22と接続されている。より具体的には、各基本デジタル移相回路Bが有する第1平行線路21p1と、当該基本デジタル移相回路Bの左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBが有する第2交差線路22c2とが直接接続されている。例えば、第3デジタル移相回路Bが有する第1平行線路21p1と第2デジタル移相回路rBが有する第2交差線路22c2とが直接接続されることにより、第3デジタル移相回路Bの第1線路21と第2デジタル移相回路rBの第2線路22とが接続されている。
【0127】
上記のように基本デジタル移相回路Bと反転デジタル移相回路rBとを交互に縦続接続することにより、図6に示すように、互いに隣り合う基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBについて、基本デジタル移相回路Bが有する第3平行線路22p3と、反転デジタル移相回路rBが有する第3平行線路22p3とは、信号線路10に対して互いに逆側に位置している。例えば、第1デジタル移相回路Bおよび第2デジタル移相回路rBについて、第1デジタル移相回路Bが有する第3平行線路22p3は信号線路10の一方側(+Y側)にあり、第2デジタル移相回路rBが有する第3平行線路22p3は信号線路10の他方側(-Y側)にある。また、第2デジタル移相回路rBおよび第3デジタル移相回路Bについて、第2デジタル移相回路rBが有する第3平行線路22p3は信号線路10の他方側(-Y側)にあり、第3デジタル移相回路Bが有する第3平行線路22p3は信号線路10の一方側(+Y側)にある。
【0128】
つまり、本実施形態に係るデジタル移相器A1においては、長手方向Xに見て、第3平行線路22p3が信号線路10の一方側(+Y側)と他方側(-Y側)とに交互に配置されるよう、基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBが交互に縦続接続されている。さらに言い換えれば、本実施形態に係るデジタル移相器A1においては、長手方向Xに見て、高遅延モード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れるループ線路)が、信号線路10の一方側(+Y側)と他方側(-Y側)とに交互に配置されるよう、基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBが交互に縦続接続されている。
【0129】
上述したように基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBを交互に縦続接続することにより、互いに隣り合う基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBにおいて、第3平行線路22p3同士を離間して配置することができる。言い換えれば、互いに隣り合う基本デジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBにおいて、高遅延モード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れるループ線路)同士を離間して配置することができる。したがって、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させることができる。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相器A1は、複数の基本デジタル移相回路Bと、基本デジタル移相回路Bを信号線路10の中心線に対して反転させた反転デジタル移相回路rBを複数備え、複数の基本デジタル移相回路Bおよび複数の反転デジタル移相回路rBは、長手方向Xにおいて交互に縦続接続されている。この構成によれば、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させ、低遅延モード時の位相θと高遅延モード時の位相θとの差(移相量)をより大きくすることができる。
【0131】
なお、上記では各反転デジタル移相回路rBが有する第1交差線路22c1と、当該反転デジタル移相回路rBの左側(-X側)に隣接する基本デジタル移相回路Bが有する第2交差線路22c2と、が同一軸上にあると説明したが、これらの交差線路22c1、22c2は同一軸上になくてもよい。また、各基本デジタル移相回路Bが有する第1交差線路22c1と、当該基本デジタル移相回路Bの左側(-X側)に隣接する反転デジタル移相回路rBが有する第2交差線路22c2と、が同一軸上にあると説明したが、これらの交差線路22c1、22c2は同一軸上になくてもよい。
【0132】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態に係るデジタル移相器A2は、図7に示すように、第1列R1と、第2列R2と、第1列R1の一端(+X側)と第2列R2の一端(+X側)とを電気的に接続する接続部90と、を備える。第2列R2は、第1列R1と平行に延びている。第2列R2は、交差方向Yから見て第1列R1と重なるように配されている。具体的に、第2列R2は、第1列R1の手前側(-Y側)に位置する。
【0133】
ここで、第1列R1および第2列R2の各々は、複数の基本デジタル移相回路B、B、(中略)、Bn-1と、複数の反転デジタル移相回路rB、(中略)、rBと、を長手方向Xにおいて交互に縦続接続したものである。つまり、第1列R1の構造および第2列R2の構造の各々は、第4実施形態に係るデジタル移相器A1と基本的には同一である。そのため、第1列R1および第2列R2の各構成には第4実施形態に係るデジタル移相器A1と同様の符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0134】
本実施形態に係る接続部90は、右(+X側)に凸となるU字状の形状を有し、第1列R1が有する第nデジタル移相回路rBと、第2列R2が有する第nデジタル移相回路rBとを接続している。具体的に、本実施形態に係る接続部90は、いわゆるコプレナ線路を構成しており、信号線接続路91と、信号線接続路91の両側に間隔を空けて配された一対の接地線接続路92a、92bと、を有する。ただし、接続部90はいわゆるグランドつきコプレナ線路またはマイクロストリップ線路を構成していてもよい。
【0135】
信号線接続路91は、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線接続路91は、第1列R1が有する信号線路10と第2列R2が有する信号線路10とを接続する。なお、図7に示す例において信号線接続路91は3つの直線部からなる形状を有しているが、信号線接続路91の形状はこれに限られない。例えば、信号線接続路91は4つ以上の直線部を含んでいてもよいし(図8も参照)、曲線部を含んでいてもよい。
【0136】
一対の接地線接続路92a、92bのうち、第1接地線接続路92aは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1接地線接続路92aは、信号線接続路91と平行に延び、信号線接続路91よりも内側に位置する。第1接地線接続路92aは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2線路22と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32とを接続する。
【0137】
一対の接地線接続路92a、92bのうち、第2接地線接続路92bは、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2接地線接続路92bは、信号線接続路91と平行に延び、信号線接続路91よりも外側に位置する。第2接地線接続路92bは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2線路22とを接続する。
【0138】
また、本実施形態に係るデジタル移相器A2において、第1列R1および第2列R2は、第1列R1が有するn個(複数)の第3平行線路22p3と、第2列R2が有するn個(複数)の第3平行線路22p3とが、交差方向Yにおいて隣接しない(対向しない)ように、配置されている。例えば、第2列R2の第1デジタル移相回路Bが有する第3平行線路22p3と、第1列R1の第2デジタル移相回路rBが有する第3平行線路22p3とは、長手方向Xにおいてずれている。また、第1列R1の第2デジタル移相回路rBが有する第3平行線路22p3と、第2列R2の第3デジタル移相回路Bが有する第3平行線路22p3とは、長手方向Xにおいてずれている。
【0139】
上述したように第1列R1および第2列R2を配置することにより、第1列R1が有する第3平行線路22p3と、第2列R2が有する第3平行線路22p3とを、離間して配置することができる。言い換えれば、高遅延モード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れるループ線路)同士を、第1列R1および第2列R2の間で離間して配置することができる。したがって、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させることができる。
【0140】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相器A2は、複数の基本デジタル移相回路Bおよび複数の反転デジタル移相回路rBを有する第1列R1と、複数の基本デジタル移相回路Bおよび複数の反転デジタル移相回路rBを有し、交差方向Yにおいて第1列R1と重なるように第1列R1と平行に延びる第2列R2と、第1列R1の一方の端部(+X側)と第2列R2の一方の端部(+X側)とを電気的に接続する接続部90と、を備え、第1列R1が有する複数の基本デジタル移相回路Bおよび複数の反転デジタル移相回路rBは、長手方向Xにおいて交互に縦続接続されており、第2列R2が有する複数のデジタル移相回路Bおよび複数の反転デジタル移相回路rBは、長手方向Xにおいて交互に縦続接続されており、第1列R1が有する複数の第3平行線路22p3と、第2列R2が有する複数の第3平行線路22p3とは、交差方向Yにおいて隣接していない。この構成によれば、高遅延モード時においてリターン経路のインダクタンス(伝送系のインダクタンス)の値をより増大させ、低遅延モード時の位相θと高遅延モード時の位相θとの差(移相量)をより大きくすることができる。
【0141】
また、長手方向Xに隣り合うデジタル移相回路Bおよび反転デジタル移相回路rBは、互いに一部が入り込むように縦続接続されている。この構成により、デジタル移相器A2の小型化を図ることができる。
【0142】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態に係るデジタル移相器A3は、図8に示すように、第5実施形態に係るデジタル移相器A2において、接続部90を接続部90Aに置き換えた構造を有する。そのため、第6実施形態に係るデジタル移相器A3のうち接続部90A以外の構成については第5実施形態に係るデジタル移相器A2と同様の符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0143】
本実施形態に係る接続部90Aは、図9に示すように、信号線接続路91と、一対の接地線接続路92a、92bと、一対のグランド層93a、93bと、複数の接続導体50と、を有する。つまり、本実施形態に係る接続部90Aは、第5実施形態に係る接続部90に対して、一対のグランド層93a、93bおよび複数の接続導体50を加えた構成を有する。
【0144】
一対のグランド層93a、93bのうち、第1グランド層93aは、図9に示すように、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bから所定距離隔てた上方に配置されている。第1グランド層93aは、一対の接地線接続路92a、92bに対して複数の接続導体50を介して接続されている。複数の接続導体50は、図8に示す通り、第1接地線接続路92aに沿って複数配列されているとともに、第2接地線接続路92bに沿って複数配列されている。
【0145】
一対のグランド層93a、93bのうち、第2グランド層93bは、図9に示すように、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bから所定距離隔てた下方に配置されている。第2グランド層93bは、一対の接地線接続路92a、92bに対して複数の接続導体50を介して接続されている。複数の接続導体50は、上記と同様に、第1接地線接続路92aに沿って複数配列されているとともに、第2接地線接続路92bに沿って複数配列されている。
【0146】
上述したような接続部90Aを採用することにより、信号線接続路91がグランド層93a、93bで挟まれたトリプレート線路構造を形成することができる。これにより、接続部90Aの電磁界が外部に与える影響を軽減することができる。
【0147】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相器A3において、接続部90Aは、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bの上方および下方に配されるグランド層93a、93bと、一対の接地線接続路92a、92bとグランド層93a、93bとを接続する接続導体50と、をさらに有する。この構成により、接続部90Aの電磁界が外部に与える影響を軽減することができる。
【0148】
なお、上記では接続部90Aが一対のグランド層93a、93bを有すると説明したが、接続部90Aは一対のグランド層93a、93bのうち一方のみを有していてもよい。すなわち、信号線接続路91および一対の接地線接続路92a、92bの上方および下方の少なくとも一方にグランド層93a(93b)が配置されていればよい。
【0149】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態に係るデジタル移相器A4は、図10に示すように、第5実施形態に係るデジタル移相器A2において、接続部90を接続部90Bに置き換えた構造を有する。そのため、第7実施形態に係るデジタル移相器A4のうち接続部90B以外の構成については第5実施形態に係るデジタル移相器A2と同様の符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0150】
本実施形態に係る接続部90Bは、図10に示すように、接続回路94と、接続回路94の両側に間隔を空けて配された一対のグランド部95a、95bと、を有する。ただし、接続部90Bは一対のグランド部95a、95bを有していなくてもよい。
【0151】
一対のグランド部95a、95bのうち、第1グランド部95aは、接続回路94よりも内側に位置する。第1グランド部95aは、電気的に接地されている。図10の例において、第1グランド部95aは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2線路22(第2交差線路22c2)と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、を接続する平板状の導体である。
【0152】
一対のグランド部95a、95bのうち、第2グランド部95bは、接続回路94よりも外側に位置する。第2グランド部95bは、電気的に接地されている。図10の例において、第2グランド部95bは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2線路22(第2交差線路22c2)と、を接続する平板状の導体である。
【0153】
なお、一対のグランド部95a、95bの形状は図10の例に限られない。一対のグランド部95a、95bの各々は、例えば、一定の幅、一定の厚さ、および所定の長さを有する長尺板状の導体であってもよい。また、第1グランド部95aは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、を接続していてもよい。同様に、第2グランド部95bは、第1列R1の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、第2列R2の第nデジタル移相回路rBが有する第2接地導体32と、を接続していてもよい。
【0154】
接続回路94は、第1列R1が有する信号線路10と、第2列R2が有する信号線路10と、を接続する。本実施形態に係る接続回路94は、第1素子E1と、一対の第2素子E2と、を含む。この接続回路94は、図11に示す、π型回路を構成している。
【0155】
第1素子E1は、第1列R1(図10も参照)が有する信号線路10と、第2列R2(図10も参照)が有する信号線路10と、の間に直列接続されている。図示の例における第1素子E1は、コイルLである。コイルLとしては、例えば、スパイラルインダクタを好適に用いることができる。スパイラルインダクタは、接続部90Bの略全区間を橋渡ししている。なお、コイルLとして、巻き線コイル、積層コイル、薄膜コイル等のスパイラルインダクタ以外の構成を用いてもよい。
【0156】
一対の第2素子E2は、第1素子E1の両側に並列接続されている。図示の例における第2素子E2は、コンデンサCである。コンデンサCは、上部電極がコイルLの端部に接続され、下部電極が電気的に接地されている。コンデンサCとしては、例えば、MIM(Metal Insulator Metal)構造を有する薄膜のコンデンサを用いることができる。一対のコンデンサCの静電容量は、各々等しい。なお、コンデンサCとしては、平行平板コンデンサに替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。
【0157】
上述した第1素子E1および一対の第2素子E2を用いることで、回路インピーダンスを厳密に制御し、接続部90Bの前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0158】
なお、接続部90Bは、接続回路94および一対のグランド部95a、95bから所定距離隔てた下方に配置されたグランド層(不図示)を備えていてもよい。この場合、グランド層と各グランド部95a、95bとは、例えば接続導体50によって接続されていてもよい。
【0159】
以上説明したように、本実施形態に係るデジタル移相器A4において、接続部90Bは、第1列R1が有する信号線路10と第2列R2が有する信号線路との間に直列接続された第1素子E1と、第1素子E1の両側に並列接続された一対の第2素子E2と、を有し、第1素子E1はコイルLであり、第2素子E2はコンデンサCである。この構成により、回路インピーダンスを厳密に制御し、接続部90Bの前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0160】
なお、上記の例では第1素子E1がコイルLであり、第2素子E2がコンデンサCであったが、第1素子E1がコンデンサCであり、第2素子E2がコイルLであってもよい。この構成によっても、回路インピーダンスを厳密に制御し、接続部90Bの前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0161】
また、一対の第2素子E2とグランドとの間に、第2素子E2と直列接続された電子スイッチが各々設けられてもよい。この電子スイッチは、各第2素子E2を電気的に接地させるか否かを切り替える。この構成によれば、接続部90Bにおいて移相量を調整することができる。なお、電子スイッチとしては、例えば、MOS型FET、バイポーラートランジスター(BJT)等を用いることができる。また、一対の第2素子E2のうち一方のみに電子スイッチが設けられていてもよい。
【0162】
また、第7実施形態の変形例として、π型回路を構成する接続回路94を有する接続部90Bに替えて、図12に示すように、T型回路を構成する接続回路94´を有する接続部90B´を採用してもよい。この接続回路94´は、第3素子E3と、一対の第4素子E4と、を含む。
【0163】
第3素子E3は、第1列R1(図10も参照)が有する信号線路10と、第2列R2(図10も参照)が有する信号線路10と、の間に並列接続されている。図示の例における第3素子E3は、コンデンサCである。コンデンサCは、上部電極が一対の第4素子E4(詳細は後述)の間に接続され、下部電極が電気的に接地されている。
【0164】
一対の第4素子E4は、第3素子E3の両側に直列接続されている。また、一対の第4素子E4は、第1列R1(図10も参照)が有する信号線路10と、第2列R2(図10も参照)が有する信号線路10と、の間に直列接続されている。図示の例における第4素子E4は、コイルLである。一対のコイルLのインダクタンスは、各々等しい。
【0165】
以上説明したように、本実施形態の変形例に係る接続部90B´は、第1列R1が有する信号線路10と第2列R2が有する信号線路10との間に並列接続された第3素子E3と、第3素子E3の両側に直列接続された一対の第4素子E4と、を有し、第3素子E3はコンデンサCであり、第4素子E4はコイルLである。この構成によっても、回路インピーダンスを厳密に制御し、接続部90B´の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0166】
なお、上記の例では第3素子E3がコンデンサCであり、第4素子E4がコイルLであったが、第3素子E3がコイルLであり、第4素子E4がコンデンサCであってもよい。この構成によっても、回路インピーダンスを厳密に制御し、接続部90B´の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することができる。
【0167】
また、一対の第3素子E3とグランドとの間に、第3素子E3と直列接続された電子スイッチが各々設けられてもよい。この電子スイッチは、第3素子E3を電気的に接地させるか否かを切り替える。この構成によれば、接続部90B´において移相量を調整することができる。なお、電子スイッチとしては、例えば、MOS型FET、バイポーラートランジスター(BJT)等を用いることができる。
【0168】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0169】
例えば、第2実施形態と第4実施形態とを組み合わせて、第2実施形態に係るデジタル移相回路B´と同一な基本デジタル移相回路B´と当該基本デジタル移相回路B´を反転させた反転デジタル移相回路rB´とを交互に縦続接続したデジタル移相器A1´を採用してもよい。また、第1列R1および第2列R2に当該デジタル移相器A1´を適用したデジタル移相器A2´、A3´、A4´を採用してもよい。
【符号の説明】
【0170】
A1、A2、A3、A4…デジタル移相器 B、B´、B´´…デジタル移相回路 rB…反転デジタル移相回路 10…信号線路 21…第1線路 21p1…第1平行線路 21c1…第4交差線路 21p2…第5平行線路 21c2…第5交差線路 22…第2線路 22p2…第2平行線路 22c1…第1交差線路 22p3…第3平行線路 22c2…第2交差線路 22p4…第4平行線路 22c3…第3交差線路 31…第1接地導体 32…第2接地導体 41…第1電子スイッチ 42…第2電子スイッチ 50…接続導体 90、90A、90B、90B´…接続部 91…信号線接続路 92a…第1接地線接続路 92b…第2接地線接続路 93a…第1グランド層 93b…第2グランド層 P4…第4接続パッド(接続パッド) R1…第1列 R2…第2列 E1…第1素子 E2…第2素子 E3…第3素子 E4…第4素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12