(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088268
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/26 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B65H1/26 312Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203350
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】弓削 真也
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC27
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA16
3F343HA29
3F343HA34
3F343HB03
3F343HC04
3F343HC12
3F343KB03
3F343KB16
3F343LA04
3F343LA13
3F343LC06
3F343LC11
3F343LC17
3F343LD12
3F343MC11
(57)【要約】
【課題】給紙トレイ2を勢いよく挿入したときの衝撃を緩和し、且つ給紙トレイ2を円滑に引き出すことが可能な画像形成装置100を提供する。
【解決手段】給紙トレイ2の側部に設置されたブレーキユニット3と、トレイ収容部12の側部に設置され、給紙トレイ2のスライド方向に沿って配置された長尺状の金属板11とを備える。ブレーキユニット3は、上端近傍が、給紙トレイ2に設置された支点D1に回動可能に軸支され、金属板11を挟むように配置されたブレーキホルダ31と、ブレーキホルダ31の下端近傍に設置された磁性体33と、ブレーキホルダ31における上端近傍の、給紙トレイ2挿入時の対向側に設置された摩擦抵抗部材32を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に設けられたトレイ収容部内にスライドして挿抜可能な給紙トレイを備えた画像形成装置であって、
前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の一方側に設置されたブレーキユニットと、
前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の他方側に設置され、前記給紙トレイのスライド方向に沿って配置された長尺状の金属板と、
を備え、
前記ブレーキユニットは、
上端近傍が、前記一方側に設置された支点に回動可能に軸支され、前記金属板を挟むように配置されたブレーキホルダと、
前記ブレーキホルダの下端近傍に設置された磁性体と、
前記ブレーキホルダにおける前記上端近傍の、前記給紙トレイ挿入時の対向側に設置された摩擦抵抗部材と、
を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置などの画像形成装置には、印刷用紙を供給するための給紙トレイが設けられている。給紙トレイが用紙切れとなった際において、ユーザは給紙トレイをスライドさせて装置本体から引き出す。ユーザは、給紙トレイに印刷用紙を積載した後に給紙トレイを反対方向にスライドさせて、装置本体に挿入する。
【0003】
給紙トレイの挿入時においてユーザが給紙トレイを勢いよく押し込むと、給紙トレイに積載されている印刷用紙の慣性により、リア側の用紙フェンスに異常な荷重が加えられ、破損する可能性がある。
【0004】
特許文献1には、導電体とマグネットを使用した遠心ブレーキを搭載し、給紙カセットがスライド移動しているときにおいて渦電流を発生させて、給紙カセットの挿入速度を減衰させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に開示された技術では、給紙カセットがスライド移動しているときには常に渦電流が発生する。このため、給紙カセットを装置本体から引き出すときにおいてもブレーキが作動してしまい、ユーザは給紙カセットを円滑に引き出せなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、給紙トレイを勢いよく挿入したときの衝撃を緩和し、且つ給紙トレイを円滑に引き出すことが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明に係る画像形成装置は、装置本体に設けられたトレイ収容部内にスライドして挿抜可能な給紙トレイを備えた画像形成装置であって、前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の一方側に設置されたブレーキユニットと、前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の他方側に設置され、前記給紙トレイのスライド方向に沿って配置された長尺状の金属板と、を備え、前記ブレーキユニットは、上端近傍が、前記一方側に設置された支点に回動可能に軸支され、前記金属板を挟むように配置されたブレーキホルダと、前記ブレーキホルダの下端近傍に設置された磁性体と、前記ブレーキホルダにおける前記上端近傍の、前記給紙トレイ挿入時の対向側に設置された摩擦抵抗部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給紙トレイを勢いよく挿入したときの衝撃を緩和し、且つ給紙トレイを円滑に引き出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、給紙トレイの移動方向とブレーキユニットの変位との関係を示す説明図であり、(a)は給紙トレイを引き出す方向にスライドさせているとき、(b)は給紙トレイが停止しているとき、(c)は給紙トレイを挿入する方向にスライドさせているときの状態を示す。
【
図4】
図4は、給紙トレイを装置本体に挿入するときの、ブレーキホルダの様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は、給紙トレイを装置本体から引き出すときの、ブレーキホルダの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、給紙トレイ2から給紙される用紙に画像を印刷し、印刷済みの用紙を排紙する。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置100の装置本体1には、印刷用の用紙を積載する給紙トレイ2を収容するトレイ収容部12が設けられており、給紙トレイ2をトレイ収容部12側に向けてスライド移動させることにより、該給紙トレイ2を挿入し、且つ引き出すことが可能とされている。即ち、給紙トレイ2は、装置本体1に設けられたトレイ収容部12内にスライドして挿抜可能である。
【0015】
以下では、給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿抜する際にスライドさせる方向をX軸方向とする。即ち、給紙トレイ2をX軸の図中右側にスライドさせることにより給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿入でき、X軸の図中左側にスライドさせることにより、給紙トレイ2を給紙トレイ2から引き出すことができる。
【0016】
トレイ収容部12の、給紙トレイ2が挿入される部位の近傍には、X軸方向に伸びる平板形状の金属板11が設置されている。金属板11は、例えばアルミニウムで構成されている。
【0017】
給紙トレイ2は、複数枚の印刷用紙を載置する用紙載置部22と、載置された用紙位置を規制する用紙フェンス21を備えている。用紙載置部22に印刷用紙を載置した状態で、給紙トレイ2をトレイ収容部12に差し込むことにより、印刷用紙を画像形成装置100内における所定の給紙位置にセットすることができる。
【0018】
給紙トレイ2の側辺部23には、ブレーキユニット3が設けられている。
図2は、
図1に示す「A」部の拡大図である。
【0019】
ブレーキユニット3は、ブレーキホルダ31と、摩擦抵抗部材32と、磁性体33を備えている。
【0020】
ブレーキホルダ31は、X軸方向から見たときにU字形状をなしており、トレイ収容部12内への収容時において、前述した金属板11を挟むように配置されている。ブレーキホルダ31は、上端部近傍に支点D1が形成されており、給紙トレイ2の側辺部23に軸支されている。即ち、ブレーキホルダ31は支点D1を軸として、図中矢印Y1の方向に回転動が可能とされている。
【0021】
磁性体33は例えば永久磁石であり、ブレーキホルダ31の下端部近傍に取り付けられている。磁性体33は、給紙トレイ2をトレイ収容部12内へ収容する際に、金属板11に近接する位置に配置されている。給紙トレイ2のトレイ収容部12への挿入時及び引き出し時において、磁性体33は、金属板11に近接した状態で該金属板11の長手方向に沿って移動することになる。
【0022】
摩擦抵抗部材32は、ブレーキホルダ31における上端部近傍の、装置本体1側(図中、X軸方向の右側)に設置されている。即ち、摩擦抵抗部材32は、ブレーキホルダ31における上端近傍の、給紙トレイ2の挿入時の対向側に設置されている。「対向側」とは、給紙トレイ2と装置本体1とが向き合う方向を指す。従って、装置本体1側にブレーキユニット3を搭載する構成とする場合には、X軸方向の左側が「対向側」となる。摩擦抵抗部材32は、例えばブレーキシューである。
【0023】
次に、給紙トレイ2をトレイ収容部12から引き出すとき、及び給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿入するときにおける、ブレーキユニット3の動作について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、給紙トレイ2の移動方向とブレーキユニット3の変位との関係を示す説明図であり、(a)は給紙トレイ2を引き出す方向にスライドさせているとき、(b)は給紙トレイ2が停止しているとき、(c)は給紙トレイ2を挿入する方向にスライドさせているときの状態を示す。
【0024】
図4は、給紙トレイ2をトレイ収容部12内に挿入するときのブレーキユニット3の動作を示す説明図、
図5は、給紙トレイ2をトレイ収容部12から引き出すときのブレーキユニット3の動作を示す説明図である。
【0025】
図3(b)に示すように、給紙トレイ2が停止しているときには、ブレーキホルダ31の自重により該ブレーキホルダ31は、下方を向いた状態となる。
【0026】
図3(a)に示すように、給紙トレイ2をトレイ収容部12から引き出す際には、ブレーキホルダ31は金属板11に対して図中の矢印Y11の方向に移動する。ブレーキホルダ31が金属板11の近傍をスライドすることにより、磁性体33により生じる磁界が変化する。金属板11に渦電流が発生し、磁性体33のスライドを妨げる方向に渦電流ブレーキが作用する。このため、ブレーキホルダ31の下端部は、図中矢印Y12の方向に変位する。
【0027】
ブレーキホルダ31の上端部近傍に設けられた摩擦抵抗部材32は、図中矢印Y13の方向に変位する。即ち、給紙トレイ2をトレイ収容部12から引き出す場合には、
図3(a)及び
図5に示すように、摩擦抵抗部材32と金属板11は接触せず、摩擦抵抗部材32と金属板11との間には摩擦抵抗は作用しない。このため、ユーザは円滑に給紙トレイ2を引き出すことができる。
【0028】
図3(c)に示すように、給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿入する際には、ブレーキホルダ31は図中の矢印Y14の方向に移動する。ブレーキホルダ31が金属板11の近傍をスライドすることにより、磁性体33により生じる磁界が変化する。金属板11に渦電流が発生し、磁性体33のスライドを妨げる方向に渦電流ブレーキが働く。このため、ブレーキホルダ31の下端部は、図中矢印Y15の方向に変位する。
【0029】
ブレーキホルダ31の上端部近傍に設けられた摩擦抵抗部材32は、図中矢印Y16の方向に変位する。即ち、給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿入する場合には、
図3(c)及び
図4に示すように、摩擦抵抗部材32と金属板11が接触するので、摩擦抵抗部材32と金属板11との間に摩擦抵抗が発生する。
【0030】
即ち、ブレーキユニット3は、磁性体33が力点、符号D1が支点、摩擦抵抗部材32が作用点とされたテコの原理で、摩擦抵抗部材32を金属板11に接触させるため、小さい渦電流ブレーキでも大きな摩擦抵抗を得ることができる。
【0031】
また、給紙トレイ2を挿入する速度が速いほど、渦電流が大きくなり、矢印Y15の方向に作用する力が強くなる。このため、ユーザがゆっくりと給紙トレイ2をトレイ収容部12に挿入する場合には、摩擦抵抗部材32による摩擦抵抗は小さい、或いは、摩擦抵抗はほぼ発生しない。一方、ユーザが給紙トレイ2を勢い良くトレイ収容部12に挿入する場合には、摩擦抵抗部材32と金属板11との間に強い摩擦抵抗が発生する。
【0032】
上記の内容をまとめると、下記(A)~(C)となる。
(A)給紙トレイ2を引き出すときには、摩擦抵抗部材32は金属板11に接触せず、引き出し時の速度に関係なく摩擦抵抗は発生しない。
(B)給紙トレイ2をゆっくり挿入するときには、摩擦抵抗部材32と金属板11との間には弱い摩擦抵抗が発生する、或いは、摩擦抵抗はほぼ発生しない。
(C)給紙トレイ2を勢い良く挿入するときには、摩擦抵抗部材32と金属板11との間には強い摩擦抵抗が発生する。
【0033】
このように、本実施形態に係る画像形成装置100では、給紙トレイ2の引き出し時には、摩擦抵抗を受けないので、円滑に給紙トレイ2を引き出すことができる。また、給紙トレイ2をゆっくり挿入する際には、大きな摩擦抵抗が生じることがない。更に、給紙トレイ2を勢い良く挿入する際には、大きな摩擦抵抗が発生する。このため、
図1に示した用紙載置部22に印刷用紙を積載した状態で、給紙トレイ2をトレイ収容部12内に勢い良く挿入した場合に、用紙フェンス21が大きな衝撃を受けることを回避できる。
【0034】
即ち、用紙載置部22に積載されている印刷用紙の慣性により、用紙フェンス21に異常な荷重が加えられるという問題を回避することが可能になる。
【0035】
また、磁性体33、及び摩擦抵抗部材32を備えたブレーキユニット3を給紙トレイ2側、或いは、トレイ収容部12側に設置するという極めて簡単な構造のため、安価に構成することができ、且つ故障の発生を低減することが可能になる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、給紙トレイ2側にブレーキユニット3を搭載し、装置本体1側に金属板11を搭載する例について示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、給紙トレイ2側に金属板11を搭載し、装置本体1側にブレーキユニット3を搭載する構成としてもよい。
【0037】
また、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0038】
[付記1]
装置本体に設けられたトレイ収容部内にスライドして挿抜可能な給紙トレイを備えた画像形成装置であって、
前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の一方側に設置されたブレーキユニットと、
前記給紙トレイの側部、及び、前記トレイ収容部の側部の他方側に設置され、前記給紙トレイのスライド方向に沿って配置された長尺状の金属板と、
を備え、
前記ブレーキユニットは、
上端近傍が、前記一方側に設置された支点に回動可能に軸支され、前記金属板を挟むように配置されたブレーキホルダと、
前記ブレーキホルダの下端近傍に設置された磁性体と、
前記ブレーキホルダにおける前記上端近傍の、前記給紙トレイ挿入時の対向側に設置された摩擦抵抗部材と、
を備えた画像形成装置。
【符号の説明】
【0039】
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 ブレーキユニット
11 金属板
12 給紙トレイ
12 トレイ収容部
21 用紙フェンス
22 用紙載置部
23 側辺部
31 ブレーキホルダ
32 摩擦抵抗部材
33 磁性体
100 画像形成装置
D1 支点