(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088264
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】情報処理サーバ、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20240625BHJP
【FI】
G06Q30/0241
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203346
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼川 暉
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】メタバースに出稿する広告の出稿計画を生成する。
【解決手段】メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得する取得部と、前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成する生成部と、前記生成部によって生成された前記出稿計画を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得する取得部と、
前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記出稿計画を出力する出力部と、
を備える情報処理サーバ。
【請求項2】
前記生成部は、現実世界における前記ユーザの行動を示す第2行動情報を、前記第1行動情報に統合させた情報を前記ユーザ情報として、前記出稿計画を生成する、
請求項1に記載の情報処理サーバ。
【請求項3】
前記生成部は、前記メタバースにおける前記ユーザの属性である第1属性と、現実世界における前記ユーザの属性である第2属性とが類似する度合に応じて、前記第2行動情報を前記第1行動情報に統合させた情報を、前記ユーザ情報とする、
請求項2に記載の情報処理サーバ。
【請求項4】
前記生成部は、前記第1属性と前記第2属性とが類似しない場合、前記第1行動情報に前記第2行動情報を統合せずに、前記出稿計画を生成する、
請求項3に記載の情報処理サーバ。
【請求項5】
前記生成部は、前記第1属性と前記第2属性とが類似しない場合、前記第1行動情報に、前記第1属性と前記第2属性を組み合わせた第3属性を統合させた情報を、前記ユーザ情報として前記出稿計画を生成する、
請求項3に記載の情報処理サーバ。
【請求項6】
前記取得部は、前記メタバースに広告を出稿する条件を取得し、
前記生成部は、前記メタバースに出稿する広告の効果を算出するための目的関数を生成し、前記条件に基づいて前記目的関数の制約条件を生成し、前記制約条件を満たし且つ前記目的関数を最適化する問題として定式化し、前記定式化した問題を最適化計算機が利用可能なモデルに変換し、前記変換した前記モデルを解くように前記最適化計算機に依頼し、前記最適化計算機によって導出された前記モデルに対する解を用いて前記出稿計画を生成する、
請求項1に記載の情報処理サーバ。
【請求項7】
コンピュータが行う情報処理方法であって、
取得部が、メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得し、
生成部が、前記第1行動情報を含むユーザ情報、および前記広告枠情報に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成し、
出力部が、前記生成部によって生成された前記出稿計画を出力する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得させ、
前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成させ、
前記生成させた前記出稿計画を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理サーバ、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上に構築された仮想空間(メタバース)を、複数のユーザで共有する技術がある。メタバースでは、ユーザの分身であるアバターが登場し、アバターの行動を介して様々な活動が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなメタバースにおいて広告を掲載する仕組みが検討され始めているが、メタバースに広告を出す場合において、広告を出稿する計画を生成する仕組みが確立されていなかった。例えば、広告主は、広告予算の中で目的に合わせて、ユーザとそのユーザに表示されるどの広告枠に出稿するかを決める必要がある。しかし、メタバースでは、同じ場所にある同じ広告枠に、ユーザ毎に異なる広告を表示することもできるため、誰に対して何処にどのような広告を出すかといった組み合わせが膨大となり、広告主の目的や予算にあわせて費用対効果を最適にするような出稿計画を生成することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、メタバースに出稿する広告の出稿計画を生成することができる情報処理サーバ、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理サーバは、メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得する取得部と、前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成する生成部と、前記生成部によって生成された前記出稿計画を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明の、情報処理方法は、コンピュータが行う情報処理方法であって、取得部が、メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得し、生成部が、前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成し、出力部が、前記生成部によって生成された前記出稿計画を出力する、情報処理方法である。
【0008】
本発明の、プログラムは、コンピュータに、メタバースにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、および前記メタバースに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得させ、前記第1行動情報を含むユーザ情報、前記広告枠情報、および広告目的と広告予算を含む出稿条件に基づいて、前記メタバースにおいて前記ユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成させ、前記生成させた前記出稿計画を出力させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタバースに出稿する広告の出稿計画を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における広告システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態のメタバースVEの例を示す図である。
【
図3】実施形態のユーザ情報120の例を示す図である。
【
図4】実施形態の広告システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図5】実施形態の出稿計画立案サーバ10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(広告システム1の構成について)
図1は、実施形態による広告システム1の構成例を示すブロック図である。広告システム1は、メタバースに広告を出稿する計画を生成するためのシステムである。広告システム1は、例えば、出稿計画立案サーバ10と、メタバースシステム20と、出稿条件入出力サーバ30と、最適化計算機40とを備える。広告システム1において、出稿計画立案サーバ10は、メタバースシステム20、出稿条件入出力サーバ30および最適化計算機40と通信可能に接続される。
【0013】
出稿計画立案サーバ10は、広告主などからの依頼に応じて広告出稿計画を生成するコンピュータである。出稿計画立案サーバ10として、例えば、サーバ装置、クラウド、パーソナルコンピュータ(PC)などを適用することが可能である。出稿計画立案サーバ10が行う具体的な処理については、後で詳しく説明する。
【0014】
メタバースシステム20は、メタバースをユーザに提供するシステムである。メタバースシステム20は、例えば、メタバース配信サーバ、およびメタバース制御サーバなど、複数台のコンピュータにより構成される。メタバース配信サーバは、ユーザの端末にメタバースを配信する。メタバース制御サーバは、ユーザの端末から通知された情報に応じて、メタバース、およびメタバースにいるユーザのアバターの行動を制御する。これにより、例えば、ユーザが、ユーザ端末を介して操作を行うと、メタバースにいるユーザのアバターが、その操作に応じた行動をする。なお、ここでのアバターの行動には、アバターにおけるメタバース内での移動、アバターの身体の動き、アバターの発言などが含まれる。
【0015】
ここで、本実施形態のメタバースには広告が掲載される。
図2は、実施形態のメタバースVEの例を示す図である。例えば、
図2に示すように、メタバースVEには、建物や看板など仮想オブジェクトが設けられ、メタバースVEをアバターVPが行動できるように構築されている。そして、メタバースVEに設けられた建物の壁面や看板などに、メタバース広告VKが表示される。
なお、広告の掲載場所は、建物や看板に限定されることはない。メタバースに設けられた任意の仮想オブジェクトに広告が表示されてよい。例えば、アバターが着ている服の表面やアバターの持ち物等、アバターが身に着けている仮想オブジェクトに広告が表示されてもよい。また、現実世界の空(そら)にプロジェクションマッピングによって表示されるような広告が、メタバースに設けられた空(そら)などの空間に対応する仮想オブジェクトに表示されてもよい。また、現実世界において車両に施されるラッピング公告が、メタバースに設けられた車両等の動体に対応する仮想オブジェクトに表示されてもよい。
また、表示による広告掲載のみならず、メタバースに設けられた任意の仮想オブジェクトから音声等の音が出力されることによって広告が提示されてもよい。
【0016】
図1に戻り、メタバースシステム20は、出稿計画立案サーバ10からの要求などに応じて、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報(第1行動情報)を、出稿計画立案サーバ10に通知する。
【0017】
また、メタバースシステム20は、出稿計画立案サーバ10からの要求などに応じて、メタバースVEに出稿できる広告枠に関する情報を出稿計画立案サーバ10に通知する。広告枠に関する情報は、例えば、ユーザ毎に生成される。
【0018】
出稿条件入出力サーバ30は、メタバースに出す広告の依頼を受付けるコンピュータである。出稿条件入出力サーバ30として、例えば、サーバ装置、クラウド、パーソナルコンピュータ(PC)などを適用することが可能である。なお、出稿条件入出力サーバ30の機能が、出稿計画立案サーバ10に組み込まれていてもよい。この場合、出稿条件入出力サーバ30を省略することが可能である。
【0019】
出稿条件入出力サーバ30は、広告主または広告代理店などから、メタバースVEに、メタバース広告VKを出稿するための条件(出稿条件)を通知する。出稿条件は、例えば、広告目的、広告予算を含む条件である。出稿条件入出力サーバ30は、出稿条件を通知することにより、その出稿条件に応じた広告の出稿計画の作成を、出稿計画立案サーバ10に依頼する。
【0020】
また、出稿条件入出力サーバ30は、出稿計画立案サーバ10から出稿計画を受信する。ここでの出稿計画は、出稿条件入出力サーバ30が通知した出稿条件に応じて、出稿計画立案サーバ10が生成した、広告の出稿計画である。
【0021】
最適化計算機40は、最適化問題を解くためのコンピュータであり、例えば、量子コンピュータである。量子コンピュータは、逆過程(ユニタリー演算)を通して計算を実行する。このため、量子コンピュータではない従来型のコンピュータ(以下、古典コンピュータという)と違って、エントロピーの増大が生じない。このため、量子コンピュータは、量子力学的な重ね合わせの原理を用いた並列計算によって、古典コンピュータより指数関数的に高速な計算が可能になる。
【0022】
例えば、最適化計算機40は、量子アニーリング方式の量子コンピュータである。最適化計算機40は、ゲート方式の量子コンピュータであってもよい。最適化計算機40は、疑似量子コンピュータを含むイジングマシンであってもよい。例えば、商用に公開されている量子コンピュータを、ネットワークNWを経由してAPIを呼び出すことにより、最適化計算機40として利用することができる。
なお、最適化計算機40は、量子コンピュータに限定されることはない。最適化計算機40は、古典コンピュータであってもよく、例えば、古典コンピュータを使った古典アニーリングマシン(古典イジングマシン)等であってもよい。
【0023】
最適化計算機40は、出稿計画立案サーバ10から、最適化問題として定式化されたイジングモデルを受信する。最適化計算機40は、出稿計画立案サーバ10から通知されたイジングモデルにおける最適解を導出する。最適化計算機40は、イジングモデルにおける目的関数が最小となる変数の組合せを求めることにより最適解を導出する。最適化計算機40は、導出した最適解をイジングモデルの解として出稿計画立案サーバ10に出力する。ここで、最適化計算機40は、複数の解を導出してもよい。この場合、最適化計算機40は、導出した複数の解を出稿計画立案サーバ10に出力する。
【0024】
(出稿計画立案サーバ10の構成について)
図1に示すように、出稿計画立案サーバ10は、例えば、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。通信部11は、メタバースシステム20、出稿条件入出力サーバ30、および最適化計算機40と通信を行う。
【0025】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、あるいはこれらの組合せによって構成される。記憶部12は、出稿計画立案サーバ10の各種処理を実行するためのプログラム、及び各種処理を行う際に利用される一時的なデータを記憶する。
【0026】
記憶部12は、例えば、ユーザ情報120、および広告枠情報121を記憶する。ユーザ情報120は、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報(第1行動情報)を含む、ユーザに関する情報である。広告枠情報121は、メタバースVEに出稿できる広告枠に関する情報である。
【0027】
図3は、実施形態のユーザ情報120の例を示す図である。
図3に示すように、ユーザ情報120は、例えば、ユーザID、現実世界、2Dデジタル、メタバースのそれぞれの項目に対応する情報を含む。ユーザIDにはユーザを一意に識別する情報が記憶される。
【0028】
現実世界には、ユーザの現実世界における情報(現実世界情報)が記憶される。例えば、ユーザの現実世界における情報として、現実世界におけるユーザの属性、例えば、年齢、性別、職業などがある。また、ユーザの現実世界における情報として、現実世界におけるユーザの行動を示す情報がある。ユーザの現実世界情報は、例えば、メタバースシステム20から出稿計画立案サーバ10に通知される。
【0029】
2Dデジタルには、ユーザにおける、メタバース以外のインターネットを介した活動を示す情報、例えば、ウェブの閲覧履歴、およびSNS(Social Networking Service)の操作履歴などを示す情報(2Dデジタル情報)が記憶される。メタバースには、ユーザのメタバースVEにおける情報が記憶される。例えば、ユーザのメタバースVEにおける情報として、メタバースVEにおけるユーザの属性、例えば、アバターの年齢、性別、職業などがある。また、ユーザのメタバースVEにおける情報として、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報(第1行動情報)がある。ユーザの2Dデジタル情報は、例えば、メタバースシステム20から出稿計画立案サーバ10に通知される。
【0030】
図1に戻り、制御部13は、出稿計画立案サーバ10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
【0031】
制御部13は、例えば、取得部130と、統合制御部131と、スコアリング処理部132と、最適化計算制御部133と、出力部134とを備える。
【0032】
取得部130は、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報(第1行動情報)を取得する。例えば、取得部130は、メタバースシステム20から通知され、出稿計画立案サーバ10が受信した第1行動情報を、通信部11を介して取得する。取得部130は、取得した第1行動情報をユーザ情報120として記憶部12に記憶させる。
【0033】
また、取得部130は、メタバースVEに設けられる広告枠に関する情報を取得する。例えば、取得部130は、出稿条件入出力サーバ30から通知され、出稿計画立案サーバ10が受信した、メタバースVEに設けられる広告枠に関する情報を、通信部11を介して取得する。取得部130は、取得したメタバースVEに設けられる広告枠に関する情報を広告枠情報121として記憶部12に記憶させる。
【0034】
統合制御部131、スコアリング処理部132、および最適化計算制御部133は、出稿計画を生成する機能部(「生成部」の一例)である。これらの機能部は、第1行動情報を含むユーザ情報120、広告枠情報121、および出稿条件に基づいて、メタバースVEにおいてユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成する。
【0035】
本実施形態において、出稿計画立案サーバ10は、ユーザに関する情報として、少なくとも第1行動情報に基づいて、出稿計画を生成する。メタバースVEにおけるユーザの行動の特徴に応じて、ユーザの興味や関心を引き付ける広告が選択されると、広告効果を高めることができると考えられるためである。
【0036】
ここで、ユーザの特徴をさらに詳しく把握するために、第1行動情報に、ユーザに関する別の情報を統合させた情報を用いることが考えられる。ユーザに関する別の情報とは、例えば、ユーザ情報120に記憶されているような情報である。より具体的には、現実世界におけるユーザの行動履歴、現実世界におけるユーザの属性、ウェブの閲覧履歴、SNSの操作履歴、メタバースにおけるユーザ(つまり、アバターVP)の属性などである。例えば、第1行動情報に、現実世界におけるユーザの行動を示す情報(第2行動情報)が統合されれば、ユーザの特徴を詳しく把握することが可能となる。
【0037】
しかしながら、第1行動情報に、ユーザに関する別の情報を統合させることで、ユーザの異なる側面が混同されてしまう可能性もあり得る。例えば、メタバースVEにおいて男性アバターとして行動しているユーザが、現実世界では女性である場合がある。このような場合、メタバースVEにおいて男性アバターとして行動している行動履歴と、現実世界において女性として行動している行動履歴とが統合されてしまうと、整合しない行動が混同してしまい、ユーザの特徴が抽出し難くなる恐れがある。
【0038】
そこで、本実施形態では、第1行動情報に統合させる情報を制御できるようにした。具体的に、統合制御部131は、出稿計画を生成するために用いるユーザの情報を生成する際に、第1行動情報に統合させる情報を制御する。
【0039】
統合制御部131は、例えば、メタバースVEにおけるユーザ(アバターVP)の属性(第1属性)と、現実世界におけるユーザの属性(第2属性)とが類似する度合に応じて、第1行動情報に統合させる情報を制御する。
【0040】
具体的に、統合制御部131は、第1属性と第2属性とが類似しない場合、第1行動情報に現実世界におけるユーザの情報、例えば、第2行動情報を統合しない。
【0041】
一方、統合制御部131は、第1属性と第2属性とが類似する場合、第1行動情報に現実世界におけるユーザの情報、例えば、第2行動情報を統合する。
【0042】
或いは、統合制御部131は、第1属性と第2属性とが類似する度合に応じて、第1行動情報に、重みづけした現実世界におけるユーザの情報、例えば、第2行動情報を統合するようにしてもよい。この場合、例えば、第1属性と第2属性とが類似する度合が30%であった場合、統合制御部131は、第1行動情報に、類似する度合に応じた割合(例えば30%程度)の第2行動情報を統合させる。
【0043】
ここで、メタバースVEにおいては、全てのユーザは自由なキャラクタを演じることができる。このため、第1属性と第2属性とが類似しない場合において、その類似しない態様が、ある一定の傾向を示すことがあり得ると考えられる。
【0044】
例えば、メタバースVEにおけるユーザ(アバターVP)の属性(第1属性)と、現実世界におけるユーザの属性(第2属性)とが類似する度合に応じて、第1行動情報に統合させる情報を制御する。例えば、メタバースVEにおいて男性アバターとして行動しているユーザのうち、一定の割合のユーザが現実世界において女性であることがあり得るし、その逆の傾向もあり得る。メタバースVEにおいて若者アバターとして行動しているユーザのうち、一定の割合のユーザが現実世界において高齢者であることがあり得るし、その逆の傾向もあり得る。
【0045】
このような傾向を抽出することができれば、ユーザの特徴をさらに詳しく把握することが可能である。例えば、ユーザが、メタバースVEにおいて男性アバターとして行動している(現実世界の)女性であることが判れば、そのような傾向に特化した、よりユーザの興味や関心を引き付ける広告を選択することができ、広告効果を高めることができる。
【0046】
そこで、このような対策として、統合制御部131は、第1属性と第2属性とが類似しない場合、第1行動情報に、第1属性と第2属性を組み合わせた第3属性を統合させるようにしてもよい。これにより、第3属性のユーザに特化した広告を選択することができる。
【0047】
スコアリング処理部132は、統合制御部131により統合された情報をスコアリングする。ここでのスコアリングは、ユーザの属性や行動をスコア(点数)で表し、ユーザの特徴を明確にすることである。
【0048】
例えば、スコアリング処理部132は、AIを用いてスコアリングを行う。具体的には、スコアリング処理部132は、スコアを算出するための学習済モデルを生成する。ここでの学習済モデルは、例えば、不特定のユーザに関する情報(例えば、行動情報および属性など)とスコアとが対応づけられたデータセットを学習することにより、ユーザとスコアとの対応関係を学習したモデルである。対応関係を学習することにより、学習済モデルは、入力された、ユーザに関する情報に対し、そのユーザのスコアを出力することができるようになる。スコアリング処理部132は、統合制御部131により統合されたユーザの情報を、スコアを算出するための学習済モデルに入力し、スコアを算出するための学習済モデルから出力されるスコアを取得する。統合制御部131は、取得したスコアを、ユーザのスコアとする。
【0049】
最適化計算制御部133は、最適化計算を制御する。まず、最適化計算制御部133は、諸条件、例えば、広告枠情報121、出稿条件入出力サーバ30から通知された出稿条件、およびユーザのスコアなどに基づいて、生成すべき広告出稿計画に対応する制約条件及び目的関数を決定する。
【0050】
ここでの制約条件は、広告出稿計画を生成する場合において制約される条件であって、例えば、広告目的、広告予算、広告枠、広告掲載エリアなどに関する制約である。また、ここでの目的関数は、広告出稿計画を生成する場合において目的を表す関数であって、例えば、なるべく少ない予算でより多くのユーザに広告を出したい場合、広告枠1つあたりの掲載費用の単価にその広告枠に広告を出すユーザの人数を乗算した値を、全ての広告枠について加算した値である。
【0051】
次に、最適化計算制御部133は、制約条件及び目的関数を、制約条件を満たし、且つ目的関数を最適化する問題として定式化する。
【0052】
次に、最適化計算制御部133は、定式化した問題を、最適化計算機40が利用可能なイジングモデルに変換する。最適化計算制御部133は、イジングモデルを、最適化計算機40に出力する。最適化計算制御部133は、最適化計算機40によって導出されたイジングモデルに対する解を取得し、取得した解を出力部134に出力する。ここで、最適化計算制御部133は、最適化計算機40から複数の解を取得してもよい。
【0053】
出力部134は、最適化計算制御部133によって取得された解に基づく広告出稿計画の候補を、出稿条件入出力サーバ30に出力する。例えば、出力部134は、最適化計算機40から複数の解を取得した場合、複数の解を広告目的あるいは広告予算に沿ってランク付けする。出力部134は、ランク付けした順にソートした解を、広告出稿計画の候補として出稿条件入出力サーバ30に出力する。これにより、出稿条件入出力サーバ30には、広告目的あるいは広告予算に応じてソートされた広告出稿計画の候補が出力される。これにより、出稿条件入出力サーバ30は、広告目的あるいは広告予算に応じて、複数の解から、適した解を選択することが容易となる。
【0054】
なお、出稿条件入出力サーバ30は、出稿計画立案サーバ10から出力された広告出稿計画の候補に、適した解が存在しない場合には、出稿条件を変更し、変更した出稿条件を出稿計画立案サーバ10に通知し、変更後の出稿条件に応じた広告の出稿計画の作成を、再度依頼するようにしてもよい。
【0055】
(広告システム1の処理について)
ここで、
図4を用いて、広告システム1が行う処理について説明する。
図4は、広告システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
【0056】
まず、メタバースシステム20は、広告枠に関する情報を、出稿計画立案サーバ10に通知する(ステップS10)。また、メタバースシステム20は、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報を、出稿計画立案サーバ10に通知する(ステップS11)。出稿計画立案サーバ10は、取得したメタバースVEにおけるユーザの行動を示す情報に基づいて、第1行動情報に、ユーザに関する他の情報、例えば、ユーザの現実世界情報および2Dデジタル情報、第2行動情報、或いは第3属性などを統合する(ステップS12)。また、出稿計画立案サーバ10は、統合した情報をスコアリングする(ステップS13)。
【0057】
一方、出稿条件入出力サーバ30は、メタバース広告VKを出稿するための出稿条件を通知する(ステップS14)。
【0058】
出稿計画立案サーバ10は、広告枠に関する情報、メタバース広告VKを出稿するための出稿条件、およびスコアリングされたユーザの行動に関する情報に基づいて、イジングモデルを生成し、生成したイジングモデルを最適化計算機40に出力する(ステップS15)。最適化計算機40は、イジングモデルの解を出稿計画立案サーバ10に出力する(ステップS16)。
【0059】
出稿計画立案サーバ10は、最適化計算機40から取得した解に基づく広告出稿計画の候補を出稿条件入出力サーバ30に出力する(ステップS17)。出稿条件入出力サーバ30は、出稿計画立案サーバ10から取得した広告出稿計画の候補から、適切な広告出稿計画を決定する。出稿条件入出力サーバ30は、決定した広告出稿計画に基づいて、メタバースシステム20に広告の出稿を依頼する(ステップS19)。
【0060】
(出稿計画立案サーバ10が行う処理について)
ここで、出稿計画立案サーバ10が行う処理について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施形態の出稿計画立案サーバ10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
まず、出稿計画立案サーバ10は、メタバースVEにおける広告枠に関する情報を取得する(ステップS101)。また、出稿計画立案サーバ10は、メタバースVEにおけるユーザの行動に関する情報(第1行動情報)を取得する(ステップS102)。出稿計画立案サーバ10は、第1行動情報に、ユーザに関する他の情報を統合するか否かを判定する(ステップS103)。出稿計画立案サーバ10は、他の情報を統合する場合、第1行動情報に、他の情報、例えば、ユーザの現実世界情報および2Dデジタル情報、第2行動情報、或いは第3属性などを統合する(ステップS104)。出稿計画立案サーバ10は、統合した情報に基づいて、ユーザをスコアリングする(ステップS105)。
【0062】
出稿計画立案サーバ10は、出稿条件、広告枠情報、およびスコアリングしたユーザに関する情報などに基づいて、目的関数および制約条件、を決定する(ステップS106)。出稿計画立案サーバ10は、目的関数及び制約条件を定式化し、定式化した問題をイジングモデルに変換する(ステップS107)。出稿計画立案サーバ10は、イジングモデルを、最適化計算機40に送信する(ステップS108)。出稿計画立案サーバ10は、最適化計算機40から、イジングモデルに対する解を受信する(ステップS109)。出稿計画立案サーバ10は、最適化計算機40から得られた解を、広告出稿計画の候補として出稿条件入出力サーバ30に表示する(ステップS110)。出稿計画立案サーバ10は、表示した広告出稿計画の候補から、広告出稿計画が決定されたか否かを判定する(ステップS111)。
【0063】
例えば、出稿計画立案サーバ10は、出稿条件入出力サーバ30から広告出稿計画として採用する旨の通知を受信した場合、広告出稿計画が決定されたと判定する。一方、出稿計画立案サーバ10は、出稿条件入出力サーバ30から広告出稿計画として採用できない旨の通知を受信した場合、広告出稿計画が決定されなかったと判定する。
【0064】
広告出稿計画が決定されなかった場合、出稿計画立案サーバ10は、目的関数及び制約条件のうち少なくとも一方を変更する(ステップS112)。出稿計画立案サーバ10は、例えば、出稿条件入出力サーバ30から広告出稿計画として採用できない旨の通知と共に、目的関数及び制約条件のうち少なくとも一方を変更する内容を受信し、受信した内容に応じて目的関数及び制約条件のうち少なくとも一方を変更する。出稿計画立案サーバ10は、ステップS106に戻り、変更後の目的関数及び制約条件に対応する解を出力するための処理を実行する。
【0065】
以上説明したように、実施形態の出稿計画立案サーバ10は、取得部130と、統合制御部131とスコアリング処理部132と最適化計算制御部133と、出力部134とを備える。ここで、出稿計画立案サーバ10は「情報処理サーバ」の一例である。統合制御部131とスコアリング処理部132と最適化計算制御部133は、「生成部」の一例である。取得部130は、メタバースVEにおけるユーザの行動を示す第1行動情報、およびメタバースVEに設けられる広告枠に関する広告枠情報を取得する。生成部は、第1行動情報を含むユーザ情報120、広告枠情報121、および出稿条件に基づいて、メタバースVEにおいてユーザに対して提示する広告の出稿計画を生成する。趣向条件には広告目的と広告予算が含まれる。出力部134は、生成部によって生成された前記出稿計画を出力する。
【0066】
これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10は、メタバースに出稿する広告の出稿計画を生成することができる。出稿計画立案サーバ10は、メタバースVEにおけるユーザの行動に基づいて出稿計画を生成することができる。このため、広告効果を高めることが可能である。
【0067】
また、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、生成部は、現実世界におけるユーザの行動を示す第2行動情報を、第1行動情報に統合させた情報を、ユーザ情報120として、出稿計画を生成する。これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、より詳しいユーザの特徴に基づいて、ユーザに適した広告を選択することができる。
【0068】
また、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、生成部は、メタバースVEにおけるユーザの属性である第1属性と、現実世界におけるユーザの属性である第2属性とが類似する度合に応じて、第2行動情報を第1行動情報に統合させる。生成部は統合させた情報を、ユーザ情報120とする。これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、現実世界におけるユーザとメタバースVEにおけるユーザの属性が類似する場合に第2情報を統合することができる。
【0069】
また、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、生成部は、第1属性と第2属性とが類似しない場合、第1行動情報に第2行動情報を統合しない。これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、現実世界におけるユーザとメタバースVEにおけるユーザの属性が類似しない場合に第2情報を統合しないようにすることができる。
【0070】
また、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、生成部は、第1属性と第2属性とが類似しない場合、第1行動情報に、第1属性と前記第2属性を組み合わせた第3属性を統合させた情報を、ユーザ情報として出稿計画を生成する。これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、メタバースVEにおいて、現実世界とは異なるキャラクタを楽しむユーザに特化した広告を選択することができる。
【0071】
また、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、取得部130は、メタバースVEに広告を出稿する条件を取得する。生成部は、メタバースVEに出稿する広告の効果を算出するための目的関数を生成し、前記条件に基づいて前記目的関数の制約条件を生成する。生成部は、制約条件を満たし且つ前記目的関数を最適化する問題として定式化し、前記定式化した問題を最適化計算機40が利用可能なモデルに変換し、変換した前記モデルを解くように最適化計算機40に依頼する。生成部は、最適化計算機40によって導出されたモデルに対する解を用いて、出稿計画を生成する。これにより、実施形態の出稿計画立案サーバ10では、広告出稿の組合せが多岐にわたり、古典コンピュータでは最適な解を導出することが困難な場合であっても、最適化計算機40を用いて最適な解を導出することが可能となる。また、最適化計算機40が量子コンピュータでなくとも、例えば、古典コンピュータを使った古典アニーリングマシン(古典イジングマシン)を用いることにより、最適な解を導出することが可能となる。
【0072】
上述した実施形態における広告システム1及び出稿計画立案サーバ10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0073】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1…広告システム
10…出稿計画立案サーバ(情報処理サーバ)
120…ユーザ情報
121…広告枠情報
130…取得部
131…統合制御部(生成部)
132…スコアリング処理部(生成部)
133…最適化計算制御部(生成部)
134…出力部
20…メタバースシステム
30…出稿条件入出力サーバ
40…最適化計算機