(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088249
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】デジタル移相回路
(51)【国際特許分類】
H03H 11/20 20060101AFI20240625BHJP
H01P 1/18 20060101ALI20240625BHJP
H03H 7/20 20060101ALI20240625BHJP
H01F 21/12 20060101ALI20240625BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H03H11/20 A
H01P1/18
H03H7/20 E
H01F21/12
H01F27/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203325
(22)【出願日】2022-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【テーマコード(参考)】
5E070
5J098
【Fターム(参考)】
5E070AB10
5E070NN00
5J098AA03
5J098AA15
5J098AA17
5J098AC04
5J098AC10
5J098AC20
5J098AC27
5J098AD02
5J098AD03
5J098AD17
5J098DA08
5J098DA09
(57)【要約】
【課題】周波数帯域毎に移相量が最適となるよう調整することができるデジタル移相回路を提供する。
【解決手段】デジタル移相回路PS1は、第1ポートP100と第2ポートP200との間に接続された第1回路100と、第1回路100と共通帰線L0とに接続され、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタ212,222を備える第2回路200と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第2ポートとの間に接続された第1回路と、
前記第1回路と共通帰線とに接続され、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタを備える第2回路と、
を備えるデジタル移相回路。
【請求項2】
前記可変インダクタは、
信号線路と、
前記信号線路の両側に設けられた内側線路と、
前記信号線路の一方側及び他方側の少なくとも一つの側において、前記内側線路よりも前記信号線路から遠い位置に設けられた外側線路と、
前記内側線路及び前記外側線路の一方の端部に接続された第1接地導体と、
前記外側線路の他方の端部に接続された第2接地導体と、
前記信号線路の一方側に設けられた前記内側線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、
前記信号線路の他方側に設けられた前記内側線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、
を有する、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項3】
前記可変インダクタは、
信号線路と、
前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、
前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、
前記第1平行線路の一方の端部及び前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、
前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、
前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、
前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を有し、
前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項4】
前記第2交差線路は、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、及び前記第1平行線路と交差するように延びており、
前記第2線路は、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路と、を更に含む、
請求項3記載のデジタル移相回路。
【請求項5】
前記第1線路は、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路と、を更に含む、
請求項3記載のデジタル移相回路。
【請求項6】
前記第1回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路を備え、
前記第2回路は、前記第1回路の一端と前記共通帰線との間、及び前記第1回路の他端と前記共通帰線との間に接続された一対のインダクタ回路を備え、
前記インダクタ回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路である、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項7】
前記第1回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路を備え、
前記第2回路は、前記第1回路に並列接続された固定インダクタ回路と、前記固定インダクタ回路と前記共通帰線との間に接続された可変インダクタ回路とを備え、
前記固定インダクタ回路は、直列接続された2つの第1固定インダクタを有する回路であり、
前記可変インダクタ回路は、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記第1固定インダクタの接続点に接続される、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項8】
前記第1回路は、直列接続された2つのコンデンサ回路を有する回路であり、
前記第2回路は、前記第1回路と前記共通帰線との間に接続され、
前記第2回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記コンデンサ回路の接続点に接続され、
前記コンデンサ回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路である、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ波、準ミリ波、ミリ波等の高周波信号を用いた無線通信が脚光を浴びている。特に、準ミリ波帯より高周波における無線通信では、電波の直進性が高まるためビームフォーミングを行う必要があり、これを実現する移相回路が不可欠となる。
【0003】
以下の非特許文献1には、デジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)の一例が開示されている。このデジタル移相回路は、高周波信号が入出力される第1ポートと第2ポートとの間に接続された第1回路部と、第1回路部に並列接続された第2回路部と、第2回路部と共通帰線との間に接続された第3回路部とを備える。第1回路部は、コンデンサとFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)とが並列接続された回路を有する。第2回路部は、2つのインダクタが直列接続された回路を有する。第3回路部は、インダクタとFETとが並列接続された回路を有する。
【0004】
このようなデジタル移相回路は、第1回路部に設けられたFETを閉状態にし、第3回路部に設けられたFETを開状態にすると、バイパス通過モードになる。これに対し、第1回路部に設けられたFETを開状態にし、第3回路部に設けられたFETを閉状態にすると、高域通過モードになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“A Compact 5-Bit Phase-Shifter MMIC for K-Band Satellite Communication Systems”,IEEE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 48, NO. 12, DECEMBER 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した非特許文献1に開示されたデジタル移相回路では、バイパス通過モードにおける位相と高域通過モードにおける位相との差(移相量)が周波数依存性を有する。このような周波数依存性があると、周波数帯域が広い高周波信号を扱う場合に問題が生ずることが考えられる。例えば、携帯電話等の電気通信サービスを提供する電気通信事業者に割り当てられる周波数帯域は電気通信事業者毎に異なるところ、上述した移相量の周波数依存性があると、デジタル移相回路の移相量が電気通信事業者毎に異なってしまうという問題が生ずる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、周波数帯域毎に移相量が最適となるよう調整することができるデジタル移相回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様によるデジタル移相回路(PS1~PS3)は、第1ポート(P100)と第2ポート(P200)との間に接続された第1回路(100、100A)と、前記第1回路と共通帰線(L0)とに接続され、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタ(202、212、222、241、ID1~ID6)を備える第2回路(200、200A、200B)と、を備える。
【0009】
本発明の第1の態様によるデジタル移相回路では、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタが設けられているため、周波数帯域毎に移相量が最適となるよう調整することができる。
【0010】
本発明の第2の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第1の態様によるデジタル移相回路において、前記可変インダクタ(ID1~ID3)が、信号線路(1)と、前記信号線路の両側に設けられた内側線路(2、2a、2b)と、前記信号線路の一方側及び他方側の少なくとも一つの側において、前記内側線路よりも前記信号線路から遠い位置に設けられた外側線路(3、3a、3b)と、前記内側線路及び前記外側線路の一方の端部に接続された第1接地導体(4a)と、前記外側線路の他方の端部に接続された第2接地導体(4b)と、前記信号線路の一方側に設けられた前記内側線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチ(7a)と、前記信号線路の他方側に設けられた前記内側線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチ(7b)と、を有する。
【0011】
本発明の第3の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第1の態様によるデジタル移相回路において、前記可変インダクタ(ID4~ID6)が、信号線路(10)と、前記信号線路と平行に延びる第1平行線路(21p1)を含む第1線路(21)と、前記信号線路と平行に延びる第2平行線路(22p2)と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路(22c1)と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路(22p3)と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路(22c2、22c2′)と、を含む第2線路(22)と、前記第1平行線路の一方の端部及び前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体(31)と、前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体(32)と、前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチ(41)と、前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチ(42)と、を有し、前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する。
【0012】
本発明の第4の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第3の態様によるデジタル移相回路において、前記第2交差線路(22c2′)が、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、及び前記第1平行線路と交差するように延びており、前記第2線路が、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路(22p4)と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路(22c3)と、を更に含む。
【0013】
本発明の第5の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第3の態様によるデジタル移相回路において、前記第1線路が、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路(21c1)と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路(21p2)と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路(21c2)と、を更に含む。
【0014】
本発明の第6の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第1~第5の何れかの態様によるデジタル移相回路において、前記第1回路(100)が、コンデンサ(101)と第1スイッチ素子(102)とが並列接続された回路を備え、前記第2回路(200)が、前記第1回路の一端と前記共通帰線との間、及び前記第1回路の他端と前記共通帰線との間に接続された一対のインダクタ回路(210、220)を備え、前記インダクタ回路が、第1固定インダクタ(211、221)と、前記可変インダクタ(212、222)と、第2固定インダクタ(213、223)及び第2スイッチ素子(214、224)が並列接続された回路とが直列接続された回路である。
【0015】
本発明の第7の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第1~第5の何れかの態様によるデジタル移相回路において、前記第1回路(100)が、コンデンサ(101)と第1スイッチ素子(102)とが並列接続された回路を備え、前記第2回路(200)が、前記第1回路に並列接続された固定インダクタ回路(230)と、前記固定インダクタ回路と前記共通帰線との間に接続された可変インダクタ回路(240)とを備え、前記固定インダクタ回路が、直列接続された2つの第1固定インダクタ(231、232)を有する回路であり、前記可変インダクタ回路が、前記可変インダクタ(241)と、第2固定インダクタ(242)及び第2スイッチ素子(243)が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記第1固定インダクタの接続点(Q1)に接続される。
【0016】
本発明の第8の態様によるデジタル移相回路は、本発明の第1~第5の何れかの態様によるデジタル移相回路において、前記第1回路(100A)は、直列接続された2つのコンデンサ回路(110、120)を有する回路であり、前記第2回路が、前記第1回路と前記共通帰線との間に接続され、前記第2回路が、第1固定インダクタ(201)と、前記可変インダクタ(202)と、第2固定インダクタ(203)及び第2スイッチ素子(204)が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記コンデンサ回路の接続点(Q2)に接続され、前記コンデンサ回路が、コンデンサ(111、121)と第1スイッチ素子(112、122)とが並列接続された回路である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周波数帯域毎に移相量が最適となるよう調整することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における可変インダクタの第1構成例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるデジタル移相回路のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。
【
図5】本発明の第3実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。
【
図6】本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第2構成例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第3構成例を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第4構成例を示す平面図である。
【
図9】
図8中のII-II線に沿う断面図矢視図である。
【
図10】
図8中のIII-III線に沿う断面矢視図である。
【
図11】本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第5構成例を示す平面図である。
【
図12】本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第6構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるデジタル移相回路について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示している。
【0020】
〔第1実施形態〕
〈デジタル移相回路〉
図1は、本発明の第1実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。
図1に示す通り、本実施形態のデジタル移相回路PS1は、第1回路100及び第2回路200を備える。第1回路100は、第1ポートP100と第2ポートP200との間に接続された回路である。第2回路200は、第1回路100と共通帰線L0(グランド線)とに接続された回路である。このようなデジタル移相回路PS1は、マイクロ波、準ミリ波、ミリ波等の高周波信号を入力とし、所定の位相だけシフトした高周波信号を外部に出力する。
【0021】
デジタル移相回路PS1は、第1ポートP100と第2ポートP200との間において対称性を有する。このため、デジタル移相回路PS1は、高周波信号が第1ポートP100から入力される場合には、所定の位相だけシフトした高周波信号を第2ポートP200から外部に出力する。また、デジタル移相回路PS1は、高周波信号が第2ポートP200から入力される場合には、所定の位相だけシフトした高周波信号を第1ポートP100から外部に出力する。
【0022】
第1回路100は、コンデンサ101とスイッチ素子102(第1スイッチ素子)とが並列接続された回路を備える。コンデンサ101の一方の電極は第1ポートP100に接続されており、他方の電極は第2ポートP200に接続されている。スイッチ素子102は、例えばMOS型FET(電界効果トランジスタ)であり、ドレイン端子がコンデンサ101の一方の電極に接続されており、ソース端子がコンデンサ101の他方の電極に接続されており、ゲート端子が、不図示の制御部に接続されている。スイッチ素子102は、デジタル移相回路PS1の移相量を変化させる際に、不図示の制御部によって制御される。
【0023】
第2回路200は、第1回路100の一端と共通帰線L0との間に接続されたインダクタ回路210と、第1回路100の他端と共通帰線L0との間に接続されたインダクタ回路220とを備える。本実施形態のデジタル移相回路PS1は、第1回路100の両端にインダクタ回路210,220がそれぞれ並列接続されたπ型の回路である。尚、インダクタ回路210,220は、「一対のインダクタ回路」に相当する。
【0024】
インダクタ回路210は、固定インダクタ211(第1固定インダクタ)と、可変インダクタ212と、固定インダクタ213(第2固定インダクタ)及びスイッチ素子214(第2スイッチ素子)が並列接続された回路とが直列接続された回路である。固定インダクタ211の一端は、第1回路100の一端(第1ポートP100)に接続されており、他端は可変インダクタ212の一端に接続されている。
【0025】
可変インダクタ212の一端は、固定インダクタ211の他端に接続されており、他端は固定インダクタ213の一端に接続されている。固定インダクタ213の一端は、可変インダクタ212の他端に接続されており、他端は共通帰線L0に接続されている。スイッチ素子214は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が固定インダクタ213の一端及び可変インダクタ212の他端に接続されており、ソース端子が固定インダクタ213の他端(共通帰線L0)に接続されており、ゲート端子が、不図示の制御部に接続されている。スイッチ素子214は、デジタル移相回路PS1の移相量を変化させる際に、不図示の制御部によって制御される。尚、固定インダクタ211と可変インダクタ212とは、順序が逆でもよい(入れ替えられていてもよい)。
【0026】
インダクタ回路220は、固定インダクタ221(第1固定インダクタ)と、可変インダクタ222と、固定インダクタ223(第2固定インダクタ)及びスイッチ素子224(第2スイッチ素子)が並列接続された回路とが直列接続された回路である。固定インダクタ221の一端は、第1回路100の他端(第2ポートP200)に接続されており、他端は可変インダクタ222の一端に接続されている。
【0027】
可変インダクタ222の一端は、固定インダクタ221の他端に接続されており、他端は固定インダクタ223の一端に接続されている。固定インダクタ223の一端は、可変インダクタ222の他端に接続されており、他端は共通帰線L0に接続されている。スイッチ素子224は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が固定インダクタ223の一端及び可変インダクタ222の他端に接続されており、ソース端子が固定インダクタ223の他端(共通帰線L0)に接続されており、ゲート端子が、不図示の制御部に接続されている。スイッチ素子224は、デジタル移相回路PS1の移相量を変化させる際に、不図示の制御部によって制御される。尚、固定インダクタ221と可変インダクタ222とは、順序が逆でもよい(入れ替えられていてもよい)。
【0028】
インダクタ回路210に設けられる可変インダクタ212、及びインダクタ回路220に設けられる可変インダクタ222は、デジタル移相回路PS1の移相量を調整するためのものである。不図示の制御部が、可変インダクタ212,222を制御して、可変インダクタのインダクタンスの値を変えることで、デジタル移相回路PS1の移相量が調整される。尚、可変インダクタ212,222の詳細については後述する。
【0029】
上記構成において、不図示の制御部が、第1回路100に設けられたスイッチ素子102及び第2回路200に設けられたスイッチ素子214,224を制御することにより、デジタル移相回路PS1の移相量が変化する。例えば、不図示の制御部が、スイッチ素子102を閉状態にし、スイッチ素子214,224を開状態にするとバイパス通過モードになり、デジタル移相回路PS1から出力される高周波信号の位相はφxになる。これに対し、不図示の制御部が、スイッチ素子102を開状態にし、スイッチ素子214,224を閉状態にすると高域通過モードになり、デジタル移相回路PS1から出力される高周波信号の位相はφyになる。このようにして、不図示の制御部によってデジタル移相回路PS1の移相量(位相φxと位相φyとの差)が制御される。
【0030】
ここで、デジタル移相回路PS1は、高周波信号の予め規定された周波数帯域の全てにおいて特定の移相量が得られるのが理想であるが、一般的には特定の周波数においてのみ所望の移相量が得られる。例えば、高周波信号の周波数帯域がn260(37~40GHz)であるとすると、この周波数帯域の全てにおいて特定の移相量(例えば、90°)が得られるのが理想であるが、特定の周波数(例えば、40GHz)においてのみ所望の移相量が得られる。このような場合には、不図示の制御部が、第2回路200に設けられた可変インダクタ212,222を制御し、デジタル移相回路PS1の移相量を調整することで、特定の周波数以外の周波数においても所望の移相量或いはそれに近い移相量が得られるようにする。
【0031】
〈可変インダクタ〉
図2は、本発明の第1実施形態における可変インダクタの第1構成例を示す斜視図である。
図2に示す可変インダクタID1は、信号線路1、2つの内側線路2(内側線路2a,2b)、2つの外側線路3(外側線路3a,3b)、2つの接地導体4(接地導体4a,4b)、複数の接続導体6、2つの電子スイッチ7(電子スイッチ7a,7b)、及びスイッチ制御部8を備える。
【0032】
信号線路1は、所定方向に延在する直線状の帯状導体である。即ち、信号線路1は、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
図2に示す例では、信号線路1には、手前側から奥側に向かって信号電流が流れる。尚、信号電流は、信号線路1の奥側から手前側に流れても良い。信号線路1は、例えば、手前側が
図1に示す固定インダクタ211(固定インダクタ221)の他端に接続され、奥側が
図1に示す固定インダクタ213(固定インダクタ223)の一端に接続される。
【0033】
内側線路2は、直線状の帯状導体である。即ち、内側線路2は、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。内側線路2は、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。内側線路2は、信号線路1と平行に設けられている。内側線路2aは、信号線路1の一方側に所定の距離Mだけ離間して配置されており、内側線路2bは、信号線路1の他方側に所定の距離Mだけ離間して配置されている。所定の距離Mは、10μm未満に設定されている。より好ましくは、所定の距離Mは、例えば2μm以下であり、信号線路1に対して内側線路2を可能な限り接近させることが望ましい。例えば、信号線路1に対して内側線路2を製造限界又は製造限界近くまで接近させるのが望ましい。
【0034】
外側線路3は、内側線路2よりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。即ち、外側線路3は、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。外側線路3は、内側線路2と同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。外側線路3は、信号線路1と平行に設けられている。外側線路3aは、信号線路1の一方側において、内側線路2aよりも信号線路1から遠い位置に設けられており、外側線路3bは、信号線路1の他方側において、内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けられている。
【0035】
接地導体4は、内側線路2及び外側線路3から所定距離を隔てた下方に配置され、内側線路2及び外側線路3に直交するように設けられている直線状の帯状導体である。即ち、接地導体4は、一定幅、一定厚、及び、所定長さを有する長尺板状の導体である。接地導体4a(第1接地導体)は、内側線路2a、内側線路2b、外側線路3a、及び外側線路3bの各一端側に設けられ、これら内側線路2a、内側線路2b、外側線路3a、及び外側線路3bの各一端に電気的に接続されている。接地導体4b(第2接地導体)は、内側線路2a、内側線路2b、外側線路3a、及び外側線路3bの各他端側に設けられ、外側線路3a及び外側線路3bの各他端に電気的に接続されている。尚、接地導体4bは、接地導体4aに対して平行に配置されている。
【0036】
複数の接続導体6は、少なくとも接続導体6a~6fを含む。接続導体6aは、内側線路2aの一端と接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。接続導体6bは、内側線路2bの一端と接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。接続導体6cは、外側線路3aの一端と接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。接続導体6dは、外側線路3aの他端と接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。接続導体6eは、外側線路3bの一端と接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。接続導体6fは、外側線路3bの他端と接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。
【0037】
電子スイッチ7は、例えばMOS型FETであり、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。閉状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通している状態である。開状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通しておらず、電気的な接続が遮断している状態である。
【0038】
電子スイッチ7a(第1電子スイッチ)は、内側線路2aの他端と接地導体4bとの間に接続される。具体的に、電子スイッチ7aは、ドレイン端子が内側線路2aの他端に電気的に接続され、ソース端子が接地導体4bに電気的に接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に電気的に接続されている。電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8の制御によって、内側線路2aの他端及び接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。尚、電子スイッチ7aのサイズは、例えば、接地導体4bの幅以上である。
【0039】
電子スイッチ7b(第2電子スイッチ)は、内側線路2bの他端と接地導体4bとの間に接続される。具体的に、電子スイッチ7bは、ドレイン端子が内側線路2bの他端に電気的に接続され、ソース端子が接地導体4bに電気的に接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に電気的に接続されている。電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8の制御によって、内側線路2bの他端及び接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。尚、電子スイッチ7bのサイズは、例えば、接地導体4bの幅以上である。
【0040】
スイッチ制御部8は、電子スイッチ7(電子スイッチ7a及び電子スイッチ7b)を制御する制御回路である。例えば、スイッチ制御部8は、2つの出力ポートを備えている。スイッチ制御部8は、各出力ポートから個別のゲート信号を出力して複数の電子スイッチ7の各ゲート端子に供給することにより複数の電子スイッチ7のそれぞれを個別に開状態又は閉状態に制御する。
【0041】
上記構成において、スイッチ制御部8により、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが閉状態に制御されると可変インダクタID1は低インダクタンスモードになる。これに対し、スイッチ制御部8により、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが開状態に制御されると可変インダクタID1は高インダクタンスモードになる。
【0042】
低インダクタンスモードでは、内側線路2(内側線路2a,2b)を流れるリターン電流に起因して可変インダクタID1のインダクタンスが低減される。これに対し、高インダクタンスモードでは、リターン電流が外側線路3(外側線路3a,3b)を流れるため、低インダクタンスモードと比較して、可変インダクタID1のインダクタンスが増大する。このように、
図2に示す可変インダクタID1は、電子スイッチ7a,7bの閉状態と開状態とを切り替えることにより、インダクタンスを変化させることができる。
【0043】
図3は、本発明の第1実施形態によるデジタル移相回路のシミュレーション結果を示す図である。尚、シミュレーションの対象としたデジタル移相回路PS1は、周波数帯域n260(37~40GHz)において、移相量が90°となるように設計されたものである。
図3(a),(b)に示すシミュレーション結果は何れも、デジタル移相回路PS1の通過位相特性の周波数特性を示すものである。
図3(a),(b)に示すグラフでは、横軸に周波数[GHz]をとり、縦軸に位相[度]をとってある。
【0044】
図3(a)において、符号G11が付された曲線は、デジタル移相回路PS1がバイパス通過モードに設定され、可変インダクタID1が高インダクタンスモードに設定された場合の、デジタル移相回路PS1の位相の周波数特性を示す曲線である。符号G12が付された曲線は、デジタル移相回路PS1が高域通過モードに設定され、可変インダクタID1が低インダクタンスモードに設定された場合の、デジタル移相回路PS1の位相の周波数特性を示す曲線である。
【0045】
図3(a)を参照すると、周波数帯域n260(37~40GHz)における最も高い周波数(40GHz)におけるデジタル移相回路PS1の移相量Δθ1は、約90°になっており、設計値の移相量が実現できていることが分かる。尚、
図1に示すデジタル移相回路PS1から可変インダクタ212,222を省略した構成のデジタル移相回路(以下、「従来回路」という)について同様のシミュレーションを行ったところ、移相量Δθ1に相当する移相量は、約83°であった。このため、可変インダクタ212,222を設けることで、移相量が約7°改善されたことが分かる。
【0046】
図3(b)において、符号G21が付された曲線は、デジタル移相回路PS1がバイパス通過モードに設定され、可変インダクタID1が低インダクタンスモードに設定された場合の、デジタル移相回路PS1の位相の周波数特性を示す曲線である。符号G22が付された曲線は、デジタル移相回路PS1が高域通過モードに設定され、可変インダクタID1が高インダクタンスモードに設定された場合の、デジタル移相回路PS1の位相の周波数特性を示す曲線である。
【0047】
図3(b)を参照すると、周波数帯域n260(37~40GHz)における最も低い周波数(37GHz)におけるデジタル移相回路PS1の移相量Δθ2は、87.7°になっており、設計値(90°)に近い移相量が実現できていることが分かる。尚、従来回路について同様のシミュレーションを行ったところ、移相量Δθ2に相当する移相量は、約88°であった。このため、可変インダクタ212,222を設けることで、移相量が僅かに悪化(0.3°悪化)するが、周波数帯域n260(37~40GHz)全体では、移相量が改善されたことが分かる。
【0048】
以上の通り、本実施形態のデジタル移相回路PS1は、第1ポートP100と第2ポートP200との間に接続された第1回路100と、第1回路100と共通帰線L0とに接続された第2回路200とを備える。第2回路200には、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタ212,222が設けられていることから、周波数帯域毎にデジタル移相回路PS1の移相量が最適となるよう調整することができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
〈デジタル移相回路〉
図4は、本発明の第2実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。尚、
図4においては、
図1に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。
図4に示す通り、本実施形態のデジタル移相回路PS2は、
図1に示すデジタル移相回路PS1の第2回路200を第2回路200Aに替えた構成である。このようなデジタル移相回路PS2は、
図1に示すデジタル移相回路PS1の構成を簡便にしたものである。
【0050】
第2回路200Aは、第1回路100に並列に接続された固定インダクタ回路230と、固定インダクタ回路230と共通帰線L0との間に接続された可変インダクタ回路240とを備える。固定インダクタ回路230は、直列接続された2つの固定インダクタ231,232(第2固定インダクタ)を有する回路である。可変インダクタ回路240は、可変インダクタ241と、固定インダクタ242(第2固定インダクタ)及びスイッチ素子243(第2スイッチ素子)が並列接続された回路とが直列接続された回路である。可変インダクタ回路240の一端は、固定インダクタ回路230における固定インダクタ231,232の接続点Q1に接続されており、他端は共通帰線L0に接続されている。
【0051】
可変インダクタ241は、
図1に示す可変インダクタ212,222と同様の回路であり、例えば、
図2に示す可変インダクタID1を備える。固定インダクタ242は、
図1に示す固定インダクタ213,223と同様のものであり、スイッチ素子243は、
図1に示すスイッチ素子214,224と同様のものである。
【0052】
このため、本実施形態のデジタル移相回路PS2は、
図1に示すデジタル移相回路PS1に設けられた可変インダクタ212,222、固定インダクタ213,223、及びスイッチ素子214,224をそれぞれ共通化したものということができる。具体的に、
図1に示す可変インダクタ212,222を共通化して可変インダクタ241とし、固定インダクタ213,223を共通化して固定インダクタ242とし、スイッチ素子214,224を共通化してスイッチ素子243としたものである。
【0053】
上記構成において、不図示の制御部が、第1回路100に設けられたスイッチ素子102及び第2回路200Aに設けられたスイッチ素子243を制御することにより、デジタル移相回路PS1の移相量が変化する。例えば、不図示の制御部が、スイッチ素子102を閉状態にし、スイッチ素子243を開状態にするとバイパス通過モードになる。これに対し、不図示の制御部が、スイッチ素子102を開状態にし、スイッチ素子243を閉状態にすると高域通過モードになる。このようにして、不図示の制御部によってデジタル移相回路PS2の移相量が制御される。ここで、不図示の制御部が、第2回路200Aに設けられた可変インダクタ241を制御し、デジタル移相回路PS2の移相量を調整することで、特定の移相量が得られない一部の周波数においても特定の移相量が得られる。
【0054】
以上の通り、本実施形態のデジタル移相回路PS2は、第1ポートP100と第2ポートP200との間に接続された第1回路100と、第1回路100と共通帰線L0とに接続された第2回路200Aとを備える。第2回路200Aには、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタ241が設けられていることから、周波数帯域毎にデジタル移相回路PS2の移相量が最適となるよう調整することができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
〈デジタル移相回路〉
図5は、本発明の第3実施形態によるデジタル移相回路の構成を示す回路図である。尚、
図5においては、
図1に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。
図5に示す通り、本実施形態のデジタル移相回路PS3は、
図1に示すデジタル移相回路PS1の第1回路100を第1回路100Aに替え、第2回路200を第2回路200Bに替えた構成である。
【0056】
第1回路100Aは、直列接続された2つのコンデンサ回路110,120を備える回路である。コンデンサ回路110は、コンデンサ111とスイッチ素子112(第1スイッチ素子)とが並列接続された回路を備える。コンデンサ回路120は、コンデンサ121とスイッチ素子122(第1スイッチ素子)とが並列接続された回路を備える。
【0057】
コンデンサ111の一方の電極は第1ポートP100に接続されており、他方の電極はコンデンサ121の一方の電極に接続されている。スイッチ素子112は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ111の一方の電極に接続されており、ソース端子がコンデンサ111の他方の電極に接続されており、ゲート端子が、不図示の制御部に接続されている。スイッチ素子112は、デジタル移相回路PS3の移相量を変化させる際に、不図示の制御部によって制御される。
【0058】
コンデンサ121の一方の電極はコンデンサ111の他方の電極に接続されており、他方の電極は第2ポートP200に接続されている。スイッチ素子122は、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子がコンデンサ121の一方の電極に接続されており、ソース端子がコンデンサ121の他方の電極に接続されており、ゲート端子が、不図示の制御部に接続されている。スイッチ素子122は、デジタル移相回路PS3の移相量を変化させる際に、不図示の制御部によって制御される。
【0059】
第2回路200Bは、固定インダクタ201(第1固定インダクタ)と、可変インダクタ202と、固定インダクタ203(第2固定インダクタ)及びスイッチ素子204(第2スイッチ素子)が並列接続された回路とが直列接続された回路である。尚、第2回路200Bは、
図1に示すデジタル移相回路PS1の第2回路200に設けられたインダクタ回路210,220と同様の回路である。第2回路200Bは、第1回路100Aに設けられたコンデンサ回路110,120の接続点Q2と、共通帰線L0との間に接続される。本実施形態のデジタル移相回路PS3は、直列接続されたコンデンサ回路110,120の接続点Q2に第2回路200Bが接続されたT型の回路である。
【0060】
上記構成において、不図示の制御部が、第1回路100Aに設けられたスイッチ素子112,122及び第2回路200Bに設けられたスイッチ素子204を制御することにより、デジタル移相回路PS3の移相量が変化する。例えば、不図示の制御部が、スイッチ素子112,122を閉状態にし、スイッチ素子204を開状態にするとバイパス通過モードになる。これに対し、不図示の制御部が、スイッチ素子112,122を開状態にし、スイッチ素子204を閉状態にすると高域通過モードなる。このようにして、不図示の制御部によってデジタル移相回路PS3の移相量が制御される。ここで、不図示の制御部が、第2回路200Bに設けられた可変インダクタ202を制御し、デジタル移相回路PS3の移相量を調整することで、特定の移相量が得られない一部の周波数においても特定の移相量が得られる。
【0061】
以上の通り、本実施形態のデジタル移相回路PS3は、第1ポートP100と第2ポートP200との間に接続された第1回路100Aと、第1回路100Aと共通帰線L0とに接続された第2回路200Bとを備える。第2回路200Bには、周波数帯域毎に移相量を調整する可変インダクタ202が設けられていることから、周波数帯域毎にデジタル移相回路PS3の移相量が最適となるよう調整することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態によるデジタル移相回路について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1~第3実施形態のデジタル移相回路PS1~PS3に設けられる可変インダクタは、
図2に示す可変インダクタID1を備えるものに制限される訳ではない。例えば、以下で説明する可変インダクタID2~ID6を備えるものを用いることもできる。
【0063】
図6は、本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第2構成例を示す斜視図である。
図6に示す可変インダクタID2は、
図2に示す可変インダクタID1とは、外側線路3と内側線路2との間において、接地導体4a及び接地導体4bが多層構造で形成されている点が異なる。尚、接地導体4a及び接地導体4bは、内側線路2aと内側線路2bとの間も多層構造で形成されてよい。
【0064】
多層構造で形成された接地導体4aは、複数のビアホール(接続導体6a,6b,6c,6e)で互いに連結されている。多層構造で形成された接地導体4bは、複数のビアホール(接続導体6d,6f,6h,6i)で互いに連結されている。
【0065】
このような構成により、外側線路3と内側線路2との間の接地導体4の抵抗値を下げることができ、高インダクタンスモードにおける高周波信号の損失を低減することができる。従って、高インダクタンスモードと低インダクタンスモードとにおける信号振幅のアンバランスを低減することができる。尚、
図6に示す可変インダクタID2も、電子スイッチ7a,7bの閉状態と開状態とを切り替えることにより、可変インダクタID2のインダクタンスを変化させることができる。
【0066】
図7は、本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第3構成例を示す斜視図である。
図7に示す可変インダクタID3は、
図2に示す可変インダクタID1とは、外側線路3bが省略されており、外側線路3が内側線路2の幅よりも広く形成されており、外側線路3と接地導体4a及び接地導体4bとが多層構造で形成されている点が異なる。尚、接地導体4a,4bの多層化と外側線路3の幅広化及び多層化とは、必要に応じていずれか一方のみが行われていてもよい、つまり、接地導体4a,4bの多層化のみが行われてもよく、外側線路3の幅広化及び多層化のみが行われてもよい。
【0067】
このような構成により、可変インダクタID3の小型化を図ることができる。また、接地導体4a,4bのインピーダンスを低下させることができるため、可変インダクタID3の全体的な損失の低減を図ることができる。また、外側線路3のインピーダンスを低下させることができるため、低インダクタンスモードにおける可変インダクタID3の損失と高インダクタンスモードにおける可変インダクタID3の損失との差を縮小させることができる。尚、
図7に示す可変インダクタID3も、電子スイッチ7a,7bの閉状態と開状態とを切り替えることにより、可変インダクタID3のインダクタンスを変化させることができる。
【0068】
図8は、本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第4構成例を示す平面図である。
図9は、
図8中のII-II線に沿う断面図矢視図である。
図10は、
図8中のIII-III線に沿う断面矢視図である。
【0069】
図8に示す通り、可変インダクタID4は、信号線路10と、第1線路21と、第2線路22と、第1接地導体31と、第2接地導体32と、を備える。本実施形態における第1線路21は、第1平行線路21p1と、一対の上側パッド21d1、21d2と、を含む。本実施形態における第2線路22は、第2平行線路22p2と、第1交差線路22c1と、第3平行線路22p3と、第2交差線路22c2と、上側パッド22dと、を含む。また、本実施形態における可変インダクタID4は、第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42と、複数の接続導体50と、複数の接続パッドP1~P4と、を備える(
図9及び
図10も参照)。
【0070】
信号線路10は、
図8に示す通り、一方向に延在する直線状の帯状導体である。即ち、信号線路10は、一定の幅、一定の厚さ及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。信号線路10には、
図8における紙面左側から紙面右側に向かって、つまり紙面左側の端部(入力端)から紙面右側の端部(出力端)に向かって信号電流が流れる。この信号電流は、上述したマイクロ波、準ミリ波、或いはミリ波の波長域を有する高周波信号である。信号線路10は、例えば、入力端が
図1に示す固定インダクタ211(固定インダクタ221)の他端に接続され、出力端が
図1に示す固定インダクタ213(固定インダクタ223)の一端に接続される。
【0071】
ここで、信号線路10の長手方向(信号線路10が延在する方向)を、単に長手方向Xという。長手方向Xに沿って、信号線路10の入力端から出力端に向かう向きを、+Xの向き又は右方という。右方とは反対の向きを、左方又は-Xの向きという。信号線路10に交差する(例えば、直交する)方向を、交差方向Yという。交差方向Yに沿う一つの向きを、奥側又は+Yの向きという。奥側とは反対の向きを、手前側又は-Yの向きという。長手方向X及び交差方向Yの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、上下方向Zという。上下方向Zに沿う一つの向きを、上方又は+Zの向きという。上方とは反対の向きを、下方又は-Zの向きという。上下方向Zから見ることを、平面視という。
【0072】
信号線路10は、電気的には集中定数回路としてのインダクタンスL1を有する。このインダクタンスL1は、信号線路10の長さ等、信号線路10の形状に応じた大きさを有する寄生インダクタンスである。
【0073】
第1平行線路21p1は、信号線路10の他方の側方(-Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第1平行線路21p1は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1平行線路21p1は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第1平行線路21p1と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0074】
上側パッド21d1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d1の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d1の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d1の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド21d1の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d1の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0075】
上側パッド21d2は、第1平行線路21p1の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド21d2の長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド21d2の短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド21d2の一方の短辺(+Y側)は、第1平行線路21p1の一方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド21d2の他方の短辺(-Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(-Y側)よりも手前側(-Y側)に位置する。つまり、上側パッド21d2の交差方向Yにおける寸法は、第1平行線路21p1の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0076】
第2平行線路22p2は、信号線路10の一方の側方(+Y側)に設けられた直線状の帯状導体である。第2平行線路22p2は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2平行線路22p2は、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。第2平行線路22p2と信号線路10とは、交差方向Yに間隔を空けて配されている。
【0077】
第2平行線路22p2は、信号線路10に対して第1平行線路21p1とは逆側に設けられている。言い換えれば、第2平行線路22p2は、信号線路10が交差方向Yにおいて第1平行線路21p1及び第2平行線路22p2の間に位置するように、配置されている。
【0078】
第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)に接続された直線状の帯状導体である。第1交差線路22c1は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。つまり、本実施形態における第1交差線路22c1は、第2平行線路22p2の一端(-X側)から奥側(+Y側)に向けて延びている。第1交差線路22c1の手前側の端縁(-Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。
【0079】
上側パッド22dは、第2平行線路22p2の他端(+X側)に接続された長方形状の平板導体である。上側パッド22dの長辺は交差方向Yに延びており、上側パッド22dの短辺は長手方向Xに延びている。上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)は、第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド22dの他方の短辺(+Y側)は、第2平行線路22p2の他方の側縁(+Y側)よりも奥側(+Y側)に位置する。つまり、上側パッド22dの交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0080】
第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第3平行線路22p3は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第3平行線路22p3は、第1交差線路22c1の一端(+Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。
【0081】
第3平行線路22p3は、信号線路10の一方側(+Y側)において、第2平行線路22p2よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第3平行線路22p3は、第2平行線路22p2が交差方向Yにおいて信号線路10と第3平行線路22p3との間に位置するように、配置されている。
【0082】
図8に示す通り、交差方向Yにおいて、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離d1は、第2平行線路22p2の中心線と第1接地導体31の奥側の外縁(第3平行線路22p3側の外縁)との間の距離d2よりも大きい。また、第3平行線路22p3の右端(+X側)は、第2線路22の上側パッド22dの右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0083】
第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第2交差線路22c2は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態における第2交差線路22c2は、第3平行線路22p3の一端(+X端)から手前側(-Y側)に向けて延びている。
【0084】
本実施形態における第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)及び第2平行線路22p2の一方の側縁(-Y側)と略同一の位置にある。また、上側パッド22dと第2交差線路22c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態における第2交差線路の左側縁(-X側)は、信号線路10の右端縁(+X側)と略同一の位置にある。
【0085】
また、本実施形態における第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第2線路22の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0086】
以上説明した第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、及び第2交差線路22c2は、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。
【0087】
第1接地導体31は、信号線路10の入力端側(-X側)に設けられる板状の導体である。第1接地導体31は、電気的に接地されている。また、第1接地導体31の右側(+X側)の側縁には、長方形状の切欠き31aが形成されている。本実施形態では、この切欠き31aが形成されていることにより、第1接地導体31と信号線路10とが長手方向Xにおいて重なっていない。
【0088】
また、本実施形態では、第1接地導体31のうち切欠き31aよりも左側(-X側)に位置する部分を「基部31b」と称し、切欠き31aよりも手前側(-Y側)に位置する部分を「第1突起部31c」と称し、切欠き31aよりも奥側(+Y側)に位置する部分を「第2突起部31d」という。第1突起部31c及び第2突起部31dの各々は、基部31bから右側(+X側)に向けて突出している。尚、第1接地導体31には、切欠き31a、第1突起部31c、第2突起部31dが形成されていなくともよい。例えば、第1接地導体31の平面視形状は矩形形状であってもよい。
【0089】
第1突起部31c及び第2突起部31dの各々は、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状を有する。第1突起部31cは、上側パッド21d1と上下方向Zにおいて重なっている。第2突起部31dは、上下方向Zにおいて、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上下方向Zにおいて重なっている。第1接地導体31は、
図9に示す通り、信号線路10、第1線路21(上側パッド21d1)、及び第2線路22(第1交差線路22c1)よりも下方に位置する。
【0090】
第2接地導体32は、信号線路10の出力端側(+X側)に設けられる板状の導体である。第2接地導体32は、電気的に接地されている。詳細な図示は省略するが、第2接地導体32は、信号線路10、及び第2線路22(第2交差線路22c2)よりも下方に位置する。
【0091】
第1接続パッドP1は、
図9に示す通り、上述した上側パッド21d1と、上側中間パッド71aと、下側中間パッド71bと、上述した第1突起部31cと、を含む。上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、及び第1突起部31cは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、及び第1突起部31cは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0092】
詳細な図示は省略するが、本実施形態における上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、及び第1突起部31cは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド21d1、上側中間パッド71a、下側中間パッド71b、及び第1突起部31cは、長手方向X及び交差方向Yにおける位置及び寸法が、互いに略同一である。
【0093】
図9に示す通り、上側パッド21d1と上側中間パッド71aとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、上側中間パッド71aと下側中間パッド71bとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、下側中間パッド71bと第1突起部31cとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。これにより、第1接続パッドP1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0094】
尚、本明細書において「接続導体50」は、上下方向Zに延在する導体であり、接続導体50の上端に接続される部材と接続導体50の下端に接続される部材とを電気的且つ機械的に接続する部材である。接続導体50は、例えば絶縁層(不図示)を上下方向Zに貫通するビアである。
【0095】
第2接続パッドP2は、
図9に示す通り、上述した第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と、上側中間パッド72aと、下側中間パッド72bと、上述した第2突起部31dと、を含む。第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、及び第2突起部31dは、平面視において互いに重なっている。また、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、及び第2突起部31dは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0096】
詳細な図示は省略するが、本実施形態における上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、及び第2突起部31dは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側中間パッド72a、下側中間パッド72b、及び第2突起部31dの各々は、長手方向X及び交差方向Yにおける位置及び寸法が、互いに略同一である。
【0097】
図9に示す通り、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部と上側中間パッド72aとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、上側中間パッド72aと下側中間パッド72bとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、下側中間パッド72bと第2突起部31dとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。これにより、第2接続パッドP2は、第2平行線路22p2の一端(-X側)と第1接地導体31とを、常時電気的に接続している。
【0098】
第3接続パッドP3は、
図10に示す通り、上述した上側パッド21d2と、上側中間パッド73aと、下側中間パッド73bと、下側パッド33aと、を含む。上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、及び下側パッド33aは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、及び下側パッド33aは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0099】
ここで、下側パッド33aは、
図8に示す通り、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33aは、第2接地導体32とは別体に設けられる。下側パッド33aと第2接地導体32とは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33aは、第1電子スイッチ41の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0100】
詳細な図示は省略するが、本実施形態における上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、及び下側パッド33aは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド21d2、上側中間パッド73a、下側中間パッド73b、及び下側パッド33aは、長手方向X及び交差方向Yにおける位置及び寸法が、互いに略同一である。
【0101】
図10に示す通り、上側パッド21d2と上側中間パッド73aとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、上側中間パッド73aと下側中間パッド73bとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。また、下側中間パッド73bと下側パッド33aとは、複数の接続導体50によって電気的且つ機械的に接続されている。これにより、第3接続パッドP3は、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第1電子スイッチ41とを、常時電気的に接続している。
【0102】
第4接続パッドP4は、
図10に示す通り、上述した上側パッド22dと、上側中間パッド74aと、下側中間パッド74bと、下側パッド33bと、を含む。上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、及び下側パッド33bは、平面視において互いに重なっている。また、上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、及び下側パッド33bは、上側(+Z側)から下側(-Z側)に向けてこの順に並んでおり、上下方向Zにおいて間隔を空けて配されている。
【0103】
ここで、下側パッド33bは、
図8に示す通り、長辺が交差方向Yに延び、短辺が長手方向Xに延びる長方形状の平板導体である。下側パッド33bは、第2接地導体32及び下側パッド33aとは別体に設けられる。下側パッド33bと第2接地導体32とは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接続の有無が切り替わる。従って、下側パッド33bは、第2電子スイッチ42の状態に応じて、電気的接地の有無が切り替わる。
【0104】
詳細な図示は省略するが、本実施形態における上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、及び下側パッド33bは、互いに略同一の形状を有する。つまり、上側パッド22d、上側中間パッド74a、下側中間パッド74b、及び下側パッド33bは、長手方向X及び交差方向Yにおける位置及び寸法が、互いに略同一である。
【0105】
ここで、前述した通り、上側パッド22dの交差方向Yにおける寸法は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい(
図8も参照)。従って、第4接続パッドP4の交差方向Yにおける寸法の最大値は、第2平行線路22p2の幅(交差方向Yにおける寸法)よりも大きい。
【0106】
また、前述した通り、本実施形態における第2交差線路22c2の一端縁(-Y側)は、上側パッド22dの一方の短辺(-Y側)と略同一の位置にある(
図8も参照)。従って、第2交差線路22c2の少なくとも一部と第4接続パッドP4の少なくとも一部(本実施形態では全部)とは、長手方向Xにおいて対向している。
【0107】
第1電子スイッチ41は、
図8に示す通り、第3接続パッドP3の下側パッド33aと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第1電子スイッチ41は、
図8に示す通り、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第3接続パッドP3の下側パッド33aに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0108】
第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態或いは閉状態に切り替える。即ち、第1電子スイッチ41は、スイッチ制御部80によって、第1平行線路21p1の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態又は遮断状態にする。
【0109】
第2電子スイッチ42は、
図8に示す通り、第4接続パッドP4の下側パッド33bと第2接地導体32とを開閉自在に接続するトランジスタである。本実施形態における第2電子スイッチ42は、
図8に示す通り、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第4接続パッドP4の下側パッド33bに接続され、ソース端子が第2接地導体32に接続され、またゲート端子がスイッチ制御部80に接続されている。
【0110】
第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて、ドレイン端子とソース端子との導通状態を開状態或いは閉状態に切り替える。即ち、第2電子スイッチ42は、スイッチ制御部80によって、第2平行線路22p2の他端(+X側)と第2接地導体32との間を導通状態又は遮断状態にする。
【0111】
スイッチ制御部80は、上述した第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42を制御する制御回路である。スイッチ制御部80は、2つの出力ポートを備えており、各出力ポートから第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42の各ゲート端子にゲート信号を個別に出力する。即ち、スイッチ制御部80は、上記ゲート信号によって、第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42を開状態又は閉状態にする。尚、スイッチ制御部80は、例えば、
図1に示すスイッチ素子102及びスイッチ素子214,224を制御してデジタル移相回路PS1の移相量を変化させる不図示の制御部に設けられる。
【0112】
次に、以上のように構成された可変インダクタID4の作用について説明する。
【0113】
本実施形態における可変インダクタID4は、第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42の導通状態に応じて動作モードが切り替えられる。即ち、可変インダクタID4の動作モードには、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42が閉状態に設定される低インダクタンスモードと、スイッチ制御部80によって第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42が開状態に設定される高インダクタンスモードと、がある。
【0114】
低インダクタンスモードにおいて、スイッチ制御部80は、第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42を閉状態に設定する。
【0115】
第1電子スイッチ41が閉状態に設定されることにより、第1平行線路21p1の他端(+X側)は、第3接続パッドP3を介して、第2接地導体32と接続される(
図8参照)。一方、第1平行線路21p1の一端(-X側)は、第1接続パッドP1を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図8及び
図9参照)。従って、第1平行線路21p1は、他端(+X側)が第1電子スイッチ41を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第1通電経路を形成する。
【0116】
また、第2電子スイッチ42が閉状態に設定されることにより、第2平行線路22p2の他端(+X側)は、第4接続パッドP4を介して、第2接地導体32と接続される(
図8参照)。一方、第2平行線路22p2の一端(-X側)は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図8及び
図9参照)。従って、第2平行線路22p2は、他端(+X側)が第2電子スイッチ42を介して第2接地導体32に接続されることによって、一端(-X側)と他端(+X側)との間に電流が流れ得る第2通電経路を形成する。
【0117】
そして、第1平行線路21p1及び第2平行線路22p2の両端接続状態において、信号線路10に入力端から出力端に向けた信号電流が流れると、当該信号電流の伝播に起因して、第1平行線路21p1及び第2平行線路22p2にリターン電流が生じる。当該リターン電流は、第1平行線路21p1及び第2平行線路22p2を、他端(+X側)から一端(-X側)に向かって流れる。
【0118】
即ち、第1通電経路を形成する第1平行線路21p1には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向きの第1リターン電流が流れる。また、第2通電経路を形成する第2平行線路22p2には、信号線路10における信号電流の通電によって、信号電流の通電の向きとは逆向き、つまり第1リターン電流と同じ向きの第2リターン電流が流れる。
【0119】
ここで、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流及び第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は、何れも、信号電流の通電の向きとは逆向きである。従って、第1リターン電流及び第2リターン電流は、信号線路10と第1平行線路21p1との電磁気的な結合(相互誘導)及び信号線路10と第2平行線路22p2との電磁気的な結合(相互誘導)に起因して、可変インダクタID4の全体のインダクタンスを減少させるように作用する。信号線路10のインダクタンスをLslow、リターン経路(第1平行線路21p1及び第2平行線路22p2)のインダクタンスをLglow、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMlowとする。低インダクタンスモードにおける可変インダクタID4の全体のインダクタンスLlowは、Lslow+Lglow-Mlowとなる。
【0120】
上述した通り、高インダクタンスモードでは、第1電子スイッチ41及び第2電子スイッチ42が開状態に設定される。よって、第1平行線路21p1には上述した第1導電経路が形成されず、また、第2平行線路22p2には上述した第2導電経路が形成されない。従って、第1平行線路21p1に流れる第1リターン電流は極めて小さくなり、また、第2平行線路22p2に流れる第2リターン電流は極めて小さくなる。
【0121】
これに対して、第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部は、第2接続パッドP2を介して、第1接地導体31と常時接続されている(
図9参照)。また、第2交差線路22c2の一端(-Y側)は、上述した通り、第2接地導体32と常時接続されている。従って、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、及び第2交差線路22c2には、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部との間に電流が流れ得る第3通電経路が予め形成されている。このため、高インダクタンスモードでは、信号線路10における信号電流に起因して、第2交差線路22c2の一端(-Y側)から第3平行線路22p3を経由して第1交差線路22c1の手前側(-Y側)端部に向かう第3リターン電流が流れる。
【0122】
ここで、第3リターン電流は、信号線路10と平行な第3平行線路22p3において、信号線路10における信号電流の通電の向きとは逆向きに流れる。また、第3リターン電流が流れる第2交差線路22c2、第3平行線路22p3、及び第1交差線路22c1は、信号線路10とは反対側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。従って、リターン経路(第3リターン電流が流れる経路)がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。これにより、可変インダクタID4の全体のインダクタンスを増加させることができる。信号線路10のインダクタンスをLshigh、リターン経路(第2交差線路22c2、第3平行線路22p3、第1交差線路22c1)のインダクタンスをLghigh、信号線路10とリターン経路との相互インダクタンスをMhighとする。高インダクタンスモードにおける可変インダクタID4の全体のインダクタンスLhighは、Lshigh+Lghigh-Mhighとなる。ここで、明らかに、Lglow<Lghigh及びMlow>Mhighが成り立つから、Lhigh>Llowが成り立つ。
【0123】
尚、第3リターン電流がリターン経路のインダクタンスを増加させるように作用する原理は次のように説明できる。つまり、第3リターン電流が第2交差線路22c2を流れる際に発生させる磁界、第3リターン電流が第3平行線路22p3を流れる際に発生させる磁界、及び第3リターン電流が第1交差線路22c1を流れる際に発生させる磁界は、何れも、上記ループ線路の中心O(
図8参照)において同一の向き(+Zの向き)である。このため、これらの磁界は互いに強め合う。従って、第3リターン電流が流れる線路がループ線路を構成していない従来の構成と比較して、第3リターン電流が生じさせる磁界を大きくし、リターン経路のインダクタンスを増大させることができる。また、ループの高さ(即ち、第3平行線路22p3の交差方向Yにおける位置、ならびに、第1交差線路22c1及び第2交差線路22c2の長さ)を調整することにより、リターン経路のインダクタンスの値を大きく変化させることができる。
【0124】
図11は、本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第5構成例を示す平面図である。尚、
図11に示す可変インダクタID5の基本的な構成は、
図8に示す可変インダクタID4と同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0125】
図11に示す通り、可変インダクタID5は、
図8に示す可変インダクタID4とは、第2線路22の構成が異なる。具体的に、第2線路22は、第2平行線路22p2と、第1交差線路22c1と、第3平行線路22p3と、第2交差線路22c2′と、第4平行線路22p4と、第3交差線路22c3と、上側パッド22dと、を含む。
【0126】
第2交差線路22c2′は、
図8に示す第2交差線路22c2に替えて設けられる。本実施形態では、第3平行線路22p3の右端(+X側)が第2平行線路22p2の右端(+X側)よりも左方に位置する。また、本実施形態における第2交差線路22c2´は、
図8に示す第2交差線路22c2とは異なり、平面視において第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1と交差するように延びている。
【0127】
第2交差線路22c2′は、第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1と接触しないよう、これら第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1よりも上方に位置している。より具体的に、第2交差線路22c2′は、これら第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1が形成された導電層と絶縁層を挟んで対向する別の導電層に形成される。また、第2交差線路22c2′は、第3平行線路22p3よりも上方に位置し、第2交差線路22c2′の他端(+Y側)と第3平行線路22p3の右端(+X側)とは、不図示の導体(例えば、ビア)によって電気的に接続されている。尚、第2交差線路22c2′は、第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1よりも下方に位置していてもよい。但し、第2交差線路22c2′が第2平行線路22p2、信号線路10、及び第1平行線路21p1よりも上方に位置する構成は、配線を太くしやすく、これにより配線の抵抗値を下げやすいという点で好適である。
【0128】
第4平行線路22p4及び第3交差線路22c3は、上下方向Zにおいて第2平行線路22p2、第1交差線路22c1、及び第3平行線路22p3と同じ位置にある。つまり、第4平行線路22p4及び第3交差線路22c3は、第2平行線路22p2、第1交差線路22c1及び第3平行線路22p3と同じ導電層に形成される。
【0129】
第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2′の一端(-Y側)に接続された直線状の帯状導体である。第4平行線路22p4は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2′の一端(-Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第4平行線路22p4は、第2交差線路22c2′の一端(-Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。第2交差線路22c2′の一端(-Y側)と第4平行線路22p4の左端(-X側)とは、不図示の導体(例えば、ビア)によって電気的に接続されている。
【0130】
第4平行線路22p4は、信号線路10の他方側(-Y側)において、第1平行線路21p1よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第4平行線路22p4は、第1平行線路21p1が交差方向Yにおいて信号線路10と第4平行線路22p4との間に位置するように、配置されている。また、第4平行線路22p4の右端(+X側)は、第1線路21の上側パッド21d2の右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0131】
第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第3交差線路22c3は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態における第3交差線路22c3は、第4平行線路22p4の一端(+X側)から奥側(+Y側)に向けて延びている。
【0132】
また、上側パッド21d2と第3交差線路22c3とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態における第3交差線路22c3の一端(+Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第2線路22の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0133】
本実施形態における可変インダクタID5では、第1実施形態における可変インダクタID4と同様に、第1交差線路22c1、第3平行線路22p3、及び第2交差線路22c2′が、奥側(+Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。これに加えて、本実施形態における可変インダクタID5では、第2交差線路22c2′、第4平行線路22p4、及び第3交差線路22c3が、手前側(-Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成する。つまり、高インダクタンスモード時におけるリターン経路(第3リターン電流が流れる線路)が、2つのループ線路を含んでいる。このため、第3リターン電流が生じさせる磁界をより大きくし、リターン経路のインダクタンス(可変インダクタID5の全体のインダクタンス)をより増大させることができる。
【0134】
図12は、本発明の第1~第3実施形態における可変インダクタの第6構成例を示す平面図である。尚、
図12に示す可変インダクタID5の基本的な構成は、
図8に示す可変インダクタID4と同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0135】
図12に示す可変インダクタID6は、
図8~
図10を用いて説明した可変インダクタID4とは第1線路21の構成が異なる。具体的に、
図12に示す可変インダクタID6の第1線路21は、第1平行線路21p1及び上側パッド21d2に加えて、第4交差線路21c1と、第5平行線路21p2と、第5交差線路21c2と、を備える。尚、上側パッド21d1は省略されている。
【0136】
第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)に接続された直線状の帯状導体である。第4交差線路21c1は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10から遠ざかるように延びている。つまり、本実施形態における第4交差線路21c1は、第1平行線路21p1の一端(-X側)から手前側(-Y側)に向けて延びている。第4交差線路21c1の奥側の端縁(+Y側)は、第1平行線路21p1の他方の側縁(+Y側)と略同一の位置にある。
【0137】
第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一端(-Y端)に接続された直線状の帯状導体である。第5平行線路21p2は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一方の端部(-Y側)から、信号線路10と平行(長手方向X)に延びている。つまり、本実施形態における第5平行線路21p2は、第4交差線路21c1の一方の端部(-Y側)から右側(+X側)に向けて延びている。
【0138】
第5平行線路21p2は、信号線路10の他方側(-Y側)において、第1平行線路21p1よりも信号線路10から遠い位置に設けられている。言い換えれば、第5平行線路21p2は、第1平行線路21p1が交差方向Yにおいて信号線路10と第5平行線路21p2との間に位置するように、配置されている。
【0139】
図12に示す通り、交差方向Yにおいて、第1平行線路21p1の中心線と第5平行線路21p2の中心線との間の距離は、第2平行線路22p2の中心線と第3平行線路22p3の中心線との間の距離d1(
図8参照)と同じ(又は、同程度)である。尚、第5平行線路21p2の右端(+X側)は、上側パッド21d2の右側(+X側)長辺よりも右方(+X側)に位置する。
【0140】
第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X側)に接続された直線状の帯状導体である。第5交差線路21c2は、一定の幅、一定の厚さ、及び所定の長さを有する長尺板状の導体である。第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X側)から、交差方向Yにおいて信号線路10に近づくように延びている。つまり、本実施形態における第5交差線路21c2は、第5平行線路21p2の一端(+X端)から奥側(+Y側)に向けて延びている。
【0141】
本実施形態における第5交差線路21c2の他端縁(+Y側)は、上側パッド21d2の他方の短辺(+Y側)及び第1平行線路21p1の他方の側縁(+Y側)と交差方向Yにおいて略同一の位置にある。また、上側パッド21d2と第5交差線路21c2とは、長手方向Xにおいて間隔を空けて配されている。また、本実施形態における第5交差線路の左側縁(-X側)は、信号線路10の右端縁(+X側)と長手方向Xにおいて略同一の位置にある。
【0142】
また、本実施形態における第5交差線路21c2の他端(+Y側)は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。言い換えれば、第1線路21の一端は、不図示の導体によって、第2接地導体32と常時電気的に接続されている。
【0143】
以上説明した第4交差線路21c1、第5平行線路21p2、及び第5交差線路21c2は、手前側(-Y側)に凸となるU字状にループしたループ線路を構成している。
【符号の説明】
【0144】
1…信号線路、2,2a,2b…内側線路、3,3a,3b…外側線路、4a,4b…接地導体、7a,7b…電子スイッチ、10…信号線路、21…第1線路、21c1…第4交差線路、21c2…第5交差線路、21p1…第1平行線路、21p2…第5平行線路、22…第2線路、22c1…第1交差線路、22c2,22c2′…第2交差線路、22c3…第3交差線路、22p2…第2平行線路、22p3…第3平行線路、22p4…第4平行線路、31…第1接地導体、32…第2接地導体、41…第1電子スイッチ、42…第2電子スイッチ、100,100A…第1回路、101…コンデンサ、102…スイッチ素子、110…コンデンサ回路、111…コンデンサ、112…スイッチ素子、120…コンデンサ回路、121…コンデンサ、122…スイッチ素子、200,200A,200B…第2回路、201…固定インダクタ、202…可変インダクタ、203…固定インダクタ、204…スイッチ素子、210…インダクタ回路、211…固定インダクタ、212…可変インダクタ、213…固定インダクタ、214…スイッチ素子、220…インダクタ回路、221…固定インダクタ、222…可変インダクタ、223…固定インダクタ、224…スイッチ素子、230…固定インダクタ回路、231,232…固定インダクタ、240…可変インダクタ回路、241…可変インダクタ、242…固定インダクタ、243…スイッチ素子、ID1~ID6…可変インダクタ、L0…共通帰線、Q1,Q2…接続点、PS1~PS3…デジタル移相回路、P100…第1ポート、P200…第2ポート
【手続補正書】
【提出日】2023-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第2ポートとの間に接続された第1回路と、
前記第1回路と共通帰線とに接続された可変インダクタを備える第2回路と、
を備え、
前記可変インダクタは、
信号線路と、
前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、
前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、
前記第1平行線路の一方の端部及び前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、
前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、
前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、
前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を有し、
前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する、
デジタル移相回路。
【請求項2】
前記第2交差線路は、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、及び前記第1平行線路と交差するように延びており、
前記第2線路は、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路と、を更に含む、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項3】
前記第1線路は、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路と、を更に含む、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項4】
前記第1回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路を備え、
前記第2回路は、前記第1回路の一端と前記共通帰線との間、及び前記第1回路の他端と前記共通帰線との間に接続された一対のインダクタ回路を備え、
前記インダクタ回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項5】
前記第1回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路を備え、
前記第2回路は、前記第1回路に並列接続された固定インダクタ回路と、前記固定インダクタ回路と前記共通帰線との間に接続された可変インダクタ回路とを備え、
前記固定インダクタ回路は、直列接続された2つの第1固定インダクタを有する回路であり、
前記可変インダクタ回路は、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記第1固定インダクタの接続点に接続される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項6】
前記第1回路は、直列接続された2つのコンデンサ回路を有する回路であり、
前記第2回路は、前記第1回路と前記共通帰線との間に接続され、
前記第2回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記コンデンサ回路の接続点に接続され、
前記コンデンサ回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続された回路である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第2ポートとの間に接続された第1回路と、
前記第1回路と共通帰線とに接続された可変インダクタを備える第2回路と、
を備え、
前記第1回路は、コンデンサと第1スイッチ素子とが並列接続されたコンデンサ回路を備え、
前記可変インダクタは、
信号線路と、
前記信号線路と平行に延びる第1平行線路を含む第1線路と、
前記信号線路と平行に延びる第2平行線路と、前記第2平行線路の一方の端部から前記信号線路の長手方向と交差する交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第1交差線路と、前記第1交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第3平行線路と、前記第3平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第2交差線路と、を含む第2線路と、
前記第1平行線路の一方の端部及び前記第2平行線路の一方の端部に電気的に接続された第1接地導体と、
前記第2線路の一方の端部に接続された第2接地導体と、
前記第1平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第1電子スイッチと、
前記第2平行線路の他方の端部と前記第2接地導体との間に設けられた第2電子スイッチと、を有し、
前記第1平行線路と前記第2平行線路との間に前記信号線路が位置する、
デジタル移相回路。
【請求項2】
前記第2交差線路は、平面視において前記第2平行線路、前記信号線路、及び前記第1平行線路と交差するように延びており、
前記第2線路は、前記第2交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第4平行線路と、前記第4平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第3交差線路と、を更に含む、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項3】
前記第1線路は、前記第1平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路から遠ざかるように延びる第4交差線路と、前記第4交差線路の一方の端部から前記信号線路と平行に延びる第5平行線路と、前記第5平行線路の一方の端部から前記交差方向において前記信号線路に近づくように延びる第5交差線路と、を更に含む、
請求項1記載のデジタル移相回路。
【請求項4】
前記第2回路は、前記第1回路の一端と前記共通帰線との間、及び前記第1回路の他端と前記共通帰線との間に接続された一対のインダクタ回路を備え、
前記インダクタ回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項5】
前記第2回路は、前記第1回路に並列接続された固定インダクタ回路と、前記固定インダクタ回路と前記共通帰線との間に接続された可変インダクタ回路とを備え、
前記固定インダクタ回路は、直列接続された2つの第1固定インダクタを有する回路であり、
前記可変インダクタ回路は、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記第1固定インダクタの接続点に接続される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。
【請求項6】
前記第1回路は、直列接続された2つの前記コンデンサ回路を有する回路であり、
前記第2回路は、前記第1回路と前記共通帰線との間に接続され、
前記第2回路は、第1固定インダクタと、前記可変インダクタと、第2固定インダクタ及び第2スイッチ素子が並列接続された回路とが直列接続された回路であり、2つの前記コンデンサ回路の接続点に接続される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のデジタル移相回路。