(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008826
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20240112BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240112BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61F13/49 312Z
A61F13/49 311Z
A61F13/49 315A
A61F13/51
A61F13/49 410
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065554
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022110724
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200CA03
3B200CA05
3B200CA06
3B200CA09
3B200DA21
(57)【要約】
【課題】脚周り開口部を把持しやすい吸収性物品を提供する。
【解決手段】非肌面側の、少なくとも前身頃領域と後身頃領域に外装面を形成する外装シートと、外装シートよりも肌面側に配置された吸収体と、を、備え、股下領域は、前身頃領域および後身頃領域よりも幅狭であり、外装シートの前身頃領域と後身頃領域には、幅方向に延在する複数の第1の伸縮部材が伸張状態で長手方向に互いに離間して配置され、前身頃領域と後身頃領域は、幅方向両側部で互いに接合されて、長手方向の端部近傍に形成された胴回り開口部と、股下領域の近傍に形成された一対の脚周り開口部と、を、形成し、複数の第1の伸縮部材は、脚周り開口部の近傍よりも、胴回り開口部の近傍において収縮度が大きい、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、
着用状態において着用者の腹部側の胴回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の胴回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、
非肌面側の、少なくとも前記前身頃領域と前記後身頃領域に外装面を形成する外装シートと、
前記外装シートよりも肌面側に配置された吸収体と、
を、備え、
前記股下領域は、前記前身頃領域および前記後身頃領域よりも幅狭であり、
前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域には、前記幅方向に延在する複数の第1の伸縮部材が伸張状態で前記長手方向に互いに離間して配置され、
前記前身頃領域と前記後身頃領域は、幅方向両側部で互いに接合されて、前記長手方向の端部近傍に形成された胴回り開口部と、前記股下領域の近傍に形成された一対の脚周り開口部と、を、形成し、
前記複数の第1の伸縮部材は、前記脚周り開口部の近傍よりも、前記胴回り開口部の近傍において収縮度が大きい、
吸収性物品。
【請求項2】
前記外装シートの前記一対の脚周り開口部に沿って、前記幅方向に延在する複数の第2の伸縮部材が伸張状態で互いに離間して配置されて、脚周り収縮部を形成している、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一対の脚周り開口部の縁を形成するシートは、1枚のシートまたは2枚のシートが積層されて形成された前記外装シートである、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の脚周り開口部の前記幅方向の内側において、前記前身頃領域は、前記後身頃領域よりも幅狭である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前身頃領域の前記胴回り開口部から、前記脚周り収縮部までの距離よりも、
前記後身頃領域の前記胴回り開口部から、前記脚周り収縮部までの距離のほうが長い、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記外装シートは、前記前身頃領域の前記胴回り開口部の近傍において、前記長手方向に延在する少なくとも2本の折部を有し、前記折部の間に挟まれた領域は、前記前身頃領域の側に屈曲している、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
使用前の状態において、前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域とは、互いに係合している、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域とは、前記複数の第1の伸縮部材の収縮力によって前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域に形成された襞同士が噛み合うことで係合している、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記複数の第1の伸縮部材の脚周り開口部近傍の前記幅方向の端部近傍において、前記複数の第1の伸縮部材のうちの一部と、前記複数の第2の伸縮部材のうちの一部は重畳し、
前記複数の第1の伸縮部材と前記複数の第2の伸縮部材の重畳部分において、前記外装シートに、前記幅方向に括れた括れ部が形成されている、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記複数の第2の伸縮部材が収縮していない状態の前記脚周り開口部の周長に対して90%の周長の筒を前記脚周り開口部に挿入した際、前記括れ部の前記脚周り開口部側と前記筒との間に、空間が形成される、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記空間は、少なくとも直径8mmの円が内接可能な空間である、
請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記空間の形成位置は、前記幅方向の両側部を接合して形成されているサイドシール部を含む、
請求項10または11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記空間は、前記脚周り開口部から、前記胴回り開口部に向けて10mm以上延在している、
請求項10または11に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品であるパンツ型の使い捨ておむつが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パンツ型の使い捨ておむつは、テープ型と比較すると被装着者自身の運動に追従しやすいため、活動可能な被装着者に適している。一方、パンツ型の使い捨ておむつは、止着テープを操作するだけで着脱可能なテープ型に比べると、着脱が容易でない。
【0005】
本発明は、脚周り開口部を把持しやすい吸収性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用状態において着用者の腹部側の胴回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の胴回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、非肌面側の、少なくとも前記前身頃領域と前記後身頃領域に外装面を形成する外装シートと、前記外装シートよりも肌面側に配置された吸収体と、を、備え、前記股下領域は、前記前身頃領域および前記後身頃領域よりも幅狭であり、前記外装シートの前記前身頃領域と前記後身頃領域には、前記幅方向に延在する複数の第1の伸縮部材が伸張状態で前記長手方向に互いに離間して配置され、前記前身頃領域と前記後身頃領域は、幅方向両側部で互いに接合されて、前記長手方向の端部近傍に形成された胴回り開口部と、前記股下領域の近傍に形成された一対の脚周り開口部と、を、形成し、前記複数の第1の伸縮部材は、前記脚周り開口部の近傍よりも、前記胴回り開口部の近傍において収縮度が大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脚周り開口部を把持しやすい吸収性物品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつに何ら外力等を加えない自然状態に置いた図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るおむつが折り畳まれている状態を示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るおむつの折り畳みを解消した図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るおむつの前身頃領域と後身頃領域の係合を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るおむつに何ら外力等を加えない自然状態に置いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0011】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る胴開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の脚開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。
【0012】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。なお、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rを、一対の脚周り開口部と呼ぶことがある。
【0013】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出
経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0014】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0015】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rとを有する。カバーシート4は、おむつ1の非肌面側表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートである。インナーカバーシート5F,5Rは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rのそれぞれにおいてカバーシート4に貼り合わされるシートであって、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいてカバーシート4を補強する。着用者が着用している状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5F,5Rは着用者の肌面側に積層されて、おむつ1の外装面を形成している。カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0016】
カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rは、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものに対応する概念として、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに渡って延在するカバーシート4と、それに付随して糸ゴムが配置されるインナーカバーシート5F,5Rとを合わせて外装シートと表現することがある。
【0017】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1
が着用された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0018】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるあるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を取ることができ、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状を取ることができる。本実施形態では、吸収コア8cは中央部付近が括れた砂時計型である。
【0019】
吸収コア8cには、股下領域1Bの幅方向中央部に、肌面側と非肌面側とを貫通して長手方向に延在する導流孔が設けられていてよい。導流孔を設ける場合、導流孔の延在範囲には、尿道当接位置が含まれている。このため、着用者から発生した尿は、導流孔に落ち込んで長手方向に広がり、吸収コア8cの広範囲で効率的に吸収されやすくなる。
【0020】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コア8cの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0021】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0022】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されることにより、
図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,1
0R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0023】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4、インナーカバーシート5F,5Rに重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rを補強する。また、エンドシート11F,11Rには、それぞれ接着剤が塗布されており、当該接着剤によりインナーカバーシート5F,5Rと接着している。エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0024】
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。なお、
図3(B)では、サイドシート10L,10Rおよびエンドシート11F,11Rの図示は省略する。本図では、おむつ1の前身頃領域1Fを覆うようにインナーカバーシート5Fが設けられており、おむつ1の後身頃領域1Rを覆うようにインナーカバーシート5Rが設けられている。そして、股下領域1Bにおいては、インナーカバーシート5F,5Rが存在していない。図示したように、股下領域1Bは、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rよりも幅狭である。
【0025】
カバーシート4は、
図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。前身頃領域1Fにおいては、カバーシート4の前身頃領域1Fと、インナーカバーシート5Fとの間に複数の糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F2が伸張状態で幅方向に延在し、長手方向に離間して接着されている。また、後身頃領域1Rにおいては、カバーシート4の後身頃領域1Rと、インナーカバーシート5Rとの間に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R2が伸張状態で幅方向に延在し、長手方向に離間して接着されている。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2は、本開示における複数の第1の伸縮部材の一例である。
【0026】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる、ウェストギャザー3Rとしての機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の
腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8と重畳する。
【0027】
糸ゴム4F1,4R1は、
図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って、長手方向に一定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、長手方向に所定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F1,4R1の間隔は、糸ゴム4F2,4R2の間隔よりも狭くなっている。このため、おむつ1が着用された状態において、糸ゴム4F1,4R1は、糸ゴム4F2,4R2の上側で着用者の腹囲を比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を有している。
【0028】
糸ゴム4F2,4R2の間隔は、糸ゴム4F1,4F2よりも広く、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。
【0029】
カバーシート4と、インナーカバーシート5Fとの間には、複数の糸ゴム4F3が伸張状態で接着されており、カバーシート4と、インナーカバーシート5Rとの間には、複数の糸ゴム4R3が伸張状態で接着されている。糸ゴム4F3,糸ゴム4R3は、カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの間に設けられる糸ゴムのうち、糸ゴム4F2,4R2よりも更に股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F3,4R3は、カバーシート4およびインナーカバーシート5F,5Rの左端から右端まで途切れることなく接着される他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置され、砂時計型の吸収コア8cの括れ部分で、コアラップシート7の一部と重畳している。この構成により、糸ゴム4F3の配置領域は、脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRとして機能し、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rからなる一対の脚周り開口部を着用者の肌面に当接させ、着用者の下肢の動きに追従させる。糸ゴム4F3,4R3は、本開示における複数の第2の伸縮部材の一例である。
【0030】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域に設けられ、糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。糸ゴム4F2,4R2およびエンドシート11F,11Rは、股下領域1B側の一部が吸収体8と重畳しているが、吸収コア8cの延在領域には重畳していない。
【0031】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5F,5R、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0032】
図4は、実施形態に係るおむつに何ら外力等を加えない自然状態に置いた図である。本実施形態におけるおむつ1は、非着用状態において、長手方向端部側すなわち胴開口部2T側に設けられた糸ゴム4F1,4R1の配置間隔が狭いことに伴う収縮力により、胴開口部2T付近において強く収縮する。また、長手方向股下側に設けられた糸ゴム4F2,
4R2の配置間隔が広いことにより、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rの股下領域1B側では、胴開口部2T付近と比較すると、その収縮度合いが小さくなっている。換言すれば、複数の第1の伸縮部材の収縮度は、脚周り開口部近傍よりも、胴回り開口部近傍において大きい。
【0033】
糸ゴム4F1,4F2,4R1,4R2は、幅方向両側部である縁4F4と縁4R4が互いに接合することで形成されるサイドシール部12Lと、縁4F5と縁4R5が互いに接合することで形成されるサイドシール部12Rを幅方向内側に付勢する。前述の通り、糸ゴム4F1,4R1の配置領域の収縮力は、糸ゴム4F2,4R2の配置領域の収縮力よりも大きい。このため、おむつ1の横幅は、胴回り開口部である胴開口部2T側の方が狭くなり、一対の脚周り開口部である左下肢開口部2L,右下肢開口部2R側のほうが広くなる。
【0034】
このように、胴開口部2T付近で強く収縮した前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは、股下領域1B側ではそれほど収縮しない。しかし、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは、サイドシール部12L,12Rで接合されているため、おむつ1の前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは、股下領域1B側でめくれて離間しやすく、すなわち肌面側に膨らみしやすくなる。そして、これに伴って、自然状態において、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rは開口しやすくなる。
【0035】
自然状態において、おむつ1の左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rが開口していると、おむつ1の需要者である着用者や介助者は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rを見つけやすくなる。たとえば、着用者は、着用時に一対の脚周り開口部に足を挿入しやすくなる。介助者は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rに手を入れて被装着者の太腿部を掴みやすくなり、好適であると言える。
【0036】
図3に示す形態では、糸ゴム4F2,4R2の更に股下領域1B側におけるおむつ1の左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rに沿って、カバーシート4とインナーカバーシート5Fとの間に糸ゴム4F3が付されており、カバーシート4とインナーカバーシート5Rとの間に糸ゴム4R3が付されている。糸ゴム4F3,4R3は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rを着用者の大腿部に沿って収縮させて肌面に当接させ、おむつ1を肌面に固定し、立体ギャザー3BR,3BLから逸脱した排出物が大腿部から漏出するのを抑制する。糸ゴム4F3,4R3の配置領域は、脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRとしての機能を有している。
【0037】
糸ゴム4F3,4R3は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rの端部までは延在していない。このため、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rの端部は、糸ゴムによって付勢されない自由端となっている。当該自由端は、おむつ1着用時に着用者の大腿部の外に広がっており、排出物が漏出するのを更に抑制する。また、自由端を設けることにより、着用者または介助者は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rを把持しやすくなる。
【0038】
おむつ1は、例えば吸収体8の延在領域では、サイドシート10L,10R、トップシート9、吸収体8、バックシート6、インナーカバーシート5F,5R、カバーシート4等の複数層のシートを接着することにより構成されており、吸収体8や、各シートの剛性が重畳し、比較的屈曲しにくくなっている。一方、
図3で示したように、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rは、糸ゴム4F3,4R3の延在領域外ではカバーシート4のみすなわち1枚の外装シートにより構成され、また糸ゴム4F3,4R3の延在領域においても、カバーシート4と、インナーカバーシート5F,5Rのうちのいずれかからなる2枚の外装シートにより形成される。換言すれば、一対の脚周り開口部に設けられているシートは、1枚以上2枚以下の外装シートである。このため、左下肢開口部2L,右下肢開口
部2Rは、おむつ1の他の部位と比べて剛性が低く、糸ゴム4F3,4R3の収縮力に追従しやすい。また、剛性が低いため、自由端部も幅方向に広がりやすくなっている。このため、着用者または介助者は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rを把持しやすい。
【0039】
なお、
図2および
図3に示した通り、後身頃領域1Rに配置されるインナーカバーシート5Rは、前身頃領域1Fに配置されるインナーカバーシート5Fと比べて広い面積を有しており、股下領域1Bに至る屈曲も、前身頃領域1F側の方が急である。よって、一対の脚周り開口部である左下肢開口部2L,右下肢開口部2R付近においても、前身頃領域1Fは、後身頃領域1R側よりも幅狭となっている。このように構成することで、おむつ1の需要者は、おむつ1の前後の判別を容易に行うことができ、履き間違いを避けることができる。更に、おむつ1を腹側から見た場合にも背側がはみ出して見えるため、需要者は、一対の脚周り開口部が開口している様子を容易に確認可能であるため、着脱時に手を入れるべき位置を容易に確認できる。
【0040】
また、インナーカバーシート5Rがインナーカバーシート5Fよりも長手方向に長いため、ウェストギャザー3Rの長手方向長さも、前身頃領域1Fと比べると後身頃領域1Rのほうが長い。換言すると、前身頃領域1Fの長手方向端部から、脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRを構成する糸ゴム4F3までの距離よりも、後身頃領域1Rの長手方向端部から、脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRを構成する糸ゴム4R3までの距離の方が長くなっている。換言すれば、前身頃領域1Fの胴回り開口部である胴開口部2Tから、脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRまでの距離よりも、後身頃領域1Rの胴回り開口部である胴開口部2Tから、前記脚周り収縮部であるレグギャザー3LL,3LRまでの距離のほうが長い。
【0041】
このため、おむつ1は、腹部側に比べて広い臀部側を十分に保護できる。また、需要者は、おむつ1の前後の判別を容易に行うことができ、履き間違いを避けることができる。更に、おむつ1を腹側から見た場合にも背側がはみ出して見えるため、需要者は、一対の脚周り開口部が開口している様子を容易に確認可能であって、着脱時に手を入れるべき位置を容易に確認できる点も同様である。
【0042】
図5は、実施形態に係るおむつが折り畳まれている状態を示した図である。おむつ1は、軽量な紙おむつではあるが、着用者の体形に追従し、かつ着用者からの排出物を外部に漏らさない機能を実現するための複雑な構造を有している。また、1日数回の交換を要する特性上、数十枚単位の包装で流通することが一般的である。また、一般に、吸収性物品は嵩高なため流通コストが大きい。このため、おむつ1は折り畳まれて、圧縮された状態で流通する。
【0043】
流通形態では、おむつ1は、胴開口部2Tを含む前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの幅方向両側の所謂サイドフラップ部分を二つ折りして2つの折部を形成して前身頃領域1F側に屈曲させ、更に前身頃領域1Fを股下領域1B側に屈曲させて二つ折りした状態になっている。このように折り畳むと、流通状態におけるおむつ1の表面積を小さくすることができ、流通が容易になる。この状態で更に厚み方向に内部構造が破壊されない程度の圧力を与えて圧縮をすることにより、流通状態におけるおむつ1の厚みを薄くできる。このようにおむつ1を折り畳んで圧縮することにより、出荷状態において、包装により多くのおむつ1を封入して流通させることが可能となる。
【0044】
図5に示す状態において、おむつ1の胴開口部2Tは、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの幅方向両側の所謂サイドフラップ部分が屈曲していない部分では内側に大きく屈曲し、凸部2Sを形成している。
【0045】
図6は、実施形態に係るおむつの折り畳みを展開した図である。
図6では、包装状態のおむつ1に形成されていた折り目は全て展開されているが、サイドフラップ部分に折り目が形成されていたことにより、長手方向端部近傍における幅方向左右に折り癖13L,13Rが残存している。折り癖13L,13Rは、後身頃領域1R側に凸になるように残存している。一方、折り癖13L,13Rの間に挟まれた領域は、幅方向中央部の凸部2Sを中心として、前身頃領域1F側に屈曲している状態となる。
【0046】
凸部2S近傍では、前身頃領域1F側には屈曲癖が強く残っているが、後身頃領域1R側では屈曲癖がそれほど残らない。このため、凸部2S近傍では、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとの間に空間が形成されやすくなる。このため、着用者または介助者がおむつ1を包装から取り出した際、胴開口部2Tが存在するおむつ1の長手方向両端部には、指が挿入可能な隙間が形成されている。このため、着用者または介助者は、当該隙間に指を挿入し、おむつ1を広げるように力を加えることで、おむつ1を容易に装着可能な状態にすることができる。
【0047】
図7は、実施形態に係るおむつの前身頃領域と後身頃領域の係合を示す図である。
図7(A)は、折り畳み部分を展開した、使用前の状態のおむつ1を示す。
図7(A)では、包装状態のおむつ1に形成されていた折り目は全て展開されているが、サイドフラップ部分に折り目が形成されていたことにより、長手方向端部近傍における幅方向左右に折り癖13L,13Rが残存している。折り癖13L,13Rは、後身頃領域1R側に凸になるように残存している。一方、折り癖13R,13Lの間に挟まれた領域は、幅方向中央部の凸部2Sを中心として、前身頃領域1F側に屈曲している状態となる。
【0048】
図7(B)は、前身頃領域1Fにおける、長手方向端部近傍の構造を示す図である。
図7(B)は、折り癖13L,13Rの間に挟まれた領域の一部である、太い破線で囲まれた領域の拡大図である。なお、後身頃領域1R側の構造も同一である。
図7(B)の上側には、長手方向端部であって、その更に上側には図示しない胴開口部2Tが存在している。
図7(B)の下側は、股下領域1B側である。胴開口部2T側には、糸ゴム4F1が存在しており、股下領域1B側には、糸ゴム4F2が存在している。
【0049】
図7(C)は、
図7(B)に示す構造を、厚み方向から見た断面図である。
図7(B)に示す領域に存在するカバーシート4等のシートは、幅方向に延在する糸ゴム4F1,4F2の収縮力によって収縮し、糸ゴム4F1,4F2同士の間に、略長手方向に皺が形成されている。カバーシート4等のシートの長手方向における糸ゴム4F1の存在間隔は短い。このため、糸ゴム4F1が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、小さな皺15が形成されている。一方、長手方向における糸ゴム4F2の存在間隔は、糸ゴム4F1の延在領域と比較すると長い。このため、糸ゴム4F2が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、皺15よりも大きな皺16が形成されている。このような構造は、後身頃領域1Rにおいても同様である。すなわち、糸ゴム4R1が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、小さな皺15が形成されており、糸ゴム4R2が存在する領域では、カバーシート4等のシートには、皺15よりも大きな皺16が形成されている。
【0050】
図7(D)は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおける皺16同士が噛み合った状態を示す図である。おむつ1は、厚みを低減し、効率的な流通を実現するために、流通状態において厚み方向に圧縮されていることがある。また、おむつ1の厚みを低減するためには、糸ゴムによってカバーシート4等に形成される皺同士が噛み合っていることが好適である。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1よりも、長手方向における配置間隔が広い。このため糸ゴム4F1,4R1の配置領域の収縮力は、糸ゴム4F2,4R2の配置領域の収縮力より大きい。
【0051】
このため、糸ゴム4F2,4R2の収縮力によって形成される皺16の大きさは、糸ゴム4F1,4R1の収縮力によって形成される皺15に比べて大きくなる。このため、例えば、幅方向に伸ばした状態のカバーシート4等を、厚み方向に一定の圧力をかけながら、糸ゴム4F2,4R2の収縮力に任せた状態に戻すと、糸ゴム4F2,4R2の収縮力によって、カバーシート4等の前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rに形成される襞同士、すなわち皺16同士は噛み合う。当該噛み合いにより、糸ゴム4F2,4R2延在領域における、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1R部分のカバーシート4等同士は、係合した状態になる。この構成により、流通状態において、糸ゴム4F2,4R2が存在する外装シートの前身頃領域1Fと後身頃領域1Rを互いに係合させ、おむつ1を嵩低とすることができる。係合面は、着用時に係合解除されて人体と当接するが、
図7(D)に示す形態では係合に接着剤等を使用しないため、人体と当接する面の肌触りが維持されやすくなる。なお、本記載は係合を確実なものとするために、補助的にコーティングや接着剤を使用することを禁止するものではない。
【0052】
図7(E)は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rにおいて、皺15同士が噛み合っていない状態を示す図である。糸ゴム4F1,4R1によって形成される、胴開口部2T側の皺15は、糸ゴム4F1,4R1の長手方向における配置間隔が狭いために、皺16と比べると小さくなる。このため、おむつ1が厚み方向に圧縮されて、皺16同士が噛み合って前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとが係合している場合でも、糸ゴム4F1,4R1によって形成されている皺15同士が噛み合うことがない。このため、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合している状態であっても、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの長手方向端部である胴開口部2T近傍の領域は係合しない。
【0053】
本実施形態に係るおむつ1は、使用前の状態において、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの肌面側(胴側)を係合させて折り畳むことで、流通時の嵩を小さくすることができる。その一方、胴開口部2T近傍では前身頃領域1Fと後身頃領域1Rは係合していない。また、使用前のおむつ1には、流通状態に起因し、胴開口部2T近傍から長手方向に延在する折り癖13L,13Rが形成されており、折り癖13L,13Rの間に挟まれた領域は、幅方向中央部の凸部2Sを中心として、前身頃領域1F側に屈曲している。
【0054】
前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの長手方向端部は係合しておらず、更に胴開口部2T近傍が前身頃領域1F側に屈曲した凸部2Sとなっている。このため、着用者または介助者がおむつ1を包装から取り出した際、胴開口部2Tが存在するおむつ1の長手方向両端部には、指が挿入可能な隙間が形成されている。このため、着用者または介助者は、当該隙間に指を挿入し、おむつ1を広げるように力を加えることで、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの股下領域1B近傍に形成されている係合を解消し、おむつ1を容易に装着可能な状態にすることができる。
【0055】
このように、本実施形態に係るおむつ1は、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rを係合させることで流通時の嵩を低く抑えて流通を容易にすることができると共に、着用前には容易に係合を解くことができるため装着も容易である。また、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rが係合されているかどうかによっても使用済みかどうかの判別が可能であり、多くのおむつを取り扱う場合でも取り回しが容易になり、好適である。
【0056】
(変形例)
図8は、変形例に係るおむつに何ら外力等を加えない自然状態に置いた図である。本変形例では、糸ゴム4F3,4R3のうち長手方向端部側、すなわち胴開口部2T側の一部が、糸ゴム4F2,4R2の一部であって、左下肢開口部2L、右下肢開口部2R側に設けられているものと、幅方向の端部近傍で重畳している。本変形例では、糸ゴム4F2,
4R2の延在領域と、糸ゴム4F3,4R3の延在領域の重畳部分で、糸ゴム4F2,4R2と糸ゴム4F3,4R3の両方の収縮力が働き、おむつ1の外装体は幅方向に強く収縮する。このため、おむつ1には、当該部分において、幅方向に括れた括れ部14が形成されている。
【0057】
括れ部14の長手方向内側、左下肢開口部2L、右下肢開口部2Rは、
図4に示す形態と同様に幅方向外側に立ち上がり、レグギャザー3LL,3LRを形成する。括れ部14が存在することにより、レグギャザー3LL,3LRの立ち上がり角度は
図4に示す形態よりも急になる。また、レグギャザー3LL,3LRの端部は
図4に示す形態よりも幅広となる。
【0058】
変形例に係るおむつ1では、レグギャザー3LL,3LRの延在領域がより明瞭になっている。このため、おむつ1の着用者または介助者は、実施形態よりも更にレグギャザー3LL,3LRを把持しやすくなるため、おむつ1を着用しやすくなる。また、おむつ1を外す際にも、実施形態よりも更にレグギャザー3LL,3LRに指を更に挿入しやすくなる。
【0059】
図9は、おむつの着用状態を示す図である。より具体的には、おむつ1を、人体の腹部および上腿部を模した模型17に装着した状態を示す図である。模型の大腿部である上腿部17L,17Rは筒状となっており、レグギャザー3LL,3LRが収縮していない状態におけるおむつ1の脚周り開口部である左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rの90%の周長を有している。
【0060】
前述した通り、括れ部14の左下肢開口部2L,右下肢開口部2R側は、幅方向外側に立ち上がっており、上腿部17L,17Rとの間には、空間18R,18Lが形成される。当該空間は、少なくとも直径8mmの円が内接可能な空間であり、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rから、少なくとも胴回り開口部である胴開口部2Tに向けて、10mm以上延在している。図示した通り、空間18L,18Rの形成位置には、おむつ1の幅方向の両側部を接合して形成されるサイドシール部12L,12Rが含まれている。サイドシール部12L,12Rには弾性部材が配置されておらず、人力で引き裂くことができる。
【0061】
着用者または介助者が使用済みのおむつ1を交換する際、着用中の使用済みおむつ1の脚周り開口部側から胴開口部側に向かってサイドシール部12L,12Rを引き裂くことにより、おむつ1をずり下げるよりも簡単に交換可能となる。
図9に示す変形例に係るおむつ1は、括れ部14を有しており、更に脚周り開口部である括れ部14の左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rと着用者の大腿部との間には、空間18L,18Rが形成されている。
【0062】
空間18L,18Rは、少なくとも直径8mmの円が内接可能な空間であり、着用者または介助者は、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rから、空間18L,18Rの内側に指を挿入しやすい。また、左下肢開口部2L,右下肢開口部2Rから、胴開口部2T側に向けて10mm以上延在しているため、着用者または介助者は、指の第一関節を挿入して、空間18L,18Rの内側からおむつ1をしっかりと把持可能である。
【0063】
更に、空間18L,18Rの形成位置には、おむつ1の幅方向の両側部を接合して形成されるサイドシール部12L,12Rが含まれている。空間18L,18Rの形成位置にサイドシール部12L,12Rが含まれているため、着用者または介助者は、空間18L,18Rの内側からおむつ1を把持しつつ、サイドシール部12L,12Rを脚周り開口部側から胴回り開口部側に向けて容易に引き裂くことができる。このため、本変形例では
、取り換えが非常に容易なおむつ1を提供可能となる。
【0064】
以上、本実施形態および変形例について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。例えば、前身頃領域1Fの股下領域1B側と、後身頃領域1Rの股下領域1B側において糸ゴムの収縮力を変え、後身頃領域1Rが前身頃領域1Fよりもより強く収縮するようにしてよい。このように構成すると、おむつ1は背側に収縮しやすくなり、吸収体8の幅方向端部に沿った折り癖13L,13Rが持続しやすくなり、凸部2Sも保持しやすくなる。この結果、胴開口部2Tが開きやすくなり、着用が容易になる。
【0065】
また、上記実施形態では、大人用のパンツ型おむつを例に挙げて説明したが、本発明は、子供用のパンツ型おむつにも適用可能である。
【0066】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・おむつ
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
2R・・右下肢開口部
2L・・左下肢開口部
2S・・凸部
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
3LL,3LR・・レグギャザー
4・・カバーシート
4F1,4F2,4F3,4R1,4R2,4R3・・糸ゴム
4F4,4R4,4F5,4R5・・縁
4FF,4RF・・折り返し線
5F,5R・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8・・吸収体
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
10L1,10R1・・糸ゴム
11F,11R・・エンドシート
12L,12R・・サイドシール部
13L,13R・・折り癖
14・・括れ部
15,16・・皺
17L,17R・・上腿部
18L,18R・・空間