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特開2024-88295茶飲料の光劣化臭が抑制された容器詰め飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088295
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】茶飲料の光劣化臭が抑制された容器詰め飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203390
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮本 花野
(72)【発明者】
【氏名】澤 菜月
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC02
4B027FC05
4B027FE08
4B027FK03
4B027FP85
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、容器詰緑茶飲料の光劣化臭を抑制する、より汎用的な方法、光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】アスコルビン酸及びトコフェロールを含有する、容器詰緑茶飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸及びトコフェロールを含有する、容器詰緑茶飲料。
【請求項2】
アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上である、請求項1に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項3】
アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下である、請求項2に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項4】
pHが7以下である、請求項1に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項5】
アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上である、請求項4に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項6】
アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下である、請求項5に記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項7】
容器が透明容器である、請求項1~6のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項8】
容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項9】
アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上となるように調製する、請求項8に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項10】
アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下となるように調製する、請求項9に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
【請求項11】
容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料において光劣化臭を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、光劣化による劣化臭(以下、単に「光劣化臭」とも表示する)が抑制された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、健康増進作用を有する飲食品への注目が高まっている。中でも、緑茶飲料は、カテキンやテアニンなどの健康成分を含んでおり、消費者の需要も増加している。また、緑茶飲料を場所や時間を問わずに飲用できることから、容器詰緑茶飲料が多数上市されている。
【0003】
ところで、容器詰茶飲料には、流通や販売の際に光照射を受けると、光劣化臭(すなわち、金属臭、油臭など)が発生するという問題があった。かかる問題に関連して、例えば特許文献1には、荒茶を140~160℃で25~40分間火入れ乾燥した緑茶葉を用意する工程と、アスコルビン酸1600~2800ppmを含む水性の抽出溶媒を用いて、前記緑茶葉から茶成分の抽出液を得る工程と、前記抽出液から前記抽出溶媒を除去する工程とを有することを特徴とするインスタント緑茶の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、特定の処理がなされた緑茶葉以外の緑茶葉を用いる場合にも使用し得る、より汎用性の高い、緑茶飲料の光劣化臭を抑制する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-058142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、容器詰緑茶飲料の光劣化臭を抑制する、より汎用的な方法、光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製することによって、光劣化臭を抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)アスコルビン酸及びトコフェロールを含有する、容器詰緑茶飲料;
(2)アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上である、上記(1)に記載の容器詰緑茶飲料;
(3)アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下である、上記(1)又は(2)に記載の容器詰緑茶飲料;
(4)pHが7以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。
(5)アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料;
(6)アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料;
(7)容器が透明容器である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の容器詰緑茶飲料。
(8)容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料の製造方法;
(9)アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上となるように調製する、上記(8)に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法;
(10)アスコルビン酸の含有濃度が1000mg/L以下であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が160mg/L以下となるように調製する、上記(8)又は(9)に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法;
(11)容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料において光劣化臭を抑制する方法;
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器詰緑茶飲料の光劣化臭を抑制する、より汎用的な方法、光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
[1]アスコルビン酸及びトコフェロールを含有する、容器詰緑茶飲料;(以下、「本発明の飲料」とも表示する。);
[2]容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料において光劣化臭を抑制する方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
等の実施態様を含む。
【0011】
(緑茶抽出物)
緑茶飲料には緑茶抽出物が含まれる。本明細書において、「緑茶抽出物」とは、緑茶葉を抽出処理に供することにより得られる抽出物を意味する。また、本明細書において緑茶抽出物には、緑茶葉からの抽出液(緑茶抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、緑茶抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した緑茶抽出物エキス)等が含まれる。なお、本発明において、抽出処理とは、緑茶成分が抽出溶媒中に溶出されていればよく、例えば、抹茶等の茶葉粉砕物を溶解させる処理等の態様も含まれる。
【0012】
緑茶抽出物の原料として利用できる緑茶葉は特に限定されず、例えばCamelliasinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶されたものが挙げられ、より具体的には、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、深蒸し茶、番茶、ほうじ茶などが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、及び、等級等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、緑茶葉を抽出する際の茶葉の量、溶媒の量、抽出温度、抽出時間等の条件も特に限定されず、通常緑茶葉を抽出する際の条件を用いることができる。
【0013】
緑茶葉の抽出処理の方法としては、特に限定されず、食品加工分野で一般的に用いられている種々の抽出方法を用いることができ、例えば、溶媒抽出、気流抽出、圧搾抽出などが包含され、必要に応じて、沈殿もしくは遠心分離、濾過などの固液分離、濃縮、乾燥(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)又は粉末化などの処理をさらに施してもよい。
【0014】
ここで、溶媒抽出で用いられる抽出溶媒としては、水(例えば、硬水、軟水、イオン交換水および天然水)が望ましい。抽出溶媒の量は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その量は、茶葉の1~100倍量(質量)である。
【0015】
抽出温度や抽出時間は、当業者が適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、抽出溶媒が水の場合は、その温度および時間は、10~120℃で1分~12時間が挙げられる。
【0016】
抽出処理の一例としては、緑茶葉を、水中に浸漬および攪拌し、その後、緑茶葉を濾過または遠心分離する方法が挙げられる。ここで、抽出時の温度や時間などの条件は、特に限定されず、緑茶葉の種類や量によって当業者が任意に選択し、かつ設定することができる。
【0017】
緑茶抽出液の調製において、緑茶エキスや緑茶パウダーなどの緑茶抽出液の濃縮物や精製物を用いてもよく、例えば、ポリフェノン(三井農林社製)、サンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの緑茶濃縮物や緑茶精製物は、そのまま、又は水で溶解若しくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、緑茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0018】
(緑茶飲料)
本発明において「緑茶飲料」としては、緑茶抽出物を含む飲料である限り、特に限定されないが、緑茶飲料が好ましく挙げられる
【0019】
本発明の飲料におけるタンニンの含有濃度としては、例えば100~1000mg/L、200~900mg/L、200~800mg/L、300~800mg/Lなどが挙げられる。本発明において、飲料中のタンニン濃度は、例えば、緑茶抽出液を調製する際の、緑茶葉の使用量や、緑茶抽出液の加工品の使用量を調整すること等により調整することができる。
【0020】
本発明の飲料中のタンニン濃度は、酒石酸鉄吸光光度法(好ましくは、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法)を用いて測定することができる。
【0021】
(アスコルビン酸)
L-アスコルビン酸は水溶性ビタミンの1種であり、ビタミンCとも呼ばれる化合物である。本発明の飲料は、アスコルビン酸を含有する。本発明に用いるアスコルビン酸としては、アスコルビン酸又はその塩が挙げられ、より具体的には、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム等が挙げられる。なお、アスコルビン酸は酸化してデヒドロアスコルビン酸となり、さらに加水分解されたジケトグロン酸へ分解する特性がある。
【0022】
本発明の飲料におけるアスコルビン酸の含有濃度としては、特に制限されないが、400mg/L以上が挙げられる。また、600mg/L以上や、800mg/L以上であってもよい。また、光劣化臭の抑制効果をより多く得るなどの観点から、アスコルビン酸の含有濃度として、好ましくは3000mg/L以下や2000mg/L以下、より好ましくは1200mg/L以下、さらに好ましくは1000mg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0023】
本発明の飲料におけるアスコルビン酸の含有濃度の好適な態様の具体例として、400~3000mg/L、400~2000mg/L、400~1000mg/L、600~3000mg/L、600~2000mg/L、600~1000mg/Lなどが挙げられる。
【0024】
本発明において、飲料中のアスコルビン酸濃度は、例えば、アスコルビン酸やその塩を飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。アスコルビン酸やその塩は市販されているものを用いることができる。
【0025】
本明細書において、「アスコルビン酸の含有濃度」は、飲料中のアスコルビン酸の濃度を意味し、例えばアスコルビン酸が塩の形態で飲料に添加される場合は、遊離体(フリー体)のアスコルビン酸量に換算した濃度を意味する。飲料中のアスコルビン酸の濃度は、HPLCを用いた方法や、滴定法などで測定することができる。
【0026】
(トコフェロール)
トコフェロールは、脂溶性ビタミンの1種であり、ビタミンEとも呼ばれる化合物である。本発明の飲料は、ビタミンEを含有する。本発明に用いるトコフェロールとしては、α体、β体、γ体、δ体の何れであってもよいが、α体が好ましく挙げられ、また、d体、l体の何れであってもよいが、d体が好ましく挙げられ、特に、d-α-体が好ましく挙げられる。
【0027】
本発明の飲料におけるトコフェロールの含有濃度としては、特に制限されないが、光劣化臭の抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは40mg/L以上、より好ましくは80mg/L以上が挙げられる。また、トコフェロールの含有濃度として、好ましくは400mg/L以下、320mg/L以下、160mg/L以下が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。なお、トコフェロールとして複数種を用いる場合は、それらの合計の濃度を、本発明におけるトコフェロールの濃度とする。
【0028】
本発明の飲料におけるトコフェロールの含有濃度の好適な態様の具体例として、40~400mg/L、40~320mg/L、40~160mg/L、80~400mg/L、80~320mg/L、80~160mg/Lなどが挙げられる。
【0029】
本発明において、飲料中のトコフェロール濃度は、例えば、トコフェロールを飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。トコフェロールは市販されているものを用いることができる。
【0030】
飲料中のトコフェロールの濃度は、HPLCを用いて測定することができる。例えば、試料をアルカリ(水酸化カリウム)で加熱けん化を行うことにより不純物の除去を行い、不けん化物をヘキサン-酢酸エチル混液で抽出し順相の高速液体クロマトグラフで測定することができる。
【0031】
(アスコルビン酸とトコフェロールの好ましい濃度の組合せ)
本発明の飲料における、アスコルビン酸の含有濃度と、トコフェロールの含有濃度の好ましい組合せとしては、
アスコルビン酸の含有濃度400~3000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度40~400mg/Lの組合せ;
アスコルビン酸の含有濃度400~2000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度40~320mg/Lの組合せ;
アスコルビン酸の含有濃度400~1000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度40~160mg/Lの組合せ;
アスコルビン酸の含有濃度600~3000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度80~400mg/Lの組合せ;
アスコルビン酸の含有濃度600~2000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度80~320mg/Lの組合せ;又は、
アスコルビン酸の含有濃度600~1000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度80~160mg/Lの組合せ;
などが挙げられる。
【0032】
(任意成分)
本発明の容器詰緑茶飲料は、
本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含有していてもよい。かかる任意成分としては、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤、うま味成分、エキス、及び、苦味料からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0033】
(pH)
本発明の飲料のpHとしては特に制限されないが、光劣化臭の課題がより大きくなり、本発明の意義をより多く得る観点から、例えば7以下、好ましくは6.8以下、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6以下、より好ましくは5.8以下が挙げられる。また、pHの下限として、例えば2、4、5又は5.5が挙げられる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0034】
本発明の飲料のpHの好適な態様として、例えば2~7、好ましくは2~6.8、より好ましくは2~6.5、さらに好ましくは2~6、さらに好ましくは2~5.8が挙げられる。また、本発明の飲料のpHの他の好適な態様として、例えば4~7、好ましくは4~6.8、より好ましくは4~6.5、さらに好ましくは4~6、より好ましくは4~5.8が挙げられる。また、本発明の飲料のpHの他の好適な態様として、例えば5~7、好ましくは5~6.8、より好ましくは5~6、さらに好ましくは5~5.8が挙げられる。また、本発明の飲料のpHの他の好適な態様として、例えば5.5~7、好ましくは5.5~6.8、より好ましくは5.5~6、さらに好ましくは5.5~5.8が挙げられる。
【0035】
本発明の飲料のpHの調整は、本発明の飲料の香味設計などに応じて、pH調整剤を用いること等により行うことができる。
【0036】
本発明の飲料のpHは、20℃におけるpHを指し、pHメーター(例えば、本体機器「HM-41X」;電極「ST-5741C」;いずれも東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて常法により測定することができる。
【0037】
(本発明の飲料)
本発明の飲料としては、アスコルビン酸の含有濃度が400mg/L以上であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が40mg/L以上である、容器詰緑茶飲料である限り特に制限されない。
【0038】
本発明の飲料は、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有すること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰緑茶飲料と特に相違する点はない。
【0039】
本発明の飲料は、「容器詰緑茶飲料」の一般的な製造方法において、いずれかの段階で、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するようにする(好ましくは、そのように調製する)ことによって製造することができる。
【0040】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;等の容器が挙げられる。本発明に用いる容器として、光劣化臭が生じ易く、本発明の意義がより大きくなる観点から、透明容器が好ましく挙げられる。
【0041】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理がなされていなくてもよいが、保存性向上の観点から、加熱殺菌処理がなされていてもよい。加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0042】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料の製造方法である限り特に制限されない。
【0043】
本発明の飲料は、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製すること以外は、容器詰緑茶飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰緑茶飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、緑茶抽出液を調製し、調合工程、充填工程、加熱殺菌工程を経て容器詰緑茶飲料を製造することができる。本発明の飲料の製造においては、前述の任意成分を添加してもよく、これら任意成分の添加時期は特に制限されない。
【0044】
本発明における「アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する」方法としては、本発明の飲料において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように、容器詰緑茶飲料の製造工程のいずれかで、「アスコルビン酸又はその塩」、及び、「トコフェロール」を緑茶飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、緑茶抽出液に、「アスコルビン酸又はその塩」、及び、「トコフェロール」を含有させる方法が挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法においては、任意成分として、酸味料、香料、色素、甘味料、保存料、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤、うま味成分、エキス、及び、苦味料からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有させてもよい。
【0046】
本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料を得ることができる。
【0047】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、緑茶飲料を加熱殺菌する工程を含んでいてもよい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0048】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、容器詰緑茶飲料の製造において、アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する、前記容器詰緑茶飲料において光劣化臭を抑制する方法である限り特に制限されない。
【0049】
「アスコルビン酸及びトコフェロールを含有するように調製する」方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0050】
(光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料)
本発明の飲料は、光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料である。本発明における「光劣化臭」とは、容器詰緑茶飲料が光照射を受けることにより生じる光劣化臭(すなわち、金属臭、油臭など)を意味する。
【0051】
本明細書において、「光劣化臭が抑制された」容器詰緑茶飲料としては、アスコルビン酸及びトコフェロールを添加していないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、光劣化臭が抑制された飲料などが挙げられる。上記のコントロール飲料としては、例えば、アスコルビン酸の含有濃度が20mg/L未満(好ましくは10mg/L未満)であり、かつ、トコフェロールの含有濃度が1.5mg/L未満(好ましくは1mg/L未満)である容器詰緑茶飲料が挙げられる。
【0052】
ある緑茶飲料における、光劣化臭の程度や、かかる光劣化臭の程度が本発明におけるコントロール飲料と比較してどのようであるか(例えば、光劣化臭が抑制されているかどうか、どの程度抑制されているか)は、訓練されたパネルであれば、容易かつ明確に決定することができる。
【0053】
光劣化臭の評価の基準や、パネル間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができる。飲料における光劣化臭の程度を評価するパネルの人数は1名であってもよいが、客観性がより高い評価を得る観点から、パネルの人数の下限を、例えば3名以上、好ましくは5名以上とすることができ、また、評価試験をより簡便に実施する観点から、パネルの人数の上限を、例えば7名以下とすることができる。パネルが2名以上の場合の飲料における光劣化臭の程度の評価は、その飲料における光劣化臭の程度についてのパネル全員の評価の平均を採用してもよく、例えば、各評価基準に評価点が付与されている場合、パネル全員の評価点の平均値をその飲料における光劣化臭の程度の評価として採用してもよい。前述のように、評価点の平均値を採用する場合は、その平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用してもよい。なお、パネルが2名以上である場合には、各パネルの評価のばらつきを低減するために、実際の官能評価試験を行う前に、各パネルの評価基準ができるだけ揃うように評価基準を共通化する作業を行っておくことが好ましい。かかる共通化作業としては、光劣化臭の程度が最も大きいときの評価点に相当する、その光劣化臭の程度の認識をパネル間であらかじめ共通化した上で、各サンプル飲料の評価を行うことが挙げられる。また、このような評価基準に関する事前の共通化作業により、例えば、評価点が1点;2点;3点;4点;5点;6点;7点の7段階である場合の、各パネルによる光劣化臭の程度の評価の標準偏差が0.5以内となるようにしておくことが好ましい。
【0054】
ある容器詰緑茶飲料における、光劣化臭の抑制の程度は、例えば後述の実施例の試験2等に記載の官能評価法と同様の方法、好ましくは、同じ方法により評価することができる。より具体的には、サンプル飲料の光劣化臭の程度と、コントロール飲料の劣化臭の程度を、それぞれ、「7点:光劣化臭を全く感じない」、「6点:光劣化臭をほとんど感じない」、「5点:光劣化臭をわずかに感じる」、「4点:光劣化臭を多少感じる」、「3点:光劣化臭を感じる」、「2点:光劣化臭を強く感じる」、「1点:光劣化臭を非常強く感じる」の7段階で評価し、例えば複数のパネルによる評価点(平均値の小数第2位を四捨五入した値)をそれぞれ算出することができる。コントロール飲料の光劣化臭のその評価点から、サンプル飲料の光劣化臭のその評価点を差し引いた数値(本明細書において、かかる数値を、「光劣化臭(相対)」とも表す)を、サンプル飲料において光劣化臭が抑制された程度の評価点とすることができる。光劣化臭(相対)が0.1以上(好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.4以上)の飲料は、光劣化臭が抑制された飲料として挙げられる。
【0055】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0056】
試験1.[製品pHの、光劣化臭への影響]
容器詰緑茶飲料における製品pHが、光劣化臭の程度にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0057】
(1.緑茶飲料の調製)
緑茶葉(煎茶)を30重量倍の熱水(70℃)に添加して6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加して、表2記載のpHに調整した後、最終的に表2記載の茶葉含有濃度となるように調整した。これらの緑茶抽出液をUHT(超高温)殺菌処理し、次いで、それぞれ透明なプラスチック製容器に充填して、試験例1~2の各サンプル飲料を調製した。
【0058】
サンプル飲料を、照度3000ルクス、10℃の条件下に14日間静置した。
【0059】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1~2のサンプル飲料の光劣化臭(すなわち、金属臭、油臭)の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表1に記載されるような7段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の光劣化臭の程度の差、2点と3点の光劣化臭の程度の差、3点と4点の光劣化臭の程度の差、4点と5点の光劣化臭の程度の差、5点と6点の光劣化臭の程度の差、6点と7点の光劣化臭の程度の差は、それぞれ同程度とした。
なお、各試験例のサンプル飲料における光劣化臭の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。
【0060】
【表1】
【0061】
なお、表1の評価基準において、例えば5点以下である場合に、光劣化臭の課題があると判断することができる。
【0062】
試験例1~2のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2の結果から分かるように、製品pHが6.8である試験例1においても、光劣化臭は感じられたものの、製品pHがより低く、5.5である試験例2においては、それよりも格段に強い光劣化臭が感じられることが示された。これらのことから、本発明の課題である光劣化臭はpHがより低い場合に顕著に強くなることが示された。
【0065】
試験2.[L-アスコルビン酸やトコフェロールの、低pHにおける光劣化臭への影響]
L-アスコルビン酸や、トコフェロールが、低pHの容器詰緑茶飲料における光劣化臭にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0066】
(1.緑茶飲料の調製)
緑茶葉(煎茶)を30重量倍の熱水(70℃)に添加して6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)又はその両方を、表3~5記載の含有濃度となるように添加した後、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してpH5.5に調整し、最終的に表3~5記載の茶葉含有濃度となるように調整した。これらの緑茶抽出液を、UHT(超高温)殺菌処理した後、それぞれ透明なプラスチック製容器に充填して、試験例3~19の各サンプル飲料を調製した。なお、コントロール飲料として、L-アスコルビン酸、トコフェロールのいずれも含まない、試験例2のサンプル飲料を調製した。
【0067】
試験例2~19のサンプル飲料を、照度3000ルクス、10℃の条件下に14日間静置した。
【0068】
(2.官能評価試験)
得られた試験例2~19のサンプル飲料の光劣化臭(すなわち、金属臭、油臭)の程度を、訓練した専門パネル5名によって、上記の表1に記載されるような7段階の評価基準で官能評価試験を行った。
なお、各サンプル飲料における光劣化臭の程度として、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値(「評価平均値」)を採用した。そして、試験例3~19の各サンプル飲料の評価平均値から、コントロール飲料である試験例2のサンプル飲料の評価平均値を差し引いた値を、各サンプル飲料における光劣化臭の抑制の程度(「光劣化臭(相対)」とも表示する。)として、表3~5に示す。
【0069】
なお、表3はL-アスコルビン酸(ビタミンC)を含有させた結果を表し、表4及び表5は、L-アスコルビン酸(ビタミンC)及びトコフェロール(ビタミンE)の両方を含有させた結果を表す。また、表4及び表5においては、その試験例に含まれる濃度のL-アスコルビン酸単独の場合の光劣化臭の抑制の程度の「数値」(すなわち、L-アスコルビン酸単独使用での光劣化臭(相対)の数値)も示す。表5の試験例15を例に説明すると、L-アスコルビン酸600mg/Lの単独使用の場合の光劣化臭(相対)の数値(「1.3」;表3の試験例4)を、「L-アスコルビン酸単独使用での光劣化臭(相対)」として示す。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果から、L-アスコルビン酸の単独使用の場合、L-アスコルビン酸を600mg/L以上含有させると、光劣化臭がある程度抑制されることが示された。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
表4及び表5の結果から、L-アスコルビン酸とトコフェロールを併用すると、L-アスコルビン酸を単独使用した場合と比較して、緑茶飲料の光劣化臭に対して顕著な抑制効果が得られることが示された。
【0075】
また、表4及び表5の結果から、アスコルビン酸の含有濃度と、トコフェロールの含有濃度の好ましい組合せとして、「アスコルビン酸の含有濃度400~1000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度40~160mg/Lの組合せ」や、「アスコルビン酸の含有濃度600~1000mg/Lと、トコフェロールの含有濃度80~160mg/Lの組合せ」が好ましいことが示された。
【0076】
試験3.[L-アスコルビン酸やトコフェロールの、高pHにおける光劣化臭への影響]
L-アスコルビン酸や、トコフェロールが、高pHの容器詰緑茶飲料における光劣化臭にどのような影響を与えるかを、以下の実験により調べた。
【0077】
(1.緑茶飲料の調製)
緑茶葉(煎茶)を30重量倍の熱水(70℃)に添加して6分間抽出し固液分離を行い、緑茶抽出液を作製した。この緑茶抽出液に、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)又はその両方を、表6に記載の含有濃度となるように添加した後、重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してpH6.8に調整し、最終的に表6記載の茶葉含有濃度となるように調整した。これらの緑茶抽出液を、UHT(超高温)殺菌処理した後、それぞれ透明なプラスチック製容器に充填して、試験例20~24の各サンプル飲料を調製した。なお、コントロール飲料として、L-アスコルビン酸、トコフェロールのいずれも含まない、試験例1のサンプル飲料を調製した。
【0078】
試験例1、20~24のサンプル飲料を、照度3000ルクス、10℃の条件下に14日間静置した。
【0079】
(2.官能評価試験)
得られた試験例1、20~24のサンプル飲料の光劣化臭(すなわち、金属臭、油臭)の程度を、訓練した専門パネル5名によって、上記の表1に記載されるような7段階の評価基準で官能評価試験を行った。
なお、各サンプル飲料における光劣化臭の程度として、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値(「評価平均値」)を採用した。そして、試験例1、20~24の各サンプル飲料の評価平均値から、コントロール飲料である試験例1のサンプル飲料の評価平均値を差し引いた値を、各サンプル飲料における光劣化臭の抑制の程度(「光劣化臭(相対)」とも表示する。)として、表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
表6の結果から、高pHの容器詰緑茶飲料においても、L-アスコルビン酸とトコフェロールを併用することにより、光劣化臭に対する抑制効果が得られることが示された。
【0082】
なお、L-アスコルビン酸及びトコフェロールの含有濃度がそれぞれ同じであって、pHが5.5である場合とpH6.8である場合を比較すると、pHが5.5で場合である方が、光劣化臭に対してより高い抑制効果が得られることが示された(表6の最下段の「pH5.5の試験例の光劣化臭 (相対)」)。例えば、L-アスコルビン酸400mg/Lとトコフェロール160mg/Lを併用した場合、pH6.8では「光劣化臭(相対)」は「1.6」(表6の試験例22)であったのに対し、pH5.5では「光劣化臭(相対)」は「2.5」(表4の試験例12)であった。これらのことから、pH5.5などの低pHでは、L-アスコルビン酸とトコフェロールを併用することによって、光劣化臭に対してより顕著な抑制効果が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、容器詰緑茶飲料の光劣化臭を抑制する、より汎用的な方法、光劣化臭が抑制された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。