IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図1
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図2
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図3
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図4
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図5
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図6
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図7
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図8
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図9
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図10
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図11
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図12
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図13
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図14
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図15
  • 特開-温度制御装置及び画像形成装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088285
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】温度制御装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203376
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 豊
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA24
2H033BA11
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB13
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033CA07
2H033CA30
2H033CA36
2H033CA45
2H033CA48
(57)【要約】
【課題】処理時間を短くすることが可能な温度制御装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る温度制御装置は、ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する。前記温度制御装置は、温度推定部と、調整部と、を具備する。前記温度推定部は、前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において媒体と対向しない部分の温度を推定する。前記調整部は、前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する。
【選択図】 図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する温度制御装置であって、
前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において媒体と対向しない部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する調整部と、
を具備する温度制御装置。
【請求項2】
前記媒体と対向しない部分の推定された温度が上限値を超える場合、前記調整部は、前記搬送スピードを下げるように調整する、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において前記媒体と対向する部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向する部分の推定された温度及び温度センサにより検出された前記温度制御対象の温度に基づいて、前記媒体と対向する部分の補正温度を求める演算部と、
前記媒体と対向する部分の補正温度に基づいて、前記ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを生成する信号生成部と、
前記媒体と対向する部分の推定された温度、前記媒体と対向しない部分の推定された温度及び前記媒体と対向する部分の補正温度に基づいて、前記媒体と対向しない部分の補正温度を求める演算部と、
を備え、
前記調整部は、前記媒体と対向しない部分の補正温度に基づいて、前記搬送スピードを調整する、
請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記温度センサにより検出された前記温度制御対象の温度は、前記温度センサにより検出された前記温度制御対象において前記媒体と対向する部分の温度である、請求項3に記載の温度制御装置。
【請求項5】
ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する定着用回転体の温度を制御する画像形成装置であって、
媒体上に形成されたトナー像を加熱して前記媒体上に定着させる前記定着用回転体と、前記定着用回転体を加熱する前記ヒータと、を有する定着器と、
前記ヒータへの通電に基づいて、前記定着用回転体において前記媒体と対向しない部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する調整部と、
を具備する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温度制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、定着器によって印刷媒体に熱及び圧力を与えることにより、印刷媒体にトナー像を定着させる定着器を備える。定着器は、定着用回転体(ヒートローラ)、加圧部材(プレスローラ)、加熱部材(ヒータ等)及び温度センサを備える。温度センサは、ヒートローラの表面温度を検出する。
【0003】
画像形成装置は、温度センサの検出信号(温度センサ信号)に基づいて、ヒータに対する通電量を増減させることにより、ヒートローラの表面温度が目標値となるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-34347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一例として、画像形成装置が葉書に対する印刷処理の後、A4縦の用紙に対する印刷処理を実行する場合を想定する。画像形成装置が葉書に対する印刷処理を実行する場合、ヒートローラのうち発熱するヒータと対向する部分には、葉書と対向する部分と、葉書と対向しない部分が存在する。温度センサは高価であるので、画像形成装置に多くの温度センサを設置することは難しい。そのため、画像形成装置は、葉書と対向する部分の表面温度を検出することはできるが、葉書と対向しない部分の表面温度を検出することはできない。葉書と対向する部分は、印刷媒体により熱を奪われつつ、画像形成装置により目標温度となるように制御される。他方、葉書と対向しない部分は、印刷媒体により熱を奪われないので、蓄熱により、印刷媒体と対向する部分よりも高温になる。
【0006】
A4縦の用紙の幅サイズは、葉書の幅サイズよりも大きいので、葉書と対向しない部分は、A4縦の用紙と対向する部分である。葉書と対向しない部分が高温になりすぎると、A4縦の用紙の一部は、目標温度よりも高い温度で加熱される。そうすると、A4縦の用紙におけるトナー像の定着に悪影響が出る。ここで、画像形成装置が葉書に対する印刷処理を低速印刷で実行する場合、葉書と対向しない部分の表面温度は時間の経過に伴い低下する。そのため、画像形成装置は、低速印刷を実行することにより、葉書と対向しない部分が高温になりすぎることを防ぐことができる。
【0007】
しかしながら、画像形成装置は、上述のように葉書と対向しない部分の表面温度を検出することができない。画像形成装置は、葉書と対向しない部分の表面温度に基づいて印刷速度を調整するタイミングを特定することができないので、最初から低速印刷を実行する必要がある。そのため、画像形成装置が葉書に対する印刷処理を実行する処理時間は長くなる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、処理時間を短くすることが可能な温度制御装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る温度制御装置は、ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する。前記温度制御装置は、温度推定部と、調整部と、を具備する。前記温度推定部は、前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において媒体と対向しない部分の温度を推定する。前記調整部は、前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成装置の構成の例について説明するための図である。
図2図2は、一実施形態に係るヒートローラ、ヒータ及び複数の温度センサの位置関係の例について説明するための図である。
図3図3は、一実施形態に係るA3縦の用紙の搬送に伴うヒートローラにおける温度分布の例について説明するための図である。
図4図4は、一実施形態に係るA4縦の用紙の搬送に伴うヒートローラにおける温度分布の例について説明するための図である。
図5図5は、一実施形態に係る葉書の搬送に伴うヒートローラにおける温度分布の例について説明するための図である。
図6図6は、一実施形態に係る封筒の搬送に伴うヒートローラにおける温度分布の例について説明するための図である。
図7図7は、一実施形態に係るヒータ通電制御回路の構成の例について説明するための図である。
図8図8は、一実施形態に係るセンタ用制御回路の構成の例について説明するための図である。
図9図9は、一実施形態に係る第1の温度推定結果を得るための熱移動を表現する第1の熱回路について説明するための図である。
図10図10は、一実施形態に係る第2の温度推定結果を得るための熱移動を表現する第2の熱回路について説明するための図である。
図11図11は、一実施形態に係るサイド用制御回路の構成の例について説明するための図である。
図12図12は、一実施形態に係るセンタ用制御回路によるWAE制御の動作の例について説明するためのフローチャートである。
図13図13は、一実施形態に係るセンタ用制御回路によるWAE制御の動作の例について説明するための図である。
図14図14は、一実施形態に係るセンタ用制御回路によるWAE制御の動作の例について説明するための図である。
図15図15は、一実施形態に係るセンタ用制御回路における処理のサイクルについて説明するための図である
図16図16は、一実施形態に係るセンタ用制御回路における印刷速度制御の動作の例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る温度制御装置及び画像形成装置について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る画像形成装置1の構成例について説明するための説明図である。
【0012】
画像形成装置1は、例えば、印刷媒体Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行うMFP(Multifunction Peripheral)である。画像形成装置1は、例えば、印刷媒体Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行うLED(Light Emitting Diode)アレイを走査する固体走査方式のプリンタ(例えばLEDプリンタ)である。印刷媒体Pは、印刷可能な媒体である。印刷媒体Pは、用紙等のシートだけでなく、葉書又は封筒等を含む。印刷媒体Pは、媒体の一例である。画像形成装置1は、温度制御装置の一例である。
【0013】
例えば、画像形成装置1は、トナーカートリッジからトナーを受け取り、受け取ったトナーにより印刷媒体Pに画像を形成する構成を備える。トナーは、単色のトナーであってもよいし、例えばシアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等の色のカラートナーであってもよい。また、トナーは、熱が加えられた場合に消色する消色トナーであってもよい。
【0014】
図1に示されるように、画像形成装置1は、筐体11、通信インタフェース12、システムコントローラ13、ヒータ通電制御回路14、表示部15、操作インタフェース16、複数の用紙トレイ17、排紙トレイ18、搬送部19、画像形成部20及び定着器21を備える。
【0015】
筐体11は、画像形成装置1の本体である。筐体11は、通信インタフェース12、システムコントローラ13、ヒータ通電制御回路14、複数の用紙トレイ17、搬送部19、画像形成部20及び定着器21を収容する。筐体11には、表示部15、操作インタフェース16及び排紙トレイ18が設けられている。
【0016】
まず、画像形成装置1の制御系の構成について説明する。
通信インタフェース12は、他の機器と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース12は、例えば、上位装置(外部機器)との通信に用いられる。通信インタフェース12は、例えば、LAN(Local Area Network)コネクタ等として構成される。また、通信インタフェース12は、Bluetooth(登録商標)又はWi-fi(登録商標)等の規格に従って他の機器と無線通信を行うものであってもよい。
【0017】
システムコントローラ13は、画像形成装置1の制御を行う。システムコントローラ13は、例えば、プロセッサ22及びメモリ23を備える。
【0018】
プロセッサ22は、演算処理を実行する演算素子である。プロセッサ22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラム等のデータに基づいて種々の処理を行う。プロセッサ22は、メモリ23に格納されているプログラムを実行することにより、種々の動作を実行可能な制御部として機能する。プロセッサ22は、処理回路の一例である。
【0019】
プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の情報処理を行う。例えば、プロセッサ22は、通信インタフェース12を介して外部機器から取得した画像に基づいて、印刷ジョブを生成する。プロセッサ22は、生成した印刷ジョブを、メモリ23に格納する。
【0020】
印刷ジョブは、印刷媒体Pに形成する画像を示す画像データを含む。画像データは、1枚の印刷媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよいし、複数枚の印刷媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよい。さらに、印刷ジョブは、カラー印刷かモノクロ印刷かを示す情報を含む。印刷ジョブは、印刷部数(ページセット数)、1部当たりの印刷枚数(ページ数)等の情報を含んでいてもよい。
【0021】
また、プロセッサ22は、生成した印刷ジョブに基づいて、搬送部19、画像形成部20及び定着器21の動作を制御するための印刷制御情報を生成する。印刷制御情報は、通紙のタイミングを示す情報を含む。プロセッサ22は、印刷制御情報をヒータ通電制御回路14に供給する。
【0022】
また、プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラムを実行することにより、搬送部19及び画像形成部20の動作を制御するコントローラ(エンジンコントローラ)として機能する。即ち、プロセッサ22は、搬送部19による印刷媒体Pの搬送の制御及び画像形成部20による印刷媒体Pへの画像の形成の制御等を制御する。
【0023】
メモリ23は、プログラム及びプログラムで用いられるデータ等を記憶する記憶媒体でる。また、メモリ23は、ワーキングメモリとして機能する記憶媒体である。すなわち、メモリ23は、プロセッサ22の処理中のデータ及びプロセッサ22が実行するプログラム等を一時的に格納する。例えば、メモリ23は、RAM(Random-Access Memory)を含む。
【0024】
なお、画像形成装置1は、エンジンコントローラをシステムコントローラ13とは別に備える構成であってもよい。この場合、エンジンコントローラが、搬送部19による印刷媒体Pの搬送の制御及び画像形成部20による印刷媒体Pへの画像の形成の制御等を行う。また、この場合、システムコントローラ13は、エンジンコントローラにおける制御に必要な情報をエンジンコントローラに供給する。
【0025】
また、画像形成装置1は、交流電源ACの交流電圧を用いて、画像形成装置1内の種々の構成に直流電圧を供給する図示されない電力変換回路を備える。電力変換回路は、プロセッサ22及びメモリ23の動作に必要な直流電圧をシステムコントローラ13に供給する。また、電力変換回路は、画像形成に必要な直流電圧を画像形成部20に供給する。また、電力変換回路は、印刷媒体Pの搬送に必要な直流電圧を搬送部19に供給する。また、電力変換回路は、定着器21のヒータ73の駆動用の直流電圧をヒータ通電制御回路14に供給する。
【0026】
ヒータ通電制御回路14は、定着器21のヒータ73に含まれる後述するセンタヒータ73-1及び2つのサイドヒータ73-2への通電を独立に制御する。センタヒータ73-1及びサイドヒータ73-2は、ヒータの一例である。ヒータ通電制御回路14は、センタヒータ73-1を通電させるための通電電力PCを生成し、センタヒータ73-1に供給する。ヒータ通電制御回路14は、2つのサイドヒータ73-2を通電させるための通電電力PSを生成し、2つのサイドヒータ73-2に供給する。通電電力PC及び通電電力PSは、電力の一例である。ヒータ通電制御回路14の詳細な説明については後述する。
【0027】
表示部15は、システムコントローラ13又は図示されないグラフィックコントローラなどの表示制御部から入力される映像信号に応じて画面を表示するディスプレイを備える。例えば、表示部15のディスプレイには、画像形成装置1の種々の設定のための画面が表示される。
【0028】
操作インタフェース16は、操作部材を含む。操作インタフェース16は、操作部材の操作に応じた操作信号をシステムコントローラ13に供給する。操作部材は、例えば、タッチセンサ、テンキー、電源キー、用紙フィードキー、種々のファンクションキー又はキーボード等である。タッチセンサは、ある領域内において指定された位置を示す情報を取得する。タッチセンサは、表示部15と一体にタッチパネルとして構成されることにより、表示部15に表示された画面上のタッチされた位置を示す信号をシステムコントローラ13に入力する。
【0029】
複数の用紙トレイ17は、それぞれ印刷媒体Pを収容するカセットである。用紙トレイ17は、筐体11の外部から印刷媒体Pを供給可能に構成されている。例えば、用紙トレイ17は、筐体11から引き出し可能に構成されている。
【0030】
排紙トレイ18は、画像形成装置1から排出された印刷媒体Pを支持するトレイである。
【0031】
次に、画像形成装置1の印刷媒体Pを搬送する構成について説明する。
搬送部19は、画像形成装置1内で印刷媒体Pを搬送する機構である。図1に示されるように、搬送部19は、複数の搬送路を備える。例えば、搬送部19は、給紙搬送路31及び排紙搬送路32を備える。
【0032】
給紙搬送路31及び排紙搬送路32は、それぞれ図示されない複数のモータ、複数のローラ、及び複数のガイドにより構成される。複数のモータは、システムコントローラ13の制御に基づいて、軸を回転させることにより、軸の回転に連動するローラを回転させる。複数のローラは、回転することにより印刷媒体Pを搬送する。複数のガイドは、印刷媒体Pの搬送方向を制御する。
【0033】
給紙搬送路31は、用紙トレイ17から印刷媒体Pを取り込み、取り込んだ印刷媒体Pを画像形成部20に供給する。給紙搬送路31は、各用紙トレイに対応したピックアップローラ33を備える。各ピックアップローラ33は、それぞれ用紙トレイ17の印刷媒体Pを給紙搬送路31に取り込む。
【0034】
排紙搬送路32は、画像が形成された印刷媒体Pを、筐体11から排出する搬送路である。排紙搬送路32によって排出された印刷媒体Pは、排紙トレイ18により支持される。
【0035】
次に、画像形成部20について説明する。
画像形成部20は、印刷媒体Pに画像を形成する構成である。具体的には、画像形成部20は、プロセッサ22により生成された印刷ジョブに基づいて、印刷媒体Pに画像を形成する。
【0036】
画像形成部20は、複数のプロセスユニット41、複数の露光器42及び転写機構43を備える。画像形成部20は、プロセスユニット41毎に、露光器42を備える。なお、複数のプロセスユニット41及び複数の露光器42は、それぞれ同じ構成であるため、1つのプロセスユニット41及び1つの露光器42についてそれぞれ説明する。
【0037】
まず、プロセスユニット41について説明する。
プロセスユニット41は、トナー像を形成する構成である。例えば、複数のプロセスユニット41は、トナーの種類ごとに設けられる。例えば、複数のプロセスユニット41は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等のカラートナーにそれぞれ対応する。具体的には、各プロセスユニット41には、異なる色のトナーを有するトナーカートリッジが接続される。
【0038】
トナーカートリッジは、トナー収容容器及びトナー送出機構を備える。トナー収容容器は、トナーを収容する容器である。トナー送出機構は、トナー収容容器内のトナーを送り出すスクリューなどにより構成される機構である。
【0039】
プロセスユニット41は、感光ドラム51、帯電チャージャ52及び現像器53を備える。
感光ドラム51は、円筒状のドラムと、ドラムの外周面に形成された感光層とを備える感光体である。感光ドラム51は、図示されない駆動機構によって一定の速度で回転する。
【0040】
帯電チャージャ52は、感光ドラム51の表面を一様に帯電させる。例えば、帯電チャージャ52は、帯電ローラを用いて、感光ドラム51に電圧(現像バイアス電圧)を印加することにより、感光ドラム51を一様な負極性の電位(コントラスト電位)に帯電させる。帯電ローラは、感光ドラム51に対して所定の圧力を加えた状態で、感光ドラム51の回転によって回転する。
【0041】
現像器53は、トナーを感光ドラム51に付着させる装置である。現像器53は、現像剤容器、撹拌機構、現像ローラ、ドクターブレード、及びオートトナーコントロール(ATC)センサ等を備える。
【0042】
現像剤容器は、トナーカートリッジから送り出されたトナーを受け取り、収容する容器である。現像剤容器内には、予めキャリアが収容されている。トナーカートリッジから送り出されたトナーは、撹拌機構によってキャリアと撹拌されることにより、トナーとキャリアとが混合された現像剤を構成する。キャリアは、現像器53の製造時に現像剤容器内に収容される。
【0043】
現像ローラは、現像剤容器内で回転することにより、表面に現像剤を付着させる。ドクターブレードは、現像ローラの表面と所定の間隔を隔てて配置された部材である。ドクターブレードは、回転する現像ローラの表面に付着した現像剤の一部を除去する。これにより、現像ローラの表面に、ドクターブレードと現像ローラの表面との間隔に応じた厚さの現像剤の層が形成される。
【0044】
ATCセンサは、例えば、コイルを有し、コイルに生じた電圧値を検出する磁束センサである。ATCセンサの検出電圧は、現像剤容器内のトナーからの磁束の密度により変化する。即ち、システムコントローラ13は、ATCセンサの検出電圧に基づいて、現像剤容器に残っているトナーのキャリアに対する濃度比(トナー濃度比)を判断する。システムコントローラ13は、トナー濃度比に基づいて、トナーカートリッジの送出機構を駆動する図示されないモータを動作させ、トナーカートリッジから現像器53の現像剤容器にトナーを送り出させる。
【0045】
次に、露光器42について説明する。
露光器42は、複数の発光素子を備える。露光器42は、発光素子から光を、帯電した感光ドラム51に照射することにより、感光ドラム51上に潜像を形成する。発光素子は、例えば発光ダイオード(LED)などである。1つの発光素子は、感光ドラム51上の1点に光を照射するように構成されている。複数の発光素子は、感光ドラム51の回転軸と平行な方向である主走査方向に配列されている。
【0046】
露光器42は、主走査方向に配列された複数の発光素子により感光ドラム51上に光を照射することにより、感光ドラム51上に1ライン分の潜像を形成する。さらに、露光器42は、回転する感光ドラム51に連続して光を照射することにより、複数ラインの潜像を形成する。
【0047】
上記の構成において、帯電チャージャ52により帯電された感光ドラム51の表面に、露光器42から光が照射されると、静電潜像が形成される。現像ローラの表面に形成された現像剤の層が、感光ドラム51の表面に近接すると、現像剤に含まれるトナーが、感光ドラム51の表面に形成された潜像に付着する。これにより、感光ドラム51の表面にトナー像が形成される。
【0048】
次に、転写機構43について説明する。
転写機構43は、感光ドラム51の表面に形成されたトナー像を、印刷媒体Pに転写する構成である。
【0049】
転写機構43は、例えば、1次転写ベルト61、2次転写対向ローラ62、複数の1次転写ローラ63及び2次転写ローラ64を備える。
【0050】
1次転写ベルト61は、2次転写対向ローラ62及び複数の巻付ローラに巻き付けられた無端ベルトである。1次転写ベルト61は、内側の面(内周面)が2次転写対向ローラ62及び複数の巻付ローラに接触し、外側の面(外周面)がプロセスユニット41の感光ドラム51と対向する。
【0051】
2次転写対向ローラ62は、図示されないモータによって回転する。2次転写対向ローラ62は、回転することにより、1次転写ベルト61を所定の搬送方向に搬送する。複数の巻付ローラは、自由に回転可能に構成されている。複数の巻付ローラは、2次転写対向ローラ62による1次転写ベルト61の移動に従って回転する。
【0052】
複数の1次転写ローラ63は、プロセスユニット41の感光ドラム51に1次転写ベルト61を接触させる構成である。複数の1次転写ローラ63は、複数のプロセスユニット41の感光ドラム51に対応するように設けられている。具体的には、複数の1次転写ローラ63は、それぞれ対応するプロセスユニット41の感光ドラム51と、1次転写ベルト61を挟んで対向する位置に設けられている。1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の内周面側に接触し、1次転写ベルト61を感光ドラム51側に変位させる。これにより、1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の外周面を感光ドラム51に接触させる。
【0053】
2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61と対向する位置に設けられる。2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61の外周面に接触し、且つ圧力を加える。これにより、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着する転写ニップが形成される。2次転写ローラ64は、転写ニップを印刷媒体Pが通過する場合、転写ニップを通過する印刷媒体Pを1次転写ベルト61の外周面に押し当てる。
【0054】
2次転写ローラ64及び2次転写対向ローラ62は、回転することにより、給紙搬送路31から供給された印刷媒体Pを挟んだ状態で搬送する。これにより、印刷媒体Pが転写ニップを通過する。
【0055】
上記の構成において、1次転写ベルト61の外周面が感光ドラム51に接触すると、感光ドラムの表面に形成されたトナー像が1次転写ベルト61の外周面に転移する。画像形成部20が複数のプロセスユニット41を備える場合、1次転写ベルト61は、複数のプロセスユニット41の感光ドラム51からトナー像を受け取る。1次転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、1次転写ベルト61によって、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着した転写ニップまで搬送される。転写ニップに印刷媒体Pが存在する場合、1次転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、転写ニップにおいて、印刷媒体Pに転写される。
【0056】
次に、画像形成装置1の定着に関する構成について説明する。
定着器21は、トナー像が転写された印刷媒体Pに、トナー像を定着させる。定着器21は、システムコントローラ13及びヒータ通電制御回路14の制御に基づいて動作する。定着器21は、定着用回転体と、加圧部材と、加熱部材とを備える。定着用回転体は、例えばヒートローラ71である。ヒートローラ71は、印刷媒体P上に形成されたトナー像を加熱して印刷媒体P上に定着させる。また、加圧部材は、例えばプレスローラ72である。加熱部材は、例えばヒートローラ71を加熱するヒータ73である。ヒータ73は、後述するように、センタヒータ73-1及び2つのサイドヒータ73-2を含む。またさらに、定着器21は、ヒートローラ71の温度を検出する温度センサ(サーマルセンサ)74-1及び温度センサ74-2を備える。ヒートローラ71、ヒータ73並びに温度センサ74-1及び温度センサ74-2の位置関係については後述する。
【0057】
ヒートローラ71は、図示されないモータにより回転する定着用回転体である。ヒートローラ71は、中空状に金属で形成された芯金と、芯金の外周上に形成された弾性層とを有する。ヒートローラ71は、中空状に形成された芯金の内側に配置されたヒータ73により、芯金の内側が熱される。芯金の内側に生じた熱は、外部であるヒートローラ71の表面(即ち弾性層の表面)に伝達する。
【0058】
プレスローラ72は、ヒートローラ71に対向する位置に設けられる。プレスローラ72は、所定の外径で金属により形成された芯金と、芯金の外周上に形成された弾性層とを有する。プレスローラ72は、図示されないテンション部材から加わる応力によって、ヒートローラ71に対して圧力を加える。プレスローラ72からヒートローラ71に圧力が加わることにより、プレスローラ72とヒートローラ71とが密着したニップ(定着ニップ)が形成される。プレスローラ72は、図示されないモータにより回転する。プレスローラ72は、回転することにより、定着ニップに進入した印刷媒体Pを搬送するとともに、印刷媒体Pをヒートローラ71に押し当てる。
【0059】
ヒータ73は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力によって発熱する装置である。例えば、センタヒータ73-1は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力PCによって発熱する。2つのサイドヒータ73-2は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力PSによって発熱する。ヒータ73は、例えばハロゲンヒータである。ヒータ73は、ヒータ通電制御回路14から供給された通電電力が熱源であるハロゲンランプヒータに通電することにより、ハロゲンランプヒータから放射された電磁波によって、ヒートローラ71の芯金の内側を発熱させる。また、ヒータ73は、例えばIHヒータなどであってもよい。
【0060】
温度センサ74-1及び温度センサ74-2は、ヒートローラ71の温度を検出する。ここでは、温度センサ74-1及び温度センサ74-2がヒートローラ71の表面温度を検出するものとして説明する。ヒートローラ71の表面温度は、ヒートローラ71の温度の一例である。温度センサ74-1及び温度センサ74-2は、ヒートローラ71の表面の近傍の空気の温度を検出してもよい。なお、温度センサ74-1及び温度センサ74-2は、少なくともヒートローラ71の表面温度の変化を検出することができる位置に設けられていればよい。
【0061】
温度センサ74-1は、温度センサ74-1によるヒートローラ71の温度検出結果TdCをヒータ通電制御回路14に供給する。温度検出結果TdCは、温度センサ74-1により検出されたヒートローラ71の表面温度である。温度検出結果TdCは、温度センサ74-1により検出されたヒートローラ71の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0062】
温度センサ74-2は、温度センサ74-2によるヒートローラ71の温度検出結果TdSをヒータ通電制御回路14に供給する。温度検出結果TdSは、温度センサ74-2により検出されたヒートローラ71の表面温度である。温度検出結果TdSは、温度センサ74-2により検出されたヒートローラ71の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0063】
上記の構成により、ヒートローラ71及びプレスローラ72は、定着ニップを通過する印刷媒体Pに対して、熱及び圧力を加える。印刷媒体P上のトナーは、ヒートローラ71から与えられた熱によって融解し、ヒートローラ71とプレスローラ72とにより与えられた圧力によって、印刷媒体P表面に塗布される。これにより、定着ニップを通過した印刷媒体Pにトナー像が定着する。定着ニップを通過した印刷媒体Pは、排紙搬送路32に導入され、排紙トレイ18に排出される。
【0064】
次に、ヒートローラ71、ヒータ73並びに温度センサ74-1及び温度センサ74-2の位置関係について説明する。
図2は、ヒートローラ71、ヒータ73並びに温度センサ74-1及び温度センサ74-2の位置関係の例について説明するための図である。
【0065】
ヒートローラ71の長手方向は、印刷媒体Pの搬送方向と直交する方向と平行である。ヒートローラ71の長手方向のサイズは、A3縦の用紙の幅サイズよりも大きい。A3縦の用紙は、画像形成装置1で用いることが可能な印刷媒体Pの中で最も幅サイズの大きい印刷媒体Pである。
【0066】
ヒータ73は、ヒートローラ71の長手方向と平行に設けられている。ヒータ73の長手方向のサイズは、ヒートローラ71の長手方向のサイズと略同じである。ヒータ73の長手方向の一端は、ヒートローラ71の長手方向の一端と略同じ位置である。ヒータ73の長手方向の他端は、ヒートローラ71の長手方向の他端と略同じ位置である。
【0067】
ヒータ73は、センタヒータ73-1の両側に1つずつサイドヒータ73-2を有する。センタヒータ73-1の長手方向のサイズは、A3縦の用紙の幅サイズよりも小さく、A4縦の用紙の幅サイズよりも大きい。センタヒータ73-1は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分を加熱する。例えば、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分は、ヒートローラ71の長手方向においてセンタヒータ73-1と対向する部分である。ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分は、ヒートローラ71の長手方向における中央部分である。ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1から熱が伝播する部分である。サイドヒータ73-2は、ヒートローラ71においてサイドヒータ73-2と対向する部分を加熱する。例えば、ヒートローラ71においてサイドヒータ73-2と対向する部分は、ヒートローラ71の長手方向においてサイドヒータ73-2と対向する部分である。ヒートローラ71においてサイドヒータ73-2と対向する部分は、ヒートローラ71の長手方向における端部分である。ヒートローラ71においてサイドヒータ73-2と対向する部分は、ヒートローラ71においてサイドヒータ73-2から熱が伝播する部分である。
【0068】
温度センサ74-1は、ヒートローラ71における第1の位置の表面温度を検出する。第1の位置は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のうち、印刷媒体Pの幅サイズによらず、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分である。例えば、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分は、ヒートローラ71の長手方向において印刷媒体Pと対向する部分である。例えば、第1の位置は、ヒートローラ71の長手方向における中心位置である。そのため、温度検出結果TdCは、温度センサ74-1により検出されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度である。
【0069】
温度センサ74-2は、ヒートローラ71における第2の位置の表面温度を検出する。第2の位置は、ヒートローラ71において1つのサイドヒータ73-2と対向する部分のうち、ヒートローラ71においてA3縦の用紙と対向する部分である。そのため、温度検出結果TdSは、温度センサ74-2により検出されたヒートローラ71においてA3縦の用紙と対向する部分の表面温度である。
【0070】
なお、ヒータ通電制御回路14は、温度センサ74-2からの温度検出結果TdSに基づいて、2つのサイドヒータ73-2のそれぞれへの通電を同じように制御すればよい。そのため、定着器21は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2の何れか一方と対向する部分の表面温度を検出する1つの温度センサ74-2を含んでいればよい。
【0071】
次に、印刷媒体Pの種類に応じたヒートローラ71における温度分布について説明する。
印刷媒体PがA3縦の用紙である場合について説明する。
図3は、A3縦の用紙の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例について説明するための図である。
【0072】
A3縦の用紙の幅サイズは、センタヒータ73-1の長手方向のサイズよりも大きい。そのため、A3縦の用紙は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分の全体と対向する。A3縦の用紙は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分の一部と対向する。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。センタヒータ73-1は、通電電力PCによって発熱し、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分を加熱する。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給する。2つのサイドヒータ73-2は、通電電力PSによって発熱し、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分を加熱する。
【0073】
ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分は、加熱される部分かつA3縦の用紙と対向する部分である。ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分には、加熱される部分かつA3縦の用紙と対向する部分と、加熱される部分かつA3縦の用紙と対向しない部分が存在する。加熱される部分かつA3縦の用紙と対向する部分は、薄いグレーで示す。加熱される部分かつA3縦の用紙と対向しない部分は、濃いグレーで示す。加熱される部分かつA3縦の用紙と対向する部分の温度は、ヒータ通電制御回路14の制御により目標温度である。加熱される部分かつA3縦の用紙と対向しない部分の温度は、A3縦の用紙により熱を奪われないので、蓄熱により、目標温度よりも高温である。なお、A4横のサイズとA3縦のサイズは同じなので、A4横の用紙の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例は、上述のA3縦の用紙の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例と同様である。
【0074】
印刷媒体PがA4縦の用紙である場合について説明する。
図4は、A4縦の用紙の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例について説明するための図である。
【0075】
A4縦の用紙の幅サイズは、センタヒータ73-1の長手方向のサイズよりも小さい。そのため、A4縦の用紙は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分の一部と対向する。A4縦の用紙は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分の全体と対向しない。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。センタヒータ73-1は、通電電力PCによって発熱し、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分を加熱する。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給しない。2つのサイドヒータ73-2は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分を加熱しない。
【0076】
ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分には、加熱される部分かつA4縦の用紙と対向する部分と、加熱される部分かつA4縦の用紙と対向しない部分が存在する。ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分は、加熱されない部分かつA4縦の用紙と対向しない部分である。加熱される部分かつA4縦の用紙と対向する部分は、薄いグレーで示す。加熱される部分かつA4縦の用紙と対向しない部分は、濃いグレーで示す。加熱されない部分かつA4縦の用紙と対向しない部分は、斜線で示す。加熱される部分かつA4縦の用紙と対向する部分の温度は、ヒータ通電制御回路14の制御により目標温度である。加熱される部分かつA4縦の用紙と対向しない部分の温度は、A4縦の用紙により熱を奪われないので、蓄熱により、目標温度よりも高温である。加熱されない部分かつA4縦の用紙と対向しない部分の温度は、室温である。
【0077】
印刷媒体Pが葉書である場合について説明する。
図5は、葉書の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例について説明するための図である。
【0078】
葉書の幅サイズは、センタヒータ73-1の長手方向のサイズよりも小さい。そのため、葉書は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分の一部と対向する。葉書は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分の全体と対向しない。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。センタヒータ73-1は、通電電力PCによって発熱し、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分を加熱する。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給しない。2つのサイドヒータ73-2は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分を加熱しない。 ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分には、加熱される部分かつ葉書と対向する部分と、加熱される部分かつ葉書と対向しない部分が存在する。ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分は、加熱されない部分かつ葉書と対向しない部分である。加熱される部分かつ葉書と対向する部分は、薄いグレーで示す。加熱される部分かつ葉書と対向しない部分は、濃いグレーで示す。加熱されない部分かつ葉書と対向しない部分は、斜線で示す。加熱される部分かつ葉書と対向する部分の温度は、ヒータ通電制御回路14の制御により目標温度である。加熱される部分かつ葉書と対向しない部分の温度は、葉書により熱を奪われないので、蓄熱により、目標温度よりも高温である。加熱されない部分かつ葉書と対向しない部分の温度は、室温である。なお、加熱される部分かつ葉書と対向しない部分の面積は、図4に例示する加熱される部分かつA4縦の用紙と対向しない部分の面積よりも広い。
【0079】
印刷媒体Pが封筒である場合について説明する。
図6は、封筒の搬送に伴うヒートローラ71における温度分布の例について説明するための図である。
【0080】
封筒の幅サイズは、センタヒータ73-1の長手方向のサイズよりも小さい。そのため、封筒は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分の一部と対向する。封筒は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分の全体と対向しない。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。センタヒータ73-1は、通電電力PCによって発熱し、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分を加熱する。ヒータ通電制御回路14は、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給しない。2つのサイドヒータ73-2は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分を加熱しない。
【0081】
ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分には、加熱される部分かつ封筒と対向する部分と、加熱される部分かつ封筒と対向しない部分が存在する。ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分は、加熱されない部分かつ封筒と対向しない部分である。加熱される部分かつ封筒と対向する部分は、薄いグレーで示す。加熱される部分かつ封筒と対向しない部分は、濃いグレーで示す。加熱されない部分かつ封筒と対向しない部分は、斜線で示す。加熱される部分かつ封筒と対向する部分の温度は、ヒータ通電制御回路14の制御により目標温度である。加熱される部分かつ封筒と対向しない部分の温度は、封筒により熱を奪われないので、蓄熱により、目標温度よりも高温である。加熱されない部分かつ封筒と対向しない部分の温度は、室温である。なお、加熱される部分かつ封筒と対向しない部分の面積は、図4に例示する加熱される部分かつA4縦の用紙と対向しない部分の面積よりも広い。
【0082】
次に、ヒータ通電制御回路14について説明する。
図7は、ヒータ通電制御回路14の構成の例について説明するための図である。
ヒータ通電制御回路14は、センタ用制御回路14-1及びサイド用制御回路14-2を備える。
【0083】
センタ用制御回路14-1は、定着器21のセンタヒータ73-1への通電を制御することにより、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。センタ用制御回路14-1は、センタヒータ73-1に通電電力PCを供給することにより、センタヒータ73-1から熱が伝播するヒートローラ71の表面温度を制御する。例えば、センタヒータ73-1から熱が伝播するヒートローラ71は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分である。なお、センタ用制御回路14-1は、印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズによらず、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給する。
【0084】
サイド用制御回路14-2は、定着器21の2つのサイドヒータ73-2への通電を制御することにより、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給する。サイド用制御回路14-2は、2つのサイドヒータ73-2に通電電力PSを供給することにより、2つのサイドヒータ73-2から熱が伝播するヒートローラ71の表面温度を制御する。例えば、2つのサイドヒータ73-2から熱が伝播するヒートローラ71は、ヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分である。なお、サイド用制御回路14-2は、印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズに応じて、2つのサイドヒータ73-2への通電の実行又は停止を切り替える。印刷対象の印刷媒体Pがヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分の一部と対向する場合、サイド用制御回路14-2は、2つのサイドヒータ73-2への通電を実行する。印刷対象の印刷媒体Pがヒートローラ71において2つのサイドヒータ73-2と対向する部分と対向しない場合、サイド用制御回路14-2は、2つのサイドヒータ73-2への通電を停止する。
【0085】
次に、センタ用制御回路14-1について説明する。
図8は、センタ用制御回路14-1の構成の例について説明するための図である。
図8の説明では、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のうち印刷媒体Pと対向する部分は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分というものとする。ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のうち印刷媒体Pと対向しない部分は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分というものとする。
【0086】
図8に示されるように、センタ用制御回路14-1は、第1の温度推定部81-1、第1の推定履歴保持部82-1、高周波成分抽出部83-1、係数加算部84-1、目標温度出力部85-1、差分比較部86-1、制御デューティ生成部87-1、外部リミット部88-1、デューティパルス変換部89-1、電源回路90-1、第2の温度推定部91-1、第2の推定履歴保持部92-1、第1の差分計算部93-1、温度補正部94-1及び第2の差分計算部95-1を備える。また、センタ用制御回路14-1には、温度センサ74-1からの温度検出結果TdCが入力される。
【0087】
第1の温度推定部81-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を推定する温度推定処理を行う。第1の温度推定部81-1は、熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を推定する。第1の温度推定部81-1には、第1の推定履歴保持部82-1からの第1の推定履歴PREVC及び外部リミット部88-1からのデューティ値LDCが入力される。
【0088】
第1の推定履歴PREVCは、第1の温度推定部81-1による第1の温度推定結果ESTCの履歴である。第1の推定履歴PREVCは、第1の温度推定部81-1による第1の温度推定結果ESTCの履歴を示す信号を指すこともある。第1の温度推定部81-1による第1の温度推定結果ESTCの履歴は、過去の複数の第1の温度推定結果ESTCを含む。第1の温度推定結果ESTCは、第1の温度推定部81-1により少なくともデューティ値LDCに基づいて推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度である。推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の推定された表面温度ということもある。第1の温度推定結果ESTCは、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の推定された表面温度を制御するために用いられる温度でもある。第1の温度推定結果ESTCは、第1の温度推定部81-1により少なくともデューティ値LDCに基づいて推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0089】
デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCに基づくデューティ値である。デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCに基づくデューティ値を示す信号を指すこともある。デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCと同じ値のデューティ値である場合もあるし、デューティ値DUTYCとは異なる値のデューティ値である場合もある。外部リミット部88-1がデューティ値DUTYCを制限しない場合、デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCと同じ値のデューティ値である。外部リミット部88-1がデューティ値DUTYCを制限する場合、デューティ値LDCは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値であって、デューティ値DUTYCとは異なる値のデューティ値である。
【0090】
デューティ値DUTYCは、制御デューティ生成部87-1により生成されたデューティ値である。デューティ値DUTYCは、制御デューティ生成部87-1により生成されたデューティ値を示す信号を指すこともある。
【0091】
第1の温度推定部81-1は、デューティ値LDCに基づいて、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を推定する。第1の温度推定部81-1は、推定に基づいて、第1の温度推定結果ESTCを生成する。第1の温度推定部81-1は、第1の温度推定結果ESTCを第1の推定履歴保持部82-1、高周波成分抽出部83-1及び第1の差分計算部93-1に出力する。上述のように、デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCに基づくデューティ値である。そのため、デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、デューティ値DUTYCに基づいて表面温度を推定することの一例である。上述のように、デューティ値LDCは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値であることもある。そのため、デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値に基づいて表面温度を推定することを含む。通電パルスPsCはデューティ値LDCに基づいて生成される。そのため、デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、センタヒータ73-1への通電に基づいて表面温度を推定することの一例である。
【0092】
典型例では、第1の温度推定部81-1は、第1の推定履歴PREVC及びデューティ値LDCに基づいて、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を推定する。第1の推定履歴PREVC及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第1の推定履歴PREVC及びデューティ値DUTYCに基づいて表面温度を推定することの一例である。第1の推定履歴PREVC及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第1の推定履歴PREVC及び外部リミット部88-1による制限後のデューティ値に基づいて表面温度を推定することを含む。第1の推定履歴PREVC及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第1の推定履歴PREVC及びセンタヒータ73-1への通電に基づいて表面温度を推定することの一例である。
【0093】
なお、第1の温度推定部81-1は、デューティ値LDC代えて、通電パルスPsCを用いてもよい。通電パルスPsCは、センタヒータ73-1への通電の一例である。
【0094】
第1の推定履歴保持部82-1は、第1の推定履歴PREVCを保持する。第1の推定履歴保持部82-1は、第1の推定履歴PREVCを第1の温度推定部81-1に出力する。
【0095】
高周波成分抽出部83-1は、第1の温度推定結果ESTCの高周波成分を抽出するハイパスフィルタ処理を行う。例えば、高周波成分抽出部83-1は、第1の温度推定結果ESTCのうち直流分をキャンセルし、高周波成分のみを抽出する。高周波成分抽出部83-1は、高周波成分HPFCを生成し、高周波成分HPFCを係数加算部84-1に出力する。高周波成分HPFCは、高周波成分抽出部83-1により抽出された第1の温度推定結果ESTCの高周波成分である。高周波成分HPFCは、高周波成分抽出部83-1により抽出された第1の温度推定結果ESTCの高周波成分を示す信号を指すこともある。
【0096】
係数加算部84-1は、第1の温度推定結果ESTCを補正するための係数加算処理を行う。係数加算部84-1には、温度センサ74-1からの温度検出結果TdC及び高周波成分抽出部83-1からの高周波成分HPFCが入力される。係数加算部84-1は、高周波成分HPFC及び温度検出結果TdCに基づいて第1の温度補正結果WAECを求める。第1の温度補正結果WAECは、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の補正温度である。ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の補正温度は、第1の温度推定結果ESTCを補正した温度である。第1の温度補正結果WAECは、第1の温度推定結果ESTCを補正するために、高周波成分HPFCに基づいて温度検出結果TdCを補正した値である。第1の温度補正結果WAECは、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の補正温度を示す信号を指すこともある。係数加算部84-1は、第1の温度補正結果WAECを差分比較部86-1及び温度補正部94-1に出力する。
【0097】
具体的には、係数加算部84-1は、高周波成分HPFCと予め設定された係数KCとを乗算する。係数加算部84-1は、高周波成分HPFCと係数KCとを乗算して得られる値を温度検出結果TdCに加算する。係数加算部84-1は、(TdC+KC×HPFC)により得られる値を第1の温度補正結果WAECとして求める。高周波成分HPFCは、第1の温度推定結果ESTCに基づいている。そのため、高周波成分HPFC及び温度検出結果TdCに基づいて第1の温度補正結果WAECを求めることは、第1の温度推定結果ESTC及び温度検出結果TdCに基づいて第1の温度補正結果WAECを求めることの一例である。係数加算部84-1は、第1の温度補正結果WAECを求める演算部の一例である。
【0098】
例えば、係数KCが1である場合、係数加算部84-1は、温度検出結果TdCに高周波成分HPFCをダイレクトに加算する。また、例えば、係数KCが0.1である場合、係数加算部84-1は、高周波成分HPFCの10分の1の値を温度検出結果TdCに加算する。この場合、高周波成分HPFCの効果はほとんど無くなり、温度検出結果TdCに近くなる。また、例えば、係数KCが1以上である場合、高周波成分HPFCの効果をより強く表現することができる。係数加算部84-1において設定される係数KCは、あまり極端な値ではなく、1近傍の値が良いという結果が実験において出ている。第1の温度補正結果WAECは、実際のヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を適切に追従した値となる。
【0099】
目標温度出力部85-1は、予め設定された目標温度TGTCを差分比較部86-1に出力する出力処理を行う。目標温度TGTCは、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度の目標温度である。目標温度TGTCは、目標温度を示す信号を指すこともある。目標温度TGTCは、プロセッサ22からの指令による書き換えにより変更可能である。目標温度TGTCは、メモリ23に記憶されていてもよい。
【0100】
例えば、目標温度TGTCは、印刷プロセス毎に設定される。
一例では、目標温度TGTCは、各印刷プロセスで用いられる印刷媒体Pの質に応じて異なる。例えば、質は、厚さである。一般に、目標温度TGTCは、印刷媒体Pが普通紙の場合に所定の温度を保てるように決められている。印刷媒体Pが定着器21を通過する際に印刷媒体Pによってヒートローラ71から奪われる熱量は、普通紙よりも、普通紙よりも厚い厚紙の方が増加する。ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度は、普通紙に対する印刷よりも、厚紙に対する印刷の方が下がりやすい。印刷媒体Pが厚紙の場合、目標温度TGTCは、厚紙によってヒートローラ71から奪われる熱量を考慮し、普通紙に関連付けられた目標温度TGTCよりも高い。これにより、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度は、所定の温度を保ち易くなる。印刷媒体Pが普通紙よりも薄い場合、目標温度TGTCは、普通紙に関連付けられた目標温度TGTCよりも低い。
【0101】
別の例では、目標温度TGTCは、印刷プロセスのステータスに応じて異なる。印刷プロセスのステータスは、印刷プロセスに関する種々のステータスを含む。例えば、印刷プロセスのステータスは、突入電流防止、起動加熱、レディ、印刷開始、印刷中及び省エネレディなどを含むが、これらに限定されない。各ステータスの目標温度TGTCは互いに異なる。各ステータスの目標温度TGTCは予め決められていてもいいし、可変であってもよい。
【0102】
差分比較部86-1は、差分計算処理を行う。差分比較部86-1には、係数加算部84-1からの第1の温度補正結果WAEC及び目標温度出力部85-1からの目標温度TGTCが入力される。差分比較部86-1は、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとを比較する。差分比較部86-1は、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとの比較に基づいて、第1の差分DIFCを求める。第1の差分DIFCは、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとの差分である。第1の差分DIFCは、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとの差分を示す信号を指すこともある。差分比較部86-1は、第1の差分DIFCを制御デューティ生成部87-1に出力する。差分比較部86-1は、比較部の一例である。
【0103】
ここでは、第1の差分DIFCは、第1の温度補正結果WAECから目標温度TGTCを引いて得られる値であるものとして説明するが、逆であってもよい。この例では、第1の温度補正結果WAECが目標温度TGTCよりも低い場合、第1の差分DIFCは、負の値である。第1の温度補正結果WAECが目標温度TGTCよりも高い場合、第1の差分DIFCは、正の値である。第1の差分DIFCには、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとの関係が現れる。
【0104】
制御デューティ生成部87-1は、デューティ値DUTYCを生成するデューティ値生成処理を行う。制御デューティ生成部87-1には、差分比較部86-1からの第1の差分DIFCが入力される。制御デューティ生成部87-1は、第1の差分DIFCに基づいてデューティ値DUTYCを生成する。デューティ値DUTYCは、第1の差分DIFCに応じたデューティ値である。第1の温度補正結果WAECが目標温度TGTCに等しい場合、デューティ値DUTYCは、デューディのセンタ値(基準値)である。第1の温度補正結果WAECが目標温度TGTCよりも低い場合、制御デューティ生成部87-1は、センタヒータ73-1への通電量を増やすためにデューディのセンタ値よりもデューディ値を増やす。デューティ値DUTYCは、デューディのセンタ値よりも高い値である。他方、第1の温度補正結果WAECが目標温度TGTCよりも高い場合、制御デューティ生成部87-1は、センタヒータ73-1への通電量を減らすためにデューディのセンタ値よりもデューディ値を減らす。デューティ値DUTYCは、デューディのセンタ値よりも低い値である。デューティ値DUTYCは、実数である。例えば、デューティ値は、0~100の分解能であってもよい。制御デューティ生成部87-1は、デューティ値DUTYCを外部リミット部88-1に出力する。制御デューティ生成部87-1は、デューティ生成部の一例である。
【0105】
上述のように、第1の温度補正結果WAECは、第1の温度推定結果ESTC及び温度検出結果TdCに基づいているといえる。第1の差分DIFCは、目標温度TGTCと、第1の温度補正結果WAECとの差分である。そのため、第1の差分DIFCに基づいてデューティ値DUTYCを生成することは、第1の温度推定結果ESTC、温度検出結果TdC及び目標温度TGTCに基づいてデューティ値を生成することを含む。
【0106】
外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCを制限する制限処理を行う。外部リミット部88-1には、プロセッサ22からのシステム保護情報LMTC及び制御デューティ生成部87-1からのデューティ値DUTYCが入力される。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映し、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映することは、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを適用することを含む。デューティ値DUTYCがシステム保護情報LMTCで示される制限を満たさない場合、外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映することで、デューティ値DUTYCを制限する。デューティ値DUTYCがシステム保護情報LMTCで示される制限を満たす場合、外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映したとしても、デューティ値DUTYCを制限しない。外部リミット部88-1は、デューティ値LDCを第1の温度推定部81-1、デューティパルス変換部89-1及び第2の温度推定部91-1に出力する。外部リミット部88-1は、リミット部の一例である。
【0107】
システム保護情報LMTCは、画像形成装置1を保護するためにデューティ値を制限するための情報である。システム保護情報LMTCは、画像形成装置1を保護するためにデューティ値を制限するための情報を示す信号を指すこともある。システム保護情報LMTCは、プロセッサ22からの指令により変更可能である。
【0108】
一例では、システム保護情報LMTCは、デューティ値の上限値及び下限値の少なくとも何れか一方の値の情報である。デューティ値の上限値は、ヒータ73に供給可能な電力又は電流に基づいて決まる値である。デューティ値の下限値は、任意に設定可能である。デューティ値DUTYCがデューティ値の上限値を超える場合、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たさない。デューティ値DUTYCがデューティ値の下限値未満である場合、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たさない。デューティ値DUTYCがデューティ値の下限値以上かつ上限値以下である場合、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たす。
【0109】
例えば、デューティ値の上限値が85であり、下限値が0であるものとする。デューティ値DUTYCが90の場合について説明する。デューティ値DUTYCはデューティ値の上限値を超えるので、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たさない。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映することで、デューティ値DUTYCを制限する。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。デューティ値LDCは、制限後のデューティ値である。制限後のデューティ値は、デューティ値の上限値に対応する85である。デューティ値DUTYCが80の場合について説明する。デューティ値DUTYCはデューティ値の下限値以上かつ上限値以下であるので、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たす。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映したとしても、デューティ値DUTYCを制限しない。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCと同じ80である。
【0110】
別の例では、システム保護情報LMTCは、画像形成装置1の危険を回避するための停止を指示の情報である。デューティ値DUTYCが0以外の値である場合、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たさない。この場合、外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映することで、デューティ値DUTYCを制限する。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。デューティ値LDCは、制限後のデューティ値である。制限後のデューティ値は、0である。デューティ値DUTYCが0である場合、デューティ値DUTYCは、システム保護情報LMTCで示される制限を満たす。この場合、外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映したとしても、デューティ値DUTYCを制限しない。外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。デューティ値LDCは、デューティ値DUTYCと同じ0である。
【0111】
デューティパルス変換部89-1は、デューティ値LDCに基づいてセンタヒータ73-1に供給する通電電力PCを制御するための通電パルスPsCを生成する生成処理を行う。通電パルスPsCは、センタヒータ73-1に供給する通電電力PCを制御するためのパルス信号である。通電パルスPsCは、トライアックのゲート信号である。デューティパルス変換部89-1には、外部リミット部88-1からのデューティ値LDCが入力される。デューティパルス変換部89-1は、デューティ値LDCを通電パルス列に変換する。デューティパルス変換部89-1は、通電パルス列を構成する通電パルスPsCを生成する。デューティパルス変換部89-1は、通電パルスPsCを電源回路90-1に出力する。デューティ値LDCは、第1の温度補正結果WAECに基づいている。そのため、デューティ値LDCに基づいて通電パルスPsCを生成することは、第1の温度補正結果WAECに基づいて通電パルスPsCを生成することの一例である。デューティパルス変換部89-1は、通電パルスPsCを生成する信号生成部の一例である。
【0112】
上述のように、デューティ値LDCは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値であることもある。そのため、デューティ値LDCに基づいて通電パルスPsCを生成及び出力することは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値に基づいて通電パルスPsCを生成及び出力することを含む。デューティ値LDCに基づいて通電パルスPsCを生成及び出力することは、デューティ値DUTYCに基づいて通電パルスPsCを生成及び出力することの一例である。
【0113】
デューティパルス変換部89-1は、デューティ値LDCに基づいてデューティパターンを選択し、選択されたデューティパターンに応じて通電パルスPsCを生成してもよい。デューティパターンは、デューティ値に対応するパターンである。デューティパターンは、「0」又は「1」の値をデューティ値に応じた数並べて構成される通電パルス列を示す。「1」は、導通(オン)の信号を示す。「0」は、遮断(オフ)の信号を示す。「1」の値の数は、デューティ値に応じて異なる。デューティパターンは、メモリ23に記憶されていてもよい。
【0114】
デューティパルス変換部89-1は、システム動作と非同期に通電パルスPsCを生成してもよい。具体的には、デューティパルス変換部89-1は、AC電圧周波数50Hz/60Hzに合わせてパルス周波数と通電パルスPsCの発出時刻を調整してもよい。デューティパルス変換部89-1は、交流電圧位相を取得し、交流電圧位相に基づいて、交流電圧に同期して通電パルス列を構成する通電パルスPsCを出力する同期出力処理を行う。デューティパルス変換部89-1は、交流電圧のゼロクロスに同期して通電パルスPsCを出力する。
【0115】
電源回路90-1は、通電パルスPsCに基づいて、センタヒータ73-1に通電電力PCを供給する。電源回路90-1は、図示されないAC電圧源から供給される交流電圧を用いて、定着器21のセンタヒータ73-1への通電を行う。電源回路90-1は、例えば、通電パルスPsCに基づいて、AC電圧源からの交流電圧がセンタヒータ73-1に供給される状態と供給されない状態とを切り替えることにより、センタヒータ73-1に通電電力PCを供給する。即ち、電源回路90-1は、通電パルスPsCに応じて、定着器21のセンタヒータ73-1への通電時間を変更する。
【0116】
なお、電源回路90-1は、定着器21と一体に構成されていてもよい。即ち、センタ用制御回路14-1は、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給するのではなく、通電パルスPsCを定着器21のセンタヒータ73-1の電源回路に供給する構成であってもよい。
【0117】
上記のように、センタ用制御回路14-1は、定着器21のセンタヒータ73-1への電力量を調整する。これにより、センタ用制御回路14-1は、センタヒータ73-1から熱が伝播するヒートローラ71の表面温度を制御する。このような制御を、Weighted Average control with Estimate temperature(WAE制御)とここでは称することにする。
【0118】
第2の温度推定部91-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を推定する温度推定処理を行う。第2の温度推定部91-1は、熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を推定する。ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分は、印刷媒体Pの種別に応じて異なる。第2の温度推定部91-1には、第2の推定履歴保持部92-1からの第2の推定履歴PREVC-1及び外部リミット部88-1からのデューティ値LDCが入力される。
【0119】
第2の推定履歴PREVC-1は、第2の温度推定部91-1による第2の温度推定結果ESTC-1の履歴である。第2の推定履歴PREVC-1は、第2の温度推定部91-1による第2の温度推定結果ESTC-1の履歴を示す信号を指すこともある。第2の温度推定部91-1による第2の温度推定結果ESTC-1の履歴は、過去の複数の第2の温度推定結果ESTC-1を含む。第2の温度推定結果ESTC-1は、第2の温度推定部91-1により少なくともデューティ値LDCに基づいて推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度である。推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の推定された表面温度ということもある。第2の温度推定結果ESTC-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の高温判定のために用いられる温度でもある。第2の温度推定結果ESTC-1は、第2の温度推定部91-1により少なくともデューティ値LDCに基づいて推定されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を示す信号を指すこともある。
【0120】
第2の温度推定部91-1は、デューティ値LDCに基づいて、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を推定する。第2の温度推定部91-1は、推定に基づいて、第2の温度推定結果ESTC-1を生成する。第2の温度推定部91-1は、第2の温度推定結果ESTC-1を第2の推定履歴保持部92-1及び第1の差分計算部93-1に出力する。デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、デューティ値DUTYCに基づいて表面温度を推定することの一例である。デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、外部リミット部88-1による制限後のデューティ値に基づいて表面温度を推定することを含む。デューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、センタヒータ73-1への通電に基づいて表面温度を推定することの一例である。
【0121】
典型例では、第2の温度推定部91-1は、第2の推定履歴PREVC-1及びデューティ値LDCに基づいて、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を推定する。第2の推定履歴PREVC-1及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第2の推定履歴PREVC-1及びデューティ値DUTYCに基づいて表面温度を推定することの一例である。第2の推定履歴PREVC-1及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第2の推定履歴PREVC-1及び外部リミット部88-1による制限後のデューティ値に基づいて表面温度を推定することを含む。第2の推定履歴PREVC-1及びデューティ値LDCに基づいて表面温度を推定することは、第2の推定履歴PREVC-1及びセンタヒータ73-1への通電に基づいて表面温度を推定することの一例である。
【0122】
なお、第2の温度推定部91-1は、デューティ値LDC代えて、通電パルスPsCを用いてもよい。
【0123】
第2の推定履歴保持部92-1は、第2の推定履歴PREVC-1を保持する。第2の推定履歴保持部92-1は、第2の推定履歴PREVC-1を第2の温度推定部91-1に出力する。
【0124】
第1の差分計算部93-1は、差分計算処理を行う。第1の差分計算部93-1には、第1の温度推定部81-1からの第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定部91-1からの第2の温度推定結果ESTC-1が入力される。第1の差分計算部93-1は、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1に基づいて、第2の差分DIFC-1を求める。第2の差分DIFC-1は、第1の温度推定結果ESTCと、第2の温度推定結果ESTC-1との差分である。第2の差分DIFC-1は、第1の温度推定結果ESTCと、第2の温度推定結果ESTC-1との差分を示す信号を指すこともある。ここでは、第2の差分DIFC-1は、第2の温度推定結果ESTC-1から第1の温度推定結果ESTCを引いて得られる値であるものとして説明する。第2の温度推定結果ESTC-1は、第1の温度推定結果ESTCよりも高い値であるので、第2の差分DIFC-1は、正の値である。第1の差分計算部93-1は、第2の差分DIFC-1を温度補正部94-1に出力する。第1の差分計算部93-1は、第2の差分DIFC-1を求める演算部の一例である。
【0125】
ここで、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1は、同様の熱回路のリアルタイムシミュレーションである。そのため、第2の差分DIFC-1は、実際の差分との誤差を小さくすることができる。実際の差分は、実際のヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度と、実際のヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度の差分である。そのため、後述する第2の温度補正結果WAEC-1を求める精度は向上する。
【0126】
温度補正部94-1は、第2の温度推定結果ESTC-1を補正するための加算処理を行う。温度補正部94-1は、係数加算部84-1からの第1の温度補正結果WAEC及び第1の差分計算部93-1からの第2の差分DIFC-1が入力される。温度補正部94-1は、第1の温度補正結果WAEC及び第2の差分DIFC-1に基づいて、第2の温度補正結果WAEC-1を求める。第2の温度補正結果WAEC-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の補正温度である。ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の補正温度は、第2の温度推定結果ESTC-1を補正した温度である。第2の温度補正結果WAEC-1は、第1の温度補正結果WAECに第2の差分DIFC-1を加えて得られる値である。第2の温度補正結果WAEC-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の補正温度を示す信号を指すこともある。第2の差分DIFC-1は正の値であるので、第2の温度補正結果WAEC-1は、第1の温度補正結果WAECより大きい値である。温度補正部94-1は、第2の温度補正結果WAEC-1を第2の差分計算部95-1に出力する。第2の差分DIFC-1は、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1に基づいている。そのため、第1の温度補正結果WAEC及び第2の差分DIFC-1に基づいて第2の温度補正結果WAEC-1を求めることは、第1の温度推定結果ESTC、第2の温度推定結果ESTC-1及び第1の温度補正結果WAECに基づいて第2の温度補正結果WAEC-1求めることの一例である。温度補正部94-1は、第2の温度補正結果WAEC-1を求める演算部の一例である。
【0127】
ここで、第2の温度推定結果ESTC-1は、実際のヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度の変化を適切に追従している。しかしながら、第2の温度推定結果ESTC-1は、シミュレーション結果であるため、一定のバイアスをもって差が出る可能性がある。第1の温度補正結果WAECは、バイアスをキャンセルするためのハイパスフィルタ処理を適用済のデータである。温度補正部94-1は、第1の温度補正結果WAECに第2の差分DIFC-1を加えることにより、バイアスに対処することができる。そのため、第2の温度補正結果WAEC-1は、実際のヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を適切に追従した値となる。
【0128】
第2の差分計算部95-1は、差分計算処理を行う。第2の差分計算部95-1には、温度補正部94-1からの第2の温度補正結果WAEC-1及び上限温度Tmaxが入力される。上限温度Tmaxは、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度についての上限値となる閾値である。上限温度Tmaxは、プロセッサ22からの指令による書き換えにより変更可能である。上限温度Tmaxは、メモリ23に記憶されていてもよい。
【0129】
第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1及び上限温度Tmaxに基づいて、第3の差分DIFC-2を求める。第3の差分DIFC-2は、第2の温度補正結果WAEC-1と、上限温度Tmaxとの差分である。ここでは、第3の差分DIFC-2は、上限温度Tmaxから第2の温度補正結果WAEC-1を引いて得られる値であるものとして説明する。第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える場合、第3の差分DIFC-2は、負の値である。第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmax以下である場合、第3の差分DIFC-2は、正の値である。
【0130】
第2の差分計算部95-1は、第3の差分DIFC-2に基づいて、印刷速度を調整するための印刷速度調整指令CPMをプロセッサ22に出力する。印刷速度が下がるにつれて、印刷処理に要する時間は長くなる。例えば、印刷速度は、印刷媒体Pの搬送スピードを含む。搬送スピードが下がるにつれて、印刷処理に要する時間は長くなる。印刷媒体Pの搬送スピードは、媒体の搬送スピードの一例である。印刷速度調整指令CPMを出力することは、印刷速度を調整することの一例である。第2の差分計算部95-1は、印刷速度を調整する調整部の一例である。
【0131】
ここで、第3の差分DIFC-2は、第2の温度補正結果WAEC-1に基づいている。第2の温度補正結果WAEC-1は、第1の温度補正結果WAEC及び第2の差分DIFC-1に基づいている。第2の差分DIFC-1は、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1に基づいている。そのため、第3の差分DIFC-2に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することは、第2の温度推定結果ESTC-1に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することの一例である。第3の差分DIFC-2に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することは、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することの一例である。第3の差分DIFC-2に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することは、第1の温度推定結果ESTC、第2の温度推定結果ESTC-1及び第1の温度補正結果WAECに基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することの一例である。第3の差分DIFC-2に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することは、第2の温度補正結果WAEC-1に基づいて印刷速度調整指令CPMを出力することの一例である。
【0132】
第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmax以下の温度から上限温度Tmaxを超える温度へ遷移する場合、第2の差分計算部95-1は、印刷速度調整指令CPMを出力する。第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmax以下の温度から上限温度Tmaxを超える温度へ遷移する場合は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える場合の一例である。この例では、印刷速度調整指令CPMは、印刷速度を第1の印刷速度から第2の印刷速度に下げるように調整するための指令である。
【0133】
第1の印刷速度は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmax以下の温度の場合の印刷速度である。例えば、第1の印刷速度は、印刷媒体Pの第1の搬送スピードを含む。第2の印刷速度は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える温度の場合の印刷速度である。第2の印刷速度は、第1の印刷速度よりも下である。例えば、第2の印刷速度は、印刷媒体Pの第2の搬送スピードを含む。第2の搬送スピードは、第1の搬送スピードよりも下である。印刷速度を第1の印刷速度から第2の印刷速度に下げるように調整するための印刷速度調整指令CPMを出力することは、印刷速度を下げるように調整することの一例である。
【0134】
第2の印刷速度は、第2の温度補正結果WAEC-1によらず固定の印刷速度でもよいし、第2の温度補正結果WAEC-1に応じて異なってもよい。後者の例では、第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxから乖離するにつれて遅くなるように第2の印刷速度を決定してもよい。第2の差分計算部95-1は、温度と印刷速度とを対応付けたテーブル又は関数に基づいて第2の印刷速度を決定してもよい。
【0135】
第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超えている状態を継続する場合、第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1の変化に応じて印刷速度調整指令CPMを出力してもよい。この例では、印刷速度調整指令CPMは、印刷速度を第2の温度補正結果WAEC-1に応じた第2の印刷速度に調整するための指令である。第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxから乖離するにつれて遅くなるように第2の印刷速度を決定してもよい。
【0136】
第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える温度から上限温度Tmax以下の温度へ遷移する場合、第2の差分計算部95-1は、印刷速度調整指令CPMを出力してもよい。この例では、印刷速度調整指令CPMは、印刷速度を第2の印刷速度から第1の印刷速度に上げるように調整するための指令である。
【0137】
上述のように、第2の温度推定部91-1、第2の推定履歴保持部92-1、第1の差分計算部93-1、温度補正部94-1及び第2の差分計算部95-1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の高温判定のための回路である。高温判定のための回路は、上述のWAE制御のフィードバックループに適用されている。第2の温度推定部91-1は、WAE制御で生成されるデューティ値LDCを用いる。第1の差分計算部93-1は、WAE制御で生成される第1の温度推定結果ESTCを用いる。温度補正部94-1は、WAE制御で生成される第1の温度補正結果WAECを用いる。このように、センタ用制御回路14-1は、WAE制御のための処理に変更を加えることなく、WAE制御に対して高温判定のために必要な処理だけを追加することができる。そのため、センタ用制御回路14-1は、WAE制御のための処理と独立して高温判定のため処理を実行する場合に比べて処理負荷を減らすことができる。
【0138】
なお、センタ用制御回路14-1の各部は、電気回路により構成されていてもよいし、ソフトウエアにより構成されていてもよい。ソフトウエアにより構成される場合、プロセッサ22又はプロセッサ22とは異なるプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより実現してもよい。プロセッサは、例えば、CPU等の処理回路である。
【0139】
第1の温度推定結果ESTCを得るための熱移動を表現する第1の熱回路及び第2の温度推定結果ESTC-1を得るための熱移動を表現する第2の熱回路について説明する。
熱回路は、熱抵抗を電気抵抗と置き換え、熱容量を電気容量と置き換えた電気回路と等価な動作になることが一般に知られている。熱回路は、E、C及びRの素子で構成される。Eは、電圧源である。Cは、容量成分である。Rは、抵抗成分である。
【0140】
ここで、ヒートローラ71の表面から熱の逃げる経路は、2通りある。1つ目の経路は、定着器21を経由してゆっくりと外部へ逃げていく経路である。2つ目の経路は、印刷媒体Pへヒートローラ71が加圧密着されることで印刷媒体Pへ熱が伝達し、印刷媒体Pが熱を持ったまま排紙トレイ18に排出される経路である。2つ目の経路における熱の逃げやすさは、印刷媒体Pの厚さによっても異なるし、印刷速度によっても異なる。
【0141】
図9は、第1の熱回路について説明するための図である。
熱源E1は、電気回路で直流電圧源と同等である。加熱抵抗R1は、電気回路で可変抵抗と同等である。加熱抵抗R1は、可変因子としてデューティ値LDCを用いる。デューティ値LDCは、熱の流入を加減する加熱抵抗R1の抵抗値を可変する制御信号である。例えば、デューティ値LDCで示されるデューティ値が100%である場合、加熱抵抗R1は、通電パルスPsCが100%相当の時の抵抗値がセットされる。デューティ値LDCで示されるデューティ値が0%である場合、通電パルスPsCは、0に相当する。そのため、加熱抵抗R1は、極めて大きい値である。デューティ値LDCで示されるデューティ値が0より大きく、100より小さい場合、加熱抵抗R1は、デューティ値の比率に応じた値がセットされる。ヒータ容量C1は、微小時間dt前の第1の推定履歴PREVCを参照し、現時刻の温度に更新する。
【0142】
放熱抵抗R2は、ヒートローラ71から定着器21内の空間へ熱が逃げていく時の抵抗値である。ユニット容量C2は、dt前の第1の推定履歴PREVCを参照し、現時刻の温度に更新する。
【0143】
外気抵抗R3は、定着器21内の空間(ヒートローラ71の外部)から外気へ熱が逃げる経路の抵抗値である。外気温E2は、電気回路で直流電圧源と等価である。熱源E1と外気温E2との関係は、熱源E1≧外気温E2である。具体的には、起動前の熱源E1と外気温E2との関係は熱源E1=外気温E2であり、動作時の熱源E1と外気温E2との関係は熱源E1>外気温E2である。
【0144】
紙放熱抵抗R4は、印刷媒体Pへ熱が逃げていくときの抵抗値である。
【0145】
例えば、各値は、以下のとおりである。E1は、2500(ケルビン)である。R1は、最小が80(Ω)、最大が100000(Ω)である。C1は、10(F)である。R2は、20(Ω)である。C2は、100(F)である。R3は、10(Ω)である。R4は、20(Ω)である。E2は、25(ケルビン)である。デューティ値LDCは、0~100%である。
【0146】
例えば、第1の温度推定部81-1は、第1の推定履歴PREVCと、デューティ値LDCと、に基づいてエネルギー保存則を用いた上記のような第1の熱回路のリアルタイムシミュレーションを行う。第1の温度推定部81-1は、第1の熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、C1電圧(温度)を導き出す。第1の温度推定部81-1は、C1電圧(温度)を現時刻の第1の温度推定結果ESTCとして生成する。
【0147】
図10は、第2の熱回路について説明するための図である。
第2の熱回路は、第1の熱回路と同様のE、C及びRの素子の構成である。なお、ヒータ容量C1は、微小時間dt前の第2の推定履歴PREVC-1を参照し、現時刻の温度に更新する。ユニット容量C2は、dt前の第2の推定履歴PREVC-1を参照し、現時刻の温度に更新する。第2の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値は、第1の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値とは異なる値である。
【0148】
ここで、第1の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値と、第2の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値との違いについて説明する。ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分は、印刷媒体Pによって奪われる熱が大きいので、印刷媒体Pによって熱が逃げる。そのため、第1の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値は、小さい値がセットされる。他方、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分は、印刷媒体Pによって熱が奪われないので、印刷媒体Pによって熱が逃げない。そのため、第2の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値は、第1の熱回路における紙放熱抵抗R4の抵抗値よりも相対的に大きい値がセットされる。
【0149】
例えば、各値は、以下のとおりである。E1は、2500(ケルビン)である。R1は、最小が80(Ω)、最大が100000(Ω)である。C1は、10(F)である。R2は、20(Ω)である。C2は、100(F)である。R3は、10(Ω)である。R4は、100(Ω)である。E2は、25(ケルビン)である。デューティ値LDCは、0~100%である。このように、第2の熱回路におけるE、C及びRの各素子の値は、紙放熱抵抗R4の値を除いて、第1の熱回路におけるE、C及びRの各素子の値と同じである。
【0150】
例えば、第2の温度推定部91-1は、第2の推定履歴PREVC-1と、デューティ値LDCと、に基づいてエネルギー保存則を用いた上記のような第2の熱回路のリアルタイムシミュレーションを行う。第2の温度推定部91-1は、第2の熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、C1電圧(温度)を導き出す。第2の温度推定部91-1は、C1電圧(温度)を現時刻の第2の温度推定結果ESTC-1として生成する。
【0151】
ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の表面温度が目標温度になるように制御されると、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度は、上昇していく。第2の温度推定部91-1は、リアルタイムシミュレーションにより、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の表面温度を推定することができる。第2の温度推定結果ESTC-1は、第1の温度推定結果ESTCよりも高くなる。
【0152】
次に、サイド用制御回路14-2について説明する。
図11は、サイド用制御回路14-2の構成の例について説明するための図である。
図11に示されるように、サイド用制御回路14-2は、温度推定部81-2、推定履歴保持部82-2、高周波成分抽出部83-2、係数加算部84-2、目標温度出力部85-2、差分比較部86-2、制御デューティ生成部87-2、外部リミット部88-2、デューティパルス変換部89-2及び電源回路90-2を備える。
【0153】
サイド用制御回路14-2は、温度センサ74-2からの温度検出結果TdSが入力される点で、温度センサ74-1からの温度検出結果TdCが入力されるセンタ用制御回路14-1と異なる。サイド用制御回路14-2は、通電電力PSを2つのサイドヒータ73-2に供給する点で、通電電力PCをセンタヒータ73-1に供給するセンタ用制御回路14-1と異なる。その他の点については、サイド用制御回路14-2によるWAE制御は、センタ用制御回路14-1によるWAE制御と同様であるので、その説明を省略する。温度推定部81-2は、上述の第1の温度推定部81-1と同様である。推定履歴保持部82-2は、上述の第1の推定履歴保持部82-1と同様である。高周波成分抽出部83-2は、上述の高周波成分抽出部83-1と同様である。係数加算部84-2は、上述の係数加算部84-1と同様である。目標温度出力部85-2は、上述の目標温度出力部85-1と同様である。差分比較部86-2は、上述の差分比較部86-1と同様である。制御デューティ生成部87-2は、上述の制御デューティ生成部87-1と同様である。外部リミット部88-2は、上述の外部リミット部88-1と同様である。デューティパルス変換部89-2は上述のデューティパルス変換部89-1と同様である。電源回路90-2は、上述の電源回路90-1と同様である。
【0154】
以下、センタ用制御回路14-1によるWAE制御について詳細に説明する。
図12は、センタ用制御回路14-1によるWAE制御の動作の例について説明するためのフローチャートである。図13及び図14は、センタ用制御回路14-1によるWAE制御における各信号などについて説明するための図である。図13及び図14の横軸は、時間を示す。図13及び図14の縦軸は、温度を示す。図12図13及び図14の説明における「ヒートローラ71の表面温度」の表記は、ヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のうち印刷媒体Pと対向する部分の表面温度を指すものとする。
【0155】
センタ用制御回路14-1は、画像形成装置1の機体内温度を取得する(ACT1)。なお、機体内温度の変化は緩慢であるので、センタ用制御回路14-1による機体内温度の取得頻度は低くてよい。
【0156】
センタ用制御回路14-1は、温度センサ74-1から現時刻の温度検出結果TdCを取得する(ACT2)。
【0157】
図13に示されるように、温度検出結果TdCと実際のヒートローラ71の表面温度との間には差が生じている。実際のヒートローラ71の表面温度は、センタヒータ73-1による加熱が間欠的に行われているため、細かい周期で変化している。これに対し、温度センサ74-1は、自身の熱容量や感温素材の特性により、温度変化の応答性が悪い場合がある。特に安価な温度センサほど応答性が悪い傾向にある。その結果、温度検出結果Td Cが実際のヒートローラ71の表面温度を正確に追従できていない。即ち、温度検出結果TdCは、ヒートローラ71の表面温度に対して遅延した状態で温度センサ74-1により検出される。また、温度検出結果TdCは、ヒートローラ71の表面温度の細かい変化が再現されず、平滑化された状態で温度センサ74-1により検出される。
【0158】
第1の温度推定部81-1は、第1の推定履歴保持部82-1からdt前の第1の推定履歴PREVCを取得する(ACT3)。
差分比較部86-1は、目標温度出力部85-1から目標温度TGTCを取得する(ACT4)。
【0159】
第1の温度推定部81-1は、上述のような第1の熱回路を構成するE、C及びR素子相当の各パラメータの値を取得する(ACT5)。
第1の温度推定部81-1は、第1の熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、第1の温度推定結果ESTCを生成する(ACT6)。
図13に示されるように、第1の温度推定結果ESTCは、実際のヒートローラ71の表面温度の変化を適切に追従している。しかしながら、第1の温度推定結果ESTCは、シミュレーション結果であるため、条件の相違などにより絶対値が実際のヒートローラ71の表面温度と差が出る可能性がある。
【0160】
高周波成分抽出部83-1は、ハイパスフィルタを構成する(ACT7)。高周波成分抽出部83-1は、ハイパスフィルタにより第1の温度推定結果ESTCのうち直流分をキャンセルし、高周波成分のみを抽出する。高周波成分抽出部83-1は、高周波成分HPFCを生成する。
図13に示されるように、高周波成分HPFCは、実際のヒートローラ71の表面温度の変化を適切に追従している。
【0161】
係数加算部84-1は、温度センサ74-1から現時刻の温度検出結果TdCを取得する(ACT8)。
係数加算部84-1は、第1の温度補正結果WAECを計算する(ACT9)。ACT9では、例えば、係数加算部84-1は、(TdC+KC×HPFC)により得られる値を第1の温度補正結果WAECとして求める。
【0162】
図14は、実際のヒートローラ71の表面温度と、温度検出結果Tdと、第1の温度補正結果WAECとの例について説明するための図である。WAE制御では、温度検出結果TdCと第1の温度推定結果ESTCの高周波成分HPFCとに基づいて、ヒートローラ71の表面温度の細かな温度の変化を推定する。このため、図14に示されるように、第1の温度補正結果WAECは、実際のヒートローラ71の表面温度を適切に追従した値となる。
【0163】
第1の推定履歴保持部82-1は、第1の温度推定結果ESTCを第1の推定履歴PREVCに上書きする(ACT10)。
【0164】
差分比較部86-1は、目標温度TGTと、第1の温度補正結果WAECとの比較に基づいて、第1の差分DIFCを求める(ACT11)。
【0165】
制御デューティ生成部87-1は、第1の差分DIFCに基づいてデューティ値DUTYCを生成する(ACT12)。
【0166】
外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映し、デューティ値を制限する(ACT13)。ACT13では、例えば、外部リミット部88-1は、デューティ値DUTYCにシステム保護情報LMTCを反映することにより、デューティ値DUTYCに基づいてデューティ値LDCを生成する。
【0167】
デューティパルス変換部89-1は、デューティ値LDCを通電パルス列に変換する(ACT14)。デューティパルス変換部89-1は、通電パルス列を構成する通電パルスPsCを生成する。
デューティパルス変換部89-1は、交流電圧に同期して通電パルス列を構成する通電パルスPsCを出力する(ACT15)。
【0168】
電源回路90-1は、通電パルスPsCに基づいて、センタヒータ73-1に通電電力PCを供給する(ACT16)。
【0169】
センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けたか否か判断する(ACT17)。センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けていない場合(ACT17、NO)、処理は、ACT17からACT2へ遷移する。センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けた場合(ACT17、YES)、処理を終了する。
【0170】
上記したように、センタ用制御回路14-1は、あるサイクル(当該サイクル)の処理を行う場合、1つ前のサイクルにおける値(デューティ値LDC及び第1の温度推定結果ESTC:第1の推定履歴PREVC)と、当該サイクルにおける温度検出結果TsCとに基づいて、WAE制御を行う。すなわち、センタ用制御回路14-1は、次のサイクルで値を継承する。センタ用制御回路14-1は、温度推定計算を前回の計算の履歴をもとに再計算する。したがって、センタ用制御回路14-1は、稼働中に常に計算を行っている。センタ用制御回路14-1において、計算結果は、メモリ等に保持され、次のサイクルの計算で再利用される。
【0171】
図15は、センタ用制御回路14-1における処理のサイクルについて説明するための図である。図15の横軸は、時間を示す。例えば、第1の温度推定部81-1は、時刻t(n)において温度推定処理を行い、それからdtだけ時刻が進んだt(n+1)において次の温度推定処理を行い、さらにdtだけ時刻が進んだt(n+2)において温度推定処理を行う。このように、第1の温度推定部81-1は、繰り返し温度推定処理を行う。第1の温度推定部81-1は、各サイクルの温度推定処理において、前回の第1の温度推定結果ESTCを、新たな温度の推定に用いる。
【0172】
時刻t(n)では、時刻t(n)における温度検出結果TdC、前回である時刻t(n-1)のデューティ値LDC及び前回である時刻t(n-1)の第1の温度推定結果ESTC(第1の推定履歴PREVC)が用いられる。第1の温度推定部81-1は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n)における第1の温度推定結果ESTCを出力する。高周波成分抽出部83-1、係数加算部84-1、目標温度出力部85-1、差分比較部86-1、制御デューティ生成部87-1及び外部リミット部88-1は、入力された信号に基づいて処理を行う。外部リミット部88-1は、時刻t(n)におけるデューティ値LDCを出力する。
【0173】
時刻t(n+1)では、新たに時刻t(n+1)で検出された温度検出結果TdC、時刻t(n)のデューティ値LDC及び時刻t(n)の第1の温度推定結果ESTCである第1の推定履歴PREVCが用いられる。第1の温度推定部81-1は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n+1)における第1の温度推定結果ESTCを出力する。高周波成分抽出部83-1、係数加算部84-1、目標温度出力部85-1、差分比較部86-1、制御デューティ生成部87-1及び外部リミット部88-1は、入力された信号に基づいて処理を行う。外部リミット部88-1は、時刻t(n+1)におけるデューティ値LDCを出力する。
【0174】
時刻t(n+2)では、新たに時刻t(n+2)で検出された温度検出結果TdC、時刻t(n+1)のデューティ値LDC及び時刻t(n+1)の第1の温度推定結果ESTCである第1の推定履歴PREVCが用いられる。第1の温度推定部81-1は、入力された信号に基づいて処理を行い、時刻t(n+2)における第1の温度推定結果ESTCを出力する。高周波成分抽出部83-1、係数加算部84-1、目標温度出力部85-1、差分比較部86-1、制御デューティ生成部87-1及び外部リミット部88-1は、入力された信号に基づいて処理を行う。外部リミット部88-1は、時刻t(n+2)におけるデューティ値LDCを出力する。
【0175】
なお、上記の時間間隔dtは、固定の値であってもよいし、初期値設定において設定される構成であってもよい。例えば、時間間隔dtは、100[msec]で設定される。
【0176】
サイド用制御回路14-2によるWAE制御の動作の例は、上述のセンタ用制御回路14-1によるWAE制御の動作の例と同様であるため、その説明を省略する。
【0177】
以下、センタ用制御回路14-1における印刷速度制御の動作について説明する。
印刷速度制御は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の高温判定に基づく制御である。
【0178】
図16は、センタ用制御回路14-1における印刷速度制御の動作の例について説明するためのフローチャートである。
印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズがヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のサイズ未満である場合、センタ用制御回路14-1は、印刷速度制御を実行する。印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズがヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のサイズ未満かつ所定サイズ未満である場合、センタ用制御回路14-1は、印刷速度制御を実行してもよい。例えば、印刷対象の印刷媒体Pが葉書又は封筒である場合、センタ用制御回路14-1は、印刷速度制御を実行してもよい。印刷対象の印刷媒体PがA4縦である場合、センタ用制御回路14-1は、印刷速度制御を実行しなくてもよい。印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズがヒートローラ71においてセンタヒータ73-1と対向する部分のサイズ以上である場合、センタ用制御回路14-1は、印刷速度制御を実行しない。プロセッサ22は、ユーザにより操作インタフェース16で指定された印刷対象の印刷媒体Pに基づいて、印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズを検知してもよい。プロセッサ22は、印刷対象の印刷媒体Pの幅サイズを検知する検知部の一例である。
【0179】
第2の温度推定部91-1は、上述のような第2の熱回路を構成するE、C及びR素子相当の各パラメータの値を取得する(ACT21)。
第2の温度推定部91-1は、第2の熱回路のリアルタイムシミュレーションにより、第2の温度推定結果ESTC-1を生成する(ACT22)。
【0180】
第1の差分計算部93-1は、第1の温度推定結果ESTC及び第2の温度推定結果ESTC-1に基づいて、第2の差分DIFC-1を求める(ACT23)。
【0181】
温度補正部94-1は、第1の温度補正結果WAEC及び第2の差分DIFC-1に基づいて、第2の温度補正結果WAEC-1を求める(ACT24)。
【0182】
第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1及び上限温度Tmaxに基づいて、第3の差分DIFC-2を求める(ACT25)。
第2の差分計算部95-1は、第3の差分DIFC-2に基づいて、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える否かを判定する(ACT26)。第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える場合(ACT26、YES)、処理は、ACT26からACT27へ遷移する。第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmax以下である場合(ACT26、NO)、処理は、ACT26からACT28へ遷移する。
【0183】
第2の差分計算部95-1は、印刷速度を第1の印刷速度から第2の印刷速度に下げるように調整するための印刷速度調整指令CPMをプロセッサ22に出力する(ACT27)。なお、第2の差分計算部95-1は、第2の温度補正結果WAEC-1の変化に応じて、印刷速度を第2の温度補正結果WAEC-1に応じた第2の印刷速度に調整するための印刷速度調整指令CPMを出力してもよい。プロセッサ22は、印刷速度調整指令CPMに基づいて印刷速度を調整する。例えば、プロセッサ22は、搬送部19による印刷媒体Pの搬送スピードを調整する。
【0184】
センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けたか否か判断する(ACT28)。センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けていない場合(ACT28、NO)、処理は、ACT28からACT21に遷移する。センタ用制御回路14-1は、WAE制御の停止指令を受けた場合(ACT28、YES)、処理を終了する。
【0185】
なお、プロセッサ22は、第2の差分計算部95-1と同様の処理を実現してもよい。この場合、プロセッサ22は、温度補正部94-1からの第2の温度補正結果WAEC-1を取得する。プロセッサ22は、第2の温度補正結果WAEC-1及び上限温度Tmaxに基づいて、第3の差分DIFC-2を求める。プロセッサ22は、第3の差分DIFC-2に基づいて、印刷速度を調整する。この例では、プロセッサ22は、印刷速度を調整する調整部の一例である。
【0186】
なお、ACT26において、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える温度から上限温度Tmax以下の温度へ遷移する場合もある。この場合、第2の差分計算部95-1は、印刷速度を第2の印刷速度から第1の印刷速度に上げるように調整するための印刷速度調整指令CPMをプロセッサ22に出力してもよい。
【0187】
本実施形態によれば、画像形成装置1は、第2の温度推定結果ESTC-1に基づいて、印刷速度を調整することができる。
これにより、画像形成装置1は、最初から低速印刷を実行する必要がないので、印刷処理を実行する処理時間を短くすることができる。例えば、100枚印刷の場合、画像形成装置1は、最初の20枚に対して高速印刷を実行し、残りの80枚に対して低速印刷を実行することができる。3枚印刷の場合、画像形成装置1は、3枚に対して高速印刷を実行することができる。
【0188】
本実施形態によれば、画像形成装置1は、第2の温度補正結果WAEC-1が上限温度Tmaxを超える場合、印刷速度を下げるように調整することができる。
これにより、画像形成装置1は、ヒートローラ71において加熱される部分かつ印刷媒体Pと対向しない部分の温度が上限温度Tmaxを超えて高温になりすぎることを防ぐことができる。そのため、例えば、画像形成装置1が葉書に対する印刷処理の後にA4縦の用紙に対する印刷処理を実行する場合であっても、A4縦の用紙におけるトナー像の定着に悪影響が出ることはない。
【0189】
本実施形態によれば、画像形成装置1は、第1の温度推定結果ESTC、第2の温度推定結果ESTC-1及び第1の温度補正結果WAECに基づいて第2の温度補正結果WAEC-1を求めることができる。。画像形成装置1は、第2の温度補正結果WAEC-1に基づいて、印刷速度を調整することができる。
これにより、画像形成装置1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の高温判定のための回路をWAE制御のフィードバックループに適用することができる。そのため、センタ用制御回路14-1は、高温判定のため処理の負荷を減らすことができる。
【0190】
本実施形態によれば、温度検出結果TdCは、温度センサ74-1により検出されたヒートローラ71において印刷媒体Pと対向する部分の温度である。
これにより、画像形成装置1は、ヒートローラ71において印刷媒体Pと対向しない部分の温度を検出することなく、第2の温度補正結果WAEC-1を求めることができる。そのため、画像形成装置1は、高温判定のために温度センサの数を増やす必要がない。
【0191】
本実施形態は、以下のように表されてもよい。
[1]ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する温度制御対象の温度を制御する温度制御装置であって、
前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において媒体と対向しない部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する調整部と、
を具備する温度制御装置。
[2]前記媒体と対向しない部分の推定された温度が上限値を超える場合、前記調整部は、前記搬送スピードを下げるように調整する、[1]に記載の温度制御装置。
[3]前記ヒータへの通電に基づいて、前記温度制御対象において前記媒体と対向する部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向する部分の推定された温度及び温度センサにより検出された前記温度制御対象の温度に基づいて、前記媒体と対向する部分の補正温度を求める演算部と、
前記媒体と対向する部分の補正温度に基づいて、前記ヒータに供給する電力を制御するための通電パルスを生成する信号生成部と、
前記媒体と対向する部分の推定された温度、前記媒体と対向しない部分の推定された温度及び前記媒体と対向する部分の補正温度に基づいて、前記媒体と対向しない部分の補正温度を求める演算部と、
を備え、
前記調整部は、前記媒体と対向しない部分の補正温度に基づいて、前記搬送スピードを調整する、
[1]に記載の温度制御装置。
[4]前記温度センサにより検出された前記温度制御対象の温度は、前記温度センサにより検出された前記温度制御対象において前記媒体と対向する部分の温度である、[3]に記載の温度制御装置。
[5]ヒータに電力を供給することにより、前記ヒータから熱が伝播する定着用回転体の温度を制御する画像形成装置であって、
媒体上に形成されたトナー像を加熱して前記媒体上に定着させる前記定着用回転体と、前記定着用回転体を加熱する前記ヒータと、を有する定着器と、
前記ヒータへの通電に基づいて、前記定着用回転体において前記媒体と対向しない部分の温度を推定する温度推定部と、
前記媒体と対向しない部分の推定された温度に基づいて、前記媒体の搬送スピードを調整する調整部と、
を具備する画像形成装置。
【0192】
なお、上述の温度制御装置は、画像形成装置1に適用されることに限定されない。温度制御装置は、熱を利用する種々の機器に適用可能である。例えば、温度制御装置は、トナーを熱溶融させるタイプの複写機、複合機、又は印刷機に適用可能である。温度制御装置は、温度を一定に保つ、又は徐々に変化させる炉、溶融炉から結晶を引き上げ成長させる単結晶材料製造機に適用可能である。温度制御装置は、温度によって発色を変えるカラーサーマルプリンタに適用可能である。温度制御装置は、合金を製造する溶解炉に適用可能である。複写機又はカラーサーマルプリンタであれば、印刷が綺麗で大量印刷しても色合いの経時変化が出ないなど印刷品質の向上が見込める。溶融炉関連では、温度管理が精密に行えることから、これにより製造される物の歩留まり向上、結晶品質の向上(結晶欠陥率の減少)、合金の性能向上などが見込める。
【0193】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0195】
1…画像形成装置、11…筐体、12…通信インタフェース、13…システムコントローラ、14…ヒータ通電制御回路、14-1…センタ用制御回路、14-2…サイド用制御回路、15…表示部、16…操作インタフェース、17…用紙トレイ、18…排紙トレイ、19…搬送部、20…画像形成部、21…定着器、22…プロセッサ、23…メモリ、31…給紙搬送路、32…排紙搬送路、33…ピックアップローラ、41…プロセスユニット、42…露光器、43…転写機構、51…感光ドラム、52…帯電チャージャ、53…現像器、61…1次転写ベルト、62…2次転写対向ローラ、63…1次転写ローラ、64…2次転写ローラ、71…ヒートローラ、72…プレスローラ、73…ヒータ、73-1…センタヒータ、73-2…サイドヒータ、74-1…温度センサ、74-2…温度センサ、81-1…第1の温度推定部、81-2…温度推定部、82-1…第1の推定履歴保持部、82-2…推定履歴保持部、83-1…高周波成分抽出部、83-2…高周波成分抽出部、84-1…係数加算部、84-2…係数加算部、85-1…目標温度出力部、85-2…目標温度出力部、86-1…差分比較部、86-2…差分比較部、87-1…制御デューティ生成部、87-2…制御デューティ生成部、88-1…外部リミット部、88-2…外部リミット部、89-1…デューティパルス変換部、89-2…デューティパルス変換部、90-1…電源回路、90-2…電源回路、91-1…第2の温度推定部、92-1…第2の推定履歴保持部、93-1…第1の差分計算部、94-1…温度補正部、95-1…第2の差分計算部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16