(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088255
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240625BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240625BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240625BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240625BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20240625BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/532 200
A61F13/533
A61F13/534 220
A61F13/536
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203336
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛大
(72)【発明者】
【氏名】手塚 晴美
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA07
3B200BB20
3B200BB21
3B200BB30
3B200CA11
3B200DA13
3B200DA17
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB13
3B200DB20
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】本発明は、排泄部の左右外側の領域に快適な冷涼感を効果的に感じさせることが可能な吸収性物品に関する。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、表面シートと裏面シートと吸収体とを備える。吸収体は、表面シート側に配置された第1吸収層と、裏面シート側に配置された第2吸収層と、第1吸収層及び第2吸収層の間に配置され、第1吸収層及び第2吸収層を接着する第1接着剤と、少なくとも第1吸収層に配置された冷感剤と、を有する。吸収体全体は、横方向に3等分されることで、中央領域と、中央領域の横方向両側に位置する側部領域と、に区分される。第1吸収層の側部領域における冷感剤含有量は、第2吸収層の側部領域における冷感剤含有量よりも多い。側部領域は、第1接着剤によって第1吸収層及び第2吸収層が接着されていない第1非接着領域を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、
前記表面シート側に配置された第1吸収層と、
前記裏面シート側に配置された第2吸収層と、
前記第1吸収層及び前記第2吸収層の間に配置され、前記第1吸収層及び前記第2吸収層を接着する第1接着剤と、
少なくとも前記第1吸収層に配置された冷感剤と、を有し、
前記吸収体全体は、前記横方向に3等分されることで、中央領域と、前記中央領域の前記横方向両側に位置する側部領域と、に区分され、
前記第1吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量よりも多く、
前記側部領域は、前記第1接着剤によって前記第1吸収層及び前記第2吸収層が接着されていない第1非接着領域を有する
吸収性物品。
【請求項2】
前記第1吸収層及び前記第2吸収層は、前記吸収体の前記横方向における端部である側端部において非肌側に折り返された1枚の吸収性シートにより構成され、
前記第1接着剤は、少なくとも前記中央領域に配置され、
前記側部領域における冷感剤含有量は、前記中央領域における冷感剤含有量よりも多い
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性シートは、前記横方向に延びる凸部及び凹部を有する
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1吸収層の前記冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記冷感剤含有量に対し、2.0倍以下である
請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量は、前記第1吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量よりも多く、
前記第2吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量よりも少ない
請求項2から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1吸収層では、前記中央領域から前記側部領域の前記側端部に向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなり、
前記第2吸収層では、前記側部領域の前記側端部から前記中央領域に向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなる
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第2吸収層の前記中央領域では、展開された状態の前記吸収性シートの前記横方向における端部である一対のシート側端部が厚み方向に重なっている
請求項5又は6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記中央領域は、前記縦方向における端部である縦方向端部において、前記第1接着剤によって前記第1吸収層及び前記第2吸収層が接着されていない第2非接着領域を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、
前記第1吸収層の前記中央領域における肌対向面に配置された第2接着剤をさらに有し、
前記第2接着剤の配置された第2接着剤配置領域の前記横方向における最大寸法は、前記第1接着剤の配置された第1接着剤配置領域の前記横方向における最大寸法よりも小さい
請求項1から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンティライナー等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンティライナー等の吸収性物品の着用時において、不感蒸泄や発汗などにより、着用者がムレなどを不快に感じることがある。これに対し、冷感剤を備え、冷涼感を与えることが可能な吸収性物品が知られている。
例えば特許文献1には、表面シートと吸収体との間に冷感剤を備え、表面シートにおいて着用者の排泄部が当接する当接領域における単位面積当りに配置される前記冷感材料の量が、当接領域の外側の領域における単位面積当りの冷感材料の量よりも多いことを特徴とする吸収性物品が開示されている。
例えば特許文献2には、表面シートと吸収体との間に冷感剤を備え、表面シートにおいて当接領域よりも表面シートの平面方向外側に、当接領域における単位面積当りの冷感材料の量よりも単位面積当りの冷感材料の量が多い領域が存在していることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-234031号公報
【特許文献2】特開2010-234028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、冷感剤を備えた吸収性物品は、特にデリケートな排泄部には過度な冷涼感を与えることなく、汗腺が多くムレを感じやすい排泄部の左右外側の領域には、十分でかつ快適な冷涼感を与えることが好ましい。しかしながら、従来の技術では、排泄部の左右外側の領域に快適な冷涼感を効果的に感じさせることが難しかった。
【0005】
本発明は、排泄部の左右外側の領域に快適な冷涼感を効果的に感じさせることが可能な吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸収性物品は、液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する。
前記吸収体は、
前記表面シート側に配置された第1吸収層と、
前記裏面シート側に配置された第2吸収層と、
前記第1吸収層及び前記第2吸収層の間に配置され、前記第1吸収層及び前記第2吸収層を接着する第1接着剤と、
少なくとも前記第1吸収層に配置された冷感剤と、を有する。
前記吸収体全体は、前記横方向に3等分されることで、中央領域と、前記中央領域の前記横方向両側に位置する側部領域と、に区分される。
前記第1吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量よりも多い。
前記側部領域は、前記第1接着剤によって前記第1吸収層及び前記第2吸収層が接着されていない第1非接着領域を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品によれば、排泄部の左右外側の領域に快適な冷涼感を効果的に感じさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【
図2】
図1をII-II線で切断した断面を示す、上記吸収性物品の断面図である。
【
図3】
図2に示す吸収体を拡大した要部断面図である。
【
図4】上記吸収体の吸収性シートを展開した平面図である。
【
図5】
図4をV-V線で切断した断面の一部を示す、上記吸収性シートの部分断面図である。
【
図6】上記吸収性物品の平面図であり、吸収体の第1接着剤と第1非接着領域及び第2非接着領域との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ここでは、吸収性物品の一実施形態としてパンティライナーを例に挙げ、説明する。パンティライナーは、主に非生理期間において、おりもの等の排泄液を吸収するために用いられる吸収性物品である。
【0010】
[パンティライナーの全体構成]
図1に示すように、本発明の吸収性物品としてのパンティライナー1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、パンティライナー1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。本実施形態において、パンティライナー1は縦方向Xに長いパッド型であり、例えば下着のクロッチ部に装着される。
本明細書において、「横方向Y外側」とは、パンティライナー1を横方向Yに2等分する中央から遠ざかる側を意味する。
本明細書において、「縦方向X前方」又は「前方」とは、縦方向Xにおける前方、つまり着用者の腹側に向かう方向を意味する。「縦方向X後方」又は「後方」とは、縦方向Xにおける後方、つまり着用者の背側に向かう方向を意味する。
本明細書において、厚み方向Zにおける肌側とは、パンティライナー1の着用時に着用者側に配置される側を意味する。厚み方向Zにおける非肌側とは、パンティライナー1の着用時に着衣側に配置される側を意味する。
本明細書において、「平面視」とは、パンティライナー1をX-Y平面上に引き伸ばして、厚み方向Zから見た平面視を意味する。
【0011】
図2に示すように、パンティライナー1は、表面シート2と、裏面シート3と、吸収体4と、を備える。さらに本実施形態において、パンティライナー1は、セカンドシート5を備えていてもよい。
図2に示す例では、パンティライナー1は、裏面シート3と、吸収体4と、セカンドシート5と、表面シート2と、がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。パンティライナー1の各部材は、例えば、接着剤、ヒートシール、エンボス加工等によって、適宜接合されている。
【0012】
表面シート2は、パンティライナー1の肌対向面を形成する。表面シート2は、液透過性を有するシート材として構成される。このため、表面シート2は、繊維間の間隙などの図示しない微細な空隙を有している。さらに表面シート2は、
図1及び
図2に示すように、液透過性を高める等の観点から、視認できる開孔21を有していてもよい。
表面シート2を構成するシート材は、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において使用可能なシート材であれば特に限定されない。例えば、表面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
図1に示すように、表面シート2は、例えば、パンティライナー1の全面に配置されている。
また、表面シート2は、エンボスパターン22を有していてもよい。但し、表面シート2の構成は、
図1及び
図2に示す例に限定されない。
【0013】
裏面シート3は、パンティライナー1の非肌対向面を形成する。裏面シート3は、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等で形成される。このようなシート材は、例えば、液難透過性及び/又は撥水性等の機能を有することが好ましい。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び/又は透湿性を有することが好ましい。
裏面シート3は、例えばパンティライナー1の全面に配置され、表面シート2と同一の平面形状を有することが好ましい。
図2に示すように、裏面シート3には、パンティライナー1を下着に固定するための粘着剤31が配置されていてもよい。粘着剤31は、例えばホットメルト粘着剤等によって構成される。
【0014】
吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に配置される。例えば、吸収体4は、第3接着剤47によって裏面シート3と接着されていてもよい。
吸収体4は、排泄液を吸収可能な吸収性の材料を含んでいればよい。
図2に示すように、吸収体4は、薄型化して装着感を高める等の観点から、吸収性シート40を含むことが好ましい。吸収性シート40は、例えば、吸収紙又は不織布等で構成され、吸水性ポリマーを含んでいてもよい。吸収体4の詳細な構成については、後述する。
【0015】
吸収体4は、特に限定されないが、排泄液を確実に吸収する観点から、パンティライナー1の横方向Y及び縦方向Xにおける中央部に配置されることが好ましい。また、吸収体4の平面形状は、パンティライナー1としての装着性を高める観点から、表面シート2、裏面シート3及びセカンドシート5よりも小さい形状であることが好ましい。具体的な吸収体4の平面形状としては、
図1に示す矩形状が挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
セカンドシート5は、例えば、表面シート2及び吸収体4の間に配置される。セカンドシート5は、例えば、排泄液の透過や保持等の機能を有するシート材で構成される。セカンドシート5は、例えば、パンティライナー1の吸収性を高める機能、吸収体4に吸収された排泄液の表面シート2への液戻りを低減させる機能、表面シート2から液を引き込む機能、の少なくとも一つの機能を有していることが好ましい。
セカンドシート5には、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。セカンドシート5は、例えば不織布又は吸収紙等で構成され得る。
また、セカンドシート5は、十分な保液機能を発揮する観点から、吸収体4よりも大きい平面形状を有することが好ましい。例えば、セカンドシート5は、表面シート2及び裏面シート3と同一の平面形状を有し、パンティライナー1の全面に配置されていてもよい。
【0017】
[吸収体の構成]
図3に示す例において、吸収体4は、表面シート2側に配置された第1吸収層41と、裏面シート3側に配置された第2吸収層42と、第1吸収層41及び第2吸収層42の間に配置された第1接着剤43と、を有する。吸収体4は、例えば、第1吸収層41及び第2吸収層42の2層構造を有している。本実施形態では、1枚の吸収性シート40が所定の位置で折り返されることで、第1吸収層41及び第2吸収層42が構成されている。
【0018】
第1吸収層41は、吸収体4の肌側の層であり、肌対向面4tを有する。第2吸収層42は、吸収体4の非肌側の層である。第1吸収層41及び第2吸収層42は、
図2に示すように、それぞれシート状に構成されることが好ましいが、縦方向X及び横方向Yに沿って平面上に延びる形状であればよい。第1吸収層41及び第2吸収層42がシート状に構成される場合、第1吸収層41及び第2吸収層42の各層は、1枚のシートで構成されてもよく、分割された複数のシートで構成されてもよい。
図2に示す例では、第1吸収層41は1枚のシートで構成され、第2吸収層42が2枚のシートで構成されている。
【0019】
第1接着剤43は、第1吸収層41及び第2吸収層42を接着する。第1接着剤43は、特に限定されないが、好ましくは合成樹脂を主成分とする接着剤であり、より好ましくはホットメルト接着剤である。ホットメルト接着剤としては、スチレン系、オレフィン系等が挙げられる。スチレン系ホットメルト接着剤としては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SBSの水素添加物であるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、及びこれらの2種以上を混合したブレンド系ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0020】
第1接着剤43の塗工パターンは特に限定されず、第1接着剤43の塗工部と非塗工部とが混在するように間欠に塗工されてもよいし、連続的に塗工されてもよい。第1接着剤43が配置された第1接着剤配置領域43rの柔軟性を高める観点からは、第1接着剤43は間欠的に塗工されることが好ましい。間欠塗工パターンの例としては、スパイラル状、サミット状、オメガ状、カーテン状、ストライプ状等が挙げられる。
なお、第1接着剤配置領域43rとは、平面視において第1接着剤43の塗工部の外縁を囲んで得られた領域を意味し、非塗工部が含まれていてもよい。
【0021】
吸収体4全体は、横方向Yに3等分されることで、中央領域4aと、2つの側部領域4bと、に区分される。中央領域4aは、3等分された吸収体4の横方向Y中央に位置する領域である。側部領域4bは、中央領域4aの横方向Y両側に位置する領域である。中央領域4a及び側部領域4bは、それぞれ、第1吸収層41と、第2吸収層42とを含む。以下では、第1吸収層41における中央領域4a及び2つの側部領域4bと、第2吸収層42における中央領域4a及び2つの側部領域4bと、の合計6つの領域の冷感剤の分布及び第1接着剤43の配置等について説明する。
【0022】
着用者に冷涼感を与えて快適性を高める観点から、吸収体4は冷感剤Cを有する。冷感剤Cは、揮発性を有し、着用者の皮膚又は粘膜表面の温度受容器(例えばTRPM8レセプター)を刺激する。これにより、冷感剤Cは、実際の温度変化を伴わずに、着用者に冷涼感を与えることができる。
なお典型的に、パンティライナー1等の吸収性物品は、着用前には個包装体として密封されており、吸収体4が空気と接触しにくい状態である。このため、個包装体の開封前には、冷感剤Cの揮発が抑制されている。一方で、個包装体が開封されると、表面シート2が開放され、冷感剤Cの揮発が開始される。
【0023】
冷感剤Cを構成する成分としては、例えば、シクロヘキシル誘導体、シクロヘキサノール誘導体、カルボキサミド類、ケトン類等が挙げられる。シクロヘキシル誘導体としては、例えば、乳酸メンチル、メンチルエチルアミノシュウ酸、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(l-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、コハク酸メンチル、3-(l-メントキシ)エタン-1-オール、3-(l-メントキシ)プロパン-1-オール、3-(l-メントキシ)ブタン-1-オール、l-メンチル-4-ヒドロキシペンタノエート、l-メンチル-3-ヒドロキシブチレート等が挙げられる。シクロヘキサノール誘導体としては、メントール、p-メンタン-3,8-ジオール、イソプレゴール等が挙げられる。カルボキサミド類としては、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(N-エチル-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド)、N,2,3-トリメチル-2-(l-メチルエチル)-ブタンアミド、l-メンチル酢酸N-エチルアミド等が挙げられる。ケトン類としては、例えばカンファーが挙げられる。本実施形態の冷感剤Cは、列記したような1種又は複数種の冷感剤成分を含むことが好ましい。
冷感剤Cは、着用後素早く冷涼感を提供するとともに、穏やかな冷涼感を持続的に提供する観点から、メントール、カンファー又は乳酸メンチルの少なくとも一つを含むことが好ましく、メントール及び乳酸メンチルを含むことがより好ましい。
【0024】
冷感剤Cは、例えば、噴霧、塗布、浸漬、転写等の種々の方法により吸収体4に配置される。後述するように、排泄液が接触しにくい側部領域4bにおいて冷涼感を効果的に発揮させる観点からは、冷感剤Cが水分と接触して溶解する可溶性の被膜(マイクロカプセルなど)に内包されていないことが好ましい。例えば、冷感剤Cは、冷感剤と液状の媒体とを含む冷感剤含有液として、吸収体4に付与されることが好ましい。冷感剤含有液は、冷感剤Cを効率よく吸収体4に配置する観点から、吸収体4に塗布されることが好ましい。冷感剤含有液における液状の媒体は、吸収体4との親和性を高める観点から、親水性の媒体であることが好ましく、一例としてジプロピレングリコール等が挙げられる。
冷感剤含有液が吸収体4の一部に付与された場合には、冷感剤含有液が吸収体4内で拡散することがある。そこで、以下で説明する冷感剤Cの分布は、吸収性物品の製造後から長時間(例えば7日以上)が経過した後の、冷感剤含有液が十分拡散した状態の分布とする。
【0025】
冷感剤Cは、少なくとも第1吸収層41に配置されている。
図3に示す例において、冷感剤Cは、第1吸収層41と第2吸収層42とに配置されている。なお、
図3において、吸収体4における冷感剤Cの分布例を斜線のパターンで表しており、斜線の密度は、冷感剤Cの単位面積当たりの含有量を模式的に表している。
冷感剤Cが、肌に直接触れない吸収体4に配置されていることで、冷感剤Cによる過度な刺激が抑制される。また、冷感剤Cが第1吸収層41に配置されていることで、冷感剤Cを肌に近い位置に配置でき、過度な刺激は抑制しつつも快適な冷涼感を与えることができる。
【0026】
さらに、冷感剤Cは、より快適な冷涼感を与えるため、特徴的な分布を有することが好ましい。例えば、膣口等の排泄部及びその近傍は、粘膜を多く含み、冷感剤Cによって刺激を感じやすい部分である。一方で、排泄部の左右外側の領域には、汗腺が多く存在する。このため、この領域では不感蒸泄や発汗が多く、ムレなどの不快感が生じやすい。したがって、着用者に快適な冷涼感を与えるためには、排泄部の左右外側の領域に対向する位置に冷感剤Cを確実に配置するとともに、この冷感剤Cを効果的に揮発させる構成とすることが好ましい。
【0027】
このような観点から、第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤含有量は、第2吸収層42の側部領域4bにおける冷感剤含有量よりも多い。これにより、側部領域4bの肌側の第1吸収層41に十分な量の冷感剤Cを配置することができ、排泄部の左右外側の領域に冷涼感を与えやすくなる。
【0028】
(冷感剤含有量の測定方法)
第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤含有量と、第2吸収層42の側部領域4bにおける冷感剤含有量は、以下のように測定することができる。
まず、吸収性物品を分解及び切断して測定用サンプルを準備する。具体的には、常法に従って吸収性物品から吸収体4を取り出す。そして、吸収体4全体を横方向Yに3等分して切断し、その横方向Y外側に位置する側部領域4bを切り出す。そして、側端部4sの折れ目に沿って側部領域4bを切断し、第1吸収層41と第2吸収層42とを切り離す。これにより、第1吸収層41の側部領域4bのサンプルと、第2吸収層42の側部領域4bのサンプルとが得られる。なお、冷感剤Cの揮発を抑制する観点から、サンプルの準備は、例えば5℃のチャンバー内で行われることが好ましい。また、サンプルの採取元の吸収性物品は、冷感剤含有液の拡散を考慮して、製造後7日以上経過したものとする。
続いて、採取されたサンプルの冷感剤を溶媒(メタノール等)で抽出し、抽出溶液をガスクロマトグラフィ法(GC)で分析する。検出器としては、例えば、水素炎イオン化型検出器(FID)(例えばアジレント・テクノロジー株式会社製「7890A」)を用いることができる。具体的には、予め冷感剤を構成する化合物の濃度とピーク面積の関係を検量線化しておき、当該検量線を元に定量作業を行う。これにより、測定用サンプルにおける冷感剤を検出することができるともに、測定対象領域の冷感剤含有量を測定することができる。
【0029】
また、第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤Cを効果的に揮発させる観点から、側部領域4bは、第1接着剤43によって第1吸収層41及び第2吸収層42が接着されていない第1非接着領域44を有する。第1非接着領域44は、側部領域4bの少なくとも一部に配置され、好ましくは、吸収体4の横方向Yにおける端部である側端部4sに沿って配置される。
【0030】
第1非接着領域44は、第1接着剤43によって接着されていないため、第1接着剤配置領域43rよりも高い通気性を有する。側部領域4bに第1非接着領域44が配置されることで、側部領域4bを通る厚み方向Zに沿った空気の流れを妨げにくくなり、第1吸収層41の側部領域4bからの冷感剤Cの揮発を促進することができる。また、第1吸収層41の側部領域4bの肌側と非肌側の両面が空気に接することができ、両面からの冷感剤Cの揮発を促進することができる。
【0031】
さらに、第1吸収層41の側部領域4bから揮発した冷感剤Cは、微細な空隙や開孔21を有する表面シート2を通過して、着用者の肌へ到達する。ここで、表面シート2の側部領域4bの肌側に位置する部分は、排泄部の周囲に対向するため、粘稠性の高い排泄液に接しにくく、通気性が維持されやすい。このため、第1吸収層41の側部領域4bから揮発した冷感剤Cは、空気とともに排泄部の左右外側の領域の肌に到達しやすく、当該領域における冷涼感が効果的に発揮されやすい。また、表面シート2に直接冷感剤Cが配置されていないため、過度な刺激を抑え、快適な冷涼感を与えることができる。
【0032】
このように、本実施形態のパンティライナー1(吸収性物品)では、第1吸収層41の側部領域4bに冷感剤Cを十分配置することに加えて、側部領域4bに第1非接着領域44を配置する。これにより、冷感剤Cによる肌への強い刺激を抑制しつつも、第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤Cの揮発と、この冷感剤Cの肌への到達を促進することができる。したがって、特にムレなどの不快感を生じやすい、排泄部の左右外側の領域に快適な冷涼感を効果的に与えることができ、着用者の装着感を高めることができる。
【0033】
[吸収性シートで形成された吸収体の構成例]
例えば
図3に示すように、吸収体4の第1吸収層41及び第2吸収層42は、吸収体4の側端部4sにおいて非肌側に折り返された1枚の吸収性シート40により構成されることが好ましい。この例において、第1吸収層41は、側端部4sにおいて第2吸収層42と接続される。
この吸収体4は、例えば
図4の平面図に示すような1枚の展開された状態の吸収性シート40を準備し、この吸収性シート40の一対のシート側部40bを非肌側に折り曲げることで形成される。シート側部40bは、展開された状態の吸収性シート40の横方向Yにおける側部であり、例えば吸収性シート40を横方向Yに約4等分した場合の外側の部分である。吸収性シート40のうち、一対のシート側部40bに挟まれた中央の部分をシート中央部40aとすると、シート中央部40aが第1吸収層41、一対のシート側部40bが第2吸収層42を構成する。また、吸収性シート40において、シート中央部40aとシート側部40bとの境界線が、折り畳まれた吸収体4の側端部4sを構成する。
【0034】
折り畳まれた吸収性シート40では、
図3のように中央領域4aにシート側端部40sが配置される。シート側端部40sからの開きを抑制して吸収体4の形状を維持する観点から、第1接着剤43は、少なくとも中央領域4aに配置されていることが好ましい。第1接着剤43は、中央領域4aのみに配置されていてもよく、あるいは中央領域4aから側部領域4bの一部まで延びていてもよい。但し、側部領域4bに第1非接着領域44を設けるため、第1接着剤43は側端部4sから離間している。
【0035】
上記構成において、排泄部の左右外側の領域により効果的に冷涼感を与える観点から、側部領域4bにおける冷感剤含有量は、中央領域4aにおける冷感剤含有量よりも多いことが好ましい。側部領域4bにおける冷感剤含有量は、吸収体4全体を横方向Yに3等分した場合の左右の領域における冷感剤含有量であり、第1吸収層41の側部領域4bの冷感剤含有量と第2吸収層42の側部領域4bの冷感剤含有量の合計である。中央領域4aにおける冷感剤含有量は、吸収体4全体を横方向Yに3等分した場合の中央の領域における冷感剤含有量であり、第1吸収層41の中央領域4aの冷感剤含有量と第2吸収層42の中央領域4aの冷感剤含有量の合計である。
【0036】
具体的に、側部領域4b及び中央領域4aの各々における冷感剤含有量は、上述の「冷感剤含有量の測定方法」と同様に測定することができる。測定用サンプルについては、折り畳まれた状態の吸収体4を横方向Yに3等分して3つの領域に切断することで、中央領域4aと側部領域4bの各領域のサンプルを得ることができる。
【0037】
上記構成では、側部領域4bの冷感剤含有量が相対的に多いことから、汗腺の多い、排泄部の左右外側の領域に十分に冷涼感を与えることができる。一方で、中央領域4aの冷感剤含有量が相対的に少ないことから、刺激に対して特に敏感な排泄部に過度な冷涼感を与えることを抑制でき、着用者の不快感を抑制できる。
【0038】
特に、冷感剤Cが冷感剤含有液として付与される場合には、上記構成が得られやすい。例えば、第1吸収層41に冷感剤含有液を付与した場合、側端部4sにおいて第1吸収層41から第2吸収層42へ冷感剤含有液が拡散し得る。これにより、側部領域4bにおいて第1吸収層41と第2吸収層42の双方に十分な量の冷感剤Cを含有させることができ、側部領域4b全体の冷感剤含有量を高めることができる。
【0039】
さらに、側部領域4bが第1非接着領域44を有することから、側部領域4bでは、第1吸収層41及び第2吸収層42の表裏がいずれも空気に接することになり、冷感剤Cの揮発がより効果的に促進される。これにより、着用者の排泄部の左右外側の領域に、より効果的で快適な冷涼感を与えることができ、装着感をより高めることができる。
【0040】
加えて、第1接着剤43が中央領域4aに配置されることで、吸収性シート40の折り畳み構造が維持されやすくなる。これにより、吸収体4の壊れを抑制することができ、吸収体4の急激な通気性の上昇を抑制することができる。したがって、上記構成により、冷感剤Cの持続的な揮発を実現でき、快適かつ持続的な冷涼感を提供することができる。
【0041】
また、吸収性シート40は、
図5に示すように、横方向Yに延びる凸部40c及び凹部40dを有することが好ましい。これにより、冷感剤含有液が吸収性シート40への塗布後に拡散する場合に、横方向Yに延びる凹部40d又は凸部40cに沿って冷感剤Cが拡散しやすくなる。このため、冷感剤含有液の拡散によって、側部領域4bにおける冷感剤含有量を高めることができる。また、吸収性シート40が凸部40c及び凹部40dを有することで、吸収性シート40の通気性を高めるとともに、嵩高くなり吸収性も高めることができる。
凸部40c及び凹部40dを有する吸収性シート40は、例えばクレープ処理された吸収紙、又は凹凸を含む不織布で構成されることが好ましく、冷感剤含有液の拡散を促進する観点からは、クレープ処理された吸収紙で構成されることがより好ましい。
【0042】
また、第1吸収層41の冷感剤含有量は、第2吸収層42の冷感剤含有量に対し、2.0倍以下であることが好ましい。これにより、第1吸収層41と第2吸収層42の冷感剤含有量の差を小さくすることができ、第2吸収層42の冷感剤含有量を確保しやすくなる。この結果、例えば、より肌に近く空気と接触しやすい第1吸収層41から冷感剤Cが揮発した後であっても、第2吸収層42から冷感剤Cの揮発が持続しやすくなる。したがって、この構成により、着用者に持続的な冷涼感を与えやすくなる。
なお、このような冷感剤Cの分布は、例えば、吸収性シート40が横方向Yに延びる凸部40c及び凹部40dを有し、冷感剤含有液の横方向Yの拡散が促進されることで実現することができる。
【0043】
具体的に、第1吸収層41及び第2吸収層42の各々における冷感剤含有量は、上述の「冷感剤含有量の測定方法」と同様に測定することができる。測定用サンプルについては、折り畳まれた吸収性シート40を吸収体4の側端部4sに沿って切り開くことで、第1吸収層41のサンプルと、第2吸収層42のサンプルとを得ることができる。
【0044】
また、
図3を参照し、第1吸収層41の中央領域4aにおける冷感剤含有量は、第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤含有量よりも多いことが好ましい。加えて、第2吸収層42の中央領域4aにおける冷感剤含有量は、第2吸収層42の側部領域4bにおける冷感剤含有量よりも少ないことが好ましい。つまり、第1吸収層41において冷感剤含有量が多い領域と、第2吸収層42において冷感剤含有量が少ない領域とが、中央領域4aにおいて厚み方向Zに重なっていることが好ましい。
【0045】
中央領域4aには第1接着剤43が配置されているため、上述のように通気性が低下した状態となり得る。このため、着用時において、第1吸収層41の中央領域4aからの急激な冷感剤Cの揮発が抑制され、中央領域4aの冷感剤Cが持続的かつ緩やかに揮発し得る。さらに、第2吸収層42の中央領域4aにおける冷感剤含有量を少なくすることで、中央領域4a全体からの冷感剤Cの揮発量を抑制できる。これらにより、着用者のデリケートな排泄部への刺激を抑えつつ、快適で持続的な冷涼感を与えることができる。また、第2吸収層42の中央領域4aにおける冷感剤含有量を少なくすることで、吸収性シート40全体における冷感剤Cの使用量の増加を抑制できる。
【0046】
上記構成におけるより好ましい例について説明する。
第1吸収層41では、中央領域4aから側部領域4bの側端部4sに向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなり、第2吸収層42では、側部領域4bの側端部4sから中央領域4aに向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなることが好ましい。このように、冷感剤含有量が横方向Yに沿って徐々に変化することで、着用者に局所的で不自然な冷涼感を与えることなく、自然で快適な冷涼感を与えることができる。
【0047】
このような冷感剤Cの分布を有する吸収体4は、例えば
図4を参照し、吸収性シート40のシート中央部40aに冷感剤含有液を塗布し、冷感剤含有液が吸収性シート40の横方向Y外側に拡散することで、形成される。これにより、冷感剤Cの使用量の増加を抑制できるとともに、上述の冷感剤Cの分布を安定して実現することができる。
【0048】
具体的に、第1吸収層41及び第2吸収層42における冷感剤含有量は、上述の「冷感剤含有量の測定方法」と同様に測定することができる。但し、測定用サンプルについては、以下のように準備する。まず、折り畳まれた吸収性シート40を吸収体4の側端部4sに沿って切り開くことで、第1吸収層41のサンプルと、第2吸収層42のサンプルとを得る。さらに、第1吸収層41のサンプルを、横方向Yに3等分に切断する。同様に、第2吸収層42のサンプルを、横方向Yに3等分に切断する。これにより、切断片を各位置のサンプルとして、各サンプルの冷感剤含有量を上述の方法で測定する。第1吸収層41の複数のサンプルにおいて、横方向Y中央側に位置するサンプルから側端部4s側に位置するサンプルに向かって、順に冷感剤含有量が少なくなっている場合、「第1吸収層41において、中央領域4aから側部領域4bの側端部4sに向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなる」構成であると判定する。同様に、第2吸収層42の複数のサンプルにおいて、側端部4s側に位置するサンプルから横方向Y中央側に位置するサンプルに向かって、順に冷感剤含有量が少なくなっている場合、「第2吸収層42では、側部領域4bの側端部4sから中央領域4aに向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなる」構成であると判定する。
【0049】
また、
図3に示す吸収体4において、第2吸収層42の中央領域4aでは、折り返された吸収性シート40の一対のシート側端部40sが重なって配置されている。冷感剤Cの含有量の少ないシート側端部40sが重なることで、第2吸収層42の中央領域4aにおける冷感剤Cの含有量の増加が抑制される。これにより、冷感剤Cの揮発量の局所的な増加を抑制することができ、不自然な冷涼感をより確実に抑制することができる。また、シート側端部40sが重なる中央領域4aに第1接着剤43が配置されることで、吸収体4の折り畳み構造をより確実に維持することができる。これにより、吸収体4の折り畳み構造の壊れによる急激な冷感剤Cの揮発を抑制でき、持続的で快適な装着感を実現することができる。
【0050】
[吸収体における接着剤の配置例]
上述のように、第1吸収層41と第2吸収層42の間には第1接着剤43が配置されているが、第1接着剤43が配置されていない領域では、通気性が高められ、冷感剤Cの揮発に寄与し得る。したがって、排泄部の前方及び/又は後方に効率よく冷涼感を与える観点からは、第1非接着領域44の他にも、縦方向Xの端部に第1接着剤43が配置されていない領域を設けることが好ましい。
【0051】
このような観点から、
図6に示すように、中央領域4aは、縦方向Xにおける縦方向端部4eにおいて、第1接着剤43によって第1吸収層41及び第2吸収層42が接着されていない第2非接着領域45を有していることが好ましい。第2非接着領域45は、縦方向X前方の縦方向端部4e又は縦方向X後方の縦方向端部4eの少なくともいずれか一方に配置されていればよく、縦方向X前方及び後方の縦方向端部4eにそれぞれ配置されていることが好ましい。なお、
図6において、第2非接着領域45を密なドットパターンで表し、第1非接着領域44を粗いドットパターンで表している。
【0052】
これにより、側部領域4bだけでなく、中央領域4aの縦方向端部4eの通気性も高められ、吸収体4の周縁部の通気性が高められる。したがって、着用直後から吸収体4の周縁部の冷感剤Cが揮発しやすくなり、排泄部の周囲に冷涼感を与えやすくなる。より具体的に、排泄部の前方の領域は、陰毛等の影響により発汗やムレを生じやすく、排泄部の後方の領域は、臀部や座位の影響により発汗やムレを生じやすい。このため、中央領域4aの縦方向端部4eに第2非接着領域45を配置することで、このような不快感を生じやすい領域に対して、冷感剤Cによる冷涼感を効果的に与えることができる。したがって、着用者の装着感をより高めることができる。
【0053】
また、上述の構成では、第1吸収層41及び第2吸収層42の間に配置された第1接着剤43の配置について説明したが、吸収体4は、他の部材と接着されるための接着剤をさらに有していてもよい。
【0054】
図2に示すように、例えば吸収体4は、第1吸収層41の肌対向面4tに配置された第2接着剤46をさらに有していることが好ましい。この第2接着剤46は、吸収体4と厚み方向Zの肌側に隣り合う部材とを接着する。例えば
図2に示す構成において、第2接着剤46は、吸収体4とセカンドシート5とを接着する。また、パンティライナー1がセカンドシートを有さない場合、第2接着剤46は、吸収体4と表面シート2とを接着してもよい。
【0055】
第2接着剤46は、吸収体4とその肌側の部材との位置ずれやパンティライナー1の壊れを防止することができる。その一方で、第2接着剤46の配置された第2接着剤配置領域46rが広すぎる場合、第1吸収層41からの冷感剤Cの揮発が抑制され得る。
このため、
図2に示すように、第2接着剤46は、第1吸収層41の中央領域4aにおける肌対向面4tに配置されることが好ましい。これに加えて、第2接着剤配置領域46rの横方向Yにおける寸法D2は、第1接着剤配置領域43rの横方向Yにおける寸法D1よりも小さいことが好ましい。なお、第2接着剤配置領域46rとは、平面視において第2接着剤46の塗工部の外縁を囲んで得られた領域を意味し、非塗工部が含まれていてもよい。また、寸法D1は、第1接着剤配置領域43rの横方向Yにおける最大寸法とする。寸法D2は、第2接着剤配置領域46rの横方向Yにおける最大寸法とする。
【0056】
上記構成により、第1吸収層41の側部領域4bにおいて第2接着剤46に覆われる領域が少なくなり、第1吸収層41の側部領域4bからの冷感剤Cの揮発が抑制されにくくなる。一方で、第2接着剤46により、中央領域4aからの冷感剤Cの揮発は抑制され、排泄部への冷感剤Cの刺激がより軽減される。さらに、中央領域4aからの冷感剤Cの揮発が抑制されることで、冷感剤Cによる冷涼感が持続し得る。これにより、着用時の発汗やムレなどの不快感を抑制しつつ、持続的な冷涼感を提供することができ、パンティライナー1の快適性を高めることができる。
【0057】
[冷感剤含有量に関する数値例]
第2吸収層42の側部領域4bの冷感剤含有量に対する、第1吸収層41の側部領域4bの冷感剤含有量の倍率は、排泄部の左右外側の領域に十分な冷涼感を与える観点から、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上である。また、当該倍率は、側部領域4b全体に十分な量の冷感剤Cを含有させる観点から、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.7倍以下である。
中央領域4aの冷感剤含有量に対する、側部領域4bの冷感剤含有量の倍率は、排泄部の左右外側の領域に十分な冷涼感を与える観点から、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上である。また、当該倍率は、局所的で不自然な冷涼感を防止する観点から、好ましくは1.7倍以下、より好ましくは1.5倍以下である。
第2吸収層42の冷感剤含有量に対する、第1吸収層41の冷感剤含有量の倍率は、十分な冷涼感を与える観点から、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。また、当該倍率は、上述のように冷涼感を持続させる観点から、好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.7倍以下である。
第1吸収層41の側部領域4bにおける冷感剤含有量に対する、第1吸収層41の中央領域4aにおける冷感剤含有量の倍率は、例えば、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。また、当該倍率は、局所的で不自然な冷涼感を防止する観点から、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.5倍以下である。
第2吸収層42の側部領域4bにおける冷感剤含有量に対する、第2吸収層42の中央領域4aにおける冷感剤含有量の倍率は、側部領域4bにおける冷感剤含有量を十分に確保する観点から、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。また、当該倍率は、局所的で不自然な冷涼感を防止する観点から、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは4.0倍以下である。
【0058】
[接着領域及び非接着領域に関する数値例]
吸収体4の横方向Yにおける最大寸法に対する、第1接着剤配置領域43rの横方向Yにおける寸法D1の割合は、吸収体4の形状を維持する観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。また、当該割合は、第1非接着領域44を十分に確保する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
吸収体4の縦方向Xにおける最大寸法に対する、第1接着剤配置領域43rの縦方向Xにおける最大寸法の割合は、吸収体4の形状を維持する観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。また、当該割合は、第2非接着領域45を十分に確保する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。
第1接着剤配置領域43rの横方向Yにおける寸法D1に対する、第2接着剤配置領域46rの横方向Yにおける寸法D2の割合は、吸収体4とその肌側に隣接する部材とを確実に接合する観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。また、当該割合は、側部領域4bからの冷感剤Cの揮発を促進する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
吸収体4の横方向Yにおける最大寸法に対する、各第1非接着領域44の横方向Yにおける最大寸法の割合は、側部領域4bからの冷感剤Cの揮発を促進する観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。また、当該割合は、吸収体4の形状を維持する観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
吸収体4の縦方向Xにおける最大寸法に対する、各第2非接着領域45の縦方向Xにおける最大寸法の割合は、吸収体4の縦方向端部4eからの冷感剤Cの揮発を促進する観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。また、当該割合は、吸収体4の形状を維持する観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。
【0059】
[吸収性シートの坪量]
吸収性シート40は、薄くて下着と一体化しているような装着感を与えつつ、十分な吸収性を有することが好ましい。このような観点から、吸収性シート40の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは13g/m2以上であり、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下である。
【0060】
[吸収性物品の寸法例]
吸収性物品がパンティライナー1の場合、所望の吸収性を得るとともに、下着と一体化しているような快適な装着感を提供する観点から、パンティライナー1が以下のような寸法を有していることが好ましい。
パンティライナー1の縦方向Xにおける最大寸法は、好ましくは100mm以上、より好ましくは120mm以上であり、好ましくは200mm以下、より好ましくは180mm以下である。
パンティライナー1の横方向Yにおける最小寸法は、好ましくは40mm以上、より好ましくは43mm以上であり、好ましくは55mm以下、より好ましくは50mm以下である。
パンティライナー1の横方向Yにおける最大寸法は、好ましくは45mm以上、より好ましくは50mm以上であり、好ましくは65mm以下、より好ましくは60mm以下である。
【0061】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0062】
吸収体4は、冷感剤Cに加えて、香料を含んでいてもよい。これにより、排泄液や汗などの臭いを香料によってマスキングすることができる。香料は、大気圧下で揮発し、常温常圧の環境下でその香気を知覚し得る通常の香料であって、吸収性物品において使用可能なものを用いることができる。また、香料は、吸収体4以外のセカンドシート5等に含まれていてもよい。なお、パンティライナー1は、香料以外にも、例えば抗菌剤又は消臭剤等の機能剤を含んでいてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、第1吸収層41及び第2吸収層42が吸収性シート40で構成されると説明したが、これに限定されない。例えば、第1吸収層41及び第2吸収層42が、相互に分離したシート材等の吸収層で構成されていてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、パンティライナー1がセカンドシート5を備える例を挙げたが、本発明の吸収性物品は、セカンドシートを備えなくてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、吸収性物品としてパンティライナーの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、生理用ナプキン、尿取りパッド、使い捨ておむつ等であってもよい。
【0066】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に配置された吸収体と、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向と、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、
前記表面シート側に配置された第1吸収層と、
前記裏面シート側に配置された第2吸収層と、
前記第1吸収層及び前記第2吸収層の間に配置され、前記第1吸収層及び前記第2吸収層を接着する第1接着剤と、
少なくとも前記第1吸収層に配置された冷感剤と、を有し、
前記吸収体全体は、前記横方向に3等分されることで、中央領域と、前記中央領域の前記横方向両側に位置する側部領域と、に区分され、
前記第1吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記側部領域における冷感剤含有量よりも多く、
前記側部領域は、前記第1接着剤によって前記第1吸収層及び前記第2吸収層が接着されていない第1非接着領域を有する
吸収性物品。
<2>
前記第2吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量に対する前記第1吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量の比率が、1.1倍以上2.0倍以下、好ましくは1.3倍以上1.7倍以下である
前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記第1吸収層及び前記第2吸収層の前記中央領域の前記冷感剤含有量に対する前記第1吸収層及び前記第2吸収層の前記側部領域の前記冷感剤含有量の比率が、1.1倍以上1.7倍以下、好ましくは1.2倍以上1.5倍以下である
前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記第1吸収層及び前記第2吸収層は、前記吸収体の前記横方向における端部である側端部において非肌側に折り返された1枚の吸収性シートにより構成され、
前記第1接着剤は、少なくとも前記中央領域に配置され、
前記側部領域における冷感剤含有量は、前記中央領域における冷感剤含有量よりも多い
前記<3>に記載の吸収性物品。
<5>
前記吸収体の前記横方向における最大寸法に対する、前記第1接着剤が配置された前記第1接着剤配置領域の前記横方向における寸法の割合が、50%以上90%以下、好ましくは60%以上85%以下である
前記<4>に記載の吸収性物品。
<6>
前記吸収体の前記縦方向における最大寸法に対する、前記第1接着剤が配置された前記第1接着剤配置領域の前記縦方向における寸法の割合が、50%以上90%以下、好ましくは60%以上85%以下である
前記<4>又は<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記吸収性シートは、前記横方向に延びる凸部及び凹部を有する
前記<4>から<6>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<8>
前記第1吸収層の前記冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記冷感剤含有量に対し、2.0倍以下、好ましくは1.2倍以上2.0倍以下、より好ましくは1.5倍以上1.7倍以下である
前記<4>から<7>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<9>
前記第1吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量は、前記第1吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量よりも多く、
前記第2吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量は、前記第2吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量よりも少ない
前記<4>から<8>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<10>
前記第1吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量に対する前記第1吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量の比率が、1.3倍以上3.0倍以下、好ましは1.5倍以上2.5倍以下である、
前記<4>から<9>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<11>
前記第2吸収層の前記側部領域における前記冷感剤含有量に対する前記第2吸収層の前記中央領域における前記冷感剤含有量の比率が、1.3倍以上5.0倍以下、好ましは1.5倍以上4.0倍以下である、
前記<4>から<10>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<12>
前記第1吸収層では、前記中央領域から前記側部領域の前記側端部に向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなり、
前記第2吸収層では、前記側部領域の前記側端部から前記中央領域に向かうに従い、徐々に冷感剤含有量が少なくなる
前記<9>から<11>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<13>
前記第2吸収層の前記中央領域では、展開された状態の前記吸収性シートの前記横方向における端部である一対のシート側端部が厚み方向に重なっている
前記<11>又は<12>に記載の吸収性物品。
<14>
前記中央領域は、前記縦方向における端部である縦方向端部において、前記第1接着剤によって前記第1吸収層及び前記第2吸収層が接着されていない第2非接着領域を有する
前記<1>から<13>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<15>
前記吸収体は、
前記第1吸収層の前記中央領域における肌対向面に配置された第2接着剤をさらに有し、
前記第2接着剤の配置された第2接着剤配置領域の前記横方向における最大寸法は、前記第1接着剤の配置された第1接着剤配置領域の前記横方向における最大寸法よりも小さい
前記<1>から<14>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<16>
前記第1接着剤領域の前記横方向における寸法に対する前記第2接着剤領域の前記横方向における寸法の比率が、50%以上90%以下、好ましくは60%以上80%以下である
前記<15>に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0067】
1…パンティライナー(吸収性物品)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
40…吸収性シート
41…第1吸収層
42…第2吸収層
43…第1接着剤
44…第1非接着領域