(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088278
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタおよび固体酸化物形電気化学セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20240625BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/021 20160101ALI20240625BHJP
H01M 8/0215 20160101ALI20240625BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240625BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20240625BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/12 101
H01M8/021
H01M8/0215
H01M8/12 102A
C25B1/042
C25B9/65
C23C28/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203365
(22)【出願日】2022-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2018年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発/高温水蒸気電解技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌平
(72)【発明者】
【氏名】今井 潔
(72)【発明者】
【氏名】亀田 常治
(72)【発明者】
【氏名】浅山 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正人
(72)【発明者】
【氏名】長田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 理子
【テーマコード(参考)】
4K021
4K044
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DA09
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA03
4K044AA02
4K044AA03
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4K044BB04
4K044BC05
4K044BC14
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4K044CA53
4K044CA62
5H126AA14
5H126BB06
5H126GG02
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】保護膜の金属基材に対する密着性を改善するとともに、電気抵抗を低減することにより、電気伝導性を向上させる。
【解決手段】固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタは、クロムを含有する鉄基合金を含む金属基材と、第1方向において、金属基材の上に設けられた保護膜と、を具備する、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタである。保護膜は、金属基材の表面に設けられ、第1の金属元素を含有する金属層と、金属層の上方に設けられ、第1の金属元素と異なる第2の金属元素を含有するスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む酸化物層と、金属層と酸化物層との間に設けられ、第1の金属元素を含有する第1の相と、少なくとも1つの酸化物を含有する第2の相と、を有する混合層と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムを含有する鉄基合金を含む金属基材と、
第1方向において、前記金属基材の上に設けられた保護膜と、
を具備する、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタであって、
前記保護膜は、
前記金属基材の表面に設けられ、第1の金属元素を含有する金属層と、
前記金属層の上方に設けられ、前記第1の金属元素と異なる第2の金属元素を含有するスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む酸化物層と、
前記金属層と前記酸化物層との間に設けられ、前記第1の金属元素を含有する第1の相と、前記少なくとも1つの酸化物を含有する第2の相と、を有する混合層と、
を有する、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項2】
前記第1の金属元素は、金、銀、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項3】
前記第2の金属元素は、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、鉄、クロム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ランタン、およびストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項4】
前記第2の金属元素は、コバルトおよびニッケルである、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項5】
前記混合層の厚さは、前記保護膜の厚さの10%以上70%以下である、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項6】
前記第1の相は、前記保護膜の厚さ方向に1μm以上前記混合層の厚さ以下の長さを有する、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項7】
前記保護膜の厚さは、1μm以上50μm以下である、請求項1に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ。
【請求項8】
水素原子を有する物質を含む雰囲気と接する第1電極と、酸素を含む雰囲気と接する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された固体酸化物電解質層とを備える第1電気化学セルと、
水素原子を有する物質を含む雰囲気と接する第1電極と、酸素を含む雰囲気と接する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在された固体酸化物電解質層とを備える第2電気化学セルと、
前記第1電気化学セルの前記第1電極および前記第2電気化学セルの前記第2電極と電気的に接続されるように、前記第1電極と前記第2電極との間に配置されたインターコネクタとを具備する固体酸化物形電気化学セルスタックであって、
前記インターコネクタは、クロムを含有する鉄基合金を含む金属基材と、前記金属基材の表面に設けられた保護膜と、を具備し、
前記保護膜は、
前記金属基材の表面に設けられ、第1の金属元素を含有する金属層と、
前記金属層の上方に設けられ、前記第1の金属元素と異なる第2の金属元素を含有するスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む酸化物層と、
前記金属層と前記酸化物層との間に設けられ、前記第1の金属元素を含有する第1の相と、前記少なくとも1つの酸化物を含有する第2の相と、を有する混合層と、
を有する、固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項9】
前記第1の金属元素は、金、銀、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項10】
前記第2の金属元素は、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、鉄、クロム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ランタン、およびストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項11】
前記第2の金属元素は、コバルトおよびニッケルである、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項12】
前記混合層の厚さは、前記保護膜の厚さの10%以上70%以下である、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項13】
前記第1の相は、前記保護膜の厚さ方向に1μm以上前記混合層の厚さ以下の長さを有する、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【請求項14】
前記保護膜の厚さは、1μm以上50μm以下である、請求項8に記載の固体酸化物形電気化学セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタおよび固体酸化物形電気化学セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会に向けた新エネルギーの1つとして、水素が挙げられる。水素の利用分野として、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池が注目されている。燃料電池は高いエネルギー利用効率を有し、大規模分散電源、家庭用電源、移動用電源として開発が進められている。燃料電池のうち、効率等の観点から、固体酸化物からなる電解質を使用して電気化学反応により電気エネルギーを得る固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)が注目されている。また、水素の製造においては、高温の水蒸気の状態で水を電気分解する高温水蒸気電解法を適用した固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)の研究が進められている。SOECの動作原理はSOFCの逆反応であり、SOFCと同様に、固体酸化物からなる電解質が使用されている。また、SOECは二酸化炭素(CO2)を電気分解して一酸化炭素(CO)を生成し、COと水素(H2)を合成することで、最終的にメタン(CH4)等の燃料を生成できることから、脱炭素社会を実現する技術として注目されている。
【0003】
SOFCやSOEC等に用いられる固体酸化物形電気化学セルは、空気極(酸素極)と固体酸化物電解質層と水素極(燃料極)の積層体を有する。このような積層体を有する電気化学セルを、インターコネクタを介して複数積層してスタック化することにより、大容量化した電気化学セルスタックとして用いられている。固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタは高温耐性が要求されるため、一般的にインターコネクタの基体としてクロム含有率が高いステンレス合金が使用されている。しかし、クロム含有率が高いステンレス合金の表面には、高温でCr2O3を主とする酸化膜が形成される。Cr2O3は電気抵抗が高いため、表面の酸化膜はインターコネクタの電気伝導性を低下させて、固体酸化物形電気化学セルスタックの抵抗を増大させる要因となる。さらに、Cr2O3膜中のCr成分がガス化して、固体酸化物形電気化学セルの電極部に付着すると、固体酸化物形電気化学セルの性能を低下させる。これらの問題を抑制するために、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタへの適用材料が広く検討されている。
【0004】
一般的に、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタを緻密な保護膜で被覆することで、Cr飛散を抑制する。保護膜に要求される機能としては、Crの飛散抑制、電気伝導性、密着性、施工性が挙げられる。Crの飛散抑制とは、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタに含まれるCrが高温の運転環境下にて蒸気化し、固体酸化物形電気化学セルの性能を低下させるため、それを抑制する機能である。電気伝導性とは、固体酸化物形電気化学セルの反応には電気が必要であるため、通電時の電気抵抗を低減して、エネルギーロスを小さくする機能である。密着性とは、固体酸化物形電気化学セルの運転温度が600℃以上の高温であるため、そのような高温と常温との間で昇温と降温の繰り返しにより、保護膜が剥離する可能性があるため、それを防ぐ機能である。施工性とは、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタは複雑な形状を有することが多いため、ムラなく保護膜を形成させるための機能である。
【0005】
インターコネクタの保護膜には、例えば電気伝導性を示すスピネル型酸化物やペロブスカイト型酸化物等の作動温度域で高い電気伝導性を示す酸化物が用いられている。しかしながら、固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタとの密着性という観点では、固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタとの熱膨張係数差がより小さいスピネル型酸化物においても、材質や構造等を改良する必要がある。
【0006】
これに対し、スピネル型酸化物の組成を調整することで、固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタとの熱膨張差を小さくし、密着性を向上させる技術が知られている。また、保護膜が、固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタに根を生やしたようなアンカー構造により密着性を向上させ、さらには電気伝導性を向上させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5770659号公報
【特許文献2】特開2020-066758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、保護膜の金属基材に対する密着性を改善するとともに、電気抵抗を低減することにより、電気伝導性の向上が可能な固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタ、およびそのようなインターコネクタを用いた固体酸化物形電気化学セルスタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタは、クロムを含有する鉄基合金を含む金属基材と、第1方向において、金属基材の上に設けられた保護膜と、を具備する、固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタである。保護膜は、金属基材の表面に設けられ、第1の金属元素を含有する金属層と、金属層の上方に設けられ、第1の金属元素と異なる第2の金属元素を含有するスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む酸化物層と、金属層と酸化物層との間に設けられ、第1の金属元素を含有する第1の相と、少なくとも1つの酸化物を含有する第2の相と、を有する混合層と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタを示す断面図である。
【
図2】実施形態の固体酸化物形電気化学セルスタックを示す断面図である。
【
図3】実施形態の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタの保護膜の断面模式図である。
【
図4】比較例1、比較例2、実施例1、実施例2による電気化学セルスタック用インターコネクタの断面の反射電子像を比較して示す図である。
【
図5】比較例1、比較例2、実施例1、実施例2による電気化学セルスタック用インターコネクタの電気抵抗を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタおよび固体酸化物形電気化学セルスタックについて、図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0012】
図1は固体酸化物形電気化学セルスタック用インターコネクタの断面を示す。
図1に示すインターコネクタ1は、固体酸化物形電気化学セル用インターコネクタ保護膜付きインターコネクタである。インターコネクタ1は、表面2aと表面2bとを有する金属基材2を有する。インターコネクタ1を固体酸化物形電気化学セルスタックに用いるにあたって、金属基材2の表面2aは水素極(燃料極)側に配置される面であり、水素を含む雰囲気に晒される面である。金属基材2の表面2bは空気極(酸素極)側に配置される面であり、空気に晒される面である。表面2bは、例えば表面2aの反対側に設けられる。なお、表面2a側には水素を流すことに限らず、例えばSOFCではメタノール(CH
3OH)等を流す場合もあるため、表面2aは水素原子を有する物質を含む雰囲気に晒される面であればよい。表面2b側には空気を流すことに限らず、例えばSOECでは何も流さない、もしくは酸素を流す場合もあるため、表面2bは酸素を含む雰囲気に晒される面であればよい。金属基材2の表面2aおよび表面2bには、保護膜3が設けられている。
図1は金属基材2の表面2aおよび表面2bに保護膜3を設けたインターコネクタ1を示すが、保護膜3は表面2aおよび表面2bのいずれか一方の表面のみに設けられていてもよい。
【0013】
図1に示すインターコネクタ1は、例えば
図2に示す電気化学セルスタック10に用いられる。
図2に示す電気化学セルスタック10は、固体酸化物形電気化学セルスタックであり、電気化学セル11と電気化学セル12とを、インターコネクタ1を介して積層した構造を有する。なお、
図2は電気化学セル11と電気化学セル12とを積層した構造を示すが、電気化学セルの積層数は特に限定されるものではなく、3個以上の電気化学セルを積層した構造を有していてもよい。3個以上の電気化学セルを積層する場合、隣接する2個の電気化学セル間にはそれぞれインターコネクタが配置され、各電気化学セル間はインターコネクタにより電気的に接続される。
【0014】
電気化学セル11および電気化学セル12は同一構成を有し、それぞれ水素極(燃料極)として機能する電極13と、酸素極(空気極)として機能する電極14と、電極13と電極14との間に配置された固体酸化物電解質層15とを有する。電極13および電極14は、それぞれ多孔質な電気伝導体により形成されている。固体酸化物電解質層15は、緻密質な固体酸化物電解質からなり、電気を通さないイオン伝導体である。電極13とインターコネクタ1との間には、必要に応じて、多孔質な集電部材16を配置してもよい。同様に、電極14とインターコネクタ1との間には、必要に応じて、多孔質な集電部材17を配置してもよい。集電部材16および集電部材17は、反応ガスを通過させつつ、電気化学セル11および電気化学セル12とインターコネクタ1との電気的な接続を向上させる。
【0015】
図2では図示を省略したが、電気化学セル11および電気化学セル12の周囲には、ガス流路が設けられている。すなわち、電極13および電極14には、電気化学セルスタック10の使用用途に応じた供給ガスが、それぞれガス流路の一部を介して供給される。電極13および電極14で生成されて排出される排出ガスは、ガス流路の他の一部を介して電気化学セル11および電気化学セル12から排出される。電極13および電極14に供給されるガスおよび電極13および電極14周囲の雰囲気は、緻密質な固体酸化物電解質層15およびインターコネクタ1により分離されている。電気化学セルスタック10をSOFC等の燃料電池として使用する場合、水素極(燃料極)としての電極13には水素(H
2)やメタノール(CH
3OH)ガス等の還元性ガスが供給され、酸素極(空気極)としての電極14には空気や酸素(O
2)等の酸化性ガスが供給される。電気化学セルスタック10を高温水蒸気電解法を適用したSOEC等の電解セルとして使用する場合、水素極としての電極13には水蒸気(H
2O)が供給される。
【0016】
図1に示すインターコネクタ1は、
図2に示す電気化学セルスタック10における電気化学セル11および電気化学セル12間に配置されるインターコネクタ1として用いられる。インターコネクタ1において、金属基材2の表面2aは水素極としての電極13側に配置され、金属基材2の表面2bは空気極としての電極14側に配置される。このため、金属基材2の表面2aは、水素極としての電極13に供給される水素、水素と水蒸気との混合ガスのような水素を含む雰囲気、もしくは電極13から排出される同様な水素を含む雰囲気に晒される。金属基材2の表面2bは空気極としての電極14に供給される空気のような酸素を含む雰囲気に晒される。
【0017】
図2に示す電気化学セルスタック10に用いられるインターコネクタ1において、金属基材2にはクロム(Cr)を含有する鉄基合金、すなわちステンレス鋼(SUS)が用いられる。電気化学セルスタック10においては、例えばSUS430のような電気化学セル11および電気化学セル12と熱膨張率が近いフェライト系ステンレスからなる金属基材2が適用される。金属基材2にステンレス鋼を用いた場合、金属基材2に含まれるCrが、SOFCやSOECの運転温度である600℃以上1000℃以下程度の高温領域において、酸素や水蒸気と反応して蒸気化し、電極14に付着して性能を低下させるおそれがある。そこで、クロムの蒸気化およびそれに伴う拡散を抑制するために、インターコネクタ1は金属基材2の少なくとも表面2bを被覆する保護膜3を有する。
【0018】
保護膜3は、
図3の断面模式図に示すように、金属層31と、酸化物層32と、混合層33と、を備える。
図3は、X軸と、Y軸と、Z軸と、を示す。X軸、Y軸、およびZ軸は、互いに直交する。
図3は、X-Z断面の一部を示す。保護膜3の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましい。1μm未満であると、保護膜3の効果を得ることが困難となる。50μmを超えると、電気抵抗が増加して電気伝導性が大きく低下する場合がある。
【0019】
金属層31は、金属基材2の表面(表面2a、表面2b)に接して設けられる。金属層31は、金属相301を主相として有する。主相は、層の構成相のうち、最も体積比率が大きい相である。金属相301は、第1の金属元素を含む。第1の金属元素としては、例えば固体酸化物形電気化学セルの作動環境雰囲気において、酸化されにくい金属元素が好ましい。酸化されにくい金属元素は、金(Au)や銀(Ag)、白金(Pt)等の金属元素が挙げられる。よって、第1の金属元素は、金、銀、および白金の少なくとも一つの金属元素である。金属基材2と酸化物層32との間に金属層31が存在することにより、酸化物層32のクラック発生率を低減できる。
【0020】
金属層31の形成方法の例は、電解めっき法、無電解めっき法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ゾル-ゲル法を含む。金属層31は、金属膜を成膜して形成してもよいし、金属酸化膜を成膜した後に還元して形成してもよい。金属酸化膜を還元する場合、保護膜付きインターコネクタ単体で還元してもよいし、セルスタックやモジュールに組み込んだ後に還元してもよい。
【0021】
金属層31の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。0.5μm未満であると、金属層31の効果を得ることが困難となる。金属層31は、混合層33に第1の金属元素が拡散して減少する場合があるため厚くすることが好ましいが、10μmを超えるとインターコネクタ1の平面方向における金属層31の厚さのばらつきが大きくなり、インターコネクタ1の健全性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0022】
酸化物層32は、金属層31の上方に設けられる。酸化物層32は、保護膜3の最表面3aに接して設けられる。酸化物層32は、酸化物相302を主相として有する。酸化物相302は、金属層31に含まれないことが好ましい。また、酸化物層32は、金属相301を含まないことが好ましい。
【0023】
酸化物相302は、SOFCやSOEC等の作動温度域で高い電気伝導性を示すスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物を含む。少なくとも一つの酸化物は、第1の金属元素と異なる第2の金属元素を含有する。スピネル型酸化物は、AB2O4(AおよびBは同一または相異なる金属元素等の陽イオン元素である。)で表される酸化物である。ペロブスカイト型酸化物はABO3(AおよびBは同一または相異なる金属元素等の陽イオン元素である。)で表される酸化物である。スピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物は、いずれもSOFCやSOEC等の作動温度域で電気伝導性を示すため、導電性が求められる酸化物層32に好適である。
【0024】
第2の金属元素は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ランタン(La)、およびストロンチウム(Sr)の少なくとも1つの元素である。Coを含むスピネル型酸化物は、酸化物層32の構成材料として有効である。Coはスピネル型酸化物のAサイト元素およびBサイト元素のどちらとしても機能するため、Co3O4で表されるスピネル型酸化物を形成し得るものである。さらに、このようなCo含有のスピネル型酸化物に、Ni、Mn、Cu、Fe、Cr、Zn、Al、Tiから選ばれる少なくとも1つを添加した材料も有効であり、電気伝導性の向上や熱膨張率の不一致緩和等の効果を期待することができる。また、Coに代えてFe、Ni、Mn等を用いたスピネル型酸化物を酸化物層32の構成材料として使用することができる。
【0025】
ペロブスカイト型酸化物としては、CoとLaおよびSrから選ばれる少なくとも1つとを含む酸化物、例えばLaCoO3、SrCoO3、(La,Sr)CoO3等が挙げられる。そのようなペロブスカイト酸化物にNi、Mn、Cu、Fe、Cr、Zn、Al、およびTiから選ばれる少なくとも1つを添加した材料、例えばLa(Co,Fe)O3、Sr(Co,Fe)O3、(La,Sr)(Co,Fe)O3等であってもよい。Feに代えてMnやNi等を添加したペロブスカイト型酸化物であってよい。さらに、Coに代えてMn、Fe、Ni等含むペロブスカイト型酸化物、例えばSrMnO3、SrFeO3、SrNiO3等や、それらに上記したような金属元素を添加したペロブスカイト型酸化物を酸化物層32の構成材料として使用することができる。
【0026】
酸化物層32の形成方法の例は、電解めっき法、無電解めっき法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ゾル―ゲル法等を含む。酸化物層32は、酸化物膜を成膜して形成してもよいし、金属膜の成膜した後に酸化して形成してもよい。金属膜を酸化する場合、保護膜付きインターコネクタ単体で酸化してもよいし、セルスタックやモジュールに組み込んだ後に酸化してもよい。
【0027】
酸化物層32の厚さは、3μm以上20μm以下が好ましい。3μm未満であると、酸化物層32の効果を得ることが困難となる。20μmを超えると、酸化物層32の剥離やクラックを招くおそれがある。
【0028】
上述したCo含有のスピネル型酸化物等は、ペロブスカイト型酸化物に比べて密着性に優れるものの、電気伝導性がペロブスカイト型酸化物に比べて劣る。このような点に対して、混合層33を形成することにより、電気伝導性を高めることができ、かつ密着性をさらに向上させることができる。ペロブスカイト型酸化物を用いた場合も同様である。
【0029】
混合層33は、金属層31と酸化物層32との間に設けられる。混合層33は、金属層31と同様に第1の金属元素を含有する金属相301と、酸化物層32と同様に第2の金属元素を含有する少なくとも一つの酸化物を含む酸化物相302、とを有する。混合層33は、断面の厚さ方向に交差する方向(例えばX軸方向)において、金属相301および酸化物相302が混在する。金属相301は、金属層31まで延在してもよい。
【0030】
混合層33の厚さは、保護膜3の厚さの10%以上70%以下であることが好ましく、さらには、30%以上50%以下であることが好ましい。混合層33は、厚いほど電気抵抗低減につながるが、保護膜3の厚さの70%を超えると、金属相301または金属相301と酸化物相302との界面を介して、インターコネクタ1に含まれる金属が保護膜3の表面に拡散しやすくなる可能性がある。
【0031】
混合層33は、混合層33と金属層31との界面や混合層33と酸化物層32の界面が平坦ではなく、金属相301と酸化物相302とを有する複雑な形状を有する。これにより、金属層31と酸化物層32との密着性を向上できる。また、混合層33は、より電気抵抗が小さい金属相301がインターコネクタ1平面と垂直方向に延在することにより、通電時には電流が金属相301中を優先的に流れ、インターコネクタ1の電気抵抗を大きく低減できる。混合層33は、金属相301がインターコネクタ1の平面と垂直方向に延在することを想定しているが、垂直方向に分布している金属相301同士が連結することで、インターコネクタ1の平面方向に金属相301が分布してもよい。混合層33は、金属相301が電気伝導経路として機能するため、保護膜3の厚さにもよるが、混合層33中の金属相301がインターコネクタ1平面と垂直方向(保護膜3の厚さ方向、例えばZ軸方向)に1μm以上混合層33の厚さ以下、さらには5μm以上混合層33の厚さ以下の長さを有することが好ましい。一方で、金属相301が保護膜3の最表面3aまで到達すると、金属相301を介してインターコネクタ1に含まれるCr元素が拡散する可能性があるため、保護膜3の最表面3aは酸化物相302であることが好ましい。一方で、酸化物層32の領域に部分的に金属層31の金属成分が金属相301として存在していてもよい。
【0032】
混合層33は、例えば、酸化物層32に発生するピンホール等の欠陥に対して、金属層31と同様に電解めっき法、無電解めっき法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ゾル―ゲル法等の方法を用いて形成してもよい。これに限定されず、固体酸化物形電気化学セルの動作温度等の高温で形成する元素拡散由来の空隙を埋めるように金属層31の金属成分を拡散させることにより形成してもよい。酸化物膜を還元することにより金属相301を形成して混合層33を形成してもよいし、逆に金属膜を酸化させて酸化物相302を形成して混合層33を形成してもよい。これら酸化/還元処理は、保護膜付きインターコネクタ単体で処理してもよいし、セルスタックやモジュールに組み込んだ後に処理してもよい。
【0033】
例えば、保護膜3の形成に電解めっき法を適用する場合、金属層31の構成元素を含む第1のめっき浴に金属基材2を浸漬して電解めっきを行う。次に、酸化物層32の構成元素を含むめっき浴に、金属基材2を浸漬して電解めっきを行う。次に、例えば大気中や酸素雰囲気中等の酸化雰囲気中にて600℃以上の温度域で熱処理を行いめっき膜を酸化する。酸化物層32の構成元素としての金属元素は、易酸化性であるため、高温での酸化処理によりスピネル型酸化物やペロブスカイト型酸化物等の酸化物が生成される。生成される酸化物は、めっき浴中の金属元素比や酸雰囲気等により制御することができる。これにより、混合層33を備える保護膜3を形成することが可能になる。他の膜形成方法を用いる場合にも、同様な条件を適用することで、上記した金属基材2とその表面に設けられた保護膜3とを有するインターコネクタ1が得られる。
【0034】
上述した混合層33を備える保護膜3によれば、スピネル型酸化物やペロブスカイト型酸化物を含む酸化物層32の電気伝導性や密着性の向上に寄与する。さらに、金属基材2と保護膜3との界面や保護膜3内における気孔の形成を抑制することができる。これにより、金属基材2と保護膜3との接触面積を増やして、保護膜3の密着性を向上させることができる。さらに、保護膜3の密着性の向上により保護膜3の電気抵抗を低下させることができる。
【0035】
金属層31、酸化物層32、混合層33は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて保護膜3の厚さ方向(Z軸方向)を含む断面を観察することにより得られる断面反射電子像により分析できる。また、各層の組成は、SEM-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)を用いた元素分析により分析できる。保護膜3の厚さは、断面反射電子像における保護膜3の平均厚さにより定義される。
【0036】
金属層31は、断面反射電子像において、第1の金属元素の濃度が90原子%以上100原子%以下である第1の相(金属相301)が金属基材2の表面2bから連続し、且つ保護膜3の厚さ方向に垂直な方向(例えばZ軸方向)に垂直な第1の直線を断面反射電子像に引いたとき、第1の相の合計長さが第1の直線の全体長さの90%以上100%以下である、第1の領域により定義される。金属層31の厚さは、断面反射電子像における第1の領域の平均厚さにより定義される。
【0037】
酸化物層32は、断面反射電子像において、金属基材2や第1の相と異なる相であって酸素元素が検出される第2の相(酸化物相302)が保護膜3の最表面3aから連続し、且つ保護膜3の厚さ方向に垂直な方向(例えばZ軸方向)に垂直な第2の直線を断面反射電子像に引いたとき、第2の相の合計長さが第2の直線の全体長さの90%以上100%以下である、第2の領域により定義される。酸化物層32の厚さは、断面反射電子像における第2の領域の平均厚さにより定義される。
【0038】
混合層33は、断面反射電子像において、第1の領域と第2の領域との間の第3の領域により定義される。第3の領域は、保護膜3の厚さ方向に垂直な方向(例えばZ軸方向)に垂直な第3の直線を断面反射電子像に引いたとき、第1の相の合計長さが第3の直線の全体長さの20%以上80%以下、好ましくは40%以上60%以下であり、第2の相の合計長さが第3の直線の全体長さの20%以上80%以下、好ましくは40%以上60%以下であり、第1の相の合計長さと第2の相の合計長さとの和が第3の直線の全体長さの95%以上100%以下である、領域を含む。混合層33の厚さは、断面反射電子像における第3の領域の最大厚さにより定義される。
【0039】
なお、上記した実施形態では、固体酸化物形電気化学セルおよびそれを積層した電気化学セルスタック10をSOFCやSOECに適用する場合について主として説明したが、実施形態の固体酸化物形電気化学セルおよびそれを積層した電気化学セルスタック10はCO2の電解反応装置等にも適用することができる。
【実施例0040】
次に、実施形態のインターコネクタの具体例およびその評価結果について述べる。
【0041】
(比較例1)
金属基材としてSUS430系のフェライト金属基板を用意した。このようなSUS基板をCoめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、厚さ2μmのCo膜を形成した。次に、Coめっき膜を形成したSUS基板を700℃の温度で大気暴露し、Coめっき膜を酸化した。このようにして得たCo酸化物膜付きSUS基板の断面をSEMを用いて観察して断面反射電子像を得た。比較例1の断面電子反射像を
図4に示す。また、酸化後のCo膜はCo
3O
4で表されるスピネル型酸化物を主体とするCo酸化物膜であることが確認された。
【0042】
このようにして得たCo酸化物膜付きSUS基板の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、Co酸化物膜の表面にPt蒸着によりPt電極を形成し、700℃の温度で四端子法により測定した。結果を
図5に示す。
【0043】
(比較例2)
金属基材としてSUS430系のフェライト金属基板を用意した。このようなSUS基板をCoNiめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、厚さ4μmのCoNi膜を形成した。次に、CoNiめっき膜を形成したSUS基板を700℃の温度で大気暴露し、CoNiめっき膜を酸化した。このようにして得たCoNi酸化物膜付きSUS基板の断面を比較例1と同様にSEMを用いて観察して断面反射電子像を得た。比較例2の断面電子反射像を
図4に示す。また、酸化後のCoNi膜は、(Co,Ni)
3O
4で表されるスピネル型酸化物を主体とするCoNi酸化物膜であることが確認された。
【0044】
このようにして得たCoNi酸化物膜付きSUS基板の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、比較例1と同様にCoNi酸化物膜にPt蒸着によりPt電極を形成し、700℃の温度で四端子法により測定した。結果を
図5に示す。
【0045】
(実施例1)
金属基材としてSUS430系のフェライト金属基板を用意した。このようなSUS基板をAgめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、その後Coめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、厚さ1μmのAg膜とその上の厚さ2μmのCo膜とを形成した。次に、Agめっき膜およびCoめっき膜を形成したSUS基板を700℃の温度で大気暴露し、Coめっき膜を酸化した。酸化後のCo膜はCo
3O
4で表されるスピネル型酸化物を主体とするCo酸化物膜であることが確認された。このようにして得たAg膜・Co酸化物膜付きSUS基板の断面を比較例1と同様にSEMを用いて観察して断面反射電子像を得た。実施例1の断面電子反射像を
図4に示す。
【0046】
このようにして得たAg膜・Co酸化物膜付きSUS基板の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、比較例1と同様にCo酸化物膜にPt蒸着によりPt電極を形成し、700℃の温度で四端子法により測定した。結果を
図5に示す。
【0047】
(実施例2)
金属基材としてSUS430系のフェライト金属基板を用意した。このようなSUS基板をAgめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、その後CoNiめっき浴中に浸漬して電解めっきを行い、厚さ1μmのAg膜とその上の厚さ4μmのCoNi膜とを形成した。次に、Agめっき膜およびCoNiめっき膜を形成したSUS基板を700℃の温度で大気暴露し、CoNiめっき膜を酸化した。酸化後のCoNi膜はCo
3O
4で表されるスピネル型酸化物を主体とするCoNi酸化物膜であることが確認された。このようにして得たAg膜・CoNi酸化物膜付きSUS基板の断面を比較例1と同様にSEMを用いて観察して断面反射電子像を得た。実施例2の断面電子反射像を
図4に示す。
【0048】
このようにして得たAg膜・CoNi酸化物膜付きSUS基板の電気抵抗を測定した。電気抵抗は、比較例1と同様にCoNi酸化物膜にPt蒸着によりPt電極を形成し、700℃の温度で四端子法により測定した。結果を
図5に示す。
【0049】
図4に示すように、Ag膜である金属層(Ag金属層)を有する実施例1、実施例2では、金属層と酸化物層の間に、Ag相と、Co酸化物相またはCoNi酸化物相と、を有する混合層が、金属層および酸化物層との間で複雑な界面を有する構造で形成されていることを確認できる。金属基板の平面に垂直方向(保護膜の厚さ方向)に伸びているAg相の長さは、実施例1で4μm程度、実施例2で7μm程度である。混合層の厚さは、実施例1では保護膜の厚さの30%程度、実施例2では保護膜の厚さの50%程度である。また、酸化物層にも一部、局所的にAg相が確認された。
【0050】
さらに、
図5に示すように、Ag金属層を有する実施例1、実施例2は、Ag金属層を有していない比較例1、比較例2よりも電気抵抗が小さいことがわかる。さらに、実施例2は、実施例1よりも電気抵抗が小さいことがわかる
【0051】
以上より、混合層を形成することにより、電気抵抗が低減することがわかる。保護膜中には酸化物層-金属層間の境界面が複雑に形状を有し、密着性向上が見込めることや、保護膜中に電気抵抗が小さいAg相が存在することから、酸化物相と金属相を有する混合層の形成が、実施例1、実施例2において小さい電気抵抗を示す要因であると考えられる。以上より、保護膜の剥離が起こりにくく、かつ、電気抵抗の小さな保護膜付きインターコネクタを提供することができる。これを搭載したセルスタックは、保護膜の健全性が向上し、より高いエネルギー効率で電気化学反応を行うことができる。
【0052】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…インターコネクタ、2…金属基材、2a…表面、2b…表面、3…保護膜、3a…最表面、4…保護膜、10…電気化学セルスタック、11…電気化学セル、12…電気化学セル、13…電極、14…電極、15…固体酸化物電解質層、31…金属層、32…酸化物層、33…混合層、301…金属相、302…酸化物相。