(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088275
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/18 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02P3/18 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203361
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391008515
【氏名又は名称】株式会社アイエイアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真一
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530AA02
5H530CC08
5H530CC23
5H530CD13
5H530CD34
5H530CE15
5H530DD03
5H530DD14
5H530EE03
(57)【要約】
【課題】素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能な制御装置を提供する。
【解決手段】同一のハードウェア構成によって定格出力の異なる一のモーターを制御可能な制御装置であって、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記モーターの回生運転中に生じる回生電力を前記制御装置の内部で熱に変換する第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、必要に応じて前記制御装置に接続可能な第2抵抗器であって、前記制御装置の外部で前記回生電力を熱に変換する前記第2抵抗器へ回生電力を供給する制御が可能なように構成されている制御部を備える制御装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のハードウェア構成によって定格出力の異なる一のモーターを制御可能な制御装置であって、
前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記モーターの回生運転中に生じる回生電力を前記制御装置の内部で熱に変換する第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、必要に応じて前記制御装置に接続可能な第2抵抗器であって、前記制御装置の外部で前記回生電力を熱に変換する前記第2抵抗器へ回生電力を供給する制御が可能なように構成されている制御部を備える、制御装置。
【請求項2】
前記第1抵抗器に直列に接続された第1スイッチング素子と、
前記制御装置に前記第2抵抗器が接続された状態となった場合に当該第2抵抗器に接続される第2スイッチング素子と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2抵抗器が接続された状態で、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記回生運転中、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンする制御が可能なように構成されている、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーを備え、
前記制御部は、前記第2抵抗器が接続された状態で、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上の場合、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーを備え、
前記制御部は、前記定格出力の値が所定の出力値以上のモーターが接続されている場合において、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上のとき、前記第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、前記第2抵抗器へ回生電力を供給する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーと、
温度センサーと、
を更に備え、
前記制御部は、前記温度センサーが測定した温度が所定の温度以上の場合において、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上のとき、前記第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、前記第2抵抗器へ回生電力を供給する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記温度センサーは、前記コンデンサーの寿命予測用に設けられたものである、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記モーターと、当該モーターの駆動によって移動する移動体とを備えたアクチュエーターの運転を制御するように構成されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバーター制御によりモーターの駆動を制御する制御装置には、モーターを停止させる際などに制御装置に回生される運動エネルギーを消費するための回生抵抗を有している。特許文献1には、サーボ制御装置の発明が開示されている。特許文献1で開示されている発明は、内部回生抵抗に加え、モーターの定格出力やその用途等、必要に応じてサーボ制御装置の外部に外部回生抵抗ユニットを接続可能になっている。当該サーボ制御装置は、内部にて内部回生抵抗と直列接続されたスイッチング素子をオンすることにより、内部回生抵抗及び外部回生抵抗ユニットの外部回生抵抗の両方で回生電力を消費、すなわち、熱に変換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のモーターの駆動を制御する制御装置は、同一のハードウェアで数十W~数百Wの幅広い定格出力のモーターに対応させようとすると、例えば、定格出力が最大のモーターが接続されている場合、内部回生抵抗と外部回生抵抗におけるスイッチングが一括管理されるため、内部回生抵抗の発熱に伴う制御装置の発熱量が当該制御装置の放熱能力を上回ってしまうおそれがある。そのため、数百W程度の定格出力が大きいモーターが接続されると、制御装置の内部のコンデンサーやスイッチング素子等の素子の温度が定格温度を超えて使用不能(定格温度超過)となったり、素子の寿命が短くなったりするおそれがあった。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る制御装置は、同一のハードウェア構成によって定格出力の異なる一のモーターを制御可能な制御装置であって、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記モーターの回生運転中に生じる回生電力を前記制御装置の内部で熱に変換する第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、必要に応じて前記制御装置に接続可能な第2抵抗器であって、前記制御装置の外部で前記回生電力を熱に変換する前記第2抵抗器へ回生電力を供給する制御が可能なように構成されている制御部を備える。
【0007】
本開示の第1態様によれば、発熱量に応じて第1抵抗器への回生電力の供給を遮断して内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0008】
本開示の第2態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記第1抵抗器に直列に接続された第1スイッチング素子と、前記制御装置に前記第2抵抗器が接続された状態となった場合に当該第2抵抗器に接続される第2スイッチング素子と、を更に備え、前記制御部は、前記第2抵抗器が接続された状態で、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記回生運転中、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンする制御が可能なように構成されている。
【0009】
本開示の第2態様によれば、発熱量に応じてスイッチング素子のオン、オフを切り替え、第1抵抗器への回生電力の供給を遮断して内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0010】
本開示の第3態様に係る制御装置は、第2態様に係る制御装置であって、前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーを備え、前記制御部は、前記第2抵抗器が接続された状態で、前記モーターを駆動させる際に前記制御装置の内部で生じる発熱量に応じて、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上の場合、前記第1スイッチング素子をオフとし、前記第2スイッチング素子をオンする。
【0011】
本開示の第3態様によれば、発熱量に応じてスイッチング素子のオン、オフを切り替え、第1抵抗器への回生電力の供給を遮断して内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0012】
本開示の第4態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーを備え、前記制御部は、前記定格出力の値が所定の出力値以上のモーターが接続されている場合において、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上のとき、前記第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、前記第2抵抗器へ回生電力を供給する。
【0013】
本開示の第4態様によれば、接続されるモーターの定格出力に応じて第1抵抗器への回生電力の供給を遮断することにより内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0014】
本開示の第5態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置であって、前記モーターを駆動させる電源の電圧を平滑化するコンデンサーと、温度センサーと、を更に備え、前記制御部は、前記温度センサーが測定した温度が所定の温度以上の場合において、前記コンデンサーの端子電圧が所定の閾値電圧以上のとき、前記第1抵抗器への前記回生電力の供給を遮断し、前記第2抵抗器へ回生電力を供給する。
【0015】
本開示の第5態様によれば、内部の温度に応じて第1抵抗器への回生電力の供給を遮断して内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0016】
本開示の第6態様に係る制御装置は、第5態様に係る制御装置であって、前記温度センサーは、前記コンデンサーの寿命予測用に設けられたものである。
【0017】
本開示の第6態様によれば、コンデンサーの寿命予測用に設けられた温度センサーにより測定された内部の温度に応じて第1抵抗器への回生電力の供給を遮断して内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【0018】
本開示の第7態様に係る制御装置は、第1態様~第6態様のいずれかに係る制御装置であって、前記制御装置は、前記モーターと、当該モーターの駆動によって移動する移動体とを備えたアクチュエーターの運転を制御するように構成されている。
【0019】
本開示の第7態様によれば、モーターと、当該モーターの駆動によって移動する移動体とを備えたアクチュエーターの運転の制御により生じる回生電力の第1抵抗器への供給を遮断することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、内部発熱量を抑制することで、素子の定格温度超過の抑制及び長寿命化を図り、かつ幅広い定格出力のモーターに対応可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
【
図5】制御装置及びアクチュエーターの構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
図1は、本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
図1に示した制御装置10は、インバーター制御によりモーター20の駆動を制御可能な装置である。制御装置10は、モーター20と、当該モーター20の駆動によって移動する移動体(図示せず)とを備えたアクチュエーター(図示せず)の運転を制御するように構成されている。
【0024】
制御装置10は、外部の交流電源101から供給される交流電流を直流電流に変換する整流器102及び電圧を平滑化する平滑コンデンサー103、モーター20の回生運転中に生じる回生電力を熱に変換することで消費する内部回生抵抗104、内部回生抵抗104と直列に接続されるスイッチング素子105、スイッチング素子105と並列に接続されるスイッチング素子106、整流器102及び平滑コンデンサー103が交流電流から変換した直流電流を交流電流に変換してモーター20へ送る(モーター20に電力を供給する)インバーター回路107、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcを検出し、スイッチング素子105、106のオン、オフを切り替えるマイクロコントローラー110を備える。インバーター回路107は本開示のインバーター部の一例である。また、スイッチング素子105、106としては、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、トランジスターなどが挙げられる。
【0025】
制御装置10は、同一のハードウェア構成によって定格出力の異なる一のモーター20を制御可能である。より詳細には、制御装置10は、定格出力の値が数十Wから数百Wのまでのモーター20の制御が可能となっている。そのために、インバーター回路107を構成するスイッチング素子(例えば、MOSFET)、平滑コンデンサー103等、制御装置10を構成する部品、素子として、それらの定格、特性(耐圧)を定格出力が最大のモーター20に合わせたものが選定されている。
【0026】
この制御装置10(後述する外部回生抵抗ユニット120が未接続の状態)では、モーター20の回生運転中以外の運転中、スイッチング素子105はオフ状態であり、モーター20の回生運転中、スイッチング素子105がオンとなることで、内部回生抵抗104に回生電力を供給することが可能である。これにより、回生電力が熱に変換され、消費される。これは、回生運転中、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcが過度に上昇する場合があるためである。そこで、制御装置10の後述するマイクロコントローラー110は、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcが所定の閾値電圧Vt以上のときにスイッチング素子105をオンとすることで、端子電圧Vcを低下させる放電制御を実行する。一方、スイッチング素子106については、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上のときにスイッチング素子105と同様にオンとなるが、これに限るものではなく、オフ状態のままであってもよい。
【0027】
制御装置10は、さらに外部回生抵抗ユニット120を必要に応じて接続可能に、すなわち着脱可能に構成されている。外部回生抵抗ユニット120は、モーター20の回生運転中に生じる回生電力を熱に変換することで消費する外部回生抵抗121を備える。内部回生抵抗104は本開示の第1抵抗器の一例であり、外部回生抵抗121は本開示の第2抵抗器の一例である。また、スイッチング素子105は本開示の第1スイッチング素子の一例であり、スイッチング素子106は本開示の第2スイッチング素子の一例である。
【0028】
外部回生抵抗ユニット120が接続された状態の制御装置10では、モーター20の回生運転中、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合、基本的には(後述する内部回生抵抗104への回生電力の供給を遮断する場合を除き)、スイッチング素子105、106の両方がオンとなる(すなわち、内部回生抵抗104及び外部回生抵抗121による放電制御を実行する)。これにより、内部回生抵抗104及び外部回生抵抗121の両方に回生電力が供給される。したがって、制御装置10の内部及び外部で回生電力が熱に変換され、消費されると共に端子電圧Vcが低下する。なお、制御装置10に外部回生抵抗ユニット120が接続された状態では、モーター20の回生運転中以外の運転中、スイッチング素子105、106はともにオフ状態である。
【0029】
マイクロコントローラー110は、本開示の制御部の一例である。マイクロコントローラー110は、外部回生抵抗ユニット120が制御装置10に接続されている場合において、モーター20を駆動させる際に制御装置10の内部で生じる発熱量に応じて、内部回生抵抗104への回生電力の供給を遮断し、外部回生抵抗121へ回生電力を供給する制御が可能なように構成されている。なお、マイクロコントローラー110は、外部回生抵抗ユニット120が制御装置10に接続されているかどうかを、図示しない信号線を通じた信号により判定しうる。
【0030】
より具体的には、マイクロコントローラー110は、外部回生抵抗ユニット120が接続された状態で、モーター20を駆動させる際に制御装置10の内部で生じる発熱量に応じて、回生運転中、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合、スイッチング素子105をオフし(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行しない)、スイッチング素子106をオンとする(すなわち、外部回生抵抗121による放電制御を実行する)。要するに、マイクロコントローラー110は、上述の発熱量に応じて、回生運転中、スイッチング素子105をオフし、スイッチング素子106をオンする制御が可能なように構成されている。マイクロコントローラー110がスイッチング素子105をオフすることで、内部回生抵抗104が回路から切り離され、モーター20の回生運転時に生じる回生電力の内部回生抵抗104への供給が遮断される。また、マイクロコントローラー110がスイッチング素子106をオンすることで、モーター20の回生運転時に生じる回生電力が外部回生抵抗121へのみ供給される。
【0031】
マイクロコントローラー110がスイッチング素子105、106のオン、オフを制御することで、本実施形態に係る制御装置10は、数百W程度の定格出力が大きいモーターが接続された場合に、制御装置10の内部の平滑コンデンサー103、スイッチング素子105、106等の素子の定格温度超過を抑制すること及び素子の寿命を延ばすことが可能となる。
【0032】
制御装置10は、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合に、マイクロコントローラー110でスイッチング素子105についての放電制御を実行するか(スイッチング素子105がオン)、放電制御を実行しないか(スイッチング素子105がオフ)を、内部の温度が所定の閾値以上となったかどうかに基づいて決定してもよい。
【0033】
図2は、本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
図2に示した制御装置10は、
図1に示した制御装置10に、温度センサー108が追加された構成を有する。温度センサー108は、制御装置10の内部の温度、特に、平滑コンデンサー103の寿命予測(例えば、特許第7039019号公報で開示)のために、平滑コンデンサー103の周囲の温度を測定するセンサーである。
【0034】
マイクロコントローラー110は、温度センサー108から温度の測定値を逐次取得し、取得した測定値に応じてスイッチング素子105、106のオン、オフを制御する。例えばマイクロコントローラー110は、温度センサー108から取得した温度の測定値が所定の閾値を上回れば、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合、オン状態のスイッチング素子105をオフ又はオフ状態のスイッチング素子105をオフのままとし(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行しない)、スイッチング素子106をオンとする(すなわち、外部回生抵抗121による放電制御を実行する)ように制御してもよい。逆に、例えばマイクロコントローラー110は、温度センサー108から取得した温度の測定値が所定の閾値以下となれば、スイッチング素子105をオンする(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行する)ように制御してもよい。
【0035】
また例えば、マイクロコントローラー110は、温度センサー108から取得した温度の測定値の、所定の期間における累積値が所定の閾値を上回れば、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合、オン状態のスイッチング素子105をオフ又はオフ状態のスイッチング素子105をオフのままとし(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行しない)、スイッチング素子106をオンする(すなわち、外部回生抵抗121による放電制御を実行する)ように制御してもよい。逆に、例えば、マイクロコントローラー110は、温度センサー108から取得した温度の測定値の、所定の期間における累積値が所定の閾値以下となれば、スイッチング素子105をオンする(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行する)ように制御してもよい。
【0036】
マイクロコントローラー110が、制御装置10の内部の温度に応じてスイッチング素子105、106のオン、オフを制御する(言い換えれば、放電制御を実行するか否かを決定する)ことで、本実施形態に係る制御装置10は、数百W程度の定格出力が大きいモーターが接続された場合に、制御装置10の内部の平滑コンデンサー103、スイッチング素子105、106等の素子の定格温度超過を抑制すること及び素子の寿命を延ばすことが可能となる。
【0037】
図1、
図2に示した制御装置10は、スイッチング素子105、106が並列に接続されることで、モーター20を駆動させる際に制御装置10の内部で生じる発熱量に応じて、内部回生抵抗104への回生電力の供給を遮断し、外部回生抵抗121へ回生電力を供給するよう制御していたが、本開示は係る例に限定されない。
【0038】
図3は、本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
図3に示した制御装置10は、インバーター制御によりモーター20の駆動を制御する装置である。
【0039】
制御装置10は、外部の交流電源101から供給される交流電流を直流電流に変換する整流器102及び電圧を平滑化する平滑コンデンサー103、モーター20の回生運転中に生じる回生電力を熱に変換することで消費する内部回生抵抗104、内部回生抵抗104と直列に接続されるスイッチング素子115、スイッチング素子115と直列に接続されるスイッチング素子116、整流器102及び平滑コンデンサー103が交流電流から変換した直流電流を交流電流に変換してモーター20へ送るインバーター回路107、スイッチング素子115、116のオン、オフを切り替えるマイクロコントローラー110を備える。スイッチング素子115は本開示の第1スイッチング素子の一例であり、スイッチング素子116は本開示の第2スイッチング素子の一例である。スイッチング素子115、116としては、例えば、MOSFET、IGBT、トランジスターなどが挙げられる。
【0040】
マイクロコントローラー110は、本開示の制御部の一例である。マイクロコントローラー110は、外部回生抵抗ユニット120が接続されている場合においてモーター20を駆動させる際に制御装置10の内部で生じる発熱量に応じて、内部回生抵抗104への回生電力の供給を遮断し、外部回生抵抗121へ回生電力を供給するよう制御する。
【0041】
より具体的には、マイクロコントローラー110は、外部回生抵抗ユニット120が接続されている場合において、モーター20を駆動させる際に制御装置10の内部で生じる発熱量に応じて、回生運転中、平滑コンデンサー103の端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上の場合、スイッチング素子115をオフとし(すなわち、内部回生抵抗104による放電制御を実行しない)、オン状態のスイッチング素子116をオンする(すなわち、外部回生抵抗121による放電制御を実行する)ように構成されている。マイクロコントローラー110がスイッチング素子115をオフすることで、内部回生抵抗104が回路から切り離され、モーター20の回生運転時に生じる回生電力の内部回生抵抗104への供給が遮断される。また、マイクロコントローラー110がスイッチング素子116をオンのままとすることで、モーター20の回生運転時に生じる回生電力が外部回生抵抗121へのみ供給される。
【0042】
マイクロコントローラー110がスイッチング素子115、116のオン、オフを制御することで、本実施形態に係る制御装置10は、数百W程度の定格出力が大きいモーターが接続された場合に、制御装置10の内部の平滑コンデンサー103、スイッチング素子105、106等の素子の定格温度超過を抑制すること及び素子の寿命を延ばすことが可能となる。
【0043】
制御装置10は、マイクロコントローラー110でスイッチング素子115、116のオン、オフを制御する際に、内部の温度が所定の閾値以上となったかどうかを制御のトリガとしてもよい。
【0044】
図4は、本実施形態に係る制御装置の概略構成を示す図である。
図4に示した制御装置10は、
図3に示した制御装置10に、温度センサー108が追加された構成を有する。温度センサー108は、制御装置10の内部の温度、特に、平滑コンデンサー103の周囲の温度を測定するセンサーである。
図2に示した構成の場合と同様に、マイクロコントローラー110は、温度センサー108から温度の測定値を逐次取得し、取得した測定値に応じてスイッチング素子105、106のオン、オフを制御する。
【0045】
続いて、本開示の実施形態に係る制御装置10が制御するアクチュエーターの構成例を説明する。
【0046】
図5は、本開示の実施形態に係る制御装置10及びアクチュエーター2の構成の一例を概略的に示す図である。
図5に示すように、アクチュエーター2は、モーター20、エンコーダー21、出力シャフト23、カップリング24、すべりねじ軸25、すべりねじナット26、及び移動体27を備えている。なお、すべりねじ軸25及びすべりねじナット26は、ボールねじ軸及びボールねじナットとしてもよい。なお、
図5では、アクチュエーター2の動作の一例として押付け動作を説明するが、本開示は、アクチュエーター2の動作は押付け動作に限るものではない。また、
図5の例では、移動体27は、ロッドタイプとして示しているが、テーブルタイプであってもよい。
【0047】
エンコーダー21は、モーター20に取り付けられている。エンコーダー21は、モーター20の回転位置を検出し、検出した位置をフィードバック位置信号として制御装置10に出力する。
【0048】
モーター20は、制御装置10によって制御され、移動体27を移動させるための駆動源である。より詳細には、モーター20は、移動体27を出力シャフト23の軸方向に往復させるように軸移動させる。
【0049】
モーター20の出力シャフト23は、カップリング24を介して、すべりねじ軸25が結合されている。すべりねじ軸25は、すべりねじナット26と共に、モーター20の回転運動を並進運動に変換するための機械部品として構成される。移動体27は、すべりねじナット26を介して、すべりねじ軸25に接合されており、モーター20の回転に応じて、ワーク30に向かう方向に移動する。これにより、移動体27がワーク30に接触し、所定位置までワーク30が押付けられる。ワーク30は、例えば、作業台(図示省略)に設置されている。
【0050】
移動体27は、最初に、ワーク30から一定距離離れた場所(
図1の後退端)に位置している。アプローチ動作では、モーター22の回転に応じて、移動体27が後退端からアプローチ終了位置まで移動する。押付け動作では、モーター22の回転に応じて、移動体27がアプローチ終了位置から前進端まで移動する。
【0051】
以上、各実施形態に係る制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置の機能をコンピューターに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピューターが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0052】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0053】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピューターを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらの変更例または修正例についても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記実施形態において、マイクロコントローラー110は、制御装置10に接続されるモーター20の定格出力に関する情報をモーター20から取得し、制御装置10に接続されるモーター20の定格出力に応じてスイッチング素子105、106、115、116のオン、オフを制御してもよい。すなわち、マイクロコントローラー110は、モーター20の定格出力が所定値以上であった場合において、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上のときは、スイッチング素子105又はスイッチング素子115をオフのままとし(内部回生抵抗104による放電制御を実行しない)、スイッチング素子106又はスイッチング素子116をオンする(外部回生抵抗121による放電制御を実行する)よう制御してもよい。一方、マイクロコントローラー110は、回生運転中、モーター20の定格出力が所定値未満であった場合に、回生運転中、端子電圧Vcが閾値電圧Vt以上のとき、スイッチング素子105又はスイッチング素子115をオンとし(内部回生抵抗104による放電制御を実行する)、スイッチング素子106又はスイッチング素子116をオン(外部回生抵抗121による放電制御を実行する)するよう制御してもよい。なおマイクロコントローラー110は、モーター20の定格出力に関する情報を、図示しない信号線を通じてモーター20から取得してもよく、外部から入力されることによって取得してもよい。
【0057】
なお、本明細書でいう「回生運転」は、モーター20を停止(減速)させる際に発生するものに限るものではない。例えば、モーター20の出力シャフト23の軸方向が鉛直方向となる、アクチュエーター2の垂直設置時に、重力も利用して移動体27を下降させる運転時などモーター20の出力シャフト23が外力によって回転する際も回生運転となる。
【0058】
また、上記実施形態において記載された効果は、説明的又は例示的なものであり、上記実施形態において記載されたものに限定されない。つまり、本開示に係る技術は、上記実施形態において記載された効果とともに、又は上記実施形態において記載された効果に代えて、上記実施形態における記載から、本開示の技術分野における通常の知識を有する者には明らかな他の効果を奏しうる。
【符号の説明】
【0059】
10 制御装置
101 交流電源
102 整流器
103 平滑コンデンサー
104 内部回生抵抗
105、106 スイッチング素子
107 インバーター回路
110 マイクロコントローラー
115、116 スイッチング素子
2 アクチュエーター
20 モーター
21 エンコーダー
23 出力シャフト
24 カップリング
25 すべりねじ軸
26 すべりねじナット
27 移動体
30 ワーク