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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088287
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】施肥作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A01C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203380
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】朝田 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿美
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BC05
2B052BC09
2B052BC16
2B052DC07
2B052DC09
2B052DC14
2B052DD04
2B052EA02
2B052EB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、土壌深度によって施肥量を調整する施肥作業機において、比較的安価な土壌深度測定手段を用いて施肥量を最適に調整できるようにすることを課題とする。
【解決手段】前輪2a,2aと後輪2b,2bで走行する走行車体1aに施肥装置6を設け、電気伝導度センサ12で測定する肥料濃度と深度センサ11で測定する土壌深度で施肥装置6の施肥量を調整して制御する施肥作業機において、深度センサ11を前輪2a,2aと後輪2b,2bのいずれかの昇降を検出するスライドセンサ26とし、その昇降高さを土壌深度としたことを特徴とする施肥作業機とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(2a,2a)と後輪(2b,2b)で走行する走行車体(1a)に施肥装置(6)を設け、電気伝導度センサ(12)で測定する肥料濃度と深度センサ(11)で測定する土壌深度で施肥装置(6)の施肥量を調整して制御する施肥作業機において、深度センサ(11)を前輪(2a,2a)と後輪(2b,2b)のいずれかの昇降を検出するスライドセンサ(26)とし、その昇降の高さを土壌深度としたことを特徴とする施肥作業機。
【請求項2】
施肥装置(6)の左右に施肥量を調整する左右調整具を設け、左右前輪(2a,2a)と後輪(2b,2b)の昇降の高さで施肥装置(6)の左右調整具をそれぞれ調整したことを特徴とする請求項1に記載の肥作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に肥料を散布しながら農作業を行う施肥作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
施肥作業機として、特許第5906370号公報に、苗の移植作業を行う施肥田植機が記載されている。
【0003】
この施肥田植機は、土壌特性測定センサで圃場の土壌肥料濃度を測定し過不足なく施肥するために施肥量を調整するようにしているが、最適施肥量は土壌の深度によって調整するために、土壌の深度を測定する深度センサとして超音波センサを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5906370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施肥田植機で移植作業を行う場合は圃場に水を張っているために、走行によって水面が波立ち、超音波センサによる土壌深度の測定が困難な場合があり、また、超音波センサが高価なために施肥田植機の製造価格が高価になる。
【0006】
本発明は、土壌深度によって施肥量を調整する施肥作業機において、比較的安価な土壌深度測定手段を用いて施肥量を最適に調整できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、前輪2a,2aと後輪2b,2bで走行する走行車体1aに施肥装置6を設け、電気伝導度センサ12で測定する肥料濃度と深度センサ11で測定する土壌深度で施肥装置6の施肥量を調整して制御する施肥作業機において、深度センサ11を前輪2a,2aと後輪2b,2bのいずれかの昇降を検出するスライドセンサ26とし、その昇降の高さを土壌深度としたことを特徴とする施肥作業機とする。
【0009】
請求項2の発明は、施肥装置6の左右に施肥量を調整する左右調整具を設け、左右前輪2a,2aと後輪2b,2bの昇降の高さで施肥装置6の左右調整具をそれぞれ調整したことを特徴とする請求項1に記載の肥作業機とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、施肥作業機は、圃場の硬盤上を転動する前輪2a,2aと後輪2b,2bで走行車体1aが支持されているので、走行車体1aに対する前輪2a,2aと後輪2b,2bの昇降高さが土壌の深さが分かり、その土壌深さを使って肥料の散布量を制御して肥料の散布作業を行うので、前輪2a,2aと後輪2b,2bの走行車体1aに対する昇降高さを測定するスライドセンサ26は比較的安価で、土壌深さを計測出来て施肥装置6の施肥量を制御するので、土壌深さの計測が確実で、施肥作業機を安価に作成できる。
【0011】
請求項2の発明で、走行車体1aの左右で土壌深さが違っていても左右の前輪2a,2aと後輪2b,2bに設けるスライドセンサ26で昇降高さで土壌深さを計測して施肥装置6の左右の施肥量を調整するので、圃場の土壌深さの違いによる施肥量が更に最適になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施例を示す苗移植機の平面図(a)および側面図(b)である。
図2】本発明実施例を示す施肥制御システムのブロック構成図である。
図3】本発明実施例を示す各種センサ類の配置を示す機体側面図(a)と下面図(b)である。
図4】本発明実施例を示す土壌センサの構成原理図である。
図5】本発明実施例を示す前輪の部分正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した施肥作業機の一例である苗移植機の平面図(a)および側面図(b)である。
【0015】
苗移植機1は、前輪2a,2aと後輪2b,2bの四輪によって圃場である水田を走行可能に支持された走行車体1aに、前端の指標ポール3、走行車体1aを旋回操作する操舵部材である操舵ハンドル4、操縦席5、施肥装置6のホッパ部6aをこの順に配置し、その後部に昇降可能に苗移植部7を備え、この苗移植部7の下端部に吐出制御可能な施肥装置6の複数の肥料吐出管6b・・・を開口し、次に述べる施肥制御システムにより土壌の状況に応じて植付け条間に施肥を実施するものであり、施肥量を調節可能に構成される。
【0016】
(システム構成)
施肥制御システムは、図2にブロック構成図を示すように、圃場の深度や電気伝導度等の土壌特性を検出する土壌特性測定装置を構成するそれぞれの土壌特性測定センサ11、12の信号を信号処理部13に受け、所定区間の走行によって得られる施肥基準値を算出するための土壌特性である教師データを収容する記憶部14と、土壌特性に応じた施肥量を算出する施肥量算出装置15とによって、施肥装置6の施肥手段制御部6dを介して施肥手段であるホッパ部6aを制御可能に構成するとともに、表示部と操作部を兼ね備えた作業者介入用の表示操作部16を備える。
【0017】
上記施肥量算出装置15は、初期設定の施肥量を土壌特性に応じた施肥量を算出し、また、記憶部14に記憶された教師データに基づいて初期設定値を調整するための施肥基準値を算出する施肥基準値算出手段15aを付帯して、この施肥基準値によって当該圃場の土壌特性に応じた施肥量に初期設定の施肥量を調節する。そのほか、植付走行に際して、植付手段制御部7dを介して植付手段である苗移植部7を関連制御する。
【0018】
上記の施肥量の初期設定値は、施肥装置6のホッパ部6aから肥料を送り出すスクリューフィーダ等の従来公知の送り出し機構の送り出し量を、作業者が手動で、または表示操作部16を操作することにより、任意に切り替えることが可能な構成とし、この初期設定値に基づき、施肥量をどの程度減らすかを施肥量算出装置15が算出する。
【0019】
上記の施肥量の初期設定値は、施肥装置6に従来どおりに設けられた施肥量設定手段(図示省略)を作業者が手動で、または表示操作部16を操作することにより、任意に切り替えることが可能な構成とし、この初期設定値に基づき、施肥量をどの程度減らすかを施肥量算出装置15が決定する。
【0020】
上記施肥制御システムにより、走行車体1aが圃場内の所定区間を走行する際に土壌特性測定装置が検出した土壌特性から施肥基準値を算出し、該施肥基準値と土壌特性測定センサ11、12が検出した土壌特性とを比較し、その比較結果に基づいて施肥量算出装置15が施肥装置6の施肥量を算出して施肥制御するように、各構成要素を以下のとおり構成する。
【0021】
施肥制御のための各種センサ類は、図3に機器配置の側面図(a)と下面図(b)を示すように、土壌特性測定装置を構成する土壌特性測定センサとして、左右前輪2aに電気伝導度センサ12を構成する電極板22a、整地フロート7aに温度センサ23を設ける。
【0022】
なお、施肥作業機は、図3(a)に示す如く、前輪2aと後輪2bが圃場表面34から沈み込んで硬盤35に達して走行する。
【0023】
電気伝導度センサ12は、図4に構成原理図を示すように、車輪径相当の2枚の円板電極22a,22aを対向配置して両極間の電気抵抗から肥料の残留濃度を検出する肥料濃度センサとして機能する。
【0024】
温度センサ23は圃場に接地して温度を測定し、測定された温度に基づいて円盤電極22a,22aからなる肥料濃度センサの検出結果を補正する。土壌の温度が異なると、土壌の電気伝導度も異なるが、該温度センサ23が検出した温度に基づき肥料濃度センサの検出結果を補正することにより、簡易な測定方法で施肥精度を向上させることができる。この検出データの補正は、通電抵抗または電気伝導度を補正しても良いし、通電抵抗または電気伝導度から求めた肥料濃度を補正しても良い。
【0025】
深度センサ11は、図5に示す前輪2aの支持部に設けるスライドセンサ26で、前輪駆動横軸27からベベルギヤ機構25で動力を伝動する前輪駆動縦軸29を昇降可能に弾力支持し、この前輪駆動縦軸29の上端に前輪支持ケース28からオイルシール31を介して突出させるストロークロッド30の移動量をスライドセンサ26で土壌深さとして測定する。
【0026】
なお、深度センサ11としてのスライドセンサ26は左右前輪2aと後輪2bの全てに設けても良いが、少なくとの左右の前輪2aに設けることで、走行車体1aの左右での土壌深さを計測できる。
【0027】
ハンドルポスト4aには、表示操作部16、走行車体1aの位置検出用のGPSセンサ24を設ける。
上記の電気伝導度センサ12の検知した電気伝導度に温度センサ23が検知した土壌の温度に基づいて補正した値を、深度センサ11が検知した圃場の深さの値で割ることにより、土壌の肥沃度が算出される。この土壌の肥沃度に基づいて施肥装置6の施肥量を逐次変更する、可変施肥制御が行なわれる。
【0028】
なお、畦際など、深さの値が大きくなりやすい箇所は肥沃度が低めに算出されやすく、施肥量が過剰になりやすいので、深度センサ11が所定値以上の深さを検出したときは、大幅に施肥量を減少(例:基準値から約40%減少)させる構成とする。
【0029】
本実施例における苗移植機1は、前記円板電極22a,22aを左右の前輪2a,2bに設ける構造としているので、該左右の前輪2a,2bと走行車体1aは電気的に絶縁状態であることが望ましい。しかしながら、水田圃場で作業を行う苗移植機1において、左右の前輪2a,2bと走行車体とを完全な絶縁状態とすることは困難であることが、実験において判明している。一方、実験の結果、前輪2a,2bと走行車体間に生じる電流値は、圃場の深度に略正比例することも判明している。
【0030】
従って、完全な絶縁ができないことによる電流値の不正確さを修正するために、前記深度センサ11が検知した深さの値に基づき、前輪2a,2bと走行車体間に生じる電流値を除外する補正プログラムを、施肥量算出部15に組み込む構成としてもよい。
【0031】
(苗移植機1の苗移植部7に関する考察)
走行車体1aの後部で左右に横広くなる苗移植機1の植付部を収納状態にする為、植付支持フレームを折りたたむ際に前板(アルミレール)を取り外す必要があるが、植込カンの停止位置によってはレールを上手く取り外すことができない。この対策として以下の対策がある。
【0032】
提案1 苗移植部7の左右を中央植付部に重なるように折りたたむ機構を備え、アルミレールは本機より分離可能な構成であり、且つ、植付部が機体中央に停止する何らかの手段を備えた田植機に関して、苗移植部7を機体中央に停止させる指令を送る収納スイッチをハンドルポスト4aの表示操作部16に設ける構成とする。
【0033】
その際に、植込カンを2条毎に停止させるアゼクラッチを備え、左右の折り畳み部の植込カンを停止させる条数はそれぞれ別のアゼクラッチを用いる。
【0034】
提案2 前記収納スイッチが押された場合、各アゼクラッチカムを同時に回転させるような制御を行う。この制御は、植付部が中央位置を通過する直前に行う。そうすることで、アゼクラッチを端から順番に切るよりも早く折り畳み、アルミレールを取り外しし易い位置で植込カンを停止させることが可能になる。
【0035】
提案3 植付部の現在の横送り位置を参照する手段を備え、植付部を横送り途中に使用者が収納スイッチを押した際、植付部の位置と植込カンの停止までにかかる速度(回転数)をもとに提案2の制御により、植込カンを全条停止した後に苗タンクを中央位置にて停止させることが可能かどうかを判定できる。
【0036】
提案4 前記の判定結果(可否)に応じて、報知手段を変更する。例えば、(A)植込カン全条停止して苗タンク中央位置停止ができる場合には、収納スイッチを押した場合、単音にて報知。(B)植込カン全条停止で苗タンク中央位置停止ができない場合には、収納スイッチを押した場合、二回単音を鳴らすなどする。
【0037】
提案5 前記(B)の場合で植込カン停止が間に合わない場合は、植付部を往復運動させる。この場合、アゼクラッチは最も早い段階で作動させる。(中央位置を過ぎても、植込カンは先に停止させ、苗タンクのみ横送りさせる)。
【0038】
提案6 前記提案4の報知音の他に、(B)の場合にモニターに往復運動が必要なことを表示させる。
【0039】
提案7 提案3の横送り位置を参照する手段は、例えば、横送り軸の回転数をカウントするピックアップセンサを取付たような構成でもよい。
【0040】
提案8 横送り回数レバーを検知するセンサを取り付ける。また、横送り回数の半分の回数をピックアップセンサで検出した際に 植え付け部中央位置と認識させる。
【符号の説明】
【0041】
1a 走行車体
2a 前輪
2b 後輪
6 施肥装置
11 深度センサ
12 電気伝導度センサ
26 スライドセンサ
図1
図2
図3
図4
図5