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  • 特開-トランスアクスルの潤滑装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088266
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】トランスアクスルの潤滑装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240625BHJP
【FI】
F16H57/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203348
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆宜
(72)【発明者】
【氏名】小原 新吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 康司
(72)【発明者】
【氏名】降籏 弘城
(72)【発明者】
【氏名】池田 直史
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AC01
3J063BA11
3J063BB03
3J063CA06
3J063CD41
3J063CD45
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE37
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】オイルの減少を抑制することができるトランスアクスルの潤滑装置を提供すること。
【解決手段】トランスアクスルの潤滑装置は、モータの動力を伝達するギアと、一端が前記ギアに接続されており、前記ギアの動力を出力する出力軸と、前記ギアを収容するケースと、前記ケース内に貯留されている第1オイルと、前記ケースと前記出力軸との間に配置されている第1シール部と、前記ケースと前記出力軸との間であって、前記第1シール部より前記ギアから離間した位置に配置されている第2シール部と、前記第1シール部、前記第2シール部、及び前記ケースに囲まれた空間内に貯留されている第2オイルと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの動力を伝達するギアと、
一端が前記ギアに接続されており、前記ギアの動力を出力する出力軸と、
前記ギアを収容するケースと、
前記ケース内に貯留されている第1オイルと、
前記ケースと前記出力軸との間に配置されている第1シール部と、
前記ケースと前記出力軸との間であって、前記第1シール部より前記ギアから離間した位置に配置されている第2シール部と、
前記第1シール部、前記第2シール部、及び前記ケースに囲まれた空間内に貯留されている第2オイルと、
を備えるトランスアクスルの潤滑装置。
【請求項2】
前記第2オイルは、前記第1オイルよりも低蒸気圧のオイルである請求項1に記載のトランスアクスルの潤滑装置。
【請求項3】
前記第1オイルは、前記第2オイルよりも低粘度のオイルである請求項1に記載のトランスアクスルの潤滑装置。
【請求項4】
前記第2オイルは、真空において揮発しにくいオイルである請求項1に記載のトランスアクスルの潤滑装置。
【請求項5】
前記第1シール部は、リップシールであり、
前記第2シール部は、メカニカルシールである請求項1に記載のトランスアクスルの潤滑装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスアクスルの潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のギア等の摺動部は、オイルにより潤滑及び冷却し、発熱による摩耗を抑制する必要がある。このオイルが揮発して減少すると、ギア等が摩耗してしまうため、オイルの減少を抑制する技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、潤滑必要部位に供給される潤滑油の量の低下を抑制可能な潤滑装置が開示されている。特許文献1のように、オイルが減少した部分に他の部分に貯留されているオイルを供給することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-24072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにオイルを供給するには、車両に予め余分にオイルを搭載する必要があり、車両の重量が重くなるため好ましくない。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、オイルの減少を抑制することができるトランスアクスルの潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るトランスアクスルの潤滑装置は、モータの動力を伝達するギアと、一端が前記ギアに接続されており、前記ギアの動力を出力する出力軸と、前記ギアを収容するケースと、前記ケース内に貯留されている第1オイルと、前記ケースと前記出力軸との間に配置されている第1シール部と、前記ケースと前記出力軸との間であって、前記第1シール部より前記ギアから離間した位置に配置されている第2シール部と、前記第1シール部、前記第2シール部、及び前記ケースに囲まれた空間内に貯留されている第2オイルと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オイルの減少を抑制することができるトランスアクスルの潤滑装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るTAユニットを備えるローバの側面図である。
図2図2は、TAユニットの拡大図である。
図3図3は、TAユニットの断面図である。
図4図4は、変形例1に係るTAユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態に係るトランスアクスルの潤滑装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
〔ローバの概略構成〕
図1は、実施形態に係るTAユニットを備えるローバの側面図である。図1に示すローバ1は、複数のモータの動力をそれぞれタイヤに伝達する複数のTA(トランスアスクル)ユニット2を備える。ローバ1は、例えば月面等の極高真空な環境下において活動可能とされている。TAユニット2は、トランスアクスルの潤滑装置としての機能を備えている。そして、ローバ1は、複数のモータがそれぞれ駆動することより、図1の左右方向に走行可能である。
【0012】
〔TAユニットの構成〕
図2は、TAユニットの拡大図である。図3は、TAユニットの断面図である。図3は、図2のA-A線断面に対応する。図3に示すように、TAユニット2は、ギア3と、ケース4と、第1オイル5と、出力軸6と、第1シール部7と、第2シール部8と、第2オイル9と、ベローズ10と、を備える。
【0013】
ギア3は、モータの動力を伝達する。
【0014】
ケース4は、ギア3を収容するとともに、第1オイル5を貯留する。
【0015】
第1オイル5は、ケース4内に貯留されており、ギア3を潤滑及び冷却する。第1オイル5は、第2オイル9よりも低粘度のオイルであってもよい。また、第1オイル5には、ギア3等が摩耗しないように添加剤が加えられていてもよい。
【0016】
出力軸6は、一端がギア3に接続されており、ギア3の動力をケース4の外部に出力する。
【0017】
第1シール部7は、ケース4と出力軸6との間に配置されている。第1シール部7は、リップシールであるが、メカニカルシールであってもよい。リップシールは、例えばゴム系又は樹脂系の材料からなる。
【0018】
第2シール部8は、ケース4と出力軸6との間であって、第1シール部7よりギア3から離間した位置に配置されている。第2シール部8は、メカニカルシールであってよいが、リップシールであってもよい。第2シール部8は、出力軸6とともに回転する回転環81と、ケース4に固定されている固定環82と、を有する。回転環81と固定環82との間には、摺動面81aが形成されている。
【0019】
第2オイル9は、第1シール部7、第2シール部8、及びケース4に囲まれた空間内に貯留されている。第2オイル9は、ケース4と出力軸6との間の摺動部、及び摺動面81aを潤滑及び冷却する。第2オイル9は、第1オイル5よりも低蒸気圧のオイルであってもよい。また、第2オイル9は、真空において揮発しにくい宇宙用の特殊オイル、又はイオン液体であってもよい。
【0020】
ベローズ10は、固定環82を回転環81側に押圧する。
【0021】
〔TAユニットの機能〕
TAユニット2では、第1オイル5は、ケース4と出力軸6との間の摺動部の一部しか油没させていないものの、第2オイル9がケース4と出力軸6との間の摺動部全体を油没させるため、第1オイル5や第1オイル5の添加剤がケース4と出力軸6との間から揮発して減少することが抑制されている。
【0022】
また、月面等の極高真空や地球上の大気圧が低い高地では、オイルや添加剤が揮発しやすいため、第2オイル9を第1オイル5よりも低蒸気圧のオイルとすることにより、第2オイル9が揮発することを抑制することができる。さらに、第2オイル9を真空において揮発しにくい宇宙用の特殊オイル、又はイオン液体とすることにより、第2オイル9が揮発することを抑制することができる。
【0023】
また、第2オイル9により、第1オイル5が揮発することを抑制すると、第1オイル5を第2オイル9よりも低粘度のオイルにすることができ、ギア3の駆動ロスを低減させることができる。
【0024】
また、TAユニット2を地上で用いる場合、第2オイル9を揮発性の低いオイルとし、第1オイル5が揮発することを抑制することにより、第1オイル5を通常では揮発性が高くて使用できない極低粘度のオイルとすることも可能となり、さらにギア3の駆動ロスを低減させることができる。
【0025】
また、TAユニット2では、第2シール部8がオイルや使用条件に適した設計が容易なメカニカルシールであるため、耐久性が高い。さらに、TAユニット2では、第1シール部7がリップシールであるため、軽量でコンパクトな構造とすることができる。
【0026】
また、TAユニット2は、オイルが減少した場合、オイルポンプにより強制給油する構成ではないため、月面等の極低温環境において、凍結等により強制給油の機能が失われて走行不能となることがない。
【0027】
これに対して、従来のTAユニットでは、オイルがケースと出力軸との間の摺動部の一部のみを油没させるため、ケースと出力軸との間の摺動部の油没していない部分からオイルが揮発し、オイルが減少してしまう。特に、月面等の極高真空では、揮発したオイルが真空に放出され、オイルが極めて減少しやすい。
【0028】
また、従来のTAユニットにおいて、オイルによりケースと出力軸との間の摺動部全体を油没させることもできるが、ケース内に貯留するオイルの重量が増大する。月面で用いるローバでは、ロケット打上げ時の重量が増加すると好ましくないため、オイルの重量を増大させることは好ましくない。さらに、オイルによりケースと出力軸との間の摺動部全体を油没させると、ギアの大部分が油没することによりギアの駆動ロスが増大し、ローバの走行可能距離が短くなってしまう。
【0029】
(変形例1)
図4は、変形例1に係るTAユニットの断面図である。図4に示すように、TAユニット2Aにおいて、第2シール部8Aは、リップシールである。このように、第1シール部7及び第2シール部8Aをリップシールとすることにより、TAユニット2Aをさらに軽量でコンパクトな構造としてもよい。
【0030】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ローバ
2、2A TAユニット
3 ギア
4 ケース
5 第1オイル
6 出力軸
7 第1シール部
8、8A 第2シール部
9 第2オイル
10 ベローズ
81 回転環
81a 摺動面
82 固定環
図1
図2
図3
図4