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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088289
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240625BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240625BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240625BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/59 20210101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M50/342 201
H01M10/625
H01M50/204 401H
H01M50/588
H01M50/59
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203383
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 重行
(72)【発明者】
【氏名】矢原 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】関谷 泰博
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB08
5H012CC10
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK02
5H040AA28
5H040AA33
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040CC01
5H040NN03
5H043AA04
5H043AA09
5H043BA15
5H043BA19
5H043CA04
5H043GA25
5H043KA45
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】結露を抑制しつつ、蓄電セルの発熱によってガスが発生した際に短絡を抑制することができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、複数の蓄電スタック20を設置可能な設置領域R1を有する収容ケース10と、設置領域R1において少なくとも1つの蓄電スタックを配置可能な余剰の領域R2が形成されるように、設置領域R1に配置された1つ以上の蓄電スタック20と、設置領域R1を冷却可能な冷却器40と、収容ケース10内に配置され、冷却器40による収容ケース10内の冷却を抑制するための断熱部材30と、を備え、蓄電スタック20は、内部から外部へガスを排気可能に設けられた排気部が各々に設けられた複数の蓄電セルを含み、断熱部材30は、余剰の領域R2に設置されており、収容ケース10には、断熱部材30の上方に位置する部分に圧力開放弁60が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電スタックを設置可能な設置領域を有する収容ケースと、
前記設置領域において少なくとも1つの前記蓄電スタックを配置可能な余剰の領域が形成されるように、前記設置領域に配置された1つ以上の前記蓄電スタックと、
前記設置領域を冷却可能な冷却器と、
前記収容ケース内に配置され、前記冷却器による前記収容ケース内の冷却を抑制するための断熱部材と、を備え、
前記蓄電スタックは、内部から外部へガスを排気可能に設けられた排気部が各々に設けられた複数の蓄電セルを含み、
前記断熱部材は、前記余剰の領域に設置されており、
前記収容ケースには、前記断熱部材の上方に位置する部分に圧力開放弁が設けられている、蓄電装置。
【請求項2】
前記冷却器は、前記収容ケースの下方に配置されており、
前記断熱部材には、前記圧力開放弁に対向するように開口された開放空間部と、空気層とが設けられており、
前記空気層は、前記開放空間部よりも前記冷却器に近い側に設けられている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記設置領域には、複数の前記蓄電スタックと前記断熱部材とが第1方向に並んで配置され、
前記断熱部材は、前記第1方向の最も一方側に位置する、請求項1または2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置として、特開2022-154741号公報(特許文献1)には、電池積層体(蓄電スタック)の過冷却を抑制する構成として、底壁の内表面に内側冷却フィンが設けられ、当該底壁の外表面に外側冷却フィンが設けられた収容ケース内に、空気層を介して複数の電池積層体を収容するとともに、電池積層体を冷却するブロワを収容する構成が開示されている。ブロワは、電池温度が閾値より低い場合に停止されるように構成されており、これにより、外気温が低い場合に電池の過冷却を抑制しつつ、空冷式で電池冷却を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-154741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収容ケースに複数の蓄電スタックを収容した蓄電装置において、車種、または、必要な走行距離に応じて、同一の収容ケースに設置される蓄電スタックの数を調整する場合がある。たとえば、収容される蓄電スタックを減らす場合には、蓄電スタックが設置されていない領域に空間が形成される。このような場合において、最大数の蓄電スタックが設置される領域の全てを冷却器で冷却した場合には、蓄電スタックの発熱によって温められた収容ケース内の空気が当該空間で冷却されてしまい、蓄電スタックが設置されていない領域で結露が発生することが懸念される。
【0005】
さらに、蓄電スタックに含まれる蓄電セルが発熱した際にガスが発生した場合には、何ら手立てが無い場合には、ガスに含まれる金属異物等のデブリが、蓄電スタックに付着して当該蓄電スタックが短絡することが起こり得る。
【0006】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、結露を抑制しつつ、蓄電セルの発熱によってガスが発生した際に短絡を抑制することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づく蓄電装置は、複数の蓄電スタックを設置可能な設置領域を有する収容ケースと、上記設置領域において少なくとも1つの上記蓄電スタックを配置可能な余剰の領域が形成されるように、上記設置領域に配置された1つ以上の上記蓄電スタックと、上記設置領域を冷却可能な冷却器と、上記収容ケース内に配置され、上記冷却器による上記収容ケース内の冷却を抑制するための断熱部材と、を備える。上記蓄電スタックは、内部から外部へガスを排気可能に設けられた排気部が各々に設けられた複数の蓄電セルを含む。上記断熱部材は、上記余剰の領域に設置されている。上記収容ケースには、上記断熱部材の上方に位置する部分に圧力開放弁が設けられている。
【0008】
上記構成によれば、設置領域のうち蓄電スタックが配置されない余剰の領域に断熱部材が配置されることにより、当該設置領域のうち蓄電スタックが配置されていない空間部が冷却器によって冷却されることを抑制することができる。これにより、蓄電スタックによって温められた空気が当該空間部で冷却することを抑制し、結露が発生することを抑制することができる。
【0009】
また、断熱部材の上方に圧力開放弁が設けられることにより、蓄電セルからガスが発生した場合に、断熱部材が位置する側に、ガスに含まれる金属異物等のデブリを集めることができる。これにより、当該デブリが蓄電スタックに付着して蓄電スタックが短絡することを抑制することができる。
【0010】
上記本開示に基づく蓄電装置にあっては、上記冷却器は、上記収容ケースの下方に配置されていてもよい。上記断熱部材には、上記圧力開放弁に対向するように開口された開放空間部と、空気層とが設けられていてもよい。この場合には、上記空気層は、上記開放空間部よりも上記冷却器に近い側に設けられていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、断熱部材の内部において冷却器に近い側に空気層を設けることにより、断熱部材の断熱性能をさらに向上させることができる。加えて、圧力開放弁に向けて開放された開放空間部が設けられることにより、当該開放空間部に、デブリを回収することができる。
【0012】
上記本開示に基づく蓄電装置にあっては、上記設置領域には、複数の上記蓄電スタックと上記断熱部材とが第1方向に並んで配置されていてもよい。上記断熱部材は、上記第1方向の最も一方側に位置していてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1方向の最も一方側にデブリを集めることができる。これにより、第1方向の途中に断熱部材が配置される場合と比較して、当該デブリが蓄電スタックに付着して蓄電スタックが短絡することをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、結露を抑制しつつ、蓄電セルの発熱によってガスが発生した際に短絡を抑制することができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の断面図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置において、収容ケースのうちアッパーケースを取り外した状態における平面図である。
図3】実施の形態に係る蓄電装置において、断熱部材の周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置の断面図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置において、収容ケースのうちアッパーケースを取り外した状態における平面図である。図1および図2を参照して、実施の形態に係る蓄電装置1について説明する。
【0018】
蓄電装置1は、モータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両、または、電気エネルギによって得られた駆動力で走行する電動車両に搭載される。
【0019】
蓄電装置1は、収容ケース10,複数の蓄電スタック20、断熱部材30、冷却器40、電子機器50を備える。
【0020】
収容ケース10は、内部に複数の蓄電スタック20、断熱部材30、および電子機器50を収容する。収容ケース10は、アッパーケース11およびロアケース12を含む。アッパーケース11は、収容ケース10の上部を構成する。
【0021】
アッパーケース11には、圧力開放弁60が設けられている。より特定的には、圧力開放弁60は、後述する断熱部材30の上方に設けられている。圧力開放弁60は、収容ケース10内の圧力が所定の圧力以上になった場合に開放され、収容ケース10内の気体を外部に排出する。
【0022】
アッパーケース11は、下方に向けて開口する略箱型形状を有する。アッパーケース11は、天井部111、周壁部112、およびフランジ部113を有する。周壁部112は、天井部111の周縁から延在するように設けられている。フランジ部113は、周壁部112の下端側から外側に折り曲がるように設けられている。
【0023】
ロアケース12は、上方に向けて開口する略箔型形状を有する。ロアケース12は、底部121、周壁部122、およびフランジ部123を有する。底部121は、天井部111に対向するように設けられている。周壁部122は、底部121の周縁から上方に向けて延在するように設けられている。フランジ部123は、周壁部122の上端側から外側に折り曲げるように設けられている。
【0024】
フランジ部113の下面とフランジ部123の上面とが合わせられた状態で、複数の締結部材によってフランジ部113およびフランジ部123が締結される。これにより、アッパーケース11およびロアケース12が結合される。
【0025】
収容ケース10は、複数の蓄電スタック20を設置可能な設置領域R1を有する。設置領域R1は、蓄電スタック20を最大個数設置できる領域である。本実施の形態においては、設置領域R1には、3つの蓄電スタック20が配置される場合を例示するが、たとえば、設置領域R1は、最大数として4つの蓄電スタック20を設置できるように設けられている。
【0026】
設置領域R1に設置できる蓄電スタック20の個数は、4つに限定されず、2つまたは3つでもよいし、5つ以上であってもよい。
【0027】
複数の蓄電スタック20は、設置領域R1において、少なくとも1つの蓄電スタック20を設置可能な余剰の領域R2が形成されるように、当該設置領域R1に設置されている。本実施の形態においては、余剰の領域R2は、1つの蓄電スタック20を設置できるように構成されているが、余剰の領域R2に設置可能な蓄電スタック20の個数は、2つ以上であってもよい。当該余剰の領域R2には、後述の断熱部材30が設置されている。
【0028】
蓄電スタック20は、所定の配列方向に並んで配置された複数の蓄電セル21を含む。当該配列方向は、蓄電装置1が車両に搭載された搭載状態において、たとえば、車両の幅方向と平行となる。複数の蓄電セル21の各々には、内部から外部へガスを排気可能に設けられた排気部22が設けられている。
【0029】
蓄電セル21は、たとえば、ニッケル水素電池、またはリチウムイオン電池等の二次電池である。蓄電セル21は、たとえば角型形状を有する。二次電池は、液状の電解質を用いるものであってもよいし、固体状の電解質を用いるものであってもよい。
【0030】
複数の蓄電スタック20は、上記配列方向に直交する第1方向に間隔をあけて並んで配置されている。第1方向は、上記搭載状態において、たとえば、車両の前後方向と平行となる。
【0031】
複数の蓄電スタック20は、収容ケース10の底部121の内表面に熱的に接触するように配置されている。たとえば、複数の蓄電スタック20は、熱伝導性を有する接着剤によって上記底部121の内表面に固定されている。
【0032】
複数の蓄電スタック20および断熱部材30は、上記第1方向に並んで配置されている。断熱部材30は、設置領域R1において第1方向の最も一方側に位置するように、配置されている。断熱部材30としては、発泡樹脂等を採用することができる。断熱部材30は、略直方体形状を有する。断熱部材30は、蓄電スタック20と略同等の形状を有する。
【0033】
冷却器40は、上記設置領域R1を冷却可能に設けられている。冷却器40は、収容ケース10の下方に配置されている。冷却器40は、たとえば、熱伝導性を有する接着剤によって収容ケース10の底部121の外表面に固定されている。
【0034】
冷却器40は、たとえば、冷媒が流れるように設けられている。当該冷媒が流れることにより、冷却器40は設置領域R1に設置された複数の蓄電スタック20を冷却する。
【0035】
電子機器50は、複数の蓄電スタック20を制御する。電子機器50は、たとえばセルECUである。電子機器50は、第1方向において、断熱部材30が位置する側とは反対側に位置する。すなわち、電子機器50と断熱部材30との間に、1つ以上の蓄電スタック20が配置される。
【0036】
図3は、実施の形態に係る蓄電装置において、断熱部材の周辺を拡大して示す断面図である。
【0037】
断熱部材30には、開放空間部33と、空気層35とが設けられている。開放空間部33は、圧力開放弁60に対向するように開口されている。空気層35は、開放空間部33の下方側、すなわち冷却器40に近い側に設けられている。
【0038】
ここで、複数の蓄電スタック20のいずれかに含まれる蓄電セル21が異常動作により発熱した場合には、排気部22からガスが排気される。これにより、収容ケース10内の圧力が高まる。収容ケース内の圧力が所定の圧力以上となった場合には、圧力開放弁60が開放され、収容ケース10内の気体が圧力開放弁60を通って外部に排出される。
【0039】
すなわち、図中矢印AR1に示すように、排気部22から排気されたガスは、断熱部材30の上方に配置された圧力開放弁60に向かい、図中矢印AR2に示すように、当該圧力開放弁60から収容ケース10側に排出される。
【0040】
排気部22から排気されたガスは高温であり、金属異物等のデブリを含んでいる。断熱部材30の上方に圧力開放弁60を設けて、断熱部材30側に向かうようにガスの流れを誘導することにより、断熱部材30が位置する側に、当該デブリを集めることができる。これにより、デブリが蓄電スタック20に付着して蓄電スタックが短絡することを抑制することができる。
【0041】
この際、断熱部材30が、複数の蓄電スタック20と断熱部材30とが並ぶ第1方向の最も一方側に配置されることにより、第1方向の最も一方側(特定的には、電子機器50が配置されている側とは反対側)にデブリを集めることができる。これにより、電子機器50にデブリが付着することを抑制することができ、電子機器50側でも短絡が生じることを抑制することができる。さらに、第1方向の途中に断熱部材30が配置されて、断熱部材30の両側に蓄電スタック20が配置された状態と比較して、当該デブリが蓄電スタック20に付着することを抑制することができる。
【0042】
加えて、断熱部材30に圧力開放弁60に向けて開口する開放空間部33を設けることにより、当該開放空間部33にデブリを回収することができる。
【0043】
また、設置領域R1のうち蓄電スタック20が配置されない余剰の領域R2に断熱部材30が配置されることにより、余剰の領域R2に位置する空間部が冷却器40によって冷却されることを抑制することができる。これにより、蓄電スタック20によって温められた空気が当該空間部で冷却することを抑制し、結露が発生することを抑制することができる。さらに、断熱部材30のうち冷却器40に近い側に空気層35を設けることより、断熱性能を高めることができる。
【0044】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 蓄電装置、10 収容ケース、11 アッパーケース、12 ロアケース、20 蓄電スタック、21 蓄電セル、22 排気部、30 断熱部材、33 開放空間部、35 空気層、40 冷却器、50 電子機器、60 圧力開放弁、111 天井部、112 周壁部、113 フランジ部、121 底部、122 周壁部、123 フランジ部、R1 設置領域、R2 余剰の領域。
図1
図2
図3