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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088279
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20240625BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20240625BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60N2/58
B68G7/05 A
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203367
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】治根田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】南雲 健二
(72)【発明者】
【氏名】北仲 史門
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 允敏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】リクライニング動作による遮蔽部材の弛みを簡単な構成で抑制し、見栄えを向上させることが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】ハーネス54等を遮蔽するリアスカート60の本体部62はシートバック14の背面側に配置され延出部64は本体部62から延出されてシートクッション12の下方側に配置される。延出部64における本体部62側にはゴム部材66、68の一端部が取り付けられると共にゴム部材66、68の他端部はシートクッションフレーム24に取り付けられ、ゴム部材66、68はシートバック14の傾動動作に応じて伸長する。ゴム部材66、68には、クロス部70が形成され交点Qが平面視で延出部64と重なるように設定される。これにより、リアスカート60の前端ではゴム部材66、68を介してシート幅方向の外側へ向かう分力が作用し、リアスカート60の前端において弛みが抑制され見栄えを向上させることが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能なシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、
前記シートクッションに対して傾動可能に連結されると共に当該シートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、
前記シートバックの背面側から前記シートクッションの下方側に亘って配策された配策部材と、
前記シートバックの背面かつ下部側に配置される本体部と前記本体部から延出され前記シートクッションの下方側に配置される延出部とを含んで構成され、前記シートバックの背面側から前記シートクッションの下方側に亘って設けられ前記配策部材を車室内側から遮蔽するシート状の遮蔽部材と、
長尺状を成し、長手方向の一端部は前記延出部における前記本体部側に取り付けられると共に、長手方向の他端部は前記シートクッションフレームに取り付けられ、前記シートバックの傾動動作に応じて伸長可能な弾性部材と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記弾性部材では、シート前後方向に沿った基準線に対して交差するクロス部が形成され、前記クロス部の交点が平面視で前記延出部と重なるように設定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記弾性部材は、
前記クロス部のシート幅方向の両外側においてシート前後方向に沿って配置され平面視で一部が前記延出部と重なる一対のサイド部をさらに備えている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記一対のサイド部は、前記シートバックの起立状態において、前記延出部におけるシート幅方向の両端部の角部と平面視で重なるように設定されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記弾性部材は、一対のゴム部材で構成され、
一方のゴム部材は、前記クロス部の一方側と一方の前記サイド部が一体となって形成され、他方のゴム部材は、前記クロス部の他方側と他方の前記サイド部が一体となって形成されている請求項4に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両用シートにおいて、シートバックの背面を構成するバックボードの下端部にカバー機構(遮蔽部材)を備えた技術が開示されている。この先行技術では、カバー機構によって、シートバックのリクライニング動作においてシートクッション内の構造物がシート後側から視認されることが抑制されるというものである。
【0003】
ここで、カバー機構は、固定カバーと可動カバーと付勢部材を備えており、付勢部材の付勢力によって固定カバーに対して可動カバーを可動させ、シートバックのリクライニング動作に対して追従可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6151899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術では部品点数が多く作業工数も増え、その分コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、リクライニング動作による遮蔽部材の弛みを簡単な構成で抑制し、見栄えを向上させることが可能な車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る車両用シートは、乗員が着座可能なシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションに対して傾動可能に連結されると共に当該シートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックの背面側から前記シートクッションの下方側に亘って配策された配策部材と、前記シートバックの背面かつ下部側に配置される本体部と前記本体部から延出され前記シートクッションの下方側に配置される延出部とを含んで構成され、前記シートバックの背面側から前記シートクッションの下方側に亘って設けられ前記配策部材を車室内側から遮蔽するシート状の遮蔽部材と、長尺状を成し、長手方向の一端部は前記延出部における前記本体部側に取り付けられると共に、長手方向の他端部は前記シートクッションフレームに取り付けられ、前記シートバックの傾動動作に応じて伸長可能な弾性部材と、を有する。
【0008】
第1の態様に係る車両用シートでは、シートクッションフレーム、シートバックフレーム、配策部材、遮蔽部材及び弾性部材を含んで構成されている。シートクッションフレームはシートクッションの骨格を構成しており、シートバックフレームはシートバックの骨格を構成しシートクッションに対して傾動可能に連結されている。
【0009】
配策部材は、シートバックの背面側からシートクッションの下方側に亘って配策されている。遮蔽部材は、シート状を成し、シートバックの背面側からシートクッションの下方側に亘って設けられており、配策部材を車室内側から遮蔽している。当該遮蔽部材は、本体部と延出部を含んで構成されており、本体部はシートバックの背面かつ下部側に配置され、延出部は、本体部から延出されてシートクッションの下方側に配置されている。
【0010】
また、弾性部材は、長尺状を成しており、弾性部材の長手方向の一端部は遮蔽部材の延出部における本体部側に取り付けられ、弾性部材の長手方向の他端部はシートクッションフレームに取り付けられている。これにより、弾性部材は、シートバックの傾動動作に応じて伸長可能とされている。
【0011】
シートバックをリクライニングさせた状態で遮蔽部材の弛みが大きい場合、内蔵物が視認できてしまい見栄えが悪い。本態様では、シートバックの傾動動作に応じて伸長可能な弾性部材を用いることによって、シートバックの傾動による配策部材及び遮蔽部材の弛みを抑制することができる。なお、「配策部材」として、例えば、ハーネス、ワイヤ、ケーブル等が挙げられる。
【0012】
ここで、本態様では、弾性部材の長手方向の一端部が遮蔽部材の延出部における本体部側に取り付けられている。つまり、弾性部材の長手方向の一端部側は遮蔽部材の延出部と重なった状態となっている。延出部は、シートクッションの下方側に配置されるため、当該延出部と弾性部材が重なることによって、配策部材及び遮蔽部材の自重による弛みを弾性部材で支持することができ、配策部材及び遮蔽部材の弛みを効率よく抑制することができる。
【0013】
また、比較例として、例えば、弾性部材の長手方向の一端部が遮蔽部材の前端部(延出部の端末)に取り付けられた場合、本態様と比較して、弾性部材自体の長さは短くなる。弾性部材に作用する荷重は略同じため、比較例では、本態様における弾性部材と比較して、弾性部材自体の長さが短い分、単位長さ当たりの荷重(付勢力)が大きくなってしまい、その分経年劣化が進み寿命が短くなってしまう。
【0014】
言い換えると、本態様では、弾性部材の長手方向の一端部が遮蔽部材の前端部に取り付けられた場合と比較して、弾性部材自体の長さが長い分、単位長さ当たりの荷重は小さくなり、その分経年劣化が進行を抑制し、寿命を長くすることが可能となる。
【0015】
第2の態様に係る車両用シートは、第1の態様に係る車両用シートにおいて、前記弾性部材では、シート前後方向に沿った基準線に対して交差するクロス部が形成され、前記クロス部の交点が平面視で前記延出部と重なるように設定されている。
【0016】
第2の態様に係る車両用シートでは、弾性部材においてクロス部が形成されている。このクロス部は、シート前後方向に沿った基準線に対して交差しており、当該クロス部の交点が平面視で延出部と重なるように設定されている。
【0017】
例えば、比較例として、遮蔽部材の前端部に一対の弾性部材が取り付けられ(取付部)、当該一対の弾性部材をクロスさせた状態で取り付けた場合、クロス部は平面視で遮蔽部材とは重ならない位置に形成される。
【0018】
この場合、一対の弾性部材による付勢力により、取付部には当該弾性部材を介してそれぞれシート幅方向の内側へ向かう分力が作用する。これにより、取付部と取付部の間は近接し、遮蔽部材の前端部において、シート幅方向に弛みが生じる可能性がある。このように、遮蔽部材の前端部において、シート幅方向の弛みが生じると見栄えが良くない。
【0019】
これに対して、本態様では、前述のように、弾性部材は、クロス部の交点が平面視で延出部と重なるように設定されている。このため、本態様では、遮蔽部材の前端部では、一対の弾性部材による付勢力により、当該弾性部材を介してシート幅方向の外側へ向かう分力が作用する。このため、遮蔽部材の前端部において、シート幅方向に生じる弛みが抑制され、簡単な構成で見栄えを向上させることが可能となる。
【0020】
また、平面視で遮蔽部材の延出部とクロス部の交点が重なるように弾性部材をクロスさせることによって、配策部材及び遮蔽部材の自重による弛みを弾性部材で支持することができ、配策部材及び遮蔽部材の弛みを効率よく抑制することができる。
【0021】
第3の態様に係る車両用シートは、第1の態様又は第2の態様に係る車両用シートにおいて、前記弾性部材は、前記クロス部のシート幅方向の両外側においてシート前後方向に沿って配置され平面視で一部が前記延出部と重なる一対のサイド部をさらに備えている。
【0022】
第3の態様に係る車両用シートでは、弾性部材は、クロス部以外に一対のサイド部をさらに備えている。一対のサイド部は、クロス部のシート幅方向の両外側においてシート前後方向に沿って配置されており、平面視で当該サイド部の一部が延出部と重なるように設定されている。本態様では、配策部材及び遮蔽部材の自重による弛みを弾性部材のクロス部及び一対のサイド部で支持することができるため、配策部材及び遮蔽部材の弛みをより確実に抑制することができる。
【0023】
第4の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記一対のサイド部は、前記シートバックの起立状態において、前記延出部におけるシート幅方向の両端部の角部と平面視で重なるように設定されている。
【0024】
第4の態様に係る車両用シートでは、シートバックの起立状態(初期状態)において、一対のサイド部が延出部におけるシート幅方向の両端部の角部と平面視で重なるように設定されることによって、延出部におけるシート幅方向の両端部の角部が当該一対のサイド部によって支持される。このため、延出部の角部による垂れを抑制することができ、見栄えをさらに向上させることが可能となる。なお、ここでの「角部」とは、角(2つの直線が交わる交点)を含む周辺部の意である。
【0025】
ここで、延出部は、シートバックが傾動するとシート前後方向の前方側へ移動する。この場合、一対のサイド部は延出部の両側部をそれぞれ支持し、延出部の角部は、クロス部の一部を構成する直線部とサイド部の間に配置される。つまり、延出部の角部は直線部及びサイド部によって支持されることになるため、延出部の角部の垂れは抑制された状態を維持することが可能となる。
【0026】
第5の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記弾性部材は、一対のゴム部材で構成され、一方のゴム部材は、前記クロス部の一方側と一方の前記サイド部が一体となって形成され、他方のゴム部材は、前記クロス部の他方側と他方の前記サイド部が一体となって形成されている。
【0027】
第5の態様の発明に係る車両用シートでは、弾性部材は、2本のゴム部材で構成されており、一方のゴム部材は、クロス部の一方側と一方のサイド部が一体となって形成されている。このため、一方のゴム部材では、クロス部の一方側と一方のサイド部とで第1頂部が形成される。この第1頂部がシートクッションフレームに取り付けられる。
【0028】
また、他方のゴム部材は、クロス部の他方側と他方のサイド部が一体となって形成されている。このため、他方のゴム部材では、クロス部の他方側と他方のサイド部とで第2頂部が形成される。この第2頂部がシートクッションフレームに取り付けられる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、リクライニング動作による遮蔽部材の弛みを簡単な構成で抑制すると共に見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施の形態に係る車両用シートを右斜め後方側から見た斜視図である。
図2】本実施の形態に係る車両用シートを左斜め後方かつ下方側から見た斜視図である。
図3】本実施の形態に係る車両用シートを下方側から見た下面図である。本実施の形態に係る車両用シートのシートバックが起立した状態を示す下面図である。
図4】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成する遮蔽部材を左斜め後方かつ下方側から見た斜視図である。
図5】本実施の形態に係る車両用シートのシートバックが起立した状態を説明するための要部を示す側面図である。
図6】本実施の形態に係る車両用シートのシートバックがリクライニングした状態を説明するための要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印RH、矢印UPは、車両用シート10の前方向、右方向、上方向をそれぞれ示している。また、本実施形態では、車両用シート10の前後左右上下の方向は、当該車両用シート10が搭載された車両(自動車)の前後左右上下の方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0032】
(車両用シートの構成)
まず、本実施の形態に係る車両用シート10の構成について説明する。
【0033】
図1に示すように、車両用シート10は、着座乗員の大腿部及び腰部を支持するシートクッション12と、当該シートクッション12の後端側に設けられ着座乗員の上体を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を含んで構成されている。
【0034】
シートバック14は、骨格部材である図示しないシートバックフレームと、パッド材である図示しないシートバックパッドと、シートバックパッドを被覆するシートバック表皮18と、を備えている。
【0035】
シートバックフレームの下端部には、シート幅方向に沿って配設された軸部21(図5参照)が設けられており、図5図6に示されるように、当該軸部21を中心にシートバックフレームがリクライニング機構22によってシートバック14はシートクッション12に対してリクライニング(傾動)可能とされている。
【0036】
図1に示すシートクッション12は、シートバック14と同様に、骨格部材であるシートクッションフレーム24と、クッション材であるシートクッションパッド26と、シートクッションパッド26の表面を覆ったシートクッション表皮28と、を備えている。
【0037】
図3に示されるように、シートクッションフレーム24は、シートクッション12の左右の側部にシート前後方向に沿って延設された左右一対のサイドフレーム30と、左右のサイドフレーム30の前部をシート幅方向に繋いだフロントフレーム32と、左右のサイドフレーム30の後端部をシート幅方向に繋いだリヤフレーム34と、を備えている。
【0038】
左右のサイドフレーム30及びフロントフレーム32は、例えば板金によって構成されており、リヤフレーム34は、例えば金属パイプによって構成されている。左右のサイドフレーム30は、左右のスライドレール36等を介して図示しない車体の床部に連結されている。
【0039】
当該フロントフレーム32とリヤフレーム34との間には、クッションスプリング38が架け渡されている。クッションスプリング38は、シート幅方向に並んだ複数(ここでは4つ)のSバネ40を含んで構成されている。
【0040】
これらのSバネ40は、略波形状(複数のS字が連続したような形状)に曲げられたワイヤによって構成されている。シート幅方向の左右において隣り合うSバネ40同士は、フラットワイヤ42、44によってそれぞれ繋がれており、これらのSバネ40等によって着座乗員の姿勢の維持と乗り心地性能が確保される。
【0041】
なお、これらのSバネ40によって構成されたクッションスプリング38に代えて板状のクッションパンが用いられてもよい。
【0042】
ここで、本実施形態では、図2に示されるように、シートクッションフレーム24には電源取り出し用のカプラ46が配設されている。シートバック14には、ヒータ48、サイドエアバッグ50、52等の装置が配設されている。これらの装置に対して電力を供給するため、これらの装置は、ハーネス54、56、58を介してカプラ46に接続されている。
【0043】
このため、ハーネス54、56、58は、シートクッション12側に配設されたカプラ46とシートバック14側に配設された装置に接続されており、シートクッション12側からシートバック14側へ配策されている。
【0044】
したがって、シートバック表皮20の下端部20Aには、例えば、カーペット材で形成されたリアスカート(遮蔽部材)60が設けられており、当該リアスカート60によってハーネス54、56、58等が車室内側から遮蔽されるようになっている。
【0045】
なお、リアスカート60の素材は、必要とされる剛性を有していればよいため、カーペット材に限るものではなく、レザー等、他の素材が用いられてもよい。また、ハーネス以外にもワイヤ、ケーブル等が用いられてもよい。
【0046】
当該リアスカート60は、本体部62と、当該本体部62から延出された延出部64を含んで構成されている。本体部62は、シートバック14の背面側かつシートバック14の下部側に配置されており、延出部64はシートクッション12の下方側に配置されている。
【0047】
つまり、リアスカート60は、本体部62と延出部64が一体となって、シートバック14の背面側からシートクッション12の下方側に亘って設けられている。このリアスカート60によって、ハーネス54、56、58等が車室内側から遮蔽される。
【0048】
当該リアスカート60について具体的に説明すると、図2図4に示されるように、本体部62は車両用シート10の背面視で略矩形状を成しており、本体部62の上端62A(リアスカート60の一端)はシートバック表皮20の下端部20Aに縫製されている。
【0049】
また、本体部62における延出部64側にはC面状の切落とし部62Bが形成されており、シートバック14がシートクッション12に対してリクライニング(傾動)する際に他の部品との干渉を回避するように設定されている。
【0050】
一方、延出部64は、車両用シート10の下面視で略台形状を成しており、延出部64の下底64B側が本体部62側となっている。延出部64の下底64B側では、シート幅方向に沿った寸法が本体部62側よりも短く形成されており、延出部64の上底64A(リアスカート60の前端)側は下底64B側よりもさらにシート幅方向に沿った寸法が短く形成されている。シートクッション12側には複数の部品が配設されているため、延出部64ではシート幅方向に沿った寸法を短くして当該部品との干渉を回避するように形成されている。
【0051】
また、図4に示されるように、延出部64における下底64B側(本体部62側)には、シート幅方向の左右に一対の長尺状のゴム部材(弾性部材)66、68の長手方向の両端部66A、66B、68A、68Bがそれぞれ縫製されている。また、ゴム部材66、68の長手方向の中央部66C、68Cは、それぞれシートクッションフレーム24側に係止されている。つまり、本実施形態におけるゴム部材66、68の両端部66A、66B、68A、68Bは、それぞれ請求項1における弾性部材の長手方向の一端部に相当し、ゴム部材66、68の中央部66C、68Cは、それぞれ請求項1における弾性部材の長手方向の他端部に相当する。
【0052】
ゴム部材66、68について具体的に説明すると、ゴム部材66は、(長手方向の)一端部66Aが延出部64の左側に縫製されており、他端部66Bは延出部64の右側に縫製されている。そして、ゴム部材66の長手方向の中央部66Cは、図3に示されるように、シートクッションフレーム24の左側のSバネ40に取り付けられたフラットワイヤ44に設けられた係止部44Aに係止されている。これにより、図4に示されるように、ゴム部材66は中央部66Cを頂部として延出部64の左右に跨がる三角形が形成される。
【0053】
また、ゴム部材68は、一端部68Aが延出部64の左側に縫製されており、他端部68Bは延出部64の右側に縫製されている。そして、ゴム部材68の長手方向の中央部68Cは、図3に示されるように、シートクッションフレーム24の右側のSバネ40に取り付けられたフラットワイヤ42(図3参照)に設けられた係止部42Aに係止されている。これにより、図4に示されるように、ゴム部材68は中央部68Cを頂部として延出部64の左右に跨がる三角形が形成される。
【0054】
そして、本実施形態では、ゴム部材66とゴム部材68の間で、シート前後方向に沿った基準線P(図3参照)に対して交差するクロス部70が形成されており、当該クロス部70の交点Qが平面視で延出部64と重なるように設定されている。つまり、ゴム部材66の他端部66Bと中央部66Cを繋ぐ直線部66D及びゴム部材68の他端部68Bと中央部68Cを繋ぐ直線部68Dがクロスした状態で、平面視でそれぞれ延出部64と重なるように配置されている。
【0055】
また、図3に示されるように、係止部42A、44Aは、延出部64の上底64Aよりもシート前方側に配置されている。さらに、係止部42A、44Aは、延出部64の角部64C、64Dよりもシート幅方向の外側に配置されている。なお、角部64C、64Dは、角Rを含む周辺部Sの意である。
【0056】
クロス部70のシート幅方向に沿った左側には、ゴム部材66の一端部66Aと中央部66Cを繋ぐサイド部66Eが設けられている。このサイド部66Eは、シート前方側へ向かうにつれてシート幅方向の外側へ向かって傾斜しており、延出部64の角部64Cと平面視で略重なるように配置されている。
【0057】
また、クロス部70のシート幅方向に沿った右側には、ゴム部材68の一端部68Aと中央部68Cを繋ぐサイド部68Eが設けられている。このサイド部68Eは、シート前方側へ向かうにつれてシート幅方向の外側へ向かって傾斜しており、延出部64の角部64Dと平面視で略重なるように配置されている。
【0058】
本実施形態では、延出部64の上底64A側は自由状態となっているが、ゴム部材66の直線部66D、サイド部66E及びゴム部材68の直線部68D、サイド部68Eによってバタツキが抑えられている。
【0059】
ここで、図6に示されるように、シートバック14はシートクッション12に対してリクライニング(傾動)可能とされている。このため、ゴム部材66、68による付勢力は、シートバック14がフルリクライニングした状態で最小となるが、この状態でリアスカート60が弛まないように設定されている。
【0060】
なお、本実施形態では、弾性部材として、2本のゴム部材66、68が用いられているが、1本のゴム部材でクロス部70及びサイド部66E、68Eが形成されるようにしてもよい。また、4本の弾性部材を用いてクロス部とサイド部がそれぞれ形成されるようにしてもよい。
【0061】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る車両用シート10の作用及び効果について説明する。
【0062】
本実施形態では、図2図4に示されるように、車両用シート10には、ハーネス54、56、58、リアスカート60及びゴム部材66を含んで構成されている。ハーネス54、56、58は、シートバック14の背面側からシートクッション12の下方側に亘って配策されている。リアスカート60はシート状を成しており、シートバック14の背面側からシートクッション12の下方側に亘って設けられ、ハーネス54、56、58を車室内側から遮蔽している。
【0063】
ここで、当該リアスカート60は、本体部62と延出部64を含んで構成されており、本体部62はシートバック14の背面かつ下部側に配置され、延出部64は、本体部62から延出されてシートクッション12の下方側に配置されている。
【0064】
一方、ゴム部材66、68は、長尺状を成しており、ゴム部材66、68の一端部66A、68Aはリアスカート60の延出部64の本体部62側に取り付けられ、ゴム部材66、68の中央部66C、68Cはシートクッションフレーム24に取り付けられている。これにより、ゴム部材66、68は、シートバック14の傾動動作に応じて伸長可能とされている。
【0065】
シートバック14をリクライニングさせた状態でリアスカート60の弛みが大きい場合、内蔵物が視認できてしまい見栄えが悪い。本実施形態では、シートバック14の傾動動作に応じて伸長可能なゴム部材66、68を用いることによって、シートバック14の傾動によるハーネス54、56、58及びリアスカート60の弛みを抑制することができる。つまり、本実施形態では、リクライニング動作によってリアスカート60が弛まないようにすることができる。
【0066】
ここで、本実施形態では、ゴム部材66、68の両端部66A、66B、68A、68Bがリアスカート60の延出部64における本体部62側に取り付けられている。つまり、ゴム部材66、68の両端部66A、66B、68A、68B側はリアスカート60の延出部64と重なった状態となっている。
【0067】
延出部64は、シートクッション12の下方側に配置されるため、当該延出部64とゴム部材66、68が重なることによって、ハーネス54、56、58及びリアスカート60の自重による弛みをゴム部材66、68で支持することができる。このため、本実施形態ではハーネス54、56、58及びリアスカート60の弛みを効率よく抑制することができる。
【0068】
また、比較例として、例えば、図示はしないが、ゴム部材の一端部がリアスカート60の前端部(延出部の端末)に取り付けられた場合、図4に示されるように、ゴム部材66、68の一端部(例えば、66A、68B)が延出部64における本体部62側に取り付けられた場合と比較して、ゴム部材66、68自体の長さは短くなる。ゴム部材66、68に作用する荷重は略同じため、比較例では、本実施形態におけるゴム部材66、68と比較して、ゴム部材66、68自体の長さが短い分、単位長さ当たりの荷重(付勢力)が大きくなってしまい、その分経年劣化が進み寿命が短くなってしまう。
【0069】
言い換えると、図示しないゴム部材の一端部がリアスカート60の前端部に取り付けられた場合と比較して、本実施形態では、ゴム部材66、68自体の長さが長い分、単位長さ当たりの荷重は小さくなり、その分経年劣化の進行を抑制することができ、寿命を長くすることが可能となる。
【0070】
さらに、本実施形態では、ゴム部材66、68には、シート前後方向に沿った基準線Pに対して交差するクロス部70が形成されており、当該クロス部70の交点Qが平面視で延出部64と重なるように設定されている。
【0071】
例えば、比較例として、図示はしないが、リアスカート60の前端部にゴム部材66、68の一端部66A、68Aが取り付けられ、当該一対のゴム部材66、68をクロスさせた状態でシートクッションフレーム24側に取り付けた場合、クロス部70は平面視でリアスカート60とは重ならない位置に形成されることになる。
【0072】
この場合、ゴム部材66、68による付勢力により、ゴム部材66の一端部66A及びゴム部材68の一端部68Aには、ゴム部材66、68を介してそれぞれシート幅方向の内側へ向かう分力が作用する。これにより、ゴム部材66の一端部66Aとゴム部材68の一端部68Aの間は近接し、リアスカート60の前端部において、シート幅方向に弛みが生じる可能性がある。このように、リアスカート60の前端部において、シート幅方向の弛みが生じると見栄えが良くない。
【0073】
これに対して、本実施形態では、前述のように、ゴム部材66、68は、クロス部70の交点Qが平面視で延出部64と重なるように設定されているため、リアスカート60の前端(延出部64の上底64A)では、ゴム部材66、68による付勢力により、当該ゴム部材66、68を介してシート幅方向の外側へ向かう分力が作用する。このため、リアスカート60の前端(延出部64の上底64A)において、シート幅方向に生じる弛みが抑制され、簡単な構成で見栄えを向上させることが可能となる。
【0074】
また、平面視でリアスカート60の延出部64とクロス部70の交点Qが重なるようにゴム部材66、68をクロスさせることによって、ハーネス54、56、58及びリアスカート60の自重による弛みをゴム部材66、68で支持することができ、ハーネス54、56、58及びリアスカート60の弛みを効率よく抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、ゴム部材66、68は、クロス部70以外に一対のサイド部66E、68Eをさらに備えている。一対のサイド部66E、68Eは、クロス部70のシート幅方向の両外側においてシート前後方向に沿って配置されており、平面視で当該サイド部66E、68Eの一部が延出部64と重なるように設定されている。
【0076】
すなわち、本実施形態では、ハーネス54、56、58及びリアスカート60の自重による弛みをゴム部材66、68のクロス部70及び一対のサイド部66E、68Eで支持することができるため、ハーネス54、56、58及びリアスカート60の弛みをより確実に抑制することができる。
【0077】
ここで、本実施形態では、シートバック14の起立状態において、当該サイド部66E、68Eの一部が平面視で延出部64の角部64C、64Dと重なるように設定されている。このため、延出部64の角部64C、64Dがサイド部66E、68Eによって支持されるため、リアスカート60の角部64C、64Dによる垂れを抑制することができ、見栄えをさらに向上させることが可能となる。
【0078】
一方、シートバック14をリクライニングさせると、延出部64は、シート前方側へ移動するが、この場合、サイド部66E、68Eは延出部64の両側部をそれぞれ支持し、延出部64の角部64Cは、クロス部70の一部を構成する直線部66Dとサイド部66Eの間に配置され、角部64Dは、直線部68Dとサイド部68Eの間に配置される。つまり、延出部64の角部64C、64Dは当該直線部66D、68D及びサイド部66E、68Eによってそれぞれ支持されることになるため、延出部64の角部64C、64Dの垂れは抑制された状態を維持することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、ゴム部材66、68において、クロス部70が形成されるようにしたが、当該クロス部70は必ずしも必要ではなく、図示はしないが、シート前後方向に沿って配置されてもよく、この場合、ゴム部材は3本であってもよい。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
24 シートクッションフレーム
54 ハーネス(配策部材)
56 ハーネス(配策部材)
58 ハーネス(配策部材)
60 リアスカート(遮蔽部材)
62 本体部(遮蔽部材)
64 延出部(遮蔽部材)
64C 角部
64D 角部
66 ゴム部材(弾性部材)
66E サイド部
68 ゴム部材(弾性部材)
68E サイド部
70 クロス部
P 基準線
Q 交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6